平成2年9月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(渡辺 勲議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 午前十時五分開議
○議長(岸本光造君) これより本日の会議を開きます。
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○議長(岸本光造君) 日程第一、議案第九十三号から議案第百六号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 46番渡辺 勲君。
 〔渡辺 勲君、登壇〕(拍手)
○渡辺 勲君 通告に従いまして、質問を行いたいと思います。
 関西国際空港問題についてお尋ねをいたします。
 かねてより、関西国際空港の全体構想の問題、そして国内便の確保の問題、さらにこれらに密接に関連いたします大阪国際空港の存廃問題について、本会議あるいは委員会において私の考え方を申し述べさせていただくとともに、仮谷知事を初め当局の考え方をただしてまいりました。
 知事を先頭に取り組んできた関西国際空港問題の一つの大きな節目が、皆様も御承知のように、この八月にめぐってきたのでございます。私は、ここ二年間ほど大阪国際空港存廃問題について知事の英断を持った行動を促してまいったところでありますが、去る八月二十四日に航空審議会の中間取りまとめが行われ、平成三年度から始まる第六次空港整備五箇年計画のアウトラインが示されたわけであります。
 その中で、まず大阪国際空港の存廃について明確に記述されております。原文は、「大阪国際空港については、大阪圏における国内航空需要の増大、周辺環境対策の進捗等に鑑み、利用者の利便の確保と周辺地域との調和を図りつつ、同空港を存続することとする」となってございます。以前から予想されていたこととはいえ、「存続」という言葉がずっしりと重みを持っております。
 この存続の方針が導き出されるに当たって、航空審議会において種々の論議があったことと推察されますが、この航空審の動きに歩調を合わせるように、知事あるいは副知事が上京し、運輸省に対し本県の立場、考え方を説明していただきました。当局にとって、まさに暑い八月であったことと存じます。また、この暑い八月を一緒になって汗をかいていただいた岸本議長に改めて敬意を表するとともに、感謝を申し上げたいと存じます。
 七月末に出そろった大阪国際空港の地元である大阪府、兵庫県、さらに伊丹市を初めとする十一市協の存続を求める意見書の国への提出を待って、まず八月一日付で知事名で運輸大臣あての文書が出されております。タイトルは「大阪国際空港問題について」でありました。これまで関西国際空港問題についての文書は数多く出されておりますけれども、大阪国際空港問題がタイトルとなった和歌山県の公文書は初めてのことだと思います。本問題について直接の関係県ではない立場の本県ではありますけれども、本問題が関西国際空港全体構想を含む関西国際空港の機能に影響を及ぼすことがあってはならないという知事初め議会の並み並みならぬ決意であったと私は思うわけでございます。
 この申し入れ文書の中で、本県の主張として、昭和四十九年の航空審議会の「関西国際空港の機能が十分に発揮されるようになった時点で大阪国際空港を廃止することを前提とする」という従来の主張とともに、その結論については今後の航空需要を見きわめた上で結論を出すべきであると考え、したがって関西国際空港の機能が十分発揮し得るまで大阪国際空港問題の結論を保留されたいとの主張がなされたわけでございます。この主張は、これまでの本県の主張とやや毛色を異にする内容でありまして、知事初め県当局が苦渋と苦心を重ねられた、まあ傑作だというところまでいきませんけれども、大変な決断であったと思います。
 この文書を皮切りに、八月六日には副知事が議長とともに上京され、運輸省の幹部と会談されております。また県議会空港対策特別委員会も、八月九日、十四日とお盆の休みを返上して異例の委員会を開催し対応策を練ったところでございます。さらに、航空審中間取りまとめ直前の二十一日には、知事みずから岸本議長とともに上京され、運輸大臣に本県の主張を強く申し述べられております。
 また大阪府との関係につきましては、従来、議会内部においては大阪国際空港問題における不信感から、紀の川分水凍結といった強硬論まで出ていたわけでありますが、本県から国に文書が出されて間もなくの八月四日に大阪府の西村副知事が来県され、西口副知事との間で大阪・関西両空港の問題あるいは紀泉地域の振興についての両府県の意見交換が行われております。
 それぞれの会談内容はともあれ、本県の大阪国際空港問題に対する取り組みは、この八月の中間取りまとめに向け懸命の努力を試みたのでありました。しかしながら、航空審議会の方針は大阪国際空港存続であり、和歌山県の正論は関西全体の便益に押し流されてしまったわけであります。
