平成3年12月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(木下秀男議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 午前十時四分開議
○議長(山本 一君) これより本日の会議を開きます。
 ──────────────────
○議長(山本 一君) 日程第一、議案第百四十二号から議案第百五十一号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 6番木下秀男君。
 〔木下秀男君、登壇〕(拍手)
○木下秀男君 まず、この議政壇上から、仮谷知事五選のご当選を改めてお喜び申し上げます。
 知事は、今議会冒頭に就任のあいさつを次のように述べられました。「この選挙を通じ、県内各地をめぐり、県民が今何を求めているか、今和歌山県がどういう状況にあるのかを私なりに肌で感じ取ってまいりました。(中略)いま一度初心に立ち返り、本県のさらなる発展のビジョンを切り開いていくことが私に課せられた責務であり、多様化する県民ニーズにこたえ、先見性を持って県政を展開してまいらなければならないということを改めて感じた次第でございます。 これからの四年間、五期県政では(中略)全県土において個性ある地域の発展を図ってまいる決意でございます。(中略)決断と実行の県政を全力で推進することが私の使命であると存ずる次第であります」と、力強く開陳されました。さすが五選知事仮谷志良と感じ入り、感激いたしたものでございます。
 私も、今春四月、無投票当選で四選の栄誉を賜りました。選挙に向かって郡内各町村をめぐって多くの人々と交わりながら、ご意見、ご要望、さらにはご忠告までいただく中で、私は「一次産業の振興」を公約の第一に取り上げ、「足腰を強くして、一次産業をせめて一・五次産業と言えるように努力します」と訴えてまいりました。この公約実現に向かって、私も頑張りたいと思います。
 質問に入る前に少しお願いしておきますが、今までの答弁を見ていますと、「検討する」「努力する」の答弁用語がよく使われておりますけれども、役人用語で「検討する」は「実現は無理」、「努力する」は「一応やってみるが保証の限りではない」、「積極的に推進する」「所要の措置をとる」という言葉は争点回避用の官製用語であって、具体的にどうするとか、いつごろまでに検討するとか、明確な答弁をいただけるようにお願いしておきます。
 知事は、五選達成後の談話に「二十年一区切りの成人になった」ということを話されております。私も、議員になって仕事始めは正月三日から行います。それは山村の成人式に出席するためでありますが、成人式終了後、成人の皆さんと村長以下出席者、さらに私もその中に入って懇談会を催すのが通例となっております。司会者が一人一人に、成人になっての抱負と村に望むこと等を聞くわけでございます。それぞれ、進学や就職について若々しい意見が聞かれます。
 そこで、政治歴二十年の成人された知事にお伺いいたします。
 今選挙を通じて県下各地を駆けめぐり、選挙戦の中で何を感じられたか、まずお伺いいたします。
 「北高南低」とか「南北格差」という言葉が聞かれますが、特に人口減により過疎と高齢化が進み、地域のシンボルであった学校等も閉校から廃校へと進み、さらにその自治体を預かる行政職、議員等の定数の減員を繰り返し、まさに沈没の状態であるとも言えましょう。日本の古きよき伝統と文化を守り、伝えてきたのは農山漁村であります。このままでは崩壊につながるのではないかと危惧するものでございます。このような状態の県域を眺め、今後いかなる取り組みをなさるか、お伺いするものであります。
 今回の選挙のさなかに県民の世論調査が報道されましたが、その中で道路整備が約三三%、福祉が二七%で、特に紀南地方の数字が高いことをあらわしてございます。公約の重点項目とされた高速道路整備も、すさみ町まで計画に組み入れられたことは県民の一人として喜ぶものでありますが、紀南の残された串本から勝浦までは何年先になるやら、五里霧中であります。
 いま一つ、高速道路の南伸、すなわち田辺─すさみ、さらに以南の建設をスムーズに促進するためには、用地関係が難関であることは承知いたしてございますが、特に公図混乱地域の把握とその解消が不可欠であると言われてございます。県としていかなる取り組みをなされるのか、関係部長にお伺いをいたします。
 農業問題について。
