平成2年12月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(小林史郎議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

○議長(岸本光造君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 45番小林史郎君。
 〔小林史郎君、登壇〕(拍手)
○小林史郎君 まず、障害者対策の問題で質問いたします。
 ことしは、国連が世界行動十カ年計画を発表して障害者の「完全参加と平等」を世界各国に呼びかけてからちょうど八年目に当たり、いよいよこの行動計画の最終期を迎えるわけであります。この間、我が国においても、本県においても、この呼びかけにこたえて障害者対策に関する長期計画を策定し、鋭意その実現に努めてきたところでありますが、十二月九日は障害者の日でもあり、ただいまは障害者福祉週間の最中でございますので、これまでの取り組みの現状を振り返りながら、最後の詰めをお願いする立場から、若干の問題で質問させていただきます。
 国連の「完全参加と平等」の呼びかけがあってからは、国民の障害者問題に対する関心と理解が急速に進んできていることが実感できますし、また、障害者自身の自覚と立ち上がりも際立って高揚してきているように思えます。
 私の場合、飛行機や新幹線に乗降するときの車いすの配慮は大変ありがたいわけで、特に、行く先々できちんと車いすを用意して迎えてくれる対応には頭の下がる思いがいたします。
 段差のない町づくりの問題、オルゴールつき信号機の設置、集会での手話通訳者やLHPの配置等、いろんな面での行き届いた配慮が進み、障害者を取り巻く環境にはかなりの変化が見られます。また、国の施策の面でも、この間、小規模共同作業所への助成制度や特別障害者手当ての創設、さらには関係諸法令の一定の改善等も行われました。しかし、こうした前進面の反面、重大な後退現象も見られます。
 ちょうど国際障害者年のその年にいわゆる臨調・行革が始まり、これからの福祉は自助、自立、社会連帯で進めるということで、養護施設やホームヘルパー制度、老人医療費等が次から次へと有料化され、さらに重大なことは、これらの地方自治体に対する国の補助金が八割から五割に引き下げられ、地方での障害者対策や福祉施策の改善に大きなブレーキをかけたということであります。
 以上のように、我が国の障害者対策は国連の呼びかけのもとでかなりの前進を見ていますが、「完全参加と平等」という視点に立つ場合、極めて重大な立ちおくれがあると言わねばなりません。
 と申しますのは、私は十二月八日の土曜日に放映された障害者問題についてのNHKスペシャル番組で、アメリカ障害者法に係る部分をたまたま見ることができましたが、大変なショックを受けました。我が国の心身障害者対策基本法に当たるこの法律は、雇用、公共輸送サービス、公共施設、通信などの分野での障害者に対する差別を法律で禁止するという画期的な内容であります。
 テレビによりますと、車いすの入れない段差のあるレストランが障害者を差別するものと裁判に訴えられ、その経営者がやむなく二十万ドルをかけて施設改善を行うことで和解したという話や、雇用面においても障害者の差別扱いができなくなり、二年以内に障害者でも働けるように設備を改善する義務を企業者が課せられ、その費用負担のために中小企業家が困り果てていることなどが放映されました。
 この法律は本年七月に発効したもので、今後、実施が進むにつれていろいろ複雑で困難な問題に直面することが予想されますが、重度の心身障害者を含めて一人の人間としてその尊厳と人権を守り抜こうとする壮大な挑戦として、万雷の拍手を送りたいのであります。
 そもそも我が国にあっては、戦前から戦後にかけての一貫した劣等処遇、つまり能力差によって権利の侵害があっても当たり前という考え方が色濃く残されており、そのこともあってか、障害者対策も恩恵的な施策として進められるという側面を持っていました。したがって、ひどい障害の子供を持つ親たちにとって、これを恥とするような傾向が強かったと言えます。
 思い出しますと、子供のころ、私の近所にも重度の心身障害児がおりましたが、その家ではこの子供を奥に閉じ込めて、めったに外に出すようなことはありませんでした。こうした状況のもとで、重い障害を持つ子供たちの中には、その残された持てる能力をも退行させるばかりで、思春期までに命を落としてしまう例が非常に多かったのであります。
 しかし、心身障害者対策基本法の制定とともに、障害者を見る目は大きく変わり、生きる権利を保障する立場から医療と教育がこの子供たちに行われるようになりましたが、この結果、能力の発達退行に歯どめがかかり始め、昭和五十年代の後半に入りますと、乳幼児健診制度が充実されてくる中で、障害の早期発見、早期療育が行われるようになり、また障害児教育の義務化が施行されるなど、この子供たちの能力の発達退行を食いとめ、次第に「成人おめでとう」の言葉が送れるようになったのであります。
