平成元年12月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(全文)


県議会の活動

 平成元年 和歌山県議会十二月定例会会議録 第 三 号
 
 十二月 八日 (金曜日) 午前 十時 四分 開議
  午後 二時二十七分 散会
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議 事 日 程 第三号
  平成元年十二月八日(金曜日)
  午前十時開議
 第一 議案第百三十一号から議案第百四十九号まで及び報第十一号(質疑)
 第二 一般質問
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本日の会議に付した事件
 第一 議案第百三十一号から議案第百四十九号まで及び報第十一号(質疑)
 第二 一般質問
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出 席 議 員(四十六名)
 1 番 井 出 益 弘 君
 2 番 和 田 正 一 君
 3 番 町 田 亘 君
 4 番 中 村 利 男 君
 5 番 山 本 一 君
 6 番 宗 正 彦 君
 7 番 岡 本 保 君
 8  番 鈴 木 俊 男 君
 9 番 阪 部 菊 雄 君
 10 番 中 村 裕 一 君
 11 番 平 越 孝 哉 君
 12 番 大 江 康 弘 君
 13 番 中 西 雄 幸 君
 14 番 橋 本 進 君
 15 番 古 田 新 蔵 君
 16 番 浦 武 雄 君
 17 番  堀 本 隆 男 君
 18 番 宇治田   栄 蔵 君
 19 番 下 川 俊 樹 君
 20 番 石 田 真 敏 君
 21 番 木 下 秀 男 君
 22 番 中 村 隆 行 君
 23 番 藁 科 義 清 君
 24 番 門 三佐博 君
 25 番 尾 崎 要 二 君
 26 番  那 須 秀 雄 君
 27 番 木 下 義 夫 君
 28 番 上野山 親 主 君
 30 番 尾 崎 吉 弘 君
 31 番 西 本 長 浩 君
 32 番 岸 本 光 造 君
 33 番 松 本 貞 次 君
 34 番  浜 本  収 君
 35 番 和 田 正 人 君
 36 番 浜 口 矩 一 君
 37 番 山 崎 幹 雄 君
 38 番 貴 志 八 郎 君
 39 番 田 中  実三郎   君
 40 番 森 利 一 君
 41 番 村 岡  キミ子   君
 42 番 森 本 明 雄 君
 43 番 中 村 博 君
 44 番 中 村 千 晴 君
 45 番 小 林 史 郎 君
 46 番 渡 辺 勲 君
 47 番 藤 沢 弘太郎 君
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欠 席 議 員(一名)
 29 番 平 木 繁 実 君
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説明のため出席した者
 知 事 仮 谷 志 良 君
 副知事 西 口 勇 君
 出納長 梅 田 善 彦 君
 知事公室長 市 川 龍 雄 君
 総務部長 斉 藤 恒 孝 君
 企画部長 川 端 秀 和 君
 民生部長 高 瀬 芳 彦 君
 保健環境部長 尾 嵜 新 平 君
 商工労働部長 天 谷 一 郎 君
 農林水産部長 安 田 重 行 君
 土木部長 磯 村 幹 夫 君
 企業局長 吉 井 清 純 君
 以下各部次長・財政課長 
 教育委員会委員長職務代行者
 岩 崎 正 夫 君
 教育長 高 垣 修 三 君
 以下教育次長
 公安委員会委員長
 西 本 貫 一 君
 警察本部長 井 野 忠 彦 君
 以下各部長
 人事委員会委員長
 寒 川 定 男 君
 人事委員会事務局長
 代表監査委員 宮 本 政 昭 君
 監査委員事務局長
 選挙管理委員会委員長
 稲 住 義 之 君
 選挙管理委員会書記長
 地方労働委員会事務局長
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職務のため出席した事務局職員
 事務局長 山 本 恒 男
 次 長 倉 本 辰 美
 議事課長 栗 本  貞 信
 議事課副課長 中 西 俊 二
 議事班長 高 瀬 武 治
 議事課主任 松 谷 秋 男
 議事課主事 石 井 卓
 総務課長 神 谷 雅 巳
 調査課長 阪 上 明 男
 (速記担当者)
 議事課主査 吉 川 欽 二
 議事課速記技師 鎌 田 繁
 議事課速記技師 中 尾 祐 一
 議事課速記技師 保 田 良 春
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 午前十時四分開議
○議長(門 三佐博君) これより本日の会議を開きます。
○議長(門 三佐博君) 日程第一、議案第百三十一号から議案第百四十九号まで、並びに知事専決処分報告報第十一号を一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 34番浜本 収君。
 〔浜本 収君、登壇〕(拍手)
○浜本 収君 三点にわたって質問をいたします。
 その一つは、串本町を中心にする土木行政なかんずく談合の問題についてであります。その二つは、南紀白浜新空港の用地買収にかかわる問題であります。三つ目には、田辺湾リゾート構想、その一視点、住民の合意をどうするかという、この三つに限って質問をいたします。
 既に新聞紙上を通じて何回か報道されました、串本町内における土木業者間における生コン供給ストップに端を発した、いわゆる談合問題について質問をいたします。
 その原因の第一は、十月四日、串本町建設課による町道浪の浦浜通線災害復旧工事の入札、その第二は、十月五日、和歌山県勝浦漁港事務所による串本漁港改修工事の入札に絡むものであります。
 串本町地区建設業者は、指名競争入札日の前日には串本地区土木協同組合事務所に集まり、工事ごとに希望者を募り、希望者が複数にわたる場合には抽選により組み合わせてトーナメント方式で話し合いを進行させ、話し合いが最終的に二人ないし少人数に絞られるが、話し合いが決着困難または決着のつかないときは、同業者九人で構成する調整委員会の調整に付して決定するという仕組みをとっているが、この二件──先ほど申し上げた二つの工事箇所のことでありますが──については、そのいずれもが調整委員会の裁定に従わず、入札に参加した三業者に対し串本地区土木協同組合と生コン協同組合の一部幹部が工事用の生コン供給をストップするという前近代的な制裁措置に出たために、三業者は人権侵害、名誉棄損、威力妨害、独占禁止法に違反する行為であるとして、十月二十一日、公正取引委員会大阪事務所に提訴に及んだものであります。これを受けた公正取引委員会は、十月三十日、三十一日、十一月一日と現地に入り、これが事情聴取に及んでいるところであります。
 また、去る十一月四日の串本町議会全員協議会におきましては、先ほど述べた調整委員会での話し合いは談合ではないか、一カ月近くも生コンがとまり、町の公共事業に支障を来しているではないか、工期が間に合わないではないかといった意見、また、初めから談合で契約相手がわかっているのなら競争入札するなど意味がないではないか等々、議論が百出したのでありますが、さらに三業者は串本町長に対し、「生コンをとめた関係業者に対しては厳重注意をするとともに、今後このような社会通念上許されない行為をした業者には指名停止の毅然とした態度で臨むこと」と申し入れたところであります。
 以上の概要に立って、次の諸点について土木部長、農林水産部長、総括的に知事に質問をいたします。
 一つ。町当局は、金銭の授受がない談合はいわゆる刑事問題になる談合には当たらないと言明しているが、公正取引委員会広報課によれば、「談合は独禁法第三条と第八条の『不当な取引制限』すなわち『事業者が他の事業者と対価を決定するなどし、公共の利益に反し、競争を制限する』に当たり、金銭の授受のあるなしは関係なし」としているが、串本町における土木業界のいわゆる調整委員会による調整行為は談合ではないかと私は思うが、県の見解を示されたいのであります。
 二つ。串本漁港改修工事をめぐる談合についての一時間十五分に及ぶ生々しい録音テープの一部、すなわち談合の始まりからその調整、落札業者決定までの業者のやりとりが新聞紙上を通じて明らかにされているが、参考までにその一部を紹介いたします。
 「調整の言うことを聞かず、たたいたら──自由競争入札をするということです──どうするのか」、「それは、個人対全業者の形になる」──個人に対してみんなが「いじめる」というか、そういう形になる。「組合の意向に逆らって単独でいくなら、それは結構。わしら、あえて生コン業者に『売るな』とは言わないが、売った場合はその業者と取引停止をする」、「わしは串本の漁港工事一本ももらえない。仕事がないからといって横取りはできない。これが業者のおきてだ」、「土建屋の世界は縄張りがあって、力のない者は幾らいってもだめだ」。
 こんな言い合いが続き、調整委員会は採決の結果、七対一でA社に決め、その後、A・C両社を呼び、会社の継続事業の実績を理由にA社に決定した。「こっちは、失礼やけど、たたかせてもらいます」として、C社はこの決定には従えないことを主張。
 かくて、十月五日午後一時半、午前中のこの二日間にわたる談合を終えて十三業者参加のもと──うち十業者は形式的参加ということでありますが──競争入札となったが、この入札に当たり、勝浦漁港事務所の二人の担当者が、業者が金額を記入した札と制限価格を記入した敷札を照合した後、「しばらくお待ちください」と言って結果を発表せずに退席。約十五分後に戻ってきたが、また退席。五分後に戻ってきて、「A社が二千七百三十五万円で落札」と発表したが、何のために行ったり来たりしたのか、その間どこで何をしていたのか、答えられたいのであります。
 なお、地方自治法施行令を持ち出すまでもないことだが、かかる入札では、不正がないようその場で直ちに結果発表をするのが鉄則だが、これについての見解をただすものであります。答弁によって、私はこのことをさらに解明してまいりたいと思います。
 三つ目。新聞記事によれば、勝浦漁港事務所長は担当者の退席について「これまでの入札で失格者が出たケースがなく、失格者の発表をどうするか迷って退席した」と弁明しているが、失格者が出たケースがなかったというのはなぜか。今まで一回もなかったんだということを新聞社の方々に報告をしておりますが、それはなぜか。
 四つ目。昭和六十年度以降、串本町内の漁港改修、修築、局部改良工事入札は今回の入札を含め二十五回。うち一部を除いて二十の工事はすべてA社が落札しているが、その工事総額はほぼ十七億であります。さらに漁港事務所長は、「この間(六十年度以降)失格者がなくA社が独占的に落札してきたことを不思議に思ったら仕事ができない」と言っているが、不思議に思うのが当たり前だと私は思う。何のためにそんな弁明をしているのか、あわせてお聞きしたいのであります。
 五つ目。十一月一日、公正取引委員会が同事務所で事情聴取を行った直後、漁港事務所長が落札したA社に、勝浦からわざわざ串本へ「談合の事実を確認したかったので訪れた」とし、「A社は『談合ではなく調整だ』と言っているので、今のところ調査する予定はない」と言明しているが、これだけ大きな問題になっているときにA社を訪ねたり、また相手の言い分をすべて是認する発表をしたりするこの行政態度について、その見解をただしておくものであります。
 六つ目。また、同所長は「談合があったとしても、私がどうこうするの問題でなく、県がそれなりの制裁をするだろう」と言明しているが、「県」とは一体だれか。知事を指すのか。だれを指すのか。現地の責任者は、かかる第三者的な態度であってはならないことはもちろん、体を張っておのれの責任で対応すべしと私は思うが、どうだろうか、あわせて答えられたいのであります。
 以上、数点にわたって具体的な質問を行ったが、この件に限って言うならば、土建業界と県土木行政のなれ合い、緩みといった感を私は持つが、この際、県の毅然たる土木行政への姿勢を明らかにされたいのであります。知事の総括的な見解を求める次第であります。
 次に、南紀白浜空港について御質問をいたします。
 平成二年度政府予算等に関する県の要望書は、南紀白浜空港の平成六年四月のジェット化整備完了に向かって、その大幅なる予算措置に特段の配慮をされたいとしているところであるが、御承知のように、南紀白浜新空港整備計画は、空港用地面積百五ヘクタール、うち民有地七十・四ヘクタール、国・県・町有地三十四・六ヘクタール、地権者百六名、うち県内五十八名、県外四十八名、物件補償対象六十件であります。
 全体面積百五ヘクタールのうち買収必要面積は七十四・六ヘクタールで、民有地は七十・四ヘクタールを占めているが、用地補償費の年度別計画とその実績は、六十三年度で十四・四ヘクタールの計画面積に対してその実績面積は八・一%の五・七二ヘクタール、また平成元年度で三十・五六ヘクタールの計画面積に対してその実績面積は一一・九%の二・六六ヘクタールであり、用地買収の進捗状況は全体の一割にすぎません。
 この用地買収の対象である民有地七十・四ヘクタールはほぼ五種類に分類されるが、まず第一に、七十・四ヘクタールの六割を占める民有地の用地買収を完結させることが先決として関係者は鋭意取り組んでいるところであるが、六割を占めるこの用地は田辺市の三者とK不動産会社であり、その中に六十二年四月に七億五千万──「六十二年四月」と言えば、空港があそこになったと決まったその四月です──で買収した土地が、今では諸般の事情から十五億と町の中で公然たる議論として取りざたされており、白浜町当局並びに町議会においてもこれが対策に苦慮しているところであります。
 その第二点は、対象地の中にモーテルの所有者があり、その方々がすべてに応じてくれるにしても、代替地を商業地域に求め、一戸建て形式をとらなければならないという必要条件は当然であります。
 三つ目には、空港周辺の対象地内における鴨居地区の農業者のための花卉団地移転先の問題があります。この花卉団地移転については、二年間の継続事業として既に三億八千万の予算措置がなされており、今、白浜町当局、町議会ともども懸命の取り組みを行っているところでありますが、住民の合意、納得はまだ得られていない現状であります。
 さらに、県の地価公示価格を示して県外の土地所有者に懸命の交渉を続ける中で、「もう来てくれなくてもええよ。そんな地価価格、何のために持ってきたんな。もうええよ。皆終わってから来てよ」と、県外へ行くとそういう話がはね返ってくる。そして、もう師走のころともなれば、オーバーの襟を立てながら寂しく帰ってくる。「そんな土地の値段あかんわ。何しに来たんな、あんたら。御苦労やのう。もう来いでもええよ」、こういうことを言われるということであり、全体として用地買収は一進一退の状況にあります。
