平成4年2月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(堀本隆男議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 午後一時三分再開
○副議長(平越孝哉君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
○副議長(平越孝哉君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 27番堀本隆男君。
 〔堀本隆男君、登壇〕(拍手)
○堀本隆男君 先輩議員、同僚議員のご配慮に感謝申し上げて質問に入りたいと存じますが、その前に、去る十二月議会で自由民主党県議団から要望いたしました市町村負担金の軽減について、当局におかれては積極的に対応され、平成四年度で約十三億三千万円の軽減措置を図っていただきましたが、管内市町村長の喜びはまことに大きく、非常に感謝されましたことをご報告申し上げます。ありがとうございました。
 まず初めに、日米交流の歴史についての質問をいたしたいと存じます。
 東京で「日本とアメリカの交流が始まったのはいつですか」と質問いたしますと、大抵の人は、一八五三年にペリー提督が浦賀に黒船四隻でやってきたときから交流の歴史が始まったと答えます。なぜかと申しますと、我々日本人は歴史教科書でそのように教えられたからであります。ところが、アメリカの多くの歴史書には、ペリー提督の来日より六十二年前の一七九一年に日本へ最初に行ったアメリカ人としてケンドリックの名が、また最初の船としてレディー・ワシントン号の名が挙げられております。本年は、数えてちょうど二百一年目に当たるのであります。
 田辺市在住の郷土の作家で日本ペンクラブ会員であり本県の文化奨励賞を受けられた佐山和夫氏のノンフィクション小説「わが名はケンドリック」は、レディー・ワシントン号が何のために日本にやってきた、なぜ日本史にその事実が記載されなかったのか、一気に読ませてくれます。佐山さんは、「南紀徳川史」を調べ、日本の歴史を調べ、そしてアメリカへ渡ってレディー・ワシントン号とケンドリック船長を克明に調べているのであります。
 かいつまんで紹介しますと、アメリカ合衆国独立後、国力増強のため貿易振興に力を入れる政府は、中国との貿易を目指した。五人の大商人たちが出資して二隻の船、レディー・ワシントン号とコロンビア号を編成した。時の国務長官で後に第三代大統領となったトマス・ジェファソンが特に力を入れ、国の代表としての資格、つまり国会はこれらの船にプライバティアの免許証を与え、マサチューセッツ州がパスポートを発行したのであります。プライバティアというのは、商船であると同時に敵国船舶の拿捕も認可され、大砲を積んでおりました。その船長で隊長がケンドリックであります。アメリカを代表する船として南米のホーン岬を回り、北上してカナダに到着し、貿易品であるラッコの毛皮をインディアンから仕入れ、ハワイ島に渡り、中国香港に至る数年をかけての命を張った壮大な旅に出発したのであります。ワシントンが初代大統領に就任したのは、その二年後であります。
 佐山さんが調べたボストンの大商人がケンドリック船長にあてた手紙の一節に、「願わくば、貴殿と現地人との間に常に友情と協調がありますように。そして、通商において相手の無知につけ込まないこと、アメリカ人の代表として、正直な行為によりそれぞれの土地の人の心に友愛の情を植えつけるよう努力されることを祈ります」とあります。さらに、「それが得策と思えば日本に立ち寄ってください。ただし、安全と思われるのでなければ投錨しないこと」と書かれています。
 実際、彼らは中国へ行っての帰途、日本へ立ち寄ったことが乗組員の日記に、「日本の南の海岸に到着。そこで土地の人々からこの上ない歓迎を受けた。船上にアメリカ国旗が翻ったのはこの国では最初であろう」云々とあります。十一日間ここに停泊し、島民に食事や酒をごちそうしており、ケンドリック船長は、一枚の紙に国名、母港名、船名、船長名を書き残し、地元民がそれを書き写したものが今も残されております。事実、「南紀徳川史」には「大島樫野浦沖へ異国船渡来」云々とあり、最後に、船長の舌づけには「アメリカ合衆国、ニューイングランド地方、ボストンのブリック型帆船『レディー・ワシントン号』、船長ジョン・ケンドリック」と残されております。
