平成元年12月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(松本貞次議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 午前十時四分開議
○議長(門 三佐博君) これより本日の会議を開きます。
○議長(門 三佐博君) この際、報告いたします。
 お手元に配付のとおり、監査委員から監査の結果報告がありましたので、報告します。
○議長(門 三佐博君) 日程第一、議案第百三十一号から議案第百四十九号まで、並びに知事専決処分報告報第十一号を一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 33番松本貞次君。
 〔松本貞次君、登壇〕(拍手)
○松本貞次君 おはようございます。
 きょうは三点について質問をしていきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。
 本年は、同和対策事業特別措置法が制定されて二十年という、一つの節目の年に当たります。この二十年間に及ぶ多くの人々の努力により、部落差別の実態は一定改善されてきました。住環境面での改善は七割程度達成され、高校進学率も再低下、格差の広がりが言われつつも、二十年前の実態と比較すればかなり高まってきました。さらに、民間の企業や宗教者の間で部落問題に取り組む人々の輪も広がっており、部落問題解決に向けた諸施策が突破口となって、一切の差別撤廃に向けた機運も高まってきています。
 こうして、この二十年間、多くの人々によって積み重ねられてきた血のにじむような努力は、それなりの成果を上げてきたと評価することができます。しかしながら、部落問題の解決という目標から今日の部落差別の実態を直視したとき、残された課題は少なくありません。
 例えば、最も進んでいるとされている住環境面での改善とて残事業があり、早い時期に実施された事業が老朽化し、今日の水準に満たないという問題もあります。また、全国におよそ千カ所も存在していると思われる同和対策事業未実施地域の問題もあり、これら地域の実態の改善なくして部落問題の解決はありません。
 さらに、住環境の改善が進んできた部落においても、生活、労働、教育面での実態の改善は、これから本格的な取り組みが求められています。例えば、高校進学の状態は高まってきたとはいえ、いまだに全国平均と比べて六%から七%の格差がありますし、入学率ではなく、中途退学の急増などの現象を入れた卒業率で比較すると、一〇%を超す格差が存在しています。その上、大学進学率で見ると、まだ全国平均の半分程度といった現状があります。
 また、差別事件の現状を見ても、結婚や就職にかかわった差別事件は後を絶ちませんし、教育現場における差別事件も多発しています。さらに、各界のトップ層や公務員による差別事件も続発しており、悪質な差別落書きや差別投書等、関係者から「差別」と批判をされても全く反省しようとしない居直り事件などがふえてきています。
 残り二年余りとなった地対財特法で、これからの残された課題はすべて解決されるのでしょうか。地対財特法によって残事業はある程度解決されるとしても、全国の千カ所にも達する同和対策事業未実施地域の改善はできません。また、地対財特法によって高校奨学金制度が大幅に後退させられたことが象徴しているように、これから本格的な取り組みが求められる生活、福祉、労働、教育面での実態の改善はできません。さらに、地対財特法は差別事件に対して全くの無力で、差別意識の撤廃にはほとんど役立ちません。
 このように地対財特法の限界を直視するならば、住環境面での改善はもとより、生活、労働、教育面の実態も改善し、差別事件を防止するとともに、差別意識の撤廃にも役立つ「部落解放基本法」の制定がぜひ必要と考えますが、県知事の御所見をお示し願いたい。
 また、部落解放基本法の制定の必要性を訴える根拠は、これだけではありません。何よりもまず、日本国憲法や同和対策審議会答申の精神を踏まえることにあります。
 周知のように、日本国憲法は差別を否定するとともに人権の尊重を重視しております。しかしながら現実には、部落差別は撤廃されなかったのです。
 そこで、一九六五年八月に出された同和対策審議会の答申では、日本国憲法の精神にのっとり、部落問題の早急な解決のために国を挙げて抜本的、総合的な取り組みを実施することを求めたのです。この答申の基本精神を具体化したものが「部落解放基本法」です。
