平成2年9月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(浜本 収議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 午後一時九分再開
○副議長(橋本 進君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
○副議長(橋本 進君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 34番浜本 収君。
 〔浜本 収君、登壇〕(拍手)
○浜本 収君 まず最初に第四次長計における原子力立地政策の撤廃について、二つ目は教育問題について、三つ目には関西電力殿山ダムと十九号台風について質問をいたします。
 昨日九月三十日、日高町長選挙が執行されました。御承知のように、この選挙は、「原発問題、もう懲り懲り。原発には一切取り組まない。原発に頼らない行政。混乱の二十年を取り戻せ」とする町長選挙でありました。そして、けさほど来の新聞記事に掲載された「原発断固反対」の新町長の笑顔は、極めて印象的であります。特に、前町長より要請のあった原発の海上事前調査に対する比井崎漁業協同組合の九月三日の拒否声明以来この一カ月、各紙は連日、日高町を中心とする原発推進や原発拒否の経過や状況について掲載したところであります。
 けさほど来も小林議員から指摘がございましたが、紀伊半島における原発問題は、昭和四十二年七月、日高町は当時の日高町長による阿尾地区への原発誘致表明に端を発し、続いて東牟婁郡は古座町荒船地区への誘致計画、さらには那智勝浦町の浦神半島誘致計画、引き続き昭和五十年十一月、西牟婁郡は日置川町市江地区と、二十有余年の歳月の中で、該当地の町当局、町議会は住民の激しい賛否の政争に明け暮れたのであります。しかしながら、この間、紀伊半島に住む人々は原発推進とその立地政策に具体的に都度とどめを刺してきたのであります。原発推進とその必要性をいかに力説しようとも、該当地区住民は反原発の町づくりを選択したのであります。「事実は小説よりも奇なり」──この間、二十年にわたる反原発の闘いとその帰結は、好むと好まざるにかかわらず、紀伊半島の住民が果たした歴史的な現実であります。
 そこで、私は次の点について質問をいたします。
 一つ目。知事は、今期定例議会提案説明に先立ち、最近の県政の動きについて幾つかの重要な諸点について報告を行ったところであるが、これほど長きにわたり、これほど県内で大きく揺れ動いた原発問題については一言も触れなかったが、まさに終止符が打たれようとする紀伊半島、和歌山県のこの歴史的現実をどう認識しているのか、まずお答え願いたいのであります。
 二つ目。和歌山県長期総合計画は、原発立地の基本方針を次のようにうたい上げております。すなわち、「国が、電源三法等の諸施策により配慮している状況から、県としては、適地性・安全性・地元の同意という三原則を堅持し、立地地域を総合的に整備し、住民の福祉と地域振興の立場から、原子力発電所等の電源立地を促進する」、また「原子力発電所の立地に関し、安全性の確保を図るとともに、立地に伴う地域振興効果などの調査・研究を実施する。また、企業および関係自治体間の連絡・調整を積極的に推進する。さらに、原子力発電についての住民の正しい理解を得るために、地元自治体や関係団体と連携をとりながら、住民の合意形成に役立つ広報活動を推進する」。この基本方針、なかんずく「原子力発電についての住民の正しい理解を得るために、地元自治体や関係団体と連携をとりながら、住民の合意形成に役立つ広報活動を推進する」という県のこの積極策は見事に裏切られ、ついに住民の合意形成を得るには至らなかったのであります。それでもなお県は住民の正しい理解を得るための努力をしようとするのか、お答え願いたいのであります。
 この場合、「正しい理解」とは原発是認を指し、「正しくない理解」とは反原発を指すと私は文理上の解釈をするものだが、そうであるならば、反原発は愚民視されているものと解釈せざるを得ないのであります。では一体、「正しい理解」とはどういう中身を指すものか、この際、ぜひ開陳されたいのであります。
 三つ目。第四次長計の原発の基本方針はもはや和歌山県では形骸化したと私は判断をするがゆえに、この原発の基本方針は削除すべしと思うが、県はなおこの方針にしがみつこうとするのか、お答え願いたいのであります。
