平成2年6月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(木下秀男議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

○副議長(宗 正彦君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 21番木下秀男君。
 〔木下秀男君、登壇〕(拍手)
○木下秀男君 我が国の農業が農産物の自由化や米の自由化に激しく揺れ動き、農業者は将来に大きな不安を抱いてございますが、こんな時期に、県農林水産部長安田重行さんの「これからの農業政策」というタイトルで書かれた和歌山県農業の指針ともいうべき一文を拝読いたしました。
 その内容を要約いたしますと、平成十二年を目標に第四次長期総合計画を策定し、二十一世紀に向けた基本方向づけをしております。立地条件や産地の実態、地理的条件と物流の展開、国際化の進展と環境変化等を勘案した知識集約型農業を目指してございます。県下を紀の川流域、有田川流域、日高地域、紀南地域の四地域に区分し、適地適作を基準にきめ細かい耕地別振興計画を策定しており、和歌山県の主産物である果樹、野菜、花卉等に重点を置いた、まことに見事な政策であります。これが各地域で定着するならば、和歌山県の農業が安定すると思うような名文章でございました。しかし、和歌山県のミカン農業は農産物の自由化によって強烈なパンチを受け、国の強硬とも言える行政指導で、減反、改植、転作と、再編に取り組んでいるところでございます。
 質問の本論に入ります。
 和歌山県農業の特産物はミカンと梅であります。産地は有田から日高、紀南地域であり、梅は日高南部から田辺周辺にかけて主産地で、全体の七割近くを生産しております。田辺市の秋津地区は、青切りミカン──これは九月ごろ出てまいります──として有名な早出しの特産地であります。この地域を中心に現在進められている国営南紀用水農業水利事業について大変気になることが幾つかございます。
 この事業計画は、約三十年余り前にさかのぼりますが、日高川総合開発構想の一環として日高川の水を龍神村福井地内でカットし、南部川村清川、通称「切目辻」に分水して発電所と調整ダムを建設し、下流の南部川村、南部町の干害対策用水事業として検討したのが始まりと伺ってございます。
 ここに、当時の和歌山県長期総合計画の試案というものがありますが、農業振興計画の四項目に「その他」として、「南部川水系においては、将来、樹園地のかんがい用水として上流部にダム建設を計画し、農業用水の確保を図るとともに洪水調節を行うものとする」となってございます。
 しかし、この分水計画もさたやみとなり、南部川水系に貯水ダム建設のみが進んでまいりまして、昭和三十四年、当時の日高農地事務所でダム建設場所等の調査検討をした結果、南部川村清川穂手見という地区が適地と決定し、県営事業として、当時の金額で約二十億円の費用を計上いたしております。その途中で田辺市周辺でも同じような用水計画が起こり、日高川分水による干害対策事業が計画進行中の南部川水系ダム事業を巻き込み、大用水事業である国営南紀用水農業水利事業になったと聞いてございます。
 昭和四十二年の四月、国営事業として調査が開始され、六年の歳月をかけた中で全体実施計画が作成されております。この計画は、田辺市と白浜町、上富田町、大塔村、南部町、南部川村の一市五町村を区域とする紀南地方における初めての国営事業であり、受益面積は、水田千五百ヘクタール、果樹園──ミカン畑と梅畑でございます──三千四百ヘクタール、合計四千九百ヘクタールという大計画でありました。
 取水源は日置川町の小房地区に取水堰を設け、富田川を水路橋で渡し、上富田町、白浜町、大塔村の各町村を通って田辺市まで導水をし、田辺市近郊のかんがい用水の補給と畑地かんがい用水として一部は上水道と工業用水とする、一方、南部川水系の南部川村穂手見地区に堤高三十五メーター、貯水量三百万立方メートルのダムを構築し、南部川流域の干害を防止して梅畑のかんがいを行うということになってございます。
 昭和五十一年十一月には水田面積が縮小されましたが、事業が確定しております。その当時の事業内容は、受益面積四千百七十三ヘクタール、内訳は、樹園地三千四百六十二ヘクタール、水田七百十一ヘクタール、受益市町村は田辺市、上富田町、南部川村、南部町の四町と少なくなってございます。取水量は、日置川で毎秒二・六立方メートル、南部川で〇・九四立方メートル、合計三・五四立方メートルであります。事業費は大きく伸びて百七億円となり、南部川水系の当初の事業計画の約五倍強となっております。
