平成4年2月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(冨安民浩議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 午前十時三分開議
○議長(山本 一君) これより本日の会議を開きます。
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○議長(山本 一君) 日程第一、議案第一号から議案第八十一号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 18番冨安民浩君。
 〔冨安民浩君、登壇〕(拍手)
○冨安民浩君 休み明けの初日に一番バッターとして質問の機会をお与えいただいた先輩議員の皆様方のご配慮に心から御礼を申し上げつつ、私は、その実現の際には我が国における和歌山県の位置づけが大きく変わり、その持てるポテンシャルが大幅に生かされることを確信してやまない第二国土軸構想並びに教育問題について質問をいたします。
 初めに、昨年春の選挙で、日高郡民の多くの皆様方の長きにわたる温かいご支援、ご指導のおかげで二度目の挑戦で県議会に一議席を任されたことに対し、深く感謝を申し上げ、その責任の重さを自覚し、責務の全うに努力いたすことを、議会壇上からではございますが、お誓い申し上げるものであります。
 さて、我が和歌山県は、半島に位置するという地理的性格上、国土軸へ直結し、その時間的距離を縮め、半島性から脱却するということが県民の等しい願いであり、それゆえ県政の大きな目標の一つであったと思います。仮谷県知事を先頭に、先輩議員の皆様、関係者の方々の一丸となっての運動の結果、平成四年度末には念願の近畿自動車道紀勢線の海南─大阪間が全面開通し、また全体構想の実現という課題は残るにしても、平成六年夏の関西国際空港の開港、相前後しての世界リゾート博の開催等々、知事が機会あるごとに口にされる和歌山の時代の到来を少なからず感じているのは私一人ではないと思います。
 政治家は未来に向かって希望をともしつつ、よりよい方向へ導き進むのがあるべき姿とするならば、今こそ和歌山県を国土軸上に位置すべく、第二国土軸構想の推進に向け、関係府県との連携を一層強めつつ、リーダー的立場でのさらなる運動の展開を仮谷知事に要望いたすものであります。
 そもそも第二国土軸構想とは、申し上げるまでもなく、昭和四十年、国連調査団として来日したアーネスト・ワイズマン氏が日本の将来の均衡のとれた発展のためその必要性を訴えた構想であり、愛知県豊橋を起点とし、伊勢湾、奈良県、和歌山県、紀淡海峡、四国、豊予海峡を経て九州を結ぶ新しい交通幹線構想で、今日ではこの構想は東京一極集中に対する多極分散型国土形成のための地域連合の象徴でもあり、まさに昭和六十二年度に策定された第四次全国総合開発計画の大目標とする基本方向に沿ったものとなっています。
 戦後、我が国は、昭和三十七年の高度成長の幕あけとともに、一全総の策定、昭和四十四年の新全総の策定、昭和五十二年の三全総の策定、昭和六十二年の四全総の策定と、その時代時代の背景を考慮に入れて目標を設定し、その実現に努め、一時期大なる効果を上げてまいりましたが、今日、世界に誇る経済大国樹立までの経済政策とのはざまでその目標とする幾つかが達成されず、現実との間にギャップが生じつつあるのはご承知のとおりであります。すなわち、欧米に追いつけ追い越せの経済政策の中で、三全総、特に四全総の大目標が達成されず、経済効率を最優先とする経済システムが生じ、その当然の結果として、人、物、金はもとよりでございますが、情報を含めてあらゆるものの東京一極集中を招き、その弊害が生じつつあります。私は、他国に類を見ない世界に誇る豊かな日本を築き上げた今日までの経済政策を非とするものではなく、その結果生じた弊害、申し上げるまでもなくそれは東京一極集中であり、その是正のための多極分散型国土形成の推進を訴え、そうした国土形成の中で我が県の浮揚につながる第二国土軸構想実現の必要性を唱えるものであります。
 ご承知のとおり、国会議員レベルにおいては、一昨年六月、自由民主党内に前衆議院議長田村元氏を会長とする第二国土軸建設議員連盟が衆参両院議員九十三名で設立され、数々の調査研究活動を続けられております。昨年九月には、その一環として田村会長を中心とする国土庁など国の関係者で構成する視察団が同構想に位置する関係府県をヘリコプターで視察され、途中、本県での懇談会席上、同会長は、第二国土軸構想推進の必要性を強く訴え、国に対し建設着工を働きかけるとの意欲的な発言もされたと聞いております。
