平成3年9月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(馬頭哲弥議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 午前十時三分開議
○副議長(平越孝哉君) これより本日の会議を開きます。
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○副議長(平越孝哉君) 日程第一、議案第百十二号から議案第百三十六号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 31番馬頭哲弥君。
 〔馬頭哲弥君、登壇〕(拍手)
○馬頭哲弥君 昭和六十二年、日本じゅうが大騒ぎとなった売上税というテーマがあって二月議会において質問に立たせていただいて以来でございまして、大変懐かしくも存じておる次第でございます。
 ところで、その直後の選挙で私は落選をいたしました。選挙というものは、えてして勝てると思ったときに危ないものであるということが初めてわかった次第でございます。
 自来四年、人々は浪人中の私をして「充電期間中だから、まあ達者で頑張れよ」というお励ましをいただきました。「充電期間」とは、まさにうまい言葉でございまして、これには逆らえんわけであります。よく考えてみると、折しもバッテリーが大分空になっておった時期であったのかもしれません。本人が気づかなかっただけであります。しかし、例えて申しますならば、きのうまで着ていたものや持っていたものを一遍に失うわけであります。しまいには長年連れ添った水虫までいなくなってしまった、選挙のとき、こんな話もいたしました。そういう中ですから、内情は見かけより、確かに苦しくないことはないわけであります。
 しかし、日がたってきますと、頭に上っておった血がだんだんどこかへ行き、雑念、我執というようなものが薄れてまいります。私の場合それは何だったかと言いますと、選挙に落ちたことと自由というものを引っかえたような気がしたのでございます。自由を授かった。晴耕雨読というほど立派なものではございませんけれども、公的な仕事は何もないわけですから、田舎に帰りまして畑を打ったりいたしました。植木屋さんのまねごとをしてみたり。石垣積みはかなりな腕前になったと自負しておるのであります。そういう雑草、土との闘いの中で明け暮れて暮らさせていただいて、夢中に労働をしてまいりました。読書三昧に飽きて、海、川に釣り糸を垂れて、これもまた楽しみのものでございます。浪人して暇だと言いましても、しかし漫然と生きていけるわけではございません。蓄えた財産がそんなにあるわけでもございませんし、ましてやゴルフやマージャンで稼ぐ能はさっぱりないわけでありまして、できることと言えば、せいぜいむだなことをカットすることぐらいで、一遍何もかも放ってしまう、そういう心境に立ち至ったときに省エネというものは意外とやってみればできるもんだな、それで当分の間生きていくんだと、こんな気持ちがしたのでございます。
 そんなときに、ふと読んでおった本の中に、陽明学を唱えた王陽明が弟子の王純甫に与えた手紙が目に入りました。「天下のこと万変なりといえども、我がこれに応ずるゆえんは喜怒哀楽の四者を出ず。これ学をなすの要にして、しこうして政をなすもまたその中にあり」、こんな言葉でございます。わかりやすく注釈がございましたが、人生は千変万化さまざまなものである、しかし、私がてきぱきといろんな問題を処理し答えを出していける理由は、幾ら難しいことを言ったって突き詰めれば人生には喜怒哀楽の四つしかない、喜ぶか、怒るか、悲しむか、楽しむか、この四つの枠組みの中にあるということを知っているか、こんなことを教えておるのであります。
 これは、いわば人生の哲理であるかもわかりません。そうなると、現在の私も、当然この喜怒哀楽の四つの枠の中で行かないかん。しからば、怒ってばかりはおれません。これはもう捨てないといけません。悲しんでばかりもいけません。哀はない方がいい。もう、喜ぶことと楽しむこと、この二つの道しかないなと、こんなことを思いました。生きた政治というものも、つまるところは万人の幸福でありますから、さすがに偉い人の教えはそうむだがないと、岸本さん、こんなことを感じたんであります。もとより私はその域に達するだけの才知はございませんが、しかし、こういう言葉に渇きをいやす思いをしたことは事実でございました。
