平成元年12月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(中村 博議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

○議長(門 三佐博君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 43番中村 博君。
 〔中村 博君、登壇〕(拍手)
○中村 博君 それでは、一般質問を申し上げてまいりたいと存じます。
 まず最初に、関西空港問題についてお尋ねを申し上げます。
 当局におきましては、平成二年度政府予算要望事項の冒頭で、関西空港問題について全体構想の早期着工及び大幅な国内便の確保等を取り上げられておりますが、議会の関西空港特別委員会が去る十一月十三日、十四日の両日にわたりまして、同様の問題で国会関係者や運輸省に陳情いたしてまいりましたので、この機会に、陳情の経過を踏まえ、知事にお尋ねをいたしたいと存じます。
 本県の主張について念のため明らかにしておきますと、航空審議会の答申並びに本県が同意した三点セットに基づき、第六次空港整備五カ年計画で全体計画の位置づけを行い早期着工を図られたい、また国内便の大幅な確保については、航空審議会答申すなわち伊丹空港の廃止を前提とする立場を尊重し、三点セットの同意に基づき国内線の基幹空港とすべきである、以上が本県の主張の要旨であります。
 そこで、議会の関西空港特別委員会におきましても、こうした本県の主張の線に沿って前段で申し上げたように陳情いたした次第でございますが、残念ながら、いずれにおきましても難しい課題で、実現の見通しは極めて困難な状況に置かれているように感じられたのであります。
 何が困難であるかという点について若干申し上げておきますと、航空審議会の答申に記述されております伊丹空港廃止を前提として関西空港の位置を泉州沖とするということが──運輸省といたしましては、当時、伊丹空港における航空機騒音問題で訴訟にまで発展している状況のもとで、公害のない空港づくりを目指す以上、当然、関西空港の供用開始と相まって伊丹空港が廃止の方向に進められるものと思料いたしておったところでありますが、今回の陳情により、運輸省の考え方としては、航空審議会の審議の段階で伊丹空港について廃止・存続の両論があり、意見集約に基づいて廃止を前提とする表現となったので、廃止あるいは存続のいずれをも決めたものではなく、今後の調査や地元の意見を聞きながら決定することになるということで、運輸省としては踏み込んだコメントが全く出されなかったのであります。
 関西空港が滑走路一本で事業が進みつつあることと、大阪府を初め伊丹空港周辺の十一市が存続の方向に固まりつつある状況の中で、先般、周辺住民の存続問題のアンケート調査でも存続の意見が多数を占める結果も出されている事態を考え合わせてみますと、大勢としては伊丹空港が存続される方向に流れつつあるように見ざるを得ないのであります。
 伊丹空港が存続されることになりますならば、国内線の基幹空港に伊丹空港はなるでしょうし、関西空港は国際線の基幹空港に、国内線については主として西日本における地方空港との接続程度のものとして、それぞれ機能分担されていくことは確かなことであります。加えて、平成五年ごろには成田空港の二次計画完了ともなれば、伊丹、関西空港ということで航空需要の伸びをも賄えるということになろうかとも思われます。
 本県が主張する、関西空港の全体計画の早期着工及び伊丹空港廃止を前提とする国内便の大幅な確保の問題につきましては、運輸省の態度と大阪府下の現状からして、現実は極めて困難な課題であるということを申し上げたのであります。
 そこで、知事にお尋ねを申し上げます。
 十二月議会の開会あいさつにおいて本問題について特に触れられ、国に対し強く要望された旨の発言がございましたが、国とのやりとりの状況の中身の問題については全く言及されておりません。どのようなやりとりがなされたのか、詳しく御説明していただくとともに、国に強く要望された結果、困難な課題だと見ておられるのかどうか、御認識の点にまで触れて御答弁をいただきたいと存じます。
