平成2年2月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(全文)


県議会の活動

 平成二年 和歌山県議会二月定例会会議録 第 五 号
 
 三月 十三日 (火曜日) 午前 十時 五分 開議
 午後 二時三十二分 散会
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議 事 日 程 第五号
 平成二年三月十三日(火曜日)
 午前十時開議
 第一 議案第一号から議案第七十号まで及び報第一号から報第四号まで(質疑)
 第二 一般質問
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本日の会議に付した事件
 第一 議案第一号から議案第七十号まで及び報第一号から報第四号まで(質疑)
 第二 一般質問
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出 席 議 員(四十四名)
 1 番 井 出 益 弘 君
 2 番 和 田 正 一 君
 3 番 町 田 亘 君
 4 番 中 村 利 男 君
 5 番 山 本 一 君
 6 番 宗 正 彦 君
 7 番 岡 本 保 君
 8  番 鈴 木 俊 男 君
 9 番 阪 部 菊 雄 君
 10 番 中 村 裕 一 君
 11 番 平 越 孝 哉 君
 12 番 大 江 康 弘 君
 13 番 中 西 雄 幸 君
 14 番 橋 本 進 君
 15 番 古 田 新 蔵 君
 16 番 浦 武 雄 君
 17 番  堀 本 隆 男 君
 18 番 宇治田   栄 蔵 君
 19 番 下 川 俊 樹 君
 20 番 石 田 真 敏 君
 21 番 木 下 秀 男 君
 22 番 中 村 隆 行 君
 23 番 藁 科 義 清 君
 24 番 門 三佐博 君
 25 番 尾 崎 要 二 君
 27 番 木 下 義 夫 君
 28 番 上野山 親 主 君
 30 番 尾 崎 吉 弘 君
 31 番 西 本 長 浩 君
 32 番 岸 本 光 造 君
 33 番 松 本 貞 次 君
 34 番  浜 本  収 君
 35 番 和 田 正 人 君
 36 番 浜 口 矩 一 君
 37 番 山 崎 幹 雄 君
 39 番 田 中  実三郎   君
 40 番 森 利 一 君
 41 番 村 岡  キミ子   君
 42 番 森 本 明 雄 君
 43 番 中 村 博 君
 44 番 中 村 千 晴 君
 45 番 小 林 史 郎 君
 46 番 渡 辺 勲 君
 47 番 藤 沢 弘太郎 君
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欠 席 議 員(二名)
 26 番  那 須 秀 雄 君
 29 番 平 木 繁 実 君
〔備 考〕
 38 番 欠 員
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説明のため出席した者
 知 事 仮 谷 志 良 君
 副知事 西 口 勇 君
 出納長 梅 田 善 彦 君
 知事公室長 市 川 龍 雄 君
 総務部長 斉 藤 恒 孝 君
 企画部長 川 端 秀 和 君
 民生部長 高 瀬 芳 彦 君
 保健環境部長 尾 嵜 新 平 君
 商工労働部長 天 谷 一 郎 君
 農林水産部長 安 田 重 行 君
 土木部長 磯 村 幹 夫 君
 企業局長 吉 井 清 純 君
 以下各部次長・財政課長 
 教育委員会委員長
 上 野 寛 君
 教育長 高 垣 修 三 君
 以下教育次長
 公安委員会委員長
 西 本 貫 一 君
 警察本部長 井 野 忠 彦 君
 以下各部長
 人事委員会委員長
 寒 川 定 男 君
 人事委員会事務局長
 代表監査委員 宮 本 政 昭 君
 監査委員事務局長
 選挙管理委員会委員長
 稲 住 義 之 君
 選挙管理委員会書記長
 地方労働委員会事務局長
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職務のため出席した事務局職員
 事務局長 山 本 恒 男
 次 長 倉 本 辰 美
 議事課長 栗 本  貞 信
 議事課副課長 中 西 俊 二
 議事班長 高 瀬 武 治
 議事課主任 松 谷 秋 男
 議事課主事 石 井 卓
 総務課長 神 谷 雅 巳
 調査課長 阪 上 明 男
 (速記担当者)
 議事課主査 吉 川 欽 二
 議事課速記技師 鎌 田 繁
 議事課速記技師 中 尾 祐 一
 議事課速記技師 保 田 良 春
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 午前十時五分開議
○議長(門 三佐博君) これより本日の会議を開きます。
○議長(門 三佐博君) 日程第一、議案第一号から議案第七十号まで、並びに知事専決処分報告報第一号から報第四号までを一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 41番村岡キミ子君。
 〔村岡キミ子君、登壇〕(拍手)
○村岡キミ子君 おはようございます。
 お許しをいただきましたので、早速、質問を申し上げてまいります。
 まず最初に、被爆者援護法制定の実現についてお尋ねを申し上げます。
 この問題は、これまで二回にわたって我が党県議団団長・藤沢議員が質問を重ねてまいったところでございますが、私は、被爆四十五年目を目前にして、県下の多くの被爆者の方々に直接お会いをいたしました。その被爆体験とその後の健康や生活についてお聞きをし、また和歌山県原爆被災者の会発行の「語りつがねばならないこと」を繰り返し読み進む中で、被爆者とその遺家族の皆さんの命をかけた心からの願いである援護法制定の実現は、今、高齢化が進むもとで一日も猶予できない状況に至っていることを強く思い、ここに質問をするものです。
 既に御承知のように、昨年十二月十五日、参議院本会議に野党共同で提出されていた国家補償に基づく原子爆弾被爆者等援護法案が可決されました。この法案は、国家補償の立場から、被爆者全員に対する年金支給や死没者の遺族への特別給付金支給など、現行の被爆者医療法、被爆者特別措置法の社会保障制度の枠を超えて補償を行うものであります。
 この三十余年にわたって核兵器廃絶とともに被爆者と原水禁運動の一貫した要求と闘いが、ここに初めて切り開いた歴史的、画期的な成果であります。これは、昨年、参議院選挙において自民党を過半数割れに追い込んだ結果でもありましょう。しかし自民党は、衆議院では一切の審議を行わないまま即日廃案にしたばかりか、海部首相以下七人の閣僚の援護法賛同署名について「知らない」、「やっていない」などと言い、閣議で撤回まで決めるという、裏切りとうそで国民の意思の反映であるこの法案を葬ったことは大変残念でなりませんし、新たな怒りを感じるのは私だけではないでしょう。
 先日、私のところに、広島、長崎に原爆が投下された直後の八月十日、当時の鈴木貫太郎首相が日本政府として、スイス政府を通じ、米国政府・トルーマン大統領に送った抗議文が届けられました。以下、その抗議分の一部を御紹介させていただきますが、何せ、私が三歳のときの文章でありますので、皆さん方に十分御理解できるように読めるかどうか大変不安でありますが、紹介を申し上げます。
 米機の新型爆弾による攻撃に対する抗議文(昭和二十年八月十日)
 本月六日米国航空機は広島市の市街地区に対し新型爆弾を投下し、瞬時にして多数の市民を殺傷し同市の大半を壊滅せしめたり。広島市は何ら特殊の軍事的防備乃至施設を施しおらざる普通の一地方都市にして同市全体として一つの軍事目標たるの性質を有するものに非ず─中略─米国政府は今次世界の戦乱勃発以来再三にわたり毒ガス乃至その他の非人道的戦争方法の使用は文明社会の輿論により不法とせられおれりとし、相手国側において、まずこれを使用せざる限り、これを使用することなかるべき旨声明したるが、米国が今回使用したる本件爆弾は、その性能の無差別かつ残虐性において、従来かかる性能を有するが故に使用を禁止せられおる毒ガスその他の兵器を遙かに凌駕しおれり。米国は国際法及び人道の根本原則を無視して、すでに広範囲にわたり帝国の都市に対して無差別爆撃を実施し来り多数の老幼婦女子を殺傷し神社仏閣学校病院一般民家などを倒壊又は焼失せしめたり。而して今や新奇にしてかつ従来のいかなる兵器投射物にも比し得ざる無差別性残虐性を有する本件爆弾を使用せるは人類文化に対する新たなる罪状なり。帝国政府は自らの名においてかつまた全人類及び文明の名において米国政府を糾弾すると共に即時かかる非人道的兵器の使用を放棄すべきことを厳重に要求す。
 おわかりいただけたでしょうか。これを要約いたしますと、広島市を一瞬のうちに壊滅させた米国の新型爆弾は、その無差別性、残虐性において国際的に使用禁止となっている毒ガスをはるかに上回る恐ろしい兵器であり、これを使用した米国に対し、全人類と文明の名において糾弾するとともに、かかる非人道的兵器を直ちに放棄することを厳しく要求すると結んでいるのであります。
 私は、この抗議が原爆投下直後に行われたことからして、重要で、かつ貴重な文書であると思うのであります。したがって、今日なお被爆の後遺症と社会的、経済的に苦しみ続けている被爆者と全国民の願いである援護法の早急な実現のために、この趣旨が十分生かされなければならないと考えるのであります。皆さん、いかがでしょう。
 知事にお尋ねをいたします。
 援護法の基本は、人類が二度とあの過ちを繰り返さないためのとりでを築くことですから、原爆被害に対する国としての償いだと思います。被害に関する補償は同じ被害を起こさないための第一歩であり、援護法は、国が原爆被害への補償を行うことによって核戦争被害を受忍させない制度を築き、国民の核戦争を拒否する権利を打ち立てるものであります。さらに援護法の制定は、在外被爆者、外国人被爆者、そして核実験被害者などに対する補償制度の根幹をなすものでもあります。また、一般市民の戦争被害に対する補償に道を開くものだと考えます。
 日本は唯一の被爆国でもありますから、国際的に責任を果たす上からも、援護法の制定によって核兵器否定の理念を確立することが何よりも緊急課題だと心から思います。
 そこで知事にお尋ねいたしますが、知事の基本的な考え方とあわせて、いまだに実現しない原因がどこにあるのか、お聞かせいただきたいと思います。
 続いて、保健環境部長にお尋ねをいたします。
 本県には、被爆者健康手帳所持者が六十三年度で五百二十七名おられるわけですが、被爆者と遺家族の皆さんは四十五年たった今も被爆後遺症に悩まされ、今後も、生きている限り毎日が不安と苦しみに耐え続けなければならない実情にあります。被爆体験のない私には、想像することは容易ではありません。
 「あの日のことは思い出したくない。しゃべりたくない。そっとしておいてほしい」と、かたく閉ざした心に勇気を奮い立たせて五十五名の皆さんが被爆体験記に語り継がれました。身をもって体験した心からの訴えに、私の胸は張り裂ける思いがいたしております。
 私は、一週間前、みずからも被爆者であり、被爆体験記づくりに頑張っていらっしゃる日高町のMさんにお会いすることができました。
 Mさんは、現在六十六歳。広島市で爆心地より二キロの自宅で被爆され、現在は被爆障害を持つ妹さんの面倒を見ながら、後遺症に苦しみながら静かに妹さんと肩を寄せ合って暮らしていらっしゃいます。右の視力ゼロ、左の視力は矯正で〇・二。母親も被爆をし、その上パーキンソン氏病も加わり、長年寝たきりの状態が続き、その看病と妹さんの面倒で心身ともにくたくたの連続。母親も病状が悪化し、つい最近死亡されました。Mさんは、「被爆はしたものの、よほど運がよかったのでしょう。こうして生き延びたのだから、幾ら苦しくても有意義に生きていきたい」、そうおっしゃいます。そう言われる物静かな言葉の端々に、この間背負ってきた言い知れぬ苦労がうかがえるのです。 山歩きが好きで、よく近くの山に出かけられるそうですが、「このごろ、カワトンボやチョウなど、昆虫がほとんど見られなくなった。自然がこんなに壊れてよいのでしょうか。昆虫であっても、命のとうとさには変わりはない。人間ならば、なおさら大切ではないでしょうか。だからこそ私は戦争の怖さ、平和の大切さを多くの人々に知ってもらいたいと思い、十数年前からこうして被爆体験記をつくるため聞き取り作業にこつこつ頑張ってきているのです」とも語っておられるのです。
 Mさんは、日高郡内の被爆者を一人一人訪問し、生活相談や書類手続の援助、健診に来ていない人への働きかけ、医療機関への働きかけなど、さらには県被団協の理事としての活動も加わり、これらすべてがボランティア活動なのです。
 最後に、「今、何が一番の希望ですか」と聞いてみました。ぽつりとMさんは、「ゆっくり眠りたいです」。私は、この短い一言から、Mさんの核兵器廃絶、平和への熱い思いがひしひしと伝わってきたのです。
 また、被爆体験記の中で西牟婁郡の茶木さんという被爆者は、「悪夢のような一瞬は過ぎたものの、四十年を過ぎたきょうまで、一日として安心した日々を送ることはできず、また子供ができれば、その子供に影響が出るのではないかと一生心に苦しみの日夜を過ごさねばならないのかと思えば、悲運であった自分が残念でなりません。この苦しみは、二度と後々の人たちに与えてはならないことを願ってやみません」と、切々と訴えておられます。
 そこで、被爆者の健康と生活について当局がその状況をどのように具体的に把握されているのか、お聞かせいただきたいと思います。
 さらに、健康管理手当の申請における問題であります。
 寝たきり状態にある被爆者の場合においても、必ず本人が指定病院に受診することが義務づけられています。そういった現状がありますが、これを往診による診察と検査の実施というように改善はできないものか、その改善の方向についてお答えいただければありがたいです。
 あと一点、原爆被災者の会への助成金の増額でございます。
 現在でも年間十万円を援助していただいているところですが、高齢化が進む中で、子供や孫の現在や将来の問題など、被爆者相談を初めとした多岐にわたる活動を展開していきたいと願っていらっしゃいます。他府県と比較しても決して高額とは言えない現状ですから、ぜひ増額をしていただきたいと思います。保健環境部長の御所見をお聞かせください。
 次に老人問題について、今回、とりわけ老人への差別医療を中心にお尋ねをしてまいりたいと思います。
 今、高齢者は安心して医療を受けることができないというのがお年寄りのいる家庭では共通した深刻な悩みとなっているのではないでしょうか。高齢者対策を口実として消費税の存続を図ろうとする政府・自民党にとって、我が国の老人医療はアキレス腱とも言うべき存在になっています。
 世界に類を見ない差別的な老人医療の実態は、高齢者対策のための消費税というごまかしをだれの目にもわかりやすくするものであります。このことは、昨年十月十二日、衆議院予算委員会における我が党の不破委員長が、具体的事実に基づいて、今の日本の老人医療が抱える深刻な問題をわかりやすく明らかにしたところです。
 老人保健法の対象となる七十歳以上のお年寄りは、老後不安として、健康に関する不安を挙げる人が八五・七%にも達しているのであります。そして国民の健康状態を示す有病率は、高齢者において上昇が顕著であります。
 近年、お年寄りの自殺が極めてふえております。その原因は圧倒的に病苦であることが警察庁の調査結果にもあらわれておりまして、六十五歳以上の自殺原因の七三・五%、女性の七六・六%と記録をされています。さらに見逃せないのは、健康破壊が経済生活の破壊につながるということであります。
 こうしたことから考えますと、特に高齢者にとっては行き届いた医療と費用の心配のない医療が必要であり、これは今、お年寄りの強い願いだと思うのです。
 ところが、老人をめぐる医療・保健制度の経過を見てみますと、一九七〇年代には革新自治体の誕生と全国に広がった国民の運動によって老人医療費の無料化が次々実現し、ついに一九七三年一月からは、その老人の無料化が国の制度として実現しました。当時は、今日見るような、高齢者を制度的に差別して冷たく扱うということはありませんでした。しかし、医療費を低く抑えるために、一九八三年二月には老人医療の有料化の強行、八月には老人保健法を新設し、さらに老健法に基づいて老人病院や老人保険点数を新設いたしました。引き続き一九八七年一月、老人保健法の改悪によって患者負担の値上げと老人保健施設を新設し、翌年一九八八年には保険点数の改定を行いました。そして本年四月から老人保健法をさらに改悪し、長期入院患者から給食費など生活費の徴収、また在宅医療の推進など、老人追い出しの強化を図ると同時に、新たな差別による老人医療が推し進められようとしています。その特徴的な一つが診療保険点数の改悪であります。