 八年後の昭和五十九年二月には大幅な事業計画の変更がなされ、受益面積は二千九百九十ヘクタール、取水量二・四立方メートルと大きく減り、事業費が逆に約倍の二百十一億円となって、ここに大きな逆差が生まれています。
 昭和六十二年三月には水利権協議が成立して、知事同意の上、ダム本体に着工し、本事業計画から実に二十年にして具体的に動き出したのであります。そのダムも、平成元年十二月には完成しております。
 この二十年の間には社会変動が激しく、農業形態も大きく変わり、見直しが必要と思うのでありますが、この件に関して、本事業の主要村である南部川村の今年三月村議会で、村長から南紀用水農業水利事業の全体計画縮小変更についての打診がされたということを表明されてございます。
 それで、次の点についてお伺いいたします。
 まず、当初計画から脱落した町村とその理由。
 そして、南部川水系で行っていた県営事業に国営事業がどのような形で入り、どのような形で大きくなってきたかというその経過。
 また、計画時及び第一回計画変更時の見通しと詰めが甘かったのではないかということ。第一回の見直しのときは既にグレープフルーツを初め大変な騒ぎのあった後であり、見通しに大きな誤りがあったと思うのでございますが、その点はどうか、お伺いいたします。
 さらに、第二回計画変更を南部川を中心に関係町村に出しておるようでありますが、その計画変更の内容、そして二回目の計画変更をしようとする国との交渉状況とその見通しについてお伺いいたします。
 そして、このことに関して起こってまいる国の国営事業の採択基準と分水による水利権についてお尋ねいたします。
 国営事業としての資格規模は千ヘクタール以上と聞いておりますが、南部川水系の南部川村、南部町を合わせると、現在、無理に無理をして加入させたとしても八百ヘクタールほどしかございません。事業効果をあらしめるためには大体千五百ヘクタールを確保しなければならないと言われておりますが、仮に事業効果が得られるとしても、対象面積が大幅に減ることにより受益者負担と施設の維持管理費が大変な割高となってまいります。この事業が認定されてから今日まで素直に一生懸命に取り組んでまいった南部川村、南部町の農家にとって大変大きな負担となってくることは必定でございます。
 さらに気になることは分水でありますけれども、本事業の当初の話し合いの時点から、南部川の水──現在完成している島ノ瀬ダム湖水──は南部郷に、日置川の水は田辺市及びその周辺にという初期の申し合わせ事項があり、分水ということは不可能であると思います。ダム建設によって南部川流域で水田、畑、人家など犠牲者を出し、また県営事業として取り組んでいるところへ国営事業という大型化に巻き込まれる中で四囲の状況や社会変動ということを理由に事業計画が再び変更され、負担金や管理費用が増額され、さらに水まで持っていかれるようなことは断じて許されることではございません。正直者がばかを見るようなことは絶対させられません。責任を問うならば、すべて国と県にあると思います。
 本事業は昭和四十年代の大橋県政時代に計画され、昭和五十年代に仮谷県政に引き継がれて実施に移されたものでございまして、県政における農政の最重点事項として取り組んできたことは事実であります。私も東京にいる折にいささかお手伝いをした関係から本事業の早期完成を念じておりましたところ、ことしの三月、関係町村の議会で一斉に取り上げられ、びっくりして現地に再三足を運び、いろいろと調査をし、お聞きしてまいりました。
 ここに、南部川村山田村長の三月議会提案理由説明の一文を申し上げまして、農林水産部長の賢明なる御答弁をお願いするものでございます。
 前段は省略しまして、「いずれにありましても、我が村にとっては国難的大問題でありますので、村議会はもちろん、村民の御意見を十分承り、冷静な判断のもと子々孫々に禍根を残すことのないよう適切な処置をしておかなければならないと考えています」、これが提案理由の結びの言葉でございます。農林水産部長の答弁をお願いいたします。
 続いて福祉対策でございますが、特に障害福祉の中の施設について提言をし、御答弁をお願い申し上げます。