 なお、串本町史編さん委員の浜健吾氏の著書「紀伊大島」にも米船本邦初寄港として詳しく述べているところであります。
 では、なぜ日本の歴史の上でこのことが書かれなかったのか。「南紀徳川史」に、彼らは「たまたま風浪に遭い、漂流してここに着いた。いい風が来れば即日去るつもりだ」と伝えており、つまり「漂着した」としか残されていないのであります。ですから、文部省の教科書に載らないのであります。果たして、そうでありましょうか。佐山さんは、レディー・ワシントン号の母港ボストンを訪れて驚いた。ケンドリック船長の直筆の手紙のみならず、その他の多くの資料が残されており、その結果を総合しますと、漂流はあくまで口実であって、鎖国中の日本へ着いて住民の警戒心を取り除くための方便であり、彼らが通商を目的として日本へ行くことは最初の計画の中に既にあるのであります。
 時間がありませんのでその他のことを省きますが、現在、ケンドリック船長のふるさとウエアハムの町には、彼の家がそのままケンドリック記念館として保存されております。さらに、アメリカではこの事実が重要に考えられており、ワシントン州アバディーン市では、州から百万ドル、市から五十万ドルを出してもらい、地元企業や一般からの寄附でレディー・ワシントン号の再建造を行ったのであります。歴史の再現で多くの観光客が集まり、沿岸各地でのフェスティバルにこの船が招かれることが多いそうであります。もっと驚いたことは、この船で昔の航路のとおり日本へ航海しようと今、計画が持ち上がっているということであります。
 さて、串本町大島樫野に日米修好記念館が昭和四十九年に建設されております。こうした史実をよくご存じの故早川代議士が歴史の称揚と観光の一助にと発案され、今は亡き故塩津六郎町長がこれにこたえたものであります。早川先生は、外務省や日米協会、アメリカ大使館を説得され、当時の資料やレディー・ワシントン号の模型をアメリカから贈呈の労をとっていただきました。たまたま私は、当時、和歌山県東京事務所に在職中でありまして、ここにおられる木下秀男県議にもいろいろお世話になったのであります。
 さて、佐山さんは毎日新聞社主催の郷土提言賞に応募し奨励賞に入選されておりますが、そのテーマは、この日米にかかわる歴史上の遺産をふるさと活性化のために未来に向かって生かすべきであると提言しているのであります。土佐中浜の漁師、ジョン万次郎がアメリカの捕鯨船に助けられて百五十年、両国国民の草の根交流を深めようとジョン万次郎の会がつくられ、国際交流の館、ジョン万ハウスが建設され、各般のセレモニーが行われております。松江市では、去年、ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)来日百周年記念事業を行い、日米の舞台芸術家がハーンを主人公にした舞台劇を作成し公演して多くのファンにこたえました。記念式や胸像、記念館がさらに充実し、松江市のみが行える事業を的確に行って、ふるさとおこしに役立てている。つまり、松江市発の文化発信であります。佐山氏は、こうした紹介を行った上で、和歌山県もしくは串本町がレディー・ワシントン号とケンドリック船長の来日という歴史的遺産を、二百周年をとらえて積極的に生かすことを提言されております。
 そこで、お尋ねいたします。
 一つは、既に発刊された「和歌山県史 近世編」にはレディー・ワシントン号来県の記事が記載されておりませんが、このことについてどのような考えを持っておられるか。
 二つは、このようなアメリカ商船が日本の大島に来日し、交渉を持とうとした史実を歴史教科書に取り上げてもらうようにするにはどのような方途が考えられるか、教育長にお尋ねいたします。