 例えば、その一つは高齢者を歓迎しない保険点数の差別であり、老人は家庭で病気を治すようにし、長期の入院はさせないようにしたことです。中でも問題は、入院医療費の場合、一般病院では入院料の中心である医学管理料は、最初の一週間は一日につき四千六十円でありますが、一カ月から二カ月では半分以下の千九百五十円、さらに一年を過ぎると四分の一にも足りない九百十円に切り下げられてしまいます。こうしたことが慢性疾患による老人患者の長期入院を許さない仕組みとして働くのです。これが老人病院になりますと、一日の入院時医学管理料は極端に低く、最初の一カ月は二千五百円、それを過ぎると千七百円、一年を過ぎると八百五十円に大幅に削られてしまいます。ですから、病院はお年寄りの患者を入院させておきたくても、とても入れておくことはできないのです。
 さらに老人医療は、薬や点滴注射はなるべくしないようにし、日常生活の指導を中心に切りかえるというわけです。その例えを申しますと、一般の患者に点滴注射をすれば七百五十円支払われるのに、お年寄りの患者には二百円なのです。また、床ずれの処置は、一般患者の場合、その都度傷口の大きさによって二百八十円から五百六十円が支払われますけれども、お年寄りの患者の場合には、入院期間が一年過ぎると、床ずれの大きさや処置した回数にかかわらず一日一回二百十円しか支払われないのです。寝たきりのお年寄りの場合は失禁などで床ずれの傷口を汚すことが大変多いわけですが、そんなときでも、何回かえたとしても二百十円なのです。さらに、慢性の病気が続く、治りが遅いお年寄りの入院料を週間刻み、月刻みで安くしていって病院にいられないように、今申しましたように床ずれの処置さえも大幅に切り下げるなどということは、まさに老人泣かせの保険点数という以外の何物でもありません。
 まともな医療もない、格下げされた二種類の老人病院を新たにつくったことも、その一つです。それは、医者も看護婦も、一般病院よりもはるかに少ない基準で保険点数を低く切り詰め、治療についても制限された病院であり、まさしく収容施設と言わざるを得ません。老人保健施設の医療費は施設療養費として決められ、患者は、食費、おむつ代など、自己負担が強制されています。
 昔は、皆さん、老人を山へ捨てるという話がありました。今は、政府が老人保健法という悪法をつくり、病院から老人を締め出して在宅医療へと追いやっているのではないでしょうか。しかし、老人が追い出される先は、若い人たちが働かなければ生活できず、介護できる家族もなければ病気を治す家もないという状態でありますから、老人も家族も大変な不安と苦しみを強いられているのが現実です。
 このように、在宅療養の条件が整っていない現状では、病気の老人が安心して自宅で過ごせるとはとても考えられません。
 かつて、大蔵大臣であった渡辺美智雄さんは、「乳牛は乳が出なくなったら屠殺場に送る。人間も、働かなくなったなら死んでいただくと大蔵省は大変助かる」と暴言を吐かれましたが、まさにそれを地でいくような人権無視と言わなければなりません。
 そこで保健環境部長にお尋ねをいたしますが、県下の一般病院における老人の入院割合及び入院期間についてお答えください。また、保険点数のあり方から見た医療について、その所見をお聞かせください。
 次に、民生部にお尋ねをいたします。このほど、高齢者保健福祉推進十カ年戦略が発表されました。これは、とりわけ在宅福祉を推進するための具体的施策の目標でありましょう。本県はこれらを具体的に実現するため、在宅医療と介護体制及び地域ネットワークづくりをどのようにされるのか、お聞かせいただきたいと思います。
 最後に商工労働部長に、県労働行政の姿勢についてお尋ねを申し上げます。
 私自身、長い間、看護婦として、また労働組合の委員長として活動をしてまいりました。そういった関係から、県の労働行政にはとりわけ強い関心を持ってまいっております。
 御承知のように、医療関係労働者は劣悪な労働条件のもとで一生懸命働いておりますし、民間個人病院の医療労働者は、ほとんど未組織労働者であります。
 例えばT産婦人科の問題について申し上げますれば、「採用時の約束と労働条件が違う」と申し立てただけで首を切られ、ある労働団体に相談しても「もう退職金を受け取っているのだから、だめですよ」と相手にもしてもらえず、医療労働組合連合会に相談に来て、裁判闘争で闘い、裁判所のあっせんで当初の退職金に大幅に上乗せをして和解した事件であります。
 また、W病院で最近起きた首切り問題は、職員が労働組合をつくった途端に、それに協力的だった、長年勤めてきた先輩の看護婦さんの首を切った問題です。この看護婦さんは、医療労働組合連合会とともに裁判闘争を闘い、職場復帰をかち取りました。
 このように、組合もない、組合ができても理事者の横暴がまかり通るような職場で働いている労働者を守るのが労働行政の仕事ではないでしょうか。
 こうした中で、中央、地方労働委員会の役割は大変重要であります。本県地労委も、その一定の役割を果たしてこられました。全国的には中央労働委員会委員、地方労働委員会委員の選任問題が起こり、不公正な選任をめぐって裁判闘争も行われています。
 和歌山での地労委委員問題の経過を振り返ってみますと、最近までは、県地評二名、同盟二名、県労懇一名という配分になっています。その後の中央の労働団体の再編成に伴い、県地評、連合という二つの労働団体が並び立つことになり、これまでの経過を踏まえた場合、片方の労働団体が地労委委員を独占するなどというようなことになれば公正な労働行政とは言えず、今までの県地労委の果たしてきた役割から見ても、大きく後退することになります。
 同時に申し上げておきたいことは、地労委に提訴されるような問題は県地評傘下で多く起こっているということであります。
 最近では、有田交通、湯浅自動車学校の問題が和歌山で審査された大きな問題でありますが、国労の問題が大阪地労委で審査され、組合の申し立てをほぼ全面的に認めた命令を下したことは御承知の事実です。それとともに、地労委に提訴されずに裁判闘争が行われたものとして、塩屋自動車学校の問題、冒頭紹介いたしました問題を含めてW病院の二件、T病院の問題などがあり、まだ係争中のものもありますが、うち三件は裁判所も申立人の言い分を入れて調停をしております。
 以上の点を勘案の上、今までのように今後とも、県地評と連合の二つの労働団体に分かれたという状況のもとでも公正、民主的な労働行政を推進されることが望ましいと思うわけでありますが、御所見をお聞かせ願いたいと思います。
 以上で、第一回の質問を終わらせていただきます。
○議長(門 三佐博君) ただいまの村岡キミ子君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 村岡キミ子議員にお答え申し上げます。
 援護法制定に対する知事の基本的な考え、そしてまたいまだに実現しない原因は何かということでございます。
 私も原爆被爆者の多数の皆さんからいろいろ承り、その苦労している実情を十分把握しているところでございます。
 被爆者の皆さんの健康管理、また生活の安定等につきましては、なお一層援護対策の充実が望まれると思っております。県としましても、国家補償の精神に基づいた被爆者対策の充実を引き続き国に対し、強く今後とも要望してまいりたいと思います。
 御指摘の被爆法の制定につきましては、国では他の戦争被災者や遺族等と不均衡を生ずることから非常に難しいということを聞いております。
 以上です。
○議長(門 三佐博君) 保健環境部長尾嵜新平君。
 〔尾嵜新平君、登壇〕
○保健環境部長(尾嵜新平君) お答え申し上げます。
 最初に、被爆者援護法関連の御質問についてお答えを申し上げます。
 原爆被爆者手帳を現在お持ちの方は、昭和六十三年度末で本県では五百二十七名でございます。そのうち、運動器障害、循環器機能障害等の疾患を有して健康管理手当を受給されている方は、三百四十名、約六五%でございます。実態といたしまして、高齢化が進み、健康に不安を持っている方が多いこと、また生活面についても、昭和六十年に実施された原子爆弾被爆者実態調査により、収入等が一般に比して低い状況にあるというふうに認識いたしております。
 次に、健康管理手当に係る申請手続についての御質問でございますが、医師の診断書を添付して申請していただくことになっておりまして、この場合、例えば血液採取による検査等、往診で可能なものについては御本人が病院等へ行かなくとも申請ができるのではないかと考えております。
 なお、エックス線検査等、検査機器による診断を要する場合には医療機関で受診をお願いせざるを得ないということでございますので、御了承をお願い申し上げます。
 次に、県の原爆被災者の会への助成金の増額についてお話がございましたが、平成二年度においては、補助金十万円のほかに、四十五周年記念として慰霊祭のための補助金を別途計上させていただいておりますので、御理解をお願い申し上げます。
 二番目に、老人医療についての御質問にお答え申し上げます。
 県下の基準看護をとらない病院──これは五十五病院で調査をいたした結果でございますが──七十歳以上の老人の方の入院割合というのは昭和六十三年度において約四七%という結果が出ており、その平均在院日数は約七十二日程度となっております。
 また、保険点数のあり方から見た医療についての御質問でございますが、老人診療報酬点数は、医師や看護婦等、職員のより合理的、効果的な配置活用と介護を充実して慢性疾患の老人にふさわしい医療が行えるようにし、医療の適正化を図るものでございます。県といたしましては、病院、老人保健施設等の設備整備、保健所における訪問看護等、老人の方々の個々の病状に応じて適切なサービスが受けられるよう、その体制の確保に努めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(門 三佐博君) 民生部長高瀬芳彦君。
 〔高瀬芳彦君、登壇〕
○民生部長(高瀬芳彦君) 在宅医療、介護体制の強化と地域ネットワークづくりについてでございますが、介護を必要とする高齢者に対し、そのときどきの状況に応じて最も適切なサービスを選択・提供できるような体制づくりを行っていくことが基本的に重要な問題と考えてございます。
 このため、介護の最も基本的なサービスである家庭奉仕員の派遣事業について、緊急かつ大幅な拡充を進めているところでございますが、さらに住民に最も身近な市町村において福祉、保健、医療の各種サービスの連携・調整がとれるよう、全市町村におけるサービス調査チームの設置を指導しているところでございます。
 また、平成二年度から整備を予定している在宅介護支援センターについても同様の機能を持たせたいと考えております。
 こうした福祉面での対応のほか、例えば訪問看護といった医療面の対策も家庭介護支援のための重要な手だてであると考えており、関係部局とも相談をしながら、医療、福祉など、専門チームがそのときどきの状況に応じて的確に対応するチームケアの考え方に立って個々のサービスの充実とその連携に努めてまいる所存であります。
 なお、こうした基本的な考え方については、この一月に策定した県の長寿社会総合対策指針においてもお示ししているところでございます。
 以上でございます。
○議長(門 三佐博君) 商工労働部長天谷一郎君。
 〔天谷一郎君、登壇〕
○商工労働部長(天谷一郎君) まず、労働行政はすべての労働者の福祉の向上にあると考えてございます。
 お話のございました地方労働委員会の労働者委員の選任につきましては、労働組合の産業別、組合員数等を総合的に考慮しながら進めてまいりたいと考えてございます。
○議長(門 三佐博君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 41番村岡キミ子君。
○村岡キミ子君 今、答弁をいただいたわけですけれども、知事は、考え方としては昨年と同じ答弁ということが言えるというふうに思います。国の補償ということで、位置づけはそうされているわけですけれども。しかし、なぜ──今知事は、被爆者の皆さんたちともお会いをして、その実情については十分存じ上げているとおっしゃいました。全国知事会などで論議をされていると思うわけですけれども、しかし、私がるる申し上げてきましたように、被爆者の皆さんたちの願いというのは、この被爆後四十五年も続いています。制度として被爆二法ができてからでも、もうはるかに時期は過ぎてきているわけです。そして、毎年毎年千人以上の皆さんたちがこの被爆障害のために亡くなっていらっしゃる。また、がんが大変多く発生をしているということはだれが見ても明らかな状況ですから、私たちは、この四十五周年を迎えた今、国が本当に決意をしてやる時期じゃないかと強く思うわけです。
 今、知事の答弁において、国では一般の戦争被害者と被爆被害者を同列視しているというふうに私は受け取りました。原爆というのは、先ほど申しましたように政府自身がアメリカに対して抗議文を厳しくやっていること、そして原爆そのものが非道きわまりないもの、世界的にも毒ガスは使ってはいけないという、それ以上の被害をもたらすものであるということを明らかにして抗議していながらでも、いまだに政府がこれを実現しない。それは何が一番原因かと言いますと、昭和五十五年の厚生大臣私的諮問機関である原爆被爆者対策基本問題懇談会の意見が基本になっているわけです。知事はこのことを明らかにされて答弁をなさいませんでしたけれども、日本の政府がこの被爆者援護法の制定を拒否しているのは、この基本懇の姿にあると思うわけです。
 皆さんに、この基本懇の中身をぜひ知っていただきたいと思います。ここにちょっとその文章がありますので、紹介させていただきます。
 「広島及び長崎における原爆投下は、歴史はじまって以来初めて人類に対して原爆の恐るべき威力を発揮したものであり、これによる原爆被害は悲惨きわまりないものであった。すなわち、その無警告の無差別的奇襲攻撃により、前代未聞の熱線、爆風及び放射線が瞬間にして、広範な地域にわたり多数の尊い人間の生命を奪い、健康上の障害をもたらし、人間の想像を絶した地獄を現出した」、こういうふうに認めていながら、しかし「およそ戦争という国の存亡をかけての非常事態のもとにおいては、国民がその生命・身体・財産等について、その戦争によって何らかの犠牲を余儀なくされたとしても、それは、国をあげての戦争による『一般の犠牲』として、すべての国民がひとしく受忍しなければならないところであって、政治論として、国の戦争責任等を云々するのはともかく、法律論として、開戦、講和というような、いわゆる政治行為(統治行為)について、国の不法行為責任など法律上の責任を追及し、その法律的救済を求める途は開かれていないというほかはない」。
 まさしくこの基本懇は、被爆者に対する、そして国民の願いに反するものを出したという以外にないと思うんです。これが、今、国の被爆者援護法を拒否している最大の理由でありますから、知事もそういうふうにお考えになっていらっしゃるとするならば、五百二十七名にも上る和歌山県の被爆者に対する大きな問題だと私は思うわけです。そういった点からも知事、もう一回、今の被爆者の現状、この問題を本当に真剣にとらえることが必要だろうと思います。
 また、六十一年八月十五日に、被爆者の皆さんたちがかたく口をつぐんでいたことを勇気を奮って書かれた「語りつがねばならないこと」という本が出されましたが、ここの最初のところに、知事、あなたはこの発刊に当たって、本当に大変なことだ、よく勇気を奮って書いてくれました、この発刊に当たって敬意を表しますというふうに言っていらっしゃるではありませんか。あなたがこのことを本当に実践しようとするならば、今のような答弁はないと思うわけです。
 そういった点からも、私は、一日も早く知事が全国知事会議の中でも具体的にこの援護法を制定するに当たって行動をどう起こしていくのかということも含めて検討をしていただくよう、お願いをしておきたいと思います。