 我が国あるいは関西の今後の航空需要の伸び、あるいは現在の大阪国際空港への経済集積を考えた場合、関西全体の経済のパイを縮小させるわけにもまいりません。東京一極集中の是正を図るためにも、大阪圏に複数空港が必要であるという趣旨について、すべてに異論を申し述べるわけではございません。現実的な対応も、そのときどきで必要でありましょう。ただ、これまで二十年近くにわたる県議会生活の中で空港問題をライフワークとして取り組んでまいりました私にとって、無念の情を禁じ得ないものもあるわけでございます。この場で、今さら本県のこれまでの空港問題に対する取り組み、苦悩の歴史について繰り返す気は毛頭ございません。
 現実論に戻って話を進めたいと思いますが、聞くところによりますと、今回の大阪国際空港存続の方針を受けて、国においては地元と協議の上、今年の十一月末までに大阪国際空港の門限、ジェット枠等、空港の残し方あるいは関西国際空港との路線配分等の機能分担について結論が出されるということであります。本県としては、関西国際空港の今後を方向づける重要事項ととらえ、大阪国際空港との機能分担に重大な関心を示しながら事に当たらなければならないと考えます。
 知事は、大阪国際空港の存続を予期しておられたのか、議会答弁の中でも、また四月の大阪国際空港のあり方調査に関する知事コメントにおいても、「大阪国際空港が仮に存続したとしても、関西国際空港の補完空港でなければならない」との見解を示されております。したがいまして、大阪国際空港の存続が既定の事実となった今日、県益のため新たなる行動を起こさざるを得ないのではないでしょうか。大阪国際空港と関西国際空港の関係を、東の成田と羽田の関係のようにしてはならないと思います。関西国際空港は、あくまで国際、国内の基幹空港としての機能を果たさなければならないと思うのであります。
 そこで、現実的な対応として、今後の大阪国際空港と関西国際空港との関連をどのように位置づけていかれるつもりなのか、知事の御所見をお伺いいたします。
 次に、今回の航空審中間取りまとめの中での関西国際空港の全体構想の取り扱いについてでありますが、この中で全体構想の事業着手の方針が示されたことは、知事の並み並みならぬ御努力あるいはオール関西での運動組織である期成会に先駆けて、昨年、県内の政・財・官一体となって設立された促進協議会の運動の成果であると評価をするところであります。また、県議会としても大阪国際空港の廃止決議まで行った真意は全体構想の早期実現にあったわけで、関西国際空港対策特別委員会のメンバーや議長のたび重なる中央行動によるところも大と感ずる次第でございます。
 しかしながら、今回の中間取りまとめは全体構想について決してバラ色の内容とはなっておりません。事業着手の方針は示されたものの、さまざまな厳しい条件がつけられております。
 一つには、全体構想については、航空需要の増大に適切に対応できるよう段階的に整備を図ることとし、まず新たな滑走路一本の建設及びそれに関連する施設整備を第二期計画として、第一期計画の滑走路処理能力の限界に達するまでの間に整備を進めることとするとされたことで、我々が目標とする滑走路三本の全体構想がとりあえず二本の滑走路で今後の航空需要増を待たねばならないということになったわけであります。成田については、全体計画がまず認知されて、それを分割して一期、二期として着工されたのとは明らかに大きな違いがあるのはまことに遺憾なことであります。
 二つには、第二期計画の着手条件としての地元協力の問題があります。中間取りまとめには、「第二期計画は、第一期計画よりも建設費が多額となり、また供用されても直ちには大幅な需要増が見込めないこと等の理由により、第一期計画に比べて収支採算が悪化することが予想される。このため、事業費の抑制、地元負担のあり方、開発利益の還元等を含めた事業の健全な経営を図るための措置や第一期計画の経験を踏まえた事業の円滑な実施を図るための措置を、地元の協力を得てあらかじめ確立しておく必要がある。したがって、本五箇年計画段階においては、第二期計画について早急に本格的な調査を行い、上記の措置について関係者において調整され、十分な見通しが立つことを前提としてその事業着手に移行するものとする」と、こうなっています。こうした多岐にわたる地元条件の克服が事業着手の前提となっておるわけでございます。
 なぜ、関西国際空港がこれほどまでに厳しい条件がつけられるのか。同じ第一種空港の中で成田、羽田に対する取り扱いとの格段の違い、国の国際社会に対する責務を放棄したかに見えるこの仕打ちに対しては、関西が一丸となって立ち向かっていかなければならないと考えるのであります。私も、空港整備財源の厳しさは認識しております。現在の空港整備には昭和四十年代に利用者負担の原則が導入され、事業費は空港整備特別会計によって賄われてきており、その財源は航空機燃料税、空港使用料が大半である。しかしながら、利用者負担の原則に従う限り、一挙に大規模な空港を整備するには限界があったということであります。その結果、東京、大阪の国際ハブ空港の整備が立ちおくれ、航空輸送のグローバル化が進む中で、日米構造協議でも批判されたように、我が国は国際的責務を果たしているとは言いがたいのが実情であります。こういった背景をもとに、空港整備財源の再検討、新しい空港整備システムの構築が来年度から始まる第六次空港整備五箇年計画の大きなテーマとなるべきだと私は考えるのであります。
