平成3年2月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(中村 博議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 午前十時四分開議
○議長(岸本光造君) これより本日の会議を開きます。
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○議長(岸本光造君) 日程第一、議案第一号から議案第八十一号まで、並びに知事専決処分報告報第一号を一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 43番中村 博君。
 〔中村 博君、登壇〕(拍手)
○中村 博君 県行政のあり方について知事の所信をお尋ね申し上げたいと思います。
 私ごとにわたってまことに恐縮でございますが、私は、終戦を経て復員、昭和二十一年三月二十三日、田口易之和歌山市長から「臨時傭人として採用 日給三円を給与 庶務課勤務を命ず」という辞令をいただきましてから今日まで四十五年間、市政、県政の中に身を置かしていただきました。
 知事におかれても、昭和二十四年二月、県職員になられてから今日まで四十二年余、県行政とともに歩んでこられたことでもございますので、甚だ僣越ではありますが、みずからの足跡を振り返りながら、これからの我が県勢の発展のために、地方自治の本旨にも触れながら、知事の所信をただしてまいりたいと存じます。
 昭和二十一年当時の和歌山市は、御承知のように、前年の七月九日の米軍による大空襲で焼失家屋二万四百二戸、死者一千百一人、傷者四千四百三十八人という大きい被害を受けた直後でありましたから、和歌山城は焼け落ちており、市内一面は焼け野原で、市役所も焼失したために現在の岡山幼稚園が仮庁舎でございました。
 当時の一般の暮らし向きは大変なもので、生きることが極めて困難な時代でした。何しろ私の日給が三円でありましたから、パン一個買うことができなかったのでございます。当時、ピース、コロナというたばこが発売されましたが、これが一箱五円、やみ市でコッペパンが一個十円、米一升二百円もしたのでありますから、当時のインフレがいかに深刻なものであったか御想像していただけると思います。
 当時の県庁職員の方々の御苦労は大変なもので、既に勇退はされておりますが、こうした時代を耐え抜かれ、長年、県行政に携わってこられた方々に、当時を知る者として敬意を表さずにはいられないのでございます。
 私の市役所での最初の仕事は戦後初めての衆議院議員選挙の事務で、当時はまだ旧憲法下の内務省直轄による府県制、市制及び町村制という法律のもとでの体制でありましたから、選挙事務も市長の事務分担のもとで行われるという状況にありました。
 旧憲法下の府県制、市制及び町村制による地方行政が根本的に改められましたのが、御承知でありますように昭和二十二年五月三日の新憲法施行の日に、国会法、裁判所法、内閣法とともに、憲法附属法典であると言われる地方行政の基本を定めた地方自治法が施行されたのであります。
 今日まで、事あるたびに、住民の自治への参加がどのように保障されているのか、行政そのものが地方自治の本旨に基づいてどのように行われているのか、また事務が適正に行われ運営されているのかどうかなどで疑問を感じたときには、必ず地方自治法、長野士郎氏著による「逐条地方自治法」を手にして客観的な法解釈に努め、必要とするところで発言をいたしてまいりました。ささやかな経験でありますが、地方行政のあり方、基本的な概念はどうしたものだろうかということでたびたび考えさせられましたが、そのようなときには「逐条地方自治法」の序説を何度も読み直し、地方自治の本旨の理解に努めるようにいたしてまいりました。
 地方自治法が施行されてから四十四年になりますが、こうした長い変遷の中で、内外諸情勢の変化に伴う国政のあり方から地方自治の本旨がゆがめられたり、また地方にあっても、行政が複雑多岐にわたり、大型プロジェクトなどの課題が山積する中で、目的達成を急ぐ余り、地方自治の本旨を振り返ることなく軽視されていることもなきにしもあらずでございます。いま一度、地方自治の本旨について確かめ合うことが重要と考えております。
 そこで、私なりに地方自治の本旨について理解している点を申し上げてみたいと存じます。
 一つには、住民の権利の拡充、二つには、地方公共団体の自主性、自律性の強化、三つには、地方公共団体の行政運営の能率化とその公正の確保、以上の三原則にあると考えてございます。
 したがって、県行政の運営に当たりましては、地方自治の本旨に基づき、県民全体の福祉の増進を図ることにあることは申し上げるまでもございません。我が党といたしましても、今日まで一貫して地方自治の本旨を守り発展させる立場にありましたし、地方議会に議席を持つ私どもにありましても、こうした点を重視しながら今日まで活動いたしてまいりました。今日までの地方行政にありまして、ときどきの大きな流れの中で問題となった事柄に触れながら、お尋ねを申し上げる趣旨にさせていただきたいと存じます。
 市役所の職員のときでございましたが、周辺の町村が合併され、行政区域が大変広くなり、自転車で一時間かけて岡崎支所に通勤したこともございましたが、市町村合併が行われるようになりましたのは、御承知のように、昭和二十八年三月に市町村合併促進法が制定され、国の主導のもとに全国で市町村合併が促進されるようになったのであります。
 本県においては、昭和二十八年九月三十日時点で、四市、三十三町、百六十三村と、二百市町村にわたる行政区でございましたが、こうした合併促進によりまして、現在の七市三十七町六村、五十市町村の行政区となり、四分の一にまで合併が促進されたのであります。
 当時の県議会での論議については知る由もございませんが、恐らく、地方自治の本旨とされる住民自治、効率ある行政の運営という本筋で甲論乙論などの議論の展開もなされたのではないかと思料いたしているところであります。
 全国的に市町村合併が促進された直後から大企業中心の高度経済成長時代へと進み、例えば特定重要港湾特別措置法などといった幾つかの特別立法の措置のもとで、地方自治体が国の施策に組み込まれていったのであります。