 さらにまた、共同作業所などの実践が進むにつれて、たとえ発達障害を持っていても、三十代、四十代、五十代になっても能力の退行を起こすことなく、人間的に生きることに勝利するという姿が実現できるようになりました。これは、少し大げさな表現になるかもしれませんが、かつての人類の歴史になかったことであり、人間の尊厳を主張する上で私たちの社会がかち取ったすばらしい金字塔だと言えると思います。
 このように、どれほど重い重複の障害者であっても、その人が尊敬され、生きる権利が保障され、そのために社会から援助されるということは、その社会が進歩しているということのあかしであって、この意味で、障害者こそ人間を大切にする社会進歩の歴史をつくっていく推進者であり、まさに社会の主人公であると言えると思います。そして、どんな障害者であっても、社会的に支えられる中ではその残された能力を最大限に発展させることができるのであります。
 私は、皆様方の御厚意のもとに、毎年パラリンピックすなわち身体障害者スポーツ大会に参加させていただいておりますが、「振り向くな力の限り飛び立とう」というキャッチフレーズで開かれたことしの福岡大会でも、鈴の音を頼りに競い合う視力障害者の方の百メートル競争や車いす競技など、障害者の残された能力を伸ばすことのできる可能性の大きさに目をみはるばかりでした。
 先ほども触れましたように、アメリカの障害者法では雇用の面での差別撤廃を重要な柱と位置づけていますが、これは障害者の持つ労働能力の評価を正しく行うとともに、障害者も健常者も人間として全く同じであるという立場に立ち切っていることのあらわれだと思います。この点で、我が国の現状はまだまだ大きな立ちおくれがあると言わざるを得ないのであります。
 そこで民生部長にお尋ねしますが、以上申し上げてきた視点に立って、本県の長期計画の実施状況を総括する場合、どのような成果と問題点があり、今後残された期間において何を重点にどんな事業を推進されるおつもりかを御報告願いたいのであります。
 続いて小規模共同作業所の問題で質問いたしますが、先ほど申し上げましたように、労働の喜びを体験することが障害者に生きる意欲を与え、その発達能力を高める上ではかり知れないほど大きな役割を果たしていることは御存じのとおりであります。県下にはこうした作業所が十九カ所あって、大変な御努力をいただいていると聞いていますが、どことも経営状態は極めて厳しいようで、これら関係者から補助金の増額を望む切実な声が寄せられてきています。
 その人たちのお話では、職員給与を十万円以下に抑えるなど切り詰めに切り詰めて頑張ってみても、平均レベルで年間一千万円ぐらいは最低必要と言われ、現行の本県の補助基準は余りにも低過ぎます。この補助金については最近増額いただいたところと聞いていますが、それでも十人規模の作業所を例にとると、滋賀県の年間七百八十四万円に対し本県の二百六十万円はその三分の一にも満たない状況であり、この活動の果たす貴重な役割を考えるならば、来年度予算における本補助金の増額を求めざるを得ないので、このことについて民生部長のお考えを伺いたいのであります。
 続いて、紀北養護学校の問題に関連して教育長にお尋ねします。
 新聞報道によれば、紀北養護学校には精神薄弱と肢体不自由の重度重複学級がなく、このため和歌山市内の子供たちがスクールバスできのかわ養護学校に通学しており、このほかに十五人が紀北養護学校の訪問教育を受けていますが、うち八人が園部分校での交流と触れ合いの場に参加しているとのことであります。そして、これら十五人の父母たちが四万一千人余りの署名を集めて、紀北養護学校にも重度重複学級を設置するよう求めているとのことであります。
 また、この学級設置については、昨年、県特殊教育協議会が昨年県教委に対して「重度重複児が十分な教育を受けられる条件整備が必要」という答申を出し、紀北養護学校育友会もこの学級設置を求める嘆願書を県教委に提出しているとのことであります。また関係者の説明では、重度重複障害児で二時間近くもかかって通学しなければならない条件に置かれているのは、県下で和歌山市内の子供たちだけだと言われています。
 私は、先ほど乳幼児健診による障害の早期発見や障害児教育の義務化が実施されるにつれ、これまで思春期までに命を落とすことの多かったこれらの子供たちが次第に「成人式おめでとう」の言葉を送ってもらえるようになってきていることを訴えました。現に、この子供たちは、二年間近く園部分校の触れ合いの場に通う中で、生活リズムが整い、自然排便ができるようになったり、チューブで食事をとっていた子供が先生との信頼関係によってしっかりと口を動かせるようになったり、目と身振りで笑いかけ、語りかけることのできる子供に成長したりするなど、訪問教育と違う集団の触れ合い教育の成果が着実に上がってきています。
