平成2年9月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(小林史郎議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

○議長(岸本光造君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 45番小林史郎君。
 〔小林史郎君、登壇〕(拍手)
○小林史郎君 まず初めに、日高原発問題で質問いたします。
 何やかやとうっとうしいことの多い昨今でございますが、一松日高前町長の要請を受けて九月三日に開かれた比井崎漁協の総代協議会と理事会が「今後、原発建設には協力しない」という決定をしたニュースは近来にない朗報であり、これほど多くの県民にほっとした思いをさせたニュースはないのではないかと思います。昨夜はまた、明確に原発反対を掲げた志賀候補が当選しました。
 先日、一松前町長は、「今回の漁協総代協議会と理事会の結果を尊重しなければいけないと思う。私としても、その意向を踏まえて対処していくつもり」とのコメントを発表し、事実上、原発推進を断念する意向を明らかにしました。その後、地元の一部報道機関に、あくまで原発推進とも受け取れる別の町長コメントが掲載されたこともあって一時混乱を招く事態もありましたが、このコメントは関西電力によって新聞社に持ち込まれたものであるとの情報もあり、この辺の事情を含めた町長の率直な心境については、九月十三日の町議会における次のようなやりとりの中から十分にうかがい知ることができます。すなわち、山本源昭議員の行政報告と問題の町長コメントに関連しての質問に対し、「今のような環境のもとで、自治体だけでこういうような大きな問題に対処するということは非常に難しい、やれないと、こういうふうに判断いたしております。だから私は、この問題については絶対に今後やるべきでないと思っております。今のような体制では。だから、今まで新聞に載ったとか載らんとかいうことは訂正して、現在の心境は絶対にやるべきでないと、こういうふうに考えております」と答えています。
 一松前町長の言われる「今のような環境のもとで、自治体だけでこういうような大きな問題に対処するということは非常に難しい、やれない」という言葉は、いかに住民の原発に対する拒否反応が根強いものであるかを物語っています。このことは、昨夜の町長選挙の結果を見てもはっきりあらわれているわけであります。国や企業がどれほど安全神話を振りまいても、住民は万一事故が起きたときの恐ろしさを知り抜いています。
 先日、NHKテレビでチェルノブイリ原発事故のその後についての放送がありましたが、私はこれを見ていて肌のあわ立つ思いがいたしました。三十キロ圏に十三万五千人が住んでいて、その人たちはキエフ方面へ避難をしたけれども、白ロシア共和国では事故の現場から六百キロも離れた地域でもひどい放射能汚染が見られ、日本の基準値の実に四十倍にも及ぶ一平方キロ当たり四十キロキュリーという恐ろしい高濃度の汚染地域だけでも東京都、千葉県、神奈川県を合わせた面積に達しているということ、したがって、この地域に住んでいる一万二千人を今秋中に、これより少し低い十五ないし四十キュリー地域の九万人を来年半ばまでに、さらに五ないし十五キュリーの地域については子供だけを避難させる計画でありますが、それでもなお軽微な汚染地域には百七十万人もの人たちが残されるということであります。そして、汚染による農地の廃棄も二十六万ヘクタールに及んでいますし、とりわけ心に焼きついて離れないのは、幼い子供ほど被害が大きく、甲状腺がんや白血病が続発し、「少しでもよくなるなら、この子を日本へ連れて行ってほしい」と訴える母親の姿でした。また、移転先が狭いために子供や孫と別れて汚染地域に取り残されている老人たちがたむろする寂しい姿も、忘れ得ない光景の一つでありました。
 このように、一度事故が起きれば大変なことになります。だからこそ住民は、どれほど安全神話を聞かされても、金の誘惑に引かれるものがあっても、決して心を許さないのであります。