 先ほどの郷土史家浜健吾氏は、「今まで、地方の歴史が中央に通じていない。ゆがんでいる。もっと地方の歴史を大切にして、中央の歴史をまとめ直す必要がある」と指摘しております。
 なお、去る三月五日、串本中学校育友会会長矢倉甚兵衛氏らが中心となって町議会議長に、社会科等の教科書に、一七九一年、和歌山県串本町大島への米国商船初来航の史実を正しく記述することを求める意見書を提出しているところであります。
 三つは、二百周年が二百一周年になってもよいので、何らかのふるさとづくりの一環に組み入れ、マサチューセッツ州と本県との姉妹州県の提携は唐突に過ぎるとして、和歌山発の文化として発信していただきたいのでありますが、いかがでありましょうか。
 最後になりましたが、ケンドリック船長の大いなる勇気と業績をたたえ、安らかな眠りを祈りたいと思います。
 次に、水産関係であります。
 絶滅のおそれのある野生動植物の国際取引を規制するワシントン条約の第八回締約国会議が去る三月二日、京都国際会館で開催され、世界から百五カ国と国際機関が参加しております。その中で、日本人にとって、特に漁業関係者に注目を集めたのが刺身のトロになるクロマグロをめぐる取引規制強化であり、日本と規制提案国のスウェーデンとの対立が決定的になったことは、皆さんご承知のとおりであります。スウェーデン政府は、西大西洋のクロマグロの取引を原則禁止の附属書一に、東大西洋分は輸出許可書が必要な附属書二に入れるよう提案していましたが、一昨日、これを取り下げました。しかし、このため、日本を初め西大西洋のクロマグロ漁は大幅に制限される見通しであります。
 ところで、現在、日本におけるクロマグロの消費量はグルメブームに乗って世界の総漁獲量三万トンの約六割、一・八万トンを世界各国から多量に輸入し、日本は世界のクロマグロをひとり占めにしていると国際社会から言われているのであります。しかし、私ども日本人にとってトロは最上の食味であり、一朝一夕にはやめられません。さらに、マグロはえ縄漁業にとっては、これを中止することは死活問題であります。
 そこで、聞くところによりますと水産庁においては、こうした国際情勢や世論の高まりを受け、将来の需要に備えてクロマグロの養殖をモデル的に行うことを決定し、平成四年度で予算計上したそうであります。そして、黒潮の流れる暖かい太平洋岸の数県、沖縄、鹿児島、高知、和歌山などに打診がなされ、そのうち水温等立地条件のよい鹿児島県でモデル事業が決まったとのことであります。和歌山県も検討に努力したようでありますが、鹿児島県に先を越されてしまった。
 このモデル事業は、養殖装置一式約四億円、補助負担内訳は国が二分の一、県が四分の一、財団法人マリノフォーラムが四分の一、つまり地元負担はゼロであり、事業の運営は地元漁業協同組合が行うというものであります。
 「とる漁業からつくる漁業へ」、これは県が常に目標とし、漁業者への合い言葉として漁業の近代化を図っているところであります。このように条件に恵まれているマグロ養殖のモデル事業を県はもっと積極的に対応して、ぜひ誘致してほしかったと思うところであります。本県は、クロマグロ養殖のパイオニアでもあります。近畿大学の大島実験場では、過去十数年の研究を積み重ね、豊富なデータも持っております。ただ残念なことは、これまでのところは赤字経営であります。しかし、聞くところによりますと、これまでの経験と研究の成果を生かすなら、短期養殖三、四年で出荷する場合は採算の見込みもつきそうだとのことであります。それだけに、打診のあった地元漁協と県のいま一歩の積極性が惜しまれてなりません。
 何よりも申し上げたいことは、このクロマグロ養殖モデル事業は先端漁業であります。うまく軌道に乗れば、本県がマグロ養殖事業のパイオニアとして、全国いや世界に名をはせるチャンスであったし、同時に、経営が収支とんとんとしても、全国から視察に来る人々が落とす経済波及効果も大きいものとなりましょう。もう一つの視点は、沖合養殖漁業へ踏み出す第一歩として本県漁業界にとって意義深いものとなる可能性が高かっただけに、本県に誘引できなかったことはまことに残念であります。