 しかし、生まれ在所の田舎というもの、知事さんの言われるふるさとというものはいいものであります。畑を掘って汗みずくになってやっておりますと、きのうの日常が何かむなしいような感じもせんではなかった。正直な気持ちでございます。落選と引きかえに平地へおろしてもらったんでありますから、あたりの景色もだんだん見えてまいります。つまらん田舎だなあと思っていたのに意外といいとこもあるんやなあと、そんなことにも気がつくのであります。平衡感覚が戻るというのは、ひょっとしたらこんなんかもわかりません。みんな、本当のことも教えてくださいました。「声なき声」というのがありますけれども、議員でおったときは聞こえなんだ。そんなものは聞こえるもんかいと思っておりましたら、声なき声が意外と聞こえてくるんです。自然環境と人間社会の真実というものは、まさに「あざなえる縄のごとし」。私のような不徳の者にとってもいい勉強になったと思っております。「我に友ありてよみがえり、我また地の塩たらん」と、そんな決意をひそかにいたした次第でございます。
 以下の私の幾つかの質問は、落選中の地べた、街角で拾った当たり前のテーマでございますので、ひょっとして当局のお考えに沿わないものであるかもしれませんが、どうかひとつお許しをいただきたいと思います。
 まず最初に、知事にお尋ねをいたします。
 仮谷知事就任以来の十数年は、まさに百年の歴史を語って余るほど変化、変革の時代であったように思います。この世界的な疾風怒濤の変革期が県民の意識改革にもつながって、知事の提唱される諸施策は堅実に実行せられ、あるいは軌道に乗りつつあることは、まことにご同慶にたえないところでございます。
 そうして、もう一つの側面がございます。その内的な側面は、政治家仮谷志良氏にとって、緒戦以来四回の選挙が県を二分するような激しい対立を生ずることなく来たということであります。政治家として仮谷知事には、幸運の神さんがついておるわけであります。つまり、運気、運勢というものが強い人を選んだ県民が偉かったんじゃないか、そんな気持ちがするのであります。和歌山県は、仮谷県政発足以来、政争なき時代に入ったと言えると思うのであります。血で血を洗う醜い政争の中から、輝ける希望や心の豊かさは生まれるものではありません。
 こうした平和の上に立って、知事の掲げられた三つのスローガンは、そのリーダーシップよろしきを得て着々と布石され、県民の支持とともに今日に至っておる、私はこのように解釈をいたしておるのでございます。現に、「まごころ県政」の浸透度を示すバロメーターとして、十月の知事選挙に支持協力を表明された各政党あるいは各種団体の協力態勢はこれを如実に物語っておると考えます。
 私は、故大橋知事急逝の後を受けて仮谷知事が就任せられた後の一般質問で、幾つかの角度から仮谷県政の基本理念、政治哲学をお尋ねいたしました。これに対し知事は、豊かで風格のある県土をつくっていくという力強い表明をされたのであります。知事は、この四選締めくくりの本議場において、十六年を振り返っていかなる感慨をお持ちであるか、その実績と自信の上に立って第五期県政を担当されんとする今、時あたかも政治家として率直な男子の志を吐露されたいと願うのはひとり私のみではないと思います。お伺いをいたしたいと思います。
 次に、今日、まことにもってたやすいと言えばたやすい、しかし最大の難問となりつつあるんではないかと考える出生率の低下の問題について質問をいたします。実は、この原稿も産みの苦しみを味わいながら書いた次第でございますが、県政の歴史の上でかつてなかった最重要課題とも言えるテーマであると思うのであります。
 本年六月、厚生省の発表によって、全国的な出生率低下の問題がにわかに持ち上がってまいりました。世間は、あっと言ったのであります。我が県にとっても、これ以上のお家の大事はないと考えるのであります。厚生省の発表した資料には、「出生率は予想外の低下を続けてきた」と、はっきりその予測が間違っていたことを冒頭に述べております。以来、いずれの新聞を見ても、いろいろ原因は論評されておりますが、親が自信を持って子供を生めるような具体策については何も触れられておりません。中には、過渡期を過ぎたらまた子供はふえてくるというような、比較的楽観的な新聞の論調もありました。
 しかし、そう言っている間にも、我が和歌山県は日を追って出生率が下がっておるのであります。厚生省が考えておるような、わずかな児童手当程度のことでどうにもなるものではないと私は思うのです。それこそ、政治の課題であります。他府県は知らず、我が県において全国平均を下回る一・五○の出生率は、県政の将来を思うとき、まことに寒心にたえないのでございます。このまままいりますと、知事の言われる「明日を担う人づくり」も生きてこないことになるんではないか、むしろ逆に、二十一世紀は和歌山県にとって衰亡の危機をはらんでおり、この問題がその予兆ではないかと思います。
 昭和六十二年に、和歌山県長期総合計画の説明会が自民党の控室でございました。そのときにこれを拝見して、大変バラエティーに富んだ長期構想まことに結構だと思うが、子供をつくれという項目がひとつも入っていないのはおかしいんじゃないかと、当時説明してくださった川端さんにお聞きしたことを今でも覚えておるのであります。川端さんも覚えておいでかもしれません。直観的に聞いたわけでございます。そして今日、この演壇から県民の皆様に出生率低下の実情をもっとご理解いただくとともに、広く協力をお願いしていく手だてを講じるべきだと思うのであります。