 西日本の発展のためには第二国土軸の形成が必要と訴え、そのかなめとも言うべき紀淡海峡トンネル構想を昭和五十四年の年頭に新春の夢として仮谷知事が提唱され、その結果、昭和五十八年度から毎年一億円の予算をもっての日本鉄道建設公団による継続的調査、また昨年度からの建設省による同海峡の架橋としての調査開始等、その実現に向けての確かな歩みが始まっています。加えて昨年八月には、一極集中是正、大都市圏に対抗できる活力ある地域経済圏の早期実現を目的とする新国土形成研究会も設立され、また多極分散型の国土形成をその大目標に据えながら、一段と進行する東京一極集中に対処するため、昨年九月からの国土庁による五全総の前倒し策定をも考慮に入れた四全総のフォローアップ作業への着手及びその見直しなど、仮谷知事が提唱し、赤々と燃やし続けてまいりました第二国土軸構想実現に向けての運動の成果が生まれつつあり、また、いささか悪化が予想される国の財政事情は別にしても、前述のとおり整いつつある客観的諸情勢、同構想推進協議会設立等に見られる関係府県の熱意の高まり等、第二国土軸構想実現に向けての猛運動を展開する好機の到来を感じるのであります。
 今日までの経済効率中心主義が極度の一極集中を招き、それを是正する多極分散型国土形成の推進が国家的命題ともなっている今日、同構想実現を提唱されている仮谷知事のご所見、並びに全国知事会副会長でもあり関係府県の牽引的立場での、その実現に向けてのまとめ役としての力強い決意のほどをお伺いいたします。
 また、紀淡海峡に関し、従来の鉄道建設公団による継続的調査に加え、昨年度からの建設省の調査着手により架橋かトンネルかの論議が生じております。私は当面、両にらみで推進すべきと思いますが、担当部長のご所見、お取り組みをお尋ねし、今後、同構想実現に向けての関係府県間の事務レベル協議の連携強化を要望いたします。
 次に、教育問題について若干のお尋ねをいたします。
 中国に「百年先を考えるならば人を育てろ」ということわざがあります。人づくり、人育ての必要性を語ることわざであり、教育に当てはめますと、正しいよい教育をすれば百年先に花が咲くと置きかえられますし、反面、教育を間違えれば百年先はだめだと解釈できるのであります。また、教育のよい効果はすぐにはあらわれないということであり、逆もまた真なりであります。
 「地域づくりは人づくり」とも言われて久しく、教育の重要性は今さら論をまたないのであり、またその目的として、個人の人間形成はもとより社会的影響をも考え合わせねばなりません。
 私は、学校教育とは、まさに文字どおり学校で教え、育てることなりと思いますし、また、その機能を高めるためには体制的、管理的であるべきと信ずるものであります。我が国が世界に誇り得る国づくりの過程で果たしてきた教育の役目を考えるとき、改めてその重要性を認識するのであります。
 ところで、昨今の教育論議を聞いておりますと、「子供の人権」あるいは「ゆとり」等の響きのよい言葉のもとでイデオロギーが入り込み、教育問題を純粋にとらえることなく、その本質論も外しているように思えてなりません。もとより子供たちの人権の存在を否定するものではありませんが、特に義務教育においては、その目的が国民として生きていくための最低限の知識を与えることであり、また社会の中で生きていくための生活の仕方を教えることであるとするならば、そうした目的を達成するためには学校というのは体制的で管理的であるべきで、その目的を忘れ、子供の権利を守れとか、ゆとりある楽しい学校教育にしなければいけないなどというのは、学校の教育のあり方から考えれば全く議論の対象にならないと考えますが、教育長の見解をお尋ねいたします。
 次に、本年度九月から実施される公立幼稚園、小・中・高等学校における月一回の学校五日制の導入についてお尋ねをいたします。
 その実施目的には、一つ、学校教育に偏った教育力を家庭及び地域社会で回復すること、二つ、ゆとりのある学校生活の中で、自然との触れ合い、親子の触れ合い、あるいはその地域における奉仕といったことを通して人間としての生きる力を身につけ、心豊かでたくましい人間の形成を図ることとなっています。
