平成2年2月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(村岡キミ子議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 午前十時五分開議
○議長(門 三佐博君) これより本日の会議を開きます。
○議長(門 三佐博君) 日程第一、議案第一号から議案第七十号まで、並びに知事専決処分報告報第一号から報第四号までを一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 41番村岡キミ子君。
 〔村岡キミ子君、登壇〕(拍手)
○村岡キミ子君 おはようございます。
 お許しをいただきましたので、早速、質問を申し上げてまいります。
 まず最初に、被爆者援護法制定の実現についてお尋ねを申し上げます。
 この問題は、これまで二回にわたって我が党県議団団長・藤沢議員が質問を重ねてまいったところでございますが、私は、被爆四十五年目を目前にして、県下の多くの被爆者の方々に直接お会いをいたしました。その被爆体験とその後の健康や生活についてお聞きをし、また和歌山県原爆被災者の会発行の「語りつがねばならないこと」を繰り返し読み進む中で、被爆者とその遺家族の皆さんの命をかけた心からの願いである援護法制定の実現は、今、高齢化が進むもとで一日も猶予できない状況に至っていることを強く思い、ここに質問をするものです。
 既に御承知のように、昨年十二月十五日、参議院本会議に野党共同で提出されていた国家補償に基づく原子爆弾被爆者等援護法案が可決されました。この法案は、国家補償の立場から、被爆者全員に対する年金支給や死没者の遺族への特別給付金支給など、現行の被爆者医療法、被爆者特別措置法の社会保障制度の枠を超えて補償を行うものであります。
 この三十余年にわたって核兵器廃絶とともに被爆者と原水禁運動の一貫した要求と闘いが、ここに初めて切り開いた歴史的、画期的な成果であります。これは、昨年、参議院選挙において自民党を過半数割れに追い込んだ結果でもありましょう。しかし自民党は、衆議院では一切の審議を行わないまま即日廃案にしたばかりか、海部首相以下七人の閣僚の援護法賛同署名について「知らない」、「やっていない」などと言い、閣議で撤回まで決めるという、裏切りとうそで国民の意思の反映であるこの法案を葬ったことは大変残念でなりませんし、新たな怒りを感じるのは私だけではないでしょう。
 先日、私のところに、広島、長崎に原爆が投下された直後の八月十日、当時の鈴木貫太郎首相が日本政府として、スイス政府を通じ、米国政府・トルーマン大統領に送った抗議文が届けられました。以下、その抗議分の一部を御紹介させていただきますが、何せ、私が三歳のときの文章でありますので、皆さん方に十分御理解できるように読めるかどうか大変不安でありますが、紹介を申し上げます。
 米機の新型爆弾による攻撃に対する抗議文(昭和二十年八月十日)
 本月六日米国航空機は広島市の市街地区に対し新型爆弾を投下し、瞬時にして多数の市民を殺傷し同市の大半を壊滅せしめたり。広島市は何ら特殊の軍事的防備乃至施設を施しおらざる普通の一地方都市にして同市全体として一つの軍事目標たるの性質を有するものに非ず─中略─米国政府は今次世界の戦乱勃発以来再三にわたり毒ガス乃至その他の非人道的戦争方法の使用は文明社会の輿論により不法とせられおれりとし、相手国側において、まずこれを使用せざる限り、これを使用することなかるべき旨声明したるが、米国が今回使用したる本件爆弾は、その性能の無差別かつ残虐性において、従来かかる性能を有するが故に使用を禁止せられおる毒ガスその他の兵器を遙かに凌駕しおれり。米国は国際法及び人道の根本原則を無視して、すでに広範囲にわたり帝国の都市に対して無差別爆撃を実施し来り多数の老幼婦女子を殺傷し神社仏閣学校病院一般民家などを倒壊又は焼失せしめたり。而して今や新奇にしてかつ従来のいかなる兵器投射物にも比し得ざる無差別性残虐性を有する本件爆弾を使用せるは人類文化に対する新たなる罪状なり。帝国政府は自らの名においてかつまた全人類及び文明の名において米国政府を糾弾すると共に即時かかる非人道的兵器の使用を放棄すべきことを厳重に要求す。