 四つ目。思い出すのでありますが、一昨年、私たちが日置川町長選挙を戦っている選挙期間中、関西電力の森井社長は日置川町長選挙に触れ、「非常に関心を持っており、結果について心配している。しかし、どういう結果になろうと日置川町、日高町に原発を建設する」とテレビや新聞紙上を通じて強調したが、知事はこの発言についてどのような見解を持っているのかと私がただしたところ、知事は「関西電力の森井社長の発言は、電気事業者として国のエネルギー需要を賄うといった立場に立って希望的方向を発言したものと受けとめている」と答えたが、さらに反原発町長の当選後、森井社長は、「選挙にはいろいろな争点があったと思うが、結果から見て、町民の皆様の原子力発電への御理解が十分得られなかったと受けとめている。しかし、立地に対しては、引き続き地元の御理解が得られるよう粘り強く努力したい」と発言しているのであります。
 また、今回の九月三日の「今後、事前調査問題は一切受け入れない」とする比井崎漁協の決定に対し、浦木立地部長は、「小浦地区で立地を推進していく考えに変わりはなく、今後とも組合員の理解をいただくよう、引き続き努力を重ねていきたい」とのコメントを行っているのであります。
 これらの発言は、民主主義の否定、地方自治の否定、企業の独善であると私は思うが、いま一度、これらの発言について県はどのような見解を持っているのか、伺うものであります。
 ちなみに、私はさきの六月県議会において住民合意を得ることのできなかった串本町のゴルフ場建設問題に触れたが、その際、「結果がどうなろうと、私どもは潮岬地域にゴルフ場を進めていく考えに変わりはなく、引き続き努力を重ねていきたい」と、オーナーに予定されていた紀陽銀行や島精機がコメントを行ったとすれば、これは一体どういうことになるのでしょうか。
 しかしながら、関西電力は依然としてこのような発言を繰り返しているが、これらの一連の発言について、県の毅然たる態度を明らかにされたいのであります。
 次に、教育問題についてお伺いをいたします。
 七月六日、兵庫県立神戸高塚高校の期末テストの第一日目。この日、午前八時三十分ごろ、入学してまだ三カ月の一年生であった石田僚子さん──十五歳であります──は、校門指導に当たっていた一人の教師によって勢いよく閉められた重さ約二百三十キロの鉄製の門扉と門柱に頭を挟まれ、二時間後、病院で亡くなった。入学後、これまで遅刻をしたことのない僚子さんが、この朝、どんな理由で時間ぎりぎりに駆け込んだのか。僚子さんは、どんな思いで学校への道を急いだのであろうか。その理由すら確かめることもなく、学校の「指導」の名によって死に至らしめたこの取り返しのつかない事件は、学校教育の名に値しないものと私は思う。なぜならば、「指導」という名のもとに管理を徹底する中で、人の命を奪う帰結が教育という営みの中で行われてもいいという論理はあってはならないからであります。そのような管理主義教育や暴力的行為は、恐怖の押しつけでしかない。恐怖は憎悪を生み、機械主義的押しつけは面従腹背の人間を育て、暴力は、それを軽べつする生徒を育てる一面と、より暴力的な報復の心を生徒に植えつける結果を招くのであります。
 本事件以外にも、この間、広島の教え子殺人事件、福岡市の生き埋め体罰事件など、教育現場にあってはならないこの種の事件が報道され、今、教育は国民の厳しい批判にさらされていると言っても過言ではありません。
 さて、六月県議会における常任委員会改選後、初めての文教委員会──八月六日に開催されました──その席で私は、県教育委員会は本問題について討議をされたのかどうかただしたところ、教育委員会は前口上をいろいろ話をして「そんなことは聞いておりません」と。「教育委員というのは五人いらっしゃるのですね。そこで討議をされたのかどうかということを聞いておるんです」。そうするとまた、どこかのだれかが立って何か言い出すので、「そういうことを聞いてはないんです。人の話をよく聞いてくれ。討議をされたのかどうか、それだけ答えてください」と言ったところ、教育委員会は静かに、「してございません」と答えました。
 教育委員会は、議事録が必要であります。会議の場所や日にちを示すことが必要であります。その討議状況と内容について、この際、ぜひ開陳されたいのであります。本県教育委員会は、県内の教育現状の分析、なかんずくその視点として暴力的教育の有無、力ずくで子供たちに向かう教育、管理主義偏重の教育の姿勢、校則の現状等々を検討する中で、この種の問題に対する基本理念と指導方針を全県民に明らかにすべきであると思うからであります。
 二つ目、来年度の高校募集定員について質問をいたします。
 今、県下各地のPTAでは、来年度の中学校卒業生徒数の状況に基づき来年度の高校募集定員の減少が行われるのではないかとして議会への請願、また県当局や教育委員会に対し、募集定員減に反対する署名を添えての陳情等、運動が展開されているところであります。