 果たして、地域社会に子供の教育力を回復するだけの素地が整っているのでしょうか。また、本当に教育にゆとりが必要なのかどうか、私は若干の疑問を感じるのであります。詰め込み教育を決してよしとはしませんが、ある年齢段階において詰め込まねばならない知識というのがあるわけで、そうしたことを抜きにしてゆとりを教育の基本理念としているのは、悪く考えれば美名のもとの怠け癖奨励ともとれなくはありません。これだけ勉強しなければならないという量については一定の基準を設定し得ても、「ゆとり」と言うと言葉の響きはいいけれども、これは別の意地悪な見方をすれば怠け癖をつけるということにつながるおそれもあり、一番学習能力のある年齢段階におけるこうした措置に懸念を抱くものであります。学校五日制導入の中で私が抱くこうした懸念について教育長はいかなる見解をお持ちか、お尋ねをいたします。
 また、本県の教育問題の中でよく議論される他府県との比較における県内公立学校での授業時数減について、そのカバーに努めるべく現場を指導されているのかどうか、指導されているとすればいかなる指導をされているか、お尋ねをいたします。
 最後になりましたが、本年度末を期に県職員を退かれる職員の皆様方には、長きにわたるご尽力に対し心から感謝を申し上げ、私の質問を終わります。
○議長(山本 一君) ただいまの冨安民浩君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 冨安議員にお答え申し上げます。
 第二国土軸の推進についてでございます。
 お話のように、ワイズマン構想から発しました第二国土軸について最近とみに関心が高まりつつあるということ、非常にうれしい限りでございます。一昨年の十月に十七府県、二十五団体による第二国土軸構想推進協議会が和歌山で発足され、それから関係の国会議員の皆さんによって議員連盟をつくっていただいて積極的に推進していただいておるということ、非常にありがたいわけでございます。
 特に和歌山県においては、県会の皆さん方のご努力によりまして、関西国際空港の推進、南紀白浜空港の建設、高速道路の南伸等、数々の山積した問題が解決しつつあるわけでございますけれども、やはり二十一世紀を目指してこの第二国土軸を推進し、和歌山県が国土軸の中に入ることが一番大事なことであります。また日本といたしましても、これからの多極分散型の国土形成構想の中で発展させるためにも第二国土軸が大事だと考えます。そしてまた、話ございましたように、大阪湾ベイエリア開発の問題とも絡んでまいります。そうした中において、特に紀淡海峡の問題が大きなウエートを持ってくると思うわけでございます。
 時あたかも、国において国土計画の見直しが行われている現在でございますし、また大阪湾ベイエリアの法案が今国会にも上程されようとしている重要な段階でもございますので、特に紀淡海峡トンネル、橋を含むこの国土軸の推進に、皆さん方のご指導をいただいて私も全力を尽くしてまいりたいと思っております。
○議長(山本 一君) 企画部長川端秀和君。
 〔川端秀和君、登壇〕
○企画部長(川端秀和君) 第二国土軸構想の一環である紀淡海峡ルートについてお答えを申し上げます。
 その促進については、かねてより国初め関係各方面へ働きかけてきたところでございますが、ご案内のとおり、昭和五十八年からは日本鉄道建設公団によりトンネル調査が開始されました。また昨年からは、建設省において大阪湾環状道路の一環としての紀淡海峡連絡道路の調査、さらには海峡横断道路プロジェクト技術調査委員会による技術的な面からの検討が開始されたところでございます。このように、国において鉄道、道路両面での調査を実施していただけるようになりましたことは大きな前進と考えてございます。
 今後は、国におけるこれらの調査の促進等をさらに強力に働きかけていくことが重要と考えてございまして、関係団体とも連携しつつ、紀淡海峡ルートの実現に努力してまいりたいと考えてございます。
 次に、この構想実現に向けての事務レベルでの連絡会議についてでございます。
 一昨年の第二国土軸構想推進協議会の設立に際して、二十五団体の部長級で構成する幹事会や役員団体で構成する世話人会を設けて、事務レベルでの連絡調整にも努めているところでございます。来年度からは協議会の事務局を本県で預かる予定ともなってございますので、議員ご指摘の趣旨を十分に踏まえ、関係団体の一層の連携強化に努めてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(山本 一君) 教育長西川時千代君。
 〔西川時千代君、登壇〕
○教育長(西川時千代君) 学校教育のあるべき姿と週五日制についてお答えいたします。
 まず、教育は、子供たち一人一人が明るく伸び伸びと学び、意欲を持って生きていくとともに、あすの我が国の発展に尽くすことができる能力を養うことを目指して行うものであり、議員ご指摘のように、国家百年の大計であると認識してございます。