 おわかりいただけたでしょうか。これを要約いたしますと、広島市を一瞬のうちに壊滅させた米国の新型爆弾は、その無差別性、残虐性において国際的に使用禁止となっている毒ガスをはるかに上回る恐ろしい兵器であり、これを使用した米国に対し、全人類と文明の名において糾弾するとともに、かかる非人道的兵器を直ちに放棄することを厳しく要求すると結んでいるのであります。
 私は、この抗議が原爆投下直後に行われたことからして、重要で、かつ貴重な文書であると思うのであります。したがって、今日なお被爆の後遺症と社会的、経済的に苦しみ続けている被爆者と全国民の願いである援護法の早急な実現のために、この趣旨が十分生かされなければならないと考えるのであります。皆さん、いかがでしょう。
 知事にお尋ねをいたします。
 援護法の基本は、人類が二度とあの過ちを繰り返さないためのとりでを築くことですから、原爆被害に対する国としての償いだと思います。被害に関する補償は同じ被害を起こさないための第一歩であり、援護法は、国が原爆被害への補償を行うことによって核戦争被害を受忍させない制度を築き、国民の核戦争を拒否する権利を打ち立てるものであります。さらに援護法の制定は、在外被爆者、外国人被爆者、そして核実験被害者などに対する補償制度の根幹をなすものでもあります。また、一般市民の戦争被害に対する補償に道を開くものだと考えます。
 日本は唯一の被爆国でもありますから、国際的に責任を果たす上からも、援護法の制定によって核兵器否定の理念を確立することが何よりも緊急課題だと心から思います。
 そこで知事にお尋ねいたしますが、知事の基本的な考え方とあわせて、いまだに実現しない原因がどこにあるのか、お聞かせいただきたいと思います。
 続いて、保健環境部長にお尋ねをいたします。
 本県には、被爆者健康手帳所持者が六十三年度で五百二十七名おられるわけですが、被爆者と遺家族の皆さんは四十五年たった今も被爆後遺症に悩まされ、今後も、生きている限り毎日が不安と苦しみに耐え続けなければならない実情にあります。被爆体験のない私には、想像することは容易ではありません。
 「あの日のことは思い出したくない。しゃべりたくない。そっとしておいてほしい」と、かたく閉ざした心に勇気を奮い立たせて五十五名の皆さんが被爆体験記に語り継がれました。身をもって体験した心からの訴えに、私の胸は張り裂ける思いがいたしております。
 私は、一週間前、みずからも被爆者であり、被爆体験記づくりに頑張っていらっしゃる日高町のMさんにお会いすることができました。
 Mさんは、現在六十六歳。広島市で爆心地より二キロの自宅で被爆され、現在は被爆障害を持つ妹さんの面倒を見ながら、後遺症に苦しみながら静かに妹さんと肩を寄せ合って暮らしていらっしゃいます。右の視力ゼロ、左の視力は矯正で〇・二。母親も被爆をし、その上パーキンソン氏病も加わり、長年寝たきりの状態が続き、その看病と妹さんの面倒で心身ともにくたくたの連続。母親も病状が悪化し、つい最近死亡されました。Mさんは、「被爆はしたものの、よほど運がよかったのでしょう。こうして生き延びたのだから、幾ら苦しくても有意義に生きていきたい」、そうおっしゃいます。そう言われる物静かな言葉の端々に、この間背負ってきた言い知れぬ苦労がうかがえるのです。 山歩きが好きで、よく近くの山に出かけられるそうですが、「このごろ、カワトンボやチョウなど、昆虫がほとんど見られなくなった。自然がこんなに壊れてよいのでしょうか。昆虫であっても、命のとうとさには変わりはない。人間ならば、なおさら大切ではないでしょうか。だからこそ私は戦争の怖さ、平和の大切さを多くの人々に知ってもらいたいと思い、十数年前からこうして被爆体験記をつくるため聞き取り作業にこつこつ頑張ってきているのです」とも語っておられるのです。