 今まで、一次産業の後継者が少なくなっているとか都会からのUターンを期待するとかいったことは、各自治体でも本議場でも随分と論議をされてまいりました。県の言う人づくりも、おおむねそういうでき合いの、企業なら企業をつくって、やってきてくれるであろう人たちを対象にしながら物事を考えてきたと思うのであります。しかし、もっと本質的に、赤ん坊の数が年々減っていっているんだという、この大事について思い至ることが、あったんかもしれないけれども、薄かったように思う。
 子供をつくっていくという政策のないところに県政衰亡の危機──と言ったら大げさかわかりませんけれども、子供がいなくなっていけば家は滅びるのが倣いであります。そのことから考えても、県でも国でも同じ道理ではないでしょうか。昔は、子供は天からの授かり物として、何人生まれようと親たちは、特に母親はどんな犠牲を払っても子供を育てるという気概を持っておったように思います。我々の母親は、たとえ戦争に負けても、食べ物がなかった時代にも、そのけなげな考え方は変わらなかった。だから、今の復興も、それに伴う驚異的な経済発展も、しっかり子供を生んでくれたからなし得たのではなかっただろうか。そして、今や経済力も長寿も、世界一を数えようとすれば数限りなく数えられる状態になり、物的なものはそろっておるのにかかわらず子供の出生率は低下する一方だという大変な矛盾、思わざる落とし穴がここにあったという、このことに真剣思いをいたさなければならんと考えるのであります。
 昨今、家庭では一人でも子供を少なくとめていきたいという考え方もあるやに聞きます。これは、必ず何か理由がある。マスコミは、これを「無産時代」と言います。あるいは、「出産ストライキ」なんという本も昨今出ました。非婚がふえ、離婚の率も高くなっておるという現況に立てば、来るべき世代への期待というものが薄らいでいくように思います。
 申し上げるまでもなく、このまま推移すれば、ごく近い将来、逆三角形の人口構造になるおそれがないとは申せません。そうなると、あらゆる社会の仕組みは瓦解をいたします。六、七年後には、子供よりお年寄りの人口が多くなる。これはもう、だれでも知っていることであります。お産の数より葬式の数の方が多くなるんですよ。十年後には、「労働生産可能人口」という難しい言葉ですが、四人で一人のお年寄りを見なくてはならないと厚生省は言うておるんです。これは当たると思います。もう、人口の地殻変動が始まっておる。そうなれば国力も低下いたします。GNPどころの騒ぎじゃないし、外国に援助するなんてとんでもないことになるわけであります。世界の三流国に転落する可能性だってあるわけであります。適切大胆な政策が必要だと申し上げたいのであります。
 本議場の知事初め議員各位におかれても、特に本年当選せられた若手のばりばりの現役議員諸公もひとつその辺に思いをいたされて、議会が率先して生産性の向上に一大馬力を発揮せられ、実行力を発揮せられるならば、またこれ政治のリーダーシップが評価されることにもなるんじゃないかと思います。これは冗談ではなしに、世人の勇気を百倍するためにもこの機会に皆さんのご理解をいただかなければいけないなと、こんなことを考えておるのであります。そうすれば、かくのごとき演説は杞憂にすぎなかった、こういうふうなことになるかもしれない。むしろ私は、そのことを期待するものであります。知事及び企画部長のお答えをいただきたいのであります。
 次に、教育問題について若干お尋ねをいたします。
 できるだけ前置きなし、理屈抜きにお尋ねをいたしますので、同様に率直なお答えをお願い申し上げたいのであります。
 その一つは、一例として申し上げますと、日高、西牟婁、田辺地方合わせて百人以上、ひょっとしたら百二十人くらいになるかもしれませんが、講師をもって教育の現場を埋めておるのが実情でございます。特に西牟婁は、その中でも数が多うございます。これだけの人たちが、あくまでも臨時の先生として頑張ってくれておるわけであります。長い人は、何年も一筋に精励してくださっている。その熱意も技能も人柄も、まことに敬服のほかなしというような講師先生が多くおられます。しかし、そういう人が、一枚のペーパーテストで先生になれない、合格しないということで、ずっと講師に甘んじていなければならない。中には、婚期まで逸してなお教育一筋に取り組んでいる女性の先生もおられるわけであります。五回、六回と試験に挑戦をする粘り強い人もおります。しかし皮肉なことに、朝から夕方暗くなるまで一生懸命頑張って勤める先生ほど試験に受かりにくい。当たり前であります。今は試験のテクニックが大変要求される時代でありますけれども、勉強に打ち込むことができないから試験が受かる道理がないのであります。それだけ教育現場で一生懸命打ち込んでいるということです。こういう人たちは、正規の教員としての資格は持たないけれども、生徒に慕われ、父兄に敬愛される立派な先生であります。