 私は、当議会で報告された文教委員会並びに総務委員会における委員長報告を子細に読ませていただきました。その骨子を要約いたしますならば、その一つは、従前は学級数を考えてきたが、今後は学級定数をも加味した両面から対応したいという答弁である、その二つは、従前は四十五人学級編成を主体としてきたが、生徒数が減少していく中で検討していくという答弁──いずれも大江文教委員長のときの委員長報告であります。その三つは、ことしだけ解決すればよいということではなく、説明のつく取り扱いをしたい──これは平越総務委員長からの報告であります。
 以上のそういった議会におけるそれぞれの委員会、あるいはこの場でも論議をされた経過を踏まえ、来年度の高校募集定員について、その指針を示されたいのであります。
 高校の募集定員は、一年立てば確実にやってくる。おわかりかと思うけれども、このことは早ければ早いほど教育的であるという私見を添えて質問といたします。
 三つ目、教育現場の実態と必要な対策についてお伺いをいたします。
 九月十日の教育委員会の発表によれば、平成元年度の県立高校の中途退学生徒数は、全日制で五百六十八人、前年度より二十二名増、在籍生徒数の一・四%、定時制では百九十一人で、在籍生徒数の一二・三%であります。また、県内三十四校、四分校すべてから退学者が出ており、最多校は五十九人であります。この点について学校教育課は、中学校時代に進路に対する意識や基本的な生活習慣が固まらないまま高校に進学し、入学後、学習についていけない、授業がおもしろくない、集団に溶け込めないといった原因等が重なって退学していくのではないかと概略分析をしているが、教育現場の実態から見て、その傾向は助長していくのではないかと私は危惧するものであります。
 具体的な事例はここでは省略いたしますけれども、仮に生徒が悪いことをしたとする。そうすると、その生徒は必ず謹慎となり、家で学習を指示され、その十日か二十日の間に読書についての感想文を課せられる。これは、生徒が登校拒否をしているのではないんですよ。その生徒は学校から登校を拒否されている、そういう状態に陥る。よほどの者でないと、その生徒は成績が下がっていく。学習意欲は高まるでしょうか。そのうち学校へ行くのが嫌になってくる。
 学校の話を申し上げます。この指導は引き算の論理であります。学校引く子供はゼロである。学校は、もっと足し算の論理で指導すべきではないでしょうか。謹慎すなわち引き算の指導は、足し算に向かう一つの方法としてとらえることもできるけれども、この指導は、総じて言うならば、やむを得ず措置する引き算の論理であります。しかしながら、今の教育現場の実態は複雑であり、困難を抱え込んでいるがゆえに、それを単に「教員の指導が悪い」と言って片づけて済むものではありません。
 参考までに、現場の先生が書かれた二つの文章を少し紹介いたします。
 光と影
 初秋とはいえ、まばゆく照りつける日差しの中での校内陸上競技大会。走り、跳ぶ子供たち。スポーツが引き起こす興奮が子供たちの顔を生き生きさせ、暑さによる不快を感じさせない。私が保健室で毎日出会う突っ張りの子供たちの顔は、その中には見当たらない。こんな日は彼らは、欠席または見学に回るようだ。時々暑さによる不快を訴えて連れ立って救護のベンチに座りに来る。彼らは、学力だけでなく体力においても落ちこぼれている。光の中で躍動する子供と日陰にいる子供。この落差。
 子供の問題は大人の問題 中学校の保健室で
 一学期にもあったが、最近また一部の子供たちが壁をたたき始めたらしい。こぶしに内出血の跡があったり、包帯を巻いていたりする子供が男女数人いる。いずれも三年生で、この子供たちは言うなれば保健室の常連であるが、最近特にいらいらしている様子で、けがの手当てや気分不良を理由に保健室に来ることが多い。三年の担任の先生とちょっと立ち話をしてわかったことは、二学期になってまだ二週間足らずであるが、この間、受験準備のための五教科のテストが二回あり、進路指導の機会が多くなっている。学級のみんなが進路を考え始めている中で、彼らは学級でいたたまれない気持ちになるのではないかということである。学習意欲をなくし、授業についていけなくなってから久しい彼らにとって将来のことを考えるということは苦しく、不安なことに違いない。
 だから、彼らは保健室へ逃げてくる─中略─彼らの中には自分の心の内を次から次へとしゃべってくれる子供がいるが、その子供の話を聞いていると相当不幸な家庭事情があり、心身ともに疲れ切った両親像が浮かんでくる。その子供にとって家庭は既に安らぎの場ではなく、人生の悲しさと苦しさを目の当たりに見せつけられる場所になっているようである。彼は、毎日わざと食事時間をずらし、一人で食事をとる。夜遅く遊んで帰り、就寝はいつも一時を過ぎている。彼らが言うには、「学校は全然おもしろくないが、早退すると親がうるさいし、行くところがない」と。
 時間が来て、渋々保健室を出ていくとき、彼は出口にある黒板をこぶしで激しくばんばんたたいた。
 私もやりきれない。彼に必要な教育は何?
