平成2年2月 和歌山県議会定例会会議録 第6号(浜口矩一議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 午後一時六分再開
○副議長(宗 正彦君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
○副議長(宗 正彦君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 36番浜口矩一君。
 〔浜口矩一君、登壇〕(拍手)
○浜口矩一君 私は、まず原発の安全性と県対応のあり方について次の事実を述べ、質問いたします。
 それは、英国北部のセラフィールド原子力施設周辺に白血病の子供が多いのは施設内部で働いている父親の遺伝子が放射線被曝により突然変異を起こしたためとの研究者の指摘に関連して、同施設を運営している英国核燃料公社のロジャー・ベリー保健部長が去る二月二十一日、記者会見をし、「従業員等が希望すれば個人的なカウンセリングを行い、ひどく心配しているなら『子供をつくるな』とアドバイスすることもあり得る」と、「こうしたケースが多くなることを望んでいるわけではない」と断りながらも述べられた由。また、この研究結果を公表されたマーチン・ガードナー英サウサンプトン大学教授も、「同施設で高い放射線を浴びた父親の子供は、他の地域の子供と比べて七倍白血病にかかりやすい」と指摘され、英国核燃料公社に対して、「これから子供をつくる若い従業員の被曝量を極力制限するよう働きかける」と話されたこととの具体的な事実報道は注目すべき内容と存じます。
 なお、同社はセラフィールド地域で核燃料再処理施設と出力六万キロワットの小型原発四基を運転しており、今回従業員被曝が問題化しているのはプルトニウムや高レベル廃棄物を取り扱っている再処理施設と見られるとのことです。
 私はこの報道に接し、言われている従業員、その他の日常的な被曝被害の具体的な一立証としてはもちろんですが、ひとり再処理施設だけではなく、原発従事者は申すまでもなく常時運転による周辺住民への被害も、たとえ低位とはいえ黙視できない報道と存じますに加えて、チェルノブイリ事故後の公的な実態報告とも申すべき昨年五月翻訳出版の「原発事故から一〇〇〇日目」、また「チェルノブイリ その過去と今後の展望」、加えてウクライナや白ロシアからの内部告発、その具体的な内容は省略いたしますが、それとともに国内における脱原発法制定運動の高まりとその背景。しかも、この機運はひとり我が国だけではなく、今や世界的な潮流となっています。
 にもかかわらず、今議会提案予算案に電源立地振興費二千六百万円を全額国庫補助とは申せ計上。しかもその中身は、重要電源すなわち原発立地による温排水影響調査と立地推進対策費。対象町村、その動き等の事実とも絡めて原発推進に手をかすことは必定と存じますゆえ、改めて安全性と県対応について、以下質問いたします。
 まず、その前提として、依然として続いている国内原発の事故、トラブルの実証たる本年一月中の経過を申し上げますと、二日には、調整運転中の福島第二原発一号炉で再循環ポンプ内の油だめ油面上昇警報が鳴り、原子炉を手動で停止した。これは油面検出器の誤操作によるとして、四日、再開の由でございます。
 五日には福島第二原発三号炉の全燃料取りかえのための原子炉設置許可変更申請を通産省が許可していますが、これは、一年前に再循環ポンプ内の水中軸受けリングが破損し、ポンプ内のあちらこちらを傷つけ、三十キロ以上の破損片が原子炉内に流入という、世界でも例を見ない、一歩誤れば取り返しのつかない大変な事態になりかねない事故によるもので、通産省内では事故調査委員会も昨年八月に中間発表はしたものの最終結論はまだの上、地元富岡町でも市民グループによる事故調査、そして許可後の十二日、その報告会の前になされた許可措置と伺っています。
 また、九日には伊方二号の定検が終了していますが、これも、この定検により、一九七〇年代に建設のコンクリート建造物の強度が大幅に低下している可能性があり、その原因は、強度を保つ珪酸カルシウム水和物が炭酸ガスにより分解のためであることが判明しています。
 さらに十六日には、日本原電と関西電力が敦賀二号、高浜一、二号の蒸気発生器細管の許容施栓率引き上げを通産省に申請。敦賀は一〇%、高浜は二五%に。また同時に福井県は関西電力に、現在の施栓率の維持と許容施栓率は二五%を上限にするように申し入れております。
