平成4年2月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(松本貞次議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 午前十時四分開議
○議長(山本 一君) これより本日の会議を開きます。
○議長(山本 一君) この際、報告いたします。
 知事から議案の追加提出がありました。
 職員に公文を朗読させます。
 〔職員朗読〕
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 財第319号 
 平成4年3月13日
 和歌山県議会議長 山 本 一 殿
 和歌山県知事 仮 谷 志 良
 和歌山県議会平成4年2月定例会追加議案の提出について
 地方自治法第96条の規定に基づく議決事件について、次のとおり議案を提出します。
 記
 議案第82号 平成3年度和歌山県用地取得事業特別会計補正予算
 議案第83号 財産の取得について
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○議長(山本 一君) 日程第一、ただいま報告いたしました議案第八十二号及び議案第八十三号を一括して議題といたします。
 議案はお手元に配付しておりますので、まず知事の説明を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) ただいま上程されました議案につきまして、ご説明申し上げます。
 今回追加提案いたしました議案第八十二号は、和歌山操車場駅跡地の一部を購入するため平成三年度用地取得事業特別会計に所要の補正予算を計上するものであり、議案第八十三号は、その財産の取得について議決をお願いするものであります。
 何とぞ、ご審議の上、ご賛同賜りますようお願い申し上げます。
○議長(山本 一君) 以上で、知事の説明が終わりました。
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○議長(山本 一君) 次に日程第二、議案第一号から議案第八十一号までをあわせ一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第三、一般質問を行います。
 36番松本貞次君。
 〔松本貞次君、登壇〕(拍手)
○松本貞次君 皆さん、おはようございます。
 知事、まず、きょうの誕生日おめでとうございます。きょうは、仮谷知事がお生まれになられた日だそうでございます。その日に質問できますことを心より光栄に思っております。また、冒頭にいい回答を得られますよう心からお願いを申し上げまして、質問をさせていただきます。
 まず、同和行政について質問をいたします。
 現行法「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」が施行された五年前、これで同和の特別立法は終わり、あとは自治体の一般対策へ移行とされた。しかし、同和対策事業に関し、事実上、現行法どおり五年続くこととなった。
 「地域改善対策は永続的に講じられるべき性格のものではなく、事業の迅速な実施によってできる限り早期に目的を達成すること」「就労対策、産業の振興、教育、啓発等、非物的な面においてもなお今後とも努力を続けていかなければならず、これらのことから直ちに一般行政へ全面的に移行することは適当ではなく現実的でもない」とし、ついに「現行法制定の趣旨を踏まえつつ、法的措置を含め適切な措置を検討する必要がある」ということに到達した。昨年十二月十一日、地域改善対策協議会総会において意見具申を決定、岩崎純三総務庁長官に手渡された。
 さらに重要なことは、「これまでの地域改善対策の効果を測定し、同和地区の実態や国民の意識等について把握することが重要である」と明記、実態調査を行うこととしたところであります。
 同和対策は、昭和四十四年から計四度の特別立法で二十三年間進めてきた。実態調査も、昭和五十年と六十年に行ってきており、今しかるべき時期に全国的規模の調査が必要であるとしたことは、部落の完全解放に向けて総合的かつ抜本的施策のための基礎を明確にすると位置づけたところであります。
 もう一点は、「これらのこと(実態調査の内容、調査結果の客観性を保障できる実施体制)や今後の地域改善対策のあり方について審議する機関が引き続き必要であると考える」としたところが挙げられます。審議機関の設置を明記しているわけであります。
 協議する機関は、同和対策協議会や地域改善対策協議会を見てもおおむね政策方針の枠内での議論にとどまるが、審議する機関はそのハードルを越えたものであることは、各種審議会を見れば明らかであります。