 そういった動きの中で地元協力の問題がクローズアップされてきているのでありますが、財源問題についてこれを地元に求めるのは本末転倒の議論であります。当時の経済情勢あるいはまた財源の状態は我々も認識し、今日の第三セクター方式を私どもとしてもそれなりに理解をし協力をしてきたわけでございますけれども、当然、国として一般財源の投入を図ってでも空港整備を推進するのが責務であります。もちろん、地元として応分の協力を行うことについてはやぶさかではございませんし、協力もしてまいりました。当然、関西国際空港の関係県として本県もでき得る限りの協力はしていかなければならないと思うわけでございます。
 一方、関西経済連合会を初めとする地元経済界は、第一期計画以上の事業費が必要と予想される第二期計画について、関西国際空港会社の採算上の観点から公団による建設、空港会社による管理を提案しております。この経済界の考え方と国の考え方との間には大きな隔たりがあります。このままでは、全体構想の早期実現は難しいのではないかと思われます。
 思えば、関西国際空港については、昭和四十三年に運輸省が調査を開始し、昭和四十九年八月には航空審議会が泉州沖最適を答申、以降、本格的な調査に取りかかり、昭和六十二年一月の着工以来、現在、約二百ヘクタールを超す陸地が海面上にあらわれるとともに、空港と対岸部を結ぶ連絡橋についても海上部の橋げたがすべて設置され、上部の橋げたが架設されているところでありまして、現在はまさに平成五年春の開港に向かってカウントダウンが始まったといっても過言ではないと思われます。
 しかしながら、ここに至るまで、まさに山あり谷あり、あるときには神戸沖のあらしあり、またあるときには大阪湾の津波ありと、さまざまな山場を乗り越えて今日に至っているわけでございます。全体構想についても、運輸省は逃げてばっかりだと思うんです。大蔵省は、見向きもしなかったと思うんです。それを今回の審議会の中間取りまとめで条件つきながらも事業着手の方針を出させたのは、知事を先頭にして各府県に先駆けて本県独自の全体計画促進協議会を県内の各種団体に呼びかけ設立され、早期実現へのアドバルーンを掲げるとともに、大阪府、兵庫県を初めとする地元自治体、関西経済連合会、大阪商工会議所などの経済団体等とともにオール関西の全体構想早期実現期成会を設立され、関西全体の機運醸成に努められた結果だと私は思っております。右も左も見えなかった滑走路三本の全体構想がおぼろげながらも見えるようになったのは仮谷知事を初めとする関係者の多大な努力の結晶であり、これまでの御労苦に改めて敬意を表したいと思います。
 今後、早期に全体構想に事業着手するための前提となる諸課題をクリアすることが求められております。先ほど申し上げたとおり、関西の経済界の考え方と国の考え方との間には大きな隔たりがあり、また大阪、兵庫などの地元自治体の考え方もこれからまとめていかなければなりません。昭和五十七年六月に和歌浦で開催した大阪湾岸サミットを思い起こしてください。あのときは、兵庫県、神戸市の横車で関西国際空港がにっちもさっちも動かなくなったときでございました。知事あなたは絶妙の調整能力を発揮されて湾岸サミットを成功に導き、関西国際空港が動き出したわけでございます。
 そこで、今回もあのようなリーダーシップを再び発揮され、国と経済界、自治体の接点を見出し、諸問題を解決する努力を行うべきだと考えるのでありますが、今後の全体構想早期実現に向けての知事の御所見をお伺いいたしたいと思います。
 以上で終わります。御清聴ありがとうございました。
○議長(岸本光造君) ただいまの渡辺勲君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 渡辺議員にお答え申し上げます。
 関西国際空港についての問題でございます。所見を述べての御質問でございます。
 まず第一点の、現実的な対応として今後の大阪国際空港と関西国際空港をどのように位置づけるかという問題でございます。
 渡辺議員からお話ございましたように、大阪国際空港問題については、県議会の皆さん方の熱烈なる御支援、叱咤激励をいただいて、国に対して議会と一緒になって、また関西の各府県とも共同して本県の主張を邁進してきたところでございます。また、お話ございましたように、昭和五十七年八月三十一日に本県が関西国際空港建設に同意した経過やこれまでの関西国際空港に対する取り組みを思いますときに、時代の変遷はあったとはいえ、私も渡辺議員と同様な感じがするのでございます。警戒的白紙の立場のときから、渡辺議員初め県議会の皆さんには本当にお世話になったのでございます。