 詳細は省略するけれども、今ざっと述べたこれらの現状と県が把握している現状をどう打開していくのか、県の確固たる指針を求めるものであります。
 あと一つで終わります。
 当議場を通じ、再三にわたって質問を行ってきました、田辺市における丸紅によるリゾート開発計画について、私は過去のそれを踏まえ、質問を三たびいたします。
 御承知のように、このリゾート計画は、昨年八月、田辺市、県、丸紅の三者によって一千億を投じて行うと発表され、また一年後の本年八月には二千億を投入すると発表されたものであります。
 私は、さきの九月県議会において、特に該当地の内ノ浦地区、鳥の巣地区の住民が、だれよりもこのリゾート構想の意義や、先祖代々から守ってきたこの土地を手放してもいいのだという確信を持たない限り、企業や行政が幾ら力説しても、それは主客転倒ではないかと都度指摘したところであるが、「リゾート開発に暗雲」、「地元反対ののろし第二弾」と報じられた記事を見て、びっくりしたのであります。
 その第一弾は、地元田辺市新庄町鳥の巣十四戸、四十一名の住民は、昨年の十一月、田辺市長に対し、「地元住民の同意がないまま発表された」として、その反対理由を挙げ、要望書を提出していたのでありますが、今回、二度目の要望書となったのであります。
 一年たって十一月十四日、住民の代表は「一年前の十一月十五日、この開発中止の要望を出し、もう計画は進まないと思っていた。しかし、田辺市からその後も協力要請が続いたので」とし、その内容は、「地元住民の同意のないまま公表し、田辺市の活性化とはいえ、一、土地を失い、住民の暮らしが崩壊する。二、開発により自然が破壊され、著しく景観が破壊される。三、開発による土砂の流出により海の汚染が進行する」とし、いかなる交渉にも応じないという態度を示しているのであります。
 ちなみに、この署名者は鳥の巣地区十一戸、内ノ浦地区三戸、計十四戸、四十一人で、特に鳥の巣地区のリゾート計画地に農地、山林などを所有するのは十戸で、計画地の約七割の用地所有者であります。
 これに対し田辺市長は、「田辺市はリゾート開発で新しい町づくりを目指す」として、その必要性、その隘路等々について見識ある理念を開陳しているところであるが、民間を主体とするこの種リゾート開発事業にあっては、やれ一千億や、今度は二千億つぎ込む──また来年になると三千億と言い出すかもわからん──とか、ヨット千五百隻を浮かべるのだとか、また、聞きなれぬ横文字、フランス語を使ったマンションをたくさんつくるのだと並べ立てたところで、該当地の住民との話し合いを先行し、公表した場合には既に大方の合意形成が得られるという状況をつくらない限り、成功することは極めて困難だと私は断言してはばからない。今のままでは必ずつぶれるということを私は公言してはばからないのであります。
 素朴な表現をするならば、第一、他人の住んでいる土地を、一方的に買うのだとか、買ってそこへテニスコートをつくるんだとか、これは大変失礼な話である。知事の官舎のところへテニスコートをつくるんや、あそこはええとこやと、そんなことをそちらの了解もなしに勝手に発表している、これが今のやり方であります。
 また、企業が希望を述べること、これは全く自由である。しかし、本当にその希望を達成したいのならば、発表以前に必要な静かな話し合いを何回も行い、謙虚な依頼を先行させ、その合意に立って実行すべきものと私は思う。また、それらの発表によって付近周辺の地価高騰を促進する役割──白浜町にも、先ほど述べた空港にもかなり影響がある。そういうできもせんことをぽんぽん勝手に発表する。そうして地価高騰をあふっている。そういう現状をどう判断されるのか。
 大変次元の低い、荒くたい質問になったことをおわびをいたしながら、しかしながら、現実はもっとどろどろとした厳しいものであることに思いをいたし、あえて部長の見解を問うものであります。
 以上で終わります。どうもありがとうございました。
○議長(門 三佐博君) ただいまの浜本収君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 浜本議員にお答え申し上げます。
 串本の県工事等の入札に対する県の姿勢についてでございます。
 県などの公共事業の入札に参加する全建設業者が関係法令を遵守する、これは当然のことだと存じておるわけでございます。
 しかしながら、先ほど御指摘ございました串本漁港改修工事の執行について問題が提起されておるということは、まことに遺憾であると存じておるわけでございます。業界みずからがその使命を自覚し、襟を正されることは望むところでございますし、今回の入札執行について、お話ございました点について詳細は担当部長から答弁申し上げますけれども、県としては、県工事の発注については、当然のことながら、さらに一層厳正な入札執行に努めてまいる考えでございます。
 白浜空港、リゾート等については担当部長から答弁させます。
○議長(門 三佐博君) 土木部長磯村幹夫君。
 〔磯村幹夫君、登壇〕
○土木部長(磯村幹夫君) お答えいたします。
 まず、串本町における土木業者の調整行為についての見解でございます。
 刑法上のいわゆる談合罪と独占禁止法の私的独占または不当な取引制限の規定について、議員御質問の調整行為がそれぞれの法律に違反するかどうかは、公正取引委員会等、関係機関によるべきところであると考えます。
 県としては、公正で公平な入札を執行する意味からも、去る十一月十七日付で、串本地区土木協同組合に対し、文書による警告を行ったところであります。
 いずれにしても、現在提訴中であり、公取委より談合であるとの判断が出た場合には、関係者に対し、指名停止等、厳正な処分で臨む所存であります。
 次に南紀新空港建設事業につきましては、県政の重要施策であり、土木部としても積極的な取り組みをしているところであります。
 この事業の促進については、去る十一月十七日、白浜町において新空港建設促進議員連盟主催の空港建設促進の集いが開催され、まことに心強く存じているところであります。県としても、早期開港に向けさらに一層の努力をしてまいります。
 本事業は昭和六十三年度から事業化し、以来用地買収に取り組んでまいり、現在までの状況は、百六名の地権者のうち三十一名の方から、また買収面積は八・七ヘクタールで、買収予定の一一・六%の実績でございます。
 用地交渉に当たっては、県内外地権者、モーテル所有者等の対応について、関係機関と一体となって種々検討を重ねて取り組んできたところであり、今後とも粘り強く交渉に当たってまいる所存であります。
 また、花卉団地移転については、新空港建設に関連して計画されたものであり、関係部局との調整を図るなどして、花卉団地事業の具体化に向け、支援をしてまいりたいと考えております。
 なお、用地の取得に当たり、今後とも一層精力的に交渉を進めてまいる所存であります。今後とも、何分の御支援をお願いいたします。
 以上でございます。
○議長(門 三佐博君) 農林水産部長安田重行君。
 〔安田重行君、登壇〕
○農林水産部長(安田重行君) お答え申し上げます。
 入札中の担当者の離席・退席の問題でございます。
 十月五日の漁港事務所での入札において失格者が出ましたので、その結果の発表方法について、当該失格者だけにわかるように通告すべきなのか、その場で参加者全員にわかるように通告すべきなのか、事務的に確認をするために、入札担当職員二人のうち一人が入札会場に残り、もう一人が漁港事務所長にその指導を得るため退席すなわち離席をしたものでございます。しかし、当日はあいにく所長が病気欠勤をしておりましたために、電話連絡等に若干の時間を要したものでございます。なお、入札会場に残った一人の担当職員は、入札書、予定価格表等、関係書類一切は厳重に保管管理をしておりました。
 いずれにしても、事務処理上の不手際で関係者に誤解を招いたことについてはまことに遺憾であると存じてございます。
 次に、入札で失格者が出ないことについて不思議と思わないのかということでございますが、これまでの入札で失格者が出なかったことは、入札参加者が適正な見積もりを行ったものと判断しております。
 次に、記者の取材を受けたときの漁港事務所長の「A社が独占的に落札したことを不思議に思っていたら仕事にならない」云々という発言の真意でございますけれども、おのおのの入札に関しては正常に行われていると考えているということを申し上げたかったものでございます。
 次に、漁港事務所長がA社を訪問したのは、十一月一日付の新聞記事の中で串本漁港改修工事の件が触れられておりましたので、状況把握のためにA社を訪問したものでございます。
 勝浦漁港事務所長の業者への制裁云々の発言についてでございますが、所長としての責任を回避しようとしたものではなく、仮に談合があったとしても、現場の一漁港事務所長の判断や権限で行えるものではないということを申し上げたかったものでございまして、これが真意でございます。
 いずれにせよ、記者のインタビューに対してもう少し慎重な発言をすべきではなかったかというふうに思っております。
 以上でございます。
○議長(門 三佐博君) 商工労働部長天谷一郎君。
 〔天谷一郎君、登壇〕
○商工労働部長(天谷一郎君) 田辺湾総合リゾート計画についてでございます。
 この開発計画は、紀南地域活性化の重要施策であると考えてございます。リゾート整備の核となるプロジェクトであり、また、これまでにない大規模かつ長期的な事業でございます。
 このため、地元住民の皆様にとっては大きな期待を抱かせるとともに、また不安もあり、さまざまな御意見があるのは当然のことと思います。リゾート整備の推進においては、こうした地元の皆様、すなわちその地域で生活する人々の立場に立って、生活環境の保全や向上、地域産業、文化の発展などに十分な配慮がなされ、将来の生活設計に貢献し、親しまれるものとすることが最も重要なことだと考えてございます。
 いずれにしても、計画の推進等には地元の方々の合意が必要不可欠でございます。こうした要望について、計画の進め方、内容等、十分な検討を行い、田辺市において関係の方々とより一層話し合いを進め、合意を得るよう努力をしたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(門 三佐博君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 34番浜本 収君。
○浜本 収君 私の質問が数点にわたった関係で、答えられたのが何か事務的な感じがしたような、そういう答弁に終始しているようであります。したがって、今の答弁に関係してもう一遍、幾つかを質問してみたいと思います。
 昨年、ここの話ではないんですけれども、例のリクルートの事件に関しまして、楢崎代議士がビデオの公表を行い、それが本問題の大きな導火線になったことは今なお記憶に新しいところであります。それほどの大きな問題ではないにしても、残念ながら「調整」という名の談合を裏づける録音テープがございます。私もそれを聞かしてもらいました。そして、そのコピーを全部入手してございます。既に、公正取引委員会にもこの録音テープを付しての調査ということに相なっております。そして、幾つかの現地の新聞記者の皆さん方も公然とそれを入手した。録音テープはこれだと、録音の機械まで写しておる新聞社も幾つかございました。
 そんな中で、県の土木部として「今、公正取引委員会に預けたままだから、その見解を待って私どもは対処していきたい」というのは、いわば行政をどうただしていくかという態度にいささか欠けているのではないかという気がしてならないのであります。
 だから、公正取引委員会でそういうことがあろうがなかろうが、こういう問題が起こったときには直ちに現地に飛んで、そして現地の業者、関係の人々を集めて、こういうことがあったんか、これはどういうことなと、そういう立場に立って県独自の調査をすべきであるということを私は強く要求して、そのことをするのかどうか、再質問といたします。
 二つ目には、農林水産部長が勝浦漁港事務所長の新聞記者会見その他談話について、いわば弁明をして、上司としてそれを保護するというか、そういう立場に立っての説明に終始しておりますけれども、私が幾つか触れたそれらの談話の一つ一つが、ことごとく、どこかピントが狂っているというように思えてならないのであります。
 主観的には、県の職員である皆さん方は一生懸命職務に励んでおられるということは私もそう思います。しかし、長い間の惰性というか、あるいはつくられた慣習というか──大体、おかしいでしょう。二十件ある漁港の工事の全部をある会社だけがやる。先ほどから「名前を言え」と言っていますけれども。三年間で二十件、全部一社だけがやっていく。こんなことは普通考えられない。これは私の勘ぐりですが、ひょっとしたら額も知ってるのと違うかと。入札の額も知っていて、手打ち式もちゃんと済んで、あしたの入札はこうやと。ところが、たまたま今度は革命児が出て、どないもできんようになってしまった。そういうことではないかなと、普通の者だったらそう考えるんです。
 そういう惰性というか長い慣習というか、そんな流れの中で、末端における土木行政あるいは漁港のそういう入札に絡む行政は弛緩しているんではないか。この談話とか、この間から串本に直接行ったり、いろいろの賛成者、反対者の意見も聞く中で、そういう弛緩の実態があるのではないかということを私は見るのであります。せっかくの答弁にもかかわらず、あえて意見を述べ、今後かかることがあってはならないということを強く要求しておくものであります。要望にとどめたいと思います。
 現場の所長がこういう問題を判断するものではないと言われたが、だれが判断するかという質問、「それは知事がするのか。農林水産部長、ひょっとしたらもうちょっと下の課長さんか」と、正確ではありませんが、さっきそこで質問申し上げたことについて、もう一度答弁を願いたいと思います。
 それと同時に、どうも所長と農林水産部長の答弁は──私はやっぱり、和歌山県というこれだけ大きな機構、その頂点に知事がおる。そして漁港事務所長がおる。そして、そこで今のようなことがある。別に知事をかばうんではないが、知事がそんなこと一々知っているわけがない。後で聞くだけの話。現地に派遣しているということは、現地の司令官でなければならない。現地に勤務している人々は、上司の皆さんを煩わすことなく、自分が体を張ってそのことに対処する、これが私は公務員の厳正なる立場であらねばならないと思う。
 「それは、わしらよう判断せんけど、だれかするやろう」──こんな態度であっては知事が十人ほど必要や。問題を起こすごとに「それは知事さんがするやろう」、「だれかするやろう。わしら、あんまり関係ないんや」と。──「関係ない」とは言わないが、そのようにしか思えないから、このことについてもう一度答弁をされたいのであります。
 商工労働部長、そつのない御答弁、大変ありがとうございます。実は、ありがたくないのであります。