 福祉関係については久々の質問でございますけれども、私ども議会の中の有志で議員連盟をつくり、県下各地の施設を視察したり、作業所のボランティアの人々と懇談会をしたりして取り組んでいるところでございます。福祉問題は幅が広く、奥の深い、そして長く取り組むべきものと強く感じたものでございます。
 今回は、障害福祉のうちの老人対策について提言を申し上げたいと思います。
 県下の精神薄弱者援護施設の入所者を年齢別に見てみますと、昨年十月の統計では、二十歳から三十歳の年齢層が約五割弱で、十歳単位でだんだんと少なくなっておりますけれども、五十歳代では三十人、六十歳代では四人で三十四人となっており、このままでまいると五年先には約倍の人数にふえてくる予定でございます。
 この福祉施設で働く指導員の皆さん方から、五十歳代以上の人々の食事について大変困っておるという話を聞くのであります。歯の痛みは治療しても、入れ歯や差し歯はほとんどないと言ってよいほどで、健常者のような歯の状態ではないそうです。そして、施設の給食に肉やかたい料理があると、調理場の方々が細かく刻んでつくってあげ、食べさしておるそうです。しかし、こうしたことは少人数であればできるけれども、入所者の多い施設では手間がかかり、全員一斉給食となるとできかねることも多く、現在は何とか無理をしてやっていけても、近い将来、この入所者たちの老齢化が進むと無理が生じるとの話でございました。何事にもきめ細かい、行き届いた行政が必要でございますが、精神薄弱と高齢という二重、三重のハンディを負っているこれらの人々に、老人ホーム的なもの、または独立した別棟のようなものをつくり、食事もつくれる施設の増設をしてはと思うものでございます。
 このような施設はまだ全国に一カ所もないようでございますけれども、「福祉和歌山」を行政の柱とする和歌山県に全国の先駆けとして積極的な取り組みを期待するものでございます。この点について、福祉一筋でまいられた高瀬民生部長の御答弁をお願い申し上げます。
 次はコンビナートの防火対策でございますが、けさほど社会党の先生の御質問で当局も十分答えられたので重なるとは思いますけれども、せっかく書いた原稿でございますので、重複は重々承知の上、この企業に強い反省と注意を促す意味で質問いたします。
 昔から、ことわざに「地震、雷、火事、おやじ」というのがあります。また、すべてなくなることを「灰になる」と言います。それほど火事というものは恐ろしいということを言いあらわしておるのでありますが、最近、県内において大企業の集まっているコンビナート地帯、北部臨海工業地帯内で火災事故が余りにも多過ぎますので、あえてこの議場から企業者に対して注意と反省を促し、また指導に当たる県当局の方針をお伺いするものでございます。
 私は新聞のスクラップをするのが趣味で、あの机の上にスクラップを置いておりますけれども、その中の事故の記事を見ますと、県下の火災記事の中で、昨年の七月十日、「タンク銀座の恐怖 響く地鳴り襲う猛煙」、これは紀の川河口における化学薬品タンクの爆発火災の見出しでございます。「また爆発 怒る住民」、これはことしの五月九日夕刻に起きた関電海南発電所の火災の見出しでございます。ごく最近では「ずさんな防災体制 一一九番五十分もおくれる」、これは住友金属和歌山工場の火災の報道の見出しであります。
 これらの事故は人命を失う事故ではなかったので一面では安堵はいたしましたけれども、付近住民に与えた不安ははかり知れないものがございます。
 石油コンビナート等災害法という法律が昭和五十一年に施行されてから昨年末までの事故件数を見ますと、三十六件もの多くが発生しております。負傷者は四名で、死傷者は出ておりませんけれども、被害額は相当な金額に上ります。事故の発生の都度、警告書や指示書、厳重注意から総点検ということを繰り返しておりますけれども、同一事業所において五回も六回も事故を繰り返しているのが実情でございます。中には通報おくれという火災事故の初動措置を怠った事業所もありますが、これは防火・防災に対する怠慢であり、不見識でもあると思います。
 事故の原因を究明すると、口裏を合わせたように「下請が、下請が」と責任を転嫁するのが企業側であり、その時点で事故原因を徹底究明し、反省して防止対策を立てておるなれば、またそれを下請業者にも指導徹底すれば防げるはずでございます。
 神奈川大学の田尻教授は、「高度成長期につくられたコンビナート施設は老朽化している。企業内でも末端従業員にまで安全教育は及んでいない。石油コンビナート等災害防止法の規定も基本的な事柄でしかなく、厳しい安全教育を義務づけた新しい法律を成立すべきだ」とコメントをされております。