 加えて十九日には、昨年十月からの定検で高浜三号の蒸気発生器細管二十三本に損傷が見つかった原因は冷却水の流速アップによるものと関西電力は福井県に連絡していますが、これについても以前は、細管と振れどめ金具とのすき間が大きいためにぶつかって損傷が起きた、それゆえすき間を小さくして、そのためにさびが沈殿したりしないよう冷却水の流速をアップしたと説明しています。ところが今度は、細管に微小振動が発生して金具との接触が繰り返されたためとのこと。これでは対策と新たな損傷のイタチごっこと申さざるを得ませんし、今回はすき間をなくすことで再発防止とのことですが、果たして防げるかどうか、結果が注目される次第です。
 以上に加えて、昨年末と今年初めの二度にわたって敦賀一号炉で続けざまに起こった機器の故障。昨年末のは、外部からの送電が停止した場合、緊急炉心冷却系など最低限必要な電力確保のため非常用のディーゼル発動機の自動停止であり、本年一月の事故は、三系統ある緊急炉心冷却装置の一つである高圧注水系のポンプ駆動用ディーゼル機関の自動停止事故でございます。この二件とも、毎月行われている機能試験の際起きたものなので事なきを得たものの、調査の結果、ディーゼル機関とポンプを結ぶ増速機の軸受けが脱落して歯が損傷し、破片が増速機内に飛び散っていたためと判明したという事実もあわせて御報告いたしたいと思います。
 私は、貴重な時間にもかかわらず、なぜこのような事実をるる申し述べるかと申しますと、原発に関しては何よりも大切であり、最大限留意し確保すべき安全性について、機器の安全性──これは当然のこと、この点についても若干の意見なきにしもあらずですが、それはしばらくおくとして、扱う企業側の対応の現状をつぶさに検討いたしますとき、官報に掲載の「原子力白書」の評価にもかかわらず、多分の憂慮を抱いている一人です。
 そこで、これらの点について、県独自の事故分析と安全性についてどのような御見解を持っておられるか、判断の根拠も含めてお示し願いたいと思います。
 もし中立的、独自的な立場をとっておられるのならば、伝えられる立地予定候補地と言われている日高町における町政の対応、その他、また住民サイドの取り組みをも含めてその内容、御承知のことゆえ省略いたしますが、どのように分析されての県対応なのか、その基本姿勢と、冒頭御指摘申し上げた「予算計上、全額国庫補助」とは申せ、その地域に与える影響を考えるとき重大この上もない措置だと考えますが、手続、意図等、県独自の立場からの御見解を明確にお答えいただきたいと思います。
 次に、紀南地方、特に私どもの海域における漁場問題について質問いたします。
 なお、この件については以前も実情を申し上げ、善処方要望いたしましたが、その後の経過を熟視するとき、事態改善は依然として進捗せず、このまま放置すれば不測の事態憂慮はもちろんですが、事、沿岸漁業の将来にも関係する重大性を秘めている問題点と考えるの余り、重ねて経過の概要と実情を述べて当局の御見解、対応について質問いたします。
 その前に、本県、特に私どもの紀南地方の漁業を取り巻く環境は、海岸線は長く、漁場に富んでいる上、漁業は農林業とともに一次産業とは申せ、観光とともに重要かつ中心的な経済の柱的存在にもかかわらず、二百海里問題あるいは魚介類の輸入外圧、その他により厳しさそのものの対応を余儀なくされていること、御承知のとおりでございます。
 しかも、捕鯨存続の問題もその一つでございますが、この件は別の機会に譲るとしても、この厳しさを克服して漁業振興策を確立するということは、関係者の自助努力はもちろんのこと、行政の立場からも緊急の重要課題だと思うわけでございます。そしてその方向は、極言すれば必要な魚介類を必要量だけ漁獲し提供する、いわゆる管理漁業志向の振興策に大きく依存せざるを得ない現状と考えております。
 もちろん、魚群の回遊を含めた魚介類の生息や生態、あるいは海洋環境の変化とそれに伴う魚介類等の生息や生態等々、まだまだ未解決の領域を残しておることは素人ながら承知しておりますが、それらの現状を踏まえながらも、なおかつ水産県としてのその振興を求めるため、管理漁業振興を目指した漁業秩序の確立は重要課題との認識に立ち、私どもの地方に視点を当て、当面の問題について以下質問いたします。