 私は、先ほど申し上げたとおり、この田辺湾リゾート問題については三度目の質問であり、その都度、優等生の答弁をいただきました。問題はしかし、そういういわば字面でのやりとり、字だけの美しい言葉で「住民の要求にこたえ、そういう合意の上に立って私ども県が督励してまいります」と、こんなことを幾ら言うてもだめや。問題は、実践的な答弁が欲しいのであります。
 あなたは、そういった現地に行ったことがあるか。鳥の巣へ行ったことがあるか。私は行っております。そして、そういう人々の意見を聞いた。「まあ聞いてよ。勝手やないか。わしの土地や。金持ちか何か知らんけど、その人らがそこへテニスコートつくるんや、何をつくるんやと、勝手なこと言うな。大体そのことが気に食わない」、そういうことを皆さんが申し上げている。そういう前提を踏んだ上での話し合い、そのことも今はないんです。そして今ごろになって、どうだとかこうだとかそんなこと言うてる。
 だから、私はここであえて再質問をいたしますが、住民の合意というのは一体何なのか。住民の知らない間に勝手に、県であろうが市であろうが、まして業者であろうが、住民の知らない間にどこへ何するというようなことを──人の住んでないところやったらいいですよ。無人島へ何かをする、これは結構であります。関係法令に照らし合わせてそれが合法的であったらそれでいい。しかし、人の住んでいるところで、住民の知らないままに勝手に何かを発表する、公表するというようなことは今後一切あってはならないし、そういうことをする場合は、直ちに県が見届けて中止命令を出すべき。勝手にそんなことを発表してはだめと、中止命令を出せということを私は──この問題について今せよと言うんじゃなくて、今後そういうことが起こった場合に必ず中止命令を出せということ。人の知らん間に、人の土地へテニスコートをつくるんだ、何をつくるんだというようなことを、しかも麗々しく二千億が三千億、もうじき五千億ぐらいになると思う。そしてそのあたりの土地の値段をばんばん上げることの役立ちしかしていない。このことについて答えよとは言わないが、今申し上げた視点について検討を約束するということを答弁されたいのであります。
 以上です。
○議長(門 三佐博君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 土木部長磯村幹夫君。
 〔磯村幹夫君、登壇〕
○土木部長(磯村幹夫君) 談合のことについてお答えいたします。
 県としては、かねてから談合予防等の見地に立ち、入札回数の見直し、あるいは入札の経緯、最終結果の公表などを行ってきております。
 県への入札参加者に対する業者への対応についても、県内土木事務所単位で開催する入札参加説明会等の場での意識づけや、機会あるごとに、県の建設業協会を初め各建設業者団体に対する通達等を通じて行っているところであります。
 今回のこの串本漁港改修工事の執行に伴う疑惑については、既に公正取引委員会に指名業者の一部が提訴をしたため発覚した問題でありまして、この件については最終的な判断は公取委の結果を待たざるを得ない状況であります。
 そういうことでございますが、公正で公平な入札を執行する意味からも、先ほど申し上げたように、県としては十一月十七日付で串本地区の土木協同組合あてに文書による警告を行ったところでありますし、また同じ日付で県内各建設業協会あてにも注意を喚起する通達文を発送しているところでございます。
 以上でございます。
○議長(門 三佐博君) 農林水産部長安田重行君。
 〔安田重行君、登壇〕
○農林水産部長(安田重行君) お答え申し上げます。
 明らかに談合があった場合には、和歌山県の請負工事の指名審査委員会においてその処分を決めることになってございます。
○議長(門 三佐博君) 商工労働部長天谷一郎君。
 〔天谷一郎君、登壇〕
○商工労働部長(天谷一郎君) ただいまの、今後の問題ということでございます。
 今後のそういう計画等については、先生の言われる趣旨に沿って十分検討させていただきます。
 以上です。
○議長(門 三佐博君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
 〔「あるけど、なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(門 三佐博君) 以上で、浜本収君の質問が終了いたしました。
○議長(門 三佐博君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 20番石田真敏君。
 〔石田真敏君、登壇〕(拍手)
○石田真敏君 農政問題について、お伺いをいたします。
 今日まで、この農業にかかわる諸問題、特に本県において厳しい状況のもとで一生懸命農業に携わっておられる農家の方々のさまざまな声を、先輩・同僚の皆さんがこの壇上で代弁されておられるのを拝聴いたしてまいりました。そして、この先輩・同僚議員の発言を通じて、農家の方々の御苦労をひしひしと肌身に感じてきたのであります。
 しかし、去る七月執行されました参議院議員選挙における一つの争点は、農家の、それも特に若い農業後継者の方々による、従来の農政に対する批判でありました。これは、私にとりまして大変な驚きでありました。それは、この壇上での先輩・同僚議員の発言を受けてさまざまな施策がとられたように、農家の方々の声に対して国や地方公共団体はさまざまな施策をとってきたのではなかったのかということであります。ありていに言えば、従来、たくさんの予算、今年度予算だけを見ても、国費約三兆円、地方公共団体分約二兆円という莫大な農林水産関係予算をつぎ込んで、この対策に当たってきたのではなかったのかということであります。
 であるにもかかわらず、その施策の対象たる農家の方々、それもこれからの日本農業を背負っていっていただかなければならない数少ない若い農業後継者の方々から従来の農政に対する不満が爆発したということは、私にとりまして異様な驚きでありました。と同時に、非常に残念でありました。そして、このことが今回のこの質問をさせていただくきっかけであります。
 では、さきの参議院議員選挙中に表明された農民の不満とはどのようなものであったのでしょうか。月刊誌「潮」九月号に高畠通敏立教大学教授の「なぜ農民は自民党を見限ったか」というレポートが掲載されております。この中で紹介されている農民の不満のうち、幾つかを御紹介したいと思います。
 まず第一に、農政に対するふんまんは今さらの問題じゃない。六〇年代の減反に始まり、米価の据え置きや切り下げ、農機具の借金、そして一つずつ進行する農産物の輸入自由化と、挙げれば切りがない。
 二つ目。若い農民が耐えられないのは、農業の将来がはっきりしていないということだ。だから、嫁の来手もいないし、子供たちも嫌がって町を出て行ってしまう。
 三つ目。農業政策の基本的な問題は、それが場当たり的で一貫性がないことだ。農産物輸入の自由化という今日の事態がやってくることは専門家なら十年以上も前からわかっていたことなのに、その場しのぎでやってきた。
 四つ目。今度の批判は、農民を借金づけにして、その言うがままに猫の目のように変わる指導に従うほかなくさせてきた全国の農協組織に対する批判でもある。
 以上、今紹介しましたおのおのの言葉は、すべての農民の気持ちを代表したものではもちろんありませんが、まさしく農民自身の言葉であります。そして、特にこれからの日本農業を中心になって担っていっていただくはずの、数少ない若い農民たちの声なのであります。行政、政治に携わる者、特に農政問題に携わる者にとっては深く心に銘記しなければならない悲痛な叫びであろうと思います。
 以上申し上げてまいりました農業生産者、つまり現場からの従来農政に対する厳しい批判の声に加えて、今日においては全く別の角度、視点からの、つまり消費者サイドからの農政に対する厳しい批判のあることも、既によく御承知のとおりであります。すなわち、加藤寛・慶応大学教授や評論家の竹村健一、大前研一、屋山太郎氏らのそれであります。
 このような各方面からの批判が渦巻いていることについて、知事及び農林水産部長はどのように感じ、考えておられるのか、また何が問題であると考えておられるのか、まず最初にお伺いいたしたいと思います。
 恐らく、今日までの農政運営のあり方を見直していかなければならないであろうと思いますが、このことについてはいかにお考えであるのか、お聞かせいただきたいと思います。
 次に、先ほど紹介いたしました農民の声の中で最も重要なものは、「農業の将来がはっきりしていないということだ」という点であります。私も全く同感であります。農業の将来、すなわち自立し得る農業の見通しがつくならば、お嫁さんの来手も今日ほど深刻ではなくなり、後継者問題も今日ほど深刻ではなくなるはずであります。
 そこで、自立し得る農業ということを考えてみるとき、今日の状況の中で農業だけで生計を立てていけている農家が果たしてどのくらいあるのかという、農業の実態を正確に知ることが必要となります。そこで、和歌山県農林統計情報協会が昭和六十三年十二月に発行した「和歌山農林水産統計年報」にそれを見てみたいと思います。
 まず、農家経済の総括の項を見ますと、昭和六十二年で農家所得は約四百三十八万円でありますが、そのうち農業を営むことによって得た収入すなわち農業所得はわずか五十三万円であります。一方、農業外所得は約三百八十五万円であります。これに年金等の収入を加えて、農家の総所得は約五百七十三万円となっております。これは調査におけるサンプル農家の平均でありますが、これ以上に農家の所得について知る統計はないのであります。
 また、和歌山県長期総合計画におけるこの部分に関する記述を見ても、本県農家一戸当たりの農業所得は昭和五十九年には約六十九万円で、農業外所得のウエートが著しく高まったと記述されている程度であり、はっきり申し上げれば、農家所得についてのはっきりした統計はないということになります。
 そして、これらの数字、すなわち農業によって得られる年間所得が、平均とはいえわずか五十三万円や六十九万円しかないという統計を見ると、専業農家では一体どのように生計を立てておられるのか、また第一種、第二種兼業農家ではどうなっているのかということに思いがいくのでありますが、この実態を把握できる統計がないのであります。実態を正確に把握できないで、果たして的確な農政の推進ができるのでしょうか。実態を正確に把握し得る資料があるのかないのか、お伺いをいたします。そして、あるとすれば、その実態について詳しく御説明いただきたいと思います。
 「クロヨン」などという言葉もあるように、農業所得を初め農業の実態は本当につかみにくいのだろうと思います。しかし、では一体、何を基準に、何を目標にして農政の指針を立てるのかということになってまいります。県下五万四千戸余りの農家のうち農業で生計を立てていける農家はどのくらいあるのか、そしてその所得は大体どのくらいなのか、さらにはそれら自立していける農家とはどのような経営状態であるのかなど、農家経済の実態について御説明いただきたいと思います。
 この実態の把握が農政を論ずるときの第一歩であり、これに基づいた本当の農業発展を目指した施策であってこそ、農民はもとより国民の理解と協力を得られる施策となるのであって、これのない農政こそが農政をわかりにくくさせている大きな要因であろうと思います。そして、今日の厳しい批判を招いている要因であろうと思います。
 次に、この農業統計に関して意見を申し上げ、御所見をお伺いいたしたいと思います。
 農業統計をわかりにくくさせているものに、その基準となる農家そのものについての定義が余りにも広義に過ぎるという問題があると思います。
 農林水産部発行の「和歌山県の農林水産業」という小冊子を見ますと、ここで使われている資料はほとんど農林水産省の統計に基づいていますが、その注意書きの中に農家についての定義があります。すなわち、農家とは「経営耕地面積が五アール以上の農業を営む世帯または年間の農業生産物の総販売額が十万円以上ある世帯をいう」となっております。
 このことについて、ある評論家は「農水省統計では、常識では考えられないような甘い基準で農家数を水増ししている。学生の中には、例えば建設現場でのアルバイトで年間五十万円の収入を上げる学生は幾らでもいる。しかし、彼らの職業を建設業とすることは世間ではあり得ない」と批判しております。
 私も、経営耕地面積五アールまたは年間の農業生産物の総販売額が十万円のどちらかを満たせば農家であるということには、いささか疑問を感じざるを得ません。ホビー農家の域を出ないものであると思います。やはり、農家とは「国民に食糧を生産して提供することを職業とし得る者」という程度の規定があってしかるべきだと思います。これまでのような基準に基づいて集計された統計に一体何ほどの意味があるのか、疑問を持たざるを得ないのであります。このことについて農林水産部長はいかに感じておられるのか、お伺いいたします。
 そして、前述の「和歌山県の農林水産業」という小冊子を見てもわかるように、県当局は農林水産省の資料に基づいて資料を作成されているようでありますが、この際、県独自でもっと実態に即した、そして県農業発展のための資料として活用できるような統計を新たにとられるべきであると思いますが、このことについての御所見をお伺いいたします。
 以上、少し細かい議論をいたしましたが、要は、的確な実態把握と、それに基づく県農業発展の明確な指針の確立をしない限り、従来の農政の延長となって、農家の方々の理解も、また県民、国民の理解も得られないということであります。
 現在では、まだ各種世論調査に見られるように、例えば七割ほどの国民が米の即時輸入には反対であり、食糧自給方針にくみする国民の方が多いのであります。それだけに、今般の農政批判に対しては真摯な態度で臨み、早急に農業発展の指針を本当に厳しい態度で確立していかなければならないと思います。
 そこで、県内のいわゆる農家と定義されている戸数は約五万四千戸であります。しかし、この五万四千戸がすべて自立し得る農家として成り立つことは、今日、到底不可能であります。このことは、県の長期総合計画の中でも指摘されているとおりであります。
 県の長期総合計画の中では、昭和七十五年を目標に総農家数五万二千戸、うち中核農家一万四千戸として位置づけ、後継ぎのいる農家として五千戸を目標と定めております。さらに、今後の対策として幾つか記述されておりますが、その中で「農地造成、農地流動化等による意欲ある農家の経営規模の適正化」ということが挙げられております。また、「後継者が残る意欲のある農家を育成するため、地域農業と調和を図りながら、生産の大部分を支える生産性の高い意欲ある農家に施策の焦点を合わせる」とも記述されております。