 Mさんは、日高郡内の被爆者を一人一人訪問し、生活相談や書類手続の援助、健診に来ていない人への働きかけ、医療機関への働きかけなど、さらには県被団協の理事としての活動も加わり、これらすべてがボランティア活動なのです。
 最後に、「今、何が一番の希望ですか」と聞いてみました。ぽつりとMさんは、「ゆっくり眠りたいです」。私は、この短い一言から、Mさんの核兵器廃絶、平和への熱い思いがひしひしと伝わってきたのです。
 また、被爆体験記の中で西牟婁郡の茶木さんという被爆者は、「悪夢のような一瞬は過ぎたものの、四十年を過ぎたきょうまで、一日として安心した日々を送ることはできず、また子供ができれば、その子供に影響が出るのではないかと一生心に苦しみの日夜を過ごさねばならないのかと思えば、悲運であった自分が残念でなりません。この苦しみは、二度と後々の人たちに与えてはならないことを願ってやみません」と、切々と訴えておられます。
 そこで、被爆者の健康と生活について当局がその状況をどのように具体的に把握されているのか、お聞かせいただきたいと思います。
 さらに、健康管理手当の申請における問題であります。
 寝たきり状態にある被爆者の場合においても、必ず本人が指定病院に受診することが義務づけられています。そういった現状がありますが、これを往診による診察と検査の実施というように改善はできないものか、その改善の方向についてお答えいただければありがたいです。
 あと一点、原爆被災者の会への助成金の増額でございます。
 現在でも年間十万円を援助していただいているところですが、高齢化が進む中で、子供や孫の現在や将来の問題など、被爆者相談を初めとした多岐にわたる活動を展開していきたいと願っていらっしゃいます。他府県と比較しても決して高額とは言えない現状ですから、ぜひ増額をしていただきたいと思います。保健環境部長の御所見をお聞かせください。
 次に老人問題について、今回、とりわけ老人への差別医療を中心にお尋ねをしてまいりたいと思います。
 今、高齢者は安心して医療を受けることができないというのがお年寄りのいる家庭では共通した深刻な悩みとなっているのではないでしょうか。高齢者対策を口実として消費税の存続を図ろうとする政府・自民党にとって、我が国の老人医療はアキレス腱とも言うべき存在になっています。
 世界に類を見ない差別的な老人医療の実態は、高齢者対策のための消費税というごまかしをだれの目にもわかりやすくするものであります。このことは、昨年十月十二日、衆議院予算委員会における我が党の不破委員長が、具体的事実に基づいて、今の日本の老人医療が抱える深刻な問題をわかりやすく明らかにしたところです。
 老人保健法の対象となる七十歳以上のお年寄りは、老後不安として、健康に関する不安を挙げる人が八五・七%にも達しているのであります。そして国民の健康状態を示す有病率は、高齢者において上昇が顕著であります。
 近年、お年寄りの自殺が極めてふえております。その原因は圧倒的に病苦であることが警察庁の調査結果にもあらわれておりまして、六十五歳以上の自殺原因の七三・五%、女性の七六・六%と記録をされています。さらに見逃せないのは、健康破壊が経済生活の破壊につながるということであります。
 こうしたことから考えますと、特に高齢者にとっては行き届いた医療と費用の心配のない医療が必要であり、これは今、お年寄りの強い願いだと思うのです。
 ところが、老人をめぐる医療・保健制度の経過を見てみますと、一九七〇年代には革新自治体の誕生と全国に広がった国民の運動によって老人医療費の無料化が次々実現し、ついに一九七三年一月からは、その老人の無料化が国の制度として実現しました。当時は、今日見るような、高齢者を制度的に差別して冷たく扱うということはありませんでした。しかし、医療費を低く抑えるために、一九八三年二月には老人医療の有料化の強行、八月には老人保健法を新設し、さらに老健法に基づいて老人病院や老人保険点数を新設いたしました。引き続き一九八七年一月、老人保健法の改悪によって患者負担の値上げと老人保健施設を新設し、翌年一九八八年には保険点数の改定を行いました。そして本年四月から老人保健法をさらに改悪し、長期入院患者から給食費など生活費の徴収、また在宅医療の推進など、老人追い出しの強化を図ると同時に、新たな差別による老人医療が推し進められようとしています。その特徴的な一つが診療保険点数の改悪であります。