 また、この部落解放基本法の目標は二つで、一つは部落問題の根本的な解決を速やかに実現すること、もう一つは、いわゆる差別のない民主社会の建設に寄与することにあります。この目標を実現するために、一つ目は、生活、労働、教育も含め、劣悪な実態を改善するために積極的な事業を実施すること、二つ目は、差別意識を払拭するために教育、啓発活動を強化すること、三つ目は、興信所、探偵社などによる部落差別調査や企業による就職差別に代表される悪質な差別行為を防止するため法的規制を導入するとともに、実効性のある人権委員会を設置し、救済を図ることです。
 現在、我が国には基本法という法律が十一あります。農業基本法、林業基本法、教育基本法、災害対策基本法、観光基本法、公害対策基本法、中小企業基本法、消費者保護基本法、原子力基本法、心身障害者対策基本法、交通安全対策基本法の十一があり、部落問題解決に向けての部落解放の基本法があっても何ら不思議ではないと思います。
 本年当初議会において同様の質問をしたところ、知事は、過去三度にわたる法律制定の中でも県として懸命の行政努力を果たしてきた、また法期限後の問題については時期を見て対応してまいりたいと答弁をしていただいておりますが、部落問題の完全解放への道に向かい、全国地方自治体の先進的役割を果たす和歌山県の知事として全国に先駆けて行動を起こしていただけるのか否か、御答弁をお願いいたします。
 また、今日的課題として、部落解放達成のためには、ハード面はもちろんのこと、ソフト面も非常に重要であります。ハード、ソフト両面の取り組みなくして解放の達成はないと考えますが、今日の現状を見ると、まず地対財特法法期限内にハード面、いわゆる計画内事業の完全実施が肝要であると思います。
 今、平成元年度以降の計画内残事業費は三百三十五億五千万と聞くが、各関係部局において法期限内実施めどを説明願いたい。また同様に、各市町村の新規事業、要望事業等、計画外事業の現状はどうか、各関係部長の御答弁をお願いいたします。民生部長、土木部長、農林水産部長で結構でございますので、答弁を求めたいと思います。
 次に二点目の、一九九〇年すなわち来年の「国際識字年」へ向けての県の取り組みについて御質問をいたします。
 一九九〇年を国際識字年とすることを一九八七年十二月七日の国連総会で決定いたしました。国連の教育科学文化機関・ユネスコが一九八五年に提案して以来、準備が進められてきたものです。その内容は、二十一世紀までに全世界の非識字者の克服を目指し、長期行動計画を立て、各国政府、民間団体挙げて取り組もうとするものであります。
 一九八七年十二月七日に、国連総会において国際識字年に向けた国連決議を採択したわけであります。非識字の撲滅が教育の権利保障の前提をなすことを認識し、広範な非識字の存在が、とりわけ多くの発展途上国において経済的、社会的発展と文化的、精神的進歩の過程を著しく阻害することを強調し、世界のあらゆる地域での非識字の撲滅が国際社会の最優先目標と認識されるべきであるとして、一九九〇年を「国際識字年」と宣言したわけであります。
 現在、世界の非識字者は八億九千万人と言われております。そのうち、アジアに六億六千万人が集中し、とりわけ女性が三四・九%を占めているわけです。さらに、被差別者層には非識字者が集中して存在し、社会生活の発展に対応した教育が受けられていない機能的識字の問題も大きく存在をしております。
 文字が読めない、字が書けない、算数ができないと言うと、「えっ、今どきそんな。年老いた人ならばわかるが」、こう思う人がたくさんおろうと思います。特に、義務教育九九%の日本では識字の問題は関係ないと思われがちですが、我が日本においても、経済的、社会的理由において教育の機会均等が著しく阻害されてきた多くの人々が存在します。非識字の多くは農村地域や都市スラムに集中し、とりわけ部落においての識字の問題は、八五年の全国実態調査において五人のうち二人までが読み書きに不自由という実態があり、さらに近年の高校中退者の増加の問題など、今なお深刻な課題が山積しております。
 一九九〇年、国際識字年を迎え、和歌山県として基本的人権確立のため反差別の視点に立って県行政としての非識字者根絶に向けた取り組みの方向を示されたい。
 次に、和歌山県立医科大学の管理運営について質問をいたします。
 一九八八年十二月二十日の各新聞紙上──読売新聞においては「未承認医療機器を使い手術 不正に一千万円保険請求」という記事を見ました。その後、何となく見過ごしてきたのですが、本年の三月二十六日、一通の手紙が私のもとに届きました。その後、四月十四日、四月二十七日と、同様の手紙が計三通、私の手元に届いたのであります。これがそうです。大学ノートに走り書きをした投書であります。