 これらのことに、私も同感であります。やはり、現実問題として県内で自立し得る農家数というのはおのずから限られたものになってくるでありましょうし、新規学卒就農者数が本年、全国でついに二千百人──全国で二千百人であります──になってしまったという実情から見ても、県内農業を守り、より力強いものにしていくためには、意欲ある人材と意欲ある農家とに施策の焦点を合わせていくことは当然であると思います。そして、これら農家を中心として、その他の農家ともども、食糧の確保はもとより、国土の保全、水資源の維持、緑資源の保全、農村景観の維持等を図っていっていただかなければならないのであります。
 そこで、お伺いをいたします。
 一体、「意欲ある農家」とはどのような人あるいは農家を念頭に置いておられるのか、そして県下で何戸ほどの農家を考えておられるのか、お伺いいたしたいと思います。恐らく、長計に記述されている中核農家数一万四千戸よりは随分と少なくなると思いますが、いかがでございますか。
 さらに、経営規模の適正化ということでは実際どの程度の経営規模が適正と考えておられるのか。そして、この規模の適正化をどう実現していこうとされているのか。さらには、以上お伺いしたようなことをどういう形で推し進めていこうとされているのかということが非常に重要になってくるわけでありまして、この点についてお伺いをいたしたいと思います。
 これは、県だけでなく市町村、そして農協、農民自身が相寄って真剣に考えて本当に一生懸命取り組まなければ、そうやすやすと実現できることではないと思います。恐らく、きちっとした地域農業振興計画を立てて事業遂行していかなければならないと思いますが、この点についてもお考えをお聞かせいただきたいと思います。
 農政審議会委員などを歴任された今村東大教授は、その著書で「どうも、本質に突き刺さったような地域農業振興計画になかなかお目にかかる機会がないというのが実感です」と述べられ、今村教授自身の地域農業振興計画の基本についてのお考えを述べておられます。
 それによりますと、第一は、「だれが」ということであります。すなわち、その地域の農業を本当に担っていくのはだれかということであります。このこと自体、大変難しい問題をはらんでいるのが現実であります。第二は、「だれの土地で」ということであります。地域の農業を担っていく担い手たる人は、やはり一定の適正な経営規模を持たなければやっていけないということであります。第三は「何を」、第四は「どれだけ」、第五は「どういう方法で」、第六は「いつつくり」、第七は「いかに加工して」、第八は「いかに売るか」、そして第九は「そのためにはどういう施設整備を行うか」、第十は「そのための資金調達及び投資計画をどうつくるか」、以上の十項目について、しっかりした内容のある計画をつくって、それが単なる絵にかいたもちではなくて、具体的で実践可能な計画としてつくられることが必要である、このように指摘されておられます。私も、今村教授の指摘のとおりであると思います。
 このように見てきますと、長計で記述されている諸点についても、その実現に当たっては大変な困難を克服していかなければならないと思いますが、今村教授の指摘も踏まえて、当局のお考えとその実現にかける意気込みをお聞かせいただきたいと思います。
 次に、長計の記述で紹介をいたしました「農地の流動化等によって経営規模の適正化を図る」という点についてであります。
 本年、農地流動化を積極的に促進するために、和歌山県農業公社が設立されました。この公社設立については、このことによって農地の流動化が促進され、所期の目的が大いに達成されることに対して期待を寄せる反面、これに伴うマイナス面について危惧するものであります。一体どのような指針に基づいて行動されようとしているのか、お聞かせいただきたいと思います。
 和歌山県は、平地ばかりではありません。非常に急峻な地形のところに農業を営んでおられる方々も多数おられるわけであります。これらの方々の中から、耕地を手放される、あるいは借地化を希望される方々が出てこられたときにどのように対処するのか。すなわち、すべてを受け入れるとするならば、その急峻あるいは狭小などのゆえに、受け手を見出せずに不良農地として公社が負債を抱え込むことにならないとも限らないのであります。それだけに、確固とした指針のもとに公社の運営をしていただかなければならないと思います。
 また一面、御承知のごとく、和歌山県は高齢県であり、特に農村地域において高齢化率は非常に高いのであります。現に、長計の中でも「『五十歳以上』が七割近く占めるなど高齢化の進行がみられる」、さらに「『〇・五ha未満』では『六十歳以上』が過半数を占めている」といったような記述があります。
 また、後継者問題においても、先ほど御紹介申し上げましたように、昭和二十五年に全国で約五十万人あったものが、本年はわずか二千百人となっているのであります。そして、今のところ、これが増加することは特別な場合を除いてないのであります。すなわち、あと十年もすれば、耕作者のいない農地がたくさん出始める事態になってくるのであります。農林水産部はこの高齢化と後継者にかかわる実態について詳細に把握されているのかどうか、お伺いをいたします。
 そして、公社の運営に当たっては、この農林水産部の把握と緊密な連携をとりながら活動がなされることが大切であると思います。こうしてこそ実態に即した活動であり、高齢者農家の不安解消の一助ともなり得ると思います。
 いずれにいたしましても、公社の活動においては以上申し上げたような諸問題以外にも幾多の難しい問題があろうとは思いますが、先ほど御紹介した今村東大教授御指摘のような、的確な地域農業振興計画といったものに基づいた活動をされることによって、和歌山県農業の発展に寄与していただかなければならないと思います。と同時に、他の部局、例えば商工労働部とも十分な連携をとって、企業立地可能地の選定を進めるなど、セクトにとらわれることなく、機動的に幅広い対処をしていただきたいと思います。決して、先ほど申し上げたようなマイナス面をつくることのないように重ねて要望し、当局の公社運営についての御所見をお伺いいたしたいと思います。
 以上、農政における自立し得る農家とその経営規模拡大にかかわる問題について述べてまいりました。このほかにも、農政における問題はたくさんあると思います。例えば、技術革新における試験研究機関のあり方とか、これに伴う生産向上とコストダウンの問題とか、流通革新によるコストダウン、あるいは販売体制の強化の問題、さらにもっと難しいのは、農村がコミュニティーとして存続し得るかどうかというような大変な問題があります。こういう論ずべき問題はまだまだ多数あると思いますが、時間の関係もありまして、最後に農協の問題と今後の農政のあり方についてお伺いをしたいと思います。
 まず農協についてでありますが、近年、農協に対する批判が各方面より行われていることは御承知のとおりであります。冒頭紹介いたしました高畠立教大学教授のレポートにある、農民による農協批判もその一つであります。すなわち、「今度の批判は、農民を借金づけにして、その言うがままに猫の目のように変わる指導に従うほかなくさせてきた全国の農協組織に対する批判でもある」というものであります。
 ここに指摘されている「借金づけ」に類する批判は識者の中にも見られますが、そのほかにもさまざまな批判がなされております。その中には、例えば「今の農協組織は、官僚化、硬直化、排他性といった面が多く、人心疲労と組織疲労が随所に見られる」といったものや、「農協では信用事業や共済事業が花形で、農協本来の目的である営農指導事業はお荷物扱いになっている」といったような批判であります。
 このような農協に対する批判に対して県当局はどのように把握し、どのように考えておられるのか、そしてどのように対処されているのか、まずお伺いをいたします。
 農協の本来の目的は、協同化によって農業生産力の増進と農民の経済的・社会的地位の向上を目指すことにあります。そして、ある時期までは農協がこの使命を果たしてきたのは明らかであり、また今日においても、日本農業のために、そして農家のために、農協組織が必要なことは論をまたないところであると私は思います。
 しかし、昭和二十二年に農業協同組合法ができて以来四十数年の年月は、日本における国民の生活観や労働観を変え、また日本を取り巻く世界の情勢を変え、そして農協自身の巨大化に伴ってその組織論理を変えてきたのであります。そして、この国内外の変化と農協組織自体の変化に果たして対応できているかが、今日問われているのだと思います。この際、農協は原点に返り、今日における農協の使命というものを新たに構築し直さなければならない時期に来ていると私は思います。
 そしてこのことは、農協にとどまらず、行政における農政においても、さらには農民自身においても十分に考えなければならない喫緊の問題であると思います。今こそ、行政と農協、そしてその組合員たる農民とが一体になって、今日の農業を取り巻く諸問題について胸襟を開いて議論し、対策を立て、立ち向かっていかなければ、「農業の将来がはっきりしていない」という若い農民の不安を解消することは到底不可能であると思います。
 ある農業評論家は、その著書で今日の農協組織の使命として次の八つの点を挙げておられます。その一つは、中核専業農家を守り育てること。二つ目は、若い農業後継者に希望と高収入の指針を示すこと。三つ目は、安全で品質、形、味のよりよい農畜産物を生産し供給すること。四つ目は、生産物に付加価値をつけて販売する組織をつくること。五つ目は、農協の組織、運営方針、政策を多元化すること。新しい農協組織をつくること。六つ目は、地元の人々にとって、信頼され、身近で開かれた組織にすること。七つ目は、組織で働く職員の待遇をよくし、将来の希望を与え、人材を育成すること。八つ目、以上を通じて競争に強い組織体制をつくること。以上、八項目にわたって、今日における農協の使命について指摘されております。
 もちろん、これ以外の指摘が他の識者の方々からもなされているのでありますが、いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたように、行政、農協、そしてその組合員たる農民が一体となって、今日の農業、農協について、さらには今後の農業のあり方、農協のあり方について、原点に返って議論をし、これからの問題に対する方策を早急に構築していくべきであると思いますが、御所見をお伺いいたしたいと思います。
 こういう中で、さきにも述べました地域農業振興計画を実現可能な形できちっと策定するということは、大きな足がかりになるものと思われます。そして、この際、この地域農業振興計画の策定に当たっては、あくまでも地域農民と地域農協が自主的に、そして主体的にその計画を策定すべきものであって、行政の過剰な介入は厳に慎まなければならないと思います。そして、こういう作業を通じて、今日的な、農民から信頼される農協のあり方、行政のあり方がはっきりしてくるのであろうと思います。
 「農民は、補助金ではなく情報とビジョンを求めているのだ」という指摘があります。すなわち、革新的な技術の導入、さまざまなアイデア、マーケティング、経営者としての能力、このような資質、能力を時代は今農家に要求しているのであります。まさしく、こういう今日的な農民の要望に親身に、一体となってこたえていける農協こそが、そしてそれを下支えする行政こそが、農民からも、そして国民からも、希求されているのだと思います。
 いま一度、今日的農業における農協のあり方、行政のあり方について深く思いをめぐらせていただきたいと思います。そして、生産者たる農民からも、消費者たる国民からも、絶大なる支持を得られるような農業発展策を講じていただきたいと思います。御所見をお伺いして、質問を終わります。
○議長(門 三佐博君) ただいまの石田真敏君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 石田議員にお答えします。
 ただいま、農政についての的確な実態把握、そしてまた御提言、質問をいただいたわけでございます。
 先ほど話ございましたように、参議院議員選挙に端を発しての農政批判に対して、知事はどう把握しておるか、そしてこれをどうしようとするのかという点でございます。
 高畠先生の農政不信に対する考え方、また大前研一さんを初め消費者側からの農政に対する見方など、いろいろな見方があるわけでございますけれども、私は、最近の農政批判につきましては、やはり何といってもオレンジの自由化決定の問題、そして生産調整を含む自由化国内対策の実施、これが農家の皆さんに大きな動揺と将来に対する不安を与えたものではないかと思っておるわけでございます。
 高度成長化する他産業と農業との生産構造の格差や長引く米の生産調整など、農家を取り巻く環境は依然として厳しいものがございます。農業は国の基本であるという考えのもとに、私は長期的観点に立った農業対策を講ずることが最も肝要なことだと思っておるわけでございます。
 現在、国においては、基本食糧の安定供給ということを大きな柱として、土地利用型農業の生産性の向上を図り、産業として自立し得る農業を確立するために農業構造改善施策を推進しているところでございますけれども、近年、国際化や技術革新が進む中で、さらに新たな需要を喚起する高付加価値農業の育成に取り組み、生産者並びに消費者の期待にこたえようとしているところでございます。
 そうした国の施策と相まって、県としては、本県の特色であるミカン、梅、柿、桃等の果実、また野菜、花卉など、生鮮農産物の供給基地としての役割を果たすために、県下を紀の川流域、有田川流域、日高及び紀南の四地域に区分して、地域特性を生かした高付加価値農業の振興に努めてございまして、それぞれの地域におきまして、若い皆さんを中心に特色ある産地が育ちつつあるのも現状でございます。
 今後とも、品質向上対策や非破壊による品質選別技術の開発、バイテク技術の活用などソフト面の充実と、施設園芸、空輸産業の振興とあわせ、一・五次産品の育成など時代に即応した流通加工対策を進め、国際競争力のある産地育成に努めてまいりたいと思っております。
 また、話ございましたように、こうした時期だから農協なり生産団体と行政が真剣に農業に取り組んでいくべきではないかということ、私も同感でございまして、これからの和歌山県の農業推進のためには、そうした問題についてなお一層、私も含めて入り込んで、いろいろな意見を承ってまいりたいと思っております。
○議長(門 三佐博君) 農林水産部長安田重行君。
 〔安田重行君、登壇〕
○農林水産部長(安田重行君) お答え申し上げます。
 自立し得る農家の実態でございます。
 石田議員御指摘のとおり、専業・兼業別の農家の所得などを正確に把握する統計資料についてはございませんが、施策の立案や推進に当たっては、農家の作物栽培面積の調査や農産物市場価格の動向等を把握する中で、農業所得等の実態を把握いたしておるところでございます。