 たび重なる火災事故で事業所が特別自主点検等を行っているようでございますが、以上申し上げた防火・防災に対して指導者側の最高責任者である総務部長の御所見をお伺い申し上げます。
 もう一点、文化財の防火についてでございます。
 コンビナート地帯の防火・防災対策とは少々異なりますけれども、神社仏閣等の建築物や美術工芸品の国指定の重要文化財、県指定の文化財が県下各地に多く散在しております。これらを災害から守り、伝承していくという面からお伺いいたします。
 北には、御承知のように真言密教のメッカと言われる高野山があり、南には熊野もうでで有名な熊野三山の神社仏閣があります。これら重要文化財の指定を受けておるものには、文化庁を中心に保存管理と防火・防災対策が、十分とは言えないまでも補助金等で行われているようでありますが、県指定の文化財を所持する寺社等に対しては皆無と言ってよいほどお粗末な状態であり、個人所有物であれば個人で守っているのが現状でございます。
 和歌山県には「古い歴史と文化がある」という言葉をよく聞くのでありますが、その証左となる文化財、目で確かめられる文化財を保護し、管理・継承しながら後世に無事伝えていく面からも、いま一度防火・防災の面から再点検し、対策を講じるべきだと思います。
 生活文化の向上から家庭生活のエネルギーは電気、ガス、石油となり、町じゅうにはガソリンスタンドが、各家庭にはガスボンベがあり、危険と隣り合わせでございます。文化財という面から言えば教育委員会も関係いたしますけれども、私はあえて防火・防災の面から総務部長の答弁を求めるものでございます。
 これで、私の質問を終わります。ありがとうございました。
○副議長(宗 正彦君) ただいまの木下秀男君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 農林水産部長安田重行君。
 〔安田重行君、登壇〕
○農林水産部長(安田重行君) お答え申し上げます。
 国営南紀用水農業水利事業について、七点の御質問でございます。
 まず、当初計画から脱落した町村とその理由でございますが、昭和五十年代に入って消費者嗜好の変化、多様化等によるミカン需要の低迷により、上富田町が計画の全面積、田辺市も大幅な面積減を余儀なくされ、五十八年度に第一回変更に至ったものでございます。
 次に、県営事業として考えていたものが国営事業に拡大、巨大化した経過はどうかということでございますが、昭和三十年代から四十年代にかけて、ミカン全盛期に県内各地で畑地かんがいが盛んに事業化されました。そういった中で、田辺市、上富田町のミカン園にもかんがい事業の強い地元要望があり、補助率アップによる地元負担の軽減という観点から、当時、南部川流域で構想されていたかんがい事業を包含して国営事業化が計画されたものでございます。
 また、昭和五十八年度の第一回事業計画変更時の見通しについての御指摘でございますが、当時、農業をめぐる客観情勢は変化をしていたものの、受益者である生産者農家全体の農業用水確保の要望は極めて強く、ある程度規模縮小しても事業による経済効果が保たれるものと判断をし、引き続き事業実施してきたものでございます。
 今回の第二回事業計画案につきましては、今日、農業をめぐる諸情勢はさらに一段と厳しく、産業としての農業の構造変化が進みつつあり、オレンジ等の自由化を目前に控え、再編対策実施の中で田辺地方における受益農家の意向の変化から大幅な事業計画の見直しが余儀なくされたものでございます。国の変更案の内容といたしましては、計画受益面積二千九百九十ヘクタールから千七百八十八ヘクタールに縮小し、日置川、南部川の二水源の現計画を一水源にしようとするものでございます。
 次に日置川分水についてでございますが、現下の農業情勢や分水問題、田辺市が実施した受益農家意向調査の結果、さらには経済効果の面を考え合わせて国と協議を重ねた結果、日置川からの取水は適当ではないと判断しているところでございます。
 また、国営事業の採択基準でございますが、畑地かんがいの場合、受益面積千ヘクタール以上であること、あわせて経済効果の成り立つことが条件となっており、当地域の場合、約千五百ヘクタールの畑地かんがい面積の確保が必要となってございます。
 次に現況と見通しの問題でございますが、将来にわたる事業効果、事業費及び維持管理費の負担軽減等を総合的に検討した今回の事業計画変更案について、田辺市、南部町、南部川村及び受益者間の意見調整を鋭意行っているところでございます。とりわけ、南部川流域の皆様方には十分御理解を得られるよう最善の努力を重ねてまいる所存でございます。
