平成2年12月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(森本明雄議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 午後一時六分再開
○議長(岸本光造君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
○議長(岸本光造君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 42番森本明雄君。
 〔森本明雄君、登壇〕(拍手)
○森本明雄君 通告に従って、順次、質問を行ってまいります。
 なお、関空問題については午前中の質問と一部重複する点があるかとは思いますが、それぞれの立場の違いがございますので、御理解のほどお願いを申し上げます。
 大阪空港は、関空と機能分担して国内線基幹空港として存続することに調停団、十一市協、運輸省が合意いたしました。これによって大阪空港は、一日の発着回数三百七十便、うちジェット便の発着回数一日二百便を維持した上で一日五十五便の国際線定期便が関空に移ることにより、さらに国内線の路線拡充を行いつつ国内線基幹空港として機能を発揮することになります。
 一方、関空は、大阪空港廃止を前提とした建設にもかかわらず、大阪空港存続の影響によって国内線大幅確保の見通しもなく、全体構想は着手時期や完成時期を明示しないまま、新たな滑走路一本の建設と地元負担を強調しているだけであります。その上、空港本島の地盤沈下が予想以上、旅客ターミナルビルの工期が当初計画より延長などの理由により開港時期の延期と、ダブルパンチ。これで県の各種プロジェクトへの影響は必至であります。今こそ起死回生の対策確立が急務と思いますが、所見をお伺いいたします。
 関空の開港時期や開港延期に伴う金利負担増を含めた事業費増加分の負担のあり方について、開港は九四年九月までに、負担については総事業費の三割についての出資比率の割合に応じた負担割り当てをすることで関空会社、大阪府、関経連、大商の四者トップ会談において合意したことが先月報道されました。それによると、トップ会談は十九日、合意したことが明らかになったのは二十一日であります。四者会談が行われていなかったことは午前中の答弁で明らかになりましたが、四者合意は何らかの形であったと考えられます。
 知事にお伺いいたしますが、合意内容についてはいつ知らされ、どのような意見を述べられたのか。自治省と運輸省の間で交わしている「事業費一兆六百七十六億円を超える部分については、原則として地元自治体に負担を求めない」とする覚書が現時点で効力があるとするならば、どう認識し、負担増に対応されるのか。
 空港の建設、会社の運営において不測の事態が起きた場合、国、地方自治体、民間の三者が一体となって会社を支援していくことになっています。ただ、地方自治体の財政問題もあり、国としては会社の設立、運営に大きな役割を果たしている立場を十分認識し、対処していくことが確認されており、こうした経緯を踏まえ、一定の歯どめを行うため覚書を交わしたものと思います。
 収支計算は、危険を考え、できる限り安全サイドで検討するのが原則であります。大阪空港の存続、関空開港のおくれ、事業費の増大などの事態が起きたことにより、財政計画の見通しが狂ったことは事実であります。これで、単年度黒字は開業後五年、配当開始が九年後、無借金は二十三年という計画は完全に不可能となりました。また、長期的に見て収支採算性の悪化は必至であり、さらに新たなる負担も考えられます。そうした事態に対する対応を明確にしておく必要があると思いますが、見解をお伺いいたします。
 空港にとって最も大切なことは、安全性確保であります。全運輸省労働組合が昨年行った現場の管制官千五百人を対象としたアンケートでは、過去一年間に管制官の四人に一人が冷やり、はっとしたことがあり、操縦士らの五人に一人がニアミスやそれに近い経験をしたと回答をしております。それほど日本の空には危険が潜んでいます。
 民間機の飛べる空域は決まっていますから、便の増加で過密はひどくなるばかりであります。たしか全国紙のコラムに、一つの重大な事故が起きるまでには二十九件の同種の小さな事故がある、その根底には三百件のささいなふぐあいが隠されているとありました。