 思えば日高原発は、昭和四十二年の日高町の第二定例町議会で阿尾地区への立地の話が議題とされて以来、二十四年の長きにわたって論議されてきたところでありますが、昭和四十六年には阿尾原発の計画が白紙還元され、舞台が小浦地区に移されてからでも二十年近くになります。この間、スリーマイル島の原発事故があり、チェルノブイリ原発事故と続く中で、住民の原発建設への拒否反応はいかなる手だてをもってしても動かすことのできないほど強固なものとなり、ついに一松前町長もこのたびの断念声明を出さざるを得なくなったわけであります。
 一方、本県における日高町以外の候補地であった浦神半島、荒船海岸では、昭和四十六年に那智勝浦町議会において、四十七年には古座町議会において反対決議が行われ、もう一つの候補地であった日置川町においても、紆余曲折を見ながらも昭和六十三年七月の町長選挙で原発反対の現町長が当選する結果となりました。
 以上のことは、本県においては多くの県民が原発の危険を持ち込むことを許さないという決意をいかに根強く固めているか、また美しい紀州の自然を心から愛し、これを原発の危険と同居させないで子々孫々に伝えることにどれほど強い使命感を持っているかを示していると言えます。
 私は、このほど有田郡民の皆さんに対してアンケート調査をさしていただきました。それは、県政の中で緊急に取り組むべき課題として福祉・医療の充実や下排水対策など十五項目を挙げ、このうち、あなたにとって最も切実なものを三つ選んでくださいという形でお尋ねしたのでありますが、回答をお寄せくださった三百名余りの方の中で日高原発反対の項目に丸印をつけられた方が、第一位の消費税反対の四三%とほぼ並ぶ第五位の三〇%の多きを数えました。広川町では隣接町として過半数の有権者の反対署名が行われていますので、ある程度の数字は予測していましたが、清水町を含めた有田郡全体の中でこれほど高い関心度が示されるとは考えていませんでした。
 知事は、この間、原発建設については、今は亡き大橋知事以来の方針として、安全性、適地性、地元同意の三原則をもって対処されてきました。
 そこで、知事にお尋ねします。
 日高町において比井崎漁協が協力を拒否し、一松前町長が断念声明を行い、昨夜は原発反対の新町長が生まれたということは、本県における三つの原発立地候補地すべてにおいて住民がこれを拒否し、ここでの住民同意を得る見通しがなくなったと考えざるを得ないのでありますが、知事は、今日のこの事態について、三原則の地元同意の立場からどのような認識をお持ちかお示し願うとともに、この際、県民の心情を素直に受けとめて、今後、本県においては原発立地の推進を取りやめていただきたいと思いますが、御所見のほどを伺いたいのであります。
 次に、同和問題に関連して若干の問題で質問いたします。
 まず、同和問題の解決を目指す展望の問題でありますが、いよいよ二十三年間にわたる特別措置法による同和行政の最終年度を迎えようとしているわけであります。こうした中で、法の延長や新法の制定を求めるのか、それともこの際、地域的、分野的には必要な経過措置をとるとしても、基本的には一般行政に移行する方向で自立と融合の課題の追求を強めていくのかという相反する二つの考え方の議論が正念場を迎えてきています。
 私は、同和行政に依存し続けている限り、いつまでたっても同和問題の解決の日が来ないと思います。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━(以下七行削除)
 私たちは、二十一世紀へ差別を持ち越さない、つまりあと十年で部落差別の問題を基本的に解決することを目標に掲げていますが、二十三カ年にわたる特別措置法による格差解消の成果を踏まえるならば、このことは十分に可能だと考えています。そして、このことを実現していくためには、ここらあたりで同和行政への依存から脱却していくことが何よりも大切だと考えています。
 皆さんも御存じのように、部落解放運動の原点である水平社運動は「部落民みずからの力で絶対の解放を期す」と宣言しているように、自立精神そのものの運動でした。
 私の父は水平社運動の活動家でしたが、子供心の記憶によれば、家で飼っている鶏やウサギを売って活動のための旅費をつくり出かけていった姿が浮かんできますし、大阪・西浜の水平社の本部を支えるために毎年何俵かのお米を送り続けていたことも覚えています。また、仲間の中から弾圧検挙を受ける人などが出た場合、お互いが金を出し合ってその人の家族の生活を支えるのが常でした。