 例えば、その一つは高齢者を歓迎しない保険点数の差別であり、老人は家庭で病気を治すようにし、長期の入院はさせないようにしたことです。中でも問題は、入院医療費の場合、一般病院では入院料の中心である医学管理料は、最初の一週間は一日につき四千六十円でありますが、一カ月から二カ月では半分以下の千九百五十円、さらに一年を過ぎると四分の一にも足りない九百十円に切り下げられてしまいます。こうしたことが慢性疾患による老人患者の長期入院を許さない仕組みとして働くのです。これが老人病院になりますと、一日の入院時医学管理料は極端に低く、最初の一カ月は二千五百円、それを過ぎると千七百円、一年を過ぎると八百五十円に大幅に削られてしまいます。ですから、病院はお年寄りの患者を入院させておきたくても、とても入れておくことはできないのです。
 さらに老人医療は、薬や点滴注射はなるべくしないようにし、日常生活の指導を中心に切りかえるというわけです。その例えを申しますと、一般の患者に点滴注射をすれば七百五十円支払われるのに、お年寄りの患者には二百円なのです。また、床ずれの処置は、一般患者の場合、その都度傷口の大きさによって二百八十円から五百六十円が支払われますけれども、お年寄りの患者の場合には、入院期間が一年過ぎると、床ずれの大きさや処置した回数にかかわらず一日一回二百十円しか支払われないのです。寝たきりのお年寄りの場合は失禁などで床ずれの傷口を汚すことが大変多いわけですが、そんなときでも、何回かえたとしても二百十円なのです。さらに、慢性の病気が続く、治りが遅いお年寄りの入院料を週間刻み、月刻みで安くしていって病院にいられないように、今申しましたように床ずれの処置さえも大幅に切り下げるなどということは、まさに老人泣かせの保険点数という以外の何物でもありません。
 まともな医療もない、格下げされた二種類の老人病院を新たにつくったことも、その一つです。それは、医者も看護婦も、一般病院よりもはるかに少ない基準で保険点数を低く切り詰め、治療についても制限された病院であり、まさしく収容施設と言わざるを得ません。老人保健施設の医療費は施設療養費として決められ、患者は、食費、おむつ代など、自己負担が強制されています。
 昔は、皆さん、老人を山へ捨てるという話がありました。今は、政府が老人保健法という悪法をつくり、病院から老人を締め出して在宅医療へと追いやっているのではないでしょうか。しかし、老人が追い出される先は、若い人たちが働かなければ生活できず、介護できる家族もなければ病気を治す家もないという状態でありますから、老人も家族も大変な不安と苦しみを強いられているのが現実です。
 このように、在宅療養の条件が整っていない現状では、病気の老人が安心して自宅で過ごせるとはとても考えられません。
 かつて、大蔵大臣であった渡辺美智雄さんは、「乳牛は乳が出なくなったら屠殺場に送る。人間も、働かなくなったなら死んでいただくと大蔵省は大変助かる」と暴言を吐かれましたが、まさにそれを地でいくような人権無視と言わなければなりません。
 そこで保健環境部長にお尋ねをいたしますが、県下の一般病院における老人の入院割合及び入院期間についてお答えください。また、保険点数のあり方から見た医療について、その所見をお聞かせください。
 次に、民生部にお尋ねをいたします。このほど、高齢者保健福祉推進十カ年戦略が発表されました。これは、とりわけ在宅福祉を推進するための具体的施策の目標でありましょう。本県はこれらを具体的に実現するため、在宅医療と介護体制及び地域ネットワークづくりをどのようにされるのか、お聞かせいただきたいと思います。
 最後に商工労働部長に、県労働行政の姿勢についてお尋ねを申し上げます。
 私自身、長い間、看護婦として、また労働組合の委員長として活動をしてまいりました。そういった関係から、県の労働行政にはとりわけ強い関心を持ってまいっております。