 さて私は、一月下旬、長崎県野母崎町にある大規模沖合養殖プラントを見てまいりました。串本町で養殖漁業を営む皆さんと一緒であります。湾内での養殖漁業の限界、つまり赤潮発生や海底ヘドロ堆積をいかに乗り越えていくか、養殖漁業産業の消長の岐路に立って、行き着く先は沖合養殖以外にないと思い定めての先進地視察でありました。
 長崎市からバスで約一時間、太平洋に突き出した野母崎漁協から作業船で十五分、水深三十五メートルの潮流の速い海上に巨大な養殖台船が四本のいかりで係留され浮かんでおりました。船の大きさは、長さ百十二メートル、幅三十二メートル、甲板までの高さ二メートル、波高十三メートルの台風に耐えられる構造で、船台には十八メートル掛ける十四メートルの生けす十基が二列に並んでおり、言ってみれば船底のない船であります。船の前部は機械装置と燃料タンク、後部はサイロなどえさ貯蔵庫、中心の船台の上に住居を兼ねた管理棟があり、船の真ん中を二メートルの作業車の通る通路が走り、職員二人ですべてを管理しておりました。一つの生けすには二万匹のシマアジを飼い、全自動の給餌装置をコンピューターで制御し、二十四時間の気象、海象調査が行われています。
 我が国で初めての大規模沖合養殖プラントを開発した住友金属と大洋漁業ではこれをアクアシステムと名づけ、現在、実験操業中でありました。このシステムのねらいは、一つは、沿岸部での環境汚染問題への対応とスペースの確保、二つは、養殖魚をより自然に近い味につくるということであります。この鋼鉄製の大型養殖台船は、住友金属がノルウェーのアクアシステム社から導入し、現在、アイルランドでサケの養殖等で使用されているものを日本の漁業環境に適したものにつくり上げたもので、一基約五億円、二十年間使用可能で、将来、量産体制に入ると価格は相当安くなるとのことであります。一方、大洋漁業はこれを無料で借り受け、稚魚の手当てからえさの確保、給餌、出荷販売などのソフトを担当し、年間二億円の売り上げを見込んでいるとのことであります。わかりやすく申しますと、魚をつくる工場の船といった感じです。企業側は、アクアシステムは、高生産性、作業効率のよさを実現した上で、安全と環境汚染に最大限の配慮を行っており、沖合の豊かな環境を最大限に活用し、しかも環境を損なうことのない理想的な養殖を実現しますと言っております。
 もちろん、このアクアシステムについても問題点があります。それは、一つは、沖合とはいえ、ある程度台風の直撃を避けることのできる岬の陰が望ましく、設置場所に限りがあること、二つは、アクアシステム装置一式が非常に高価格であり、個人が投資するには困難が予想されること、三つは、コスト計算等、採算性が今のところ不明であるということであります。
 しかし、この沖合養殖プラントを見て、私ども一同はすばらしいと感心した次第であります。もし、国がこのアクアシステムを構造改善事業の対象事業に取り入れてくれ、国が四分の二、県が四分の一、地元が四分の一という形であればぜひやってみたいと、皆さんは大変意欲的であります。こうした人手のかからない装置漁業は、後継者不足の対策としても有望であります。そして、聞くところによりますと、住友金属では、このアクアシステムを開発した二年前、まず最初に和歌山県に無料で貸与する条件でモデル的に運用してほしい旨、申し出をしてあったそうであります。
 地域の発展、地域の活性化とは何か。現象としてとらえると、人と物と金と情報が集まり、経済、社会、文化が活況を呈することと言われております。それをさらに現実的に突き詰めますと、産業おこしにほかなりません。高速道路を初めとするインフラの整備もそのための手段であって、私どもの努力の目標も産業の振興に尽きるわけであります。
 関西国際空港の完成とともに飛躍発展の期待の高い紀北と異なり、平地の少ない紀南の地にあって産業おこしは容易なことではありません。県におかれては燦黒潮リゾート構想を展開し、積極的にリゾート産業の誘致を図ってくれておりますが、バブル経済の崩壊もあって後退が著しく、地域の過疎化はとどめようもなく、加えて高齢化の加速と若者の流出で紀南地方の衰退は年を追って厳しく、将来に暗然たる思いであります。こうした紀南にとって海洋の活用が一つの大きな方向であることは、県の第四次長計にも明記しているところであります。沿岸沖合二百海里の漁業水域は、本県の一大資産であり資源であります。この活用こそ本県の生きていく一つの大きな方向であることは、皆さんご承知のとおりであります。