 今、高校や中学では、今の例に見られるような生徒たちが一番集まるのは保健室であります。この間も、お会いをしたある中学校の養護教員から伺ったのでありますけれども、土曜日でありますが、朝から十二時までに十六人が部屋へ順番に来たと。保健室の女の先生に子供たちは、だれにも話せないことや家庭のこと、成績のこと、友人について話をする。それは、その子供たちが意識するとしないにかかわらず、悲しいからであります。
 結論を急ぎます。教育委員会は、こういった教育現場の実態や教育困難校への対策について、同和教育推進教員の配置、教育相談所の設置、カウンセラー教員の配置等、その努力を払っているけれども、抗し切れない教育現場の実態をありのままに、より的確に把握分析し、教育相談体制の拡充、教育相談推進事業の拡充、カウンセラー教員、教育相談所の教員、養護教員の大幅な増員を年次別に、計画的に行うべしと要求し、質問といたします。
 関西電力殿山ダムと十九号台風について質問をいたします。
 去る九月二十六日、日置川町当局と町議会は、西牟婁郡選出四名の県議ともども町議会の要望決議を添えて県当局並びに関西電力にその回答を求め、今後の対策を強く要求したところであります。
 本日、午前中、大江県議からも本問題について余すところなく強く指摘されたところであります。日置川町議会要望決議の六項目に関する答弁とそれに関連する幾つかの答弁もなされましたが、今後ともなお関西電力に対する県の強い指導と協議を踏まえ、早急に時と所を設定し、日置川町当局、町議会を通じ、全町民にその結果を公表されたいのであります。時、所を設定すべしということを──よく、こういうところで話をすると「早急にいたします」、「そうか」、「農林水産部長が病気になって行けませんでした」と言うて。これは仕方のないことでありますけれども。例の南紀用水については、六月の委員会で私は「事のいい悪いは別だ。だから、早く現地で説明をしてくださいよ」と、こう申し上げた。「直ちにいたします」と言って病気になった。そして、おくれた。そのうちに台風が来た。まだできていない。こういうことになってございまするから──そのことは質問ではない、例として申し上げたのでありますが、時、所を設定し、町当局、町議会を通じて全町民にその結果を公表されたい。これを第一点の質問といたします。
 二つ目。大江県議とも随分重複はいたしますけれども、お許しを願いたいと思います。
 私ども西牟婁郡選出四名の県議は、台風の翌日以来、一斉に日置川町における被災の状況と住民の怒りを肌で感じながら流域の現場を駆けめぐったが、関西電力はその被災の現場にみずから訪ねるといった姿もなく、ただ「操作規程に従ってダムの放水を行った」との資料説明に終始するだけで、住民の声を体で受けとめ、今後に処していくといった謙虚さは、私の知る限りでは見受けられなかった。それは、後の補償を恐れて来なかったのかどうかはわかりませんけれども、このような姿勢について県はどう思うか、はっきりと答えられたいのであります。
 三つ目。殿山ダム操作規程第十五条は「放流の際の一般に周知させる措置」をうたっているが、これまた大江県議の指摘どおり、ダム放水一門、二門の開扉時には──まだその前は静かであったが、警報車でやかましく知らせてきた。しかし、肝心かなめの四門、五門、六門開扉のときにはその警報車は通行不可能となり、警報無線は故障。そして朝も指摘があったように、警報車は事もあろうに日置川町のテニスコート──近くスポレクが行われます──で待機していた。まさか雨宿りをしたのではなかろうがとは思いますけれども、役に立たなかったのであります。
 操作規程第十五条と関電の措置について、すなわち規程に幾ら書いていても、そのとおりにしなかった、あるいはできなかったというこの状況について、県の見解を伺うものであります。謝罪すべきであります。そのとおりできなかったのだから、幾らこんなものを書いても仕方がない。書くことは大事でありますから、規程は。しかし、そのとおりできなかった。しなかった。これについて関電は謝罪すべきであると思うが、県の見解を伺うものであります。
 四つ目。十九日二十時、関電はオリフィス六門目放流を二十一時三十分から開始する旨を町役場に連絡。町長は「六門放流は避けられないか」とただしたが、関電は「ダム天端の溢流は危険である」と伝えたため、町は町民に対して緊急避難の通報を発動。停電と暴風雨、下流の水位の急速な上昇の中で、千余名の下流沿線住民はそれぞれ村の公民館やお寺や高台に避難を続けたのであります。
 六門開扉に当たり、関電は「ダム天端の溢流は危険であるから六門放流を行う」と町長に伝えたと言ったが、このことと、先ほども指摘がございましたが、昭和五十九年六月、関電より日置川水利権更新対策協議会会長への回答、すなわち「ダム天端を越流することになってもダムの決壊は心配がない」という回答についてどう解釈したらいいのか、あわせて明確にお答え願いたいのであります。