 農業で生計を立てている農家については、専業農家一万四千百四十戸がそれに該当することになると存じますが、高齢者専業ということもございますので、六十歳未満の男子専従者がいる農家一万二千九百六十戸を中核農家と位置づけ、農業で生計を立て得る農家と考えております。
 こうした農家の所得水準については、家族家計費を農業所得で充足できるものと考えてございまして、農家経済調査によると、農家一戸当たりの家計費は、昭和六十二年で四百十六万九千円となってございます。実際の農家所得はこれ以上得ているものと推定をしており、農業改良普及所等の実態調査からもこれが認められるところでございます。
 次に、国の統計上の農家の定義については、来年度の世界農林業センサスの調査から、若干の見直しと自給農家と販売農家の区別が新たに設けられると聞いてございますが、農業施策の推進に当たり、土地所有形態等を正確に把握する必要がございますので、今後さらに資料整備の充実に鋭意努力し、施策に反映してまいりたいと存じます。
 次に、意欲ある農家の問題でございます。
 基本的に、農業で生計を立てようとしている農家と位置づけしてございます。さらには、社会経済情勢に対応し、新技術や新作物の導入等、経営改善を遂行するとともに、地域農業をリードし得る農家とも考えてございます。こうした農家を中核農家と位置づけ、一万四千戸の育成確保を目指しているところでございますが、最近の農業情勢や新規就農者の減少等から、この実現を図るには一層の努力が必要であるとも認識をいたしてございます。
 このため、高収益農業の展開に努めてまいったところでありますが、今後とも、生産者団体ともども、施設園芸の推進、高品質生産販売対策を一層強化する所存でございます。
 また、本県の中核農家における経営耕地の適正規模については、一・五ヘクタール程度と考えてございますが、中山間等の地域の立地条件、施設園芸等の導入状況、基盤の整備水準等による経営形態や所得目標により異なってまいります。このような農業経営の実現を図るために、農地開発、圃場整備、野菜・花卉等の施設化を進めるとともに、農地流動化促進事業の積極的な活用に努めているところでございます。
 こうした事業を推進するためには、議員御指摘のように、地域農業振興計画は大変重要でございまして、農業振興法に基づく市町村農業振興地域整備計画を初め、果樹振興計画等を策定するとともに、具体的な事業実施に当たっては農村総合整備計画や農業構造改善事業計画等の計画に即して推進を図っているところでございます。今後とも、関係者との整合をとりながら、より実行可能な計画とするために、地域の実態に見合った計画づくりを一層進めなければならないと考えております。
 長期計画の推進については、国際化や産業構造の急激な変化等、厳しい問題も多々ございますが、農家や地域の経営改善に対する意欲と熱意が原点と思いますので、さらに農家等との交流を積極的に進める所存であり、事業実施に当たっては、国、市町村、団体等、関係機関に一層働きかけてまいりたいと存じます。
 次に、農業公社の活動の問題でございます。
 中核農家の経営改善のために農地の流動化を促進することを主たる目的として、あわせて農村地域の就業構造の改善等、地域の活性化に資するために本年設立したものでございます。
 農業公社の運営に当たっては、市町村、農業委員会との緊密な連携のもとに、規模拡大等の経営改善を志向する農家や新たに営農を志す後継者の意向を踏まえ、高齢者や兼業農家等で離農、規模縮小を希望する農家の間に立って農地の売買、貸借を行い、優良農地の効率的利用に資していきたいと考えておりますが、御指摘のとおり、不良農地を保有することのないよう十分留意しなければならないと考えております。
 また、農村地域の活性化に資するための企業用地等の土地利用についても、関係部局との連携を図りながら積極的に業務を推進する体制をとってございます。
 なお、お尋ねの高齢化と後継者の実態については、一九八五年の農林業センサスでは、農家人口に占める六十五歳以上の高齢者の割合は一八・七%であり、農業試験場での農家人口予測においても今後もその割合が増加するものと予想されております。また、農林水産統計では六十三年の農業後継者は三千五百三十人となっており、近畿では最も高い比率となっております。
 議員御指摘のとおり、高齢化による遊休農地が増加することも懸念されることから、優良農地が荒廃することのないよう、中核農家を中心に一層の流動化を進めるために、農業委員会、農業公社の業務の中で対応してまいりたいと存じます。
 最後に、農協のあり方と今後の農政でございます。
 農協批判があり、農協本来のあり方が問われておりますことは、承知をいたしております。農協本来の役割としては、多様化している組合員ニーズに素早くこたえることにあり、そのためには組合員の意向が事業運営に十分反映される組織体制づくり、農家経営を主眼とした営農指導事業と他の事業との連携、消費者ニーズの変化や市場動向に沿った生産販売、さらに、厳しい農業情勢や金融自由化の進展等の中で、農協の事業運営、組織の効率化や職員の資質向上を図ることであるものと考えております。
 こういった農協批判のある中で、農協系統組織においては、昨年の十一月、県の農協大会において「二十一世紀を展望する和歌山県農協の基本戦略」というものを策定し、組合員の営農の確立、地域農業振興の方策など、五つの項目にわたる基本方針を柱に、これから取り組むべき課題と施策を明らかにし、その実践に農協の総力を挙げて取り組みつつございます。
 本県農業のあり方としては、知事も申し上げましたけれども、高付加価値をつけるとともに、国の内外を問わず、産地間競争に打ちかつ地域の個性化商品づくり、生産性の高い農業の育成、バイテク等のハイテク先端技術の導入や流通システムの確立を推進し、若者が定着できる魅力ある農業の実現が肝要でございます。そのために農業基盤整備等が不可欠ではございますが、これとあわせて、企業的な感覚を身につけた農業経営を促し、高収益農家の育成に努めるとともに、まさしく議員が御指摘のとおり、農協に対しても、組合員と一体となった地域農業振興計画に沿った主体的かつ積極的な取り組みを促してまいる所存でございます。
 以上でございます。
○議長(門 三佐博君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 20番石田真敏君。
○石田真敏君 答弁をお聞きしていて感じますのは、私は洋服屋の息子で、米をつくったことはないし花をつくったこともないんですが、あのぐらいの答弁やったら僕でも書けるなと。というのは、長計とかいろんな資料を見たり本を読んでいますと、そのぐらいのことは載っているんですよ。まず、そういうこと。
 さらに、今の答弁をお聞きして、農民の方や消費者の方が、「ああ、これで県の農政、納得したよ」と言ってくれますかね。私は疑問に思う。
 それから、私は農業をしたことがありませんから、私の質問というのは土のにおいのしない質問だと思います。ところが、本来土のにおいのすべき農林水産部の答弁に土のにおいがしないというのはどういうことなのかなと。
 今のように農政批判があるのは恐らく、これは私の推測ですけれども、今の農政が農民から浮き上がっているのと違うか。そして、それだけじゃない、消費者からも浮き上がっている。そこに大きな問題があるということを私は言いたくて今回質問したんです。
 答弁をお聞きしていて、例えば──これは質問じゃないし議論する気はないんですが、さっき部長の方から「一万二千九百六十戸を中核農家と位置づけ、農業で生計を立て得る農家と考えてございます」という答弁をいただいた。ところが、農業センサスという資料の中に「農産物販売金額規模別農家数」というのがある。言うてみたら、売上高です。経費を引いていない売上高です。
 それによると、百五十万円以上の売り上げ──これは年間ですよ。それから経費を引くんですから──の農家が一万四千六百十二戸、二百万円以上で一万千七十八戸なんです。今言われた一万二千何がしというと、この間に入ってくるんです。売上高が百五十万から二百万ぐらいで、どうやって生活していくんだ。私が聞いたのは、そういう農家──それは構いません、目標で。しかし、それをどのようにして、長計の中にある七百五十万円の所得が得られる農家に育てていくのかということを聞きたかった。そういう明確な指針があってこそ、農民も消費者も納得するのと違いますか。今お聞きしていたような御答弁では、だれも納得しない。
 ただ、さっき今村という東大教授の話の中で「本質に突き刺さった」という言葉がありましたが、この場でそういう答弁をいただけるとは思っていませんでした。私がなぜこの質問をさせていただいたか、もう一つ別の考え方があるんです。それは、特に参議院議員選挙で明らかになったと思いますが、戦後四十年、日本が築いてきた世の中のシステムというのを変えなければならないような時代がもう来たのと違うか、時代に合わなくなってきたのと違うかということなんです。
 こういうことが、もういろんなところで指摘されている。ある学者が、そのシステムを変えていくためのキーワードは国際化だということを発表して論壇で注目を浴びていました。それから、有名な大前研一さんの「平成維新」という本を読んでも、中央官庁を変えなきゃだめだと言っているんです。その当否は別です。しかし、そういう議論がもう既に出てきているぐらい、戦後四十年築いてきたシステムというものについての疲弊というか、そういうものがあるんだということが根本の認識なんです。そして、その一つとして端的にあらわれ、端的に批判をされているのが農政問題なんです。
 ですから、私は従来の考え方でこの問題に対処していこうと思っても無理なんじゃないかと思う。さっき部長の答弁で、何とか計画を推進してございますというお話がありました。推進していたら何で批判が出るんですか。それは、計画が悪いのか推進の仕方が悪いのか、その辺を改めて考えていただきたいという趣旨の質問なんです。
 今ここで、明確な、私がもう本当に満足して、にこにことこの議場を出ていけるような答弁をいただこうとは思いません。しかし、従来の考え方の延長でこれからもずっと農政をやっていくとなれば──今、国民は、先ほど御紹介したように、世論調査なんかでもまだ農業に対して支持を与えている。しかし、いつまでも続くということはない。その辺を関係者は、本当に真剣に考えていただきたい。
 例えば、大前研一さんなんかでしたら、アメリカとかオーストラリアの土地を買えばいいじゃないか、そしてそこで農業をして輸入したらいいんじゃないかというようなことまで言っておられるんです。私はそういう議論にくみしません。しかし、そういう意見すら出るぐらい、そのシステムを変えていこうというような大きな時代の流れというものがある。農業がひとりらち外にいるというわけにはいかんのだということを、真剣に考えていただきたいと思います。小手先の施策では、もうだまされない。そういうことなんです。
 どうか今後、この私の質問をきっかけにしてというと大きな言い方ですが、きっかけにしていただいて、和歌山県の農業の考え方も、斬新な考え方に基づいて、先ほど最後に言いましたが、生産者である農民からも、消費者である国民からも、本当に支持のされる農業振興策というものを考えていただきたいということを改めて要望して、再質問を終わります。ありがとうございました。
○議長(門 三佐博君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で石田真敏君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
○議長(門 三佐博君) この際、暫時休憩いたします。
 午前十一時四十四分休憩
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 午後一時五分再開
○副議長(宗 正彦君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
○副議長(宗 正彦君) この際、報告いたします。
 昨日提出のあった議案第百四十六号から議案第百四十九号までは職員に関する条例改正案でありますので、地方公務員法第五条第二項の規定により人事委員会の意見を徴しましたところ、次のとおり回答がありました。
 職員に回答文を朗読させます。
 〔職員朗読〕
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   和人委第299号
   平成元年12月8日
 和歌山県議会議長 門 三佐博 殿
 和歌山県人事委員会委員長 寒 川 定 男
 職員に関する条例の制定に係る意見について
 平成元年12月7日付け和議会第259号で意見を求められた標記のことについて、地方公務員法第8条第1項第3号の規定により下記のとおり回答します。
  記
 議案第 146号 職員の給与等に関する条例の一部を改正する条例
 議案第 147号 教育職員の給与等に関する条例の一部を改正する条例
 議案第 148号 警察職員の給与等に関する条例の一部を改正する条例
 議案第 149号 市町村立学校職員の給与等に関する条例の一部を改正する条例
 (意 見)
 上記条例案については、いずれも適当であると認めます。
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○副議長(宗 正彦君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 21番木下秀男君。
 〔木下秀男君、登壇〕(拍手)
○木下秀男君 午前中の石田議員の大変高度な質問から少しは落ちるかもわかりませんが、どうしても来年の和歌山県政の中で取り組んでいただきたい点が二、三ございますので、時間わずかでございますが、質問いたします。
 まず、過疎対策についてお伺いいたします。
 初めに、過疎対策の経過について少し触れてみたいと思いますが、我が国の高度経済政策が功を奏して、近代工業国家へと変貌してきたのが昭和三十年ごろからでありました。「神武景気」、「三種の神器」という流行語の生まれたのもこのころでありますし、「就職列車」という言葉も、また歌までつくられたものであります。地方の若年労働者が激流のごとく大都市に流出し、農山漁村の急激な人口減少が大きな社会問題としてクローズアップされ、地域社会に深刻な問題を惹起し、緊急を要する政治課題となったのであります。
 昭和四十五年、議員立法として十年間の緊急対策を行うための過疎地域対策緊急措置法が制定されたのであります。一般に言われる過疎法であります。この緊急措置法のもとに、これらの指定地域に対しては約八兆円に上る事業費が投資されたのであります。