 このように、「重い障害があっても学校に行けば仲間と触れ合って成長できるのに」「せめて義務教育の間は毎日学校に行かせてあげたい」という母親たちの願いは、まさに当然過ぎる悲痛な叫びであります。
 したがって、県教育委員会としては、この切実なお母さんたちの要求に対し、たとえ学級設置が困難な場合でも、これまでの方式を継続するとか中間的な暫定措置の方法を考えるとか、とにかく何らかの前向きの対応をしていただきたいので、教育長より心の優しい御答弁をお願いしたいのであります。
 続けて、質問いたします。
 広川町に設置されるたちばな養護学校についてでございますが、校舎建築の進捗状況から見て、果たして来春四月の開校に間に合うのかどうかという不安が地元関係者の間で出されていますので、その辺の見通しと開校時における生徒、職員などの体制がどのような形で発足できるかを御報告願いたいのであります。
 続いて、障害者の雇用促進の問題で質問いたします。
 これまでも法定雇用率を達成していない企業名の公表を迫るなど、その促進方を強く求めてきたところでありますが、本県における雇用率達成の最近の動向をお示し願うとともに、この雇用義務対象になっていない精神薄弱者や精神障害者の雇用の現状がどうなっているのかについてお伺いしたいのであります。
 障害者にとって、雇用の問題は生きるためにぎりぎり必要な要求であり、とりわけ心の病を持つ障害者にとっては最も切実で深刻な要求でありますので、どのような指導を行い、どのような実績を上げているのかについて商工労働部長の御答弁をお願いいたします。
 続いて、企画部長にJR紀勢線の新広川駅設置の問題に関連して質問いたします。
 最近、有田の地方紙で「広川新駅が近く設計に着手され、平成四年秋までに開設」という報道記事がありましたので、地元の期待がにわかに集まっていますが、もしこの新駅が本当にできるのであれば、ぜひこの機会に身障者の願いにかなった駅をつくってほしいと、有田郡身体障害者福祉連盟から次のような要望が寄せられています。
 その要点を申し上げますと、一、障害者用のトイレを設置し、駅舎の内外から利用できるようにされたい、二、車両とホームの段差を小さくされたい、三、改札口は車いすの出入りのしやすい幅にされたい、四、手すりをスロープの両側に設置されたい、五、盲人用の点字案内板や聴覚障害者用の電光伝言板を設置されたい、六、設置しても利用できない施設では困るので、この計画立案、実施設計に当たっては障害者が参加できるよう配慮されたい、等でございます。一たんでき上がってしまうとその改修は大変難しいことになりますので、ぜひ今度の新設の機会に実現してほしいということであります。
 そこで、企画部長より、これら要望事項の実現をするためにJRへ交渉していただけるのか、また広川新駅設置の具体的見通しがわかっておるならばお答え願いたいのであります。
 いま一つJRへの要望をお願いしたいのでありますが、それは、乗りかえ等の多い主要駅において、ホーム別階段に対応するエレベーターを設置してほしいということであります。
 私の場合、二本の松葉づえを使えばある程度の距離が歩けますし、体も大変楽になりますが、階段を上るときに、片手で手すりを持ち、もう一方の手で二本の松葉づえを使うことはできないので、やむなく一本の松葉づえに頼ることになります。例えば、東京へ行く場合、もし在来線の新大阪駅ホームから新幹線駅に上る階段に対応するエレベーターがあれば、車いすの人でも、松葉づえを二本使う人でも、一人で乗りかえができることになるわけで、私たちのひとり旅ができやすくなります。
 アメリカの障害者法では、公共輸送における障害者差別に特に厳しく対処していることでもあり、ぜひこのことでJRへ要望をお願いいたしたく、企画部長のお考えのほどを伺いたいのであります。
 この問題の最後に、県庁舎へのエレベーター設置の問題で質問いたします。
 このことについては何回となくお願いしてきましたが、その都度、構造上の理由から設置困難という答弁が返ってきています。このことを十分承知しながらなぜ繰り返すかといいますと、いま一度障害者対策の持つ意義について見直しをしていただきたいからであります。
 私は、障害者こそ人間を大切にする社会をつくり出す主人公であるということをるる訴えましたが、もしこの視点に立つならば、構造上の困難を克服してエレベーターをつけるということは、本県行政が人間を大切にする社会づくりのために大きな一歩を踏み出すことを意味しています。私は、今日の技術をもってすれば、金を出すことを惜しまない限り、東別館と本館にエレベーターを設置することはそれほど難しい課題でないと考えています。要は、知事が障害者対策の持つ意義をどのようにとらえてくれているのかに係る問題だと思われますので、知事はこのエレベーター設置についてあくまで構造上の問題の水準で対応されるおつもりか、それとも重大な行政姿勢にかかわる問題として対処していただけるのかどうかについてお伺いしたいのであります。