 教育委員会は、これらの人たちの貢献度をどう評価してくれているのであろうか。私は長年このことを疑問としてまいりましたが、一定の勤務評価に基づいてこうした人材に道を開く考えはないか、このことをお尋ねしたいのであります。
 ちなみに、ハーバード大学というところには人事部長さんという権威ある立場の方がおるのであります。この人事部長が、最終的な入学の可否を決定する権限を持っておるらしいですね。ケネディがハーバード大学の試験を受けたときに、無条件に合格というような成績ではなかった。しかしこのときの人事部長は、この男に見どころありと見抜いて入学を許したということであります。それが、後のアメリカの大統領であります。国内にも、かくのごとき事例は幾らでもあるように思うのであります。お答えをお願い申し上げる次第であります。
 二つ目は、希望に燃えて着任をしてくださる新任の先生についてであります。
 例えば、田辺市に他郡市から来てくれる。しかし、そのうち帰ってしまう。つまり、定着性がない。当たり前であります。自分のふるさとへ帰って教壇に立ちたいと思うのは、だれしものことであります。最近は少しはそういう部分も解消されつつあるようでありますが、特に初等教育段階では、その先生が生まれ育った周辺地域の学校へ配置するようにお考えをいただいて、誇りを持って勤めてもらうことが望ましいと思うのであります。あえてこれを「ふるさと教育」と言うならば、これは血につながり、心につながる生きた教育実践の効果も必ず生まれてくると思います。第一、異動のロスを省けるだけでもプラスではないかと思うのでありますが、教育長、この点はいかがでありましょうか。
 三つ目は、私が十年以上も前に質問したことでありますが、昨今とみに、どの高校も平均化してしまって個性がなくなっております。幾らファジーが流行だからといって、いかに公立といえども、各高校それぞれに個性があってしかるべきだと思うのでありますけれども、普通科は進学校としても徹底していないし、職業科高校もその生徒の一生を左右するかもしれない技能を習得するには何となく普通科的で、ぼやけた存在になっております。西川教育長、特にあなたは個性に富む方であります。ひとつ忌憚のないご意見を承りたいと思います。
 四つ目、教育現場に中途半端は百害あって一利なし──こんなことを言うと教育委員会は大変嫌うんですけれども、中途半端ぐらいつまらんものはないのであります。そういう側面と、一方では偏差値万能主義という、これまたまことにかたくなな傾向が年々強まる側面とがございます。
 例えば、同和教育なんかもこれからが非常に大事な時期に入っていく。現場には人権教育とか平和教育──平和教育というのは私は何かわかりません。わかりませんが、あるんだそうであります。はたまた、生徒指導であるとか学力向上であるとかエトセトラ、いろいろ理想をたくさん並べ立ててやっているんだという割には実効性が伴っていないのではないか。概念対概念の中から血の通った生きた教育は育っていかんと私は思うのであります。
 例えば、県立高校における国旗掲揚や国歌斉唱なども、実態は一向に実行が伴っておらんのではないか。教える側の先生が、たわいもなく国歌斉唱のときに立ったや座ったやと、こんなことで、子供みたいにだだをこねるみたいに得意がっている。その先生方の背中を生徒たちは常に見ているんですよ。悪い教育実践の側面ではないかと、私は常にそういう苦い思いで今日まで来ておるわけであります。中途半端な先生の姿である。立つんなら立て、立たんのならもう立つなよ。はっきりしてもらわなければ、教育の現場というものは崩れていくばかりではないかと私は心配をいたします。
 また最近、某高校で一つの出来事がございました。父兄から朝五時半ごろ電話がかかってきました。そして、「保護者である私の知らんうちにうちの子供が退学になるらしい。先生、これどういう理由か一遍学校へ行って聞いてきてくれ」という話であります。
 私は、校長さんがお見えになるのを待って学校に行き、状況についてお尋ねをしました。そうしたら、「ああ、そのことでしたら、もう職員会議で決まっております」と。あっけにとられました。まことに明快、さわやかなお返事であったからであります。二の句が継げなかったのであります。そうしていろいろ尋ねますと、今度は言いわけにどっと汗かいて、いかにその職員会議の決定たるものが正しいかということを説明し、私を説得されようとなさる。「先生、えらい汗やの。同じだけの汗をこの子のためにかいてやってくれたか」、僕はそう聞いたのであります。退学を決めて命令するのは職員会議か校長か、この機会にぜひお教えを願いたいのであります。これなども、その過程、まことに中途半端と言わざるを得ないゆえんであります。