 御承知のように、医療関係労働者は劣悪な労働条件のもとで一生懸命働いておりますし、民間個人病院の医療労働者は、ほとんど未組織労働者であります。
 例えばT産婦人科の問題について申し上げますれば、「採用時の約束と労働条件が違う」と申し立てただけで首を切られ、ある労働団体に相談しても「もう退職金を受け取っているのだから、だめですよ」と相手にもしてもらえず、医療労働組合連合会に相談に来て、裁判闘争で闘い、裁判所のあっせんで当初の退職金に大幅に上乗せをして和解した事件であります。
 また、W病院で最近起きた首切り問題は、職員が労働組合をつくった途端に、それに協力的だった、長年勤めてきた先輩の看護婦さんの首を切った問題です。この看護婦さんは、医療労働組合連合会とともに裁判闘争を闘い、職場復帰をかち取りました。
 このように、組合もない、組合ができても理事者の横暴がまかり通るような職場で働いている労働者を守るのが労働行政の仕事ではないでしょうか。
 こうした中で、中央、地方労働委員会の役割は大変重要であります。本県地労委も、その一定の役割を果たしてこられました。全国的には中央労働委員会委員、地方労働委員会委員の選任問題が起こり、不公正な選任をめぐって裁判闘争も行われています。
 和歌山での地労委委員問題の経過を振り返ってみますと、最近までは、県地評二名、同盟二名、県労懇一名という配分になっています。その後の中央の労働団体の再編成に伴い、県地評、連合という二つの労働団体が並び立つことになり、これまでの経過を踏まえた場合、片方の労働団体が地労委委員を独占するなどというようなことになれば公正な労働行政とは言えず、今までの県地労委の果たしてきた役割から見ても、大きく後退することになります。
 同時に申し上げておきたいことは、地労委に提訴されるような問題は県地評傘下で多く起こっているということであります。
 最近では、有田交通、湯浅自動車学校の問題が和歌山で審査された大きな問題でありますが、国労の問題が大阪地労委で審査され、組合の申し立てをほぼ全面的に認めた命令を下したことは御承知の事実です。それとともに、地労委に提訴されずに裁判闘争が行われたものとして、塩屋自動車学校の問題、冒頭紹介いたしました問題を含めてW病院の二件、T病院の問題などがあり、まだ係争中のものもありますが、うち三件は裁判所も申立人の言い分を入れて調停をしております。
 以上の点を勘案の上、今までのように今後とも、県地評と連合の二つの労働団体に分かれたという状況のもとでも公正、民主的な労働行政を推進されることが望ましいと思うわけでありますが、御所見をお聞かせ願いたいと思います。
 以上で、第一回の質問を終わらせていただきます。
○議長(門 三佐博君) ただいまの村岡キミ子君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 村岡キミ子議員にお答え申し上げます。
 援護法制定に対する知事の基本的な考え、そしてまたいまだに実現しない原因は何かということでございます。
 私も原爆被爆者の多数の皆さんからいろいろ承り、その苦労している実情を十分把握しているところでございます。
 被爆者の皆さんの健康管理、また生活の安定等につきましては、なお一層援護対策の充実が望まれると思っております。県としましても、国家補償の精神に基づいた被爆者対策の充実を引き続き国に対し、強く今後とも要望してまいりたいと思います。
 御指摘の被爆法の制定につきましては、国では他の戦争被災者や遺族等と不均衡を生ずることから非常に難しいということを聞いております。
 以上です。
○議長(門 三佐博君) 保健環境部長尾嵜新平君。
 〔尾嵜新平君、登壇〕
○保健環境部長(尾嵜新平君) お答え申し上げます。
 最初に、被爆者援護法関連の御質問についてお答えを申し上げます。
 原爆被爆者手帳を現在お持ちの方は、昭和六十三年度末で本県では五百二十七名でございます。そのうち、運動器障害、循環器機能障害等の疾患を有して健康管理手当を受給されている方は、三百四十名、約六五%でございます。実態といたしまして、高齢化が進み、健康に不安を持っている方が多いこと、また生活面についても、昭和六十年に実施された原子爆弾被爆者実態調査により、収入等が一般に比して低い状況にあるというふうに認識いたしております。
