平成3年9月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(上野哲弘議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

○副議長(平越孝哉君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 34番上野哲弘君。
 〔上野哲弘君、登壇〕(拍手)
○上野哲弘君 通告に基づきまして、一般質問を行います。
 この権威ある和歌山県議会で発言できますことを、県民の一人として光栄に思っております。本来、県政全般にわたっての質問が適切であろうかと存じますが、現在、地方における問題点が数多く見受けられますので、県政における地方問題として提起いたしたいと存じます。
 さて、第一点の新宮川水系のダムによる汚濁問題であります。
 発電による濁水が近年ますますひどくなってきております。ご存じのとおり、新宮川すなわち熊野川でありますが、古来から清流をメーンとした瀞峡で有名であります。その清流が昭和三十年代の一連のダム群の建設により三十数年の経過とともに濁水が長期化し、下流の方で潮が引くと河川の石ころは泥で覆われ、アユのえさであるコケ等が全く見当たらない状況であります。このダム群は十津川と北山川に分けられますが、十津川水系の風屋、二津野ダムがその汚濁の主役となっております。元来、十津川水系の土質は悪く、雨が降ると土砂がダム湖に流入し、濁水となって下流に流れているのが現状であります。
 ダム建設当時、二年もすれば清水に戻るということで地元民はこのダム建設に同意をいたしました。しかし、年がたつにつれてますます水質が悪化し今日に至っております。この問題で、流域自治体等で結成されている水対連においても長年にわたって論議されてきましたが、いまだ抜本的解決はされておりません。また、電源開発においても今日までそれなりの施策は講じられてきましたが、満足できるにはほど遠い感がいたします。
 私は、河川というものは五年、十年単位で考えるのではなく、五十年、百年の考えでもって対処すべきものと思っております。中国に「百年河清を待つ」という言葉がありますが、まさにそのとおりかと思っております。現在、地球全体の環境破壊が進行している中で、あらゆる分野の環境問題が提起され論議されておりますので、我々の身近な問題として提起したところであります。
 本題に入りますが、さきに申し上げたように、汚濁の原因はダム湖に長期間濁水を貯水し、それでもって発電するからであり、特に二津野ダムの発電が下流に多大の影響を与えております。この際、せめて発電量の少ない二津野ダムでの発電を全面的に停止し、治水専用ダムとすべきではないかということであります。
 そこでお聞きしたいのは、営利事業としてのダム建設で、その建設費の減価償却は何年になっているかということであります。今日において発電による収入でダム建設の費用がペイされるのであれば、ある程度の目的は達せられたと解すべきで、特にダムによる被害が重大であるのであれば発電は停止し治水専用ダムにすべきではないかということであります。河川管理者、利水者、地元関係団体は今後のエネルギー問題を含め新しい観点に立って論議すべきと思いますが、いかがでありましょうか、その見解をお聞かせ願いたいと思います。
 また、観光立県として和歌山県が位置されておりますが、この新宮川汚濁をどのように考えておられるか、あわせてお願いいたします。 次に、第二点の地方における活性化対策についてであります。
 「地方の時代」と言われてから久しくなります。その間、都市への人口が集中し、地方での過疎化が急速に進行しております。それは、社会の変化と高学歴化による職業の選択に地方の産業が対応できなかったところにあります。特に、地方企業においての合理化、地方の基幹産業である農林水産業での後継者の減少等、地方での生活ができなくなるような現象が生じたためと思っております。その中で、全国自治体が地方の活性化のために企業誘致を積極的に推進しております。和歌山県においてもその例に漏れず企業立地を図っておられますが、いまだ県下隅々まで行き渡っていないのが現状かと思います。
 今、地方に求められておるのは、各地がどのような対策を講じられるか、また国、県がどのようなバックアップができるかということだと思いますが、要は今後、日本はどのような社会になり、いかなることが必要となってくるかが対応を進める上で重大な要素になると考えられます。企業誘致以外に地場産業の育成が考えられますが、今日、人口減が顕著な地方においては民間資本の蓄積が少なく、業界だけでは余り期待できないと考えております。
 そこで、自治体の資金及び人材を必要とした第三セクターを拡大すべきかと思いますが、その点について申し上げますと、例えば地元新宮市の場合をとりますと、市の職員の募集に数十倍の応募があります。その大多数は採用の選に漏れて就職できない状態になっております。それらのUターンを含めた若者を地元で活躍させることができるか、そのことが非常に重要な問題になっております。当然、そのことについても行政は積極的に対応すべきと考えております。すなわち、行政、民間が一体となって若者の定着と人材確保を目指した第三セクターを推進すべきと考えますが、当局の見解をお願いいたします。