 私は、地域漁業振興の方途としての管理漁業推進基盤整備という立場から六十四億円余りの巨費を投入しての漁場造成の取り組みに対し住民の一人として心から敬意を表し、感謝申し上げている次第ですが、その完成を目の前にしての数年前からの操業の実情、なかんずくまき網漁業と一本釣り等小型船漁業及び免許漁業、定置綱漁業者との間で数々のトラブル発生の事実をかいま見、冒頭申し上げたとおり以前も実情を述べて質問申し上げましたが、重ねて当局の現状認識と対応について質問いたしたいと思います。
 加えて、この件に関する地域漁民の取り組みは、県要請に焦点を絞って経過を申し述べますと、昭和六十二年二月に上県、漁場調査陳情するも回答を得られず。再び同年十月、回答要求。不満の抗議書を提出しております。その後も上県、課長に陳情したが、不在で陳情伝達を依頼。また昨年一月には、関係四漁協の組合長連名で重ねて陳情書を提出しております。そして本年二月八日、中村県議、私も同道して代表者が上県し、関係六組合長の連署の陳情書を提出。そうして実情と要請の趣を述べ、緊急な御検討と対策、御回答をお願いしましたが、聞くところによると、いまだに回答なしとのことであります。
 私は、年度末を控えて当局の御繁忙は十分に承知しながらも、事、急を要する問題の上、切望しながら長年放置されたいら立ちの心情、先日も各代表より申し上げ、早急な回答をお願いしたにもかかわらず今日まで放任という事態を座視するに忍びず、以下数点質問し、明確な御答弁をお願いいたしたいと思います。
 まず、熊野灘海域総合開発事業実施については、漁場の調整を条件として、地元漁民の同意を得て着手した由聞いていますが、そのとおりかどうか。そのとおりとすれば、県当局はどのような対応をされ、また関係者に周知されたのか。
 次に、先ほど申し上げたこれら漁民の陳情要請に対してどのような御見解を持ち、どのように対応されたか。また、今後対処されるおつもりか。
 関連いたしまして、お隣の三重県では既にまき網漁業の操業規制、調整を行っている由伺っておりますが、それらをも参考にして県当局の御見解をお伺いいたします。
 最後に今後の具体的な対応について、調整はもちろんのことでございますが、その点についてはそれぞれの利害が相反する場合もあることを考えるとき、当然、当局の指導的な立場での決断が求められていると思いますので、その立場を踏まえて明確にお答え願います。
 以上で、私の第一回の質問を終了させていただきます。
○副議長(宗 正彦君) ただいまの浜口矩一君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 浜口矩一議員にお答え申し上げます。
 原子力発電所の安全性の問題でございますけれども、私もかねがね原子力発電所について三原則を基本としており、その中でも安全性を最重点に考えておりまして、国や電力会社に対して安全性の確保に万全を期するように必要な申し入れを行っているところでございます。
 また、日高町の問題につきましても、先日、尾崎議員にもお答えしたところでございますが、県としても、今後ともこうした地元の動向を見守ってまいりたいと考えておる次第でございます。
 細部については、企画部長から答弁申し上げます。
 また、熊野灘の問題については担当部長から答弁いたしますけれども、そうした点について私も非常に頭を痛めている段階でございます。
○副議長(宗 正彦君) 企画部長川端秀和君。
 〔川端秀和君、登壇〕
○企画部長(川端秀和君) 原子力発電所問題につきましてお答えを申し上げます。
 まず、安全性についてでございます。
 原子力発電所の安全性につきましては、安全上、余裕のある設計はもとより、国による厳格な規制、監督と電力会社の適切な運転管理によって支えられておりまして、また日常的な点検のほか、年一回、精密な定期検査を行って異常や故障、あるいはその原因となるような事象を早期に発見し、適切な対策を講ずることによって維持されているものであると考えてございます。
 我が国の原子力発電所は、こうした取り組みが円滑に機能してきた結果として大きな事故の発生に至っていないということは「原子力安全年報」でも認められているところでございます。
 県といたしましては、原子力発電所の立地に関して、安全性の確保が何にも増して重要であるという、これまでの姿勢を堅持してまいる所存でございます。
 次に、電源立地地域振興事業費の計上についてでございます。
 日高町におきましては、町長を初め町当局が住民の理解を得るべく努力されている状況であることは認識いたしているところでございます。