 被爆者に対しては、年末見舞い金の廃止も行われてきました。わずか年間に一人六千円でありましたけれども、しかし、これはもう一回復活してもいいんじゃないかと思うわけです。助成金そのものもわずかでありますから、こういった被爆者の皆さん方の生活を支えて健康の不安を取り除くための一つの方法としても、ぜひ年末見舞い金を復活さしていただくようお願いしたいと思います。
 県下では、この被爆者援護法をどうしてもつくってほしいという賛同署名に、県内五十市町村中、四十一市町村の市町村長さんと議会の議長さんが署名をしていらっしゃいます。そして、カンパを寄せられた方々もいらっしゃいます。こういった状況から見てみましても、今、援護法の制定が何としてでも必要だというふうに強く思いますので、重ねてお願いをしておきます。
 それから、老人医療の問題についてお願いをしておきたいと思います。
 私は、この問題について細かにしたいので、厚生常任委員会の中でも改めて取り上げさせていただきたいと思います。
 ここでは老人問題についてでありますけれども、差別医療がくまなく今後ますます強められていくという状況のもとで、昨年の一月から十二月までの間に民医連の生協病院に入院相談──これはあくまでも、施設に入っていたり、あるいは一般の病院、公的病院に入院していて、どうしても生協病院へ入れてほしいと言って電話や家族の皆さんたちが直接来て相談された内容です。件数としては、この一月から十二月までの間に四十一件の電話や訪れて相談をされた方があります。そして、この四十一件のうち、六十一歳以上の患者さんの問題での相談は三十五件、それからほかへ入院中で相談してきたのは、これはもう全部です。
 その内容を見てみますと、病院で付き添いが必要だけれども付き添われないということとか、付き添いをつけているけれども、高くてとても長く雇えない──大体一日一万円から一万一千円の付き添い料が要るということです──そして退院を言われているけれども、おうちへ帰ってもだれも介護する者がいないんだ、それから、退院を病院から再三言われているので何とか引き取ってもらえないだろうかとか、それとあわせて、長くなっている患者さんの方ですけれども、入院していてもほんまに検査もようしてもらわんし十分な治療がしてもらえないので生協病院で引き取ってもらえないだろうかといった問い合わせが多くあったということです。そして、これに対して生協病院はそれなりに、入院していらっしゃる患者のところへ出向いて、その実態を見て判断するといったような状況をつくってきています。また、入院をさして引き取って、そして退院さして細かく家庭訪問をやりながら実現を果たしているというような状況もあります。
 こういった状況のもとで、今、お年寄りたちが病院から追い出しをされていく実態がたくさんあるわけですけれども、こういう差別医療が和歌山県下の中にも数限りなく今から起こってくるであろうし、今でも起こっているという事実をしっかりと受けとめていただきたいと思います。
 最後に労働行政の問題ですけれども、今、部長からお答えいただきました。私は、やはり公正でなくてはならないと思いますので、もう一回その点について、公正に行われるのかどうかということをお答えいただきたいと思います。
 以上です。
○議長(門 三佐博君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 村岡議員にお答え申し上げます。
 被爆者に対する対策につきまして、私は先ほど、県としては国家補償の精神に基づいた被爆者対策の充実を引き続き国に要望してまいりたいと答えたわけでございまして、できない理由については何かという質問がございましたから、それについて答弁させていただいた次第でございます。
○議長(門 三佐博君) 商工労働部長天谷一郎君。
 〔天谷一郎君、登壇〕
○商工労働部長(天谷一郎君) 先ほども申しましたように、すべての労働者の福祉の向上ということを基本理念に対処してまいりたいと思います。
○議長(門 三佐博君) 答弁漏れはありませんか。──以上で、村岡キミ子君の質問が終了いたしました。
○議長(門 三佐博君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 30番尾崎吉弘君。
 〔尾崎吉弘君、登壇〕(拍手)
○尾崎吉弘君 政治を行う者にとりまして、また行政に携わる者にとりまして一番大切なことは、過去から現在そして未来へと流れていく時の流れの中で今どういう時点にあるのか、今何をしなければならないかということをはっきりと自覚することであろうと思うのであります。
 今、和歌山県の置かれておる時を考えてみますと、和歌山県の未来を切り開いていく上で、恐らく、今まで紀伊半島が経験してきたことのない極めて大きな変化をこれからの五年、十年で受けようとしておる、そういう大きな要因があるということであります。そのかつてない大きな変化を、未来を切り開くために、県勢の浮上のためにいかに活用するか、そのためには今何をなさなければならないかということをじっくりと考えてみますと──よく私たちは「勝つまでは欲しがりません」ということを小学生のころに言われたわけであります。いわゆる非常体制であります。普通ではないということであります。そういう武器を持った戦いではありませんけれども、和歌山県の未来を切り開いていく上で、今のこの時期、これからの五年間あるいは十年間というものは、今後の和歌山県百年の大計の中でまさに未来を切り開く戦いの時である、こういうふうに断言しても過言ではないと思うのであります。
 戦いの時、非常の時には、非常の体制が必要であります。そういう和歌山県の置かれておる時の位置というものをどのように自覚しておるか、その中で限りある人と物とを使ってどれだけ有効な最大の仕事をすることができるか、これが今我々に課せられた一番大きな問題ではなかろうかと思うのであります。
 個人にとりましても、例えば病気でも、ある時期にちょっとした予防をしておけばよかったものを、ほうっておいたために取り返しのつかないことになるということはよくあります。また商売をしておりましても、ある時期にこの手当てをしておけばもっと大きな収穫を得たであろう、こういうことも多々ございます。しかし、これらは個人の責任に帰すべきもので、その結果もまた個人が受ける。会社でありましても、その法人が受けるということになるわけでございます。
 ところが、「和歌山県」ということになると、その方針と現時点の把握、努力の仕方を間違えば、和歌山県全体が大きな災いを受ける。逆に、この時期を最大限に活用して、苦しくとも我慢をして、今やっておかなければならないことを協力してやり遂げることができるとするなれば、将来、和歌山県民の受け取る果実は極めて大きいものになろうと思うのであります。
 そういった意味で、この時点において何をやるかということを選択することも一つの大切なことであります。そして、選択したものをどのようにして県民に理解してもらい、県民と一緒にその仕事を推し進めていくか。そういったことに関しまして、和歌山県が進めていく事業、特に道路行政について質問をしてまいりたいと思います。
 一般に、公共事業は測量・設計、用地の買収、工事の着手の三つが一体となって行われていくわけでありますけれども、原則として国は、この三点セットとでも言うべき測量・設計、用地買収、工事着手の見通しが全部ついた時点で補助をつけていくというあり方をとっております。これについて、今の和歌山県の体制では、できれば測量・設計の段階から補助をつけていただく──そういうものもありますけれども、すべてそういうふうにしていただければ仕事がやりやすいと職員からも聞いたことがございます。
 私は、今の県の持っておる組織、人員ということを考えてみますと、まさにそのとおりだと思うんです。普通のときならば、議会も一緒になって、現状に合わした国のあり方を陳情していくということもやるべきであろうと思うのでありますけれども、冒頭に申し上げましたように、今は非常事態であるという自覚の上に立ちますとき、国からこの三点セットの見通しを言われておるならば、これを消化してクリアしていく能力を備え、苦しいけれどもこれをクリアすることこそ、この時点において事業を早くやっていくことにつながるのではなかろうかと、このように思うのであります。
 我々が建設省に行ったり個人的に国の役人の方々とお話をさせていただきましても、我々が陳情や県民の熱意をそのままお伝えに行くということは大変大事なことでありますけれども、いわゆる陳情行政ということから、もう少し世の中の動きは変わってきておる、国の本庁の動きも変わってきておるように思います。すなわち、県の持つプロジェクト、計画がどれだけ現実性のある合理的なものであるかということ、そして、それを消化する能力を国に対してどう実感させ得るかということ、県民が熱意を持ってその受け入れ態勢を持っておるかということ、こういうことが国にわかればお金をつけていきましょうという方向に動いてきておると思うのであります。そういった上に立ってこその陳情であり、県選出代議士の諸先生方にもお願いしての県民挙げての運動ではなかろうかと思うのであります。そういった意味におきまして、この非常時における体制の組み方ということについて、特に質問をしてみたいと思ったわけであります。
 県工事だけではなしに、例えば高規格道路とか第二阪和国道といったものは国の事業でありますけれども、それを県や市町村がどれだけ助け、率先して進めていく能力があるかということを国は見ておるわけであります。その進め方によって、例えば、京奈和道路が四全総の中で位置づけられておりましても、実施計画としてどれだけ早く実現の運びになっていくかということと極めて大きな関係を持っておることを思いますとき、今持っている県の公共事業を、苦しいけれども的確に消化していくというその能力を、そしてまた、それを一緒に進めていこうという県民の熱意を国に示すことが極めて大切であろうと思うのであります。
 そこで、この三点セットの中で、何と申しましても、この議会でも一番話題になっております用地買収ということが問題でございます。
 先日来の議会で討論がされてまいりましたように、地価の高騰といったことも用地買収の非常に難しい点であります。あるいは、今までにも出てまいりました、用地買収に当たる職員の数の不足も問題であります。それから、公図の乱れというものがございます。公図が乱れておりますために、それを訂正するのに非常な時間がかかる。この公図の乱れを訂正する方法といたしましては、一般的には、後ほど申し上げます地籍調査、あるいは区画整理、そして圃場事業、こういう三つが大きな力を持つものでございますけれども、それ以外に、公共事業の中でも公図の乱れの訂正を行っております。しかし、この公共事業の中で直接公図の乱れの訂正を行うのに時間がかかる。こういった問題を解決していくことは、非常に大事なことであります。あるいは、大江議員の質問にもありましたように、また私も前の議会で申し上げましたように、代替地の確保ということも極めて大切な問題であります。
 こういったことを非常体制の中でどう解決していくか。大変難しいことでありますけれども、私はこの際、経験を持った県庁職員OBや民間活力の活用ということを考えられないであろうかと思うわけであります。幸い、この公図の乱れの訂正という部分につきましては、昨年から五千万円ほどかけて、民間の活力導入と申しますか、民間のお手伝いをいただく手だてを講じておるようであります。しかし、代替地の獲得その他、県庁職員OBの経験や民間のお手伝いをいただける分野を効率的に整理して、法の許される範囲で活用していくという工夫が大切ではなかろうかと思うわけであります。こういったものについての当局の意欲をお伺い申し上げるものであります。
 次に、和歌山県が持っておるそれぞれのプロジェクト、あるいはその道路行政のバランスというものも大切でございますが、非常事態の今何をなすべきかということになると、やっぱり大切さの順序が違うと思うんです。
 一軒の家におきましても、子供の要求があれば奥さんの要求もある。あるいは、おじいちゃん、おばあちゃんの要求がありましょう。しかし、十年後、二十年後にしっかりとした一家の礎を築くためには、こうこういうこともあるけれども今はそれを辛抱してこれをやっておかなければならないぞと、一家の中でもコンセンサスが必要であるのと同じように、まずこの時期に何が大事かということを選択して、それを県民にわかっていただき、県民の世論としてそれが盛り上がってくる上に乗る公共事業でなければならないと思うのであります。
 そうなりますと、選択をするときに、それが未来にとってどれだけの価値があるかということを納得してもらわなければならない。納得してもらって、「よし、それではやろうか」という気を県民に起こしてもらう、これが大切であります。そういう県民世論のあり方についてのお考えをお伺いするものであります。
 そこで、今、例えば四車線の高規格道路という場合には、法律によって環境アセスをすることが義務づけられております。これは、工事中あるいはそれができてからどのように環境と呼応し合うか、環境に影響を与えるかということを調べるわけでございますけれども、私は、環境のアセスをやるのであれば、なぜ経済のアセスメント、文化的なアセスメントをやらないのかと思うのであります。
 例えばの話でございますが、今、皆さん方と一緒に京奈和道路というのを議員連盟をつくって一生懸命やっておりますが、それができる以前に、紀の川高規格道路と名づけて大阪地建によくこの問題で参りました。三回目ぐらいに行ったときに、地建の部長さんが、「なるほど、この道路は非常に大切である。十年か十五年ぐらい前からもっと運動してもらった方がよかったのではないか。これは私個人の意見ですが」という話をしてくれたことがございます。そのときに、大阪と和歌山の府県間道路ができましても、それらを和歌山県側で受けて県都和歌山市につなぐ高速があるのとないのとでは経済効果がまるきり違うというお話をされたことを、今も思い出すのであります。
 そこで、県が推し進めようとする三軸、あるいは三─五軸と呼んでおりますけれども、そういう主要な路線についての経済アセスメント、例えば京奈和道路であれば、その道路の価値は数字にあらわすとどうなるのか、それが一つできることによって和歌山県がどう変わるかという具体的なものを出していただく。なかなかこれは県庁では出しがたいと思いますけれども、あらゆる分野の資料を入れて、信頼のできるコンサルタントに試算をしてもらってもいいのではなかろうかと思うのであります。
 例えば、京奈和道路は関西学術研究都市に直結いたしますけれども、そこで、関西学術研究都市と直結することのできた紀の川流域、関空と直結できた和歌山県の価値というものは、おのずからはかれるはずであります。教育的な見地から、農産物の流通の見地から、この道路の価値を予測していただくということができるのではなかろうか。そういう数字でもって県民にお示しをいただきまして、県民とともに、「やっぱりこれはやらねばならん」という世論を盛り上げていき、その中で公共事業を進めていくという姿勢が大切であろうと思うのでございますが、当局の御見解をお伺い申し上げるものであります。
 次に地籍調査につきまして、昨年の十二月議会で質問をいたしましたが、その後の取り組みはどうなっているのか、また、その後の啓発の状況はどうかということであります。
 そのときにいろいろ問題点を指摘いたしました。境界明示に関して人員が足りないとか、忙しくて土木の職員が出ていけないとか、打つくいの費用は所有者が両方で半々ずつ持つのが本当だと思うが国は出さないということである、こういった問題をどうするのかとか、あるいはまた、里道の幅員が和歌山県で統一されておらない、土木事務所ごとに違うという問題があるがどうかとか、いろいろ申し上げたわけであります。これらの解決はそれぞれの理由があってなかなか難しい、ひとり農林部や土木部だけで解決できるものではないから、全県庁的にこの問題を検討する組織をつくってもらいたいということを申し上げてまいりましたが、その後どのように進めておられるのかということについてお伺いをいたします。
 それから、地籍調査は県土全域を早期に調査することが基本でありますけれども、先ほどから申し上げましたように、県勢浮上ということで開発を進めていく、それに合わせた地籍調査や土地分類細部調査をできないかということであります。
