平成4年2月 和歌山県議会定例会会議録 第6号(中村裕一議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

○議長(山本 一君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 2番中村裕一君。
 〔中村裕一君、登壇〕(拍手)
○中村裕一君 私は、紀勢線の高規格化、すなわちこの和歌山に新幹線を走らせてみてはどうかという提言を申し上げ、仮谷知事のお考えをお聞かせいただくとともに、議会の先輩・同僚の皆さん、県当局、広く県民の皆さんにこの問題の大切さをご認識いただき、「新幹線を和歌山に」という運動が必ずや大きなものとなっていくことを期待して質問を行うものであります。
 本日で一般質問も最終日、今議会においても県勢浮揚のための議論が数多く行われておりますが、県勢浮揚のために毎議会必ず行われておるのが陸・海・空にわたる交通体系の整備についての議論であります。そして、そのかいあってそれぞれ着実に進んできているのが現状であります。まず高速道路は、知事を先頭に県議会も議連を結成し、県民挙げての運動に取り組み、堺─岸和田間が平成四年度に完成、湯浅御坊道路が六年度供用開始、橋本─高野口間が事業着手、御坊─南部間が整備計画に、海南─御坊─田辺─すさみ間が基本計画に決定されております。海は、マリーナシティ、日高港、新宮港の整備、そしてテクノスーパーライナーにジェットフォイルと、かなり話題が多くなってまいりましたし、空についても、関空、南紀新空港、ヘリコプターといったぐあいであります。
 しかしながら、陸のうち鉄道については、新大阪乗り入れ、スーパーくろしお、ワイドビュー南紀の投入、和歌山大学駅、広川駅の設置など一定の成果はあったものの、他の交通体系の整備に比べればまだまだの感がいたします。つまり、依然として和歌山─新宮間は特急電車でも三時間余り、和歌山─橋本間に至っては各駅停車しかなく、一時間もかかってしまう状況に変化がないと言いたいのであります。一時間、三時間は、東海道新幹線の新大阪─名古屋間、新大阪─東京間の時間であり、新大阪─新宮間の四時間は、新大阪からのぞみ号に乗ると東京で乗りかえて福島市まで行ってしまう時間であります。乱暴な言い方をすれば、大阪から新宮は福島ほどのところにある、それほど遠いところだということであります。
 県においても、紀勢線の複線化、線形改良、和歌山線の複線化、冷房化を毎年国に要望しておりますが、均衡ある国土の発展、均衡ある県土の発展を目指すのであれば、この時間と距離のアンバランスを何とか解消しなければなりません。やはり、鉄道は大勢の人や物を、安く、正確、安全に、しかも速く輸送できるすばらしい交通手段ですから、幾ら国鉄が民営化され株式会社になったといっても鉄道事業の果たす役割、公共性は大きく、特に鉄道移送のほとんどをJRに頼らなければならない本県にとって、紀勢線、阪和線、和歌山線の運行や沿線開発は一企業の経営方針だけで決められてはかなわないのであります。私たちも、いつまでも待っているばかりではおれません。そろそろ本県においても、鉄道の高規格化、すなわちミニ新幹線やスーパー特急などを導入するための議論を始めてももう決して早くない、そんな時期に来ているのではないでしょうか。こうは申しましても、そんなものできるものかとか、新幹線より優先してやらなければならない問題がほかにあるではないかと言う人がいるかもしれません。それなら、私はぜひとも申し上げたい、「もう世の中はリニアの時代だ」と。「新幹線などは、昭和四十五年に法律ができて、基本計画や整備計画はもうとっくにできているんですよ」と。
 私は、全国新幹線鉄道図を初めて見たとき驚きました。驚いたというより腹が立ちました。いつの間にこんなもの決まったんよという思いでございます。全国津々浦々まで、昨年、全国で一番おくれていると言って橋本大二郎知事が誕生した高知県にも、ちゃんと基本計画があります。それにもかかわらず、我が和歌山県、紀伊半島がすっぽり白地になっているのであります。こんなもの、許されません。そもそも私は、「紀伊半島」という表現が気に入りません。気に入りませんが、もし半島と言うなら、中国地方や東北地方だって中国半島、東北半島ではありませんか。その中国半島や東北半島に新幹線があるのなら、紀伊半島に新幹線があっても不思議でない。不思議でないというよりも、あってしかるべきであると考えます。
