平成2年9月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(中村 博議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 午後一時十五分再開
○議長(岸本光造君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
○議長(岸本光造君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 43番中村 博君。
 〔中村 博君、登壇〕(拍手)
○中村 博君 議長のお許しをいただきまして、今お手元に旧県会議事堂の写真を資料としてお配りいたしておりますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、旧県会議事堂の修復並びに保存策についてお尋ねをいたします。
 県道泉佐野岩出線、風吹峠手前を右に折れ、菩提川の渓流に沿って進むと、見事に復元され、一層重厚さを感じさせる大門が展開してまいります。しばらくすると、黄ばんだ稲穂が目に映り、初秋の風情が漂う中に、新義真言宗総本山根来寺と記された門を抜けますと、右手に、今差し上げました写真のとおりの旧県会議事堂を目にすることができます。
 ただ、根来寺を訪れ、一乗閣と書かれた木造の大建築物を見ても、建物の由来を記された表示がないために、かつて県会議事堂であったのかと知る人はほとんどないのではないかと思われます。明治二十九年から三十年の建築でありますので、あと七年たちますと百年になります。まさに、歴史的重みを持つ貴重な文化財であろうと存じます。
 本論に入る前に、県政とのかかわりや旧県会議事堂について申し上げたいと思います。
 本県は、明治四年に和歌山、田辺、新宮の三県を廃止して和歌山県となったことは御承知のとおりでありますが、ことしでちょうど百十六年になります。こうした県政百十六年の歩みから見ますと、旧県会議事堂は、九十三年もの長い期間、風雪に耐え、二度にわたる移築があったものの根来寺の境内に現存していることは幸いなことでもございます。
 議会事務局に旧県会議事堂とのかかわりについてお尋ねをいたしましたところ、昭和六十三年にとり行われた県議会開会二百回記念式典の際に旧県会議事堂を使用できないものかと調査に行かれたようでありましたが、何しろ九十年余たった建物でありますから、もし大勢の方々がお入りになられて床でも落ちるようなことがあればと、残念ながら県民文化会館を使用したということでございました。
 根来寺に移築されたいきさつ等を知るために、このほど岩出町役場、根来寺に出向き、お聞きをいたしてまいりましたので、念のため申し上げておきますと、林町長、前田教育長から次のようなお話がございました。
 「前平野利一町長時代に旧県会議事堂の移築の話があったようで、平野町長が根来復興委員会の会長もされていたので、この会が母体となって浄財を集め、移築の費用に充て、根来寺に移した。たしか、県からは無償譲渡であったと聞いている。保存策については、現在のところ、寺の所有になっている関係から寺の意見を尊重しなければなりませんが、町の文化財委員の皆さん方からも保存について何とかしなければという意見も出ております。この機会に、町を経由して県の方で文化財としての措置をとっていただければ」ということでございました。
 根来寺の座主のお話によりますと、「以前はよく使っていただきましたが、最近ではほとんど使われていません。夏休みに高校生の吹奏楽の練習に使っていただく程度です。雨漏りもしたので屋根もふきかえましたが、今度漏り出すと多額の費用がかかるので寺としても大変で、台風十九号も心配でした。これを保存するということは、由緒ある建物ですから保存していかなければと思っております。何しろ大きい建物ですから、現状での維持管理は大層なことになります。寺としては、別の場所に移して保存していただければありがたいことです。境内地で利用できる場所も少ない関係から、ここに信徒会館でも建てられればと思っております。しかし、できない場合は何らかの措置で修復していただき、県の文化財にでもされ、維持管理について一定の御負担をしていただければとも考えております」というようなお話でございました。
 続きまして、本県の資料である「県政百年」から追ってみますと、和歌山県が設置された明治四年当時の県庁舎は和歌山城内の砂の丸に置かれたようで、翌年の明治五年に西汀丁、現在の経済センター西隣の汀丁公園に移転され、県庁舎の焼失、再建などを経て昭和十三年、現在地に県庁舎が移転成り、ここに県会議場が初めて併設され、現在に至っているのでございます。