 学校は、我が子が人間として心豊かに、たくましく成長することを願っている保護者から教育を託されております。その期待にこたえるために、校長の強力なリーダーシップのもとに、全教職員が懸命に汗を流して子供に深くかかわり、その喜びや悲しみを心にしっかりと受けとめることによって、子供にとって学校が魅力のある楽しいものになると考えてございます。
 県教育委員会といたしましては、学校が地域社会に対しても開かれたものであり、保護者や地域の人々と力を合わせて子供を育てていく必要があると考えます。本県の子供たちが、ややもすると忍耐力に欠けるのではないかという指摘もなされている中で、学業にスポーツに懸命に取り組むことによって、自分の持っている力を十分に発揮し、人生を力強く骨太に生きていく力を育てていく必要があります。また、友達やお年寄りの気持ちや立場を大切にし、自然の美しさに感動する心を養ったりすることなどを通し、みずみずしい感性を養い、命のとうとさに気づかせるとともに、生涯にわたって自己を高めていく力を身につけさせることが大切であります。
 教職員については、公教育に携わる者としての重い責務を自覚するとともに、形式的、画一的になることなく、子供たちの力を最大限に伸ばすよう努力し、時には期待にこたえられないことがあっても、子供を信じ切って情熱を傾け、日々の教育活動に邁進するよう指導いたしてございます。
 次に、学校週五日制については、これまでの学校中心の教育から、地域や家庭との連携の中で、自然との触れ合い、家族や地域の人々との交流、奉仕活動などを大切にしながら、豊かな人間性や社会性、またみずから進んで学習する態度などを育てるというこれからの教育のあり方としてとらえてございます。
 しかし、学校週五日制の導入に当たっては、学力の低下や非行に対する保護者の不安も強く、また地域社会が施設や指導者の面等でまだ十分には対応し切れないという課題がございます。当面、積極的に学校施設を開放するとともに、教職員のボランティア活動も必要な面があると考えてございます。学校においては、基礎的、基本的な内容を大切にし、教育水準を維持向上させるようさまざま面で改善を図り、生徒の学習負担が過重にならないよう配慮しながら、月曜日から金曜日までの教育内容を充実させていく必要がございます。
 最後に、本県の県立高校における授業の日数及び時間数については、さきの本会議でもお答えいたしましたとおり、全国平均より約二十五日程度少ない状況にあります。
 そのため、これまで授業の日数及び時間数の確保に向けて年間行事計画の見直しなどを指導してきたところであります。本年度はさらに年間実授業日数を二百十日以上確保するよう、県立学校長会や教頭会及び教務部長会を招集し、その趣旨の徹底を図っているところであります。
 また、学校週五日制の導入に当たっては、まず授業の日数及び時間数を全国並みにしなければならないという観点に立って、年間教育計画を作成するよう各学校を指導してまいりたいと考えています。
 今後も、一層本県教育の活性化を図り、二十一世紀の社会で活躍できる人材の育成に努め、県民の熱い期待と信頼にこたえられる教育行政を進めてまいります。
 以上でございます。
○議長(山本 一君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 18番冨安民浩君。
○冨安民浩君 第二国土軸構想推進に向けての仮谷知事の力強い決意のほどをお聞かせいただき、まことに心強く感じるわけでございます。
 知事も、県内に小なたを振るわなければいけないいろんな問題もあると思うわけですが、この大構想は是が非でもやり抜くんだという不退転の決意をお固めいただきたいと思います。また、そうした知事の姿勢が反映されまして、関係府県でもその熱意が一層高まって、やがて定期的にその推進に向けての大集会が持てる日が来ることの近からんことを私は希望いたしております。
 なお、教育問題についてでありますが、私はかねがね西川教育長の教育にかける情熱、また信念を評価いたすものでございますが、その教育長の信念なり情熱なりが現場に生かされるよう十分ご指導いただくことを要望いたしまして、私の質問を終わります。
○議長(山本 一君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で冨安民浩君の質問が終了いたしました。

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