 本県で申し上げてみますと、鉄鋼、石油を中心とした北部臨海工業地帯の造成を県政の重点課題として取り組んでこられたのでありますが、大企業の利潤追求と行政のあり方の関係において、本来の行政のあり方が問われる海浜埋め立て、公害問題で強い住民の反対運動が起こったのであります。
 最近に至り、ここ十年の間は、何と申しましても国の臨調行革による地方への財政負担転嫁の問題や消費税の強行に伴い、地方自治体みずからが行う住民のサービスに税金を課するという、まさしく地方自治の本旨にかかわる重大問題が提起されてきているのでございます。
 そもそも行政改革というものは、御承知のように、地方自治法の第一条で次のように明記されております。「民主的にして能率的な行政の確保を図る」とされているのでありますから、行政の責任者は常々そのことが義務づけられているのでありまして、今日のように国から押しつけられるような問題では決してございません。行政改革を進めるに当たって行政で働く職員の方々の労働基本権を侵してはならないことは、論をまたないところであります。
 今日、都道府県の行政事務にあっては、その八割までもが国の機関委任事務で、また市町村にあっても、その六割までが国の機関委任事務となっています。したがって、国が行わなければならない仕事を地方が行っているのでございますから、それらの事務に要する費用を国が負担することは当然のことであります。しかし、国の行政改革というものは、防衛費や海外協力費などの予算を聖域化して、これをどんどんふやしながら、一方で、福祉や教育などにかかわる国が負担しなければならない予算を大幅に削減して地方に負担させるなどというようなところまで問題が来ているのであります。
 消費税についても同様の重大問題でございまして、最近、国の施策について地方六団体との間で矛盾が拡大されている点を考え合わせますと、地方行政の存在意義が問われている時期に来ていると憂慮いたしているところであります。
 以上のことを申し上げてまいりましたが、要は、長い地方行政の歩みの中で、地方行政の本旨である住民の自治権の確立、地方公共団体の自主性、自律性の強化という地方行政の本来のあり方が、国の施策において必ずしも生かされてきたとは考えられません。知事におかれても、以上申し上げてまいりました事柄について知事会等においても発言されてきたところであろうと思いますが、地方自治の本旨を守り、発展させることは知事の責務でございます。今日、国と地方との関係においてさまざまな矛盾する問題が起こっていますが、地方自治の本旨の立場でどのように今後の行政に対応していかれるのか、知事の姿勢についてお聞かせをいただきたいと存じます。
 続いて、お尋ねをいたします。
 知事が今日まで掲げられてまいりました「まごころ県政」についてでございますが、私なりに理解している点を申し上げますと、県民本位の立場に立つ誠実な行政の遂行にあると考えております。知事の御所見をいただきたいと存じます。
 一般質問の終わりに当たりまして、恐縮に存じますが、一言、発言させていただきます。
 今日まで御支援を賜りました県民の皆さん、またお世話になりました議員各位、県職員の皆さんに心からお礼を申し上げたいと存じます。我が和歌山県政の発展を心から願って降壇させていただきます。
○議長(岸本光造君) ただいまの中村博君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 中村博議員にお答え申し上げます。
 地方自治の本旨に基づく行政の対応についてでございます。
 みずからの体験を通じての、行政の問題、地方自治の問題についての御意見等でございました。
 私も、地方自治は日本の行政の根源でもあるし、民主政治の根本でもあると存じておるわけでございます。そういう立場で県政を推進しているわけでございますけれども、近年の複雑化する国際社会、政治・経済の中において、東京一極集中を是正して均衡ある国土の発展を図るため、また種々の行政課題に的確に対応し、地域社会の活性化と住民福祉の向上を図るためには、地方の果たすべき役割はますます増大する現況でございます。
 そうした中で、地方において、町づくり、ふるさとづくり等、地域の特性を生かした個性豊かな活力あふれる地域づくり実現の機運が盛り上がっている現在こそ地方が主役となる好機であり、これまでも国と地方との関係や地方自治制度のあり方等について、国においても地方制度調査会等において検討されてきたところでございますけれども、私もより一層、地方公共団体の自主性、自律性の強化が必要であると考えてございまして、国から地方への権限委譲、地方自主財源の充実強化等について、全国知事会等において国に強く訴えてまいっているところでございます。今後とも、地方自治の本旨を踏まえ、県民の立場に立って県政を進めてまいりたいと考えます。
 また、私の「まごころ県政」の政治姿勢でございます。
 おっしゃいましたように、私も十五年余り県民の皆さんと一緒に県政を行わせていただいたわけでございます。厚かましい言い方でございますけれども、「孟子」に「誠は天の道なり、これを思うは人の道なり」という言葉がございます。これを引用させていただいて「まごころ県政」を訴え、そしてまた県民一人一人の立場に立って県政を行っていくことを私の政治信条としているところでございます。今後ともなお一層、それをもとに進めてまいりたいと思っております。
 議員には、三期十二年にわたりまして県議会議員として御活躍いただきました。立場の違いはございましたけれども、議会人としての姿勢に敬意を表するとともに、議員の今後ますますの御健勝をお祈り申し上げる次第でございます。また、地元でも格段の御協力をよろしくお願い申し上げます。
○議長(岸本光造君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 〔「ございません」と呼ぶ者あり〕
○議長(岸本光造君) 以上で、中村博君の質問が終了いたしました。

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