 九四年に関空が開港すると、存続する大阪空港と二つの不完全空港の併用が始まります。二つの空港を合わせた年間の発着回数は当初二十五万回程度でありますが、二〇〇〇年には二十九万回と、現在の倍以上に増加いたします。両空港間の距離は約五十キロであります。その間に両空港の発着ルートが複雑に入り組むことになります。滑走路ができても空域は広がりません。ますます空が過密になることだけは確実であります。果たして空の安全性が確保できるのか、懸念するのでありますが、見解をお伺いいたします。
 次に、教育問題です。
 学年の枠がなく、生徒の自主性を尊重する新しいタイプの高校である単位制高校開設の動きが全国で高まってきました。文部省によると、昭和六十三年度に岩手、石川、長野の三県で誕生したのに続き、平成元年度に二校、二年度には八校生まれ、来年度には東京、翌年度には大阪でも設置が予定され、ほかにも二十を超える自治体が設置を検討していると言われています。
 このように単位制高校が一つのブームになっているのは、それが時代のニーズにこたえる高校教育の新しいシステムであるからであります。基本的性格としては、単位制高校は進級に必要な単位を定めず、一定の単位を取得すれば卒業は認められます。一度修得した科目の単位が留年により無効となってしまうことはないし、他の高校で途中まで取得した単位も認められます。もう一つの特色は、学習する科目を学校側が決めるのではなく、生徒の自主性を尊重していることであります。生徒には、自分で計画を立て、みずから学習する科目を選択する権利があります。
 和歌山県では、ほとんどの中学卒業生が高校に進学し、高校は今や県民教育機関になっています。しかし、そうした中、高校教育のあり方が問い直されています。
 近年、県立高校の中退者は五百人以上が定着しています。その理由として進路変更や学業不適応が多く占めていますが、入学間もないころに退学してしまう中退の低学年化の傾向も目立っています。このような状況を等閑視することなく、生徒の多様な能力、適性に合ったプログラムを選択できる新タイプの高校づくりが求められていると思います。
 また、単位制高校は生涯教育の場という顔も持ち、広く社会にも門戸を開くことができ、教育改革を開く可能性が大きいのであります。そうした意味で、県教委は県立定時制高校に単位制の導入を検討との報道が確かなものであるならば、制度内容の記事は別として、三年前より単位制高校の実現を要望してきた私にとって県教委の御努力、英断に敬意を表するものでありますが、願わくは、制度の内容として、昼間・夜間部、定時制と通信制の併修、また単位制の特色を生かし、以前に在籍した高校で修得した単位や大学入学資格検定試験の合格科目の単位などの卒業単位への算入、さらに県民の生涯学習の拠点として、週五日の授業のほかに土、日曜にはワープロ・パソコンなどのビジネス講座や英会話、テニス、コーラス、華道などの教養講座を開講し、既に高校や大学を卒業した人でも趣味や関心に応じて学習できるよう、地域に合った柔軟な学校を目指していただきたいのでありますけれども、現時点における検討内容と実現への具体的スケジュールについてお伺いいたします。
 環境汚染の進行に伴って地球規模の環境問題に関心を持つ人がふえてきました。そうした中、環境への関心を一層高め、知識と理解を深め、さらに環境保護へと結びつけるための環境教育の重要性が次第に認識されるようになってまいりました。ところが、日本は世界各国の中で、この環境教育への取り組みが立ちおくれています。今、教育の面での環境対策の充実が問われていると思います。環境問題解決への世論を高めていくには人々の意識が変わらなければなりません。そのために教育はかぎとなります。子供たちの成長の早い段階から自然環境に触れ、環境について考え、理解するための機会を与えていくことが重要となります。そうした意味で、教育の持つ役割は大きいと思います。住民、消費者運動の関心の高さに比して教育面での前進は、はかばかしくないように思われます。