 次に、ミカン対策を中心とする農業問題で質問します。
 この三日からブリュッセルで開かれていたガットのウルグアイラウンド閣僚会議は結論を見ないまま中断し、結論を来年一月に持ち越すことになり、私たちの心配していた米の輸入自由化も、その決着はひとまず延びたわけであります。
 しかし、その最終局面で、各国の農業保護を五年間で三〇%削減するとともに各農産物とも最低限国内消費の五%の輸入を義務づけるという議長調停案が出されました。当然、日本やECはこれを拒否しましたが、これが今後の交渉の伏線となる可能性があって、これから来年初頭にかけての事態は大変厳しくなってきていると考えられます。
 そもそも、今度のガット農業交渉は、自国の輸出市場拡大のためにその障害になっている各国、特にECの農業保護の大幅削減と輸入規制の撤廃を目指すアメリカと、自国の農業と農村を守るために農業保護を含む域内の共通農業政策を維持しようとするECの対立を軸として展開されていますが、アメリカはECとの交渉を有利にするために、我が国に米の輸入自由化の受け入れを迫ってきているのであります。
 一般新聞に余り報道されませんでしたが、ブリュッセルには日本を含めて二十三カ国、三万八千人の農民が結集し、三日には大デモ行進を行いました。驚いたことに、各国農民代表の主張が、出てきた国はそれぞれ違っていても、農業を守れ、環境を守れという点で全く一致していました。そして、アメリカ農民の代表は「アメリカ政府代表の立場は大多数のアメリカ農民の立場と願望を反映していない」と告発していたということであります。
 つまり、農業保護の削減や自由貿易を求めているのはアメリカ農民ではなく、穀物メジャーや大商社などの多国籍企業であります。日本の財界四団体の首脳も「同ラウンドは日本経済の死活にかかわる。米の問題は腹をくくって決断してほしい」と発言するなど、自分たちのもうけのために日本農業を犠牲にする態度を露骨に示しています。何であったか覚えていませんが、もし五%の自由化枠を認めれば、これに関連して少なくとも三十万人の失業者が生まれるであろうという試算を見たことがあります。
 本県農業の中心は現在果樹農業であっても、米は依然として果樹に次ぐ生産高を誇る大切な作目であって、もし部分自由化が強行されるような事態になれば、本県の中山間部における過疎化の進行と農地の荒廃化に一段と拍車がかかることは明らかであります。また、全国的な米の転作によってミカン、梅、桃などの本県特産物が重大な影響を受けざるを得ません。
 今のところ、政府・自民党は「米は自給を基本に」という姿勢を崩していませんが、今後、アメリカや財界の意向に沿った妥協が行われる危険が極めて大きいと思います。
 したがって、来春のラウンド再開を前にした今日の重要な時期に、知事として、また全国知事会議などを通じ、米の自給体制を厳守することを関係機関に申し入れていただきたいのでありますが、知事のお考えのほどを伺いたいのであります。
 続いてミカン対策でございますが、オレンジの自由化を来年に控え、最近の売れ行き不振傾向の中で、多くのミカン農民はこれから先どうなるのかという不安感に駆られています。自由化に備えての二割減反という百八十万トン体制のもとで、裏年でもあり、ことしこそと熱い期待を燃やしていました。しかし、極わせからわせにかけての出足はよかったものの、暖冬による着色のおくれから出荷が集中化してくる中で、激しい値崩れを引き起こしています。
 加えて、最近の消費者ニーズによる段ボールの小型化が出荷量全体を引き下げる役割を果たしています。例えば、これまで十五キロ段ボールを百個とってくれていた市場がありますと、十キロ段ボールに小型化した場合、百五十個とってもらって初めてとんとんの勘定になりますが、実際はこれまでと同じ百個しかとってくれない場合が多いようで、これが出荷量を引き下げる側面ともなっています。
 その上、泣きっ面にハチと申しますか、遅くにやってきた台風二十八号が大変な被害をもたらしました。完熟に近い状態の実が強い風に揺すられたために、枝のつけ根といいますか、ほぞと言われるところが傷み、腐敗しやすくなって、ジュースに落とさざるを得なくなっています。畑の位置にもよりますが、ハウスの被害等も加わって、農家にとっては大打撃を受けているところが少なくありません。
 そこで農林水産部長にお尋ねしますが、本年産ミカンの本県における今日までの需給と価格動向について御報告いただくとともに、完全自由化の段階になっても今日の百八十万トン体制で十分やっていけると考えておられるのか。また、今度のミカンの台風被害について何らかの救済措置がとれないのか。その場合、農業災害共済で対応せよということになろうかと思いますが、これは三割の免責条項があって、補償対象農家は当然限定されてきます。したがって、県として農共済に対し、特別の救済対策について要請、話し合い等ができないかどうかについて、農林水産部長のお考えを伺いたいのであります。
