平成4年2月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(上野哲弘議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

○副議長(平越孝哉君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 34番上野哲弘君。
 〔上野哲弘君、登壇〕(拍手)
○上野哲弘君 通告に基づきまして、質問をいたしたいと思います。
 まず第一点の、新宮港の第二期整備計画についてであります。
 第二期の整備計画が、国、県、市による調査費の計上等、積極的に進められているところであります。今後いろいろと困難が予想されると感じましたので、その点、十分に把握していただきまして、実現に向けて一層の努力をお願いしたいところであります。
 昨今、講演会または新聞紙上等で、これからますます日本は海の時代になる旨、提起されておりますが、まさしく狭い日本、もっと海を利用すべきであり、特に紀南はその歴史、地域性から、海すなわち港で活路を求めるべきではなかろうかと考えております。
 古来、当圏域はその地形から神々の国として言い伝えられ、熊野の山々は山岳宗教の聖地として全国にその名を響かせ、中世以後は熊野三山を中心とする信仰の地として栄え、「アリの熊野もうで」と呼ばれるほどにぎわいを見せたところであります。近世以後も、木材の集散地として江戸との交易を拡大し発展したところでありますが、現在は、木材産業の衰退とともに経済基盤を失ってしまったところであります。
 今、新宮港の整備計画が検討されている中で、当圏域の将来を託す意味で、港すなわち船に関する過去の事例を申し上げたいと存じます。
 古くは、熊野水軍がありました。武力集団として日本の歴史に登場していることは、皆さんよくご存じのことと思います。さらに近世においては、木材及び木炭の輸送にその力を発揮いたしました。その代表が、江戸初期、堺の商人でありました成川屋佐兵衛という人でありました。余談でありますが、この人は小型の文左衛門と言われて派手な生活を送ったそうであります。彼は、熊野の木材に注目し、回船業者として大阪、京都に向けて縦横にその敏腕を振るっていたようであります。その持ち船は百数十隻もあったとされ、海運業として地域の発展に寄与したとなっております。
 また、近代に移りますと、明治三十年ごろ、さきの新宮市長でありました杉本喜代松氏が台湾との木材取引を策し、明治後期から大正、昭和にかけて勝浦港が台湾に対する木材の最大移出港となり、活況を呈したところであります。
 以上のような歴史的背景から、また現在、近海マグロの水揚げ額日本一でもある勝浦港のことを考えてみますと、夢をもう一度ではありませんが、今後、我が国において海上輸送、海上交通が、あるいは海洋レジャーがますます求められるとするならば、港湾整備は当圏域の重要課題になると考えられます。この件に関して県の見解を伺いたいと存じます。
 次に、昭和五十六年、運輸省と和歌山県が、新宮モデル定住圏における地域資源活用のための港湾整備と題しまして、調査報告書が出されております。その中に方向づけがなされておりますので、その点について申し上げたいと思います。
 「当圏域は、国土軸から遠く離れ、可住地面積が少なく、市場への近接性、安価な用地確保、高度に発達した交通条件等が求められる産業活動にとって不利な条件にある地域である。よって、圏域として、第二期埋め立てによる近代産業港湾の建設に対する需要が強く起こっており、早期実現が望まれる」とありますが、どのように考えておられるか、お伺いしたいと思います。
 次に、「第一期埋め立ての実績からして、単に工場用地を造成しても企業の進出が早急に進むとは考えられない。そのため、地域に密着した産業を育成し、その発展振興を図っていく方がより現実的であり、長期的に見て地域への波及効果も大きい」となっております。その具体案である木材アプリケーションコンビナート、食品加工コンビナートについてどのように考えておられるか、伺いたいと存じます。
 次に、「近代的流通港湾として整備されれば、原材料の搬入あるいは製品の輸送が容易となり、東京方面との直結が可能」とありますが、その機能が備えられる港湾になり得るか、お伺いしたいと思います。
 観光ターミナルとしての港湾整備はどのように考えておられるか、また、海洋性レクリエーションの振興との関連性から、その具体案について伺います。
 続いて埋め立て造成についてでありますが、「工事費の低減と分譲価格の設定には、圏域の産業振興に多大の影響があるので慎重を要する」となっておりますが、県の方で埋め立てをして土地の安価な供給をお願いできないか、その見解をお伺いしたいと思います。
 続きまして、報告書にありますとおり、造成地の処分は簡単ではないと考えますが、国の施策を先取りするような新しい発想で県が埋立地処分について全面的に支援することにならないか、お伺いしたいと思います。
 最後でありますが、今この埋立地に進出を希望している地元産業は第二期工事に非常に期待をしております。そういう意味で、早期着工について所見を伺いたいと思います。
 以上の答弁につきましては一括していただいたら結構だと思いますので、よろしくお願いします。