 財団法人日本環境協会の調査では、小・中・高校で環境教育のカリキュラムをつくっているのは四・三%であり、学習指導要領でも環境教育は明確に位置づけられていません。ある意味では、これまでの教育のあり方が環境危機を招いた一因とも言えます。学校教育、また生涯教育を通じての環境教育の構築が今後の教育のテーマと思いますが、現状の認識と今後の取り組みについてお伺いいたします。
 国民がひとしく高等教育を受けることのできる今日的制度として放送大学が実現して、五年目を迎えます。第一期計画として関東地域から放送授業が開始され、国会決議では全国的に教育の機会均等が保障される大学となることが決められながら、対象範囲の拡大はなかなか進みませんでした。今まで放送授業を直接視聴できる範囲は関東地域に限られていましたが、ビデオセンター設置によって北海道、広島、福岡、沖縄の四カ所でも放送大学に入学できることになりました。社会構造の多様化、労働環境の変化は、人々の学習意欲、学習の必要性を高め、生活にゆとりを与えます。高齢化社会に向けて、だれでも、いつでも、どこでも、どこからでも学べる生涯学習社会の基盤整備は不可欠であります。日本での学歴社会の偏差値ピラミッド構造にかかわりなく、この分野に興味があり、ぜひ学びたいという強い動機、目的さえあれば学べる場として放送大学の意義は大きいと思います。
 放送大学を今後どう充実・拡大されるか。それは、生涯学習社会づくりのあり方に大きくかかわってきます。そうした意味で、視聴のネット化拡大を国へ強く要求するとともに、県独自のビデオ学習センターの設置を検討してはと思うのでありますが、見解をお伺いいたします。
 高校生の交通教育問題というと、すぐに出てくるのが三ない運動であります。高校生のあるべき姿として学校が約束させ、これに違反すると学校側の処分が待っています。このように、高校生を車社会から隔離してきたのであります。初めて免許が取得できる年齢に達し、二輪車へのあこがれ、興味が果てしなく膨らむ少年たちを校則で抑えつけてきたのであります。
 政府の諮問機関である交通対策本部は、三ない運動を実施している学校であっても、事故防止を図るため、規則のあり方を含め、総合的な対策を検討し、交通安全教育、指導の積極的な推進を図る、つまり三ない運動見直しの方針を打ち出しました。この背景には、学識経験者らが三年間をかけて調査した交通安全教育の実態報告及び提言があります。それによると、三ない運動を実施する多くの高校における交通安全教育とは、映画などを使って事故や車の危険性のみを教えること、つまり自己の安全のみならず、社会の安全に貢献できる人間の育成という視点が欠落していると報告しています。こうした見直しの方針を受けてか、最近、全国的に一定の条件のもとで許可する学校がふえてきています。
 文部省の調査によりますと、原付免許をどのような場合でも取らせない全面禁止派の学校が二二・八%、条件つき許可または制限せずが七三・五%、ただし自動二輪の場合は、まだ七割の学校が全面禁止となっております。
 何でもかんでも禁止するところには、自主性も安全に対する自覚も育ちません。取りたい人には免許取得を許可し、徹底した安全教育によって正しい運転技術、安全運転のマナーを身につけることの方が効果的だと思います。三ない運動の実態、交通安全教育の現状、全国的な見直し傾向に対する現状認識と今後の方向性についてお伺いいたします。
 県老人福祉課のまとめによりますと、高齢化は全国よりも十年早いペースで進むと見られ、特に過疎地域でその傾向は顕著であります。全人口に占める比率は一五%であります。市町村別では、北山村が三一・九%で最も高く、美里町、古座川町など、二〇%以上の自治体が十七町村に及んでいます。
 高齢化社会での問題は数多くありますが、ここでは高齢化率二〇%を超える町村の問題点を若干考えてみました。その結果、高齢者福祉にとどまらず、高齢地福祉が必要なことがわかりました。既に小・中学校、さらには高等学校を必要としない地域がふえつつあり、火災や急病など緊急事態への対応はもちろんのこと、従来の村行事や葬儀など生活の根幹にかかわる諸行事を実行できない地域が発生しています。これは、地域社会の崩壊という以外にありません。このまま推移すれば間もなく廃墟と化す地域もあり、自然環境の整備、保護ができず、下流域への災害要因となることも懸念されるのであります。