 問題点は何か。海洋をいかに現実に活用し、産業化を図るかということに尽きます。産業発展に果たす行政の資金援助の役割はまことに大きいものがあります。関空関連事業の増大で県財政事情も厳しいものと思いますが、沿岸漁業の不振にあえぐ水産業の中にあって、沖合養殖という新しい分野の開拓についてシーズを育てるという県の積極姿勢こそが今紀南で待たれる施策であり、手を差し伸べてやってほしいのであります。単に農林水産業という分野を超えて、紀南浮揚対策という地域政策の視点からとらまえた財政支援をお願いしたいのであります。一つのモデルケースがうまくいきますと、次々に沖合養殖が各地で伸びて産業として定着すると考えられます。
 そこで、お尋ねいたします。
 水産庁のマグロ養殖モデル事業が本県に誘引できなかったいきさつと、平成五年度、さらに水産庁はモデル事業を実施する意向かどうか、その際、本県はどうするか。
 次に、住友金属のアクアシステム等、沖合養殖についての県の考え方、さらにこのアクアシステムを国の補助事業に採用するよう県として水産庁に働きかけていただきたいのでありますが、いかがでありましょうか。
 次に、医療問題でお尋ねいたします。
 県土の均衡ある発展は県政究極の目標であります。その目標に向けて努力を積み重ねることが行政、政治の果たす役割であり、責任も大きいと言わざるを得ません。そして、均衡ある発展は地域開発や産業の発展のみを言うのではなく、福祉の面、医療の面においても同様のことが言えるわけであります。こうした視点から地域医療の現状について県下を検討いたしますときに、高度医療の谷間に置かれているのが串本町、すさみ町、古座町、古座川町の四町の古座保健所管内であります。
 最近のこと、串本町役場前で自転車に乗った婦人──役場職員であります──が単車に追突され、転倒して頭を強打し、脳内出血を起こし、救急車で直ちに串本病院に運ばれましたが、そこでは手術ができず、一時間以上もたって勝浦の病院へ運んで手術を行いました。しかし、今も意識不明の重体であります。もしこれが、串本町内の病院で直ちに手術ができていたらと思うのが人情であります。また、古座川奥で重篤な患者が発生しヘリコプターの出動を得て高度医療機関に運びましたが、串本にそうした医療機関があれば早急な対応が可能なわけであります。こうした事例は枚挙にいとまがありません。この古座保健所管内三万四千人の健康と命を守り、住民が安心して暮らせる医療の充実は住民の切なる願いであります。本県の地域医療計画によりますと、串本地方、古座保健所管内は串本病院と古座川病院の整備が必要であるとなっております。
 一方、田辺市周辺は、ご存じのとおり国立病院の統合移転が進んで来る七月にはオープンされ、最新の高度医療が行われ、さらに紀南総合病院の充実と相まって、その他の民間医療機関も整備が進んでおります。他方、新宮地方は、新宮市民病院を初め民間医療機関の充実が那智勝浦町にも進められているところであります。
 こうして見るとき、古座保健所管内に公的病院として国保すさみ病院、国保直営串本病院、国保古座川病院がありますが、高度医療の面において十分とは言いがたい状況にあるのであります。
 そこで、提案いたしたいのであります。
 私の独断と偏見ではありますが、串本地方に県立病院の建設をお願いいたしたいのであります。聞くところによりますと、隣の奈良県では五つの県病院を各地域に配置しており、兵庫県は十一の県病院を持ち、地域医療水準の均質化に努めているところであります。もちろん、各県の事情により医療行政の内容も異なるのは当然であります。しかし、古座保健所管内における高度医療施設の確保は、諸般の情勢から見て、公的にも民間も極めて困難なことであります。