 日本の農政は、「猫の目行政」または「ノー政」だと言われております。昭和三十年代までは米第一位の農業形態でありましたが、社会構造の変化と消費者の嗜好から果樹農業へと変転し、高度経済成長時代にはミカン王国と言われるほどかんきつ作農業がふえて、昭和六十年代には農業に大変革が起こり、豊葦原の瑞穂の国と言われた農耕民族の日本で、米をつくるな、減反せよと強制的に割り当てられ、さらに追い打ちをかけた農産物、オレンジ、果汁輸入自由化の決定により、全国生産県に減反割り当てをして三カ年計画で実施されたのはご承知のとおりであります。
 以上が昭和から平成への農業の変遷の概略でありますけれども、耕地の少ない和歌山県の農家に与えた打撃は大なるものであったと思います。さらにまた、関税貿易一般協定によるウルグアイ・ラウンド交渉で米市場開放の最後通告を受け、年度内解決に向けて剣が峰に立たされている現状であります。
 私は、ある会合で一人の青年から尋ねられて返答に窮したのでありますが、それは次の事柄でございます。「僕は農業が好きで、農業高校を卒業して、果樹(梅)と施設栽培(花卉)の複合経営をしている専業農家であるが、今の農業施策を見ていると先行きが不安でならない。自分の子供を農業後継者に育てる自信がない。新しい農業の方途を考えてほしい」、まさに現在の農業者の不安感を言いあらわしている言葉であります。大変難しい問題でありますが、ご答弁をお願いいたします。
 次に、提言を交えてでありますが、「圃場整備で楽農を」──「楽しい」と書く「楽農」でございます。
 米作減反と農産物自由化の打撃で樹園地の減らした分を、ハウス栽培に転作したり樹木の品種改植と、いろいろとできる人はよいのでありますが、中山間地域の山田や谷間の小さい田で温州ミカンやハッサク柑をつくっていた地域では、これといって収益のある転作物が見当たらず、シシトウを細々とつくっているような現状でございます。
 現在、国においては耕地整理、耕地開発、圃場整備等の事業があり、山村振興法、半島振興法等による中山間地域に対しての事業もあるにはあるが、この恩典を受けようにも、余りにも辺地であったり規模が小さかったりで対象事業に組み入れられない圃場の整備が必要であると思います。夫婦二人で管理栽培できる面積は大体十アールから二十アール、これで二毛作を上手にやれば八百万から一千万の年収があると言われてございます。この十アールから二十アールの田型を整備し、水利、作業道等の事業資金を融資で賄う制度の創設を提言するものであります。仮称「楽農資金」としてございます。また、ごく最近、砂耕栽培法が開発されました。これは無農薬、有機栽培、連作可能という施設農業でありますが、十分検討に値するものと思います。県当局のご一考をお願いするものであります。
 米はつくるな、ミカンの木は切れ、施設農業をしたくとも適地がない、シイタケをつくってもほだ木は高く猿害ばかり、これで若い者に村にいて農業をしろと言うことは無理だ、これが偽りのない現地の声であります。農林水産部長の答弁を求めます。
 次に、林業について。
 「紀州木の国」と言われた和歌山県も、木材の不況から林業も不振となり、働き手が続々と出ていき、過疎化が進み、地域社会が崩壊しつつある現状が各地で見られます。和歌山県土の約七七%が森林であり、面積にして三十六万三千五百ヘクタール、人工林蓄積全国第三位という豊かな森林資源を有しているのでありますが、山は荒れほうだいであります。この資源を活用して林業の振興を図り、過疎に苦悩している山村の対策を立てることが、今県政に課せられた重要課題であると思います。
 林業というものは息の長い仕事でございまして、植林から伐採まで五十年、良質材では七十年から八十年と、親子三代にわたる事業と言われてございます。昭和二十年ごろから三十年ごろにかけての造林ブームのころに植えた木が、ぼつぼつ伐採期を迎える時期となります。今、盛況を誇っている南洋材や米材も自然破壊や環境保護の国際的批判の強まりで規制され、国産材が見直され、脚光を浴びる時期が近づいてきていると言われております。紀州林業復興のチャンス到来と思います。
 ここで、私が山間部を歩いていろいろ聞いてまいりましたことを、提言を兼ねて申し上げます。
 まず、林業振興対策であります。
 林業就労改善促進対策事業の実施と本県への採択は、困窮をきわめている林業界にあって、労働力の減少、高齢化はその域を超え、深刻な事態を招いており、五、六年先には自然淘汰せざるを得ないところまで来ております。これらの現状に迅速かつ積極的に対応しなければ、県下の人工林率六一%の管理と年間成長量百五十万立方が粗放林として経済効果の上がらない山になってしまうおそれが大であります。ひいては、「紀州木の国」の名が廃れると懸念するものであります。国レベルの労働力確保対策もさることながら、県単独の諸施策を講じる必要があると思います。