 これらへの対応は、個々の市町村では不可能な面が多く、国、県全体の方針を確立することが急務であります。市町村のシビルミニマムとして高齢化率を取り上げ、地域的な抑制策を講じなければ憲法で保障された健康で文化的な最低限の生活を実現することはできません。
 全国的には二〇二〇年に高齢化率二三・六%を突破すると見られていますが、和歌山県ではその十年前に二三%を突破すると見込まれ、一部地域では五〇%を超えることも予測されます。地域間に均衡のとれた高齢化社会へ軟着陸させる政策を必要としています。現在の高齢化格差をこのまま放置すればさらに地域格差といった悪循環に陥り、都市ほど経済、情報、文化、人口などの集中が進み、市町村の地域格差はますます増大するものと考えられます。
 以下、質問を行います。
 最初に、地域や村落を健全に維持するためには高齢化率を何%に抑制すればよいのか。将来の人口構成とあわせて検討する必要があると思います。私は、一応三〇%を高齢化危険水域と考え、十年以内にその水準に達する市町村を含めて政策を確立すべきであると考えます。一定の危険水域を超えると加速度的に地域や村落の崩壊へと進むことが実証されているからであります。その抑制政策については、各市町村が地域の責任において努力するのは当然ではありますが、地域の力だけでは阻止することのできない状況も存在します。したがって、県、市町村が一丸となって対策を立案施行しなければなりません。特に県が広域的な見地から政策をリードしなければ均衡のとれた高齢化社会を実現することはできませんが、所見をお伺いいたします。
 次に、高齢化率が二〇%を超えた町村は十年後には三〇%を超えるものと予測され、自治として危機的状態となります。生産年齢人口も十年後にはさらに一〇%以上落ち込んで五〇%台となり、企業誘致などは地域によって不可能となるのではないでしょうか。人つき企業が誘致できない以上、高齢化率の加速度はますます増大するものと思います。また、高齢化率が高い市町村ほど地方税収比率が低く、十年前に比較しても改善は進んでいないようであります。地方税収比率が低いために民生費予算が抑制され、本来ならば民生費が最も必要な高齢化市町村がそれを組み得ない状態にあります。さらに、国民年金加入者に対する老齢福祉年金受給者を含めた受給者率の割合は、高齢化率の高い町村で既に一〇〇%を超え、一人が一人を支える年金社会ができ上がりつつあります。そして、高齢化率が高いにもかかわらず医療過疎のために国保財政がかえって黒字になっている町村が多くあり、病巣は拡大しています。
 ちなみに、「和歌山県統計年鑑」によりますと、六十三年一年間の県外への人口流出は、十年前と比較して千八百二十二人減で二万二千三百五十六人、率にして〇・七五%の減となっております。これは、子供人口が大幅に減少した影響であります。年齢別人口の資料は国調しかありませんので、六十年と十年前を比較すると二万六千四百十人減で二十二万五千二百八人、率にして一〇・五%減であります。また、六十三年の出生数は十年前と比較して約三千七百人減の一万八百八十八人、死亡数は千百人増の九千二百一人となり、死亡数が出生数を上回っている自治体は、五十市町村のうち三十市町村に及んでいる状態であります。
 このことについて少し説明を加えさせていただきますと、御承知のように高齢化率の最も高いのは北山村三一・九%でありますが、続いて美里町、古座川町、本宮町、熊野川町、美山村、清水町、すさみ町、花園村、中辺路町、以上が上位の十町村であります。地方税収の一般会計歳入に占める割合を十年前の五十三年度と比較した場合、六十三年度の十町村の平均値は五十三年度より〇・五七ポイント増の七・一二%、うち二けたはすさみ町一町、最低は花園村の二・三七%で、余り改善が進んでいないことがよくわかります。ちなみに和歌山市は、五十三年度より一三・二〇ポイント増の五五・八六%となっています。
 民生費の一般会計歳出に占める割合は、十町村平均値は五十三年度より一・九〇ポイント減の六・六一%で、地方税収が伸びないため、民生費が最も必要な高齢化町村ではそれを組めない実態が明らかであります。また、平成元年度の老齢福祉年金受給者を含めた国民年金受給者の加入者に占める割合が最も高いのは美里町の一二八%、最低は花園村の八六・六三%、十町村の平均値は一〇五・四五%で、国民年金で見る限り、一人弱で一人を支える年金社会が完全にでき上がっている状態であります。さらに平成元年度の国保会計では、赤字はすさみ町のみで、他の九町村は黒字となっています。その要因の一つに医療過疎が考えられるわけであります。そして、六十三年十月から平成元年九月までの一年間の出生数は、十町村すべてが死亡数を下回るという実態であります。