 それでも、ほとんどの過疎地域では大量の人口流出によって地域社会としての機能が著しく低下し、行政水準が低下の一途をたどるという異常な状態になりました。このため、昭和五十五年度に再度、議員立法として過疎地域振興特別措置法が制定されたのであります。国庫補助率のかさ上げや過疎債の財政措置代行制度等の行政措置、金融措置、税制措置等、各般にわたって特別措置が講じられ、総合的に過疎対策に取り組み、推進してきたところであります。この法の対象となっている地域は全国で千百五十七市町村もあり、面積にして国土の約半分を占めております。昭和四十五年度から平成元年度までの二十年間の投資総額は二十五兆円に上ると言われています。
 この間、県当局においても、県下関係十六町村と連携して、県土の五二・七%を占める過疎地域の振興を図り、交通通信体系の整備を初め、生活環境、施設、産業基盤の整備充実等、推進された結果、多くの成果を上げていることに県民の一人として感謝申し上げる次第であります。また最近は、これらの地域で知恵と工夫と住民パワーで、村おこし、町おこし運動を起こし、みずからの地域に自信と誇りを持ち、積極的に取り組んでいることは喜ばしい限りでございます。
 しかしながら、過疎地域の現状を見ると、人口減少は依然と続いており、全国に見ると約八三%の市町村が、我が和歌山県においては十六町村全部で、人口が減少している現状でございます。若年層の減少と高齢化社会へ一足飛びで突入し、人口の面でも多くの問題があり、産業面においても、公共施設の整備についても、特に幹線道路の広域的施設整備がおくれている現状であります。
 さらに、財政に関しては、税収が少なく財政基盤が大変脆弱であります。高度経済成長時とは異なった形で新たな過疎問題として多くの難問が生じていることを認識すべきであると思います。今日の現状から見て、過疎地域の自主的努力だけは限界に至っており、県や国の強力な支援で解決しなければならないと思います。
 高度経済成長時代からオイルショックを挟んで安定成長時代と、二十年にわたって一貫して総合的、計画的に推進してまいりましたこの過疎対策措置法の期限も、残すところあとわずかとなり、関係市町村こぞって、引き続き法的措置を講じられるよう政府に対し強く要望しているところであります。この時期に当たり、次の点についてお伺いいたします。
 過疎対策二十年の評価と今後の残された課題は何か。昭和六十三年八月の自由民主党の全国過疎地域を対象とするアンケートの回答は和歌山県としていかがなものであったかを、知事並びに農林水産部長にお伺いいたします。
 具体的に、次の二点について土木部長、教育長にお伺いいたします。
 まず、主要県道田辺十津川線についてお伺いいたします。
 この路線については何回もこの壇上で取り上げてまいりましたが、御坊十津川線として国道昇格の猛運動をした路線でありまして、国道四百二十五号線として国道昇格時に切り捨てられた美山村旧寒川村地区であります。
 御承知のように、美山村には県営ダムが建設され、無事故無災害の記録をもって見事完成し、村の新しい名所となり、国道も整備され、これを機に新しい村おこし運動に取り組んでいるところでありますが、ここに問題が起こってまいりました。
 ダム建設で村が分断され、旧寒川地内は一部が水没し、残りの部分は過疎に拍車をかけるような状態で今日に至っております。道路整備につきましては、県が代替工事として一部トンネル等新設工事で取り組んでいただいておりますけれども、ほとんど旧来どおりの狭隘な危険箇所の多い道路であり、何ら手がつけられておらない現状であります。現在工事中の区間の完成は十年の時期がかかると聞いております。
 この寒川地区に、教育問題が起こってまいりました。過疎現象も原因の一つとなりましょうけれども、学校としての機能が成り立っていかないほど学齢層が減り、仮に複式学級を編成したといたしましても、上級生は進学問題があって、単独でやってほしいとの父兄の強い希望がございます。また、少人数のために、団体競技はもちろんのこと、対抗試合のチームすら編成できず、そのために子供たちに競争意識が欠ける点が甚だしい等々の問題が起こりつつあります。
 ちなみに、この寒川地区の小学校、中学校の卒業者数を見ますと、小学校では昭和五十年度二十二名あったのが十五年後の平成元年度で八名、中学校では五十年度二十四名あったのが平成元年度ではわずか五名と、急激な減少数でございます。
 この一例を見るだけでも、過疎対策は急務であると考えます。仮に、学校を統合してスクールバスを運行しようにも、道路整備に十年もかかるという。先生が子供たちの教育のためにと対外交流を試みても、全校生徒合わせてもチームが編成できないというこの現状をどう見るのか。子供たちには平等に教育を受ける権利があります。また、父兄には義務があると思います。過疎対策に関する法施行二十年に当たって、現場に起こっている問題を、教育の点に絞って教育長、土木部長の御所見をお伺いいたします。
 次に、去る六月議会でも申し上げましたが、「シーサイドロード」と名づけました県道御坊由良湯浅線、衣奈から海岸回りの一般県道、戸津井、小引、阿戸に通じる路線の整備についてであります。
 この道路は失業対策事業で開通した道でありまして、沿線に戸津井、小引と小さな部落があり、漁業を中心とした過疎の地域でありますが、ここに昔、分教場がありました。低学年の子供たちの教育の場としておりましたが、教育効果を上げるためにと、父兄の同意と協力で本校に統合し、着実に成果を上げております。
 このルートではバスを利用して通学さしているようでありますけれども、乗りおくれると、親が送迎するか大きな山坂を歩いて通学しなければならないという僻地であります。この道路もまことに狭隘で、対向したときなどは百メートルもバックしなければならない、待避所のない危険箇所の多い道路でもあります。
 今は釣りブームで、県内外からの釣り客はもちろん、若者のドライブコースとなって往来が激しくなっております。この路線改修について町当局初め関係住民から強い要望がありますが、県当局においていかようなお考えか、お伺いいたします。
 続いて、国際交流についてであります。
 最近、日本では「国際的」とか「国際化」という言葉を目にしたり聞いたりすることが特に多くなってまいりました。私は、以前に国際化とは何かということで質問を行いましたが、今回は国際交流について、私見を述べながら提言を申し上げたいと思います。
 経済大国となった日本に世界各国から大勢の外国人が往来してございます。現在、在日外国人の数は八十七万余人を超え、観光、ビジネス等の短期滞在者が二百五十万人、合わせて三百四十万余人がいるとなってございます。ことし平成元年の国際的な問題になったボートピープル事件、中国の日本留学生向けの日本語学校事件等々を考えるとき、まだまだ外国人の数がふえてくるだろうと思います。
 反面、日本から外国へ流出している人口は少なく、確かな数字ではございませんが、五十万人とも七十万人とも言われ、そのほとんどが商社マンとその家族、またはエンジニアと言われております。しかし、短期の海外旅行者の数はウナギ登りで、年々増加の一途をたどっており、金満国家日本の姿を如実にあらわしております。
 和歌山県内の状況を見てみますと、年々外国人の往来がだんだんふえてまいりまして、推計でございますが、一万五千六百人が県下各地に来ております。都市周辺や観光地が主でございますけれども、思わぬところにも来てございます。それは、留学生とその関係者ということであります。
 ここで、留学生について見ますと、県内には大学生三十八名、高校生十六名が十四カ国から来ております。一方、県内からの海外留学生を見ますと、関係機関を通さずに直接留学している者もあって人員の把握は困難であるとのことでありますが、高校生がアメリカを中心に行っているのが二十一名となっております。
 以上が県内における留学生を中心とした外国人の概要でございますが、ここで私は、国際化の進む中で国際交流を積極的に推進することを提言いたします。
 知事、あなたは、今日まで公的に多くの外国の要人と接し、来県する外国人の表敬を受けてこられました。ことしはまた、秋にカナダからアメリカ、ヨーロッパと海外視察でさらに見聞を広めてこられたと思います。また、ことしから高等学校に他県に先駆けて国際学科をも新設されました。
 和歌山県として、平成五年開港が待たれる関西国際空港建設に並行して、加太を中心に国際都市コスモパーク構想を進めてございますけれども、この都市形成の中心的役割を果たすのが現在の高校生であり、中学生の諸君であると思います。国際感覚を身につけ、視野の広い、語学堪能な人材の育成こそが、今一番望まれていることであると思うのであります。
 私の知る限りでは、他府県にはまだこのような制度がないようでございますが、県の助成によって夏休み等の休暇を利用して高校生を中心とした海外派遣を行う、国際交流制度を創設なさってはいかがかと思うのでありますが、知事の御所見をお伺いいたします。
 また、国際交流の一環として、県下に英語を主にした先生を受け入れてございます。私の町にもカナダから来ております。受け入れは町の教育委員会で、町内の小学校、中学校で教えてございますが、大変好評でございます。特に小学校の高学年の生徒に人気があるようでございまして、これも時の流れで、英語に対する子供たちの関心の証左であると思います。
 ここで、教育長に提言でございますが、国際交流として受け入れるのも大いに賛成でありますが、県内の英語を中心とする語学の先生に対して公費による長期海外研修制度を設けてはと思うのでありますが、いかがでございましょうか。「聞く」、「話す」が基本だと言われてございます。青少年の海外派遣、先生の海外研修について教育長の御所見をお伺いいたします。
 以上で、私の質問を終わります。
○副議長(宗 正彦君) ただいまの木下秀男君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 木下秀男議員にお答え申し上げます。
 過疎地域振興措置法が二十年を経過したわけでございますけれども、その過疎対策二十年の評価とその後の対策の問題でございます。
 お話ございましたように、和歌山県は過疎地域が十六町村と非常に大きな地域を占めておるわけでございます。そのために、過疎対策ということが県政の中でも重要な課題でございまして、山村対策課を設置し、県勢浮揚のために道路整備や生活環境整備等について努めてまいっておるわけでございます。
 そうしたおかげで急激な人口の減りもなくなったわけでございまして、道路やコミュニティーセンター、生活基盤等の整備が進んでまいっており、私は成果を上げ得たと存ずるわけでございます。
 しかしながら、そうしたいい面だけじゃなしに、都市への人口集中がなお一層進んでいく中で、過疎地域の高齢化が進んでおる、若い者が定着していないというのが現況でございまして、二十年、効果はありましたけれども、なお残された課題が幾多あるわけでございます。
 そうした高齢化対策や若者が定着する地域づくりのためには、新しい法を制定し、重点的な整備を図っていただくということが重要でないかと存ずるわけでございまして、来年度、新しい過疎法制定につきまして、皆さん方のお力添えを得てなお一層努力してまいりたいと存じておる次第でございます。
 次に国際交流について、高校生の海外派遣の問題でございます。
 お話のように、国際感覚を身につけた青少年の育成ということは、これからの県政にとりまして重要な課題だと思っております。
 そうした意味において、海外の県人会などの協力を得て、和歌山県青少年夏期派遣事業や日中スポーツ少年団交流事業、日独スポーツ少年団交流事業の実施、また和歌山県高校生国際交流協会等への助成を行い、高校生の交流を図っているところでございます。
 今後とも、議員御提言のございました趣旨を踏まえ、国際交流の推進になお一層努力してまいりたいと存じております。
○副議長(宗 正彦君) 農林水産部長安田重行君。
 〔安田重行君、登壇〕
○農林水産部長(安田重行君) 御答弁申し上げます。
 過疎対策の残された今後の課題でございます。
 知事の御答弁にもございましたが、過疎対策の残された課題としては、議員お話しのとおり、高齢化が進行していること、なお若者の定着が少ないこと、産業雇用条件が低位にあること、南北軸を中心とする幹線道路の整備がなお必要であること、財政基盤が弱いこと等、多くの課題がございます。
 さらに、近年、過疎地域が持っている緑豊かな森林や渓谷、温泉等、恵まれた自然資源に対する国民的な関心が高まり、地域への定住希望者や入り込み客が増加傾向にあり、今後、これらのニーズに対応する広域的地域整備も新しい課題でございます。
 新法制定を控えて、このような課題に対応できるよう、国に強く働きかけているところであり、今後も、新たな過疎法の制定と相まって、関係部局とも連携をしながら、議会のお力をいただいて、過疎地域の活性化を目指して総合的、計画的に課題解決に懸命に取り組む所存でございます。
 次に、アンケートについての県の回答でございます。
 議員お話しの自由民主党過疎対策特別委員会のアンケート調査に対する本県の回答は、アンケートの質問内容が多岐にわたってございますので、主なものを申し上げますと、現行過疎法の効果については過疎債、基幹道路の県代行整備を挙げ、過疎地域振興対策としての現在の悩みの課題については、若者の定住対策、高齢化対策、安定的就業の場の確保等を挙げ、本県における特に重要と考える施策分野については、交通通信体系の整備、農林水産業、商工業、その他の産業の振興を強調したところでございます。
 次に、議員が言われるシーサイドロードのうち、衣奈地区から海岸を回り戸津井地区に至る約二千五百メートルの区間については、沖に黒島が浮かぶ風光明媚な白崎海岸県立自然公園の一部をなしております。また、衣奈、戸津井の両地区とも沿岸漁業、養殖漁業等の漁業活動も大変盛んな地域でございますが、現有の県道は狭隘で、議員御指摘のとおり、種々制約を受けております。
 したがって、この区間の整備を早急に図るため、漁港関連道事業を活用し、早期に事業実施できるよう、地元由良町ともども、ただいま国に強く働きかけているところでございます。
○副議長(宗 正彦君) 土木部長磯村幹夫君。
 〔磯村幹夫君、登壇〕
○土木部長(磯村幹夫君) 道路の整備についてお答えいたします。
 まず、県道田辺十津川線のうち、国道四百二十四号から美山村寒川の集落に至る間については、県道のバイパス的性格を持つ村道糠越舟原線、延長二千二百三十五メーターが県代行事業等で、また土居地内でのバイパス、延長四百六メーターを特殊改良事業で整備し、そのいずれもが昭和六十二年度に完成し、残る未改良区間約一・九キロについても、公共事業と県単独事業で整備を図っております。また、土居から上流側に関しても、美山村と協議しながら、交通の危険箇所等の整備を行っているところであります。
 今後とも、過疎対策という面も含め、交通需要、周辺の土地利用等を勘案しながら、順次整備を進めてまいりたいと考えております。
 また、県道御坊由良湯浅線並びに県道衣奈大引阿戸線については、沿線の景観がすぐれており、観光道路として、また生活道路としても今後整備を進めていく必要があると考えております。