 県の進んでいく方向と全く関係なく地籍調査をしていくというのではなしに、県が進めていく方向、県が進めていくプロジェクトや道路の方向に向かって地籍調査や土地分類細部調査をしていくことが極めて効率的であろうと思うのでありますが、その点の御見解をお伺い申し上げます。
 人間の戸籍に対して土地の戸籍とでも言うべき地籍調査でありますが、国土調査の一環として実施されている土地分類細部調査は、その土地がどんな土地であるのか、土はどんな性質であるのか、中央構造帯が通っておらないか等、その土地の持っておる性質を調べるものでありますから、一筆ごとにできた地籍調査と重ねてこの分類調査ができておれば極めて高度な土地利用ができるということになるわけであります。この二つは並行して行うことが望ましいと思うが、どうでございましょう。
 また、土地分類調査の基本調査については全県域にわたって終了していると聞いていますけれども、細部調査も含め、その調査成果のどのような利用を図っているのか、お伺いを申し上げます。
 また、土地にかかわる地図情報は庁内の各部署で作成されておりますけれども、それを集中管理したところがございません。土地利用の高度化を図る上でも、また県民・利用者の側からも不便でございます。幸い平成二年、今議会に電算課の計画型地理情報システム構築調査事業が七百万円余で計上されております。これは時を得た措置であろうと評価するものでございますが、この際に、土地情報の集中管理や地図情報管理といったものについての考え方をお伺いしておきたいと思います。
 次に、かつて和歌山県は、海によって大阪を経由せず直接江戸や全国各地と結びつくことによって、和歌山県の知恵も啓発され、そして和歌山県の産物が江戸でもかなりのシェアを持っておったという時代がございます。ところが、明治時代から鉄道が普及するに従って、必ず大阪を通ってでないと入ってこられないという地域にされてしまった。いわゆる閉鎖された地域になりました。海によって開かれ、そして三方を海に囲まれておることによって閉鎖された、こういう二つの歴史を経験して、そしてまた海によって開かれていこうと、そういう二十一世紀を我々は求めているわけであります。
 長い海岸線を持つ和歌山県は、海を離れて行政は考えられません。そこで、この「沿岸」という部分でありますが、今までは、どうしても海と陸の二つを切り離した考え方しかできなかったようでございます。例えば、地図にいたしましても、海図の一番詳しいものでは、この岩礁のあたりでは水深何メートル、このはなでは何メートルと、全部詳しい地図がございます。ヨットに乗る人なんかは、この地図は非常に大事であります。しかし、それは海だけのもの。海は海、陸は陸という考え方がございます。しかしながら、海と陸を一体としてとらえる、すなわち沿岸域の空間を一体としてどのようにとらえていくかということが極めて大切であろうと思うのであります。
 私は、-ウェルネスWAKAYAMA-「世界リゾート博」というものをやるということを聞いておりましたけれども、これを契機に、沿岸域を一体としてとらえた地図をつくれないものだろうかと思うんです。調べてみますと、そういった本格的な地図は全国にかつてないらしゅうございます。しかしながら、これを契機にそれをつくり、足らないところは補い、二版、三版と繰り返す。そしてそれを県内の人、特に青少年に見てもらう。もちろん、入ってきた国内の人や外国人にも見てもらう。こういうことがどれだけ大きな効果を生んでいくかということを考えますと、ぜひともこの海陸一体となった地図をつくることを提案したいと思うのであります。
 例えば、船が着きますと、船員さんは何を一番先に聞くかといいますと、スーパーマーケットがどこにあるのか、郵便局はどこにあるのかということが一番多いと聞きます。それぞれ、来る人たちによって要求が違うかわからない。そういうものをよく聞き、陸と海とを一体とさせた地図を作成する。これは、沿岸地域の文化を考えるということと同じであります。海と陸、沿岸部分を一体として考える習慣をつけていくということは、海の国・和歌山県にとって特に必要であろうと思うのでございます。
 また、この世界リゾート博の中で「リゾートライフの体験」ということをテーマにしておりますが、これは私は大変すばらしいことだと思うんです。しかしまた、考えてみますと、リゾートライフとは何ぞやと、大変難しいものでございます。リゾートライフとは何かということもお聞きしながら、そのリゾートライフを経験する人に海と陸と一体となったこういう地図を渡すことができれば、恐らくその人のリゾートライフ経験の充実度が変わってくるであろうと思うのであります。
 次に、環境アセスメントについてお伺いを申し上げます。
 物事が開発されていくときというものは、それだけに関心が行く。しかし一方、産業の振興や開発も大切でありますけれども、同時に環境を保全するということが大事だという、常にこの二本立てで考えていかなければならないということを前回から申し上げてまいったわけでありまして、昭和六十三年の九月議会においては適正な開発を進める基本的な方針について質問をいたし、その中で、これからの民間活力導入に対しての環境影響評価制度について伺ったのであります。その際、「国の要綱は既に実施されているが、約百ヘクタール以上の民間開発については県として要綱を整備するなど、所要の対応を検討したい」と答弁をいただいたのであります。
 その後、一年以上の経過もあるわけでありますが、最近では、ゴルフ場開発、住宅団地の造成等、阪和府県境付近はもとより、県内各所でまさしく民間による開発が計画され、実施に移されつつある現況にあります。公共事業の推進のみならず民間活力の導入を望む者として、今こそ県のアセスメント要綱策定を実施する時期に来ていると考えるものであります。
 そこで、次の質問をいたします。
 第一に、環境アセスメントの制度化についてどのように検討しているか、知事の御答弁を願います。
 第二に、保健環境部長にその後の検討状況及び策定のめどはどうなっているのか、明確な答弁をお願いするものであります。
 次に、二月二十三日付の朝日新聞によりますと、大阪府におきましては、四月から、環境の保全と資源保護の観点から庁内で使用するコピー用紙を再生紙──古い紙をもう一遍つくりかえた紙──に切りかえるという方針であることが載せられております。また、ある大手スーパーでは包装用紙や買い物袋に再生紙を使用すると報ぜられております。──この紙も再生紙でございます。
 「紀州木の国」と言われる本県におきましても、他府県におくれることなく再生紙を使用することは、廃棄物の減量化と森林資源を保全していくためにも大変意義あることと考える次第であります。
 そこで、お伺い申し上げます。
 第一点は、再生紙の導入についてどのように考えておられるか、知事の答弁をお願い申し上げます。
 第二点は、国や都道府県の再生紙の導入について具体的な取り組み状況を把握しているのか、保健環境部長の答弁を求めます。
 次に、原子力発電所についてでございます。
 この問題は、今まで長い歴史をもってこの議会でも討論をされてまいりました。難しい問題でございますけれども、電力というものは近代生活になくてはならないものであります。それがなくてはならないという前提に立って物事を進めていかなければならない。同時に、安全性ということが一番大事であります。
 我が国では二十年の長い歴史を持ち、フランスとともに最も高い原子力の技術ノーハウを持っておる国とも言われておるわけでありますが、なおかつ、さらに高い安全度を国に求めておることは御承知のとおりであります。
 この問題につきましては、ここ五、六年の様子を見ますと、候補地は日高町と日置川町の二地点がありましたが、このうち日置川町では反原発を主張した町長が誕生いたしました。一方、日高町では、過去二十年来、原子力立地による地域活性化を検討してきた結果、これを最善・最短の方途と位置づけ、将来の町の活性化を図るため原子力発電所の誘致問題に真剣に取り組んでおられまして、その判断を下す前提となる事前調査を実施するために、昨年来、町長さんみずから直接町内を回って、町民の理解を求めるための努力をしておると聞いております。こうした現状について県はどのように考えておられるのか、知事のお考えをお聞きするものであります。
 最後に新学習指導要領についてでございますが、この問題も、いろいろと討論をされてまいりました。しかしながら、私は、もう一つ確認をするという意味で質問を許していただきたいと思うのであります。
 平成元年三月に告示された新しい学習指導要領においては、人間の心の問題、物の発展に比しての心の寂しさということ、心の充実が行われておらない、それに対してどうしていくか、自己の教育力をつけていく、すなわち生涯学習していく能力を持たすためにどうしたらよいか、あるいは、そのための基礎学力はしっかりつけておかなければならない、また個性を尊重した教育をやらねばならない、これからの社会は国際社会であるから、国際的な理解を深めていく、そしてその中で日本という自分の国も認識をしていくというところから、国歌・国旗の問題も出てきておるのであります。
 さて、この新しい学習指導要領で国旗の掲揚・国歌の斉唱の指導が入学式などで義務づけられ、平成二年四月から実施されることが昨今問題になっており、この問題は本会議でも取り上げられましたが、次のことをお尋ねいたします。
 学習指導要領は法的にどのように位置づけられておるのか、また、国旗・国歌に係る取り扱いに関し、学習指導要領に準拠しなかったときの処分等その考え方について、そしてまた、文部省はどうしてこの四月からその指導を実施することにしたのか、お聞かせをいただきたいのであります。
 かつて私は、今の教育界にとって必要なものは教育秩序の確立であるということも申し上げましたが、その中で校長の占める位置というものは極めて大きいものであります。この教育秩序の中における校長の位置、その権限、責任、義務というものも、この際、お伺いをしておきたいと思います。
 以上で、私の第一回目の質問を終わります。
○議長(門 三佐博君) ただいまの尾崎吉弘君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 尾崎吉弘議員にお答え申し上げます。
 第一点の問題は、数々のプロジェクトが山積しておる、また大きい時代の流れの中で和歌山県はかつてない大事なときを迎えておる──きのう大江議員からも話ございましたけれども──そうした中でこれにいかなる体制で取り組んでいくか、そしてまた、いかに県民の皆様の理解と協力を得ながらやっていくかということで、特に道路を中心といたしまして、プロジェクト処理についての御意見を賜ったわけでございます。
 尾崎議員がおっしゃったように、こうしたいろいろなプロジェクトが道路と非常に重要な関係を持っておるし、これからの道路というのは従来のような考え方ではなしに多角的な面から考えていかなければならないんではないかということ、私も同感でございます。そしてまた、公共事業を行う能力があるのか、また地元の熱意はどうなのかということも非常に重要な課題だと考えておるわけでございます。
 そうした面において、特に用地の問題が一番重要でございます。昨日も代替地の問題がございましたが、こうした対策とともに、公図の問題、法務局の登記の問題もあるわけでございまして、これも三、四年前からなお厳しい現実になってきて、工事を進めるのに苦慮しているところでございます。
 そうした公図等の問題においても民間とか県のOBの能力を生かしたらどうかということ、私も同感でございます。数々の事業、道路においてもふるさと事業や半島振興道路もやっておるわけでございまして、こうした皆さんの知識ということが必要でございます。そうした面につきましても努力してまいりたいと思います。
 そしてまた、協力を理解していただくためにはアセスメントの中でもう少し経済的な要素も考えたらどうかということでございます。一応、私たちは道路をつくるに当たっても、主要幹線道路については経済効果というのを測定しておるわけでございます。厳しいものは行っていないわけでございますけれども、そうした問題も考えなきゃなりません。
 特に、道路網については総論賛成、各論反対ということで非常に厳しいわけでございます。総論は賛成をしていただけるんだけれども、各論の問題をいかに説得させるか、協力を得るかということで、各市町村並びに自治会の皆さんの協力を得ておるわけでございます。そうした面において、いかに理解させるか。反対している人の名前をはっきり公表すべきかどうかという問題等もあわせ考えていかなければならないし、土地収用法がこれから検討されますので、そうした面も考えつつやってまいりたいと思っておる次第でございます。
 それから、リゾートの関係において、沿岸域の空間利用の問題でございます。
 話ございましたように、和歌山県はかつては海の交通網の盛んなところでございました。陸の交通になりましてから、和歌山は半島の厳しさを味わってまいったわけでございます。
 しかしながら、最近、おかげをもちまして海・陸の交通網がともに進みつつあり、空も進みつつある現状でございまして、海もまた見直されつつある現状でございます。そうした海と背後地の活用等、特にリゾート開発が強く叫ばれておる現在でございますので、そうした面においてなお一層、背後地の活用と相まって海の活用を図ってまいりたいと思います。
 また、その地図の問題等についても検討させていただきたいと思います。
 それから、環境アセスメントの制度化について現在どのように検討しているかということでございます。
 さきの議会においても尾崎議員から質問あったわけでございますけれども、開発計画に対する新たなルールを設けるために、平成元年度に入りまして、対象事業、規模、手続方法等、制度の基本的事項につきまして、現在、庁内関係部局に十分研究をさせているところでございます。
 それから、大阪府等で再生紙の導入を図っておるけれども、和歌山県ではどうかということでございます。
 お話のございましたように、地球的規模の環境問題や資源再利用の観点から再生紙の利用について検討を行っておるわけでございますけれども、和歌山県においても、この導入のための諸条件について検討させ、積極的に対応してまいりたいと思っております。
 次に、原子力発電所の立地問題でございます。
 これにつきましては、今までも繰り返し申し上げておりますように、適地性、安全性、地元の同意という三原則を基本として対処しているところでございまして、話ございましたように、日高町において町長を初め町当局の皆さんが合意形成のために努力されている状況にあることは、私もよく認識しているところでございます。
 県としましても、今後ともこうした地元の動向を関心深く見守ってまいりたいと思っております。
○議長(門 三佐博君) 土木部長磯村幹夫君。
 〔磯村幹夫君、登壇〕
○土木部長(磯村幹夫君) お答えいたします。
 まず、事業に取り組む体制についてでございます。
 現在は、本県にとって大きな転換のときとなっております。関西国際空港、和歌山マリーナシティの建設、南紀白浜空港のジェット化整備等の計画とこれらを支える高規格幹線道路の整備促進等、大規模な計画が着々と進んでいるところであります。
 県としては、限られた予算の中で、こうした基盤整備への重点投資が必要であり、事業の優先順位の問題や長期的な視野に立って整備の促進を図っているところであります。
 一方、これらの大規模開発計画の進捗に伴い、地価の高騰、代替地の要求等が多くなり、必要な用地取得が難しくなってきており、その対応策を検討する必要があることは御提言のとおりであります。今後とも円滑な事業執行が図れるよう、用地取得及び公図訂正について、関係部局とも連携をとりながら、関係市町村との連絡を密にし、協力をいただきながら、民間の活用についても検討してまいりたいと考えております。
 県民の理解とその上に立った意欲ある世論の形成のため何をなすべきかということについてでございます。
 本県の道路整備の基本的な考え方としては、近畿自動車道紀勢線及び京奈和自動車道を初め、国道等の骨格となる幹線道路網の重点的な整備とともに、県土の均衡ある発展の見地から、幹線道路網を補完し県民の生活を支える地域道路網についても、調和を図りながら積極的、効率的に進めていかなければならないと考えております。