 日置漁協は、国からの補助金を直接受けて、平成元年度からイセエビやアワビの魚礁調査を実施中であると聞いてございます。
 また、平成二年度の県の予算といたしまして、県の事業費として四百万円、日高町の事業費として二千二百万円を計上しているところであり、全額、国から交付されるものでございます。これは、電源立地に伴う地域振興効果、環境、安全などに及ぼす影響、住民の正しい理解を得ること等が重要であるとの考えから本補助金を受け入れ、予算措置をしたものでございます。
 いずれにいたしましても、電源立地に関する県の考え方は、これまでもたびたびお答え申し上げておりますとおり、適地性、安全性、地元の同意という三原則を堅持し、対処してまいる所存でございます。
 以上でございます。
○副議長(宗 正彦君) 農林水産部長安田重行君。
 〔安田重行君、登壇〕
○農林水産部長(安田重行君) お答え申し上げます。
 事業の実施と地元の同意の問題でございます。
 熊野灘海域総合開発事業は、この海域の持つ自然的、社会的特性を最大限に活用して漁業生産の増大を図り、地域の振興を図ることをねらいといたしております。
 事業の実施につきましては、地元の町からの早期実現の強い陳情を受け、地元十漁業協同組合の合意のもとに昭和五十七年に事業着手したものでございます。
 関係者に対する周知につきましては、関係組合ごとに全体計画の説明を開催してきたところでございます。
 次に、操業の現状と関係漁民の調整要請に対する県の対応についてでございます。
 一本釣り等小型漁船漁業とまき網漁業は同一漁場で操業するためトラブルが多く、互いに譲り合って円満な操業を実現することは漁業者みずからのために必要であると考えております。昭和五十四年に関係十一漁業協同組合で結ばれている操業協定の遵守について、これまでにも機会あるごとに漁業者を指導してまいりました。
 人工漁場等の事業の進展に伴い、議員お話しの漁場利用調整については、昨年の六月から小型船漁業者と今後の進め方を協議してまいりました。その際、まき網漁業者から指摘をされている小型船の発電機の問題をまず解決し、その後に漁場利用調整を進めることで意見の一致を見たところでございます。そのため、これまで発電機問題について、漁業調整規則等の問題で海区漁業調整委員会とも鋭意検討を重ねているところでございます。しかし現今、小型船の漁業者から漁場利用調整についても強い陳情要請がありましたので、近々、現地において小型船代表者と話し合いを行うため、具体的な日程の調整をいたしたところでございます。
 最後に操業規制調整につきまして、現状の認識と今後の取り組み方針の問題でございます。
 三重県との関連で申し上げますと、両県とも十五トン以上のまき網漁業については操業区域の規制がございます。この海域で操業している本県のまき網はいずれも十五トン未満であり、小型船漁業として同一漁場で操業ができることになってございますので、関係漁業者間の操業協定等によって漁場利用調整を進めてきたところでございます。
 今後の取り組みについてでございますが、これまでの経過もあり、また利害が全く相反するところに調整を図ることは大変な困難さがございます。しかし、何としても調整せねばならないので、今後、海域総合開発事業で新たに造成された人工魚礁の利用を中心に、新しい漁場利用について漁業調整委員会と協議をしてこの問題に対処する所存でございます。
 以上でございます。
○副議長(宗 正彦君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 36番浜口矩一君。
 〔浜口矩一君、登壇〕
○浜口矩一君 原子力発電所の安全性については、ただいま企画部長から御答弁をいただきました。
 その御答弁は、設備機器の安全上、余裕のある設計や製造、あるいは国による厳格な規制と監督、適切な運転管理、また定検等による異常の早期発見等により安全であるというようなことでございますが、先ほど私が申し上げました具体的な実例からも、機器が安全であるかどうかということについては疑問がある。これはおわかりだと思います。
 また、昨年であったと思いますが、私たちと通産省との交渉──これには和歌山県からも代表の方が参加されました。そのときに、「原発は絶対安全だと言い切れますか」という質問に対して通産省の関係当局は、「絶対安全とは言い切れない。しかし、それに従事する運転員その他が安全性に万全の配慮をしておるから安全だと言えます」と、このように言うているんです。「機器が絶対安全だ」とは、そのことから言うても言えないと思いますし、そこに非常に大きな落とし穴というのか、安全確保上におけるところの一つの欠陥があるのと違うか、このように考えます。