 地対協の委員二十名のうち十名は政府の事務次官。仮谷知事の孤軍奮闘、県民の声を、部落大衆の願いを一人で背負って頑張っていただきました。今まさに痛感するところでございます。一般行政への円滑な移行、最後の法という路線のしがらみから、県民の声を、部落大衆の願いを代表して、地対協の委員として、「今、同和対策事業を打ち切ることは我が和歌山県においては許すことはできません」と声を大にして仮谷知事が発言された。大きな役割を果たしていただきました。心より仮谷知事にお礼を申し上げます。
 また、参議院の前田勲男先生、橋本進委員長を先頭に県議会の皆さんには数度となく熱心に上京され、陳情を重ねていただきました。そのことがあったればこそ、今日の実のある地対協の意見具申だったと言えます。我が和歌山県が果たした役割は大であります。全国の兄弟に成りかわり、仮谷知事、県議会の皆様に心より厚くお礼を申し上げます。
 お礼を申し上げて、ここで終わればいいわけですが、そうはまいりません。少し知事に質問をいたします。
 「法的措置が必要」「実態調査を行う」「審議機関の設置」、このように意見具申が出されました。それを受けて前田勲男先生にも大いに頑張っていただき、政府の大綱が出され、二月十四日、政府閣議決定をされ、五年の延長が決まったと聞きます。
 だが内容は、若干私には不十分なところがあります。二月十四日の閣議決定は地対財特法の単純延長のみと聞くわけでございます。実態調査の問題、審議機関設置の問題が置き去りになっているように聞くわけですが、意見具申を出された地対協の委員として知事はどのように考えておられるのか、お聞きをしたいと思います。
 また、三月三十一日、法制定までに実態調査、審議機関の設置等について再度のご苦労をお願いしたいと思いますが、いかがなものでしょうか。
 先般、三月二日、三日と京都に行ってまいりました。「人の世に熱あれ、人間に光あれ」と、大正十一年三月三日、京都の岡崎公会堂で全国水平社が創立されて、七十年を迎えた記念行事がありました。そこに参加することができました。
 歴史は、過去を振り返るという意味を持ち、その過去は現在の時点から振り返り、現在の時点から振り返るということは、未来をどう切り開くかという観点から歴史を探るということであります。全国水平社の歴史と伝統は今日の運動にさん然と輝いており、水平社の思想は今日もなお我々の心をとらえ、複雑に展開される今日の社会運動の道を切り開いていく上で大変大きな理論的根拠となっています。
 水平社の思想は、水平社宣言の中に多く見ることができます。私も部落問題に取り組む一人として、現在の同和行政のあり方、また頻繁に起きる差別事件の現状を見たとき、部落問題の原点、水平社創立の思想を今さらながらに再確認したところであります。
 宣言の文章の中に、次のような言葉があります。「長い間虐められて来た兄弟よ、過去半世紀間に種々なる方法と、多くの人々とによってなされた吾等の為めの運動が、何等の有難い効果を齎らさなかった事実は、夫等のすべてが吾々によって、また他の人々によって毎に人間を冒涜されてゐた罰であったのだ」。差別に対して闘わなかったことを「罰」という言葉を使い、また「これ等の人間を勦るかの如き運動は、かえって多くの兄弟を堕落させた事を想へば、この際吾等の中より人間を尊敬する事によって自ら解放せんとする者の集團運動を起せるは、寧ろ必然である」、こう書かれております。
 人間は、支配と被支配、差別と被差別という関係で存在すべきものではない、どこまでも尊敬されるべきもの、尊敬し合うべきもの、こういう生命のとうとさ、人間生存の尊厳性を水平社は高らかにうたっています。
 差別と闘わないことの罰とは、当然のことながら、差別と闘うということになります。その闘い方は、差別を改めさすということであります。幾多の先輩が牢獄につながれ、官権に弾圧され、あるいはその日の生活に事欠くようなことがあっても、水平社の精神を持って犠牲を払いながら闘ってきた先輩の努力の成果が今日の国民的な運動の高まりとなったことを評価しなくてはなりません。
 また、「人間を勦るかの如き運動は、かえって多くの兄弟を堕落させた事を想へば」との表現は、我々に対して単なるいたわりの言葉をかけてもらうようなことでこの運動を終結させるという気持ちは断じてありません、要するに、部落の完全解放を目指して、決して中途半端な気持ちではなく、どんなに苦しい状況があろうとも、強烈な人間的なエネルギーを持って部落の完全解放に向かわなくてはなりません、こう言っております。
 もう一つは、こういう話もありました。明治維新は一八六八年です。その翌年、一八六九年に士農工商の身分制度が廃止になりました。だが、華族、士族、平民となったわけです。
 明治四年八月二十八日、太政官布告六十一号の「穢多、非人の称を廃する」というおふれがありました。いわゆる身分解放令です。部落大衆は喜び、各部落で祝ったそうです。だが、そのとき、奈良県の御所のある村で農民が「穢多、非人の身分を廃止するのはまだ早過ぎる。五万日の日延べだ」と言ったそうです。これが俗にいう五万日の延期のデマです。