 このように問題点を何点か述べましたが、これは、第二の過疎化が始まったとはいえ、未来の課題とされてきた人口危機が和歌山県を直撃していると思います。これらの実態をどのように認識され、対策を考えられているのか、お伺いいたします。
 なお、高齢化率三〇%を超えた村、また目前の町村に対し、今までどのような施策を重ねてきたのか、現在どのような困難に直面しているのか、将来どのような計画を立案しているのか、また国にどのような要望をしているのか、あわせてお伺いいたしたいと思います。
 厚生省の依頼で救急患者の救命率向上策を検討している救急医療体制検討会が、ドクターカー、ナースカーの普及や医療機関と救急車を結んだホットラインの設置、救急隊員の医療行為の一部容認などを求める中間報告をまとめました。続いて自治省消防庁の救急業務研究会も、救急隊員の医療行為容認や消防ヘリの救急業務への活用などを求める報告をまとめました。さらに厚生省は新たな国家資格として救急救命士制度を発足させることを決め、通常国会に法案が提出されます。
 仮死状態で病院に運ばれる救急患者の救命率は、その国の救急医療のレベルを示すバロメーターであります。厚生省研究班が最近まとめたDOAに関する調査研究報告書によると、完全に社会復帰できたのは一・〇九%で、欧米の二〇ないし三〇%とは、社会復帰の条件の違いはあったとしても比べものになりません。しかも、五人に一人は手当てが早かったら助かっていた可能性があるとされています。
 我が国では、救急隊員が初歩的な応急処置しか許されていない上、医師が現場に駆けつける体制が未整備であり、救急患者が病院に搬送されるまでの医療の空白が救命率の低い原因であります。
 こうした救急救命医療の立ちおくれは、助かる命がみすみす失われていると厳しい批判を浴びてきましたが、この中間報告によってようやく新たな段階へ一歩踏み出したと言えます。しかし、問題はこれからであります。本格的な救急医療システムをどうつくり上げていくのか、課題は多くあります。国、県一体となって、救急医療の改革、向上に取り組む必要があります。中間報告や救急救命士の創設など、国の一連の対応の評価と実現への課題に対する県の取り組みについてお伺いいたします。
 これからは交通事故だけではありません。高齢者の増加の中で救急医療の重要性は増すばかりであります。国の施策を待つのではなく、県民の救える命を救うため県独自の積極的な取り組みを期待したいのでありますが、見解をお伺いいたします。
 以上で、一回目の質問を終わります。
○議長(岸本光造君) ただいまの森本明雄君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 森本議員にお答え申し上げます。
 関西国際空港の開港遅延対策でございます。
 関西国際空港の早期開港、国内便確保、全体構想の推進につきましては、議員御指摘のとおり、本県にとって非常に重要な問題としてとらえており、現在までも県選出国会議員、県議会議員、また県民の皆さんの御支援をいただきながら取り組んでまいっておるところでございます。これらの問題は本県の活性化に大きく関連してきますので、今後も皆さんと一緒になって頑張ってまいりたいと思っておる次第でございます。
 また、現在進めている各種プロジェクトにつきましては、開港の時期と関連してまいる問題もございますが、当初計画どおりに推進が図られるよう、国及び関係機関と連携を図りながら取り組んでまいりたいと思っております。
 次に、四者合意についてでございます。
 これは合意といったようなものではなくて、関西国際空港株式会社の竹内社長が大阪の財界・官界に対して関西国際空港の状況を説明したものだと聞いておるところでございます。