 昨年、運輸省は、運輸審議会が出した「二十一世紀に向けての九○年代の交通政策の基本的課題について」という答申を受け、平成三年度運輸経済年次報告いわゆる「運輸白書」を発表しました。その中で、二十一世紀に向けての運輸行政について、東京一極集中を是正し、多極分散による国土の均衡ある発展を実現するためには、鉄道を中心とする公共交通機関の見直しと、高速化、快適性の向上による交通体系の再構築の姿勢を強調し、特に鉄道については、地球環境問題を初めとした環境問題への対応の必要性の高まりや将来の需給が不透明な石油エネルギー問題への対応の可能性を考慮し、環境への負荷が少なく、省エネルギー型の高速交通機関である高速鉄道ネットワークの形成・充実を積極的に推進していくことが望ましいとの考え方を示しております。そして、整備新幹線の建設推進を図り、在来鉄道についても、新幹線と在来鉄道の直通運転の推進、新幹線と在来鉄道の乗り継ぎ利便の向上によりトータルでの所要時間の短縮を図る、また最高速度時速百六十キロ以上、表定速度──これは、駅での停車時間を入れた平均速度のことであります──時速百キロ以上の特急の運行を目指すなど、表定速度の大幅な向上を目的として線形改良、軌道強化、車両改良、新型車両の投入等を推進するとしております。
 まさに、それに連動して、昨年、整備五新幹線のうち工事実施計画の申請がなされている東北、北陸、九州の各新幹線が、従来のフル規格新幹線に加えて、スーパー特急やミニ新幹線の新手法をもって着工されました。そして、幹線鉄道活性化事業として本年七月一日には奥羽線、福島─山形間の新幹線直通運転化、いわゆる山形新幹線が開通いたします。同様の秋田新幹線も平成八年の完成を目指し、この三月十三日に着工されましたし、北越北線の高規格化は平成七年の開業を目指しているのであります。
 さて、私は本年一月、議会の先輩・同僚の皆さん十一名とともに、この山形新幹線の試験運転に乗る機会を得ました。山形新幹線つばさ号は、新開発の四○○型車両で、ジェット機を思わせる精悍なフォルムとシルバーメタリックのボディーにグリーンのペインティング、まさに空気を切り裂く弾丸といった感じであります。このつばさ号は、東京─福島間の東北新幹線上では最高時速二百七十五キロのやまびこに連結運転し、福島駅で切り離された後、新幹線と同じレール幅に統一された奥羽本線を山形まで最高速度百三十キロで単独運転され、東京─山形間を乗りかえせずに四十二分間短縮の二時間二十七分で結ぶ、画期的なものであります。
 この山形新幹線方式いわゆるミニ新幹線の特徴は、従来の東海道、山陽のようなフル規格新幹線が全線新設するのに比べて、在来線の線形改良等をするだけで投資額が少なくて済むということで、山形の場合、フル規格だと三千三百三十億円と試算された建設費が、その十分の一以下の三百十五億円で済んだのです。もう既に地元では、山形観光をPRするチャンスと観光誘客作戦も展開され、企業誘致にも順風が吹き始めたと聞きます。飛行機のファーストクラスのようないすに座り、時速二百四十キロでも本当に静かな車中で、私は北国の荒涼とした景色を車窓に眺めながら、青い太平洋をバックにして、降り注ぐ陽光に銀色の体を輝かせながら疾走する紀の国新幹線の雄姿に思いをはせたのでありますが、これは私一人だけのものではありませんでした。このときから、「和歌山に新幹線を」という小さい運動が始まったのであります。
 仮谷知事には、こうした運動に早速対応し、本年度当初予算に総合交通ネットワーク推進事業として一千万円の調査費を計上し、その姿勢を見せていただきました。ここでお礼を申し上げますとともに、改めて県内鉄道網の整備、特に高規格化についてのお考えをお示しいただきたいのであります。
 南北に長い本県の均衡ある県土の発展、関空初め湾岸のビッグプロジェクトの経済波及効果を最大限県内に吸収するため和歌山に新幹線がぜひ必要であり、私は今こそその実現に向けてスタートするときであると確信いたします。二十一世紀につなぐ二十世紀の詰めの大切な時期の県政を担当される仮谷知事の積極的なご答弁を期待して、私の質問を終わります。