 徳川幕府三百年、人間外の人間として疎外され、やっと明治維新、おくれはしたが、「新平民」という名がつこうが、人間として認めてもらえる、だが、また五万日の日延べとは──だれもが気の遠くなるような日数だったわけであります。
 それでは、明治四年八月二十八日から五万日たったその日はいつか、暇な人もいて数えたそうであります。そうすると、西暦二〇〇八年七月二十日が五万日目の日になるそうでございます。五万日とは百三十七年になります。二〇〇八年七月二十日まであと何年か、今から十七年と数カ月しかないわけであります。そのことを考えると、五万日の日延べはデマではなく本当だったんかなと、今さらながらに考えさせられます。また、何としても真に部落の解放を一日も早く達成したいと考えます。
 人間というものが平等を求めていく、自由を求めていくには、長い苦しい闘いに耐え抜いていかなければなりません。その耐え抜いていくことのみが新たな展望を切り開いていく道でありエネルギーであることを、この水平社七十年の歴史を見て感じました。
 そこで、今まさに同和行政の完成に向かって大きな役割を持つ現状を見て、今何をしなければならないのか、今どの方向に向かって進むべきかを問うところであります。
 知事には、大変なご苦労をかけました。またあと一歩、大変な役割を果たしていただきますよう心からお願いするところでございます。
 そこで、具体的に二、三点、関係部長に質問をいたします。
 まず一つは、さきにも述べましたように、我々は事業が目的ではありません。部落差別をなくしていただきたい、これが我々の目的であります。そのことを考えたとき、地対財特法五年の延長ですべての部落差別はなくなるのだろうか。だが、私も民生部長も、五年でなくす、差別を取り除いてみせる、その気持ちで頑張ることが私たちの役割だと思っております。
 それでは、具体的にハード、ソフト両面がありますが、ハードの事業面を考えてみても、当初、我が県においては二百四十五億の残事業と言われておりました。昨年九月末、政府が事業省庁、農林、建設、厚生、自治省、文部省で再度の残事業調査をいたしました。三千八百八十五億だそうです。我が和歌山県は六百億弱の残事業があると言われておりますし、また県下の実態調査を進めるということになれば、必然的に事業もふえると考えます。五カ年で、三カ年で完全実施ができるのかどうか、民生部長のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
 次に、特に住宅地区改良事業を二十三年間進めてきたが、今新たな問題が起きております。御坊市における島団地であります。住宅の老朽化が進み、スラム化の現状にあり、建てかえ事業約五十億と言われるがどう対応するのか。また、大型都市・和歌山市の残事業は二百億とも三百億とも言われるが、都市計画事業、街路事業とあわせて新たな計画の方向を示さなくてはならないと思うがどうか、土木部長の答弁をいただきたい。
 意見具申にも出ている個人給付的事業の資格審査の徹底でありますが、今進めようとしている部内での見直しに関して、先般、私の方にも「運転免許を取るのに総合センターへ申し込みに行ったら、今年度から受付をしないと言う。先生なぜよ」という電話がありました。確かに、個人給付的事業の見直しは必要なことだと思いますが、ゼロか一〇〇かといったことではなく、血の通ったまごころ県政、年次計画をもって進めていけないのか。技能取得における県下の件数は年間三百五十件程度と聞きますが、ことしは半分に、また来年は一〇〇に、次は五〇にと、必要なものを見直す、それが必要と思いますし、また他の事業もそうした対応はできないのか。ゼロか一〇〇かでは余りにもと考えますが、どうですか。
 次に、同和関係の就労については、労働力需給関係の逼迫に伴い、引き続き改善され、より安定した就労ができるよう、学力の向上、技能の習得等を推進していくことが重要である、また、同和関係者の就職の機会均等を確保するために、企業に対して応募者の適性と能力のみに基づく公正な採用、選考システムを確立するよう啓発指導に一層取り組んでいくことが大切、こう地対協意見具申で述べております。
 同和対策が二十三年間過ぎた中、昭和六十三年度の実態調査の中にも、常時雇用労働者の県平均が六八・二%、地区では六二・五%、不安定就労者は県平均が八・二%、地区では一四・六%と、今もなお大きな格差があり、特に今日重要なソフト、就労、就職は安定した生活を営む上で大変重要なことであります。商工労働部長として早急に二十三年の総括と今後の方向を示していただきたい。
 次に、地対協の意見具申の内容は、こういった積極面だけではなく否定面も多く見られるわけでございます。その根底では、融和思想を人権擁護行政で温存している部分も数多く見られ、同和対策審議会答申の指摘する「国の責務」「国民的課題」を棚に上げ、「同和関係者の自立向上の精神の涵養」と、部落責任論を主張しているところであります。