 また、その子が学校を退学すると一層ワルになって、その地域で群れをなしたり、もとおった学校へ誘いに来たり、暴走族になったり、シンナーを吸ったり、あるいは暴力団の予備軍の手下になったりというようなことが随分あるわけであります。そういう者のたどる悲しい、かわいそうな側面も追跡調査をされたことがあるのかないのか、お教えをいただきたい。
 言うまでもないことながら、教育は人であります。人が人を教え導くのでありますから、楽な仕事ではありません。私は、これは文化的な格闘競技だと思っております。特に今日のように社会が複雑多岐になると、昔のような厳しさ一本やりというわけにまいらんことは承知いたしております。初等教育から大学入学までの間に詰め込まれた細切れの知識は膨大な量であろうと思うんです。私どもは、子供のころは山や川でぶっ倒れるまで遊んだ。奔放自在に遊ぶということをさせていない。人間の大事な成長過程において、その結果は何らかの支障を来すことになりはしないか、心配であります。
 しち難しい理念、理屈よりも、世の中万事金次第。人間の生きる指標が金や権力ではかられるような時代が続くと、共産主義崩壊の次に来るのが資本主義、民主主義の崩壊にならんとは限らんと思うのであります。だから、しっかりした教育、生きた教育をしてもらいたいという吾人のひたすらなる願いがあるのであります。先生方も偏差値の高い学校に何人入れたかということに血眼になって、それが教育の効果だと本気で考えておるんだったら、私はこれは間違いだと声を大にして申し上げたいのであります。教育効果なんて、その生徒が長い一生を終わって棺おけのふたをして初めて、その人物が社会に貢献したか、立派な人であったか、そこでわかるのではないでしょうか。教育はまさに百年の計だと申し上げるゆえんであります。
 これらについての最近の実情、あるいはまた改善策についてお考えをお示しいただきたいと思うのであります。
 終わりに、地元の問題について三点、お尋ねをいたします。
 一つは、芳養漁港の整備計画についてでございます。
 これに伴って、芳養の松原、井原地域の集落再編成の計画が準備中であります。リゾート計画も、長年にわたり地元住民の熱望しておるところであります。特に昨年は、何と歴史始まって以来、田辺湾を軸にして四つの招かざる客、台風がやってまいりました。この地域の住民の皆さんは、毎晩、眠るどころの騒ぎじゃなくて恐怖の夜を送りました。本事業は、防災の側面から考えても極めて大事でございます。既に市長を中心にして陳情も重ねておりますが、積極的な当局のお考えをお示しいただきたいのであります。
 二つ目は、扇ケ浜総合整備事業への取り組みであります。
 知事もご存じのとおり、旧田辺中学時代の扇ケ浜周辺は白砂青松、一幅の絵とも言える景観であったはずであります。今日、見る影もないのであります。海の汚れによって、名物だった遠泳も海水浴もできなくなって久しい。私は今日、この壇上で「海を汚したのはだれだ」という論議をするいとまはございませんけれども、詩人佐藤春夫先生が生きておられても、もはや「望郷五月歌」のような雄大素朴な詩情が生まれるとは思えないのであります。今日、県下で、それぞれの地域、ふるさとをどうするかは最大の行政課題であります。知事は、多感の青春をこの扇ケ浜を庭として旧制田辺中学で送られました。
 本件は、本年度から調査費がついております。複数省庁のセクションにまたがる面倒な事業であるかわかりませんが、芳養湾と並行して積極的な取り組みを強く希望するものであります。知事及び所管部長のお答えをいただきたいと思います。
 三つは、文里湾の整備計画の継続についてであります。
 既に第八次計画に組み入れられておるのでありますが、事業規模がまことにもって小さい。事業規模が小さいことを考えるから予算がつかんのか、予算が小さいから事業ができんのか、これは私にはわかりませんが、延々第八次計画までちびちびやってくれておるけれども、本当に効果が出てくるのは私が死んでからではないかなと思うのであります。願わくは、文里湾再開発のためにいろいろ考えておるプロジェクトに弾みがつくぐらいの予算措置をされるならば、その波及効果は絶大なるものがあろうと確信をいたします。これらの見通しをお聞かせいただきたいと思います。
 以上で終わります。ご清聴ありがとうございました。
○副議長(平越孝哉君) ただいまの馬頭哲弥君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 馬頭議員にお答え申し上げます。
 四期十六年を振り返っての感想と今後の考えでございます。
 十六年と申しますけれども、私にとってはきのうのような感じがいたします。私も就任以来、一貫して県民の幸せのために県政がいかにあるべきかという命題のもとに全力を投入してまいったわけでございます。その間、石油ショック、円高不況、財政逼迫など、厳しい時期が多うございました。しかし、皆さん方のおかげで県勢も発展し、今日に立ち至ったこと、まことにありがたく思っております。すなわち、平成六年に開港する関西国際空港、高速道路の延伸、白浜空港、企業誘致等、あすの和歌山をつくり上げる基礎固めができつつあります。これひとえに議員の皆さんや県民の皆さんのおかげだと、心から感謝申し上げている次第でございます。