 戦後の混乱期の昭和二十二年夏に、私たちは湯浅町で和歌山県部落解放大会を開催したのですが、そのとき、金英除虫菊の戸田専務さんから二千円と有田鉄道の川村社長さんから五百円のカンパをいただきました。これは当時として大変な金額で、小躍りしながら喜び勇んでこのことを父に報告したところ、こっぴどいおしかりを受けました。いわく、「わしら、長年水平社運動を続けてきたが、一度として人様のお情けにすがった覚えはない。事もあろうに資本家の援助を受けるとは何事か。すぐ返してこい」というわけで、本当に残念な思いで返しに行ったのであります。このことが果たして正しかったかどうかは別として、人の情けにすがることを恥とした戦前の水平社運動がいかに旺盛な自立精神に満ち満ちていたかをうかがい知ることができます。
 時代は大きく変化発展し、部落問題の解決が国民的課題として、行政の責務として取り組まれるようになったわけでありますが、運動というものはすべて弁証法的に発展するものであって、特別措置法の期限切れを前にした今日の時点において、自立精神に満ちあふれた水平社運動の原点に立ち返ってみることが必要でないかと思うのであります。そしてそれは、かつてのような孤立と対立の感情に根差した自立の精神ではなく、国民的課題としての広がりと行政の責務を土台にした、高いレベルの新しい自立精神の確立を求めていくものとなるのではないかと思うのであります。
 いま一つ部落問題の解決を展望するに当たって重要な問題は、どのような状態をもってして部落問題が解決したと言えるのかということであります。
 今でも各地でこれほど多くの差別事件が起きているのですから、部落差別の解決はまだまだ遠い先のことだという主張が広く聞かれます。しかし、差別事件を起こす不心得者が一人もいなくならない限り部落問題の解決はないのでしょうか。私は、決してそうでないと思います。たとえひどい差別言動を行う者があらわれても、その周囲の人たちによってそれが厳しく批判され、その地域社会がこのような不心得者を許さないような人権意識を持つようになっておれば、それをもって、その地域社会では部落差別の問題を一応解決していると言えるのではないでしょうか。例えば同和結婚の場合、もし偏見を理由に反対する親があっても、「何とまあ頭の古い、おくれた人だなあ」と、その地域社会では愚か者扱いされ、その批判の中で結局は二人の結婚を認めざるを得なくなるというふうな関係ができておれば、その地域社会においては結婚に係る部落差別の問題は解決していると考えられます。つまり、一人の差別者もいない社会の実現がたとえ遠い先のことであっても、部落差別を許さないという人権意識を備えた町づくりは今日においても十分に可能だということであって、こうした観点に立つならば、二十一世紀へ差別を持ち越さないという私たちの目標は極めて現実味を帯びてきます。
 以上のように、私たちは部落差別を二十一世紀へ持ち越さないとの目標を定めて取り組んでおりますが、知事としては、この部落問題の解決について、その時期、解決のための条件などとの関係でどのような展望をお持ちであるのか。また、この展望の中で同和地区住民の自立と融合の課題をどのように位置づけておられるのか。さらにまた、この自立の課題との関係で、いわゆる基本法制定を求める動きについてどのような御所見を持っておられるのかを伺いたいのであります。
 続いて、新宮市議会と那智勝浦町議会における議員の部落問題にかかわる発言問題について質問します。
 せんだって、県議会同和対策特別委員会において県下における差別事象の現況について報告があり、特に議会人にかかわる問題が多いとの指摘がありました。そのとき私は、下津町議会の問題はわかるとしても、紀南の問題については、それが差別事象であるかどうかの判断資料を何も持っておらず、事務局の報告をそのままに受け取るわけにはいかない旨、発言しておきました。その後、那智勝浦町議会と新宮市議会の問題については、議事録や関係資料を取り寄せ、一通り読ませていただきましたが、何が差別であるかがわかりにくいというのが率直な印象でした。
 例えば那智勝浦町の一九八七年八月の定例会における9番議員の質問内容は、その後、白紙撤回をされ、今もその陳謝をめぐってもめているとのことですが、速記録を読んだ限りでは、当局の提案説明に対する不満と工事費のむだ遣いを戒めているだけで、全く議員の正常な審議権の範囲の発言であって、とやかく外から文句のつけられる性質の問題とは到底思えません。