 また、「公正中立」という言葉はよく使いますが、中立とはいかようにも解釈できる中立であって、公正中立を差別者に味方するための方便として利用されてはならないわけであります。
 本年一月に「おかっぴき(目明かし)は悪がなり」「同和がおかっぴきをしていた」「女性はおどしとだましに弱い」など、部落や女性への偏見を書き連ねた手書きの差別ビラが福岡、大分、佐賀の各県で三千枚以上、団地や住宅の郵便受けに投げ入れられていた。差別ビラを配布したのは福岡県職員N(五十二歳)で、二月六日、明らかになったわけでございます。
 福岡県では、昨年だけで講演、映画、ビデオなどを使い千三百五十七回、職員一人当たり平均一・六回の研修を行い、この職員も研修を受けていたそうであります。
 また、本県においても、悪質な差別電話、差別落書きも多く発生しております。特に今日、有識者、住民の代表たる議会議員が「公的機関」「公正中立」に名をかりて部落差別を温存助長する発言が出ています。今まさに新たな対応をしなければならない現状であり、研修のあり方について、部落問題の本質を忘れた、同和対策事業の推進のみに走り部落問題の本質を理解さす初心を忘れた研修になっていないかと危惧するところです。県民啓発のあり方を考え、方向を示していただきたい。
 また、大阪府では、昭和六十年三月二十七日、大阪府部落差別事象に係る調査等の規制等に関する条例が制定されました。我が和歌山県も研究されていると聞くが、どのような経過になっているのか、対応を示されたい。
 最後に、同和行政を総括する意味で副知事に質問をしたいと思います。
 昭和三十八年九月四日に、和歌山県同和総合対策協議会ができました。また昭和五十二年八月二十日に、和歌山県同和対策協議会が設置されております。この二つの団体は一つでございまして、名称の変更をしたそうです。
 目的は、同和問題の早期かつ根本的解決を図るため、各部局に同和行政を明確に位置づけ、有機的かつ計画的に強力な実施を図るために必要な連絡調整を行うことを目的とすると書かれております。会長は副知事、委員は各部長で結成されているそうです。
 今まさに同和行政が完成に向かって歩む中、大変重要な役割を持つ機関と考えます。県同和対策協議会として、各部局内の連絡調整、また六十二年の県同和対策総合推進計画の策定、今回の平成三年五月の協議会の報告書等、ときどきに重要な役割を果たし、県下五十市町村の手引となっていることも事実であります。
 そこで、副知事、昭和六十二年の総合推進計画を出してから五年を経過いたしました。今まさに、和歌山県同和対策総合推進計画に基づく総括と方向が大変重要と考えます。平成三年五月の報告書は一定の総括と方向を示しておりますが、今また現状の変化があり、総括をしなければと考えます。決意をお示しいただきたい。
 また、協議会の事務局は同和室であります。法的措置五年とした今日、なお早期に、よりきめ細かい県民のための対策が必要と考えます。本年当初予算の中にも、より充実した中核的民生部同和室の人材確保のための職員の十人増が織り込まれておらないが、副知事として、部落解放早期達成のための民生部同和室の充実についてご所見をお聞かせ願いたい。
 次に、暴力団対策にかかわって県警の本部長に質問をいたします。
 昨年の五月、暴力団対策法が成立いたしました。本年三月一日より暴力団対策法、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律が施行されました。
 今、全国で約三千三百団体、約八万八千三百人の暴力団員がいると言われております。また、県下では五十九団体、七百六十人いるそうです。一昨年の六月、大阪でNTTの職員が、家を間違えて入ってきた暴力団員にけん銃で撃たれて死亡したという事件も我々の記憶に新しいところですし、また沖縄では暴力団の対立抗争で警察官が二人殉職された事件も心にとめるところです。
 暴力団の対立抗争は、昭和六十年の山口組と一和会との大規模な対立抗争事件により、発生回数二百九十三回、死者三十二名、負傷者七十九名、発砲事件三百二十六件であります。五年経過した平成二年でも、対立抗争発生回数は百四十六回で、発砲事件も二百五十五件あります。また、この間、一般の人の巻き添え被害については十一件あり、うち死者三名を数えています。
 すなわち、暴力団は、自己の目的達成のためには手段を選ばず、公然と凶悪な行為を繰り返し、いつ一般市民が巻き添えに遭うかもわからないという危険と隣り合わせで生活をしていると言っても過言ではありません。県内でも発砲事件も数回あったわけですし、実感として県民の生活の危険を感じるところであります。
 もう一つは、最近の暴力団は民事介入暴力というのが非常にふえてきた。例えば、ばくちをしたり覚せい剤などを扱う。これらは県民がかかわりを持たなければ害がなかったわけですが、最近は一般の市民生活の中に土足でどかどかと入ってきてしまう。犯罪の一歩手前、グレーゾーンで資金かせぎをする民事介入暴力が非常にふえてきている。