○議長(山本 一君) ただいまの中村裕一君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 中村裕一議員にお答え申し上げます。
 お答え申し上げるというよりも、いろいろお教えいただき、また卓見を承らせていただいたわけでございますけれども、紀勢線の高規格化についてどう考えるか、どう取り組むかということでございます。
 私も、県勢の発展には交通網の充実が先決だということで、関西国際空港、白浜空港、高速道路の南伸等、交通網の整備について最善の努力を払っておるわけでございます。
 また、議員から提言ございました鉄道についても、多くの人、多くの物を運ぶ輸送力、時間がきちっとしている定時性という観点から地域にとって非常に重要な交通機関であると考え、かねてから積極的に取り組んでまいっておるところでございます。紀勢線の複線電化、和歌山線の電化、さらには特急くろしお号の新大阪乗り入れ等、一定の成果をおさめてまいっておるところでございます。
 しかし、話ございましたようにリニアモーターカー時代になってきておるわけでございまして、高速化や利便性の向上など、鉄道に対するより高いニーズに対応していくことが今後とも極めて重要なことだと考えておるところでございます。
 特に、話ございましたように、最近は全国的に見て鉄道復権と言われるような風潮もあるわけでございまして、鉄道の持つ機能、役割が改めて見直されつつございます。東北新幹線を活用したミニ新幹線の導入もその一つでございます。また、一昨日、新幹線のぞみ号が東京─大阪間を三十分短縮するという事態にもなっておるわけでございます。
 このような中で、県内の幹線鉄道のさらなる高速化、利便性の向上を図るため、運輸省、JR等関係機関の協力が一番大事だと思うわけでございます。こうした皆さんと一緒になってテーブルを囲んで、和歌山の鉄道網をいかにしていくかということを真剣に討議して道を開くことが極めて大事なことだと思っておるわけでございます。こうした観点から予算を計上させていただいて、ミニ新幹線問題について積極的に取り組んでまいりたいと思っております。
○議長(山本 一君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 2番中村裕一君。
 〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 仮谷知事には非常に積極的なご答弁をいただきまして、感謝を申し上げたいと思います。
 昨年の夏、県議会の野球大会で石川県に参りました。ちょうどそのころ新聞やテレビで流れていたのが、北陸新幹線がいよいよ着工されるというニュースでございました。私も石川県に行くまで知りませんでしたが、帰ってきてからも和歌山では新幹線のことは余り話題になっておりませんでした。非常に残念な記憶があるわけでございます。
 おくれておった整備新幹線やミニ新幹線が着工できるようになったのは、鉄道整備基金の設立によるからでございます。この基金は、既設新幹線の売却益などを原資にして整備新幹線や在来線の高規格化などに助成するのでありますが、これとてオールマイティーではなく、やはり山形県や秋田県と同様に、地元もそれなりに負担しなくてはなりません。
 そういう意味で、今年度の調査費が有効に活用されて、新幹線についての議論が県議会はもとより広く県民の皆さんの間でどんどんと広まってきて、盛り上がりが大きくなることを期待いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。ご清聴ありがとうございました。
○議長(山本 一君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で中村裕一君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
○議長(山本 一君) この際、暫時休憩いたします。
 午前十一時三分休憩
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