 次に、健康管理手当に係る申請手続についての御質問でございますが、医師の診断書を添付して申請していただくことになっておりまして、この場合、例えば血液採取による検査等、往診で可能なものについては御本人が病院等へ行かなくとも申請ができるのではないかと考えております。
 なお、エックス線検査等、検査機器による診断を要する場合には医療機関で受診をお願いせざるを得ないということでございますので、御了承をお願い申し上げます。
 次に、県の原爆被災者の会への助成金の増額についてお話がございましたが、平成二年度においては、補助金十万円のほかに、四十五周年記念として慰霊祭のための補助金を別途計上させていただいておりますので、御理解をお願い申し上げます。
 二番目に、老人医療についての御質問にお答え申し上げます。
 県下の基準看護をとらない病院──これは五十五病院で調査をいたした結果でございますが──七十歳以上の老人の方の入院割合というのは昭和六十三年度において約四七%という結果が出ており、その平均在院日数は約七十二日程度となっております。
 また、保険点数のあり方から見た医療についての御質問でございますが、老人診療報酬点数は、医師や看護婦等、職員のより合理的、効果的な配置活用と介護を充実して慢性疾患の老人にふさわしい医療が行えるようにし、医療の適正化を図るものでございます。県といたしましては、病院、老人保健施設等の設備整備、保健所における訪問看護等、老人の方々の個々の病状に応じて適切なサービスが受けられるよう、その体制の確保に努めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(門 三佐博君) 民生部長高瀬芳彦君。
 〔高瀬芳彦君、登壇〕
○民生部長(高瀬芳彦君) 在宅医療、介護体制の強化と地域ネットワークづくりについてでございますが、介護を必要とする高齢者に対し、そのときどきの状況に応じて最も適切なサービスを選択・提供できるような体制づくりを行っていくことが基本的に重要な問題と考えてございます。
 このため、介護の最も基本的なサービスである家庭奉仕員の派遣事業について、緊急かつ大幅な拡充を進めているところでございますが、さらに住民に最も身近な市町村において福祉、保健、医療の各種サービスの連携・調整がとれるよう、全市町村におけるサービス調査チームの設置を指導しているところでございます。
 また、平成二年度から整備を予定している在宅介護支援センターについても同様の機能を持たせたいと考えております。
 こうした福祉面での対応のほか、例えば訪問看護といった医療面の対策も家庭介護支援のための重要な手だてであると考えており、関係部局とも相談をしながら、医療、福祉など、専門チームがそのときどきの状況に応じて的確に対応するチームケアの考え方に立って個々のサービスの充実とその連携に努めてまいる所存であります。
 なお、こうした基本的な考え方については、この一月に策定した県の長寿社会総合対策指針においてもお示ししているところでございます。
 以上でございます。
○議長(門 三佐博君) 商工労働部長天谷一郎君。
 〔天谷一郎君、登壇〕
○商工労働部長(天谷一郎君) まず、労働行政はすべての労働者の福祉の向上にあると考えてございます。
 お話のございました地方労働委員会の労働者委員の選任につきましては、労働組合の産業別、組合員数等を総合的に考慮しながら進めてまいりたいと考えてございます。
○議長(門 三佐博君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 41番村岡キミ子君。