 こうした背景で今回の暴力団対策法が制定されたわけですが、この法律の内容は、一つは目的、二つは指定暴力団の指定、三つ目は暴力的要求行為の規制十一項、四つは対立抗争時の事務所の使用制限その他の規制、五つは暴力追放運動推進センターの設置等、五つの柱でつくられております。目的は、暴力団の根絶、暴力団の排除だと考えます。
 そこで、本年三月一日、暴力団新法施行に向け、各報道はいろいろと我々に教えてくれました。「平成四年一月三十日、午後二時、東京赤坂の外堀通りにダークグレーや白のベンツが次々ととまった。高級外車の列は二重三重に膨れ上がり、パンチパーマや丸刈りで紺のスーツ姿、いかつい男たちが車からおり、無言で中華料理店に消えた」、これは暴力団の暴力団対策法の施行に備えた勉強会の一こまであります。テレビでも報道されました。
 「新法は結社の自由など憲法違反」であるとか、また指定暴力団の適用範囲内に該当しないよう、組員の絶縁破門、組事務所を会社組織に変更、右翼など政治団体への偽装、日用品雑貨の協同組合設立など、あの手この手と手をかえ品をかえてきております。
 そこで、県警も捜査二課内に六十人体制で暴力団取締特別対策本部を設置されたわけですが、三月一日より十日を経過いたしました。今日まで暴力団の検挙はあったのか、また現状はどうか、お答えを願いたいと思います。
 次に、県内暴力団五十九団体の指定暴力団の指定はどのようになっているのか、彼らは法廷に持ち込む等とも言っているがそのようなこともあるのか、お答えを願いたいと思います。
 また、県民が一番危惧するところは、県内の暴力団は現在五十九団体、組員七百六十人、うち九五%が山口組系と県警は現状を把握され、七百六十人の名前まで実態を把握されていると思います。だが、この新法施行によって暴力団が消えてしまう。地下に隠れる。アンタッチャブル。より陰険な凶悪な事件が起こりはしないか。今までは「何々組」と看板をかけ、「何々組の者だ」と言っていた暴力団が、日用雑貨店の店員、○○会社の社員となると、県警として実態をつかめるのかどうか。より県民は陰の暴力におびえる日々の生活になりはしないかと考えますが、どうか。
 暴力団を根絶し排除する取り組みは、大変大切なことと考えます。だが、暴力団対策法ですべてとは考えられないと思います。警察は徹底して取り締まりを行うとともに、社会の中に深く根差す暴力団の存在とその活動に対して、暴力団を社会的に孤立化させ、彼らが社会の中に存在し得ない環境、条件づくりをしていくことが必要です。
 そのためには、民間、自治体、警察が一体となって暴力団排除活動を通常的に展開されることが必要と思います。先般も和歌山県暴力追放運動推進センター準備会が発足し、官民一体となった暴力団追放運動を推進する団体が近々できると聞きますが、正直者がばかを見る、県民が正義をもって取り組んでも被害に遭う、そういうことのないようにしなくてはなりません。
 そのためには、県下の各自治体、市や町や村で暴力追放運動推進センターを支える組織づくり、また、建設業界、不動産業界、経済界、商工会等あらゆる業界にも、そうした県民ぐるみの暴力団排除活動が今こそ必要と考えますが、県警としての取り組みの方向を聞かせていただきたい。
 また、これは一番大切なことと思いますが、人材の確保であります。花火を上げたように、初めはいいが後になるとしりすぼみになりはしないか。六十人体制で対策本部を設置、知能、暴力、また特に今後多くなってくるであろう薬物捜査、これに精通した捜査員で組織し、資金源につながる犯罪を徹底的に検挙する、こう言われておりますが、いつまで続くのか。私は、根強く、また精通した捜査員がなければ、人材、人員がなければ真の暴力団追放にならないと思います。平成四年度の予算を見てもそんなに特出した人員確保になっていないと考えるが、県警本部長としてどう考えるのか、ご答弁をいただきたい。
 以上をもって、第一回目の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
○議長(山本 一君) ただいまの松本貞次君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 松本議員にお答え申し上げます。
 地対協の意見具申の中で、地対財特法失効後の方策について、法的措置を含めた適切な措置、実態調査、審議機関の設置が必要であるとの三点が盛り込まれた。これについての知事の考え方はどうかということでございます。私は一応満足してございまして、今後の同和問題解決の三本柱であると考えているわけでございます。
 今日の法改正に至ったのは、松本議員からも話ございましたように、県議会、特に同和対策特別委員会の皆さんのたび重なる行動、また前田議員には中央で頑張っていただくなど本県選出の国会議員の皆さんの努力によるものであり、今日の法改正に至った点で和歌山県の果たした役割は非常に大きいのではないかと思っているところでございます。