 新宮市の決算委員会の議事録についても、発言議員の同対事業や諸制度に対する理解の浅さはうかがえますが、意味不明瞭な部分が多いとしても、全体としては属人主義への疑問を投げかけているのであって、議会人の審議権として当然に容認されるべき範囲のものであり、このような発言を、どんな権限があってのことか存じませんが、特定の団体が恣意的に差別事件として社会問題化するようなことは許されてはならないのであります。
 私は、新宮市人権尊重委員会の基本的見解等の関係書類を読ませていただきましたが、そこには自分たちの考え方だけが最高に正しいとする唯我独尊的な一面性がうかがえますし、何か議会運営そのものについても指図できる権限を持っているかのような錯覚がその文脈から浮かんできます。
 皆さん、議会制度は民主社会の根幹であり、議会での発言権はだれにも侵されず、最大限に保障されるべきものであります。もし、同和問題にかかわって差別だと言われれば自由に物が言えなくなるというような雰囲気が議会の中につくられるようなことがあれば、それは議会制民主主義の自殺行為につながりかねません。
 以上のようなことで、新宮市と那智勝浦町の現状について危惧するところがあるわけでありますが、県としてどのような状況把握を行い、どのような指導を行っているのかを御報告願いたいのであります。
 続いて、井野前警察本部長の退任のあいさつに関連してお尋ねいたします。
 ここに九月三日付の朝日新聞のコピーがございますが、「吉備の贈収賄疑惑摘発に力 中部管区警察局へ転出の井野県警本部長」という見出しで、次のようなことが書かれております。「在任中、有田郡吉備町の食品工場進出をめぐる贈収賄疑惑(去年十月)など汚職摘発にはとりわけ力を入れた。『警察の力量は、汚職のような潜在している犯罪をどれだけえぐり出せるかということで一番問われる。汚職の摘発はどんどんやるようにというのが私の方針だった』。とはいえ、供述中心の汚職調査では、関係者がだんまりを決め込むと思うように捜査が進展しない難しさがある。『できるかぎりのことはした』としながらも、『他の県に比べて、和歌山では口の堅い事件関係者が多かったように思う』とくやしさもにじませた」という記事です。
 もちろん、今読んだ部分はすべて井野前警察本部長の発言というのではなく、記者の主観によって構成されている部分も多いわけです。しかし、この記事の流れを読む限りにおいては、いかにも井野前県警本部長が吉備町の汚職摘発に全力を挙げたかのように、そして関係者の口が余りにもかたかったので起訴に持ち込めなかったことを悔しがっているかのように読み取れます。
 吉備町は、昭和四十四年以来、ドーン計画という名の同対事業に取り組み、先ほど来強調してきたような自立の精神を身をもって実践しつつ、全国に先駆けて部落問題の完全解決宣言を出そうと懸命に努力をしているところであります。この吉備町役場に、昨年十月、同和汚職の強制捜査が行われたのでありますから、町民の受けたショックは大変なものでした。とりわけ、完全解決宣言を出そうとして二十周年記念事業に取り組んでいたドーン計画推進委員たちの警察の不当捜査に対する怒りにはすさまじいものがありました。
 本年二月、不起訴が決定されました。担当弁護士の話では、「個人に対する強制捜査が不起訴になることはあったが、行政に対する強制捜査が不起訴になった記憶がない」というほど、完全無罪の不起訴という結果が出たのであります。ドーン計画の名誉を傷つけなくて本当によかったと心の底から喜び合った町民はどれほど多かったかと思うのであります。そこへ、このような記事であります。私は、ドーン計画の旗のもとで完全解決へのひたむきな努力を続けている人たちの心を逆なでするものとして、絶対に許せない心境であります。
 そこで、県警本部長より、この朝日新聞の記事から受け取れるような吉備町を問題にした発言があったのかどうか、その真意は何であったのかを御報告願いたいのであります。
 次に、下水道事業について質問いたします。
 聞くところによりますと、本県の下水道普及率はわずか三%と全国最低で、このことが本議場でもたびたび問題になるところでありますが、最近は農村部においても農地の宅地化がどんどん進行し、また生活様式の変化から水洗便所への要望が強まるなど、本格的な公共下水道事業の実施を求める声が一段と広がってきています。