 県議会の関係について見てまいりますと、明治十二年三月、四月になって初めて県会議員選挙が行われ、四十三名の県会議員が誕生、浜口梧陵翁が初代議長になられましたが、当時、県会議事堂はない状態で、和歌山師範学校の講堂を使用されたようで、これも長い期間使用できないために城内の和歌山集産場を議場に充てられ、十八年間ほど使用され、明治三十年になって和歌山市一番丁、現在の郵便局のところに敷地面積三千三十一坪余、建坪六百十九坪余、総工費三万四千二百円の巨費を投じて木造かわらぶき二階建ての県会議事堂が落成、当時としては余りにも立派な建物であった関係から名所はがきにも登場したと記されております。
 当時、県庁舎から離れた位置に独立した県会議事堂を計画した先人たちの英断に思いをいたすときに、議会の権限の重さを感じないでおられません。この議事堂は、昭和十三年、現庁舎に併設されるまで、明治、大正、昭和の三世代にわたって四十一年余の間、いろいろの時代背景があったとはいえ、我が県政の立法、言論の府として重要な役割を果たしてきたものでありますが、昭和十六年になり、県産業組合連合会館として美園町、現在の農業会館に移転され、昭和二十年七月九日、米軍による和歌山市の大空襲にも生き残り、昭和三十五年十一月、農業会館の新築に際し、前段でも紹介いたしましたように根来寺に再び移築されることになり、寺側では一乗閣と名づけ、講堂、客殿として使用されてきたようであります。
 現在の建物の状況について申し上げます。二度にわたる移築が行われた関係で、その都度手を加えられていましたので、外見はごらんのように、百年近くもたった建物と思えないほど良好な保存状況でございます。しかし、注意深く見てみますと、御影石の礎石が狂ってきたり、柱部分が腐食したり、窓の敷居が狂い、開閉ができなかったり、しっくい壁がはがれ落ちたり、裏の出入り口の屋根部分の破損がひどく、危険な状況にありますが、今時点で修復するならば今後百年は大丈夫だと思います。
 全国における旧議事堂の保存状況について議会調査課で御調査いただいたところ、明治十六年に建築された新潟県の県会議事堂と本県の県会議事堂しか残されていないということでございました。このようなことになりますならば、まさに歴史的にも価値の高い建物であることに間違いございません。新潟県の議事堂は西洋方式を取り入れたモダンな建物ですが、本県の場合は純日本建築でありますから、全国で唯一のものということになります。
 そこで、知事にお尋ねをいたします。
 旧県会議事堂についていろいろ申し上げてまいりましたが、知事におかれても、県庁職員から知事になられた関係で県政に大変長い期間携わってこられただけに、県政に対する思いも別段のものがあろうかと存じます。そういう私の認識のもとで御質問申し上げてまいりますので、まことに恐縮でございますが、答弁に心してお答え願いたいと存じます。
 前段において岩出町長、教育長、根来寺座主という方々のお話の内容について申し上げましたが、共通している点は、歴史的価値の高い建物であるということと、県において文化財としての措置をとっていただき、保存に努めてほしいということでございました。私としても同感でございます。旧県会議事堂が、今手を加えないでこのまま放置されてしまいますと根来寺境内で朽ち果ててしまいます。これでは、貴重な文化財を後世に継承させていくことができません。継承させていくべき必要な措置をとっていただくことが極めて重要と考えております。知事の御所見をお伺いいたします。
 教育長にお尋ねをいたします。
 「和歌山県議会百年小史」によりますと、旧県会議事堂は明治三十年度以来、県政の殿堂として長い歴史を持ったものと記述されていますし、また県下の社寺仏閣を除いて最大級の木造建築物で、しかも九十三年余の風雪に耐えてきていることなどの条件を考えますときに、当然、文化財的要素の大きい建築物として行政的措置がとられなければならない問題であります。教育委員会としてどのように認識されておられるのか、お答えを願います。
 修復の問題についてお尋ねを申し上げます。
 修復することになると多額の予算が必要となります。したがいまして、どのような措置がとられることによって修復が可能となるのか、手続上の措置も含め、お答え願います。
 前段でも申し上げましたように、根来寺を訪れ、一乗閣の前に立ちましても、これが旧県会議事堂であったということがわからないまま立ち去る人も多いと思われます。案内表示が必要ではないかと存じますので、こうした措置についてもお答えをいただきたいと思います。
 なお、この機会に特に議長に要望させていただきますが、私どもの先人たちが活躍されました議事堂の修復、保存策については県議会としても大いに関係がございますので、議会としても何らかの御検討をいただければと思っております。よろしくお取り計らいをお願い申し上げる次第であります。
 次に、関西国際空港の問題について、今後どのように対応するかという点でお尋ねを申し上げてまいります。