 続きまして、熊野学についてでありますが、熊野学研究センター構想については中村利男議員さんから当センターのデザインについて質問がありましたので、重複を避けて質問したいと存じます。
 去る二月六日の那智勝浦町での熊野を語るフォーラムにおきまして、梅原先生を初め中央の各先生方がいろいろと提言され、熊野に対する熱い思いを感じたところであります。それらを要約すれば、熊野は日本の原点、原郷であり、熊野は絶望から蘇生する日本の子宮であるということになります。都市での疲れをいやし、精神衛生上の問題点を解きほぐす、そのような地域として熊野を考えられると思います。
 さきに、建設省道路局長の講演会で、地方における過疎問題に関して「管理人口」「参加人口」という言葉を使われましたが、まさしく地方は都市生活のゆがみを是正する場所として位置づけられるのではないか、地方も都市からの参加人口を得て新しい発想を持って地域づくりをすべきではないかと思うわけであります。この構想をよりすばらしいものにするために、以下の点について考慮をお願いするところであります。
 先日発表のあった関西における歴史街道構想に高野熊野ルートがテーマルートとして指定されたところでありますが、今後一層の努力をされまして、高野あるいは熊野の位置づけを願うところであります。
 続きまして、関西国際空港のインパクトを熊野地方へも波及させるため、近畿自動車道紀勢線の南伸、南紀白浜空港ジェット化の整備、新宮港第二期整備等、陸・海・空にわたる高速交通機関を中心とする総合交通体系の一日も早い整備をお願いするところであります。
 続きまして、地域内の道路や住環境の整備を図りつつ、熊野の持つ貴重な自然、歴史、文化を最大限生かす施策を望むところであります。
 最後でありますが、地元組織である三山協議会との連携を一層深められて、世界に誇れる熊野を目指していただきたい、そのような思いで質問いたしました。
 これにつきましては要望でございますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。これで、第一回目の質問を終わります。
○副議長(平越孝哉君) ただいまの上野哲弘君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 土木部長山田 功君。
 〔山田 功君、登壇〕
○土木部長(山田 功君) 新宮港の第二期整備計画についてお答えを申し上げます。ご質問の中にありましたように、一括してお答えをしてよいということでございますので、一括してお答えをさせていただきます。
 新宮港二期計画についてでありますが、新宮市及び地元経済界においてその実現が強く求められている事業であります。平成元年の十二月議会において平成二年度より調査費をもって取り組む旨のお答えを申し上げ、現在、新宮港全体の長期展望を踏まえた大型岸壁、用地造成等、港湾整備計画について地元市町とともに調査検討を進め、その実現に取り組んでいるところでございます。
 その際、議員お話しの関連調査なども踏まえつつ、新しい時代環境の中で新宮圏域の現状と課題を整理し、あるいは観光ターミナル、海洋レクリエーション等の機能も含めて、新宮港に期待される機能、役割について検討を進めてきております。
 また、この新宮港二期計画の実施により、大型岸壁等、港湾機能が充実をし、新宮港の海上輸送ネットワークの拠点としての役割を一層高めることができると考えております。
 なお、埋立事業については、新宮市の施策として市がみずから取り組むとの意向を伺っております。現在、その方向で検討しておりますが、埋立地の造成費ができるだけ低くおさまるよう、工事費の低減等についても十分検討する必要があるという認識を持っております。
 以上でございます。
○副議長(平越孝哉君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 34番上野哲弘君。
○上野哲弘君 新宮港について今ご答弁いただいたわけですが、実は、進出したい地元企業の方の意見を聞きまして、今後、産業として競争力をつけるためには、やはりコスト面の軽減を図らなければだめだと。そういう意味から、船から直接、原材料の搬入をしたい、今後に向かってそういう設備をぜひやっていきたいという要望が二社ほどからありましたので、地域の活性化のためにぜひこの港をつくってほしいという気持ちが出てきたわけなんです。
 そこで、先ほどの質問にもありましたように、この問題はなかなか簡単にはいかないという気もしております。しかし、余りおくれると、いろいろと企業の事情等で、もう必要なくなるというようなことも出てきますので、そういう意向も踏まえまして、この二期工事について県の格段の指導をお願いしたいと、そのような気持ちでいるわけです。
 一応、新宮市が埋め立てるということではありますけれども、市町村との関係もいろいろありまして、県の調整が必要じゃないかと考えますので、今後はひとつよろしくお願いしたいと、そういうことで要望にかえて終わります。
○副議長(平越孝哉君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で上野哲弘君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 次会は三月十六日再開し、質疑及び一般質問を続行いたします。
○副議長(平越孝哉君) 本日は、これをもって散会いたします。
 午後二時五分散会

このページの先頭へ