 例えば、先ほど原発のところで紹介した私のアンケート調査によっても、下排水対策など環境整備を要求する者は、日高原発反対を一ポイント上回る三一%を占める大きさであります。また、ちょっとした大きな雨が降ればすぐ床下浸水するような地域は、有田においては広川町でも湯浅町でも吉備町でもかなり多いわけで、しかもそのほとんどが小手先の対策ではどうにもならない重症地帯であって、本格的な下水道事業の実施が切望されています。
 そこで土木部長に、次の質問についてお答え願いたいのであります。
 その第一点は、県下の公共下水道事業を必要とする地域について、その実態を調査把握されているのか、またこれらに基づく市町村との連絡がどの程度行われているのかということであります。
 第二点は、吉備町では今年度から基本計画の策定に取りかかるとのことでありますが、平成七年度を目標年次とした有田川・紀中流域別下水道整備総合計画の実施見通しがどうなっているのか。有田郡市関係の市町別に大体のプログラムがあるならば御説明願いたいのであります。
 最後に、椿山ダム対策で質問いたします。
 椿山ダムの放水、管理問題については、昨年の二月定例会においてもいろいろ御要望申し上げたところでありますが、その後、関係者の皆さんの間では大変御努力をいただいているようで、感謝申し上げておきたいと思います。──先ほどの大江議員の話では、殿山ダムで大変なことが起きておりますが、幸い椿山ダムではなくて結構だと思っております。
 このたびもダム下流の人たちから幾つかの改善要望が参っておりますので、次の諸点について改善への御努力をお願いしたいのであります。
 その第一点は、放水を知らせる放送内容の改善の問題でありますが、洪水調節に至らない軽度な放水の場合でも、その放水量と、各地点でどの程度水位が上がるかについて知らしてほしいということであります。何でも、ことしの八月二十四日には、川辺町の三百瀬で釣り人が中州に取り残され、ヘリコプターで救出される事故があったようで、ぜひこのことを実現してほしいと思います。
 第二点は、警報車の増車の問題です。現在、ダム管理事務所にある二台の警報車だけでは放水の影響の出る三十分前の時間内に河口付近の人々まで徹底させることは大分無理なようですので、ダム下流の関係自治体の協力を含めて警報車の増車をぜひ実現してほしいということであります。
 第三点は、二年続きで起きた他府県からの釣り人事故の例から見ても、川辺町、御坊市などの下流地域においても警報機を設置してほしいということであります。
 第四点は、ダム操作規程の改善の問題です。八百トン以上放水すれば下流で冠水被害が出るとのことであり、この前の台風では千二百トンの放水があったようでありますが、こうした急激な水位の変動や濁水のアユ漁に及ぼす影響等、いろいろな苦情があるようであります。そこで土木部長にお尋ねしますが、これらの改善要望の中には比較的実現しやすいものもあれば、なかなか難しいものもあろうかと思います。それで、これらの改善要望について関係自治体と率直に話し合い、効果的な対策について意思疎通を図る場として協議機関の設置をお願いしたいわけでありますが、土木部長の御答弁をお願いいたしたいのであります。
 以上で、私の第一回目の質問を終わります。
○議長(岸本光造君) ただいまの小林史郎君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 小林議員にお答え申し上げます。
 最近の日高町の原発問題等に関連して、原発三原則の地元同意という立場から知事はどう認識しているかということ、また、今後、本県の原発推進を中止するような考えはないかという御質問でございます。
 三原則の一つである地元の同意につきましては、地元の首長及び議会の同意が必要であるとこれまで再三にわたり本会議でお答えしてまいったところでございまして、現在の状況から拝察して、現時点では地元の同意が成立している状況にはないと考えております。
 こうした状況を踏まえまして、今後とも、県の判断基準である三原則を堅持する立場から地元の意向を尊重してまいりたいと考えておる次第でございます。