 このうち、近畿自動車道や京奈和自動車道のような国の大事業については、議員御指摘のとおり、地域の利害を超えた県民の総意としての整備促進要望、用地取得等についての地元の御理解、御協力が何よりも重要であります。県としても、県議会、市町村、促進団体の御協力を得て、さまざまな広報媒体を通じてPRに努力してまいっているところでございます。
 今後、より一層県民の方々の御理解、御協力を得て高規格幹線道路の整備促進を図るため、地域振興の進展や農林水産業の振興など広域的な整備効果について、関係機関の御協力を得ながら各種資料の収集等を行うとともに、類似他府県での事例等も参考の上資料を作成し、これを活用して積極的に整備効果、必要性等についてのPRに努めてまいります。また、県民世論と一体となって早期整備を強く国に働きかけることができるよう努力してまいりたいと考えております。
 なお、資料作成方法等については、御提言の手法も含め検討してまいります。
 それから地籍調査の進め方についてでございますが、地籍調査を行うことは、土木部としても公共事業を推進させるために必要不可欠なものであり、今後とも積極的に協力してまいる所存でございます。
 その一つとして、現在、土木部を初めとする庁内関係部局で構成する公共用地取得促進対策委員会の中において、前回議員御指摘の境界明示に対する職員の立ち会い、くい打設等を基本方向の一項目として位置づけ、全庁的な立場から検討しているところでございます。また、地籍調査推進について積極的に対応を行い、現場土木事務所の意見を十分取り入れ、協力体制をとってまいりたいと存じます。
 次に、和歌山マリーナシティ等、沿岸域を対象とした地図の作成についてでございます。
 海洋リゾートの形成を図るに当たっては、港湾もその一翼を担うものであり、和歌山マリーナシティ等、港湾整備に積極的に取り組んでいるところであります。これらマリーナ、人工海浜、港湾緑地等、人々が交流する場の整備により、港湾空間に船を使って海から、また自動車等により陸から人々が訪れる機会がふえ、一方、多様な人々が港で働くこととなると考えられます。
 このように、これまでの港湾の利用者に加え、多様な人々により海と陸との結節点である港湾が多様に利用される時代には、港湾を海と陸とが一体となった空間としてとらえることが特に重要になると考えられ、議員御提言の点に関して、海を利用する立場、陸を利用する立場でともに利用できるものについて、関係部局と協力しながら調査研究を進めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(門 三佐博君) 農林水産部長安田重行君。
 〔安田重行君、登壇〕
○農林水産部長(安田重行君) お答え申し上げます。
 地籍調査の進め方についての御質問でございます。
 県勢浮揚につながる地域開発をも踏まえた地籍調査の推進が必要であると考えてございまして、未着手の市町村に対する促進啓蒙についても、地籍調査専門技術者運用連絡会議においてそうした方向づけをして、重点市町村を選定し、県並びに地籍調査専門員が一体となって啓蒙推進している状況でございます。こうした取り組みの中で、開発との関連で平成二年度から新たに着手する町も出てございます。しかしながら、市町村の事情もございまして、なかなか一概にはまいらないところがございます。
 また、さきの県議会で議員から御要望のございました庁内全体の問題としての取り組みについては、既に関係部課の打合会を開催し、本県地籍調査の現状認識を深めるとともに、今後の課題について意見の交換をしているところでございます。今後とも、市町村への重点啓蒙と体制の整備に努め、地籍調査の一層の推進に努めてまいりたいと考えてございます。
 次に、沿岸域を対象とした地図の作成の問題でございます。
 沿岸域は、水産業を初めとする一次産業が営まれておる重要な地域でもございますので、このことを踏まえ、議員御提言については関係部局と協議し、対処してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(門 三佐博君) 企画部長川端秀和君。
 〔川端秀和君、登壇〕
○企画部長(川端秀和君) まず、土地分類細部調査と地籍調査に関する御質問にお答えを申し上げます。
 議員御指摘のとおり、これらの調査は各種プロジェクトの企画立案や事業推進のために必要であると考えてございます。その調査を進めるに当たっては、地籍調査により作成された地籍図に土地分類細部調査による自然条件等の調査成果図を重ね合わせることにより的確な土地の諸条件を判断できることから、一体的に調査を進めることが望ましいと考えてございます。
 本県における土地分類細部調査は、昭和六十一年度に岩出町が完了いたしました。これに引き続き、昭和六十二年度からは田辺市、六十三年度からは貴志川町が地籍調査と並行して実施しているところでございまして、今後も並行しながら進めてまいりたいと考えてございます。
 次に、土地分類調査の活用についてでございます。
 土地分類調査については、基本調査は既に全県域にわたって終了してございまして、有効利用を図るために関係機関に配布して利用いただいているところでございます。また、市町村事業である土地分類細部調査についても、完了後は土地利用等の計画策定に際し有効利用を図っていただけるよう指導してまいりたいと存じます。
 なお、土地に関する情報の集中管理についてでございますが、行政の今後の課題として検討することが重要なことと考えてございます。また、行政の意思を決定するに当たっては、土地等に関する情報が極めて重要な要素の一つであるとの認識のもとに、コンピューターの高度利用を図り、地域の特性を地図やグラフにより把握できる機能を備えた計画型地理情報システムの調査研究を進めてまいりたいと考え、今議会に予算をお願いしているところでございます。
 次に、世界リゾート博を契機に、和歌山マリーナシティ等、沿岸域を対象とした地図の作成についてでございます。
 現在、本県では六百キロメートルに及ぶ海岸線を生かした海洋リゾートの形成を図るために燦黒潮リゾート構想を策定し、実現化に向けて積極的に取り組んでいるところでございます。
 こうしたことから、本県でも今後海を活用したレジャーなどが増加するものと考えられますので、ハード面の整備はもとより、利便性、安全性等、ソフト面にも十分配慮していかなければならないと考えてございます。
 議員御提言の地図については、今後、リゾートライフにも役立つものと考えますので、関係機関、関係部局と連携しながら調査研究等を進めてまいりたいと考えてございます。
 最後に、リゾートライフについての考え方についてでございます。
 リゾートは、本来、その地へ行って滞在し、体験することによって楽しさを享受して、その結果として心身をリフレッシュすることであろうかと存じます。
 本県は、そのための豊かな自然、歴史、文化など貴重な資源を有してございますので、今回の世界リゾート博を契機に、和歌山マリーナシティを初め県下各地のリゾート地において、体、心の健康づくりなど、これからのリゾートライフを和歌山ならではの形で体験していただけるよう考えてまいる所存でございます。
 なお、平成二年度に策定を予定している世界リゾート博の実施計画の中で明らかにしてまいりたいと考えてございますが、基本的には、休養、安らぎ、学び、レクリエーション、スポーツなどの体験ができるような組み合わせなり構成なりを検討してまいりたいと考えているところでございます。
 以上でございます。
○議長(門 三佐博君) 商工労働部長天谷一郎君。
 〔天谷一郎君、登壇〕
○商工労働部長(天谷一郎君) 国際観光やマリンリゾートの時代を迎えつつある本県にとって、議員御提言の海と陸を一体とした地図を作成することは観光振興の面でも大きな効果があると考えますが、何分、広い範囲の検討を要するものと思われますので、今後、関係部局と十分協議を進めてまいりたいと存じます。
○議長(門 三佐博君) 保健環境部長尾嵜新平君。
 〔尾嵜新平君、登壇〕
○保健環境部長(尾嵜新平君) 第一点の、環境アセスメントの検討状況と策定のめどについてお答えを申し上げます。
 知事からもお答えをいたしましたが、平成元年度に関係課室による環境影響評価制度検討会を設け、国の要綱と重複しないこと、環境への影響が著しいと考えられる事業を中心とすることなどを基本にし、鋭意検討を進めているところでございます。
 策定の時期等についてはまだ明確に申し上げる段階には至っておりませんが、できるだけ早い時期に庁内での取りまとめができるよう進めてまいりたいと考えております。
 二点目の、再生紙の都道府県等での導入状況についてでございます。
 国においては、環境庁を初め通産省で試験的に実施をされており、厚生省では本年四月からの導入を決定したというふうに聞いております。
 他府県の状況でございますが、厚生省の平成元年十二月現在における調査結果によると、十一の都道府県が全庁的に使用しており、十五の府県では一部の部局で使用をしているということでございます。また、百八十一の市町村においても再生紙を導入しているという状況でございます。
 なお、部においては、コピー用紙は原則として再生紙を使用すること、印刷物は支障のない範囲で使用することなど、再生紙の導入に向け、本年三月より試験的に実施をしておる状況でございます。
 以上でございます。
○議長(門 三佐博君) 教育長高垣修三君。
 〔高垣修三君、登壇〕
○教育長(高垣修三君) 新しい学習指導要領について御質問をいただきましたので、お答えをいたします。
 学習指導要領は、憲法、教育基本法の精神にのっとり、学校教育法並びに同法の施行規則の定めにより、学校における教育課程編成の基準として文部大臣が告示をするものでございまして、法的な拘束力を有してございます。
 学校長は、学校運営の責任者として公務をつかさどり、所属職員を監督する立場にあり、教育課程の編成を初め学校運営全体にわたる権限と責任を与えられているものでございます。
 したがって、学校長は、学習指導要領に準拠し、児童生徒の心身の発達段階や特性、あるいは学校や地域の実態などを考慮し、教育課程を編成する義務が課せられているところでございます。
 お尋ねの国旗・国歌の取り扱いに関しては、新しい学習指導要領では「入学式や卒業式などにおいて、国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱するよう指導するものとする」と、明確にされておるところでございまして、移行措置として平成二年四月から実施をされることになってございますので、学校長はそれらの趣旨に沿って実施をいたすことになるわけでございます。
 こうした学校長の権限に基づいて計画され実施される方針に反して、その遂行を拒むことがあるとすれば、それは処分の対象になります。
 移行措置についてでございますが、教科書を使用しないで行う道徳や入学式などの特別活動について、平成二年度から実施をするように現行の指導要領の特例として告示をされたものでございます。これは、新しい学習指導要領の趣旨内容が円滑に実施をされるための措置でございます。県教育委員会としては、今後とも円滑に実施をしていけるように指導してまいる所存でございます。
 以上であります。
○議長(門 三佐博君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(門 三佐博君) 以上で、尾崎吉弘君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
○議長(門 三佐博君) この際、暫時休憩いたします。
 午前十一時五十九分休憩
 ──────────────────── 
 午後一時五分再開
○副議長(宗 正彦君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
○副議長(宗 正彦君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 10番中村裕一君。
 〔中村裕一君、登壇〕(拍手)
○中村裕一君 平成二年の二月定例会におきまして、先輩の議員の皆さんの温かい御高配により初めて質問をさせていただきます。まず最初にお礼を申し上げたいと思います。
 この和歌山県議会におきましては、地方自治の究極の目的であります住民の福祉のため、さまざまな県勢浮揚策が説かれ、激しい議論が展開されてきたことと思います。新しい時代「平成」も二年目を迎え、二十一世紀まであと十年と、すぐ手の届くところまで参りました。これからの十年が、来るべき将来が明るい未来になるかどうかの大切な詰めの時期と考えます。
 子供は恵まれた環境の中ですくすく育ち、近代的な校舎で立派な教育を学びます。多くの若者が、自分の生まれたふるさとで生きがいを持って働いています。病気になっても、安心して治療、入院ができます。会議や催しがあれば、立派な会館が使えます。スポーツをしたいときは、運動公園があります。遊びたいときは、若者のあふれる愉快な町があり、快適なリゾート地があります。どこへでもすぐに行ける広い道路があります。下水道も完備され、あちこちにきれいな公園があります。
 こんなすばらしいふるさとにだれもが暮らし、安心して老後を迎えたいものであります。そして何よりも、政治家として私たちのふるさとをこのようにしたいと思うものであります。
 しかし、幾ら立派な施設があっても、立派な福祉の制度があっても、それを使う人がいなければ何の意味もありません。人が使ってこそ初めて値打ちが出てくるものであります。また、人口がふえて自主財源がふえてこそ、こういう事業もできるのであります。
 みんなでもうけたお金はみんなのために使いましょうというのが財政でありますが、お金をもうける人がたくさんいるところにお金が必要なので、少ないところにはなかなか回ってこないのが現実であります。
 今、和歌山県では、立派な施設や福祉の制度を使う肝心の人、つまり人口が減ってきているのであります。例えば、男の人が一人、女の人が一人いたとします。この二人が結婚しますと、大体二人ぐらいの子供ができます。子供が成人になったとき、家業が農家とか商店であれば子供の一人は家業を継ぐことができますが、もう一人の子供はどこかに就職しなければなりません。この人が県内に就職できた場合を考えてみますと、二人の親から二人の子供ができ、二人とも県内にいるわけですから、人口は減りません。しかし、この人が県内に就職できなかったとき、また二人とも県内に就職できなかったときは、人口は確実に減っていきます。このような光景が県内のあちこちで起きているのではないでしょうか。
 もちろん、志を抱き、ふるさとを離れる人も多くいます。しかし、そういう人ばかりではありません。家庭の事情でどうしても地元に残らねばならない人、ふるさとが好きでふるさとにいたい人も、きっといるはずであります。
 憲法第二十二条に職業選択の自由がうたわれていますが、残念ながら、実際のところ田舎では、自由に選べるというより地元に残るというだけで職業は大体決まってしまうのであります。さらに、より高度な技術や学問を身につければつけるほど、それを生かした仕事が見つけにくくなるのであります。
 何とかこのような現状を打開し、県勢を浮揚させるため、多くの先輩の皆さんが幾多の努力をされてこられたことに敬意を表しますとともに、この「何とかしなければ」という視点に立って、私がさきの補欠選挙で訴えた公約で、しかも日高郡市の県民の皆さんが実現を今か今かと待ち望んでいる政策、すなわち御坊田園テクノタウン構想の実現について、さらにその実現のため必要不可欠の基盤整備である重要港湾日高港の整備、また御坊市における都市計画事業についてお伺いしたいと思います。
 まず最初に、御坊田園テクノタウン構想の実現についてであります。
 昭和四十八年、当時の大橋知事が県勢浮揚のため均衡ある県土の発展を期して提唱された三大プロジェクトとして、かつらぎ山系研究学園ゾーン、紀南福祉エリアとともに御坊田園工業都市構想の名前で産声を上げたのが始まりであります。そして、議会においてもさまざまな議論が尽くされ、仮谷知事も、昭和五十一年、当時の平田地域振興整備公団総裁を現地に案内され、構想を公団事業として採択されるよう要望されるなど積極的に取り組んでいただき、さまざまな調査が行われましたが、当時の日本経済の置かれていた厳しい状況や御坊・日高地域の交通体系の未整備などの理由から事業採択されず、残念な結果に終わったのであります。