 この投書の内容は、一通は、十二月二十日の新聞報道の事件の経過、特に昭和六十二年の四月より六十二年の十月までの内容を事細かく書かれております。もう一通は、「未承認医療機器の診療について」ということで、医療の内容を専門的に書かれております。そしてもう一通は、「腐敗・堕落の医大の管理体制を改善し、汚職と利権あさりの悪徳教授を追放しよう」と書かれた投書です。
 私は、この三通の手紙を県民の声なき声として、県行政、県立医大に事実の確認、解明を求めてまいりました。八カ月間、保健環境部の医務課、民生部の保険課、それに医大へも数回参り、学長とも三度お会いさせていただきました。だが、どうしても理解し解明することができませんので、本問題を公開し、県民の皆様に医療業界の不透明性を知っていただくために質問をいたします。
 本問題の内容とは、輸入未承認の医療機器である体外衝撃波・尿路結石破砕装置ソノリス二〇〇〇Aをめぐっての薬事法等にかかわる疑惑の問題であります。
 これは、東レ富士ピッカーインターナショナル株式会社が薬事法に基づき、体外衝撃波・尿路結石破砕装置ソノリス二〇〇〇A(フランスのテクノメッド・インターナショナル製)の輸入承認を一九八八年七月十八日に厚生省より得たわけであります。厚生省の承認番号は、六三B輸等六〇五号です。ところが、東レ富士ピッカー社はこの輸入承認に必要な治験データを得るため、厚生省に対する事前の治験計画届(一九八七年一月十七日付)には治験依頼病院を和歌山県立医大附属病院、奈良県立医大附属病院、東海大学附属大磯病院の三病院としていたにもかかわらず、和歌山県立医科大学病院は、一九八七年六月十八日の治験終了後、同年六月二十五日に、いわゆる治験病院でない、その年の六月オープン間もない民間病院Kに医療機器ソノリス二〇〇〇Aを無償で移設したわけであります。
 民間病院Kは、同機器を用いて、一九八七年七月七日以降、一九八八年八月二十三日までの間に約四百十四件の治療を行い、多額の収入を得て保険を不正に請求し、受給していた。しかし、その当時、東レ富士ピッカー社は同機器にかかわる輸入販売業の許可を取得しておらず、かつ治験を行う目的で移設していないことから、この行為は薬事法第六十四条において準用する同法第五十五条第二項の規定に違反するわけであります。
 こうしたことすべてに和歌山県立医大の某教授が強く関与しているわけであります。某教授なくしてこうした問題がなかったと言っても過言ではありません。
 某教授いわく、県民医療の向上のため。医療業界ではごく当たり前かもしれないが、我々県民から見れば不自然であり、余りにも強く関与し過ぎているように思えてなりません。
 そこで、数点にわたり質問をし、事実か否かをお答え願いたい。
 まず一点目は、治験目的のソノリス二〇〇〇Aの医療機器が、医大から、開設数日の治験届け出外の民間病院Kになぜ無償で移設されたのか。また、搬送購入云々という話をされたが、そのことは事実か。某教授の職務権限、口添えなくして実現しなかったと考えるが、どのように関与されていたのか。
 二点目、ソノリス二〇〇〇Aの医療機器は定価二億五千万から三億で、民間病院Kの購入価格は定価の十分の一とも五分の一とも聞く。この同機器を、昭和六十二年の三月から六月十八日まで医大で治験を行い、同年六月二十五日に民間病院Kに無償で移設している。このことを考えると、厚生省承認日は六十三年ということから、翌年七月十八日までの一カ年間使用の中古品となる。購入時には非常に安い価格で取引されたと考えるが、どうか。
 また、本問題を質問すると、それは東レ富士ピッカー社と民間病院Kとの問題ですからと答えられるが、事前に搬送購入の事実があったということを言っており、本質的には、公的立場の某教授の口添えなくしてこの商談は成立しないと考える。K病院と某教授の関係、また利害関係はなかったのか否か。
 三点目、医大の某教授の教室から民間病院Kへ二名の医師を派遣し、某教授自身が六十二年六月から六十三年八月まで週一回民間病院Kへ一般診療をしていたとあるが、そのことは事実かどうか。
 四点目、シイメンス社、ドルニエ社、エタップ社等、ソノリス二〇〇〇Aと同型の厚生省承認の医療機器があったにもかかわらず、なぜ執拗に未承認医療機器を東レ富士ピッカー社を通じて導入しようとしたのか。某教授と東レ富士ピッカー社の間に医科大学の治験を進める段階においても疑惑を感じるが、どうか。
 五点目、某教授は県立医大の教授であり、未承認医療機器の使用、保険請求において熟知されていたにもかかわらず、K病院の治験段階において患者に十分な説明、承諾書の受け取りがなされておらず、K病院に対する指導が全くされていないのはいかなる理由か。
 以上のことを考えると、我々県民にとって非常に理解しにくい医療業界の不透明性がある。