 次に、同和問題でございます。
 部落差別が解決した事態とはどんな状況かという問題でございます。
 同和問題は、言うまでもなく、人類普遍の原理である人間の自由と平等に関する問題であり、憲法によって保障されている基本的人権にかかわる課題でございます。この基本理念を実現することが同和問題の解決になると思料しているところでございます。このため、本県においては従来から諸施策に懸命に努力しているところであり、その結果、ハード面はもとより、ソフト面においても県民の本問題に対する意識高揚等、相当な成果を上げて明るい展望が開かれているのも事実でございます。
 今後も、一日も早い完全解決を見出されるまで、議会初め県民の皆さん方の御理解と御協力を得ながら積極的に努力してまいりたいと思います。
 次に、部落差別の解決への展望の中で、自立の課題をどう位置づけているかということでございます。
 同和問題を解決するための行政の果たすべき役割は、関係者の自立を促進することが現在の状況の中で主要な課題であると受けとめてございます。関係住民の経済的、社会的、文化的な生活の向上に努めるために教育条件の整備、就労の場の確保などの施策を実施してまいった結果、生活実態等の改善はなされつつあるとはいえ、なお問題が残されているのも現実の姿でございます。
 今後はこれらの課題を一日も早く解決することが重要であると考え、努力しているところでございます。
○議長(岸本光造君) 民生部長高瀬芳彦君。
 〔高瀬芳彦君、登壇〕
○民生部長(高瀬芳彦君) 差別事件の処理に関しましては、同和問題の解決への展望を見失うことなく、県同和委員会の処理基本方針に基づき対応しているところでございます。
 御質問の両市町の差別事件に関しましては、それぞれの市町の主体性によりその解決に努力をしてございますが、県としては、地方の同和委員会と連絡を密にしながら、市や町の要請に応じ、指導に努めているところでございます。
 なお、議会における発言についてでございますが、人権尊重の立場に立ち、同和問題を解決しようという信念に基づく発言が前提であると考えます。しかし、人間をべっ視する発言、また同和問題解決を阻害しようとするような発言については問題として処理すべきではないかと考えております。
 以上でございます。
○議長(岸本光造君) 土木部長磯村幹夫君。
 〔磯村幹夫君、登壇〕
○土木部長(磯村幹夫君) お答えいたします。
 県下における下排水対策の必要地域を調査把握しているのかということについてでございます。
 下水道の整備と排水対策に対する県民の方々の要求は、都市部のみならず、農山村地域においても強く求められているところでございます。県では、昭和五十二年以来、紀の川、有田川、田辺・南部湾の三流域において流域別下水道整備総合計画を策定し、下水道整備の指針とするほか、昭和六十三年から平成元年にかけ、庁内関係部局と協議を行い、県下全域において下水道の整備を必要とする一定規模以上の家屋連檐地や浸水の状況を調査し、その整備を計画的かつ効率的に進めるための指針となる下水道整備エリアマップを策定したところでございます。
 今後、この資料をもとに、公共下水道、農山漁村集落排水施設、地域し尿処理施設等、その地域に適合した整備手法や国庫補助金、地方債等の財政制度、県と市町村の役割等について検討し、下排水対策を積極的に進めてまいります。
 次に、有田川及び紀中地先海域流域別下水道整備総合計画の実施の見通しと有田郡市の実施プログラムについてお答えいたします。
 この計画では、有田川の流域に定められた水質環境基準を維持達成するため、流域にかかわる有田市等一市七町が平成七年までに、それぞれに公共下水道事業を実施する計画になっております。有田郡市では、吉備町が本年から事業化に向けて基本計画の策定を行います。有田市、湯浅町、広川町、金屋町についても、来年度以降、順次基本調査を行い、事業化が図れるよう市町を指導してまいります。
 次に椿山ダム対策について、放水警報の充実やダム操作規程の改善について関係自治体との協議機関を設置できないかということでございます。