 しかし、この御坊田園工業都市構想は、昭和五十五年、通産省からテクノポリス構想が示されるや否や、御坊田園テクノタウン構想として生まれ変わり、新たに中紀地方、県勢浮揚の大プロジェクトとしてよみがえったのであります。そして、テクノポリス構想調査対象地域として全国二十カ所の中に指定されるに至り、今度こそいよいよ実現かと期待されたのであります。
 当時学生でありました私は、その様子をテレビで見て、自分の生まれ育った御坊市が「テクノポリス」という、中身はよくわからないが名前からすればすごい町に指定されたと、何かうれしくなり、下宿のみんなに自慢したことを覚えております。そのころから政治の道を志していた私にとって、今県議会で質問をさせていただいているということは非常な喜びであります。しかし、あのときの感動は何だったのか。あのときから十年間、依然として「構想」であり続ける御坊田園テクノタウン構想を今私が質問しなければならない現実に、戸惑いを覚えるのであります。
 いずれにしましても、その後、知事初め議会の先輩の皆さん、多くの関係者の御努力で、よい方向に進んでいることは事実であります。具体的には、実現のために必要不可欠であります陸・海・空の交通体系の整備のうち、陸と空はそれぞれ、海南湯浅道路の供用開始、湯浅御坊道路の着工、さらに御坊─田辺間の調査と関西国際空港の建設、南紀新空港の事業化というように、整備されつつあります。また、日本経済も戦後五回目の好況を呈しておりますし、昭和六十年には関西電力御坊火力発電所の操業により、地元のうち御坊市においては、財政力も以前に比べて向上してきております。さらに、日高・御坊地域への企業進出も、県の指導のもと、盛んに行われるようになってまいりました。
 そもそも、高度技術工業集積地域開発促進法、つまりテクノポリス法に基づく地域指定を受ける条件として、一、自然的、経済的、社会的条件から見た一体性の確保、二、高度技術開発企業または高度技術利用企業に成長する可能性のある企業の存在、三、工業用地、工業用水及び住宅用地の確保の容易性、四、都市の存在、五、高度技術に係る教育及び研究を行う大学の存在、六、高速輸送施設の利用の容易性などがありますが、以上のような条件を満たしているところは、殊さらテクノポリス法の指定を受け優遇措置を受けなくても、やる気さえあれば十分に発展していけるところであります。本当は、このような条件になかなか合致しないところにこそ救済の手を差し伸べるのが政治であります。
 名前ばかりが先行する国の金太郎あめ的振興策のよしあしは別にして、採択基準に合わなければ合わないなりの政策、すなわち本県独自の地域振興策としての御坊田園テクノタウン構想の実現を図っていくべきであると考えます。まさにその方向に沿うかのように、新聞等で報じられているとおり、いよいよ平成二年度から御坊市熊野地区において、県企業局が総事業費二十八億円で御坊テクノパークを整備するとのことであります。
 そこで、まず知事の御坊田園テクノタウン構想の実現に対する現時点での考え方、今後への意気込みといったものをお聞かせいただきたいのであります。
 さらに、今日まで県と地元御坊周辺広域市町村圏組合が検討を重ねてこられたわけでありますが、その経過と現在一致している点、つまり事業においての県と地元の責任分担、テクノパーク周辺の環境整備など、具体的にどの程度まで一致しているのか、また今後の課題と進め方について、タイムスケジュールに沿ってお示しいただきたいと思います。
 二点目に、企業誘致についてであります。
 県のお世話で御坊市には現在まで二社進出を決めていただいておりますが、一社が集成材の工場で御坊市の主要産業である製材業のお手本となるもので、もう一社が御坊田園テクノタウンのサブタイトル「きのくに健康テクノタウン」の趣旨に沿った製薬会社であります。
 そこで、テクノパークへ誘致する企業はどういった業種のものを予定しているのか、また、企業は独自の経営方針で事業を展開しておることから、当然、企業進出については秘密裏に交渉していかなければならないし、企業の希望もあると思うが、県が市町村へ進出打診を行う際、どこにするかをどういう基準で選ぶのか、さらに進出に当たっては企業団地のある地元の同意も必要と思うが、どこまで同意を求めるのか、お示しをいただきたいと思います。
 三点目に、来るべき日本の主要産業となる研究所やソフトウエア業など、いわゆる産業の頭脳部分を今後地方にも分散、集積させるための法律「地域産業の高度化に寄与する特定事業の集積の促進に関する法律」、通称「頭脳立地法」が成立し、近々地域指定を行い、本県も指定を受ける予定で、本構想の一部地域も含まれていると聞いておりますが、どのような効果が期待できるのか。そして、海南インテリジェントパーク内に平成二年度に設立が予定されている仮称・株式会社和歌山リサーチラボは本県の産業構造の改善に非常に役に立つものであると聞くが、とりわけ本構想にどのような効果が期待できるのか、御説明いただきたいと思います。
 四点目に、近畿大学青踏女子短期大学の跡地利用についてであります。
 青踏短大が昭和六十一年四月に和歌山市に移転しなければならなかったことは、日高・御坊地域の今置かれている現状を如実に物語る出来事でありました。しかし、昨年、近畿大学が紀北地方に先端技術関係の学部を増設し、その出先機関として跡地を再利用するという発表がありました。郡市民が期待をしておるわけでありますが、今、県ではどの程度把握しているのか、またどのように対応していかれるおつもりか、お答えいただきたいと思います。
 次に、御坊田園テクノタウン構想の実現に向けて、ぜひやらねばならない重要港湾日高港の整備についてお伺いします。
 日高港は古くから木材、生活物資等の集積場として栄え、時代の変遷とともに交通体系の整備が進む中で、流通拠点としての役割の低下もありましたが、地域の代表的産業である製材業にとっての重要な港であることは今日まで一貫しており、地域を支える重要な基盤であります。県の統計によれば、昭和六十三年には日高港で取り扱われた林産品は四十万トンを超え、和歌山県の港湾で取り扱われる林産品の四分の一近くを占めるに至っておるのであります。
 しかし、現在の日高港は、水深マイナス三・五メートルの物揚げ場しかありません。そこで外材の二次輸送を行っている状況であります。大型岸壁の整備等、港湾機能の拡充は今すぐにでも解決しなければならない課題であります。
 そもそも、日高港の整備は、御坊周辺の製材業者の間から物流の合理化、流通コストの低減を図るため外貿線が直接利用できる係留施設の整備が叫ばれたのが始まりで、当時の高度経済成長期のもとに、地域の発展を願って合理的な荷さばき、保管のための用地や各種産業の立地のための用地を持った大型港湾の整備が構想されたのであります。
 そこで、港湾管理者である県、地元御坊市、多くの関係者の皆さんが検討を重ね、新しい港の計画を取りまとめ、重要港湾への昇格に向け仮谷知事を先頭に関係の皆さんが一丸となって国への強力な運動を展開し、その結果、昭和五十八年に地元の熱意が理解されて念願の重要港湾の指定を受けたことは、御承知のとおりでございます。
 その後も、港湾計画に基づき防波堤、係留施設等の整備について事業化を図り、事業実施に向けた取り組みを行っていただいておりますが、漁業者との調整、事業方式について課題が生じ、まことに残念ながら、今もって着工に至っていないのであります。
 しかしながら、重ねて申し上げますが、御坊市の代表産業である製材業は、自助努力によって経済環境が厳しい中でも業績を伸ばし、今では出荷額が県全体の半分を占めるに至っております。さらに、この数年の好況も反映して木材の取扱量は順調に伸びてきており、現在の港湾施設では全く間に合わなくなってきておるのであります。
 また、平成六年の湯浅御坊道路の完成に伴い、日高港の背後圏が大きく広がり、御坊市の臨海部のポテンシャルも飛躍的に高まってまいります。そして、何よりも日高港の整備は、日高・御坊地方の将来の姿、御坊田園テクノタウン構想の実現に向けての重要な基盤整備であります。
 さらに、今日のウォーターフロント時代を迎え、大阪湾の臨海部には多様な要請が向けられて、今までの港湾機能の一部を周辺の地域に持っていこうとする動きも見られ、そうした面から、今こそ日高港整備の要請が改めて高まりつつあるのであります。
 そのような背景の中で、日高港の整備を段階的に行うことが効果的と考え、まず南埠頭の整備を第一期計画として着工することが国、県、市の間で基本的に合意し、現在取り組んでいただいていると聞いておりますが、一日も早い着工を期待し、質問をさせていただきたいと思います。
 重要港湾日高港の港湾計画は、大阪湾諸港との機能分担を図りつつ、和歌山県中部地域の経済活動を支えるため内外貿機能の整備を図る、背後地域の経済発展に資するため地域産業の基盤としての港湾整備を図ることなどを基本方針とし、昭和五十八年に中央港湾審議会の審議を経て策定されていますが、日高港整備について県は今どう考えておられるのか、また日高港にどのような役割を持たせるべきか、知事のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
 次に、日高港の整備に関して土木部長に幾つかお尋ねいたします。
 まず、着工に向けての現在の県の取り組み方及び御坊市の取り組み、また国の日高港整備についての考え方をお聞かせ願いたい。特に漁業交渉は着工に向けての大きなかぎであり、その現状と取り組み方についてもお聞かせいただきたい。
 また、日高港整備といった大型プロジェクトを進めるには適切な事業方式をもって行うことが重要でありますが、埋立造成事業の事業主体についてはどのように考えているのか、また、港湾整備事業は投資規模も大きく地元財政を圧迫することも考えられるが、その点についてどう考えているのか、お考えをお聞きしたいと思います。さらに、造成した埋立地への企業立地が本事業を推進し地域の活性化を図る上で最も重要なことは明らかでありますが、企業立地についてはどのように考えているのか、お教えいただきたいと思います。
 大きな三番目の質問として、都市計画事業についてお伺いいたします。
 和歌山県は、気候温暖、風光明媚でさらに人情豊かと、大変すばらしいふるさとであります。しかしながら、海からすぐ山へと地形は山ばかりで、紀の川筋と海岸部の少ない可住地に人口の八割が集中しており、さまざまな弊害が生じてきております。さらに、昨今の地価高騰が一層事情を複雑にしているのであります。
 このような状況を打開し、将来に残さないためには、潤いと活力ある都市の基盤づくりを推進すること、つまり機能的で活力ある産業活動の場として、また安全で快適な日常生活の場として、来るべき二十一世紀に向けて都市をどのように計画的かつ総合的に整備していくかということが大切であります。平地の少ない本県にとりまして、適切な土地利用、二十一世紀にたえ得る町づくりを進めることが極めて重要な課題であると考えます。
 都市基盤整備は、道路、公園、下水道、いずれも生活に密着した重要な施設でありますが、特に、都市の骨格を形成し市街地における都市交通を確保する幹線街路の整備は、まず最初に重点的に進めるべき都市計画の基礎であります。しかしながら、本県の幹線街路の整備状況は、全国平均の約四割に対し約三割と立ちおくれた状況にあり、今すぐ何とかしなければならない緊急を要する問題であると思います。
 こうした県の実態の中、日高・御坊地方は、今後、湯浅御坊道路の開通や御坊テクノパークの建設なども相まって、ようやく発展の兆しが見える大切な時期を迎えます。そうしますと、人の流動も活発化し、それを支えるべき交通拠点の整備と都市施設の充実が必要になってくるわけであります。
 日高・御坊地方の交通拠点、表玄関としてJR御坊駅があります。御坊駅前広場は、現在都市計画事業として県が事業主体となって取り組んでいただいておりますが、駅前広場と市内を結ぶ都市計画道路駅前吉原線は、全線七百五十メートルのうち第一工区二百六十メートルに着手して以来十年もたちますが、いまだに道路としての仕事が行われておらず、一体いつになったら全線開通するのかという状況にあります。
 JR紀勢線が新幹線と直結された現在、この駅前吉原線の整備は以前よりもまして急がれるものと、地元御坊市は第一工区の早期供用と第二、第三工区の早期事業採択をお願いしているところでありますが、整備促進を目指しての県当局の取り組みについて、土木部長の御所見を伺います。
 次に、御坊総合運動公園についてであります。
 都市としての潤いを生み出すものとして都市公園がありますが、それはまた、災害時の避難地など防災機能も有する都市の根幹的施設でもあります。しかし、本県の都市公園の整備は全国に比べ決して進んでいるとは思われません。中でも、御坊市における公園整備は大幅におくれているのが現状であります。
 御坊市においては、関西電力御坊発電所土取り跡地に、国庫補助を得て昭和五十八年度より御坊総合運動公園の整備に着手しておりますが、七年経過した今も野球場の完成を見たのみであります。
 そもそも、運動公園の整備は、御坊市が火力発電所を誘致した際の市民同意を得るための条件の一つでありました。その発電所立地が御坊市や県の財政に貢献した役割を考えますと、操業後既に五年も経過した現在、完成していないのは、スポーツをする人のみならず、私を含め御坊市民ならだれしも納得できない事実であります。さらに、御坊市は総事業費のうち市負担分三億円を既に事業協力金として受領しており、国の予算に合わせて幾らでも執行できる状況にあります。また、平成二年九月には全国軟式野球大会の開催会場の一つともなっており、早急に未整備施設の建設に着手し、利用促進をお願いしたいのであります。
 そこで、紀中地域の中心的なレクリエーションの場である御坊総合運動公園の整備促進について、土木部長の御所見はいかがか、お示しいただきたいと思います。
 以上、このふるさとを本当に何とかしなければ自分たちの将来が開けてこないんだと思う若い世代の代表として、質問をさせていただきました。どうか、将来の希望に明かりをともしてくださるような積極的な御答弁を期待して、質問を終わります。ありがとうございました。
○副議長(宗 正彦君) ただいまの中村裕一君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 中村裕一議員にお答え申し上げます。
 御坊田園テクノタウン構想の実現でございます。
 お話ございましたように、御坊地域の振興につきましては、御坊田園工業都市構想及び御坊田園テクノタウン構想により、若者が定住できる地域開発を目指してさまざまな取り組みを行ってまいったわけでございますけれども、まだ十分でないということ、まことに遺憾に思っておるわけでございます。
 しかし、話ございましたように、現実問題としてこれを着実に具体化するために、現在、企業局において熊野地区で計画を進めつつあるわけでございます。これは、今後、湯浅御坊道路の開通を目途として企業立地を進める計画をいたしておるわけでございまして、このためには、とりわけ地元の用地買収の協力が必要でございます。そうした面において市当局も非常に熱心に取り組んでいただいておりまして、場所等についてもいろいろ配慮していただいておるわけでございます。
 また、最近、高速道路の紀南延伸に伴い、有田までの企業誘致が成功しつつあるわけでございまして、御坊までの企業誘致がなお一層の重要性、必要性を持っておりますので、そうした面になお一層積極的に取り組んでまいりたい、そして所期の目的達成のための一助にしたいと思っておるわけでございます。
 それから日高港湾について、基本的な考え、また日高港湾はどんな役割を持つのかということでございます。
 お話ございましたように、和歌山県の中紀地区の物流の基地である、また産業を立地するための基地でもあるということで、港湾機能、そしてまた産業基盤の基地という形で見ておるわけでございます。
 この地域の発展というのは、産業振興やテクノタウン構想実現のための基盤整備といった重要な役割を持っておると考えてございまして、こうした面からも県が現在まで積極的に取り組んでまいったのでございますけれども、お話ございましたように、まだ御坊市側については着工できていないのが現況でございます。しかし、私は段階的な整備により効果的に事業を進めていかなければならないんではないかと思っておるわけでございます。