 串本病院と古座川病院の平成二年度決算状況を見ますと、串本病院では累積欠損額は十三億四千二百万円であり、串本町の一般会計からの繰り出し金は二億二千七百万円と、相当な負担となっております。古座川病院では累積欠損額は五億七千百万円で、古座、古座川両町の一般会計からの繰り出し金はそれぞれ一億一千七百九十七万円となっております。このように、三町とも一般財源の持ち出しは財源難の中で大変な苦しみであります。病院会計の赤字に係る利息だけでも巨額となり、雪だるま式に増加したとき後世の負担をどう解消していくのか。一般財源の繰り出しはこれ以上耐えられない現状にあります。
 さらに問題は、一般財源の繰り出しに伴い、その分、社会資本整備のおくれが目立つことであります。病院を持たない町では、繰り出しのない分を道路整備の充実、産業振興に充てるなど魅力ある町づくりも進められますが、これら三町では依然として過疎化の歯どめがきかない現状にあるのも、そればかりとは言えませんが、住みよい豊かな町づくりのための予算にゆとりがないこともその一因と考えたくなるのであります。
 自治省では、こうした実態を踏まえ、平成四年度の地方交付税の中で約一千億円の国民健康保険に対する財政支援を決めたようであります。遅きに失した感じではありますが、現状では、同じ県民でありながら行政水準や社会資本整備の面、産業の展開の面で町村格差が拡大していきつつあるのであります。
 このような串本、古座、古座川の背景を考えますとき、特にご検討を賜りたいのは、もし県が県立病院の設置を考えていただけるならば、この際、串本病院及び古座川病院を吸収合併していただけないか、切にお願いする次第であります。地元にとっても、積年の課題が一挙に解決する福音となりましょう。もちろん、県にとっても財政負担、人事問題等々、大変なご苦労をお願いするわけで、地元県民も十分その点は理解もし、協力もし、感謝申し上げなければなりません。
 なお、平成四年度の当初予算において紀南地方に看護婦養成所を設置するための調査費を計上され、深刻な看護職員の不足を解消するための養成力強化に積極的に取り組まれているところでありますが、同時にお考えいただければありがたいこととして、この病院に高等看護学院を併設する方向でご検討を賜ればと思います。古座保健所管内の女子高校生の総数から見ても需要は十分満たせると思いますし、医療人材の発掘と県下の看護婦不足の充足について、ぜひご研究願いたいのであります。
 さらに、医師確保の問題でございますが、特に高齢化が進んでいる紀南地方や僻地においては診療所の医師の高齢化も同様に進んでおり、今後とも医師確保が困難となる状況にあります。現在、僻地に勤務する医師を養成する自治医科大学があり、毎年十余名の卒業生が僻地医療に従事されておりますが、僻地勤務医師の数に限度があります。
 そこで、提言したいのでありますが、地域医療を担う医師を養成する県立医科大学において、僻地勤務医師や医師偏在の是正のために特別入学制度、例えば若干名を僻地枠として町村長の推薦などにより学生を受け入れ、卒業後勤務する町村や県が修学資金を貸与する制度を創設されてはどうかと思う次第でございます。
 最後になりましたが、大島架橋の現況と見通しについてお尋ねいたします。
 串本町挙げて待望し、県当局におかれても積極的に取り組んでくれておりますが、環境アセスメントの進捗状況、島内県道の整備状況、今後、完成まで何年を要する見込みか、仮谷知事にその見通しをお伺いいたします。
 以上が質問でありますが、何分よろしくご答弁をお願いいたします。ご清聴ありがとうございました。
○副議長(平越孝哉君) ただいまの堀本隆男君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 堀本議員にお答え申し上げます。
 お話ございました本県における保健医療供給体制の整備は非常に重要な課題でございまして、私も全力を尽くして頑張っておるところでございます。