 関西国際空港の事業費等の地元負担の問題につきましては、今後、関西国際空港株式会社において明らかになっていくものと存じますが、議員御指摘の運輸省と自治省の覚書の問題もございます。両省等の協議も含め、関西国際空港株式会社に出資している関係自治体等と協議をし、県議会とも十分相談させていただきながら今後対処してまいりたいと思っております。
 次に、高齢化問題でございます。
 お話のように、本県の地勢や産業構造に伴う高齢化は、過疎地が特に顕著でございます。そのために皆さん方の御支援をいただきながら、半島振興法、また過疎法が切れましたので新過疎法の制定に御努力いただき、現在進めているわけでございます。
 このように過疎化や高齢化が進んでくるのは地域に若者がいないということであり、地域に若者をいかに定着させるかということが一番の基本でございます。
 先ほど森本議員から、高齢化の十カ町村の実態について詳細な御報告をいただきました。しかし、こうした町村自体も、町村長が非常に苦労しているのが現況でございます。お話のように、町村だけでは解決しないのではないか、県も積極的に取り組まなければならないという意味において現在取り組んでおるわけでございます。特に、こうした過疎十カ町村等の実情を見た場合、リゾートの問題等が焦点として取り上げられておるわけでございます。
 県といたしましても、農林水産部において山村対策の実施による環境整備、また人材が残れるような施策、商工労働部においては中小企業の誘致・振興、町づくりや一村一品の問題等々に取り組んでおり、また土木部においては交通基盤の整備という形で進めております。このように、各部相連携して努力しているところでございます。
 しかし、話ございましたように、これは政治の問題にもなってくると思います。和歌山県だけではなしに全国の過疎地の問題について、将来を見越して今後もいかに連携を持ってやっていくかということが重要な課題だと思っております。また、こうした超高齢化の町村への特別の対策というのは別にしておりませんけれども、山村個々の振興対策の十カ年計画というのを策定し、国の承認を得ながら各般の施策を進めてまいっておるところでございます。
 今後とも、そうした面についてなお一層配慮してまいりたいと考えております。
○議長(岸本光造君) 企画部長川端秀和君。
 〔川端秀和君、登壇〕
○企画部長(川端秀和君) 関西国際空港問題に関連しての空域の安全性確保についてお答えを申し上げます。
 関西国際空港開港後の空域の安全性確保につきましては、現在、大阪国際空港や八尾空港においてはそれぞれの空港で管制業務がなされておりますが、関西国際空港開港後における大阪周辺に係る航空機は、同一管制機関によって航空管制を実施するために、関西国際空港に設置される我が国で初めての広域レーダー進入管制所により関西国際空港、大阪空港、八尾空港が一元的に管制されることになります。レーダー等により確認できることから間隔の設定、調整等が容易となりまして、空域の有効利用、航空機の効率的な運行及び円滑な管制業務の実施が可能となり、十分な安全性が確保できると聞いているところでございます。
 以上でございます。
○議長(岸本光造君) 総務部長山中昭栄君。
 〔山中昭栄君、登壇〕
○総務部長(山中昭栄君) 救急患者の救命率向上についてでございます。
 消防機関による救急業務は、全国で年間二百六十万人の傷病者を搬送するに至っており、地域住民にとって不可欠な行政業務になっております。しかしながら、現在の救急業務は搬送機能を中心に整備をされており、救急隊員の行う応急処置も、酸素吸入あるいは胸骨圧迫心マッサージなど、比較的簡単なものに限られております。したがいまして、御指摘のございましたとおり、欧米に比べて我が国の救急現場あるいは搬送途上における応急処置いわゆるプレホスピタルケアについては十分ではないと言われておりまして、こういった事態を改善して救命率の向上に努めることが今日の救急業務において緊急の課題になっております。