 次に、町づくりと新宮市内への導水についてであります。
 再度、地区の問題でありますが、お許しを願いまして質問いたします。
 この町づくりに関しては、それぞれ県下各地の問題として取り上げていただければありがたいと存じます。
 新宮という町は、太古の昔、徐福の渡来から始まって、平安の熊野もうでから明治、大正、近年に至るまで、歴史的あるいは文化的な町として評価を受けてきたと思われますが、現在、町の活性がなくなった中で中途半端な町になってしまったと感じております。経済的な活性を求めることはもとより、歴史的、文化的要素を取り入れた町づくりが今必要となってまいりました。これからの地方における町づくりの基本は、日本の社会の変化と地方の時代を合体させたものが求められ、また町にはそれぞれ特徴があり、それを生かす施策が本来の目的になろうかと思います。
 それでは、町それぞれが何を生かせるかということでありますが、今日、我が国における大きな施策の一つとしてウォーターフロント計画が脚光を浴びております。この計画は当初アメリカでの港湾整備から始まり、その後、川とか湖にも波及してまいりました。市街地における河川を治水という単独の事業だけで整備することには限界があり、町づくり、すなわち市街地の再開発や地域整備と一体的に進め、環境的にも景観的にもよりすぐれた水辺空間の創造あるいは回復を図るべき考えが広まって今日に至っております。このたび市内への新宮川からの導水が計画され、国、県、市が一体となって実行されると聞きましたので、その現況をお聞かせ願いたいと思います。
 また、私なりに聞いた話でありますが、新宮川はもともと新宮市内を流れており、数千年あるいは数万年の自然の変化により現在の河口になったと聞いております。その形跡は、市田川あるいは浮島の森として残されております。最近、新宮は浸水で非常に市民が迷惑をし、行政の対応に不満を持っております。そういう対策も踏まえた整備が今必要になってきておりますが、時宜に応じたウォーターフロント計画が市の特性を生かすことができるように、県の役割として市に対するバックアップと国に対する要望をお願いするところであります。この件に関して、当局のご答弁をお願いいたします。
 以上でございます。
○副議長(平越孝哉君) ただいまの上野哲弘君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 上野議員にお答え申し上げます。
 第一点の、新宮川ダムの汚濁については関係部長から答弁させていただきます。
 それから、地方における活性化の問題でございます。
 「活力と文化あふれるふるさとづくり」、これは長期計画における私の基本目標でございまして、二十一世紀に向けて活力のある、そして県民一人一人が真に豊かさを実感できるふるさとづくりのために、特に農業、林業等の地元産業、地場産業並びに企業誘致等による産業の振興、リゾートゾーンの整備促進等を中心に進めておるわけでございます。また、紀南、紀中、紀北といった地帯構想に基づいて広域的発展も図っておるわけでございます。そうした中で各種プロジェクトがございますが、特にリゾート法が制定されて、これに基づいて紀南地方の発展を図らなければならないということで現在進めつつあるわけでございます。
 しかし、何と申しましても地元が一番主眼でございまして、県も新宮地方については開発公社において宅地造成等の工事もやっておりますし、道路網の整備等もやっております。また、ことしの六月にはTAP90''sを開催して、日本の中における紀南地方の観光という問題についても検討していただいたわけでございます。従来まで交通が不便であったけれども、今度は和歌山の方からも三重の方からも交通網の整備というものができ上がってきますので、そうした交通網の中でいかにやっていくかということを考えなければなりません。特に林業が不振になっている現状でございますので、それにかわるべきものをこれからなお一層積極的に考えなければならないと思っております。また、第三セクター方式等の問題についても県としても十分考えていきたい。しかし今、新宮でソフトの開発を行う第三セクターをつくっておるようでございます。そうした形で進めていただいたならばありがたいと思っております。
○副議長(平越孝哉君) 土木部長磯村幹夫君。
 〔磯村幹夫君、登壇〕
○土木部長(磯村幹夫君) お答えいたします。
 まず、新宮川水系ダムによる汚濁問題の対応についてでございます。
 新宮川の汚濁については、地元の状況を十分認識しており、その対策に大変苦慮しているところであります。新宮川水系における水質汚濁防止を図るため、学識経験者、国、県、市町村及びダム設置者で構成する新宮川水質汚濁防止連絡協議会において継続的に調査研究を行い、水質汚濁の防止に努力しているところであります。