 次に、森林組合合併促進対策事業の実施と採択であります。
 地域林業の主要な担い手である森林組合の充実強化により地域林業の活性化を図る目的で、県当局として、流域ごとの大型合併計画指導に乗り出し、健全化を目指すとともに、国レベルの合併助成法に基づく合併及び事業経営計画の提出期限の延長、合併促進特別対策事業の実施と採択を国へ強く働きかけることが必要だと思います。
 次に、林業用作業道開設に伴う特別措置の実施であります。
 労働者の激減と高齢化は今後なお一層深刻になってくる中で、効率よい作業を目指す、すなわち現場までの安全確保プラス下刈り、枝打ち、間伐、主伐、出材といった作業が能率よくできるよう、作業道、林道の地域に応じた作設が急務とされる中、当局にこれらの実現に向け、特別措置を切望するものであります。今まで進めている林道、作業道の開設に当たっては、和歌山県として、道路網の整備がおくれている汚名を返上する意味においても、実情、要望等を再度調査検討する必要があると思うのであります。
 次に、森林交付税創設の提言であります。
 本宮町長中山喜弘氏が去る九月議会で森林交付税創設を提言し、町議会が意見書を採択して、さらに十一月、隣接町村の熊野川町、北山村、三重県紀和町、奈良県十津川村の五町村で熊野川流域町村長議会を開き、森林交付税創設要望書を決議していることは、ご承知であろうと思います。
 私は、六年前に農林委員会に在籍したとき、水源税創設に積極的に取り組みました。大蔵省や電力会社、下流都市の猛反対で創設は成りませんでしたけれども、当時、提案者である林野庁の公益的機能評価──ここをよく見てほしいんですが──によりますと、水資源の涵養、土砂流出防止、酸素の供給、大気浄化、保健休養等、合わせて年間三十一兆五千九百億円と計算いたしてございます。中でも、酸素の供給、大気浄化に十五兆四千七百億円と計算されてございます。今、世界的な規模で大気汚染、地球温暖化防止、環境保護運動が展開されていますが、人類を初め動植物生存に欠くべからざることであります。
 前熊本県知事の細川護煕氏と出雲市長の岩国哲人氏の二人で「鄙の論理」というタイトルで本を出版されております。その中で細川知事は、「今、日本に求められているのは、中央からの発想ではなく地方からの発想です」と書いてございます。政府は来年度予算編成に当たって、財源不足を理由に交付税にしわ寄せをしようとしているようでありますが、こんなときにこそ、過疎と人口減に苦しむ地方の実情を中央に訴えるべきだと思います。
 知事は、この提言を受けて、関係する市町村や有識者と協議検討するなり関係府県と連携を図るなどして、政府に対し強く働きかけるべきであると思います。
 けさの七時のニュースによりますと、政府も環境と自然を守るために環境税という形の税制の新設を検討するという報道もされてございますが、知事のご見解をお伺いいたします。
 次に、漁業についてであります。
 最近における漁業の現状を見ると、大変厳しいものがございます。和歌山県においても、漁獲量の減少、漁業就業者の高齢化等による漁村活力の低下が大変深刻な問題となっております。
 特に、漁業就業者について見ると、平成元年度の県下の漁業就業者数は昭和五十年に比べて一二%減少しており、特に十五歳から三十九歳までの若年齢層は四五%も減少し、ほぼ半減している。その一方で、六十歳以上の高齢者が三九%増加してございます。
 このように、漁業就業者の振興という面から考えると、生産量、生産額を高めることも肝要かと思われますが、漁村の活性化、地域の振興という面では、若者に働きがいのある漁村づくりが必要であろうかと思います。現地の漁業者の話を聞いてみましても、漁業はいわゆる三Kの代表的な仕事で、自分の子供は漁業者にしたくないという意見が圧倒的に多いのが現状であります。
 県におかれては、魚礁の設置、近代化施設の整備、栽培漁業の推進等、積極的に漁業の振興に取り組んでいただいておりますけれども、若い後継者を定着させ、漁村の活性化を図るためには、もうける漁業、魅力ある漁業づくりに早急に取り組む必要があろうかと考えます。特に、出漁できないときにかわってできる栽培漁場施設を単協に一つずつ設置するぐらいの積極性が欲しいものであります。
 次に、流通の問題でございます。
 最近のグルメブームはご存じのとおりで、テレビでは毎日のように魚を素材にした料理番組が放映されておりますけれども、現実は魚を食べる人が少なくなっております。理由は食生活の変化等いろいろありますが、魚価が高いということが大きな理由の一つであります。これは、流通体制に問題があろうかと考えます。