 今後の取り組みについては、現在、国会において法改正の一部が審議されているところでございますけれども、調査の実施の問題、審議機関の設置等について今後とも積極的に努力してまいりたいと思っているところでございます。
○議長(山本 一君) 副知事西口 勇君。
 〔西口 勇君、登壇〕
○副知事(西口 勇君) 同和対策協議会、いわゆる同対協の総括と方向についてでございます。
 松本議員ご指摘のとおり、本県の同和問題の早期かつ根本的な解決を図るために必要な連絡調査を行う機関として、同和対策協議会を設置しているところでございます。
 昭和六十二年に策定した同和対策総合推進計画の総括を含め、法制定後二十三年間の成果と課題の取りまとめをしているところでございます。このこととあわせ、今回の地対協の意見具申、あるいは国の実態調査の結果を見て、新たな視点に立って、同対協としても問題解決に向けて積極的に取り組んでまいります。
 また事務局の体制については、諸情勢を勘案しながら適切に対応してまいりたいと考えております。よろしくお願いいたします。
 以上であります。
○議長(山本 一君) 民生部長吉井清純君。
 〔吉井清純君、登壇〕
○民生部長(吉井清純君) 残事業実施の見通しについてお答えをいたしたいと思います。
 議員ご承知のとおり、現在提案されている法案の延長期間は五年となっておりますが、国の物的事業量調査による本県の残事業消化については、この期間を期待することなく進行管理を行い、一年でも早く完成できるよう一層の努力をいたす所存でございます。
 なお、国の実態調査が行われた際には、県内の同和地区の現状や課題について十分な対応ができるよう努めていきたいと考えてございます。
 次に、個人給付事業についてお答えをいたしたいと思います。
 昭和六十一年に和歌山県における今後の同和対策に関する基本方針を定め、個人給付事業については住民の自立及び教育水準の促進に寄与するものに限ることとし、技能等修取得資金については就労対策として現在まで実施してきたところでございます。
 今回の方針としては、各種学校等、就労に直接結びつき、かつ生活向上を図れるものについては引き続き対応し実施するものでありますので、ご理解をいただきたいと存じます。
 次に、差別事件の取り組みについてお答えをいたします。
 本県では、同和問題解決のため最も重要な課題として、そのときどきに応じた県民啓発や教育を推進してきたところでございます。特に、最近の国際、国内の人権思想の高まりの中で、平成元年に実施した県民意識調査の結果を見ましても、同和対策事業に対する県民の理解や人権意識の高揚が確かに見られるところでございます。
 しかしながら、一方、同和対策事業の推進に伴って、ねたみ意識や理解不足のための問題発言、また議員ご指摘のような差別事件が本県においても発生していることは極めて遺憾であります。
 したがって、今後とも、同和問題の正しい理解と認識をより深めていただくための県民啓発のあり方について、その内容や方法等に一層の工夫を凝らしてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(山本 一君) 土木部長山田 功君。
 〔山田 功君、登壇〕
○土木部長(山田 功君) お答えを申し上げます。
 まず、御坊市島団地の環境整備については、重要な課題であり、ぜひ解決をしなければならないものと考えております。事業主体である御坊市において新たに島団地対策室を設置し、本格的に住環境整備等に取り組むことになっておりますので、県としてもこれらの推移を見守りながら対応してまいりたいと存じます。
 次に、和歌山市における街路事業でございます。
 和歌山市における地域改善対策事業としての街路事業は、県事業湊神前線、市事業本町和歌浦線の継続二路線がございます。これらの関連する公共施設事業の整備については、和歌山市とも連携しつつ、地元の皆様の協力を得て、今後五年以内に、それもできるだけ早く事業が完成するように努力をしてまいります。
 以上でございます。
○議長(山本 一君) 総務部長山中昭栄君。
 〔山中昭栄君、登壇〕
○総務部長(山中昭栄君) 差別事件の取り組みに関するご質問でございます。
 まず県職員に対する同和研修については、これまで全職員を対象に同和特別研修を毎年実施しているほか、職員研修所における各種研修、各職場単位で実施をする職場研修等に同和問題を積極的に取り入れるなど、さまざまな機会をとらえてその充実に努めてきているところでございます。
 特に同和特別研修については、本年度で十九回目となりますが、毎年、同和問題の基本についての理解、認識を深めるための研修、同和問題に対する行政の対応についての研修、具体的な事例による研修などを反復、継続して実施してきたところでございます。