 七月二日に、本議場において五選出馬を表明させていただきました。自民党、社会党、公明党、民社党、さらには連合を初め数多くの団体から推薦をいただき、光栄に存ずるとともに百万の味方を得た感じがするわけでございます。県政にとってかつてない重要な、そして大きな変化のときだと思います。そうしたときに、このように五選出馬させていただく身の幸せというか幸運というか、それを今しみじみとかみしめております。幸いにも県民各位の支持を得られるならば、全力を尽くして頑張りたい。すなわち、高速道路を初めとする陸・海・空の交通ネットワーク、産業基盤の整備はもとよりのこと、潤いと安らぎのある健康・福祉、生活環境づくり、教育・文化、人づくりなど、きめ細かな施策を積極的に進めてまいります。
 また、和歌山は今、勢いに乗っておるときではないかと思うんです。人でも何でもそうですけれども、勢いというものがある。私は、この勢いを大いに活用して、馬頭議員が言われた風格ある県土づくりのために努力してまいりたいと思っております。
 次に、出生率低下についてでございます。
 馬頭議員と同じように、和歌山県の将来を憂える気持ちは同感でございます。女性の結婚・出産年齢の上昇、ライフスタイルの多様化、いろいろな要因が一般的に言われておりますが、経済的な問題、育児不安、核家族、仕事をしながら育児をする困難さなどが原因という面もあろうかと思います。
 話ございましたように、赤ちゃんから老人まで、あらゆる階層が一緒になって楽しい生活を送るということが望ましいことでございます。これに対する切り札となる手は聞いておりませんけれども、長時間保育の問題、子供を生み育てやすい環境整備の充実を初め、若者の定住促進の観点から、産業振興、企業誘致等、若者に魅力あるふるさとづくりを目指し、各種の施策を積極的に進めてまいりたいと思っております。
 ご提言のございました出生率の向上対策を含めた人口問題について、有識者による懇談会等の設置を検討してまいりたいと思っております。
 次に、扇ケ浜の総合整備でございます。
 お話ございましたように、かつての扇ケ浜の景観は薄れつつあるわけでございまして、地元田辺市民の憩いの場として海岸整備を図る必要があると考えてございます。
 このため、現在、漁港整備とともに砂浜の復活、海水浴場等の設置も総合的な立場から調査を行っておるわけでございます。その調査結果に基づいて、地元と相談の上、積極的に対処してまいりたいと思っております。
○副議長(平越孝哉君) 企画部長川端秀和君。
 〔川端秀和君、登壇〕
○企画部長(川端秀和君) 出生率の低下についてのご質問にお答えを申し上げます。
 まず本県の出生率の推移といたしましては、人口千人当たりの本県の出生数は、昭和六十一年が全国平均十一・四人に対して本県十一人であり、平成二年は全国平均九・九人に対して本県九・五人となっており、全国平均とよく似た減少傾向となっております。
 そこで、こうした出生率の低下への対策といたしましては、高齢化の進む本県の年齢構成の適正化、そのためにはまず若者の定住を促進することが急務であると考えます。
 つまり、まず青少年の県外への流出防止であります。先ほど知事から答弁がございましたように、若者を初めとする県民のニーズに合った職場の確保を図るために積極的な企業誘致の推進に努めてきたところでございます。現在、進出協定済みも含め五十一の企業の進出を見たところでございます。現在では、Uターンを含め千八百人余の方が就職され、今後四千人程度の雇用が見込まれているところでございます。また、人材の育成・確保という観点から、高等教育機関の充実として平成五年四月には近畿大学生物理工学部が開設されるのを初め、和歌山大学の総合大学化など鋭意取り組んでいるところでございます。
 一方、定住促進、Uターン対策として、東京及び大阪事務所内にきのくに人材Uターンセンター、県内各職業安定所にハローワーク人材Uターンコーナーを本年六月に開設し、県外に進学している大学生等、並びに一般Uターン希望者の県内企業への円滑な人材還流を推進しているところでございます。
 また、子供が健やかに生まれ育つための環境づくりという観点から、保育所の機能充実対策や子育てノーハウの相談強化等、家庭支援対策についても取り組んでいるところでございます。
 なお、先ほど知事から答弁がございました懇談会の設置検討とあわせて、庁内の関係部局と連携のもと、総合的な観点から分析、検討、研究してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(平越孝哉君) 農林水産部長若林弘澄君。
 〔若林弘澄君、登壇〕