 その方策としてドクターカーシステムを導入することが望ましいとされておりますが、同乗する医師の確保が困難であること等の事情もあり、消防庁及び厚生省の検討委員会で基本的な方針として提案されているのが救急隊員の行う応急処置の範囲を拡大するということでございます。その柱といたしまして、一つは消防庁告示で示されている基準を改正して救急隊員の行う応急処置の範囲を拡大する、それから心肺停止状態に陥った傷病者に対して応急処置を行うことのできる新たな国家資格制度の創設という二点であろうかと思います。このために必要とされる訓練時間は、現在百三十五時間の講習時間がございますが、これを含め、それぞれ二百五十時間あるいは一千時間程度であるとされております。このうち、後者の新しい制度につきましては、それぞれの都道府県の消防学校で独自に対応することが困難と考えられるところから、都道府県域を超えた新しい教育訓練機関を設けたり財団を設置する方向で検討が進められているものと承知をいたしております。
 また、初めに申し上げた基準の改正による応急処置の範囲の拡大につきましては、資器材等の整備に多額の経費を伴い、また教育の実施に当たっていただく医療機関等との調整など、多くの難しい問題もございますが、県としては、消防学校の教育体制の整備を含め、新しい救急方策に対応できるよう、関係機関との連絡協調を密にしながらこれらの課題についての検討をさらに進め、地域住民の救命率の向上に努めてまいりたいと考えております。
○議長(岸本光造君) 保健環境部長遠藤 明君。
 〔遠藤 明君、登壇〕
○保健環境部長(遠藤 明君) 救急患者の救命率向上についてでございます。
 年々増加する救急患者に対応するため、医療機関等の協力を得ながら初期から三次に至る救急医療体制及び情報システムの整備に努めてきたところでございますが、議員御指摘の搬送途上における医療の確保についても重要な課題でございます。
 国の救急医療体制検討会中間報告の中で今後の検討課題とされた救急隊員の行う応急手当ての範囲の拡大及び救急医療に係る新たな資格制度については、その後、救急医療体制検討会小委員会で審議が重ねられ、十二月五日にその検討結果が小委員会報告として取りまとめられました。
 この報告書の内容は、救急現場、搬送途上における医療の確保、救急隊員の行う応急手当ての範囲の拡大及び救急救命士の資格制度の創設となっており、この救急救命士の国家資格についての法案を厚生省が今国会に提出すると聞いております。
 保健環境部といたしましては、この報告書の趣旨の実現により救急患者の救命率の向上が図られるものと期待をいたしておりますが、特に医師の確保、救急車と医師のホットラインの設置等、国の今後の動向を見ながら、本県の実情を踏まえ、関係機関と連携をとって積極的に取り組んでまいりたいと考えてございます。
○議長(岸本光造君) 教育長高垣修三君。
 〔高垣修三君、登壇〕
○教育長(高垣修三君) 教育問題にかかわる四点についてお答えを申し上げたいと思います。
 まず、単位制高校につきましては、御指摘のとおり、生涯学習の観点から広く高等学校教育の機会を確保するとともに、修学年限の弾力化や併修制度の導入などにより、定時制・通信制教育の活性化を目的として制度が発足されたわけでございます。
 県教育委員会といたしましては、他府県において設置されている学校の実態調査によれば、科目の増加に伴う授業展開の問題、無学年制による単位未修得者の増加及び生徒指導上の問題、そしてまた社会人を対象とした講座のあり方等の課題もございまして、これらの課題を踏まえ、現在、実施に向かって研究を進めているところでございます。
 次に環境教育についてでございますが、その重要性にかんがみ、学校教育においては小学校、中学校、高等学校を通じて社会科や理科などで自然環境保全の重要性を指導してきているところでございます。また、小学校の学習資料として「わたしたちの環境」や「わかやまの農林水産業」を配付し、自然環境についての効果的な学習を進めているとともに、自然教室推進事業やふるさと教育推進事業、さらにまた緑の少年団の育成や学校林活動の奨励事業など、自然との触れ合いを深め、自然を愛することの大切さを理解させる学校教育活動を実施しているところでございます。
 今後とも、これらの学習や事業をさらに充実させ、人間と自然との調和を図り、豊かな文化と環境を創造する態度を養うように指導を進めていきたいと考えております。
 第三点として、放送大学についてでございます。
 生涯学習の時代に対応して、テレビ・ラジオ等、多様なメディアを効果的に活用した高度な学習の機会を広く国民に提供するといった観点から、その意義が大きいものと考えております。