 最後に、高校関連の問題で質問いたします。
 来年、中学卒業生は前年度より千四百人近くも減ると言われ、平均競争率を前年並みに維持することを前提にした場合、来春の高校募集定員が一気に二十七学級も減ることになります。有田でも四十人少なくなるということで、一学級減らされるのではないかと心配し、地教連、PTA、中学校長会等の連名で、現学級数を維持してほしいという陳情書を出しているところでありますが、六百人以上も減る和歌山市内などでは深刻な事態でないかと思われます。
 と申しますのは、高校進学というものは、本人の希望、学力、通学距離、家庭事情等、いろいろ複雑な要因が絡み合っていますので、数式の計算のように単純に割り切れるものではありません。今でも、希望した学校を受験できない生徒や普通科を目指してきたのに職業科に変更せざるを得なかった生徒等、いろんなゆがみが生まれているのですから、これほど多くの学級を一挙に減らすようなことがあれば、矛盾が矛盾を呼び、一地域のゆがみがその周辺に波及する等、県下全体にその影響が広がってくることが心配されます。
 したがって、進学率を全国平均より相当上回るような措置をとるなど、この際、学級減について何らかの緩和措置をとることを検討していただきたいのでありますが、教育長の御所見をお願いしたいのであります。
 ところで、いま一つの緩和対策として、普通科、商業科、家庭科で四十人学級制度をとることが考えられます。本県と同様、他府県においても高校生の急減現象がここ当分続くわけでありますが、新聞報道によりますと、東京都や富山県では、生徒の急減期対策としてこの四十人学級制度の採用を検討しているようであります。
 ここに新聞のコピーを持っておりますが、本年九月十八日付の「北日本新聞」では、富山県では九月十七日の本会議における「生徒減少期に合わせ、国の標準より少ない定員にしてはどうか」という質問に対し、中沖知事は「県単独で行うと、相当の財政負担が必要だが、県として何らかの改善措置を検討したい」と答えたとあり、その解説として、「県教委は今後、長期的な生徒減少に対応するため、学級定員の減少や教師の多忙化解消など県独自の対策を検討し、十一月に発表する県立高校の来年度学級編制に盛り込む方針」と書いてあります。
 また九月十一日付の読売新聞では、東京都教育委員会は、生徒の急減を教育環境改善につなげるため、一学級当たりの生徒数を減らすという選択を来春から導入し、都立校で最も人数の多い普通科と商業科でも段階的に四十人学級を実現することにしたと報道しています。
 このように、四十人学級の実現は、高校入試の面から見ても生徒指導の充実の面から見ても父母の要望にこたえるものであり、また先生方の多忙解消にも役立つものであります。
 以上のことから、生徒急減期対策として高校での四十人学級の早期実現を検討していただきたいのでありますが、教育長のお考えのほどを伺いたいのであります。なお、このことに関連して、もし本県における第四次高校教職員改善計画の達成状況がわかっておれば御報告願いたいのであります。
 以上で、第一回目の質問を終わります。
○議長(岸本光造君) ただいまの小林史郎君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 小林議員にお答え申し上げます。
 障害者対策についていろいろ御意見を承ったわけでございますが、その中で庁舎本館、東別館にエレベーターを設置できないかということでございます。
 この件については、これまでもたびたび御指摘をいただき、種々検討してまいったわけでございますけれども、現庁舎の老朽化あるいは行政需要の多様化による狭隘化が進む中で、設置は困難であると考えております。
 もとより、障害者対策の必要性、重要性は十分認識しているところでございまして、このような制約のある中で、現在、庁舎利用に当たっての障害者対策として、スロープ等の施設の改良、車いす等の設置、課室からの職員の出迎えによる案内誘導を行うなど、障害者の方々に御迷惑をかけないよう、できる限りの対策を講じておるところでございまして、御了解をいただきたいと思います。
 また、障害者の皆さんが県庁を訪れた場合の応対については、県民ロビー、県民相談室へ職員が出向いていろいろ御相談させていただきたいと思っております。
 次に、米の問題でございます。
 小林議員からブリュッセルのウルグアイラウンド閣僚会議の実情についてお話がございました。私も非常に関心を持ってこれを眺めているわけでございます。
 米は国民の基本食糧でございますから、輸入自由化については前にも述べたように反対でございますし、このため、全国知事会並びに近畿ブロック知事会を通じ、機会あるごとに米の市場開放阻止に関する要望を政府に対し申し入れているところでございまして、今後とも政府に対し、自由化阻止を働きかけてまいりたいと考えております。