 それから、先ほど私が提示した英国におけるところの具体例。これは、日常運転中でも放射能漏れの被害というのはあるという例です。国内でも数多くの従業員が被曝という形で指摘、告発されておる事実は御承知のとおりだと思います。ただ、この件については、医学的にどうだこうだという、それについてはなかなかはっきりしないので、「その疑いがある」云々という程度で問題視されておる現段階だと思いますが、これも各種の補償措置ということから考えれば、この事実は明らかだと思うんです。
 また、周辺に対する放射能漏れの問題にしても、ムラサキツユクサの試験の例、あるいはその他の探知機等による具体例、また学者のそれに対する実態調査、そういうようなものから明らかになっておるわけなんです。しかしこれらについては、「微量であるから人体に影響がないと思う」というようなことは政府や企業の言い分ですけれども、先ほども七倍という数字で申し上げたように、ずうっと後になってから問題化する。これはアメリカの例でもはっきりしているわけなんです。
 加えて、もう一つ申し上げたいと思います。企業対応についても、通産省が「企業対応は万全だ」と言われたわけなんですが、私が先ほど指摘した福島第二原発三号炉の事故も企業対応の問題です。一歩誤れば取り返しのつかない重大な事態になりかねない。しかも富岡町民も、この点を重大視して調査委員会をつくって調査しております。後ほど行われたその調査報告会で理化学研究所の槌田さんや市民事故調査委員の竹村さんなんかから、「重大な発言」という批判的な発言が出ているわけです。これについても、少なくとも関係者の皆さん方はよく承知しておられると思います。
 また、敦賀一号で続けざまに起こった、先ほども申し上げた機器の故障につきましても、「非常用のディーゼル発電機の二台のうち一台はとまったが、もう一台あるから大丈夫だ」というような企業側の説明ですけれども、もしその一台が停止したときに事故が起こったらどうなる。私は、少なくとも事命に関し、生存に関する安全性の問題については、そういう周到な観点というものが必要ではないかと考えるわけなんです。
 さらにもう一つ。これは、きょう、朝日新聞の報道で見たわけなんですが、高浜の四号機で蒸気発生器細管二十一本に損傷の事故発生の事実が報道されています。同機は、加圧小型軽水炉で多発している細管損傷を防ぐ対策をして、五年前に運転開始したばかりの新しい原発でございます。加えて、同じ対策をした三号機でも、昨年、二十三本に損傷が出ております。三号機、四号機とも、摩滅を防ぐために工夫したと言われておるところの金具部分に減肉という損傷が出ているわけなんです。こういうことから考えれば、新型の原発でも細管損傷防止は困難であるということが浮き彫りになったと朝日新聞は指摘しております。このような事実をどのように分析されて安全確保が万全であると言うのか。このことの御見解をお尋ねいたしたいと思います。
 政府がどうだとか、「原子力白書」でどうだとか、あるいは企業がどうだと、これだけでは県独自の見解と言えるのかどうか。特に原発立地県と言われている、また日高や日置川の問題を抱えておるところの本県の知事が先ほど「三原則のうちで安全性は最優先」と答弁された、そのとおりの立場から部長の御見解をお伺いいたしたいと思います。
 次に、日高町におけるところの町の対応について県は、「町当局が住民の理解を得るべく努力されている状況」云々という答弁ですけれども、これも去る三月八日の新聞報道の見出しを見ても、「原発推進『地ならし』 日高町長 漁協組合員宅を訪問」という表現でございます。時間の都合で中身を省略いたしますが、これも新聞報道のとおり、推進の意図は明らかだと思うんです。
 海上調査の受け入れをめぐる日高町における昨年来の比井崎漁協の対応は、これも県は御承知のとおりだと思います。水協法の建前から言っても町長のこの行動は明らかに問題があると感じますが、県は中庸的な立場でこのことについてどのように評価をしておられるか。これについても御見解をお伺いいたしたいと思います。
 原発についての再質問は以上のとおりです。
 それから、漁業関係について若干申し上げたいと思います。