 当面の問題である漁業交渉、事業の進め方等、いろいろな問題があるわけでございますけれども、御坊市並びに地元町と十分に話し合い、お互いが一体となって事業を積極的に推進するように強く指示しているところでございまして、これについてはなお一層の努力をしてまいりたいと思います。
 残りの問題は担当部長から答弁いたします。
○副議長(宗 正彦君) 企画部長川端秀和君。
 〔川端秀和君、登壇〕
○企画部長(川端秀和君) まず、御坊田園テクノタウン構想の現況及び今後の具体的取り組み等についてお答えを申し上げます。
 昭和四十七年の御坊田園工業都市構想以来、昭和五十七年以降は国のテクノポリス法に基づく計画承認を得るべく、地元の御坊周辺広域市町村圏組合とともに全力を挙げて取り組んでまいりましたが、その後定められた地域指定要件の中に高度技術企業の存在、高速輸送施設利用の容易性、自然科学系大学の存在という当地域が満たしていない条件が含まれたため、現在、承認申請には至ってございません。
 ところが、近年、湯浅御坊道路の計画が具体化するなど、企業の進出条件が改善されつつございますので、この機会をとらえ、県と地元が共同で、当初の目的であった工業導入による若者が定住できる町づくりを実質的、着実に達成していくことが重要であると考え、その方向で検討を進めているところでございます。
 先ほどの知事答弁にもございましたように、現在、御坊市内に約二十ヘクタール規模の工業用地を造成し、企業誘致を進める考えでございますが、これを核として当地域の振興が図れますよう、地元と力を合わせて取り組んでまいる所存でございます。
 次に、頭脳立地構想についてでございます。
 頭脳立地構想は、情報、研究等の機能を有する民間企業を誘致し、その集積を地域産業の高度化に活用しようとする施策でございまして、テクノポリス法を補完する施策でもあり、ハイテク産業の地方立地に対する支援も期待されるところでございます。
 したがって、頭脳立地構想に基づく集積を活用して、ハイテク産業を中心とした企業誘致に努め、テクノタウン構想の具体化に取り組んでまいりたいと存じます。
 最後に、青踏女子短期大学の跡地利用についてでございます。
 現在、近畿大学では地元の強い要望を受け、バイオテクノロジー研究所を設置する方向で学内に委員会を設け、検討を進められていると聞いてございます。
 県としては、この計画の早期実現に向けて地元とともに働きかけてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(宗 正彦君) 商工労働部長天谷一郎君。
 〔天谷一郎君、登壇〕
○商工労働部長(天谷一郎君) 現在計画中の御坊テクノパークへの企業誘致に係る導入業種としては、先端技術産業や農業関連産業、また健康産業等を想定いたしております。
 次に、企業の本県への進出意向に伴う受け入れ市町村の選定でございますが、これについては企業の立地希望地域と各市町村の導入希望業種、対応可能な用地等々を勘案し、企業及び各市町村の調整を行った上、対処しているところでございます。
 また、進出に当たっての地元同意については、最終的には受け入れ市町村の判断にゆだねておりますが、通常、市町村及び企業用地の所在する地元の同意を原則として求めることといたしております。
 いずれにしても、地域の活性化のため、今後より積極的に取り組んでまいる所存でございます。
○副議長(宗 正彦君) 土木部長磯村幹夫君。
 〔磯村幹夫君、登壇〕
○土木部長(磯村幹夫君) お答えいたします。
 重要港湾日高港湾の整備についてでございます。
 まず、国、県、市の取り組み状況と漁業補償交渉についてでございますが、日高港湾の整備については、着工に向けて運輸省第三港湾建設局、県、御坊市とが一体となって課題の解決に取り組んでいるところであります。
 当面の最大の課題は漁業補償と認識しており、関係漁業協同組合との話し合いを進めてきております。本事業の海域には三つの漁業協同組合が漁業権を有しており、それぞれの漁業協同組合で事情が異なるところもありますが、御坊市等、地元が努力しておりますので、それらと協力して早期妥結に向け努力してまいります。
 運輸省においても、日高港湾の整備が地域開発に果たす役割の重大性を理解し、本事業について支援するとの考えを示していただいておりますが、事業促進のための環境整備についての地元の努力を求められております。
 次に、御坊市の負担率についてでございます。
 地元負担金の割合については、昭和四十八年以前は補助事業については三〇%、直轄事業については二〇%でありましたが、その後軽減を行い、昭和六十年度から事業費の一八%までになっております。平成元年度には直轄事業について事業費の六分の一に軽減し、さらに平成二年度にはこれを一五%に軽減するとともに、補助事業に対しても六分の一に軽減を図るべく、今議会に提案いたしてございます。
 日高港湾整備に当たり、御坊市の財政力、負担能力に配慮した上で、工期を分けて、当面、一期計画において南埠頭を整備することで国、県、御坊市において合意を見ております。
 次に、整備の事業主体とその理由についてでございます。
 防波堤、係留施設などの公共施設については国、県の公共事業により実施することとしており、埋立事業については県と市が共同で実施することとし、具体的な内容について市と調整、検討しているところであります。
 日高港については、物資、流通拠点としての性格、地域産業基盤としての性格を有するもので、市及び県がそれぞれの立場で主体的に取り組むことが適当と考え、県、市の共同事業と考えているところでございます。
 次に、進出企業については、現在九社で日高港進出企業協議会が設立されており、それらの企業から進出の意向が示されているところであります。
 次に、駅前吉原線、御坊総合運動公園の整備促進についてでございます。
 まず、都市計画道路駅前吉原線は、御坊駅と市街地を結ぶとともに、御坊駅前広場を含む重要な幹線街路であります。本路線は昭和五十六年度に事業に着手し、その整備に鋭意努めてまいりましたが、駅前でもあり、移転物件も多く、事業期間が長期化してまいりました。用地買収の見通しも好転してきましたので、駅前広場を含む本路線の早期完了に向けて事業を積極的に推進してまいります。
 次に御坊総合運動公園の整備についてでございますが、都市公園は多様な機能を有する都市の根幹的な施設であり、整備を積極的に進める必要があります。
 御坊市が整備を進めている御坊総合運動公園は、昭和五十八年度に事業着手し、平成元年十月には野球場を供用するに至っております。平成二年度には多目的グラウンドの整備着手が予定されており、引き続きテニスコート、駐車場等の整備が予定されております。
 県としては、公園事業を推進するため国庫補助金の確保に努力するとともに、御坊市の事業執行を指導してまいります。
 以上でございます。
○副議長(宗 正彦君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(宗 正彦君) 以上で、中村裕一君の質問が終了いたしました。
○副議長(宗 正彦君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 21番木下秀男君。
 〔木下秀男君、登壇〕(拍手)
○木下秀男君 平成二年度予算編成の重要事業の内容を検討いたしまして、知事初め当局の皆さんに、まずお礼を申し上げたいと思います。
 国際化に対応する諸施策といたしまして、英語指導を行う招致外国青年の大幅増員と、開発途上国からの技術研修員の受け入れ等に積極的な予算の計上をいただきました。新規事業の若年教員の海外派遣は、従来の英語教員の派遣制度とともに、今後の教職の場で大いに役立つものと信じます。
 高校生海外生活体験制度の新設でありますが、私は昨年九月議会でカナダ・アメリカ訪問の報告の折に提言したものでありますけれども、早速に具体化していただきましたことに衷心より御礼を申し上げる次第でございます。私も、日高地方で国際交流に理解のある方々の御協力をいただきながら、海外からの青少年を受け入れるべく組織をつくりつつあるところでございます。
 また、留学生支援の、県内在住の私費留学生に対する国民健康保険料の補助事業は大ヒットであります。留学生にとって、学資はもちろんでございますが、異郷の地での病気やけがに対する医療治療が大きな心配だと言われてございます。今後は、私費留学生だけではなしに、公費留学生や長期滞在の技術研修員にも対象の枠を広げてこそ、国際交流に取り組む和歌山県の姿勢と努力が高く評価されるものと思うものであります。
 これでお礼を申し上げるのは終わりまして、本題の質問に入ります。
 まず、リゾート開発についてでございます。
 日本列島は、今やリゾート基地構想が花盛りで、かつての列島改造論のときよりも大きなうねりが全国津々浦々にまで及んでいるようであります。産業構造の変化で企業誘致が進まない地方自治体にとって、リゾート開発は地域振興になる、過疎地域にとっては村おこしになると、大小さまざまな計画が全国に起こり、既に十三の開発構想が国の承認を受け、承認待ちも十数カ所あると言われてございます。対象地域の面積は大体十五万ヘクタール前後と言われてございますが、この調子で参りますと、日本列島はリゾート地だらけになってしまうでありましょう。
 それ以外に、県内におきましても、リゾート開発に名をかりたレジャー施設を主とした開発計画がメジロ押しでございます。その事業計画を見ると、判で押したように、ゴルフ場、テニスコート、マリーナ等々、投資資金を比較的容易に回収できる施設が主で、どのリゾート計画も似たり寄ったりの計画でございます。今後県が取り組んでいくリゾート開発は、よその計画よりも一味も二味も違う特徴を生かす工夫が必要であると考えるのであります。
 整備対象といたしましては、スポーツ施設はもちろんでございますけれども、リゾートの本来の目的であります教養文化施設、休養施設、集会施設、宿泊施設、交通施設、販売施設、滞在者の利便増進施設等々、均衡のとれた計画を策定すべきであると思います。
 これにつきまして、和歌山県の企画部が出しました総合保養地の整備に関する基本構想(燦黒潮リゾート構想)の素案をもとに、次の点について質問と提言をいたします。
 構想県地域を見ますと、ほとんどが国立公園ないしは県立公園地内が含まれているようでありますけれども、環境問題、自然保護問題等に大きな難問があるのではなかろうかと危惧するものでございます。
 以下、数点申し上げますが、まず、リゾートの定義をお聞かせいただきたいと思います。そして、公園法──国も県もございますが──に縛られることが大変多いように感ずるのでございますが、公園法というものを読んでみますと、ほとんど自然のよさを残すという保護をする意味でつくられた法のように思うのでありますけれども、この公園法と開発しようとすることの関係についてお伺いいたします。
 もう一つは、宿泊施設とその設置する地域における既存業者との問題でございますが、これは必ず大きな問題が起こると思います。かつて、和歌山県が那智勝浦町と太地町にまたがる地域に国民年金保養基地の誘致に努力いたしました。今、多くの人の利用施設として活用されてございますけれども、あの構想が練られたときに、今の規模よりも倍以上の構想で、ホテルはもちろんでございますけれども、コテージハウス、バンガローなどで宿泊を多くできるようにという計画でございましたが、地元の猛反対に遭い、時の町長──今は故人でございますが──浦神町長の「わしの首にもかかわる大事なことなんだから、宿泊人数を半分に減らしてほしい」というやりとりもあって、今日に至っております。それらの既存業者との宿泊施設の問題も起こってこようと思います。
 さらに、水質、水でございます。これは川と海に及ぶことでございますが、きれいな海、きれいな山と言われるこの紀州の地の、特に景勝の地と定めた公園地内周辺に対する水質保全の問題にいかように取り組んでいくのかということが一点でございます。
 もう一点は、治山治水の問題でございます。これは、言わずと知れた、造成をすれば必ずこの問題が起こってくるわけでございますけれども、これらの治山治水の点についてもお伺いいたします。
 それと、この議会で再三、皆さん方が取り上げられましたが、開発による自然保護をどのようにしていくか、この問題についてもお伺いいたします。
 和歌山県の海岸は長うございますが、そのほとんどすべての地域に漁業権を設置してございます。海岸にあるほとんどの山、これは魚つき保安林という形で、漁業にとってはなくてはならない保護すべき地域でありますが、この保安林についてどのような取り組みをするか、どのような扱いをするかということでございます。
 現に、公共事業で海岸の道路事業を進めたところで、コンクリを打ち上げたところが白く反射をするためにペンキを塗ってほしいという漁業組合の要請で、県の工事にペンキを塗り上げたようなところもある実情を見るときに、保安林特に魚つき保安林というものに大きな問題が起こってこようと思いますが、この点についてもお伺いいたします。
 最後に、施設周辺の環境整備でございます。
 計画地内は、それぞれの基準に合うようなものはつくるでありましょう。それらの施設を基準に合わす作業は進めると思いますけれども、その施設のすぐ近くにある周辺環境整備はすべて地方自治体にゆだねられることになります。こうなりますと、公共事業でいきますと地元負担金がかかってくるということになります。この施設周辺の環境整備事業についてどのように取り組もうとしておるのか、この点をお伺いいたします。
 次に、関西国際空港に向けてのアクセスについてでございます。
 「幹線直結」を合い言葉に、知事を先頭に我々県議会、市町村関係者が一丸となって取り組んでまいりましたJR特急くろしお号の新大阪駅乗り入れが実現いたしまして、大変便利となり、利用者数も大幅に伸び、JR西日本はもちろん、県民初め和歌山に来るお客さん方も大変喜んでおられることは、県民の一人として喜ばしい限りでございます。
 昨年八月二十日、新大阪乗り入れから約一カ月の利用者状況のまとめを見ますと、新大阪、京都へ乗り入れたくろしお号の利用者は、白浜方面行きは一日平均三百十一人、新宮方面行きは三百十六人と多く、上下線全体で前年度比五・一%の増となっているということであります。
 阪和間の長年の夢でありました近畿自動車道も、阪南─岸和田間がこの三月二十九日、供用開始ということも伺っております。この道路も、幹線につながり、また関西国際空港と結ぶ世界につながる道路でございます。この道路建設計画から竣工・開通に至るまで長い間御苦労をおかけし、御努力いただきました先人の皆さん方に敬意と感謝をささげたいと思います。県内の高速自動車道路が進んでまいりますと、新空港開港時には、私たちの住む紀中からも一時間余りで空港に行けると思います。
 残るは、もう一つの鉄路である南海電鉄であります。
 かつて、昭和六十年六月、この議場で私が質問と提言を申し上げましてから五年を迎えようとしております。南海電鉄和歌山市駅から旧和歌山線を経てJR和歌山駅、貴志川線を結ぶ路線の整備と、JRきのくに線和歌山駅から和歌山市駅を経て南海本線に乗り入れ、関西空港に通じる路線整備の提言を申し上げました。その間、私も関西国際空港対策特別委員として南海電鉄本社に出向き、社長以下、関係者の皆さんと懇談、陳情を重ねてまいりました。
 昭和六十年であったと思いますが、和歌山大学が現在地の栄谷に移転するということに関して、今は亡き玉置和郎先生の御案内をいただいて、時の運輸大臣山下徳夫先生、文部大臣松永光先生に新駅設置の陳情も申し上げました。当時の部長さんからは、関係者の間で検討したいとの答弁をいただきました。
 近畿自動車道開通を間近に控え、JR阪和線の新大阪駅への乗り入れ工事も着々と進み、残るはこの南海電鉄のルートだけでございます。
 この五年間に、和歌山市を中心に、コスモパーク加太開発計画に並行して和歌山市が建設中の第四団地造成事業が着々と進み、平成四年度ごろからは一部分譲開始とも言われ、大規模な事業が進められております。面積にして六十六ヘクタール、計画戸数約千六百戸、入居予定の人口が大体五千人と言われてございます。
 また、長年準備をして計画移転いたしました和歌山大学も、既に両学部の移転が完了し、和歌山市北部の高台に学園街が誕生いたしました。さらに、学園街の近くに民間企業の大規模開発事業計画のあることも仄聞いたしております。目下、県の関係課と協議中とも聞くものでありますが、このように関西空港関連の事業が南海電鉄沿線を中心に着々と具体化しつつある現状は、活力和歌山を求めて取り組んでまいった一人といたしまして、まことに喜ばしい限りであります。