○議長(岸本光造君) 民生部長高瀬芳彦君。
 〔高瀬芳彦君、登壇〕
○民生部長(高瀬芳彦君) 障害者対策については、昭和五十七年に障害者にかかる和歌山県長期行動計画を策定するとともに、障害者対策推進本部を設置し、啓発、福祉、医療、雇用、環境整備等、総合的な施策の推進を図ってきてございまして、県民意識の高揚を初め、施設整備や社会参加の促進事業など、各分野において相当の成果を上げてきてございます。
 昨年八月、事業の実施状況を取りまとめ、評価点検の上に立ち、在宅福祉対策の充実、就労対策、生活環境の整備などを課題として、重点施策の見直しを行ったところでございます。
 今後、障害者の方々が地域社会で可能な限り自立して社会参加が促進できるよう、関係部局ともども連携し、在宅福祉対策の充実を初めとする各種施策の一層の推進を図ってまいりたいと考えてございます。
 次に小規模作業所の補助金についてでございますが、小規模作業所は心身障害者の福祉的就労の場として推進していく必要があると考えてございます。これらの作業所に対し、市町村を通じて運営費の補助を行っているところでございますが、昨年度に引き続き、本年度も補助金の増額を図ったところでございます。
 今後とも、作業所の運営実態を見ながら検討してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(岸本光造君) 商工労働部長天谷一郎君。
 〔天谷一郎君、登壇〕
○商工労働部長(天谷一郎君) 本県における本年六月一日現在の障害者雇用状況については実雇用率で一・九〇%となっており、法定雇用率の一・六%を上回るとともに、昨年の一・八九%に対し、わずかですけれども、〇・〇一ポイント改善されているところでございます。
 これを企業規模別に見ると、従業員六十三人から二百九十九人については実雇用率が二・二四%、三百人以上九百九十九人については一・一五%、千人以上については一・二%となってございます。
 次に、御指摘の精神薄弱者については、平成二年九月末日現在において就業中の方が四百三人であり、また県下の公共職業安定所における有効求職登録者数は百五十二人となっております。
 今後、障害者雇用の一層の促進を図るため、障害者雇用促進協会や職業能力評価判定機関である障害者職業センター等、関係機関と連携を密にしながら、障害者に対する職業指導、職業紹介を充実するとともに、精神薄弱者及び社会復帰可能な精神障害者については、必要に応じ、事業主に委託して行う職場適応訓練制度の活用も図りながら、職場復帰ができるよう取り組んでまいります。
 また、雇用率未達成企業に対しては、個別訪問指導をより強力に行ってまいりたいと考えております。
○議長(岸本光造君) 企画部長川端秀和君。
 〔川端秀和君、登壇〕
○企画部長(川端秀和君) JR広川新駅設置の見通しと障害者対策につきまして、お答えを申し上げます。
 広川町における駅の問題については、かねてからの地元関係者の要請を受け、先月十九日に運輸省、JR西日本の幹部の方々が現地視察をされるなど、実現に向けての取り組みがなされているところでございますが、今後、地元広川町、JR西日本等を中心に具体化に向けての検討が進められることになってございます。またその際、障害者対策も含めての検討を働きかけてまいりたいと考えてございます。
 次にJR主要駅における障害者対策についてでございますが、県としても、障害者の方々が自由かつ安全に公共交通機関を利用できるための施設整備は重要な課題であると考えてございます。今後とも関係部局と連携をとりつつ、JR初め関係方面への働きかけに努めてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(岸本光造君) 農林水産部長安田重行君。
 〔安田重行君、登壇〕
○農林水産部長(安田重行君) お答え申し上げます。
 本年産ミカンの需給と価格動向はどうかということでございます。
 本年産温州ミカンの需給計画については、全国果実生産出荷安定協議会が決めた全国の総需給量百六十六万九千トンの出荷計画に基づく本県の需給計画は前年対比八三%の二十万七千トンで、その内訳は生食用十六万三千トン、加工用三万一千トン、その他輸出・自家消耗一万三千トンとし、計画的な出荷を推進してきたところでございます。
 御承知のとおり、本年は異常干ばつによる小玉果傾向、着色のおくれなどもあって、九月、十月の出荷量はやや少な目に推移したことから、前年対比一三〇%ないし一四〇%の高値で推移したところでございます。
 しかしながら、九月中旬以降の長雨による肥大促進もあって、十月中旬以降の市場出荷量は予想以上に多く、また暖かい日が続いたため、一時的に値崩れを起こしたものの、十二月に入り、主要市場での平均卸売価格は持ち直してございます。