 現在の流通体制を見ると、漁協の産地市場で小規模に入札を行っているのが現状であります。したがって、いわゆる大漁貧乏と言われるように、大漁になるほど魚価は安くなるという現象が見られるのであります。
 漁業者が安定した魚価を維持するための方策として、水揚げ港を一カ所に決め、仲買人による共同入札制度を行うなど、新しい売り方を取り入れるべきではないでしょうか。また、生け魚を一括買い入れし、水槽輸送して、生け魚取扱業者と直取引をすることにより高収入につなげるのも一策でありましょう。もう一点、大量の場合、漁協の水槽にストックして計画出荷することも一策でありましょう。
 次に、海域の高度利用についてであります。
 海を単に生産の場とするだけでなく、漁業者がもっと多目的に海を利用する方法を考えるべきであると思います。例えば、近年の余暇の増大、所得の向上等による都市住民の親水志向は、まさにブームであります。そこで漁業者は、その経験を生かし、海水浴、潮干狩り、ダイビングスポット等の経営、遊漁案内等に積極的に取り組んでいく必要があろうかと考えるのであります。すなわち、漁業に付加価値をつけて、もうかる漁業を経営するわけであります。
 最後に、近年、資源は年々減少傾向にあります。県では、資源対策として毎年、種苗放流を実施していただいており、高く評価するところでありますけれども、この漁業問題について農林水産部長の答弁を求めます。
 続いて、ノーベル平和賞受賞者のスー・チーさんに自由をということで申し上げます。
 ことし一九九一年のノーベル平和賞がミャンマーの民主化運動指導者アウン・サン・スー・チー女史に決定されましたが、私は常々、スー・チーさんに関心を持っておりました。それは、イギリスのサッチャー首相、インドのガンジー首相、フィリピンのアキノ大統領と並んで世界的な女性指導者として、軍事政権社会主義国であり、戦中、戦後を通じ、我が国と極めて緊密な旧ビルマすなわち新制ミャンマー国で、民主化と人権向上を目指す運動のリーダーとして活躍していたからであります。日本映画の名作として我々にも感銘を与えた「ビルマの竪琴」の水島上等兵を思い出すにつけて、旧ビルマ、新制ミャンマーに対する思慕の念が募るものであります。
 もう一点は、一九九○年ごろから東欧に吹き荒れた革命のあらしが世界の二極対立から協調へ、アラブ諸国の対立から対話へと国連中心の平和外交が進む中で、かつては植民地政策のるつぼの地であり動乱の激しかったインドシナ半島にも、ベトナム戦争の終結、カンボジアの和平達成と、平和に向かって歩み始めている中で、ミャンマー国のソウ・マウン軍事政権がいかに対応するかでありました。
 また、第二次大戦でミャンマーに多大な被害を与え、今、経済援助国として大きな影響力を持つ日本政府がいかなる対応をするかも、大いに関心がありました。世界第二の大国だと自負する日本のアジア外交の現状を見るとき、腹立たしさと憤りを感じるのは私一人でないと思います。
 スー・チー女史が一九八九年七月、自宅軟禁されて以来、約二年五カ月がたちました。このときに、和歌山県民であるイーデス・ハンソンさんが「スー・チー女史を救え」の街頭署名運動を始めたことを知ったのであります。ハンソンさんは、現在、アムネスティ・インターナショナル日本支部長であります。「アムネスティ」の意味は、一九四八年十二月十日に第三回国連総会で全会一致をもって成立した世界人権宣言の趣旨に基づき、人権擁護を目的とする国際民間団体であります。
 時あたかも、人権週間であります。今、日本政府は、人的貢献をするというPKO法案でもめております。経済面で国際社会に貢献することも必要なことでありましょうけれども、より以上に心のつながりを必要と考えるものであります。
 私は、この壇上から県民に訴え、議員同僚の皆さんの賛同を得て、決議をもって日本政府に救援を働きかけていきたいと思っております。平和を追求し、自由と人権を守る日本人の声が和歌山県から起こることを願うものであります。賢明なる知事のご見解をお伺いいたしまして、私の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。
○議長(山本 一君) ただいまの木下秀男君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 木下秀男議員にお答え申し上げます。
 五期県政を迎えての知事の抱負でございます。