 ダムの運営管理につきましては、地元関係者の方々のダムに対する深い御理解と温かい御協力が必要であります。今後、早い機会に、ダム管理上の各種情報の提供や洪水調節時及び渇水時におけるダム効果のPR等を含めてダムのありのままの姿を知っていただくとともに、議員御指摘の趣旨を踏まえ、関係者の方々の忌憚のない御意見を聞かせていただいて円滑なダム管理を図る協議のための組織を設立すべく、積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
○議長(岸本光造君) 警察本部長西村浩司君。
 〔西村浩司君、登壇〕
○警察本部長(西村浩司君) お答えいたします。
 御質問の件につきましては、前本部長が転任に当たって在任中の感想などについてインタビューに応じた際、選挙違反事件や汚職事件の捜査に関する質問に答えた内容の一部が記事になったものと承知しております。
 御質問の事件は、昨年十月に事件着手いたしまして、同年十二月、和歌山地方検察庁に書類送致したものであり、その事件についての感想を述べたものと承知しております。
 申すまでもなく、いかなる場合であっても、厳正、公平、不偏不党の立場で捜査活動を進めるのが警察の立場であります。
○議長(岸本光造君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 45番小林史郎君。
 〔小林史郎君、登壇〕
○小林史郎君 再質問させていただきます。
 先ほど、椿山ダムの関係で、何も問題がなくてよかったというように申し上げましたが、全くなかったということではないので。八百トンで冠水被害が出るところを千二百トン放水しておるんですから部分的には幾つか出ておるわけですが、殿山ダムのような大きな被害が出なくて結構であったという意味でございますので、訂正をしておきます。
 まず、原発の問題でございます。
 知事、なぜ「県民の心情を考えたらやれませんから、もうやめます」と、はっきりここで言えないんですか。町長選挙の結果を見てもはっきりしていると思うんです。原発を争点隠ししながらも、原発反対を掲げた町長があのような得票で当選するということは、もう絶対ここへ来てもらったら困るという町民の心情がよく出ていると思うんです。そういう点から、なぜはっきり言えないのかなあと不思議でなりません。
 有田に、もう亡くなられたのですが、尊敬する地方の財界人がおられました。知事の後援会で大きな役割を果たしておられる方だったと思いますけれども。その方は保守の立場でございますけれども、「わしは保守であっても、自民党であっても、原発と米の自由化だけは反対なんだ。このことを知事さんに言いたいんだ。知事の取り巻きの人はたくさんいるけれども、直言する人は少ない。何としてもわしは言いたいんだ」と言うて、「体の調子が悪いのに行くな」と言うてとめたのに何かの会合に出かけて、会場で心臓発作を起こして亡くなられた。こういう方がおられますけれども、いわゆる原発の問題というのは、政党政派とかいうものを超えた、一つの心情としては、今日の結果についてほっとする思いがお互いにあるのではないかと思うんです。そういうものを本当に押さえていただいて、県民の心情と関電の意向とどちらを大事にするのかということを明確にしていただきたい。だから、少なくともこの議場で「今後十年間、私は原発をやりません。凍結します」と言っていただけるかどうか、御答弁をお願いしたいと思います。
 水平社運動の問題でございますが、自立がいかに旺盛であったかということを訴えました。これは今もはっきり出ておるわけで、先ほど県警本部長の答弁がありましたが、例えば吉備町のドーン計画というのはどういうものであるかということも認識していただきたいわけです。このドーン計画は、町議会、県議会、国会へと請願書が出されて採択されたわけですけれども、その請願理由の中心点は何かと言うと、差別者のない吉備町ではなくて、差別される部落民のいない吉備町をつくりたいということ、これがドーン計画の請願趣旨であります。