 しかしながら、これらの道路は急峻な地形のところを通過しているため、抜本的に改善することは莫大な事業費を要します。このことから、交通の隘路となっている区間や線形不良箇所から順次改良しているところでありますが、今後とも事業の促進に努めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○副議長(宗 正彦君) 教育長高垣修三君。
 〔高垣修三君、登壇〕
○教育長(高垣修三君) まず、過疎地における教育問題についてお答えをいたします。
 学校教育は、御承知のように、教職員と児童生徒、さらにまた児童生徒相互の人間的な心の触れ合いの中で、いわゆる知・徳・体の調和のとれた子供たちを育成することにございます。
 小規模の学校においては児童生徒一人一人に対してきめの細かい行き届いた指導がなされることが一つの利点ではございますけれども、一方ではまた、人数が少数でありますために、御指摘のように、お互いの切磋琢磨の機会が少ないなど、さまざまな問題がございます。
 学校の統廃合については、教育上の効果、児童生徒の安全の問題、学校の教育活動の実施への影響、あるいはまた学校がその地域の文化の中心であるということから考えまして、これは総合的に検討し、そして地域住民の理解と協力を得ながら対処することが大切であるというふうに考えてございます。
 次に、教員の海外研修についてでございます。
 国際社会に主体的に対応できる児童生徒を育成するために教職員を海外に派遣し、研修をさせることは非常に大切なことでございます。こうした観点から、英語担当の教員二名を二カ月間、英語圏へ毎年派遣をしてきておりまして、語学指導、国際理解教育に大きな成果を上げてきてございます。また、希望者も多く、今年度から新たに六カ月間、英国へ一名派遣をしているところでございます。また昭和四十五年度からは、教員を対象にして海外教育事情調査団を結成し、毎年四十名程度の教員を二週間から四週間程度派遣しているところでございます。
 次に、高校生を含む青少年海外派遣については、先ほど知事から御答弁がございましたが、議員御指摘のように、豊かな国際的見識を身につけさせるために高校生や教員を海外に派遣することは極めて意義の深いことと考えてございまして、今後ともこのような事業の充実などにつきましてさらに努力をしてまいる所存でございます。
○副議長(宗 正彦君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 21番木下秀男君。
○木下秀男君 御丁寧な答弁をいただきまして感謝いたしますが、今の教育長の示された数字というのは、和歌山県の県費で派遣された先生方、子供たちではないと思うのでありまして、私の言うのは、全国に先駆けて和歌山県が、将来を担う青少年が国際感覚を身につけるために県費を出してやるんだという、そういう取り組みをしていただきたい、しませんかという提言であって、国のやることを県のした仕事の中へ入れるというのは、これはいささか見当違いでございます。
 よその府県がやってないから私とこは国の施策に準じてそれに参加をしておるということであれば、大きな府県ではそれだけ参加者も多く、和歌山は和歌山なりの割り当てだけしかこないと思います。その不足分を県費でカバーしてでもするというぐらいの積極的な取り組みをしていただきたいというのが私の希望でございまして、近い将来というよりも、今、現下にその状態にあります。そういうことでございますから、和歌山県の思い切った、進取の気風というか、これをもって取り組んでいただきますように強く要望いたします。
 それともう一点、土木部長さん、あなたはまだ来て間がないので詳しく地名を言ってもわからないかと思いますけれども、今お答えの中で、確かに県の代行されておる道路は立派に開通してございますが、これはダム建設と引きかえの道路であります。確かに道路はできておりますが、道路行政が必要という中から生まれたものではないわけでございまして、寒川地区が、この道をつくるということを条件にダム建設に同意した道路でございます。
 そこから上を一般の道路行政ですることが本当の道路行政でございまして──確かに土居という部落の近辺もされてございますが、これを着工したのは二十年もっと以前でございます。そして、今言われる代行等によりこれが完成してございますけれども、その間に──約一・九キロという数字を示されましたが、これは今の進行状況からすれば九年ないし十年かかるというだけの予算措置しかされておりません。さらに、ここから上流の龍神村につながる道でございますが、これは我々田舎の言葉で申しますのに「犬走り」という道でございまして、地図には確かに県道として認定されてございますけれども、道とした形態はございません。それが現道でございます。
 そこをいっときも早く連結することが、過疎の地域の林業に励む人たちの待望でございまして、それをカバーしていただいておるのが林道でございます。林道と県道を接続しておるがために、何とか道路の形態はつくっておりますけれども、現在ある県道の姿というものは、ルートだけはございますが、大きな大木が生えてございます。そういうものをもっと、山村対策、山村振興という意味から土木行政で取り組んでやっていただきたい、これが私の質問した趣旨でございますので、今後そういう面の、残された過疎地域に対するきめの細かい行政を強くお願い申し上げまして、私の質問を終わります。
○副議長(宗 正彦君) ただいまの発言は要望でございますので、以上で木下秀男君の質問が終了いたしました。
○副議長(宗 正彦君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 41番村岡キミ子君。
 〔村岡キミ子君、登壇〕(拍手)
○村岡キミ子君 お許しをいただきましたので、早速、質問に入らせていただきます。
 まず初めに、近年、急増している女性のパートタイム労働者問題についてお尋ねをいたします。
 最近、あらゆる職場にパート、派遣、アルバイトといった正規雇用以外の雇用形態で働く労働者が急速にふえてまいりました。しかも、その多くは女性であります。今や、家事専業の女性の方が少ないと言っても過言ではないでしょう。私の周りでも、お母さん方が、銀行、スーパーマーケット、食堂、給食センター、事務等々、何らかの形でパートタイマーとして働いておられます。
 女子労働者は年ごとに増大し、去る十二月一日、労働省が発表した「婦人労働白書」によりますと、八八年度は女子労働者の数は二千六百七十万人となりました。前年に比べ、五十五万人増加となっております。この中で、一週間の就業時間が三十五時間未満の女子パート労働者は、一九六○年の五十七万人が八○年代になって急速にふえているのであります。八○年の二百五十六万人から昨年の八八年には三百八十六万人と急増、一九六○年から見れば実に六・八倍にもふえているのであります。女子労働者の三八%がパート労働者ということになり、さらに今や女子労働者の四人に一人がパート労働者であることも驚きの一つであります。週三十五時間以上のパート労働者を含めると、この数はもっとふえることになりましょう。今や、いわゆるパートタイマー、アルバイトと呼ばれる労働者は八百万人に近いと推計されているのであります。この傾向は、第三次産業や製造業で顕著にあらわれておりまして、例えば、大手スーパーのダイエー、イトーヨーカ堂、西友等では、全社員のうち六割近くがパート労働者になっていると言われています。
 企業がパートを雇う主な理由は、人件費を切り詰め、能率よく、しかも正社員並みに働かせる方向なのです。一方で、賃金はほとんど時間給で、パート労働者の平均に近い高卒、勤続三年から四年の常用労働者の時間給換算の数字と比べても約三割低い額であります。何よりも、パート賃金が低いという壁になっているのは非課税最低額が九十二万円であるからです。それゆえに、年収額を枠内に抑えざるを得ない結果になっています。本年一月にさかのぼって、この最低額が百万円に引き上げられました。しかし、パートの婦人たちは、これをさらに百二十万円から百五十万円に引き上げてほしいという強い願いを持っています。
 去る六月二十三日、労働省は、「パートタイム労働者の処遇及び労働条件等の改善を図るため」として「パートタイム労働指針」を制定いたしました。この指針の周知徹底を図るべく労働旬間等を計画、実施されたことは、御承知のとおりでございます。この指針は、以前のパートタイム対策要綱にかわるものでありながら、パート労働者の低賃金を初め、劣悪な現在の労働条件について抜本的な改善策が打ち出されておらず、しかもパート労働者を雇う事業者に対し義務づけや罰則規定もなく、ただ事業者の努力にゆだねるという不十分な内容にとどまっているのです。今後、一層増大するであろうパート労働者の処遇改善は、この指針の周知徹底はもちろんのこと、行政の積極的かつ具体的な指導監督が求められることになろうかと思うのであります。標語である「パートの力 輝きます」がスローガンだけに終わることなく実現しなければならないことを、まず申し上げておきたいと思います。
 以上、るるパートの現状を申し上げてまいりましたが、本県のパートの実態について見てみますと、昭和五十九年及び昭和六十二年と、二回の実態調査が行われてまいりました。その調査結果から見ますと、調査対象が民営、企業内の常用労働者三十人以上の事業所であることから一定の基礎資料として把握はできましたものの、問題はこれ以外、すなわち三十人以下の事業所で働くパート労働者の賃金や労働条件の実態が不明のままであることを申し述べたいと思います。
 私は、今回、パート労働者の賃金及び労働条件について重点的にお尋ねをしてまいります。
 今、パート労働者の皆さんが、働く動機はいろいろあるにせよ、働く中でさまざまな矛盾を感じていらっしゃいます。「常用労働者と変わらない時間働き、その仕事内容も何ら変わらないのに、なぜパートというだけで賃金差別するの」、「定期的な昇給もないし、この五年間一円も上がっていなかった。文句を言ったら少し上がったけど、やめろと言わんばかりに嫌みを言われたんよ」、こう言う銀行労働者。「年休制度や退職金もないよ。雇用期間もはっきりしていないし、いつ、もう要らないからやめてほしいと言われるのではないかと不安な気持ちで働いている」と、中小企業で働くお母さん。「いつ、どんなとき病気やけがをするかわからないし、せめて雇用保険、労災保険が欲しいわ。社会保険に加入できないだろうか」と、多くのパートのお母さんたちが切実に訴えていらっしゃいます。
 このようなパート労働者の願いから見ますと、この実態調査は労働条件の明示や就業規則の作成のみがわずか改善されてまいりましたが、賃金においては全国水準の一時間当たりの平均賃金六百四十二円に対し、本県は六百三十四円と低く、近畿で見るならば最も安い現状にあります。これは、六十三年賃金構造基本調査結果が示しています。また一週間の所定労働日数は、週六日が過半数の五一・二%を占め、次いで五日が二二・三%となっており、労働日数は常用労働者と同様の状態にあります。一日の労働時間も、六時間から八時間が三九・一%、四時間から六時間が四一・九%と、いずれも労働時間が長くなっている傾向にあります。雇用期間にいたしましても、六カ月未満の契約が減り、六カ月から十二カ月の長期的契約がふえてまいりました。このように、常用労働者並みの労働日数、時間及び雇用契約にありながら、定期昇給や年休、退職金、社会保障にかかわる労働条件の改善が全く進んでいないと言ってもよろしいでしょう。
 県当局は、さきに申し上げました「パートタイム労働指針」や現行の労基法の適用について、具体的に使用者に周知徹底させる方法や改善、その対策を早急に検討すべきと考えます。いかがでしょうか。
 商工労働部長にお尋ねをいたします。
 さきに県が行った二回の実態調査の結果をどのように受けとめられたのでしょう。また、改善すべき問題点はどうなのか、具体的にお示しいただきたいのであります。さらに、この二回の調査は対象が使用者側であります。パート労働者として実際に働いている本人による実態調査が必要かとも思われます。また、労働者三十人以下の実態調査もされるべきと存じますが、いつごろ実施されようと考えておられるのか、御所見をお聞かせ願います。
 次に、本県庁についてでありますが、本県庁の職員の皆さん、そしてそこに働く皆さんは、全県民の模範となる賃金や労働条件の確立が求められます。臨調行革による人員削減の中で、やむにやまれず定員外労働者すなわちアルバイト労働者の雇用をせざるを得ない現状にあることは十分承知いたしておりますが、私はあえてこのアルバイト労働者の処遇問題についてお伺いをいたします。
 人事課にお聞きいたしましたところ、本庁及び出先機関で働く女子職員は、本庁三百五十二名中アルバイト百五十二名、出先機関八百二十四名中アルバイト三百十九名で、アルバイトの総数が四百七十一名に達しており、この数から見てみますと、県の行政機関で働く女子労働者の四○%はアルバイトによって支えられていることになりましょう。不思議なことに男性のアルバイトがゼロということもなぜなのか、問題視されている性的差別が県庁でもあるのでしょうか。女性のみアルバイト採用する理由も、あわせてお聞かせいただければ幸いと思います。
 聞くところによりますと、アルバイトの諸条件は、賃金一日三千九百円で最低賃金改定時に引き上げられ、一日所定労働時間は職員と全く同様の八時四十五分から十七時十五分、労働日数は一カ月二十日を超えない日数として、所得非課税限度額九十万円を超えない枠としているそうです。また、雇用契約は二カ月更新で五回まで、すなわち十カ月の期間であるということです。その他、通勤手当を初めとした諸手当は支給されておりません。さらに、社会保険、雇用保険への適用などの社会保障とともに、年休や賞与、仕事中のけがの補償など、数人に適用があるものの、ほとんどの人に適用されていない現実です。こうした状況は、社会的な面から見ても具体的な改善が必要と思うのでありますが、県当局のアルバイトについての基本的な考え方と今後の方針をお聞かせいただきたいと思います。これは、総務部長の答弁をお願い申し上げます。
 次に、第二期活力ある山村づくり推進事業についてお尋ねをいたします。
 豊かな自然環境に恵まれた本県ではありますが、進行する過疎化の流れを食いとめることが容易でないことは知っております。しかし、関係市町村では大変な努力が続けられておるやに聞き及んでいます。その活力ある村づくりにいろいろと取り組みが強化され、進みつつあることは周知のとおりでございます。