 木下議員には、四期当選されての決意表明もいただいたわけでございまして、それをお聞きしながら、私も五期になっていろいろ感ずることがあるわけでございます。
 冒頭、私の所信を述べさせていただいたのでございますけれども、県下各地を駆けめぐって感じたことは、和歌山県は大きく移り変わりつつあるということです。今、数々のプロジェクトが進行しつつあります。特に、関西国際空港を中心にしての紀の川一帯の大きな移り変わり、白浜空港のジェット化、高速道路の南伸、また、我々が唱えているリゾートが各地において検討されている等、いろいろな問題に触れたわけでございます。これをいかにすべきかということとともに、また、口では高年齢者社会と申しますけれども、各地へ参って高年齢者の数が多いということが実感されました。これに対する積極的な対策を講じてまいりたい。
 また、皆さん方の発案により、半島振興法ができました。この実施に努めており、山村対策、過疎対策を積極的に進めておるわけでございますけれども、若い人たちが残らないという現状を見たときに、これをいかになすべきかという問題がございます。人口が減るということが、やはり政治を行う者にとって一番の問題点でございます。そうした面において、市町村長さんに大変ご努力をいただいて対策を進めていただいておりますが、そうした環境の中にあるということ、これをいかにしていくべきかということで、私も痛切な感じを持っているところでございます。
 交通対策については、積極的に進めてきております。各地域に道路網が整備されつつあります。しかしながら、ご存じのように、和歌山県は南北に長い地域でございます。そのために、高速道路について皆さん方に大変ご努力をいただき、国幹審においてすさみ町まで決定していただきました。これらをなお積極的に推進することにより、話ございました南低北高の問題等も解決するわけでございます。
 私も、きのう同和の会議へ参りました折、建設大臣、建設省の道路局長等に、この高速道路の延伸についてお礼を申してまいりました。道路局長は、「高速道路をなお一層積極的にやりたいんだ。従来、十年ぐらいかかっていたのをもっと短くやりたいんだ。そうしないと未開発の地域がおくれてくる。それを早くやらないと都会の方へ金を回されてしまう。そうならないためには、整備計画ができて施行命令が出るまでの間に用地を買収するという形を考えていかなければならないんではないか。そうした金の問題等についても考えます」ということを申しておりました。そのように、国においても高速道路を僻地というか半島地域に延ばしていただく、このことを私もなお一層積極的に進めていかなければならないと思っております。
 また、話ございました第一次産業を積極的に進めて、観光といかに結びつけていくかということ、そしてまた福祉と豊かさについても、日本人は恵まれていて世界的に見て生活は豊かだと言われているけれども我々はその実感がない、真の豊かさとはいかなるものかということを、福祉と生活環境をにらみ合わせつつ考えてまいりたいと思っております。
 そして、ご提言のございました第一次産業の振興については、私も同感でございます。和歌山県の農業は、地帯別に見たならば、花にしろ、野菜にしろ、梅にしろ、柿にしろ、桃にしろ、まだ非常に強いと思うんです。そうした地帯別の構想をもって積極的に農業を進めてまいりたいと思っております。
 次に、林業振興対策でございます。
 お話ございましたように、地球規模での環境問題が論議され、今日、森林資源の重要性がますます高まっております。県としても、森林、緑を守り、林業、山村の活性化を図るために、市町村ともども諸施策を積極的に推進しているところでございます。しかしながら、お話ございましたように、市町村の財源確保は極めて厳しい。そうした面から、本宮町長から提案のあった森林交付税の創設については、私も新しい財源を得る一つの方策だと考えております。
 しかし私は、今度の選挙を通じて特に感じましたのは、和歌山県の農業はある程度強い、しかし森林対策をいかにするかということが一番大事なことではないかということでございまして、和歌山県の森林をだれが守るんだ、林業従事者の問題をいかにするかということが一番肝心なことではないかと思っております。
 そしてまた、都会の人が、口では森林保護、自然保護と言いながら、森林について割合に知らない。森林の持つリサイクルというものを知らない。私も過日、林野庁の長官や国土庁の局長に、森林についてのシンポジウムをもっとやって森林の認識を得なければならないということを申し上げたんです。例えば、割りばしの問題一つについても、森林を守れということだけで言っておる。山林の実態、山村はどんなになっているかということをもう少し一般国民にも知ってもらわなければならないと思います。