○村岡キミ子君 今、答弁をいただいたわけですけれども、知事は、考え方としては昨年と同じ答弁ということが言えるというふうに思います。国の補償ということで、位置づけはそうされているわけですけれども。しかし、なぜ──今知事は、被爆者の皆さんたちともお会いをして、その実情については十分存じ上げているとおっしゃいました。全国知事会などで論議をされていると思うわけですけれども、しかし、私がるる申し上げてきましたように、被爆者の皆さんたちの願いというのは、この被爆後四十五年も続いています。制度として被爆二法ができてからでも、もうはるかに時期は過ぎてきているわけです。そして、毎年毎年千人以上の皆さんたちがこの被爆障害のために亡くなっていらっしゃる。また、がんが大変多く発生をしているということはだれが見ても明らかな状況ですから、私たちは、この四十五周年を迎えた今、国が本当に決意をしてやる時期じゃないかと強く思うわけです。
 今、知事の答弁において、国では一般の戦争被害者と被爆被害者を同列視しているというふうに私は受け取りました。原爆というのは、先ほど申しましたように政府自身がアメリカに対して抗議文を厳しくやっていること、そして原爆そのものが非道きわまりないもの、世界的にも毒ガスは使ってはいけないという、それ以上の被害をもたらすものであるということを明らかにして抗議していながらでも、いまだに政府がこれを実現しない。それは何が一番原因かと言いますと、昭和五十五年の厚生大臣私的諮問機関である原爆被爆者対策基本問題懇談会の意見が基本になっているわけです。知事はこのことを明らかにされて答弁をなさいませんでしたけれども、日本の政府がこの被爆者援護法の制定を拒否しているのは、この基本懇の姿にあると思うわけです。
 皆さんに、この基本懇の中身をぜひ知っていただきたいと思います。ここにちょっとその文章がありますので、紹介させていただきます。
 「広島及び長崎における原爆投下は、歴史はじまって以来初めて人類に対して原爆の恐るべき威力を発揮したものであり、これによる原爆被害は悲惨きわまりないものであった。すなわち、その無警告の無差別的奇襲攻撃により、前代未聞の熱線、爆風及び放射線が瞬間にして、広範な地域にわたり多数の尊い人間の生命を奪い、健康上の障害をもたらし、人間の想像を絶した地獄を現出した」、こういうふうに認めていながら、しかし「およそ戦争という国の存亡をかけての非常事態のもとにおいては、国民がその生命・身体・財産等について、その戦争によって何らかの犠牲を余儀なくされたとしても、それは、国をあげての戦争による『一般の犠牲』として、すべての国民がひとしく受忍しなければならないところであって、政治論として、国の戦争責任等を云々するのはともかく、法律論として、開戦、講和というような、いわゆる政治行為(統治行為)について、国の不法行為責任など法律上の責任を追及し、その法律的救済を求める途は開かれていないというほかはない」。
 まさしくこの基本懇は、被爆者に対する、そして国民の願いに反するものを出したという以外にないと思うんです。これが、今、国の被爆者援護法を拒否している最大の理由でありますから、知事もそういうふうにお考えになっていらっしゃるとするならば、五百二十七名にも上る和歌山県の被爆者に対する大きな問題だと私は思うわけです。そういった点からも知事、もう一回、今の被爆者の現状、この問題を本当に真剣にとらえることが必要だろうと思います。
 また、六十一年八月十五日に、被爆者の皆さんたちがかたく口をつぐんでいたことを勇気を奮って書かれた「語りつがねばならないこと」という本が出されましたが、ここの最初のところに、知事、あなたはこの発刊に当たって、本当に大変なことだ、よく勇気を奮って書いてくれました、この発刊に当たって敬意を表しますというふうに言っていらっしゃるではありませんか。あなたがこのことを本当に実践しようとするならば、今のような答弁はないと思うわけです。
 そういった点からも、私は、一日も早く知事が全国知事会議の中でも具体的にこの援護法を制定するに当たって行動をどう起こしていくのかということも含めて検討をしていただくよう、お願いをしておきたいと思います。