 本協議会を通じて実施された濁水軽減対策は、各ダム湖の湖岸崩壊防止のための護岸工事、風屋ダム、池原ダムの表面取水設備の設置、淡水赤潮対策として風屋ダム、二津野ダムではプランクトンの回収処理を行っており、水源地域における治山、砂防工事等も実施しております。また風屋ダム、二津野ダムでは、濁水の長期化に対処すべく洪水時に濁水の早期排出を行い、発電を停止して清水を貯留する方法を平成二年度から試行的に実施しており、濁水軽減の効果を上げております。
 議員お話しの新宮川に清流を取り戻すべしというご趣旨については、よくわかるところでございます。県といたしましては、最近の社会情勢の変化、地元の意見を十分に踏まえ、新宮川に清流を取り戻すための十分な対策が講じられるよう関係機関に対し強く働きかけてまいります。
 次に、町づくりと新宮市内への導水についてでございます。
 昭和六十三年度に、県、市が共同して河川環境の保全並びに地域住民の生活環境の向上を目的とした新宮ウォーターフロント整備計画を策定しております。さらに、本年度から国、県、市合同で市田川総合河川対策行政検討会を設け、その中で市田川、浮島川の水質浄化対策を含め、新宮市が作成する町づくりと川づくりが一体化した計画の検討を行うこととしております。その一環である河川の水質浄化対策については、現在、国において新宮川本川からの浄化用水導入のための全体計画を策定中であり、地元同意が得られれば早い時期に着手する予定と聞いております。県といたしましても、関連して必要な取り組みを行ってまいります。
 以上でございます。
○副議長(平越孝哉君) 商工労働部長中西伸雄君。
 〔中西伸雄君、登壇〕
○商工労働部長(中西伸雄君) 上野議員にお答えいたします。
 観光行政と汚濁についてでございます。
 吉野熊野国立公園に位置する新宮川水系は、水辺に親しめる豊かな自然環境に恵まれ、ウオータージェット船による瀞峡観光や北山川の観光いかだ下り、さらには川湯の野営場のキャンプ等、四季を通じてにぎわい、年間約二百万人の人々が訪れる本県有数の観光地でございます。
 県といたしましても、新宮川の魅力をアピールするため、地元市町村と協力してカヌーマラソン等のイベントを展開しているところでございます。今後とも、より多くの観光客を迎え、また当地域の活性化を図るためにも新宮川の汚濁防止は欠かすことのできない課題であると考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(平越孝哉君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 34番上野哲弘君。
○上野哲弘君 新宮川を清流に戻したいというのは地元の悲願なんですが、最近、特徴ある町づくりということで個人的に考えますと、経済的にも余り伸びないということから、自然だけでも残してほしいという切なる願いを持つものです。
 それで、二津野ダムを治水専用にということは、現在、五万キロほどの発電量であり、三十数年前と比べ、今は技術革新等で百万とか二百万キロワットという時代ですので、こういう形のダムを考えてもらえないか、そういう意味で申し上げました。エネルギー問題もいろいろ難しい時代になっておりますが、今後そういう面も踏まえてこの問題をひとつ考えていただきたいと、そのように要望しておきます。
 それと、第三セクターについての考えですが、昔は新宮地域も新宮鉄道とかパルプ工場とかを地元の財界が興したということを聞いておりますが、現在ではそういったものを地域だけで興すのはなかなか難しい。企業誘致が手っ取り早くて一番いいんですが、場所等いろいろ問題があろうかと思います。これから若い人のUターンを受け入れるためには、やはり地場産業の育成が非常に重要になってくるんじゃないかと思います。
 そこで、個人の商店とか企業だけではなかなか人を集められないという面も踏まえて、ぜひ行政も加わっての第三セクターという一つのまとまった職場をつくる必要があるんじゃないかと考えております。この辺もひとつ検討をお願いしたいと思います。
 それと、町づくりの問題です。
 先ほど馬頭議員が、教育問題で画一的な教育をやっておるというようなことを言われましたが、全くそのような感じがするわけです。今の自治体を見ると、各自治体は皆同じ制度で物事をやっており、その自治体の特徴を生かしていないんじゃないかという感じがするわけです。
 今回、そういう市内の計画があるということですので、単なる整備事業だけではなしに、町づくりの一環として日本の各都市に負けないような整備をするとか、あるいは今は情報化社会ですから、そういうものを合わせた中での町づくりの事業にしていただきたいと、そのような思いで質問いたしましたので、そういう見解のもとに今後ともよろしくお願いしたいと思います。
○副議長(平越孝哉君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で上野哲弘君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
○副議長(平越孝哉君) 本日は、これをもって散会いたします。
 午前十一時三十分散会

このページの先頭へ