 今後とも、こうした研修がその場限りのものに終わっていないかどうかその効果を見きわめ、さらに議員ご指摘の点も踏まえながら、内容、方法等を検討し、同和問題の完全解決に向けて、県職員としての行政責務を自覚し県民の先頭に立って実践活動を推進していくため、さらに一層同和研修の充実に努めてまいりたいと考えております。
 次に、興信所、探偵社による身元調査に対する条例による法的規制についてでございます。
 昭和六十二年にプライバシー保護研究会を設置し、法的な側面からの問題点の整理を行ってきたところでございます。研究会では、部落差別は個人の尊厳を否定する悪質な行為であり、かかる部落差別につながるような身元調査は絶対に許されるべきではないという基本認識のもとに種々の検討を重ねられたところでございますが、条例による法的規制については、その地域的効力との関係等、法的には問題点があるという意見が出されております。こうしたことから、現在、興信所、探偵社等による部落差別につながるような悪質な身元調査をなくすための対応策について、県同和対策協議会の総合課題検討部会で協議を進めているところでございます。
 また、差別につながるような興信所、探偵社等による身元調査をなくすためには、こうした仕事に携わっている人たちに高い人権意識を持ってもらうための啓発活動も大切であります。このため、これまでも実施した興信所、探偵社の方々を対象とした研修会を今月末にも実施することとしております。今後とも、粘り強い啓発活動を進めてまいりたいと考えております。
○議長(山本 一君) 商工労働部長中西伸雄君。
 〔中西伸雄君、登壇〕
○商工労働部長(中西伸雄君) 就労対策の今日までの成果と今後の具体的な取り組みについてでございます。
 同和問題を解決するためには地区住民の経済的基盤を確立することが重要であり、積極的に雇用対策を推進しているところであります。具体的には、企業内同和問題研修推進員の設置や職業安定所での啓発指導を行っているところでございます。また、教育関係と連携のもとに、新規学校卒業者の就職の促進に取り組んでございます。さらに、職業訓練、職場適応訓練の実施、同和担当職業相談員の設置、隣保館との連携による職業相談等を行ってございます。
 こういった取り組みにより、地区生徒の大規模企業への就職率の向上や中高年齢者の雇用の促進が図られるなど、一定の成果があったと考えてございます。
 しかしながら、議員ご指摘のとおり、県の平均から見て中高年齢者の不安定就労者の割合が高いなどの状況にかんがみ、今後についても地対協の意見具申、大綱並びに本県の地域性及び実情を勘案し、さらに地区住民の雇用の促進と職業の安定が図れるように努力してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(山本 一君) 警察本部長中長昌一君。
 〔中長昌一君、登壇〕
○警察本部長(中長昌一君) 暴力団の取り締まりに関するご質問にお答えを申し上げます。
 まず、暴力団対策法が施行された本年三月一日以降における暴力団の検挙状況についてでありますが、警察本部内の六十名を含めた総勢三百二十名による特別体制により暴力団の取り締まりに努めているところであり、三月一日以降昨日までに、暴力団組長を含む合計十五名を入札妨害罪、恐喝罪、詐欺罪等により検挙しているところであります。
 次に、指定暴力団の指定についてのご質問でありますが、まず全国警察を挙げて、いわゆる寡占化の著しい警察庁重点対象団体である山口組、稲川会及び住吉会の三団体を最重点として指定を行い、これにあわせて各都道府県において特に重要な団体として指定を急ぐ必要のある団体、京都の会津小鉄会、山口の合田一家、広島の共政会等でありますが、これらについて指定を進めることとしております。
 また、重点対象三団体の傘下団体──当県の暴力団のほとんどは山口組の傘下団体でありますが──については、特に悪質なもので指定の必要性、緊急性の高いものについて逐次指定を進めることとしております。
 また、暴力団を指定暴力団として指定をしようとする場合の手続についてでありますが、指定をしようとする公安委員会において対象暴力団に対する聴聞を行うとともに、国家公安委員会にその暴力団が指定暴力団の要件に該当することの確認を求めることとされております。そして、国家公安委員会が審査専門委員の意見を聞いた上で指定の要件に当たる旨を確認すれば、公安委員会において一定の事項を官報に公示して指定することとなるわけであります。
 この指定に対しては、暴力団の側で不服があれば国家公安委員会に対する不服審査請求、さらには行政訴訟として裁判所へ指定の取り消しの訴えも起こすこともできることになりますが、指定の効力は、所定の手続にのっとって公安委員会が指定を公示したその時点で発生することになります。
 次に暴力団の実態把握についてでありますが、法の施行に伴い、暴力団の中には、組事務所の看板の撤去はもとより、組事務所所在地において株式会社の設立登記等を行うなどのいわゆる偽装工作を行うものも出てきていることは事実でありまして、県警としても、現段階においてそのような事実を幾つか把握しております。今後とも、暴力団の偽装工作を確実に見抜くよう、暴力団の活動実態の掌握に努めてまいりたいと考えております。