 地方からの発想は当然でございまして、和歌山県議会の発想が半島振興法を生み出したわけでございます。そうした意味において、私もこれについては十分な関心を持ちつつ、森林振興のためにいかなる対策をするかということを、皆さんともども積極的に考えてまいりたいと思っております。
 それから、スー・チーさんの人権についてでございます。
 我が国もミャンマー連邦とは深いつながりがございますし、またスー・チー女史もかつて日本に留学されたことがございます。ミャンマー連邦の現在の状況についてお話ございましたけれども、私も心配をしながら見守ってきているところでございまして、人権のとうとさは何物にもかえがたいものであると考えております。
 今回、スー・チー女史がノーベル平和賞を受賞されたことは、国際社会のミャンマー民主化への強い期待のあらわれであり、大きな意味を持つものと私も感じておるところでございます。今後とも、こうした観点に立って、その状況を見守りながら対応してまいりたいと思っております。
○議長(山本 一君) 企画部長川端秀和君。
 〔川端秀和君、登壇〕
○企画部長(川端秀和君) 公共用地取得に関連しての公図の問題についてお答えを申し上げます。
 公図の訂正のためには、不動産登記法による地図訂正と国土調査法による地籍調査がございます。地籍調査事業は、市町村が実施している事業でございますが、土地行政に必要な基礎的資料の整備、公共事業の円滑化や土地に関する権利の明確化を図るため、本県では積極的に対応しているもので、現在、近畿では最も多い十五の市町で実施しております。さらに、平成四年度には三つの市町村が新たに着手の予定でございます。今後とも、公共事業を推進するためにも未着手市町村に対して重点的に啓発指導するとともに、関係部局と連携を深めながら、指導体制を強化しつつ一層推進してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(山本 一君) 土木部長山田 功君。
 〔山田 功君、登壇〕
○土木部長(山田 功君) ただいまと同じ問題について、土木部長から答弁を申し上げます。
 高速道路等の公共事業においては用地の確保いかんが事業の進捗を大きく左右することは、ご存じのとおりでございます。用地買収に当たっても、例えば、現在進めている湯浅御坊道路の一部において公図混乱のために支障が出ていることも事実でございますので、今後、高速道路の南伸を円滑に進めるためにも、この問題も含め、一層緊密に関係機関、関係方面と協議しながら用地の円滑な取得に努めてまいりたいと思います。
 以上でございます。
○議長(山本 一君) 農林水産部長若林弘澄君。
 〔若林弘澄君、登壇〕
○農林水産部長(若林弘澄君) お答えいたします。
 農業振興対策についてでございます。
 今、農業は、国際化や消費者ニーズへの対応、担い手の減少など、大きな課題を抱えてございます。こうした中で本県農業は、ミカン四百年の歴史に見られるように、温暖な気候、都市近郊など恵まれた立地条件を生かして、味一ミカンや高級切り花を初めとする特産品づくり等により、県内各地に数多くの活力ある産地が育成されてきてございます。
 県といたしましては、こうした産地を大切にしながら、農産物需給の長期見通しを踏まえ、適地適作を基本に、施設園芸の振興や高品質果実、花卉、野菜づくりによる高収益農業の実現こそ若者が安心して取り組める農業であると考えてございまして、今後とも一層積極的に取り組んでまいる所存でございます。
 次に、小規模な圃場整備の促進についてでございます。
 議員お話のありました中山間地域の活性化のための圃場整備等については、大変重要なことであると考えてございます。このため、補助事業の採択基準に満たないところでは、制度資金を活用して小規模圃場整備も進められてございますが、議員お話しの趣旨を十分踏まえて、今後とも低利な資金を活用しながら基盤整備を進めるとともに、技術、営農指導に努め、中山間地域農業の経営改善を促進してまいりたいと存じます。
 次に、農業振興対策の中での砂耕栽培への取り組みについてでございます。
 砂耕栽培や水耕栽培などを中心とする養液栽培については、労働力の軽減や連作障害の回避、周年生産への取り組みなど、農家経営の安定確保の面から、砂耕栽培ではごく最近、有田地域で三戸の農家が取り組んでおられ、その他の養液栽培と合わせ、県内ではトマト、ミツバ、バラなど十五・五ヘクタールの栽培面積となってございます。今後とも、対象品目の拡大や新作型の開発など、技術開発を積極的に推進するとともに、土地基盤の整備と連動した栽培施設の設置など、養液栽培の一層の振興に取り組んでまいります。