 議員御指摘の、全国四カ所における国立大学施設内に設置をされているビデオ学習センターで、現在、千九百七十四名が学習を行っている状態でございます。近畿圏の一員として、放送大学の早期開設について、毎年、近畿圏開発促進協議会を通じて国へ強く要望をしているところでございますが、今後ともこの放送大学の果たす役割を十分認識し、引き続き国へ要請をしてまいりたいと考えてございます。
 また、県独自のビデオ学習センターについてでございますが、生涯学習機会の提供の一環として放送大学ビデオ教材の整備について今後研究をしてまいりたいと考えております。
 最後に、三ない運動についてでございます。
 県教育委員会といたしましては、運転免許取得にかかわる指導として、この運動を全県下的に実施をしているところでございます。各学校では、特別の事情のある生徒に対しては免許取得について配慮をするなど、実態に応じた指導もしているところでございます。その結果、本県の高校生の交通事故は減少し、一定の成果を上げてきたと考えておりますが、最近、全国的に三ない運動についてさまざまな論議がなれているところでございます。本県では、自分あるいは他人の生命の尊重といった観点から、当分の間、三ない運動は必要であると考えている次第でございます。また県高等学校PTA連合会においても、親の願いとして、引き続いてこの運動を推進するよう要請があるところでございます。
 議員御指摘のとおり、高校生に交通安全教育を行うことは極めて大切なことと考えておりますので、「高等学校交通安全教育の手引」を各学校に配付するなど、三ない運動とあわせてその教育を推進するよう努めているところでございます。
 今後、国及び他の府県の動向も踏まえながら、総合的な交通安全教育のよりよいあり方について協議をしてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(岸本光造君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 42番森本明雄君。
○森本明雄君 空域の安全性確保についてでございます。
 この問題は県の管轄ではございませんが、極めて重要なかかわりがあろうかと思いますので、若干申し上げたいと思います。
 運輸省が航空審に示した全体構想の原案によりますと、年間発着回数は、二本目の滑走路完成時に二十三万回、三本目の滑走路完成時に三十万回可能となり、大阪空港と合わせると四十数万回の発着が可能となります。
 首都圏の空域を見た場合に、成田空港は、二期工事が完成して最大二十二万回と言われております。羽田空港は、現在進めている沖合工事が完成して二十三万回でありますから、両空港合わせると四十五万回となります。首都圏空域での四十五万回というのは、自衛隊の訓練・試験空域、そして米軍の訓練空域との関連で、滑走路が完成しても飛べる空域はありません。もし四十五万回の発着が可能ならば、空域の飛行条件の違いは別として、大阪空港、関空を合わせて四十数万回は数字的には可能となります。
 大阪空港の飛行経路は、関空の飛行経路計画との関係から現在の飛行経路を若干変更し、そして交差が生じる一部の経路については垂直間隔を設ける、さらには、先ほども答弁ございましたように、広域ターミナルビル管制所などで空域全体として航空の安全性を確保する計画だと思うのであります。これは、両空港合わせて二十九万回、いわゆる関空一期工事完成に対処するものでございます。
 百歩譲って二期工事完成の対応が限界だと思うのでありますが、全体構想完成時には年間発着回数は両空港合わせて四十数万回、加えて八尾空港、そして神戸空港案もあります。滑走路が幾らできても空域は広がりません。ますます空が超過密化になることだけは確実であります。空の安全性確保から考えて、関空全体構想実現、大阪空港存続、さらに神戸空港の実現と、これらすべてということは物理的に不可能だと思います。したがって、関空以外のどこかで譲歩していただかなくては全体構想実現への道は開けないと思うのでございます。
 以上、意見を申し上げて質問を終わります。
○議長(岸本光造君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で森本明雄君の質問が終了いたしました。

このページの先頭へ