 以上でございます。
○副議長(宗 正彦君) 民生部長高瀬芳彦君。
 〔高瀬芳彦君、登壇〕
○民生部長(高瀬芳彦君) 精神薄弱者援護施設に入所されておる老人対策についてでございますが、その処遇については特別な配慮が必要ではないかと考えております。
 県におきましては、障害者にかかる和歌山県長期行動計画の中で、入所者の高齢化に伴い、高齢障害者施設のあり方について課題としているところでございます。
 今後、施設入所者の高齢化が年々進んでいく中で、その対策について、国を初め関係機関とも十分協議を重ねながら対応してまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○副議長(宗 正彦君) 総務部長斉藤恒孝君。
 〔斉藤恒孝君、登壇〕
○総務部長(斉藤恒孝君) コンビナート地帯の防火対策についてでございます。
 昨年の大岩石油青岸油槽所のタンク火災事故後、県あるいは和歌山市消防局からコンビナートの事業所に対して文書による通達及び査察等、機会あるごとに注意を促してきたところでございますが、このたび事故が連続して発生したことはまことに遺憾でございます。
 今後は、県といたしましても、異常現象についての認識、通報のあり方、下請業者を含め現場を重視した安全管理の教育、さらには住民の広報等について強力に指導を実施してまいりたいと考えております。
 重要文化財や宝物品の防火安全対策につきましては、消防用設備等の整備、さらに維持管理、自衛消防組織の整備、防火意識の高揚など、いろいろ方法はあるかと思いますが、今後とも関係部局と連携をとりながら、消防本部を通じて関係者を指導してまいりたいと考えております。
○副議長(宗 正彦君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 21番木下秀男君。
○木下秀男君 農林水産部長ですが、この用水事業は和歌山一県だけではなしに、昭和四十年代ごろに全国で三カ所の大規模な国営事業があったことを記憶してございます。全部は覚えておりませんけれども、その一つに九州は大分県の駅館川──大分県から福岡県に至る川です──水系で計画しており、ここも和歌山県と同じように水利権の問題で難航して、当時、役所では駅館川を、「厄介」にもじって「厄介用水」と呼んでおりました。和歌山県でも日置川水系の水交渉が成立しないので、「南紀用水」というのを「難儀用水」というざれ言葉で取り組んでおったことを思い出します。その当時、もちろん県もそうでございますが、関係者の市町村、農協代表等の猛烈な陳情運動が建設に結びつき、先ほど来からの経過をたどっておるわけでございます。
 時代の移り変わりに即応したものは当然でございますけれども、後から入って、うまくいかないから抜けていって、できるものなれば水をくれと、このような虫のよいことは許されるものではないので、それらの点に十二分な配慮をした上で本事業が完成するように特に強く要望するものでございます。
 この小さい村で水没用地を補償し、立ち退きをさせました。現在その立ち退きした皆さん方はもう移転先で落ちついておりますけれども、この実情を聞いたら切歯扼腕することと思います。それほど南部川村水系では犠牲者を出してまで取り組んでいるということを忘れられては困ります。もちろん、日置川町の分水の困難さということも伺っております。また、今となっては、上富田から来るということは工事費用の問題よりも至難のわざだということもわかってございます。
 そういう意味で、今、この議場に農林部長を経験された公室長、教育長──いずれもこの問題を積極的に取り組んだ方でございますが、今、その立場にないとはいえ、自分が歩んできた道でございますので、安田農林水産部長を助けてこの問題の解決のためアドバイスしていただくことを要請し、私の質問を終わります。
○副議長(宗 正彦君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で木下秀男君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
○副議長(宗 正彦君) 本日は、これをもって散会いたします。
 午後二時二十八分散会

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