 また暴力団は、いかに地下への潜行を試みたとしても、資金獲得活動を行う過程において何らかの違法または不当な行為を行うものでありますから、県警としては、県民のご協力をいただきながら、暴力団の実態把握と違法、不当な活動に対する取り締まりを強力に進めてまいりたいと考えております。
 次に、県民総ぐるみの暴力団排除活動に対する取り組みについてのご質問でありますが、ご指摘のとおり、暴力団を壊滅させるためには、徹底した取り締まりとともに県民総ぐるみの暴力団排除活動が活発に行われることがぜひとも必要でありまして、近々設立を予定されている財団法人和歌山県暴力団追放県民センターが民間の各種暴力団排除団体、県、市町村等の行政機関と連携をして、県民総ぐるみの暴力団排除活動の文字どおりセンターとなることを期待しております。
 県警としても、この暴追センターを全面的に支援し、またセンターと連携しながら暴力団排除活動を進めてまいりたいと考えております。
 とりわけ、ご指摘のように、このような活動における市町村レベルの暴排組織の役割には大変大きなものがあるわけでありまして、警察としても今後各市町村に対する働きかけを強めるなどしてまいりたいと考えております。
 最後に人材確保に関するご質問についてでありますが、暴力団取り締まりの徹底を期すため、県警察としては、暴力団対策法の施行に合わせて暴力団犯罪捜査、薬物事犯捜査、知能犯捜査等に精通した捜査員等により構成した総員三百二十名の特別体制を編成し、粘り強い取り締まりと暴力団排除活動を推進している次第であります。
 また、議員ご指摘のとおり、暴力団対策をさらに強力に推進していくためには人材の確保が重要であります。したがって、今後とも必要な要員を確保するため、その必要性等について、警察庁はもとより各方面に対してご理解をいただくよう粘り強く訴えてまいる所存であります。ご支援をお願いいたします。
 以上でございます。
○議長(山本 一君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 36番松本貞次君。
○松本貞次君 一点だけ、県警の本部長に要望をしておきます。
 今回の暴力団新法は、官民一体となった取り組みがまず重要であり、必要なことだと思います。県民は、今日まで、交通事故の示談、賛助金の要求、みかじめ料の要求、不動産業者の地上げ等々、大小にかかわらず被害を受けたわけであります。だが、警察は、刑法に基づく取り締まりしかできなかった。県民の訴えを、「事が起きれば」「事件が起きれば」という形でしか対応ができなかったわけであります。県民は、警察に対して、この暴力団対策において不信を抱いているということをまず県警は謙虚に受けとめなければならない、こう思うところであります。
 今回の暴力団新法についても、県警の意気込みを見せなければ県民の理解は得られない、こう考えるところです。いわゆる県民センターに依存することなく、県警みずからが暴力団を根絶する、その姿勢を県民に示さなくては県民の理解と協力はあり得ないと思います。
 そのためには、暴力団追放運動推進センターの役割は大でありますが、それを支える五十市町村の自治体すべてに、町民ぐるみの草の根のような、その町、その村で、小さなことにも対応できる暴力団排除活動が非常に大切であると考えます。早期に所管の署長に要請し、各団体、各首長に対しての積極的な働きかけを強く願うところでございます。
 また、関西新空港に伴う国際化、交通事情の状況等々により警察官の業務は多忙だと思うわけでございます。現在の業務による県内の警察官の仕事ぶりは、県民こぞって敬意を表するところであります。県民の生命と財産を守るため、その務めを精いっぱい果たしております。
 だが、今回の暴力団新法によって、新たな仕事、新たな業務が生まれたわけであります。本部長の言う三百二十名体制は、現状の警察の中での異動、配置になっているわけで、他の業務へのしわ寄せにしかすぎないと考えるところです。暴力団対策法の完全な遂行は人材、人員の確保なくしてあり得ないと考えますし、県警本部長として警視庁へ提言し、本県の警察官の定数改正をし、人員を増員することが肝要だと考えるところです。
 新法ができ、新しい仕事に対応する人員確保、こうした姿勢を示せば、県警は真に暴力団の根絶に向かっている、本気やなと、一つのあらわれを見てそう県民が受けとめると考えるところです。ぜひ、本部長の熱意を期待して、強く要望して質問を終わらせていただきます。
○議長(山本 一君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で松本貞次君の質問が終了いたしました。

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