 五つ目。昭和三十三年八月二十五日、台風十七号襲来。ダム六門開扉の中で日置川町民は未曾有の大災害を受け、その一カ月後、日置川町罹災者同盟は六百五十名の参加のもとに決起大会を開催。「ダム撤去を闘い抜く。関電に一片の誠意なし」として、出席された当時の県議会議員はそれぞれ次の激励を行ったところであります。
 浜本純一県議──親戚ではございません──「関電には全く誠意がない。あれだけ放水して、天災とは思えない。明らかにダム放水に責任がある」。今は亡き竹中節県議、「関電側は政治力で、人災ではないと強調すると思うが、団結の力でともに闘おう」。町田亘さんのお父さんである町田義友県議、「一致団結しなければ効果がない。皆さんの勝利を祈り、微力ながら県議ともども一生懸命に協力を誓います」。
 あれから三十有余年、日置川町民はこのダムとのかかわりの中で、今も地区選出の議員は超党派でこの問題に真正面から取り組んでいるのが状況であります。そしてこれは西牟婁郡選出県議の宿命でもあります。
 往年の日置川町は、自然美に抱かれ、豊かな水の流れと清流をたたえ、住民はこの母なる日置川とともに産業、経済、教育、文化、生活環境を発展させ、町の栄枯盛衰は河川とともに存在し、この川は流域住民にとってかけがえのない共有財産であった。しかし、関西電力が昭和三十二年五月、上流の大塔村合川にアーチダムと日置川町殿山に発電所を構築し、その操業運転を開始して以来、都度、大型台風時には下流住民は生活の打撃を受けてきたのであります。
 以前、日置川は、人呼んで「日置川三郎」と名づけられたが、それは、日置川は県下の河川の三本の中に数えられる河川であったがゆえである──町田亘県議のお話であります。しかし、日置川、「日置川三郎」には、今はその面影はない。大型台風時には、日置川は沿線住民に必ず被害をもたらす。必ずもたらす。それは、この二級河川日置川のせいでありましょうか。そうではない。この原因は、ダム放水とのかかわりでなくて何でありましょうか。それは、大江県議が指摘するとおり、まさに人災である。明快にお答え願いたいのであります。
 六点目、ダム問題と日置川、その抜本的な検討と対策、それは焦眉の急であります。あわせて答弁を求めるものであります。
 以上で終わります。ありがとうございました。
○副議長(橋本 進君) ただいまの浜本収君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 浜本議員にお答え申し上げます。
 第一点は原子力立地政策について、紀伊半島二十年にわたる原発立地の現状認識でございます。
 お話ございましたように、一松日高町長は二十年にわたり、町の活性化のために原子力発電所の誘致が必要であるとの信念を持って取り組んでこられましたが、事前調査を実施する海域に漁業権を有する比井崎漁協の合意が形成されるに至らず、事実上、断念する旨の発言をされ、町議会も九月二十一日、原発問題特別委員会を解散し、また昨日の町長選挙では志賀氏が当選されたところでございます。
 私は従来から、先ほども申しましたように、電源立地については地元の意向を尊重し、適地性、安全性、地元の同意という三原則を判断の基準として堅持してまいったところでありまして、現時点の地元の状況を拝察する限りにおいては、この三原則が満たされていないと認識している次第でございます。
 次に、関西電力ダムと十九号台風についてでございます。
 朝、大江議員からもこれについて質問があり、答弁もさせていただいたのでございますけれども、地元日置川町長、町議会議長から提出された「関西電力殿山ダム問題に係る是正・改善を求める申入書」については、今回の状況を十分に踏まえ、関西電力に対して強く指導・協議の上、今後、早期に地元の日置川町に説明をいたしたいと思っておるところでございます。先ほど大江議員にもお答え申し上げたとおりでございます。
 また、関西電力の地元に対する反応の問題でございますけれども、かかることのないように、特に関電のダムと地元が共存する立場で強く指導してまいりたいと考えておるところでございます。
 他の点につきましては部長から答弁いたします。
○副議長(橋本 進君) 企画部長川端秀和君。
 〔川端秀和君、登壇〕
○企画部長(川端秀和君) まず第一点、住民の正しい理解を得る努力についてお答えを申し上げます。
 原子力発電所の立地問題につきましては、議員のお話にもございましたとおり地元町の誘致に端を発しており、県は立地の前提として適地性、安全性、地元の同意を三原則として堅持しているところでございます。その中で、地元住民の皆様方が原子力発電所の立地問題について、原子力発電所の仕組みや安全性、立地に伴うメリットやデメリットといった事項について、既に立地している現地を見学したり専門家の意見を聞いたりしながら議論を進めることは必要なことであると考えてございます。