 次に、オレンジなど輸入自由化後の百八十万トン体制の見通し、これでやっていけるのかということでございますが、この計画は、平成三年四月から実施される自由化を前提に国が慎重に検討を行い、平成十二年度を目標として果樹農業振興基本方針で示したものでございまして、県としては、百八十万トンの枠の中で、今後一層、適地適産を基本として、老木園、不良系統園などの更新を初め、施設栽培、マルチ栽培等による高品質ミカンの生産拡大に努め、国際競争、産地間競争に打ちかつ産地づくりに取り組む必要があるものと考えてございます。
 次に、二十八号台風被害の救済対策で、特に農共済と話し合えないか、要請できないかというお話でございます。
 台風二十八号による温州ミカンの被害救済については、現在、関係共済組合において被害の調査評価中でございますが、農業災害補償法の適用、すなわち共済金の給付は国が定める基準収穫量の三割以上の減収量が対象となっていることは議員お話しのとおりでございまして、現行制度では、三割以下の減収園に対する救済措置は困難であると言わざるを得ません。
 しかし、お話しの共済組合との話し合いについては、特にことしはミカンの裏年にも当たりますし、また異常干ばつやたび重なる台風の本県への上陸という特殊事情を十分考慮した上での評価がなされるよう働きかけてまいりたいと存じてございます。
 以上であります。
○議長(岸本光造君) 教育長高垣修三君。
 〔高垣修三君、登壇〕
○教育長(高垣修三君) 四点の御質問のうち、まず紀北養護学校在籍の重度重複障害児の教育についてでございますが、訪問教育制度の中で、学習内容や方法等において工夫をしてきたところでございます。
 これらの児童生徒たちは、障害の実態に応じ、集団の中で学ぶことの喜びを体験させることが大切でございます。今後、現状を踏まえ、健康状態や体力に応じた学習内容をより充実してまいりたいと考えてございます。
 次に、新設のたちばな養護学校の校舎建設の進捗状況についてでございますが、平成二年度を初年度とした四カ年計画を立て、平成三年三月末までには当初予定の管理棟、校舎棟の一部を完成することになってございます。また、開校時においては、小学部、中学部、高等部を合わせ約八十名程度の児童生徒数を予定しており、これに見合った教職員の確保に努めてまいる所存でございます。
 次に高校の学級数でございますが、来春の中学校卒業予定の生徒数は、お話のように、前年対比で約千四百人程度が減少ということになり、今後もこうした傾向は続いてまいります。
 こうした状況から、来春の募集定員については、過去の学級増により生じている諸課題あるいは中学校の卒業生徒数の推移の問題、そして私学の振興並びに地域の状況等、全県下的な視野から総合的に検討を行っているところでございます。
 次に、四十人学級については、教育指導上好ましいことでございますが、国の標準定数法にかかわる学級編制基準の改善が必要でございまして、直ちに実現をすることは困難でございます。
 しかしながら、生徒増加期に四十五人学級を維持してきた経緯を踏まえ、国における対策や近府県の取り組み状況等を十分把握しながら研究を続けてまいりたいと考えてございます。
 また、現在国が進めている第四次の高等学校教職員定数改善については、平成二年度の改善率は千分の七百三となってございまして、各府県はこの国の改善状況を踏まえ、定数を定めているところでございます。
 以上であります。
○議長(岸本光造君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 45番小林史郎君。
 〔小林史郎君、登壇〕
○小林史郎君 御答弁いただきましたが──今度はもう、知事がいい答弁をしてくれたら再質問も要望もせんとこうと思っておったんですが、先ほどのエレベーターの問題の答弁は余り納得できませんので、要望、質問兼ねてのことになると思いますけれども、一言お願い申し上げておきたいと思います。
 障害者にとって、例えば私の場合、東別館に上がっていくときに大変苦労するわけです。特に、去年でしたか、いい方の足をくじいて、二本つえをつかんといけないときがあったわけです。そのときに、どうしても教育委員会へ行かなならん用事があって、つえを二本ついて行ったんですが、とても上がれません。そこで、連絡するようになっておりますので連絡したところ、守衛の方が来てくれたんです。ところが、何か道具で上まで上げてくれるのかと思ったら、何もないので負うてもらわなならんということになるわけです。そうすると、僕もいい加減重い方やし、負うてもらうのは大分気が引けますので、もうお断りして、かわりに用を済ましてもらったんです。
 そういうことから、何でもないような──もしあそこの外へエレベーターをつけるとしたら何億か要るのかもわかりません。その金はもったいないような気もするけれども、しかしそれは、障害者にとっては非常にありがたい、要求の強いものであるわけです。