 本県としては、県益拡大の最大の重点策として、関西国際空港の全体構想の実現に向けて大いに力を入れてこられたところでありますが、こうした本県の取り組みに対し私ども県議団は、四十九年に航空審議会から答申のあった泉州沖立地が現大阪国際空港の廃止を前提とした考え方に立ち、あくまでも第一種空港である以上、空整法に基づき国の責任において空港建設を行うべきであるという立場をとってきたところでございます。したがいまして、関西国際空港会社による空港づくりに反対をいたしてきたところでありますが、まずこの点を明らかにしながら知事にお尋ねをいたします。
 御承知のように、注目されていた航空審議会部会の第六次空整の中間答申が八月二十四日に発表されたところで、これらの答申が今後、閣議了解、政府決定を得るべく、今、作業段階に入っているようでありますが、この中間答申が発表された直後、新聞報道によりますと、総じて関西国際空港の全体構想を推進する本県のあり方にとって「厳しい内容」という大見出しで報道されたところでございました。
 そこで、本県にとって厳しい内容となった中間答申の内容について触れることにいたします。
 本県が廃止の方向を望んでいた現大阪国際空港については、大阪圏における国内航空需要の増大、利用者の利便の確保等の点から存続を明確にしたこと、また関西国際空港の全体構想については、滑走路三本の構想に触れることなく、「新たな滑走路一本の建設及びそれに関連する施設整備を第二期計画として、第一期計画の滑走路処理能力の限界に達するまでの間に整備を進めることとする」とされております。「第二期計画は、第一期計画よりも建設費が多額となり、また供用されても大幅な需要増が見込めないこと等の理由により、第一期計画に比べ収支採算が悪化することが予想される。このため、事業費の抑制、地元負担のあり方、開発利益の還元等を含めた事業の健全な経営を図るための措置や第一期計画の経験を踏まえた事業の円滑な実施を図るための措置を、地元協力を得てあらかじめ確立しておく必要がある。二期計画について早急に本格的な調査を行い、上記の措置について関係者において調整され、十分な見通しが立つことを前提としてその事業着手に移行するものとする」という答申の内容でございます。
 簡単に申し上げますと、一期計画でも採算が難しいのに二期計画ともなれば大変なことになる、採算がとれるような負担協力を約束していただかないと、調査はするが二期計画に進むことはできないというようなことだと思われますが、まず知事として、こうした中間答申内容についてどのように認識しておられるのか、お答えを願います。
 なお、知事は中間答申発表直後の記者会見で、「東京一極集中を打破するためにも、関西が一体となって新空港問題に取り組まなければならない」ということを強調されておりますが、中間答申に示されている多額の費用を必要とすることや大幅な需要増を見込めないなどから、収支採算の悪化を予測した上での地元負担のあり方を求めていること自体を認められているのかどうか、以前と変わりなく全体構想の実現に向かって県の方針として今後取り組むことになるのかどうか。
 百歩譲って意見を申し上げてみますと、前知事が本県の関空問題の対応に当たって「警戒的白紙」という立場をとられたときがありましたが、六次空整についての中間答申が出された今日時点において、本県の立場としては「警戒的白紙」という状況に追い込められてきているのではないかとも考えられます。そこで、知事としてこうした状況についてどのように判断されておられるのか。
 なお、全体構想の推進に当たっては、本県の進む方向を決めるには、当然、県議会の関西国際空港対策特別委員会の議論も重要であろうと存じます。しかし、こうした議論もされていないのが実情でありますので、全体構想推進に当たって県議会との関係についても御所見をいただければと思います。
 以上、何点かにわたって御質問申し上げましたが、御答弁よろしくお願いを申し上げます。
○議長(岸本光造君) ただいまの中村博君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 中村博議員にお答え申し上げます。
 旧県会議事堂の保存についてでございます。
 お話のように、根来の旧議事堂は、和歌山県の県会議事堂として四十年有余にわたり和歌山県政推進の上で重要な役割を果たしてまいった、歴史的に価値のあるものでございます。いろいろな経過をたどって、現在、根来寺の境内に移築されて今日まで保存されているわけでございますが、この建物は全国的に見ても、明治時代の和風建築として数少ないものでございます。
 今後の扱いについては、文化財とするには教育委員会の文化財的価値の検討が先決でございます。そうしたところで検討していただいて、また議会の皆さんとも十分相談させていただいて対処してまいりたいと存じておる次第でございます。
 それから、関西国際空港の中間取りまとめについてでございます。
 けさほど渡辺議員からもお話があり、お答え申し上げたところでございますけれども、関西国際空港は、関西はもちろんのこと、我が国さらには世界の中でも必要な空港である、こうした認識のもとにその建設が進められておるわけでございます。