 さて、本事業は昭和五十七年度に始まり、山村地域の自立を目標に、地域での自主的な計画と活動に基づき、ふるさと産品の推進や人づくり対策、定住環境の整備など総合的に取り組み、一定の水準に到達し、さらに六十一年度を初年度とする、育ちつつあるふるさと産品の生産、加工、販売対策等、みずからの誇り得る大資源の有効利用を中心として、平成二年度を目指した新たな振興を展開していくことを趣旨として事業が始まっています。そしてこの事業は、県補助金等交付規則及び第二期活力ある山村づくり推進事業補助金交付要綱に基づき行われております。したがって、この補助金を受けて事業を行う業者は、補助金が県民から徴収された税金、その他の貴重な財源で賄われるものであることに留意をし、法令の定め及び補助金等の交付の目的に従って誠実に補助事業を行うよう努めなければならないと、厳しく規則第三条に明記されておるところでありますが、農林水産部長にお尋ねを申し上げます。
 本事業の活用状況とその効果のほどはどのような状況にあるのか、お聞かせください。
 加えてお伺いをいたしますが、古座町で、本事業に係る堆肥集積施設を自動車等の解体や古物置き場として使用させ、その上、土地利用料を徴収、個人の利益を上げていた、極めて悪質な目的外使用事件が発生しました。しかも、昭和六十三年九月に町職員に発見された以後、再三忠告されたにもかかわらず、発覚後一年余りもの間、不法使用していたことが明らかにされました。これは、我が党の町会議員が去る九月古座町定例議会で厳しく指摘をし、改善を求めてきたところであります。
 とりわけ、この堆肥集積施設の擁壁コンクリート設置工事費として昭和六十一年度の補助金事業が許可されたものであります。補助金額は、県・町合わせて三百七十三万円が支給されております。しかもこの間、本来の堆肥集積事業はごくわずかしか行われていなかった経過があります。そればかりか、この事業主が現職町議会議員であるという事態で進行してきたのでありますから、これはまことに許しがたい行為と考えます。私も、二回にわたり、この目で現地の実情を詳しく見てまいりましたし、住民の皆さんからも意見やお話を聞いてまいりました。現在では原状復帰はしておりますが、町民の方々からは、町当局は始末書だけで済まそうとしている、補助金をもらっているのならもっと厳しいとがめがあっても当然ではないかという声が非常に強く出されているのであります。本事業に対しては、県民の、また町民の大きな期待が寄せられ、非常に関心の高い注目されている事業であることから考えても、行政側の指導と厳しい対応によってこそ再びこのような不正が起こらないのではないでしょうか。
 本件について、事実経過をどう具体的に把握してこられたのか、このたびの不正使用の動機やそれが一年間も是正されなかった理由について、またこれまでの不正使用に対し、要綱や規則に基づく指導がどのようにされてきたのかについて答弁をお願いいたします。
 以上で、第一回の質問を終わります。
○副議長(宗 正彦君) ただいまの村岡キミ子君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 商工労働部長天谷一郎君。
 〔天谷一郎君、登壇〕
○商工労働部長(天谷一郎君) まず、パートタイム労働指針の定着を図るため、県といたしましては夜間労働大学等の労働教育講座などでその周知を図るとともに、集中的に周知徹底を図るため和歌山婦人少年室等と共催をしてパート労働旬間を設け、啓発活動を実施しているところでございます。
 一方、労働省の今年度新規事業である中小企業パートタイム労働者雇用管理改善推進事業に本県の高野口町商工会が指定をされ、現在、事業実施中でございます。
 今後とも、労働基準法の遵守や労働条件の改善に向け、和歌山労働基準局を初めとする関係行政機関と連携しながら、その周知徹底に努めてまいりたいと考えてございます。
 次に、県が過去二回、昭和五十九年と六十二年に実施をいたしました調査結果の比較でございますが、労働条件を書面により明示している企業の割合が約三九%から約四五%へと増加をしておりまして、労働条件の明確化の面で改善をされてきております。
 なお、社会保険への加入の促進、退職金制度の普及等につきましては、今後より一層積極的に努力してまいりたいと考えてございます。
 次に、パート労働者への実態調査及び労働者三十人未満の事業所の実態調査につきましては、今後検討してまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○副議長(宗 正彦君) 総務部長斉藤恒孝君。
 〔斉藤恒孝君、登壇〕
○総務部長(斉藤恒孝君) アルバイト職員についての基本的な考え方でございます。
 本県では、単純な業務でかつ短期間に集中し、年間を通じて職員を配置する必要のない場合、あるいは労働密度が薄くて正規の職員でなくとも行える業務などについてアルバイト職員を採用し、業務を遂行する上で一定の役割を果たしていただいております。
 また、女性に偏っているというお話でございますが、アルバイトの職務内容や勤務条件等から結果的に女性に依存することになっているところでございます。近年、民間企業にあっては非常な好景気を反映して人手不足となってきております。こうした情勢を背景に、パートに対する需要も増大しており、待遇についても見直しが行われているところでございます。本県のアルバイト職員についても、処遇の改善には努力を払っているところでございますが、こうした社会情勢を参考にしながら、引き続き処遇の改善に取り組んでまいりたいと考えております。
○副議長(宗 正彦君) 農林水産部長安田重行君。
 〔安田重行君、登壇〕
○農林水産部長(安田重行君) お答え申し上げます。
 議員お話しのように、補助事業としての第二期活力ある山村づくり推進事業については昭和五十七年度から実施をいたしてございまして、六十一年度からは産業振興、大資源の活用、人づくりを三本の柱として実施をいたしてございます。地域づくりに最も効果のある事業として市町村から非常に多くの要望がございます。これまでも、地元要望の強い地域の特性を生かした農林産物の生産加工施設、集出荷施設、産品直売所、軽企業誘致など実施をしてまいりました。その結果、ふるさと産品が各地域で定着しつつあり、センリョウ、花卉、高冷地野菜等は地域の中核産品として育ちつつございます。また軽企業誘致につきましては、本年度実施分を合わせて三町村で実施し、一カ所四十人から五十人の新しい就労の場ができてございます。この事業が山村振興の中核としての役割を果たしているものと確信いたしてございます。
 次に、古座町における堆肥集積施設の目的外使用の問題でございます。
 当該施設につきましては、地元の花木生産組合が実施したものでございまして、完成後、六十二年四月から堆肥の製造が開始されました。その後、六十三年七月ごろから近隣の業者が古物──自動車の廃車等でございますけれども──を堆肥生産施設の一部に置き、町は昭和六十三年九月二十三日これを発見し、再三撤去するよう指導したところでございます。しかしながら、その後そのままの状態が経過いたしまして、本年九月二十六日、町から初めて東牟婁県事務所へ事情説明がございました。県事務所では、早急に本来の目的に復元するよう、同日付をもって強く指示をいたしました。その結果、本年九月三十日、町が現地調査の結果、廃車の自動車等が撤去されていることを確認いたしておりますが、県事務所も十月十一日、現場を調査し、このことを確認いたしております。この間、一年余り経過いたしており、古座町議会において問題になった後に撤去されるなど、大変遺憾なことと考えております。
 次に、当該補助事業に対する行政の指導と対応でございます。
 第二期活力ある山村づくり推進事業補助金交付要綱では、「補助事業により取得し、又は効用の増加した財産については、事業の完了後においても善良な管理者の注意をもって管理するとともに、その効率的な運営を図らなければならない」と規定をいたしております。
 補助目的外に使用された場合は、まず善良な管理者としての役割を果たすように指導することとし、これが是正されなければ和歌山県補助金等交付規則により補助金の全部または一部を取り消すことができると規定をいたしてございます。事務要領では、「本事業により設置した施設等には、施行年度、事業名、事業主体等を記載した標識等を設置しなければならない」と規定もいたしてございます。
 当該施設につきましては堆肥生産施設であり、自動車の廃車等をその上に置いても、その間、全部効用がなくなるのではなく、堆肥が生産されるところもあり、また当該施設の管理者も深くこれを反省し、町へ始末書及び改善計画を提出し、現在、完全に復元活用いたしてございますので、今後はかかることのないよう厳しく対処してまいりたいと考えてございます。
○副議長(宗 正彦君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 41番村岡キミ子君。
○村岡キミ子君 まず、パート問題であります。
 パートが、和歌山県でも全国と同じように毎年毎年ふえ続けているという認識はお持ちになっていらしゃると理解いたします。ただ、部長もおっしゃいましたように、労働条件そのものがまだまだ不十分のまま未解決で進んでいるということについて、今、婦人労働者がどうしてパートの方へ移行せざるを得なかったのかということ。本来ならばもとの職業をそのまま続けていきたかった、これが多くの方々の願いなんです。
 御承知のとおり、ILOにおいて、あらゆる男女の差別を撤廃する条約が批准をされました。そのときに、日本でもこの条約を批准しなければならないという中で労働基準法が大改悪をされる──女性の立場から言えば大改悪です。母性保護の部分で産前産後休暇が若干延びたのはよろしいですけれども、その反面、残業時間が緩和され深夜労働が緩和されていくという大きな状況の中で女性労働者は、長時間労働にたえない、深夜労働をこれ以上させられたらたまらないんだといった労働実態の中から退職に追い込まれていく。あげくの果てには、再就職するときにはパートへと移行していかざるを得なかった、こういった大きな原因もあります。
 また、企業においても減量経営の中で人件費を削減していく。そのために常用労働者を減らして女性労働者をどんどんパート化していくという方向の中で、今のパート労働者が最もふえたのが四十五年当時ですね。歴史的にも三十五年当時から年々ふえてきているわけですから、パート労働者というのはそういった大きな社会的背景の中でつくられたものだと私は理解をいたします。
 必要な人員というのは今求められている部分ですから、災害補償、社会保障、年休、賞与、定期昇給、そういったものがもっと前向きに検討されなければならないし、必要な人間である以上は、働くその人の人権を保障するという立場からも改善が即求められるものだというふうに思います。
 そういった点で、ぜひ今後この二回にわたるアンケートそのものを有効に生かしていただきたい。これが行政の仕事だと思いますので、要望をしておきたいと思います。
 また、先ほどもお話ししましたように、三十人以下の事業所の実態はもっともっと過酷だと思うんです。ここに出されているのはすべて三十人以上の事業所ですし、おまけに事業所側が提出したアンケート結果であります。労働者みずからが筆をとってアンケートに答えたものではありません。この違いは大きいと思いますので、ぜひ近い時期に計画をしていただきたいと思います。これも要望しておきます。
 それから、県庁のアルバイト職員。私は、これに非常に関心を持っております。
 各課を回りますと、アルバイトの方にお茶を入れていただいたりといったことで私もお世話になっているわけですけれども、この県庁の中、出先機関で働いていらっしゃる女性のアルバイト労働者の皆さんというのは、やっぱりその課その課でどうしても必要な人員だと思うんです。
 総務部長は、単純でかつ一定の期間に集中する仕事とおっしゃいましたが、ずっと見てみますと、その労働者はやっぱり必要な人員だからこそ雇っていらっしゃるわけですね。短期間というのは十カ月というふうな意味合いになるかと思いますけれども、そういった人たちがいなければその課の業務が回らないという現実をもっとまじめに受けとめていただきたいと思うわけです。
 私は、この賃金表をいただきました。一日、三千九百円。これは、今の社会的な相場から見ればやっぱり安いというふうに私は見ます。この賃金表では、一般行政職の方で高校卒業者が県庁に就職した場合あるいは出先機関へ職員として採用された場合、初任給が十万二千二百円なんです。今、週休二日制も入りつつありますから二十三日の出勤日数として計算し、一日当たりのお金を出してみますと四千四百四十三円なんです。短大卒で見てみますと、初任給が十万八千八百円ですから四千七百三十円。大学卒でいきますと、初任給が十二万一千百円ですので五千二百六十五円。単純にいけばこうなります。こうやって見てみますと、最低でも四千四百四十三円は支給されても不思議ではない。今、世間相場で見てみますと、一般の人たちがもらう支給額というのは大体四千五百円以上ではないかと私は推察をするわけです。
 今後も改善をしていきたいという総務部長の御答弁でしたけれども、こういった状況から見てみましても、少なくともこの高卒の初任給並みの賃金は保障されても何ら不思議ではないというふうに私は思います。今、ここで答弁をしてくださいとは申し上げません。今後の改善の中でぜひとも考えていただきたい内容であります。
 また、年休の問題、雇用保険の問題ですね。これは、少なくとも考えられるんでないかと思います。パートタイム労働指針、こういったものの中でぜひ実現をしていただきますように要望して期待をしたいと思います。
 それから、堆肥集積問題です。
 今、農林水産部長から御答弁いただいたんですけれども、経過的には非常に長い期間を通して放置されていたという事実関係ですね。これは、住民の皆さんにとっては、この事業がそういった個人の利益ということで目的外に使用されていたこと、これは大きな怒りになっていますし、今そういった事業が行われるならば、それは本来の補助事業ではないという怒りはまだまだ続いています。そして、始末書だけで済ませるのかどうかということが非常に大きな関心になっています。悪いことをして、「申しわけございませんでした。原状復帰いたしましたので、どうぞ寛大な御処置を」というわび状が出ているわけですけれども、三百七十三万円というのは、地域の皆さん方の生活費にすれば本当に大きなお金です。これが認められるとするならば、もう信用できない。
 行政の甘さが今強く言われているわけですから、こういった点も含めて、ぜひ不正が起こらないよう──この事業だけではなくて山村づくりのために努力している他の事業にも大きく影響してくると思いますので、信頼を取り戻すために行政の対応が急務と思います。期待をいたしております。
 要望にいたします。
○副議長(宗 正彦君) ただいまの発言は要望でございますので、以上で村岡キミ子君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 次会は十二月十一日再開し、質疑及び一般質問を続行いたします。
○副議長(宗 正彦君) 本日は、これをもって散会いたします。
 午後二時二十七分散会

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