 被爆者に対しては、年末見舞い金の廃止も行われてきました。わずか年間に一人六千円でありましたけれども、しかし、これはもう一回復活してもいいんじゃないかと思うわけです。助成金そのものもわずかでありますから、こういった被爆者の皆さん方の生活を支えて健康の不安を取り除くための一つの方法としても、ぜひ年末見舞い金を復活さしていただくようお願いしたいと思います。
 県下では、この被爆者援護法をどうしてもつくってほしいという賛同署名に、県内五十市町村中、四十一市町村の市町村長さんと議会の議長さんが署名をしていらっしゃいます。そして、カンパを寄せられた方々もいらっしゃいます。こういった状況から見てみましても、今、援護法の制定が何としてでも必要だというふうに強く思いますので、重ねてお願いをしておきます。
 それから、老人医療の問題についてお願いをしておきたいと思います。
 私は、この問題について細かにしたいので、厚生常任委員会の中でも改めて取り上げさせていただきたいと思います。
 ここでは老人問題についてでありますけれども、差別医療がくまなく今後ますます強められていくという状況のもとで、昨年の一月から十二月までの間に民医連の生協病院に入院相談──これはあくまでも、施設に入っていたり、あるいは一般の病院、公的病院に入院していて、どうしても生協病院へ入れてほしいと言って電話や家族の皆さんたちが直接来て相談された内容です。件数としては、この一月から十二月までの間に四十一件の電話や訪れて相談をされた方があります。そして、この四十一件のうち、六十一歳以上の患者さんの問題での相談は三十五件、それからほかへ入院中で相談してきたのは、これはもう全部です。
 その内容を見てみますと、病院で付き添いが必要だけれども付き添われないということとか、付き添いをつけているけれども、高くてとても長く雇えない──大体一日一万円から一万一千円の付き添い料が要るということです──そして退院を言われているけれども、おうちへ帰ってもだれも介護する者がいないんだ、それから、退院を病院から再三言われているので何とか引き取ってもらえないだろうかとか、それとあわせて、長くなっている患者さんの方ですけれども、入院していてもほんまに検査もようしてもらわんし十分な治療がしてもらえないので生協病院で引き取ってもらえないだろうかといった問い合わせが多くあったということです。そして、これに対して生協病院はそれなりに、入院していらっしゃる患者のところへ出向いて、その実態を見て判断するといったような状況をつくってきています。また、入院をさして引き取って、そして退院さして細かく家庭訪問をやりながら実現を果たしているというような状況もあります。
 こういった状況のもとで、今、お年寄りたちが病院から追い出しをされていく実態がたくさんあるわけですけれども、こういう差別医療が和歌山県下の中にも数限りなく今から起こってくるであろうし、今でも起こっているという事実をしっかりと受けとめていただきたいと思います。
 最後に労働行政の問題ですけれども、今、部長からお答えいただきました。私は、やはり公正でなくてはならないと思いますので、もう一回その点について、公正に行われるのかどうかということをお答えいただきたいと思います。
 以上です。
○議長(門 三佐博君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 村岡議員にお答え申し上げます。
 被爆者に対する対策につきまして、私は先ほど、県としては国家補償の精神に基づいた被爆者対策の充実を引き続き国に要望してまいりたいと答えたわけでございまして、できない理由については何かという質問がございましたから、それについて答弁させていただいた次第でございます。
○議長(門 三佐博君) 商工労働部長天谷一郎君。
 〔天谷一郎君、登壇〕
○商工労働部長(天谷一郎君) 先ほども申しましたように、すべての労働者の福祉の向上ということを基本理念に対処してまいりたいと思います。
○議長(門 三佐博君) 答弁漏れはありませんか。──以上で、村岡キミ子君の質問が終了いたしました。

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