 御承知だと思いますけれども、まき網という漁法は根こそぎ魚をとる漁法です。しかもその漁具類は、網はもちろんのこと、魚群探知機なんかでも非常に性能が向上して、どんな魚がある、どれくらいの大きさだ、あるいは数量は大体どうだと、こういうようなことまで的確に把握できるという現状でございます。それから海上通信の問題にしても、通信機能というものが発達して情報キャッチもすこぶる容易であるという現状でございます。それゆえ、魚が回遊してきて魚礁に居つく、そうしてこれから操業という寸前に、まき網が来て、それこそ一網打尽にとってしまう。泣かされるのは地元の小型漁船、一本釣りや棒受けだけということになるのは火を見るよりも明らかだと思います。
 加えてもう一つ申し上げたいのは、定置網です。大敷網です。網の前に魚が来て、そうして網に入る寸前にごそっととられる。これでは、高い金を出して、また多くの従業員を抱えての定置網漁業は成り立たないということは当然だと思います。
 しかも、これらまき網をやっておる漁業者は、地元の漁民ではありません。同じ和歌山県であるけれども、よその漁協の漁民です。したがいまして、このようなことを考えたときに、地元漁民救済という立場からも熊野灘海洋牧場は非常に大きなウエートを占めている。そう思いますときに、規制とか調整というのは、当然のこととして行政の責務だと思うんです。
 また、先ほど言われた集魚灯の発電機の燭光オーバーの問題。この規制に非常に時を費やされたと言われておりますが、これの規制も大事なことなんです。しかし、だからまき網の漁場調整がおくれても構わんという理由にはならないと思います。
 もう一つ申し上げたいと思います。若者が紀南でどんどん流出してございます。それは、働く場がない、将来に展望を持てない、だから都会へ出ていくのです。また残って、いわゆる父祖伝来の家業である農業や林業、漁業を継がれても、非常に厳しい状態に置かれておることは御承知のとおりです。そういうような中でも、父や祖父の家業を継いで営々として漁業に従事する、そうして夜を日に継いで出漁しておる。これは、地場産業にも等しいところの、漁業を守るという立場だけでなしに過疎対策という上からも非常に大事なことである、大切にしなければならないものだと考えるわけでございます。そういう意味からしても、これらの要求にこたえてやるということは、過疎対策という立場からも緊急かつ重要な課題だと思うわけでございます。
 しきたりがどうだとか、あるいは決めても守れないとかいうような立場からの言いわけは理由にはならないのと違うか、このように考えます。だから、早急な対策というものがどうしても必要である。こういう考えを持っておるわけなんですが、この件については先ほどの部長の答弁で、今後早急に対策を立てるというような具体的な手だても伺いましたので、特にそのことだけは申し上げて、これは要望にしておきたいと思います。
 以上で、私の第二回の質問を終わります。
○副議長(宗 正彦君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 企画部長川端秀和君。
 〔川端秀和君、登壇〕
○企画部長(川端秀和君) 再度の御質問にお答えを申し上げます。
 まず、安全性についての英国の場合でございますが、英国のセラフィールド再処理工場の周辺の住民に白血病などのがん発生率が高いという御指摘でございます。
 英国保健省が調査を行った結果、「セラフィールド近郊のシースケール村では若者の白血病が全国平均よりも高く発生しているものの、再処理施設の運転に関連づける明白な証拠はなかった」と報告されたと聞いてございます。
 しかし、県といたしましては、いついかなる場合にあっても周辺住民に放射線被害が及ぶようなことがあってはならないと考えており、今後もこの基本を堅持してまいる所存でございます。
 それから日高町の問題でございますが、日高町長は、原子力発電所の立地を町の将来の発展のために活用しようという立場から、住民の理解を得るべく対処されているものと認識いたしているところでございます。
 以上でございます。
○副議長(宗 正彦君) 答弁漏れはありませんか。
 36番浜口矩一君。
○浜口矩一君 私が先ほど提示した数々の福島その他の事故例についての御答弁が、分析が一つもなされていない。だから、これについて、もしわかっていることがあったら御見解をお伺い申し上げたいと思います。
 セラフィールドだけの御答弁で、国内のやつは一つも言うてないから。