 中間取りまとめの中で、全体構想については、私は事業着手の方針を示したものだと考えておるわけでございます。我々が要望いたしました三つの滑走路ができなくて、とりあえず二つということでございます。
 関西国際空港は、和歌山県にとっても至近な距離に建設される空港でございます。国内、国際の基幹空港としての機能が十分発揮されることが本県の県益に最もつながるものだと思います。また、そうした形で現在影響もあるわけでございます。
 そういった考え方に立って、昨年、県議会の御協力も得ながら、全体構想について県民挙げての推進組織である促進協議会を設立するとともに、現在、オール関西での早期実現期成会の中核となって運動を進めている状況でございます。
 けさほども申し上げましたけれども、今後とも第二期計画の事業着手を図るための地元負担のあり方などいろいろな問題がございます。こうした問題を関係の大阪府、兵庫県と連携を保ち、また関西の財界、関西の政界等々と十分連絡するとともに、お話ございました県議会の意見は最重点でございますが、そうした皆さんと十分御協議をさせていただきながら、県益を図る立場で対処してまいりたいと考えております。
○議長(岸本光造君) 教育長高垣修三君。
 〔高垣修三君、登壇〕
○教育長(高垣修三君) 旧県会議事堂の保存等についての御質問にお答えをいたします。
 まず、県教育委員会といたしましては、旧県会議事堂は明治時代の和風建築としての歴史的な由緒ある建物であると認識をいたしてございます。
 次に、その修復のあり方でございますが、文化財保護法等により、所有者からの申請に基づき、文化財保護審議会に諮って指定を受けなければならないということに手続上はなってございます。先ほど知事答弁もございましたが、県教委としては、所有者や町教育委員会の意向を聞きながら調査等を検討してまいりたいと考えてございます。
 次に、表示案内板についてでございますが、今後、県民に周知をするために、所有者と町当局で検討していただくとともに、関係の部局とも協議してまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(岸本光造君) 議長に対し要望がありましたことについて申し上げます。
 旧議事堂の件につきましては、県議会にとって特別な関係がありますので、皆さんと御相談をさせていただきます。御了承願います。
 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 43番中村 博君。
 〔中村 博君、登壇〕
○中村 博君 議長からも大変配慮のあるお答えをいただきまして、感謝申し上げます。
 今、旧県会議事堂の保存策について、知事並びに教育長からお答えをいただいたのでありますが、そこでまず答弁を通じて感じた点を申し上げますと、教育長は、この旧県会議事堂の認識ととらまえ方について「歴史的な由緒ある建物だ」と、こういう御答弁であったように思います。ところが、知事がお答えになりました内容は「歴史的に価値のあるものだ」、こういうお答えであります。
 私は、この旧県会議事堂について、何としても今皆さんのお力をかりて保存しないと後世に継承させていくことはできないと思います。知事もお答えになりましたように、全国的にも非常に希少価値の高いものであります。
 私は、根来寺を訪ね、あるいはまた岩出町長さんや教育長さんにもお会いして、その当時のいきさつ等についても調べてここで申し上げたんです。そういうことから、これは何としても保存のために英知を絞ってほしい。冒頭申し上げたように、議長からもわざわざ御発言をいただき、非常に感謝をいたしております。
 そこで、教育長にもう一度重ねて申し上げたい。
 今、知事がお答えになりましたように「歴史的に価値のあるものだ」、あなたは「由緒ある建物だ」、これは受けとめ方が違うんです。なぜ、私は力を入れるか。教育委員会として、所管事項は文化財保護であります。これは、文化財保護として必要のあるものかどうか。今お答えのあったように、それぞれの手続を経ながら、あるいは文化庁の意見も聞くということになろうかと思いますが、その場合、教育委員会の受けとめ方がどうであるかが極めて大事なんです。そういうことで申し上げているわけです。
 知事がお答えになりました「歴史的に価値のあるもの」、あなたがお答えになった「由緒ある建物」、これは受けとめ方が異なります。これから教育委員会の所管に係る問題として、我々県議会の意を体していただいて所定の手続を進めていただくことになろうと思いますので、重ねてその点についてもう一度、意のあるところをお答え願いたいと存じます。
 そこで、この機会に要望として申し上げておきたいと思いますが、きょうは議会の事務局長のところに県農協の方から──今、県農協の方で農協史の編さんをされているようです。