 ご質問ございました串本病院、古座川病院の件については、本県の地域保健医療計画上、新宮の医療圏に属しておるわけでございまして、基幹病院としての新宮病院を補完する意味において、中核病院としての位置づけを両病院がされているところでございます。また、話ございましたように、両病院の経営改善等の問題についてはかねてからの懸案でございます。県においても、病院運営、財政面等について、総務部、保健環境部で指導、支援しておるところでございます。また、串本病院の医師については、近畿大学の応援を得て診療が行われているわけでございます。
 提言の件については、昭和五十六年の医大再開発特別委員会──県会でつくっていただいたわけでございますが──の報告に、県立医大の紀南への分院設置について要望されている経緯がございますけれども、医師等の医療スタッフの問題や財源問題など、さらに県下全域の医療体制の整備などの観点から大きな課題があると考えておる次第でございます。
 次に大島架橋については、重要な課題でございまして、積極的に取り組んでおるわけでございます。
 現在の状況といたしまして、対岸における大島については道路建設のための用地取得が六○%進んでおり、工事は一部進めております。残りの分についても地元の協力を得て早期に整備しなければならない、これが第一の前提でございます。そして、調査は六十三年度より始めており、本年度で環境の現況調査が終わりました。また、この三年度に現地においてボーリング調査を行っているところでございまして、橋についても比較設計を行い、形式についても検討をしております。四年度の予算において、苗我島から大島間の橋の設計を行う調査費を計上させていただいております。
 これからの問題として、第二種特別地域ですから環境庁との協議、水産庁でつくった堤防の利用の協議等を行い、地元の強力な協力のもとに早期に着工し完成できるように努めてまいりたいと思っております。
○副議長(平越孝哉君) 知事公室長市川龍雄君。
 〔市川龍雄君、登壇〕
○知事公室長(市川龍雄君) 日米交流の歴史におけるレディー・ワシントン号の来県についてでございます。
 「和歌山県史 近世編」の編集の段階ではご指摘の点について事実の把握ができておらず、したがって一つの事件として取り扱ったため、記載はしておりませんが、今後、郷土の歴史解明の努力を続けていきながら何らかの方法で、例えば和歌山と諸外国とのつながりを記述した国際交流史的なものを考えてまいりたいと存じます。
 次に、二百周年をふるさとづくりの一環に組み入れてはどうかというご提案でございますが、心豊かに誇れるふるさとづくりを進めていくために、郷土の歴史、自然、文化などあらゆる分野で特色のある資源を再発見し、これを生かした新たな地域おこしに結びつけていくことはまことに重要な問題でございます。今後、県といたしましても、地元串本町や地域の皆さんとも連携を図りながら、その取り組みについて調査検討していきたいと考えてございます。
○副議長(平越孝哉君) 農林水産部長若林弘澄君。
 〔若林弘澄君、登壇〕
○農林水産部長(若林弘澄君) 水産業振興についてのご質問にお答えいたします。
 まず、マグロ養殖のモデル事業についてでございます。
 議員お話しのとおり、水産庁では大規模なマグロ養殖の技術開発を目指して、平成四年度に高度回遊性魚種に関する養殖システム開発事業を全国で一カ所実施するための予算案が計上されてございます。このことに関しては、昨年、十一月に水産庁から本県のほか六県に対して事業内容の説明がありましたが、県といたしましては、マグロ養殖事業研究の先進県として、また今後の市場における優位性を確保する上で養殖技術の開発普及が重要であることから、ぜひこの事業を導入したいと考え、国へ積極的に働きかける一方、水温、水深、波浪など自然的条件や漁協の経営規模を考慮し、関係漁協に対して事業内容を説明するなど、導入に向けて取り組んでまいりました。しかしながら、当該漁協としては、このような大規模なマグロ養殖は初めての試みであり、役員会で検討の結果、種苗の確保、技術者の確保、採算性など考慮し、今回、事業実施を見合わせたい旨の意思表示がありましたので、やむなくこれを見送った次第であります。