 また、御指摘のとおり、大阪国際空港と関西国際空港との機能分担については、私も非常に重要なことだと考えており、これまでも機会あるごとに本県の主張を申し上げてまいったところでございます。八月二十一日には岸本議長とともに運輸大臣に会って本県の主張を申し上げたところ、大臣から、国内、国際の基幹空港として関西国際空港を位置づけており、大阪国際空港が存続しても重点は関西国際空港に置くということでございました。また九月十三日には、政府主催の全国知事会においても内閣総理大臣にも要望してまいったところであり、海部総理から「関西国際空港は国際、国内の基幹空港として建設されており、基幹空港としての必要な便数は確保する」との御答弁をいただいたところでございます。
 この問題については、今後とも県議会の協力をいただきながら、関西国際空港が国内、国際の基幹空港として機能を十分発揮できるように、また県民の利便を図るように努めてまいりたいと思っております。
 次に、関西国際空港全体構想早期実現への今後の取り組みについてでございます。
 渡辺議員から、種々お話がございました。議会の皆さんには大変お骨折りをいただいて中間取りまとめを得たわけでございます。しかし、御指摘のようにいろいろな問題点がございます。滑走路の問題、地方負担の財政的問題等々ございますけれども、現行の空港整備の手法については法律上の問題点もございましたが、第三セクター方式を採用した当時と時代の変化もあり、また国際空港整備は国際社会との調和を図るために国の責務として推進することが基本だと考えておるわけでございます。そうしたいろいろな問題点がございます。
 また、先ほど申し上げた全国知事会においても、全体構想の早期実現についても私は関西の知事を代表して総理大臣の考え方を聞いてまいったわけでございます。この中で私は、平成四年度末の第一期計画の完成に引き続いて第二期計画に着手すべきであり、平成三年度予算においてそのための所要の経費を確保すべきだと主張してまいったわけでございます。今後は、早期に第二期計画の事業着手を図るために、先ほど申し上げた諸問題を解決していく必要がございます。
 また今度の場合、中間取りまとめにおいて変わった事情というのは、特に中部において国際空港を設立しようとする調査の問題が挙がっております。また東京において、第三空港を設立するという問題点もあります。北海道並びに福岡における地方空港の国際化等、いろいろな問題が発生しておるわけでございます。
 それだけに、今後の関西空港の全体構想を推進する上においては、御指摘ございましたように、関西財界、地方自治体、各政治団体、政治の力等を結集してこれに当たらなければならないんではないかと思うわけでございます。こうした点、県議会並びに国会の先生方の格段の御支援をお願いしてまいりたいと存じておる次第でございます。
 よろしくお願い申し上げます。
○議長(岸本光造君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 46番渡辺 勲君。
○渡辺 勲君 時間が少し残っておりますので、質問というよりも要望にしておきたいと思いますけれども。
 思い起こしてみますと、構想が持ち上がって、そして前段の調査が始まってもう二十年以上、答申が出て十六年、非常に長い今日までの足取りがあったと思います。
 和歌山県としても、県益を確保するために、そのときどきに相当な決断をしながら今日まで来たわけでございます。我々、国を相手に回し、あるいは関西政財界を相手に回して和歌山県の主張の十なら十、聞き入れられるということはなかなかあり得ることでもございませんし、また関西全体の便益というものを重視しなければならないという一面もございます。
 しかし考えてみますと、中間取りまとめの中に関空の全体構想は位置づけられたとはいえ、滑走路三本が二本に後退し、相当地元に対して負担を強いると申しましょうか、成田とは随分違った形態の取り組みをしていかなければならないという大きな課題がございます。そして、段階的施行ということで、いつが具体的な出発点になるのかということは不明確でございます。
 しかし、和歌山県が、県議会が、知事が一丸となって真剣に取り組んできたことによって、和歌山にも多くの企業が進出し、またリゾート構想が浮かび上がり、次の時代への大きな展望も開かれつつあるという現実もしっかりと見ていかなければなりません。どうぞ、次の世代のために、大きな和歌山県の展望を開いていくために、一歩も油断することなく全体構想実現に向かって和歌山県の主張をなお一層強く訴え続けていく、こういう決意で知事に先頭に立っていただきますことを心から要望いたしまして質問を終わります。ありがとうございました。
○議長(岸本光造君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で渡辺勲君の質問が終了いたしました。

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