 これは、先ほど申し上げたように、昭和十六年にあの公園前のところから移築されるに当たって、現在の農協の前身である産業組合連合会館として使用される、こういう決定を当時の和歌山県がされたわけです。そのいきさつについて照会していただきましたので、この際、当時の和歌山県の意思は何であったのか、こういう点を参考のために申し上げておきます。
 昭和十六年、現在の県庁舎が新築されたので──この議場であります──旧県会議事堂を文化遺産として保存するため県産業組合連合会に払い下げられ、その記念すべき建物を保存することになった。それは、当時の県知事も含めた意見であったと思います。何が大事か。つまり、県会議事堂を文化遺産として後世に残すということ。当時は、県の指定にすればいいじゃないか、こういう議論もあったろうが、何しろ戦時中でありますので、大事な建物を県下の農業振興のためにも使ってもらおう、そしてそこを通じて後世にこれを保存してもらおう、こういう当時の英断であったと私は思うんです。少なくとも、こういうようにして一つ一つの歴史の一こま、行政の判断があったわけであります。
 だから、そういう点からいたしましても、先ほど教育長にも申し上げたように──これは、教育長は知らないでしょう。あなたたちは調べなきゃならないんです。そういたしますならば、繰り返しくどいようなことを申し上げますが、「由緒ある建物」で抽象化することにはならないと思う。あなたたちは、行政者として的確な行政対応をされる以上は、言葉、表現についても的確にしてもらわないと困るということなんです。だから、念のためにこれは申し上げておきたいと思います。
 旧県会議事堂について重ねて申し上げておきたいと思いますのは、先ほども申し上げたように、二度にわたる移築があったからこそ、百年近くたった建物とは思えないほど保存状況が良好であります。これは、現在の県農協連、根来寺、また移築に当たっていろいろ努力された先人たちのお力添えがあったからこそ、今日、県議会議事堂がこの状況に保存されたと、私はそう思います。この場をおかりして、それらの方々にありがたくお礼を申し上げておきたいと思います。
 したがいまして、今答弁いただきましたように、また議長からも御発言がございましたが、この保存策についてよろしくお願いをし、後世に残していただきたい、重ねて要望いたします。
 最後に、関西国際空港の問題について若干要望を申し上げておきます。
 今、知事からもお答えいただきましたように、地元負担のあり方の問題であります。
 第一期計画においては御承知のとおりのような負担結果を伴って今日に至ってございますが、第二期計画になりますならば──一期計画が約一兆円、二期計画はまだ需用費の内容は運輸省の方で発表されておりませんが、一期計画から考えてみますと恐らく一兆二、三千億はかかるのではないかと、私なりに判断いたしております。そして、採算の問題について運輸省も非常に神経をとがらせておりますが、第一期計画でも採算問題は見通せないというのが現状であります。そういたしますと、二期計画の負担のあり方は、全体総事業費の三○%ぐらいのものが出てくるのではないかと予想されます。そうすると、約四千億円近い負担が関西財界あるいはまた関西における地方公共団体に来るということで、恐らく大問題になるであろうと予測されます。こういう問題が明らかになりますと、県民の側から見ますと、何で国が国際空港をつくるのに財政の厳しい本県がそんな多額の負担をしなきゃならないんだ、必ず県民からそういう意見が出るでしょう。
 そういうことが予想されますので、この負担については非常に大きい問題として知事にお答えをいただきましたところ、これは我が県だけが先走ってどうこうする問題ではない関係で、関係団体との協議、あるいはまた県議会の意見を特に重視するという知事の答弁でありました。これは今後、議会の中でどのように論議していくかになると思いますが、とりわけ基本的には、最初の出発であった「国が責任を持つ」という視点が極めて大事であります。そういうことを強調して、今後どういうような対応になっていくか、知事としても、そういう点に心していただき、ひとつ慎重な対応をいただきたい、こういうことを最後に要望いたしまして、以上で私の質問を終わります。
○議長(岸本光造君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 教育長高垣修三君。
 〔高垣修三君、登壇〕
○教育長(高垣修三君) 先ほどお答えをいたしました「歴史的な由緒ある建物」と申しましたのは、当然その中には価値を認めた上でのそういう表現でありますので、御理解をいただきたいと思います。
○議長(岸本光造君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
 〔「ございません」と呼ぶ者あり〕
○議長(岸本光造君) 以上で、中村博君の質問が終了いたしました。

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