 なお、こうした技術開発事業は、過去の例からすると平成五年度新規箇所での実施は困難かと思われますが、今後、近畿大学の研究ノーハウや関係漁協の意向を打診しながら国に働きかけてまいりたいと存じます。
 二点目の、沖合養殖モデルプラントの導入についてでございます。
 県といたしましては、つくり育てる漁業を振興する観点から、これまで串本浅海漁場を初め養殖漁業の振興を各般にわたり積極的に図ってまいりましたが、本県には養殖に適した内湾が少なく、議員お話しのとおり、養殖業の振興を図る上で沖合養殖の導入はまことに重要であると認識しております。また、アクアシステム等大規模な養殖システムもその一つの方策として大変有効であると考えてございます。
 いずれにいたしましても、海洋の活用は漁業振興のみならず地域の活性化にとっても重要であると認識しておりますので、国の補助事業への採択などの財政支援はもとより、技術指導等についてもなお一層努力してまいります。
 以上でございます。
○副議長(平越孝哉君) 保健環境部長遠藤 明君。
 〔遠藤 明君、登壇〕
○保健環境部長(遠藤 明君) 看護職員養成機関の併設をとのご質問にお答えを申し上げます。
 本県における看護職員の充足対策として各種施策を積極的に推進しているところでございます。特に、紀南地方の看護職員の確保対策として平成七年に養成施設を設置するため、平成四年度当初予算において調査費をお願いしており、これにより古座保健所管内における看護婦不足にも対処したいと考えております。
 以上でございます。
○副議長(平越孝哉君) 教育長西川時千代君。
 〔西川時千代君、登壇〕
○教育長(西川時千代君) 教科書に郷土の歴史的事実を取り上げる件についてでございます。
 教科書は、学習指導要領にのっとり、発行者や著作者の創意と工夫のもとにつくられ、文部省の検定を受けることとなってございます。教科書の記述内容等にかかわる希望については、全国の教科書発行者で構成される教科書協会に対し、詳しい資料等を添付の上で申し出ることが可能であります。
 レディー・ワシントン号の件については、資料収集を初めとする史実の解明状況を見ながら、関係部局と連携して対応について考えてまいりたいと存じます。
 以上でございます。
○副議長(平越孝哉君) 医科大学学長田端敏秀君。
 〔田端敏秀君、登壇〕
○医科大学学長(田端敏秀君) 私は、昨日、十一日でございますが、仮谷知事から辞令をいただきました和歌山医科大学長の田端敏秀でございます。どうぞ、今後ともよろしくお願いを申し上げたいと存じます。
 さて、議員ご提案の僻地勤務医師の確保のため本学の入学制度の中に特別枠を設けてはということでございますが、学生の本学への入学機会の均等や卒業後の就職先の拘束性の問題、さらには医学教育水準の確保等、なお種々問題がございます。したがいまして、現段階では制度の創設は考えておりません。
 ただしかし、本学といたしましては、現在、各市町村立病院に多数の医師を派遣しておりますが、さらにこの点を銘記いたしまして、強力に、かつ充実した地域医療を行うよう、大学の医師派遣に最善の努力をいたしたいと思っております。
 以上でございます。
○副議長(平越孝哉君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 27番堀本隆男君。
○堀本隆男君 本県の最も大きな資産は海であります。やはり私は、これからの和歌山県の産業の中で最も大きな課題でもあり、一番伸ばさなければならない水産業について、こうした沖合養殖、大規模な装置産業としての水産業へシフトするということが最大の課題かと思っております。他府県に負けないようにこれからも頑張っていただきたい。
 以上、要望でございます。
○副議長(平越孝哉君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で堀本隆男君の質問が終了いたしました。

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