○農林水産部長(若林弘澄君) お答えいたします。
 まず最初の、芳養漁港集落再編整備事業についてございます。
 現在、漁港管理者である田辺市において、防災や生活環境の改善、水産振興などの観点から各種の調査が進められております。
 県といたしましても、芳養地域の漁村集落環境の問題を十分認識しておりますが、大規模な構想でもありますので、今後、田辺市と連携を図りつつ、国とも協議しながら積極的に対応してまいりたいと考えております。
 二つ目の、田辺湾の扇ケ浜海岸についてのご質問でございます。
 基本的には知事から答弁がありましたが、現在、平成三年度から二カ年の予定で調査を進めているところでございます。その結果に基づいて、地元とも十分連携を図りながら国とも協議を進めてまいりたいと存じております。
 以上でございます。
○副議長(平越孝哉君) 土木部長磯村幹夫君。
 〔磯村幹夫君、登壇〕
○土木部長(磯村幹夫君) お答えいたします。
 文里港湾の計画についてでございます。
 文里港の整備については、第八次港湾整備五カ年計画において、継続事業も含め新庄地区の物揚げ場、防波堤等の整備促進を図るべく国に強く要望しているところでございます。
 なお、文里港の長期構想については、平成元年度に国、県、市の三者が共同で文里港マリンタウンプロジェクト調査を行い、田辺湾及びその臨海部地域が抱える物流、環境、海洋レクリエーション等の課題を踏まえた新しい時代における港づくりの方向がまとめられております。本構想は、経済的、文化的インパクトを持ち、将来性ある文里湾の発展に寄与するものと考えられ、地元で設置された港湾懇話会の結果もあわせ、県としても関係省庁と協議を重ねるなど積極的に取り組んでまいる所存でございます。
 以上でございます。
○副議長(平越孝哉君) 教育長西川時千代君。
 〔西川時千代君、登壇〕
○教育長(西川時千代君) 教育問題四点についてお答えいたします。
 一点目の臨時的任用講師は、教員の産前産後休暇や育児休暇の代替として、また欠員が生じた場合等の補充講師として任用いたしてございます。こうした補充講師の中には、教育愛に燃え、熱心に指導いただいている方々が多くございます。
 このため、教員採用選考検査については、ペーパーテストのみによることなく、面接検査を従前の一回から集団面接、個別面接の二回に増加いたしました。また、実技検査をも拡充することによって、人間性豊かで使命感にあふれ、実践力のある人材が確保できるよう年々改善を加えているところでございます。近年、児童生徒数の減少に伴い採用者数が減少いたしておりますが、教員採用検査の合格者の大半は子供たちへの教育に情熱を持って取り組んでいる講師経験者でございまして、その体験が生かされているものと考えてございます。今後はさらに検査方法を工夫し、優秀な人材が確保できるよう努力いたしてまいる所存でございます。
 次に、初等教育における教員の定着性についてでございます。
 議員ご指摘のように、ふるさとを大事にし、地域とのかかわりを深める教育をより一層推進するため、地域をよく知る教員を配置することは重要であると考えてございます。
 こうしたことを考慮して、平成二年度の採用選考検査から小学校の採用地域を紀南、紀北に分けて実施しており、その後は紀南地方出身者の合格率が伸びてきておりますので、地元への教員の定着がさらに進むものと考えてございます。
 次に、学校教育の現状やあり方についてでございます。
 激しく変化する今日の社会にあって、教育の果たす役割はますます大きくなってきていると認識いたしてございます。二十一世紀に向けて心豊かな人間の育成を目指し、今こそ子供たち一人一人のよさを見出し、それを伸ばしていく教育を推進していかねばならないと考えてございます。そのため、これまで教育の柱として特色ある学校づくりを積極的に図ってまいりました。
 具体的には、社会の変化に対応し多様な生徒のニーズにこたえるため、職業科において、情報処理科や生産システム科等、学科の改編を行う一方、ともすれば特色を持たせにくく画一的な教育に陥りやすい普通科においても、国際科や数理科学科等を新設するなど特色ある学校づくりの推進に努めております。また、子供たちの個性を生かすことができるよう、推薦入学制度をさらに改善する所存でございます。
 同和教育の推進については、ご指摘のとおり今ほど重要な時期はないと考えてございます。これまで、県同和教育基本方針に基づき、地区生徒の学力向上を図り、進路指導の充実に努めるとともに、同和問題に対する正しい認識を身につけさせる取り組みを続けてきております。今後とも、観念的になることなく事実を直視し、子供たちに同和問題の解決をみずからの課題として自覚させることができるよう一層実践的な取り組みを進めてまいります。
 また国旗、国歌の指導においては、実施率の向上等、一定の成果を上げてきましたが、さらに国旗、国歌の意義についての指導の徹底を図るとともに、学力向上のための学習指導等においても、各学校で実のある取り組みを行うよう指導を強めてまいりたいと考えてございます。