 そこで、県立医大の教授は特別公務員であるが、こうした問題に関与することは公務員法に違法にならないのか。また、職務権限範囲に及ぶと考えるが、そのことはどうか。
 最後に医大学長に、こうした問題は医大では日常茶飯事、医療業界ではごく当たり前のこととして通っているのか。我々県民は、医大教授たるべきもの、県民にひとしく講ぜられなければならないし、県民医療、地域医療を考えてもひとしく講ぜられなければならないと考える。だが、一個人、民間病院になぜ執拗に肩入れをするのか。そのこと一つをとっても、県民は疑惑を募らせるばかりであります。
 今日、県立医大の移転問題についても、県知事の御英断で紀三井寺競馬場跡地に決定、後は一日も早く県民医療のとりでを築くためにと各界各層の力を結集しているところと考えます。だが、そのことも、行政の力だけでは、また医大の力だけでは実現しません。県民の協力あったればこそと考えます。こうした、県民が疑惑を持つ、疑惑を招くということは、医大内部の民主的な論議、民主的な管理運営が不十分と考えるが、どうか。
 以上の点について明快な答弁を期待して、第一回目の質問を終えます。
○議長(門 三佐博君) ただいまの松本貞次君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 松本議員にお答え申し上げます。
 部落解放基本法の制定についての考え方でございます。
 お話ございましたように、地対財特法の有効期限があと二年余となったわけでございます。そしてまた、議員指摘のとおり、幾つかの課題も残されておるのが現状でございますけれども、現時点においては、この法律期限内に完全解決をすべく、県同和対策総合推進計画に基づいて全力を傾注してまいる所存でございます。
 したがいまして、失効後における法律の問題については、国の判断にゆだねるとしても、本県においては庁内に設置している県同和対策協議会で検討を重ね、県議会初め、県同和委員会や関係機関、さらには市町村の意見も十分にいただきながら適切に対処してまいる考えでございます。
○議長(門 三佐博君) 民生部長高瀬芳彦君。
 〔高瀬芳彦君、登壇〕
○民生部長(高瀬芳彦君) 同和対策事業の期限内実施めどと計画外事業についてお答えいたします。
 県同和対策総合推進計画策定時に見込まれていた計画事業量は、県全体で約六百四十五億でございます。その後、それぞれの市町村の事情により多少の事業変更がございますが、平成元年度の実施事業をも含めると、その進捗率は六四%でございます。
 なお、民生部が所管する事業につきましては、計画策定時には約百五十一億の事業が見込まれておりましたが、その後の事業実施により八六%の進捗を見たところでございます。したがいまして、平成二年度以降の事業は約二十一億円で、法期限内達成が可能と思われます。
 また、計画外事業でありますが、現時点では、まず計画事業の消化に重点を置き、市町村指導を行っているところでございます。法期限を控え、新たな要望もあることは十分予想されますが、計画事業との兼ね合い、また今後最も重要とされる産業就労対策に寄与する事業であるかどうかという点を十分精査しながら対応してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(門 三佐博君) 土木部長磯村幹夫君。
 〔磯村幹夫君、登壇〕
○土木部長(磯村幹夫君) お答えいたします。
 土木部において県同和対策総合推進計画に基づいて実施している事業は、昭和六十二年度以降で約四百八億六千万円でございます。平成元年度実施予定分を含めると約六〇%の実施状況で、金額にして約二百四十一億八千万円でございます。
 平成二年度以降の残事業は、百五十九億四千万円であります。このうち住宅関係及び下水道関係につきましては、法期限内実施は可能と考えております。街路事業関係では、都市部の人家、商店、連檐地で施行する関係から用地物件の解決に多くの課題がありますが、法期限内完成に向けて努力を重ねてまいります。
 現時点では、残事業の消化に全力を傾注しているところであります。法期限を控え、新たな要望も十分予想されますが、計画事業との兼ね合い、また今後肝要とされる産業就労対策、住環境整備という点について精査しながら対応してまいる所存でございます。
 以上でございます。
○議長(門 三佐博君) 農林水産部長安田重行君。
 〔安田重行君、登壇〕
○農林水産部長(安田重行君) お答え申し上げます。
 県の同和対策総合推進計画に基づいて農林水産部が所管する事業は、昭和六十二年度以降の計画事業費については約七十六億円で、平成元年度事業実施予定分を含めると、その進捗率は五六%となってございます。
 平成二年度以降の残事業は三十二億九千万円で、法期限内達成に向け、市町村ともども努力をしてまいる所存でございます。