 なお、一般論といたしまして、エネルギー問題の今後の行方等については、情報の収集と、これの県民への提供は必要があるのではないかと考えてございます。
 第二点は、第四次長計における原子力立地政策についてでございます。
 昭和六十一年に各界各層の御意見を伺いながら策定した和歌山県長期総合計画には、原子力発電所、火力・水力発電所等々、すべての電源立地問題に対処するための基本方針と施策を明らかにいたしてございます。
 基本方針については二〇〇〇年までの長期的な方向づけをしたものであり、施策については、そのときどきの国の方針や社会環境、あるいは地元の動向といった情勢に応じた施策を展開するため、三年ごとに中期実施計画を策定することとしているところでございます。
 なお、昭和六十三年度に策定をした第一次中期実施計画は今年度が最終年度でございますので、現在、平成三年度を初年度とする第二次中期実施計画の策定作業中でございます。
 第三点は、関西電力の一連の発言と県の態度についてでございます。
 電力の確保は国家経済の健全な発展と豊かな国民生活を維持するために必要不可欠なものであるとの国の方針に基づき、電気事業者としての立場で発言されたものであろうと思っております。しかしながら、県といたしましては、地元の意向を尊重し、県独自の立場で対応してまいる考えでございます。
 以上でございます。
○副議長(橋本 進君) 土木部長磯村幹夫君。
 〔磯村幹夫君、登壇〕
○土木部長(磯村幹夫君) 関西電力殿山ダムと十九号台風についてお答えいたします。
 まず、議員御指摘のダム操作規程十五条の「放流の際の一般に周知させるための措置」でございますが、警報装置等の故障により下流の方々に不安感を与え、避難に際しては大きな混乱を招き、県としてはまことに遺憾に存ずる次第であります。今後、このようなことのないよう強く指導してまいります。
 次に、先ほど大江議員からもございましたが、ダム天端からの越流につきましては、ダム施設への影響等、技術的に検討の余地があると思われます。
 また、関西電力殿山ダムの放流と下流での水害発生との関連につきましては、十分調査する必要があると考えております。
 日置川の抜本的対策につきましては、河川改修により、国道橋の日置大橋から上流田野井地区までの四千四百メーターについて昭和三十六年に改修計画を策定し、本年度で約三千メーターが概成する予定となってございます。次の工区として、来年度より、今回の出水で浸水被害をこうむった田野井堤防の改築に着手いたしたいと考えております。
 一方、今回の出水を教訓といたしまして、ダム下流の河川能力調査を行い、それに基づいて十分な対策、方法を検討してまいる所存でございます。
○副議長(橋本 進君) 教育委員会委員長上野 寛君。
 〔上野 寛君、登壇〕
○教育委員会委員長(上野 寛君) お答えいたします。
 教育基本法には、教育は個人の尊厳を重んじ、人格の完成を目指し、自主的精神に満ちた、心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならないと示されているところであり、児童生徒一人一人の可能性を豊かに開花させていくことであります。
 こうした観点から、教師はおのずからの使命を自覚し、人間尊重の精神を持ち、児童生徒との愛情に基づく信頼関係を築くことなどが大切であります。したがって、体罰や厳し過ぎる規則からでは適切な生徒指導は期待できないと考えてございます。
 高塚高校の事件にかかわり、人命のとうとさ、教育の基本理念、教師の使命、生徒指導のあり方などについて協議を行い、生命の尊重や心に鏡を当てた指導が大切であることを再確認したところでございます。
 以上でございます。
○副議長(橋本 進君) 教育長高垣修三君。
 〔高垣修三君、登壇〕
○教育長(高垣修三君) 教育問題にかかわる二点の御質問に対してお答えを申し上げます。
 まず、来年度の高校募集の定員問題でございますが、平成三年三月に中学校を卒業する予定の生徒数は、前年度に比べるとおよそ千三百九十名の減少であり、平成三年度以降についても減少が続く状況でございます。
 こうしたことから、現在、高等学校教育協議会の答申を踏まえて中・長期の計画を策定中であり、その内容の取り組みを考慮しながら中学校卒業生徒数の推移や進学率、私学の振興及び地域の実情等の総合的な検討を行い、慎重に決定をしてまいる考えでございます。