 これらを見越して、新駅設置問題も議会で提起され、南海電鉄にも申し入れたことがございます。しかし、南海電鉄の現状を見るとき、何ら進展なきような感もするのでありますが、この点について企画部長に、今日までの南海電鉄に対しての取り組み、南海電鉄の県への対応、見込み等について御答弁をお願い申し上げます。
 ここで一つ、やれば成るという実例を挙げたいと思いますが、和歌山県に日本一小さい鉄道がございます。JR御坊駅から日高川口に至る紀州鉄道が──かつては御坊林交と申しましたが──昭和五十四年に、この鉄道を利用して通学する高校生の便利にと、校門のすぐ隣の用地を買収して新駅を設置いたしました。小さい鉄道会社であってもやればできるという見本でございますが、交通機関というものは、利潤の追求ということもわかりますけれども、公的な輸送機関としての使命があり、沿線住民に対するサービスというものも必要であろうと思います。その意味から、南海電気鉄道のもっと積極的な対応を望むものであります。企画部長の御答弁を願います。
 最後に、リゾートとレジャーを中心とした開発についてであります。
 このことについては、土地問題で前段の議員の多くが取り上げ、提言も申し上げてまいりましたが、私は次の点を申し上げたいと思います。
 「リゾート」という名目は同じでございますけれども、内容はスポーツ・レクリエーションを主としたゴルフ場開発──今、和歌山県内に土地ブームが沸き起こり、都市部はもちろんでございますけれども、山間僻地にも及び、にわかブローカーが横行し、土地値上がりに拍車をかけている現状は目を覆うものがあり、御承知のことと思います。
 高速道路南伸をもくろむもの、地域おこし事業に便乗するもの、田辺市らが計画するリゾート開発に便乗するもの等、いろいろと動きがあり、地価高騰により公共事業を進めていく上に大きな影響を来しておることは紛れもない事実でございます。白浜空港の用地買収しかり、高速道路の用地買収しかりでございます。
 この開発計画については県の指導認可を受けるということになってございますけれども、これはあくまでも開発計画地域内であって、周辺に対する指導というものが少なく、すべて地方自治体が負わなければならないという現状であると思います。
 今、県下を眺めますと、各地にゴルフ場を中心としたリゾート開発が多く聞かれ、一町に二カ所も三カ所も、多いところでは五カ所も六カ所もあるとうわさされ、県全体で四十カ所ほどあると言われてございます。これらの地域を中心に用地を買いあさっておりますが、もしこれらの開発計画が用地買収のときの目的に結びつかなかったときには、土地転がし等によって転売されることがございまして、当初の売り主の意とは全くかけ離れた開発につながらないとは限りません。
 こういう意味で、お隣の兵庫県では、全国一のゴルフ場を持っていると言われてございますが、最近、新聞紙上によりますと、県独自の開発規制条例を持ち、ゴルフ場については大体一自治体一カ所というふうな決めもしたように聞いてございます。県内にありましては、ゴルフ場の開発是か非かということで、住民投票によって賛否をとって反対を決めたという地域もあります。これらのリゾート開発に名をかりたレジャー施設などの動向と現況をどのように認識し、対応しようとするのか、お伺いするものでございます。
 知事は、今議会の答弁で土地問題は政治の緊急課題であると申されておりますが、まさにそのとおりであります。そこで、私は提言を申し上げますが、リゾート開発等を進める上で最も必要なものは、地元の同意と協力であると思います。地域開発につながり、乱開発を防止し、自然破壊を守り、良好な地域環境を整備するという意味で、これは仮称でございますけれども、和歌山県開発規制条例なるものをつくり、さらに土地利用開発に対する審議会というものをつくってはいかがかと提言申し上げるものでございます。
 そして、この審議会をつくるとするなれば、今日まで多くつくられました審議会とは内容の変わった立派なものをつくってほしいと思うのであります。今日までのような、大学教授の古手や団体の長を網羅したような審議会ではなくて、その道を歩んできた県職のOBの技術者や、地域で指導的な立場にあり県民や地域住民から信頼のある人々をもって組織し、実際にその地域の実情に精通した人々で審議することが本来の姿であろうと思うからであります。
 私は、このリゾートの質問をするに当たりまして、関西大学の教授である荒井政治先生が報告のような形で書きました「イギリスの経験 レジャーの社会経済史」というものを二度読み直してみましたが、そのまとめとしては、当時のイギリスと現在の日本とは内容は大いに違うと思いますけれども、レジャーというものは勤労の余暇から生まれてくるものであり、勤労とレジャーの調和の難しさ、新しいレジャー感の社会的合意にいかに長い時間がかかるかということを書いてございます。そういう意味で、このリゾート開発について提言を申し上げた次第でございます。
 最後に、このリゾートというのは十八世紀にイギリスに起こり、世界に広がったと言われてございますが、一部の投機家による無秩序な観光開発による自然美の破壊とリゾートの膨張による環境汚染から自然を守ろうとする自主的な運動、ナショナルトラスト運動の起こったのもイギリスの国からであります。
 今議会の冒頭に、私ども県議団会長の鈴木先生が田辺市のナショナルトラスト運動を取り上げられました。東洋で初めてと言われるナショナルトラスト運動の起こったのは、田辺市でございます。そのナショナルトラストで、わずかでありますが、民間の皆さん方の御協力を得て買い求めたその周辺を、今またリゾートの名をもって開発しようとされておりますが、これを守らずして、和歌山県民は大きな笑い者になることであると思います。そういう意味で、ただリゾートだけではなしに、地域開発に向けての県の積極的な体制というものの整備を急ぐように心からお願い申し上げる次第でございます。
 以上で、私の質問を終わります。
○副議長(宗 正彦君) ただいまの木下秀男君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 木下議員にお答え申し上げます。
 リゾートにつきまして、御意見なり御質問をいただいたわけでございます。
 その中で、開発規制条例をつくったらどうかという御意見でございますけれども、リゾート開発は和歌山県にとって地域振興の大変有効な施策であるとの認識から、積極的に現在取り組んでいるところでございます。
 お話ございましたように、リゾート整備については、すばらしい自然環境のもとで初めて成り立つものでございまして、こうした意味においても、おっしゃられた保全と開発の調和ということは非常に重要な課題であると認識しておるわけでございます。
 現在、開発許可等については個別の規制法により厳しく対処をいたしておるわけでございますし、また、地元の同意、協力ということが第一の前提条件でもあるわけでございます。
 御提言いただきました開発規制条例の制定については、今後の動向を見ながら、研究課題とし、議会の皆さんの意見も承りながら検討してまいりたいと思っておるところでございます。
 他の問題は企画部長から答弁いたします。
○副議長(宗 正彦君) 企画部長川端秀和君。
 〔川端秀和君、登壇〕
○企画部長(川端秀和君) まず、リゾート開発についての八つの御質問にお答え申し上げます。
 第一点は、リゾートの定義についてでございます。
 リゾートの定義については、いろいろな説があるようでございまして、その語源は「たびたび訪れるところ」という意味であるようでございますが、昭和六十三年三月に策定した県のリゾート開発基本構想では、「自然環境が豊かなところで、滞在してスポーツや芸術、その他に親しみ、生活を楽しむところ」と定義してございます。
 しかしながら、リゾート構想の策定に当たっては、本県の立地条件、地域特性から、観光・レクリエーション開発も含んだ広い意味のリゾートととらえ、多様なリゾート需要に対応した宿泊施設やスポーツ・レクリエーション施設、休養施設等を一体的、総合的に整備し、地域資源を十分に生かした魅力的なリゾート構想としてまいりたいと考えてございます。
 第二点は、公園法との関係についてでございます。
 本県の自然公園は、自然公園法、県立自然公園条例により、すぐれた風致景観の保全が図られているところでございまして、当該地域における開発行為については、国立公園内における各種行為に関する審査指針により一定の規制が行われているところでございます。
 しかしながら、自然はただ単に保護されるだけでなく、一方において人間生活にとって必要な生活、産業、保健、休養の場としての適切な利用も重要なことであり、自然公園の制度においても、保護とあわせて適切な利用の増進を図ることとされてございます。
 したがって、燦黒潮リゾート構想における自然公園の位置づけについても、自然の保全と自然景観を活用し、リゾート整備による地域の振興、活性化と自然公園の保護、利用との調整が十分に図られるよう、関係部局と協議してまいりたいと考えてございます。
 第三点は、宿泊施設と既存業者の問題でございます。
 新たな宿泊施設の立地に際しては、既存事業者の方々と共存共栄していくことが基本であると考えてございます。
 このことから、燦黒潮リゾート構想においては、地元市町、旅館組合等の関係団体で構成する燦黒潮リゾート構想推進連絡協議会で意見交換を実施しているところでございますが、平成二年度からは各重点整備地区を単位に運営することとし、リゾート整備を進める民間事業者も交え、地域の実情に合った検討を加えながら、協調ある発展を図ってまいりたいと考えてございます。
 第四点は、水質保全の問題についてでございます。
 リゾート整備に当たっては、良好な水質の保全と確保は非常に重要な課題でございます。このため、リゾート施設の整備については、関係部局と協議の上、汚水はできるだけ集合させて処理するなど、下流住民の方々の生活に影響を及ぼさないよう対処してまいりたいと考えてございます。
 第五点は、治山治水の問題についてでございます。
 本県の地理的特性から、災害の未然防止については積極的に実施していく必要があると考えてございまして、安全な地域づくりのための公共施設の整備を一体的、計画的に進めていくこととしてございます。
 御指摘の治山治水問題については、安全性の確保の観点から、開発に当たっては法律などに基づく各種の規制、基準を遵守し、原因者である民間事業者に対する厳正な指導を行い、県土保全及び安全対策に万全を期してまいりたいと考えてございます。
 第六点は、開発による自然保護についてでございます。
 良好な自然環境は、リゾート地を形成する上で重要な要素の一つでございます。本県のリゾート整備は、自然の保全とその景観の活用を基調に推進することとしてございまして、自然景観との調和に最大限の配慮をしてまいりたいと考えてございます。
 リゾート施設の整備に当たっては、周辺の自然環境との適応、調和に努め、自然環境に支障が生じることのないよう十分配慮してまいる所存でございます。
 第七点は、保安林の問題についてでございます。
 リゾート整備を進めるに当たっては、基本的には保安林を避けることとしてございますが、地理的条件、地域の土地利用の状況等から見てやむを得ず保安林を含むこととなった場合には、その指定解除等は必要最小限度とし、開発許可基準を遵守することにより保安林の機能を損なうことのないよう努めるとともに、周辺森林の機能の保持についても配慮してまいりたいと考えてございます。
 第八点は、施設周辺の環境整備についてでございます。
 リゾートの形成は、単に施設の整備をすることだけでなく、リゾート地にふさわしい周辺環境を保護、保全するとともに整備していくことが重要であると認識してございます。
 そのため、リゾート整備にあわせ、商業、医療、文化等の都市機能の充実や道路、下排水施設等の生活環境基盤整備を進めるとともに、特に災害と安全対策についても十分配慮し、地域の居住環境を向上していくことが必要であると認識してございます。
 次に、南海電鉄に関連する三点の御質問にお答え申し上げます。
 まず、南海本線と南海貴志川線を連結して関西国際空港への鉄道アクセスにという問題でございます。
 議員御提言のとおり、本県の地域交通網整備の問題として検討しなければならない課題であると認識し、南海電鉄に申し入れしてまいりました。
 しかし、現在の貴志川線の車両幅、列車とホームとの間隔、JR線や南海本線との使用電圧の違い、さらには列車通過頻度が多い阪和線や紀勢本線を横切ることになるなど、問題点が多く、極めて困難な事情がございますが、長期的な視点に立ってさらに話し合ってまいりたいと考えてございます。
 第二点は、JRきのくに線と南海本線との相互乗り入れについてでございます。
 JRの車両幅が南海に比べて若干大きいため、南海本線のホームに入るのが危険という問題等がございます。そのほかにも、列車運行の安全確保に必要なATS(自動列車停止装置)の種類の違いや車両構造上の違い等、ハードの設備改良、設備投資を要する問題等、大変厳しい現状でございます。
 県としては、関西国際空港への鉄道アクセスの利便性確保や在来線の輸送力増強等に取り組んでおり、今後とも、本県の交通体系の整備に努力してまいりたいと考えてございます。
 第三点は、南海の新駅「大学駅」の新設についてでございます。
 新駅の設置は、住民の利便性、地域の活性化を図る上で重要な問題であり、県議会総務委員会を初め、和歌山大学整備促進協議会、県、和歌山市及び和歌山大学から南海電鉄に対し要請を重ねてまいってきてございます。
 和歌山大学周辺地域は、急勾配、急な曲線を初め、地形、地質上の問題のほか、線路の構造基準を定めた普通鉄道構造規則による技術的な問題や膨大な投資が必要など、極めて厳しい課題がございます。
 しかし、県としては和歌山大学の総合大学化を含む周辺地域の発展のためにも必要と考えてございまして、現在、周辺の民間も含む地域開発計画のある中で、幅広く研究しているところでございます。今後、さらに南海電鉄に対して強く申し入れるとともに、関係機関、関係団体等と力を合わせ、粘り強く対応してまいりたいと考えてございます。
 次に、ゴルフ場に係る県内の動向と現況の認識及びその対応についてでございます。
 県下のゴルフ場の状況は既存二十カ所でございまして、県土面積に占める割合は〇・三一%となってございます。また、工事中は三カ所、事前協議中等は十五カ所で、これらがすべて完成をしても県土面積に占める割合は〇・七五%でございまして、近畿では最も低い状況でございます。一方、市町村単位で見てみますとアンバランスも見受けられます。
 今後は、こうしたことを十分認識しつつ、秩序ある開発や地域間バランスを勘案し、市町村とも十分協議しながら対応してまいりたいと考えてございます。
 最後に、和歌山県開発規制条例と土地利用開発審議会の御提言についてでございます。
 燦黒潮リゾート構想においては、海岸域に沿って約十六万二千ヘクタールを特定地域として指定し、このうち重点的にリゾート開発を図ろうとする地域は、一地区おおむね三千ヘクタールを重点整備地区として七カ所を設定しているところでございます。
 個々のケースにかかわる開発基準の審査については、現在、例えば都市計画区域内における大規模開発については、和歌山県大規模開発計画調整協議会、あるいは森林地域の場合には和歌山県林地開発調整協議会を設置するなどにより、個別規制法でそれぞれ対応しているところでございます。
 御提言の和歌山県開発規制条例の制定及び土地利用開発審議会の設置については、先ほど知事からのお答えもございましたとおり、今後の動向を見ながら、研究課題として検討させていただきたいと存じます。
 以上でございます。
○副議長(宗 正彦君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(宗 正彦君) 以上で、木下秀男君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
○副議長(宗 正彦君) 本日は、これをもって散会いたします。
 午後二時三十二分散会

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