 また、計画外の事業につきましては、現在、対策事業を進めている中で新たな事業要望もあり、特にオレンジの自由化問題等、厳しい農業事情の中で産業職業対策としての重要性を踏まえ、計画内事業との絡みを十分精査しながら対応してまいりたいと考えてございます。
○議長(門 三佐博君) 医科大学学長松下 宏君。
 〔松下 宏君、登壇〕
○医科大学学長(松下 宏君) 従前より議員から種々の御指摘をいただき、私としても誠心誠意調査してまいりました。その結果に基づいて御答弁申し上げます。
 まず第一点の、医療機器の移設の関係でございます。
 少し経過の説明をさせていただきますと、この機器を利用した治療法は、御承知のように手術を必要とせず、しかも入院期間も短くて済む画期的なものであるため、結石の激痛に苦しむ患者にとってその導入が待ち望まれておりましたが、当時、昭和六十年ごろは全国でも数台しかなく、県内の患者は遠く札幌等まで出かけて高額の負担をしながら治療に行っていた状況であり、したがって、県内の患者の方々からぜひ県内に設置してほしいとの強い要望がなされておりました。
 もちろん、本学としては、県民医療の向上のためにもその治療法の研究の必要性を痛感し、機器の輸入代理店と治験の交渉を行ったところ、高額にしてかつ希少品であり、しかも搬送の問題等から県内での買い取り条件を示されましたが、本学での購入は諸般の事情から大変厳しいものがあり、たまたま開設準備中であった和歌山市内のある民間病院が地域医療に貢献できる特色ある診療科を設けたいという意向のもとにこの機器を購入したい旨の意思表示があったことから、本学の治験終了後、この病院へ移設されることになったものであります。
 この行為は、医学に携わる者として、いわば県民医療向上のための使命感からなされたものであることを御理解賜りたいと存じます。
 第二点目の、民間病院と当該教授との関係であります。
 まず最初の医療機器購入につきましては、当時の状況から判断すると、その病院が極めて安い価格で購入できたとは考えにくいのでありますが、いずれにしても、当該教授がこの取引には一切関与していないと判断しております。
 また、当該教授とこの病院の院長は、同じ大学の出身者という以外、特別の関係はなく、また利害関係はないものと信じております。
 第三点目は医師の派遣についてであります。
 この機器を用いた治療には医師二名が常勤するよう厚生省の指導を受けているため、医大を退職した医師二名が治療に当たっております。
 なお、当該教授は、教育公務員特例法第二十一条の規定により、大学の許可を得た上で、御指摘の期間中、週一回三時間の指導診療に行っていたことは事実であります。
 第四点目の未承認機器の関係でございます。
 当時、お話の三社の機器のうち、一社のみが承認済みであり、他の二社と医大が治験に使用したものと合わせて三社の機器が未承認の状態でありまして、当該教授は、この三社のうちから性能等を勘案した上で一社を選定したものであります。
 なお、機器の輸入代理店との間の疑惑につきましては、一切ないと信じてございます。
 第五点目についてでございますが、適正な医療には医師と患者の相互信頼が必要であります。今回の場合、特に新しい治療法であり、かつ相当の費用負担を伴うため、患者さんに十分事情を説明し、理解を得た上で承諾書をいただくようにしていると聞いております。
 次に、議員お尋ねの公務員法及び職務に関してでございます。
 県立医科大学の教員は、基本的には地方公務員法の適用を受けます。しかしながら、その職務と責任の特殊性に基づき、任免、分限、懲戒、服務及び研修に関することにつきましては、教育公務員特例法の適用を受けることになります。
 今回の行為は、地域医療の向上を図るため、医療に携わる者としての使命感から行われたものと判断しており、法律に触れるものではないと考えております。
 教授の職務は、学生を教育し、その研究を指導するとともに、みずからも研究に従事することであり、また診療を通じて臨床医学に関する教育を行うことも課せられた職務でございます。
 最後に、医大の管理運営体制のことでございます。
 ただいま御説明させていただきましたとおり、今回の一連の行動は県民医療の充実、向上という使命感から行われたものと考えており、その間、疑惑のようなものは一切ないものと信じております。
 しかしながら、議員お話しのような投書があったという事実を踏まえ、さらにはまた本学の統合移転に向けて準備を進めていただいているときだけに、私としても、大学の管理運営体制について再検討し、反省すべきは反省し、その運営に遺憾のないよう努力を重ねてまいる所存でございます。
 終わります。