 また、小学校、中学校の学級定員につきましては、昭和六十一年度から四十人学級を実施し、平成三年度には全学年で実施となる予定でございます。高等学校につきましては、国や近府県の状況及び本県の実情などを踏まえ、総合的に研究を行っているところでございます。さらにまた国に対しては、全国の教育長協議会等を通じ、高校の四十人学級の実現に係る法改正を働きかけているところでもございます。
 なお、募集定員の発表時期につきましては、進路の指導など教育的配慮の上から見ても、できる限り早めてまいる所存でございます。
 次に教育相談に関してでございますが、情緒不安や無気力、あるいは怠け等のために学校へ登校しない児童生徒が増加の傾向にあり、また心の問題等が原因で頭痛や腹痛などを訴えて保健室を訪れる児童生徒が多い現状でございます。
 本県では、児童生徒を直接指導する教員に対し、教育相談主事が専門的な指導助言を行うスーパーバイズ方式をとっているところでございます。また、全教員を対象として教育相談合宿研修会や特別の研修講座を実施し、教育相談に必要な基礎的技術を習得させるとともに、さらに高度なカウンセリング技術を身につけ、学校における中核的な役割を果たすよう、カウンセリングワークショップや長期研修員制度によって人材の育成を図っているところでございます。
 今後とも、より一層事業の充実を期して研究を進めてまいる所存でございます。
 以上でございます。
○副議長(橋本 進君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 34番浜本 収君。
○浜本 収君 原発問題について再質問をいたします。
 先ほど知事が答弁されたのは、一松日高町長がどうであったこうであった、そしてきのうの選挙でこうなったと。それはもう経過報告である。私は、まあそういう経過を踏まえるわけですけれども、きのうの選挙も含めて、昭和四十二年から和歌山県もこれに加勢をしてきたことがつぶれた、そういう現実をどう認識しているのかと。「私は、和歌山県知事として非常に残念だ。やりたいんだけれども、ああ、つぶされるよ」と、そういう認識をされておるのか。それともまた、「これ、もう仕方がないな。幾ら言うてもあかん。反対しまくられるのであかん」と認識されているのか。
 三年前ですか、高知県知事が知事選で、「原発よりも高速道路、原発よりも高知の港の根本的な改修を」と絶叫して当選をかち得た。そしてそのことが、くすぶっておった窪川町に導火線となった。「知事さんがあんなに言っている。今まで『やれ、やれ』と言うてきたけれども、ちょっと違うようになってきてあるで」と。「原発よりも高速道路、高知の港をもっとちゃんとしよう」、これが高知県における知事選の公約であります。
 知事は、五選を行くか行かんか──どうも行きそうな感じがしてならんのですけど。それはまあ別の機会にしますけれども。そういうことも、これあり。だから、もうぼつぼつこれから原発立地の政策の転換をせざるを得ない。同じ「せざるを得ない」のであったら──そうなりますよ。絶対になります。かけをしていい、ここで。同じなるんだったら、「原発よりもリゾート、原発よりも高速道路、原発よりも空港のより早期完成を」、そういう形に県政の課題を位置づけるべきである。こんなことで何十年も町の中が、親戚まで──葬式へ行くにも、兄貴は原発賛成や、私は反対やと。兄貴の葬式は兄弟ですけれども、親戚の人が行かんという状態をどの町村でもつくり上げられているんですよ。これは、つくり上げられているんです。過去においてずっと。「市江のやつら、変わってある」と。変わってあるんじゃないでしょう。そういうようにつくり上げられている。その一翼を加勢している県の指導方針も免れることはできない。だから、この際、奈良の天理高校の野球のなんじゃないけど「ぼつぼつ行こうか」、「ぼつぼつやめようか」、そういう次元で考えていくべきと私は思うが、もう一度答えられたい。
 それと、川端部長が何か難しいことを言うんで、私、今ちょっと理解できないんですが。平成三年度中期どうこうと、そんなことを言われておりますけれども、それは、平成三年度までに原発の問題についての検討をする機会があるんだ、そのときに、まだやるという結論を出すのか、あるいは、もうせんという結論を出すのか、そういうことを言うているのかどうか、もっとわかりやすい言い方をしてほしい。我々にはわからん。中期がどうやとか、平成三年とか。まあ、平成三年はわかりますけれども、その中身がわからない。だから、それをもっとかみ砕いて説明をしてほしいと思います。実は、そういう言い方をするというのは、ちょっと、言いたくないのでごまかしているのかなという気持ちさえ持ちます。
 教育委員会。私は、前に教育相談所のことをこの議場で取り上げたことがございます。ある先生は教育相談所三日、南部の高校三日という状態であるので、そんなことはするなと。まあ、せんな言い方ですが、県全体から言ったら小さな問題ですけど、それを一生懸命ここで言わせてもらったことがある。そうしたらその結果──結果かどうか知りませんけれども、〇・五、〇・五といった勤務状態が一になった。〇・五の方は解消されて、別の先生が来ておる。