○副議長(宗 正彦君) 答弁漏れがあるようでございますので、当局の答弁を求めます。
 企画部長川端秀和君。
 〔川端秀和君、登壇〕
○企画部長(川端秀和君) 大変失礼いたしました。
 御提示いただきました例のうち、我が国の場合でございます。
 我が国における事故・故障等は、異常の兆候を早期に発見して大事に至らぬよう措置したものや、点検中に異常の原因となる事象を発見して措置したものがほとんどであると聞いてございますが、議員御指摘の幾つかのトラブルのうち、例えば昨年一月に発生した福島第二発電所二号機のケースにつきましては、以前から損傷の可能性があるとされていた部品の改修時期をおくらせたために破損に至ったものであり、原子力安全委員会の委員長からも「安全の配慮に慎重さを欠いた」との指摘を受けたと聞いてございます。
 そういうことで、この事故に関して資源エネルギー庁は原子力発電技術顧問会の中に調査特別委員会を設置し、損傷の原因や事故発生時の対応、再発防止対策等について調査を続けておりましたが、ことしの二月二十二日にその結果が発表されたところでございます。
 東京電力株式会社に対しましては、機器の改善のほかに、運転マニュアルの見直しや異常の兆候等に対する対応の強化をも指示されてございます。他の電力会社にも同様の指示がなされたところでございます。
 それから、朝日新聞の本日の記事の問題でありますが、先日、資源エネルギー庁から、「関西電力株式会社高浜発電所の四号機では本年の二月二日から定期検査を実施していたが、蒸気発生器伝熱管の全数検査を行ったところ、一万百四十六本中二十一本に傷の兆候が認められた。このため、これら二十一本に栓をするとともに、傷の原因となった伝熱管振りどめ金具を改良型に取りかえることとした」という情報連絡を得ているところでございます。
 毎年の定期検査では全数を入念にチェックいたしまして、傷が小さいうちに栓をしたり、あるいはパイプの内側にスリーブを張りつけたりといった対策を講じていると聞いてございますが、定期検査は、異常の兆候やその原因となる事象を早期に発見し、事故や故障を未然に防止するために行うものでございまして、そういった意味から、今回の件についても適切な対策措置が講じられるべきものであると考えているところでございます。
 以上でございます。
○副議長(宗 正彦君) 答弁漏れはありませんか。
 〔「日高町の対応に対しての県の分析」と呼ぶ者あり〕
○副議長(宗 正彦君) 答弁漏れがあるようでございますので、当局の答弁を求めます。
 企画部長川端秀和君。
 〔川端秀和君、登壇〕
○企画部長(川端秀和君) 日高町の問題でございますけれども、先ほどお答え申し上げましたとおり、日高町長は原子力発電所の立地を町の将来の発展のために活用しようという立場から、住民の理解を得るべく対処されているものと認識いたしているところでございます。
 以上でございます。
○副議長(宗 正彦君) 答弁漏れはありませんか。
 〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(宗 正彦君) 再々質問を許します。
 36番浜口矩一君。
○浜口矩一君 簡単に申し上げたいと思います。
 今の企画部長の答弁は、「原子力白書」に言われているのと寸分変わらないような御答弁なんです。何かして──企業に対してこういうようなことの勧告をしてあるとか。勧告をしてあったら、それを守っていくと言っているその事実が大切だと思うんです。
 一番の例としては、先ほど申し上げたところの蒸気発生器の細管の問題。これを直しても、また次に故障が起こる。それを直したら、また次が出てくる。それで、私は先ほど「イタチごっこ」と申し上げたんです。そういうようなことがあってはならないんですよ。
 「企業側が対応してあるから」と言う。その対応がはっきりと安全確保に功を奏さなければならないんです。それを見届けるのが安全性に対する当局としての姿勢であり対応だと思う。
 こういうように考えるわけなんですけれども、このことについては、ひょっとしたらもう言い合いというような形になると思いますので、今後の討論の材料として申し上げて、また話し合いをいたしたいと思います。
 そういうようなことで、これはもう私の意見という形で申し上げて、質問を終了いたしたいと思います。
○副議長(宗 正彦君) ただいまの発言は意見でありますので、以上で浜口矩一君の質問が終了いたしました。

このページの先頭へ