○議長(門 三佐博君) 教育長高垣修三君。
 〔高垣修三君、登壇〕
○教育長(高垣修三君) 国際識字年の取り組みについてでございます。
 お話ございましたように、国連では「二〇〇〇年までにすべての人びとに文字を」というスローガンを掲げ、識字問題に対する理解と認識を深めるとともに、非識字者をなくするための取り組みがなされてまいったところでございます。
 私どもといたしましては、識字問題は基本的人権の保障にかかわる重要な課題であると受けとめ、従前から識字学級、教室等により取り組みを行っているところでございます。これらは、同和地区住民の生活や文化の向上など、同和問題の解決を図る上で大きな役割を果たしてまいりました。
 国際識字年を迎えるに当たりまして、全庁的な中で県国際識字年推進連絡会議を設置して庁内組織の強化を図るとともに、識字問題について啓発をし、識字教育の充実に努めてまいらなければならないと考えてございます。
 また、今年度から各部局で実施する事業や各種研修会の中に識字問題を位置づけるとともに、識字教育推進のための事業が実施できるように鋭意努力をしてまいる所存でございます。
 以上でございます。
○議長(門 三佐博君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 33番松本貞次君。
○松本貞次君 まず、同和行政について知事に要望しておきます。
 部落解放に向けて非常に厳しい現状であるということを御認識していただいていると考えるわけですが、知事は、地対協の委員として国でも精いっぱい頑張ってこられたわけです。七月に改選されたということですが、多分、また次も選出されるだろうと考えます。そういうような状況から、和歌山県の知事として、この法の制定に向けて力を発揮できる場所が与えられるというふうに考えます。
 そういう意味で、今から、いわゆる部落の完全解放に向けての法の制定等も研究をされ、また特に私がきょう話をした部落解放基本法というものを熟知していただきたい。そして、いわゆる部落の完全解放に向けた対応について、時期を失しないよう、精いっぱい努力をお願いしたい。このことを要望しておきます。
 それから、医大の学長から答弁をいただいたわけでありますが、私の質問と歯車がかみ合わない点が多々あります。そのことについて、一つ一つをどうしてこうしてということで詰めていくと時間がありませんし、そういうことは多分無理だろうと考えます。その点は、再度私も調査をして解明していきたいと思います。
 だが、これだけはわかっておろうと思うわけです。県民は疑惑を持ったと。いわゆる三通の投書にもあるように、県民は「おかしいんと違うか」という疑念、疑惑を持ったことは事実だと考えます。
 私も常々感じているわけですが、医大側と県民の、医大に対する認識や期待との間に大きなギャップがあるように思えてなりません。そのためにも大学側の積極的な広報活動が必要と思いますが、それはそれとして、私は私なりに、それを解決する一つの手段として、開かれた医大、県民と交流する医大を目指して、当面、設置者側はもちろんのこと、県民の声を代表する県議会等、各界各層の人材をそろえて、いわゆる懇談の場を持つということも大事ではなかろうかと考えるわけです。
 開かれた医大──医療業界だけで対応するのではなしに、各界各層の人材を養成して懇談会的な場を設置することも重要ではなかろうかと考えるわけですが、いかがなものでしょうか。本来なら、設置者の知事にお伺いをすべきものでありますが、今回は大学側の学長の所見を伺っておき、次のステップにしていきたいと思いますので、学長の答弁をお願いいたします。
○議長(門 三佐博君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 医科大学学長松下 宏君。
 〔松下 宏君、登壇〕
○医科大学学長(松下 宏君) ただいま松本議員から、大学の運営に関し、懇談の場を設けてはどうかという御提案をいただきました。
 私といたしましては、貴重な御意見と受けとめます。学内で検討するとともに、設置者側である知事部局ともよく相談をさせていただきたいと思いますので、しばらく時間をちょうだいいたしたいと思います。
 以上でございます。
○議長(門 三佐博君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
 〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(門 三佐博君) 以上で、松本貞次君の質問が終了いたしました。

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