 生徒指導に当たっては、不登校や問題行動等、多くの課題を抱えている中で、生徒の無限の可能性を信じ、根気強く指導することが大切であります。子供たちは、時には結果として周囲の信頼を損なったり、つまずいたりしながらも、人間として一歩ずつ前進していくものであると考えます。
 教育委員会といたしましては、子供たちの内に秘めたよさをどこまでも信じて教育を行うよう管理職の研修会等において指導いたしております。生徒の指導措置を決定するに当たっては、職員会議において幅広く職員の意見を聞きながらも、校長がその責任において最終的に判断を下すものであります。退学生徒に対しては、その後の進路や生き方の指導を行うとともに、退学後の状況を把握するよう努めております。
 最後に、高学歴志向や受験競争の激化等が見られる中で、生徒の進路を保障するという観点から、偏差値を参考にした学習指導、進路指導等が行われておりますが、その基盤となる生徒の興味、関心、適性等への配慮がややもすると不十分になる傾向があることも否めない現状であります。そのため各学校に対しては、点数のみで評価することなく、日々の学習指導において子供たちの内面的成長の評価を一層重視し、奉仕活動や勤労体験、スポーツ活動を充実させるよう指導しております。
 今後とも、教育の質的な充実を図るため、教職員が一体となって汗をかき、子供に深くかかわる教育を推し進め、県民から信頼される生き生きとした魅力のある学校教育の確立に努めてまいる所存でございます。
 以上でございます。
○副議長(平越孝哉君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 31番馬頭哲弥君。
○馬頭哲弥君 三分しかありませんので、簡潔にまいります。
 子供を生んでもらい、大いに県勢振興に寄与していただくための懇談会の設置をお考えいただく由であります。まことに結構なことで、ありがとうございます。
 ただ知事さん、願わくは一日も早くやっていただたきたい。これは出血している状態と一緒であって、血どめの手当てというのは早い方がいいわけです。そういう意味では、ひとつ早く手だてを講じていただいて、また県民向けのPRもしっかりやっていただきたいと思います。
 秘書課で、きのう五人の女性にそれぞれ「あなたは、結婚なさったら子供を何人考えてますか」と、知事さんの知らんうちに私はずっと聞いて回った。その際は、副知事の干渉もなかった。独自に聞きました。そうしたら、きょうの演説のことがあったからかもしらんけれども、まあ三人ぐらいという女性もいるし、二人ないし三人、いやもっとあってもいいということで、中には「よいしょ」もあったと思いますけど、そういう答えをしてくださったこともご参考に申し上げておきます。
 私は四月の選挙のときに、あちこちの懇談会で、もっと子供を生んでくださいよ、三人目生んでくれたら、ひょっとしたら、知事さん機嫌よかったら百万円ぐらいくれるかわからんでと、そんな冗談を言うて、子供を生んでくれ、しっかり育てていこうじゃないかと、いろんなやりとりをいたしました。十月に入ったら知事もいや応なしに選挙でありますから、もう相手候補のことなんか構っておらんと、そういうふうな対話を青年とも進めていただいたらいかがかと思います。
 それと、これはせっかくの機会ですから川端部長からお答えいただけたらと思うんですが、懇談会ということで庁内に機会をつくっていただく際には、職員の中でも、男女を問わず、これからの若い人たちを登用してくださいよ。また、懇談会が正式に発足されるならば、そういう機会には、大学の先生とか、そういう先行き生産能力が低下する一方の人じゃなくて、これから頑張ってくれる可能性十分の若手の実力者を配していただきたい。やる気満々のご婦人を配置されるように、特に希望いたします。ついでですから、このことについて一言お答えいただけませんか。お願いします。
○副議長(平越孝哉君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 企画部長川端秀和君。
 〔川端秀和君、登壇〕
○企画部長(川端秀和君) 人口は県の勢いのバロメーターの一つであり、とりわけ年齢構成の適正化が重要であります。議員ご指摘のとおり、出生率の向上、若者の定住が大変重要であると考えます。今後とも最重要課題として、関係部局と連携をとりながら取り組んでまいる所存でございます。
 議員お話しのメンバーの構成については、次の世代を担う若者の意見をというご趣旨を踏まえて対応してまいりたいと存じます。
○副議長(平越孝哉君) 発言時間が終了しました。以上で、馬頭哲弥君の質問が終了いたしました。

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