 そういうことが役に立っているのかどうか。夏に、三十人ぐらいのそういう先生方とお会いしました。これは選挙には関係ないんですよ。遠くの人から近くの人、考えの違う人とか、三十人ばかりの方にいろんな意見を聞いた。そうしたら、その中の一人が、「あの先生が一になってくれたので四人助かった」と言うんです。もうまああかんという子供が一年間のうち四人助かったと、こんなお話をされた。だから、そういうことから言うと、もっと数をふやすべきです。増員をすべきです。
 先ほども教員の加配の問題とかいろんなことを申し上げましたけれども──私は執行者のような質問をしているんです。年次別、計画的にされたいと。それについて執行者たちは答えない。ただ、「努力します」とかなんとか。私の方が執行者的である。年次別、計画的にそれを措置をすべしということに対し、来年度はこうである、再来年度はこうである、こういう努力をしますという、そういう形での答弁を私は願いたいのでありますが、これは文教委員会でより一層皆さん方の協力を得て深めてまいりたいと思います。答えなくてもよろしい。
 土木部長。大江さんが言われるように、明治二十二年に大雨が降り、あの日置川に大水害があった。あのときの話を古老に聞きました。大水害以外は、一般的な水害というのですか災害というのか、例えばけさほどもありましたが、富田川で決壊することはよくある。しかし日置川の場合は、台風というたら、大型台風、白浜上陸となってくると──富田川はどうなるのかという心配もしますけれども、そんなに思わない。日置川となると、またダムをあけたり閉めたり、くさったことをするのと違うか、また間違わないのかと。そんなこと、きのうも私は思いました。それはなぜな。なぜ、そうなる。ダムが原因です。それとの関係で田野井地区なんかは水浸しとなる。近所のみんなが、もみすりにかけなければならないと言うて四百五十の新米の袋を一つの小屋へ寄せ集めても、そんなものは瞬く間です。ここまで来る。行けんと言うんですよ。それが一気に来る。
 「操作規程に従ってやりました」と。操作規程──本に書いてあるとおりにやったと言うかもしれないけれども、水というのは、初め流れている水を後の水が追っかけてくる。そうすると、県道の低いところは必ず大浸しになる。実は田野井地区というのは、事もあろうに堀本さんの出生の地である。今度の水害ではそこが一番あかなんだ。そういうことでありますので、これは人災であるという規定をここでしようとは思いませんけれども、人災であるという考え方が正しいと私は思う。だから、これを「抜本的に」というのは、そういう意味で申し上げているんです。「抜本的に」。田野井地区は今までこうしてあるとか、ああしてあるとか、そして予定はこうなっているとか、それはダムとの関係で、台風との関係で考えたものではない。前からしてあるやつを読んだだけです。それはそれで意味のあることではありますけれども、この際、土木部長、殿山から全部、抜本的に現地を歩いてほしいな。西牟婁の県会議員も全部歩きますよ。そして、合川ダムからみんな下って、そこらをきっちり見て回る。住民の皆さんも来る。そういう中でこの川をどうするんだという立場で一度ぜひとも現地調査をしてほしいということを強く要望して、答弁をされたい。
 以上です。
○副議長(橋本 進君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 浜本議員にお答え申し上げます。
 紀伊半島二十年にわたる原発立地の問題について知事はどう現状認識をしておるかということでございますけれども、先ほど述べたように、私は地元の情勢をさよう分析しておるわけでございまして、慎重に対処してまいりたいと思っております。
 御意見ございました点については十分拝聴させていただきます。
○副議長(橋本 進君) 企画部長川端秀和君。
 〔川端秀和君、登壇〕
○企画部長(川端秀和君) 先ほど御答弁申し上げましたとおり、現在、第二次中期実施計画の策定作業中であり、その中で、諸情勢を見きわめながら検討してまいりたいと考えているところでございます。
 以上でございます。
○副議長(橋本 進君) 土木部長磯村幹夫君。
 〔磯村幹夫君、登壇〕
○土木部長(磯村幹夫君) 日置川の現状について調査を進めていきたいと思います。これを糧に改修の計画を検討してまいりたいと考えております。
○副議長(橋本 進君) 答弁漏れはありませんか。──発言時間が終了いたしましたので、以上で浜本収君の質問が終了いたしました。

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