 次に、林業振興対策の中で、まず林業就労改善促進対策についてでございます。
 議員ご指摘の林業労働力の減少、高齢化の進展などの問題については、お話にありましたように、深刻に受けとめているところでございます。県といたしましても、労働力の確保対策や就労条件の改善、就労環境の整備等の施策を積極的に導入し、実施しているところでございます。また、県単独事業として、新規参入者の賃金補助制度や森林組合中核作業班に対し、社会保障制度の掛金助成や共済、退職金掛金の補助などを推進しているところでございます。今後とも、ご提言の趣旨を踏まえ、積極的に対応してまいりたいと考えてございます。
 次に、森林組合合併促進事業についてでございます。
 本県においても、過去、森林組合の合併が行われ、その成果を上げているところでございますが、これからの新たな施策展開を図る上にも、主要な担い手として広域組合へと一層体質強化を図ることは重要なことと考えてございます。このため、税制特例措置が講じられる森林組合合併促進対策事業の採択と実施を、さらに国へ強く要望してまいります。
 次に、林業用作業道開設の問題でございます。
 本県では、急峻な山岳地帯を広域的に結ぶ基幹林道やこれに接続する支線林道など、林道の体系的整備に鋭意取り組んでいるところであり、森林資源が充実期を迎える二十一世紀の初頭を間近に控え、とりわけこうした林道に接続するきめ細かい作業道をできるだけ早く整備していくことが急務となってございます。
 作業道の整備については、現在、国庫補助事業を計画的に導入して実施しているところであり、また国庫補助の対象とならない作業道の開設については、特別措置として県単独の小規模林道開設事業を実施しているところでございます。この事業は、測量、設計費の節減を図る観点から、工事の出来高確認でもって補助金交付をする仕組みとなってございまして、年々地元の要望がふえつつございます。今後、作業道を含めた林内路網の早期整備を図るとともに、市町村に対しても作業道開設への体制強化を一層強く指導してまいる所存でございます。
 最後に、漁業の振興策についてでございます。
 議員ご指摘のとおり、養殖漁業の振興、流通改善、経営基盤の改善は、まことに重要な課題でございます。
 まず養殖業についてでありますが、ご承知のとおり、海面漁業は気象条件に左右されやすいことから、陸上養殖を導入するなど複合的な漁業経営を推進し、所得の安定を図っているところでございます。今後とも、補助事業、融資事業などを積極的に活用することにより対処してまいりたいと存じます。
 次に、流通問題については非常に難しい面もございますが、現在、水揚げが小規模で分散している地域については、集荷の集中化等により魚価の安定が図れるよう指導するとともに、高収益が期待できる活魚出荷を促進するため、引き続き施設の整備を図ってまいりたいと存じます。
 また経営基盤の改善については、栽培漁業の推進等の振興策が基本であることは申すまでもございませんが、近年、都市住民の海洋性レクリエーションに対する志向が高まっておりますので、海域の高度利用を考慮しながら漁村の活性化を図ってまいりたいと存じます。
 以上でございます。
○議長(山本 一君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 6番木下秀男君。
○木下秀男君 大変丁寧なご答弁、ありがとうございました。
 一昨日も、くしくもほとんど同じように南北格差、北高南低という意見で一致しましたが、議員として同じ見方であるということで、この後も多くの皆さんがその点をつかれるとも思いますけれども、知事が五期目に当たってここで表明されたことについて、積極的な推進をお願いするものでございます。
 橋本議員から、用地交渉について新たに担当部局をという話もございましたが、今、企画部長から答弁のあった公図についても、大変困難なことは承知しております。しかし、現時点で聞くところによりますと、県がお粗末を通り越したような人数しか配置していないようでございますので、この点もあわせて検討していただいて、用地取得を先行していくための人員配置について特別な配慮をお願い申し上げて、これは要望でございますので、私の質問を終わります。
○議長(山本 一君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で木下秀男君の質問が終了いたしました。

このページの先頭へ