 そういう点をわかってほしいなという意味で、あえて「つけてくれ」と言わんと「行政姿勢の問題として知事はどう考えてくれるんですか」とお尋ねしたんですが、知事はその点について、つける気がないような意味に受け取れる答弁であったので、それはそうであるのか、あるいはやっぱりこれから検討して何らかの方法を考えていこうという意欲、姿勢を持ってくれているのかどうか、その辺がはっきりわからん答弁であったので、この点を明らかにしてほしいと思うんです。
 私思うのに、例えば、先ほど教育長に紀北養護学校に重度重複の学級を設置していただけないかとお願いしたところ、まあ前向きに対処してくれるような答弁でございましたが、はっきり設置へ努力しますということを言ってくれない。この学級を設置することによって年間どのくらいの予算が要るのかわかりませんけれども、一億円ぐらいの金やったら何とかなるんやないかと思うんです。そうした一億円が非常に貴重過ぎるように感じる、そういう行政姿勢を変えていただきたい、見直していただきたいというのが、私の今主張させていただいたことであるわけです。
 せんだって、有田で障害者の触れ合いの会があったんですが、そこの実行委員長が開会のあいさつでこういうことを言われました。「私の友達がプラハで二週間生活してきたんやけれども、──車いすの障害者ですが──二週間あそこで生活して、不自由を感じることは一度もなかったということを聞かされた」と。プラハの町というのは四百年の歴史を持つ古い町並みだそうですが、車いすで生活をして不自由を感じないような町並みができておるということです。
 また、その同じ実行委員長は「ヨーロッパ諸国では『障害者』という言葉はあるけれども『健常者』という言葉がない。『まだ障害を持っていない人』という意味の言葉があるけれども『健常者』という言葉がない」というぐあいにあいさつで言っておられましたが、これを聞きましたときに、やはりヨーロッパは、障害者に優しい、心の優しい、大切にするという点では日本よりはるかに進んだ国ではないかという感を持ったわけでございます。
 そういう意味で、和歌山県政においても、そうした障害者に優しい行政の一つの手始めとして、ちょうどこの県庁の家主さんは知事さんですので、ぜひそういう設備をしていただきたい、あるいはそういうことを検討していただきたい、こういうぐあいにお願いしたところでございます。
 先ほども申し上げましたが、そういう要望を申し上げるとともに、もう本当につくらん、検討せんというのか、その辺のところを明らかにしていただきたいと思います。
 以上でございます。
○議長(岸本光造君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 小林議員にお答え申し上げます。
 エレベーターの件でございますけれども、先ほども申し上げましたように、やる気はあって、いろいろ研究を重ねてきたわけでございます。
 ただ、東別館の外にエレベーターをつくれないかという問題を検討いたしましたが、建築基準法でできにくいようでございます。それじゃ中でやるかという問題でございますけれども、狭隘にもなっておるし、金額はどのぐらいかは別として、根本的に改造しなければならないような形にまでなるようでございまして、そうした点から非常に難しいという現状になっておるわけでございます。
 そうした面において、先ほども申しましたように、障害者になるべく迷惑をかけない方法をもっと工夫改善すべきじゃないかということで、我々は応対においてもなお一層努力しますし、またいい方法があるということでございましたならば、いろいろ知恵をおかりしながら研究するにやぶさかではないわけでございまして、障害者対策につきまして私も積極的に取り組んでいるところでございます。
○議長(岸本光造君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
 45番小林史郎君。
○小林史郎君 念の入り過ぎかもわかりませんけれども、もう一度、要望申し上げます。
 初めて県庁の本館へ手すりをつけてくださいとお願いしたときに、当時の大橋知事は、あそこは大理石か何かであって、手すりをつけられない、技術的に難しいんやというお話であったわけですが、その後いろいろ研究、検討して努力していただいて、手すりがついたわけです。
 やっぱり、熱意を持って研究、検討を重ねたらいい方法も見つかってくるかと思いますので、何とかその辺の努力を最大限やってくださることをお願いいたしまして、私の要望を終わります。
○議長(岸本光造君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で小林史郎君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
○議長(岸本光造君) 本日は、これをもって散会いたします。
 午前十一時五十九分散会

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