 ここに、ドーン計画二十周年記念事業として出された「輝く心の命」というパンフレットがございますが、この中に、ドーン計画をやってきた中で現状はどうなっておるかということが出されております。吉備町の同和委員会では、「地区住民の生活安定度や自立意欲の向上度に絶えず関心を持って観察していますが、過去に比べ飛躍的な向上を示しています」と言って、「生活保護率 昭和三○年の受給率は二〇%であったのが、昭和四二年には八・二%、昭和六三年には三・五%と減っています。 所得税(国税)納付者 昭和四八年に八一人であったのが、昭和六三年には一四八人と増えています。 固定資産税納付者 右と同年度で比較してみると九八人が一九二人と増えています。 ドーン事業による住宅新築資金、宅地取得資金の借入金は毎月返済する制度になっていますが、その返済率は九八・二%というすばらしさです。 進学と奨励金受給 平成元年四月の高校進学者は一八人(卒業者全員)、その中で奨励金辞退者十一人。大学進学者五人、その中で奨励金辞退者三人となっています」と、いわゆる同和行政に依存しないでできるだけ自立でやっていこうと、こういう成果が上がってきておるわけです。
 そういう意味から言いますと、差別をされるような部落民のいない町づくりというのは、あと十年でできる見通しがはっきり出てきているのではないか。また社会においても、差別者が出た場合に、それを厳しく批判して許さないような人権意識があと十年すればできるのではないか。だから、ここでそうしたことに全力を挙げていく。同時に必要な経過措置はとるべきだと思いますが、いつまでも同和行政に依存し続けていくと、差別がまだ残っておるのだということを常に証明していかなければなりませんから、差別事件を摘発していく、社会問題化していく、こういうことが盛んに行われる傾向が出てくるわけで、そういう意味で私は、今度の那智勝浦町の問題、新宮の問題についても危惧を感じておるわけでございます。そういう点も含めて、答弁をいただきましたが、もうひとつしっくりしないところがございましたので、要望としてそれを申し上げておきます。
 最後にもう一点、下水道事業でございます。
 平成二年度の進捗率は、県の長計によれば一一%の予定でしたが、三%しか達成されていない。平成十二年度では三九%まで引き上げるということですが、それはなかなか難しい数字ではないかと思うんです。
 そういう意味で、国の財政措置が非常に求められるわけでございますが、特に財政力の規模の弱い町村段階では、そういう点、非常に重要だと思いますし、今度、生活関連重点枠ですか特別枠があるようでもございますので、この中でこうした弱体化した市町村に対していろいろと特例的な援助対策をしていただくよう政府に要望していただけるかどうかお伺いして、私の再質問を終わらせていただきます。
○議長(岸本光造君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 小林議員にお答え申し上げます。
 原発問題についてでございますけれども、さきに発言したとおりでございます。十分意味を酌み取っていただきたいと思います。
 それから、下水道の問題で国への要望につきましては、当然、これを国に対して要望してまいりたいと思っております。
○議長(岸本光造君) 土木部長磯村幹夫君。
 〔磯村幹夫君、登壇〕
○土木部長(磯村幹夫君) 市町村の下水道整備を推進するに当たり、財政措置は非常に重要なことと考えております。建設省では来年度の予算要求に、国庫補助対象範囲の見直し、下水道基本計画策定費補助の充実、地方債に係る制度の改善、また生活関連経費重点化枠に町村の公共下水道を緊急に実施するための経費を計上しております。県といたしましても、これらのことが実現するよう、国に強く働きかけてまいります。
○議長(岸本光造君) 答弁漏れはありませんか。──発言時間が終了いたしましたので、以上で小林史郎君の質問が終了いたしました。
 〔「議長、議事進行」と呼ぶ者あり〕
○議長(岸本光造君) 33番松本貞次君。
○松本貞次君 ただいまの小林議員の発言について不適切な発言がありましたので、議長の対応をお願いしたいと思います。
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━(以下十五行削除)
○議長(岸本光造君) 速記録を精査の上、善処いたします。よろしいですか。
 〔「はい」と呼ぶ者あり〕
○議長(岸本光造君) これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
○議長(岸本光造君) この際、暫時休憩いたします。
 午後零時十六分休憩
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