 あなたは、これらの問題に関連して、実現に向かって知事として政治生命をかける旨の発言がございましたが、この機会に改めてお尋ねをいたします。「政治生命をかける」などということになりますならば、常識的に考えまして、知事としての公職をも辞しかねないという極めて異例の決意だと思われるのでございますが、そのように受けとめてよいのかどうか、御所見のほどを承りたいと存じます。
 関西空港問題の今日までの経過の中で、若干、大筋について申し上げてみたいと思います。
 昭和四十九年八月、航空審議会が泉州沖が適当と答申を行いました。昭和五十年七月に、航空審議会の空港部会で埋立工法が決定されました。同年九月、航空審議会が事業費二兆三千億円の空港設置計画を答申。この中身は、空港面積千二百ヘクタール、滑走路三本、滑走能力二十六万回。昭和五十五年十一月、運輸省は二十五カ年計画による五段階施行を発表。昭和五十六年四月、第一期工事六百ヘクタール、滑走路一本、滑走能力十六万回とする空港本体計画を発表。昭和五十六年五月、運輸省は三府県副知事会議を開催、三点セットを提出。昭和五十七年八月、知事、三点セット同意回答。その後、関西国際空港株式会社法が国会で成立をいたしました。第三セクター方式によって、現在のような空港づくりが進められているのであります。
 以上申し上げた経過の中から重要と思われる点を申し上げますと、運輸省は、航空審議会の答申に基づく空港設置計画を二十五カ年計画による五段階施行として、第一期工事六百ヘクタールとした空港本体計画を本県に提示してまいったものであります。そして、知事はこれに同意を行ったものであります。
 こういうような経過から見てみますと、今日に至って全体計画の早期着工を強く要望する事態はまさに整合性に欠けるもので、何ゆえ三点セットの回答に当たって、航空審議会答申による全体計画の早期着工を求めなかったのかと申し上げざるを得ないのであります。
 三点セットの回答時点においては事業主体について明確にされていなかったことは御承知のとおりでありますが、知事は関西空港の事業主体について、「第一種空港と位置づけている。第一種空港は一義的には国の責任で、国が負担すべきであると認識している」と議会でも答弁されてきたのであります。しかし、残念ながら、三点セットの回答に当たってもこうした正論の主張のないまま本県として関西国際空港株式会社に所要の出資を行い、大事なところで、国の責任を求めるという知事の主張がなされていないのであります。
 伊丹空港の存廃問題や全体計画の早期実現問題が本県の県益を求める上で不可欠の問題とされるならば、本県として当然、整合性のある主張を展開しなければなりません。本県の視点からではなく、航空審議会答申の基本理念及び国の責任による航空行政のあり方などの視点から理論を固めないと説得力がないように思われますが、知事の御所見をお伺いいたします。
 なお、全体計画の早期着工の問題についてでありますが、航空審答申による空港設置計画は二兆三千億円。これが今日では、第三セクター方式による一兆円事業に大幅に縮小されてまいりました。その背景には、臨調行革絡みで大蔵省の主導によるものであったことは御承知のとおりであります。一兆三千億円以上の事業費の復活は、関西空港の採算の見込みも立たない中で不可能に近い問題と考えていますが、どのように判断されるのか、あわせお答えを願います。
 昭和五十七年一月、大阪府知事は伊丹空港のアクセスとなるモノレールの運輸省への認可申請に際して伊丹空港存続を打ち出したことは御承知のとおりで、運輸省は既に認可を行い、モノレールの建設はかなり進んでおります。こうした事態にある大阪府と本県との関係について、伊丹空港存続問題で意見の一致が見られることは不可能と考えられますが、知事の御認識はいかがなものでありましょう。また、大阪府への対応はどのようにされていくのか。最近開催された近畿府県知事会議においても本県は孤立しているようにも思われますので、それらの状況についてもお答えを願いたいと存じます。
 加太の土取り事業について、お尋ねをいたします。
 先般の関西空港特別委員会の政府陳情の際に、思わぬところから大蔵省の公共事業担当主計官のコメントを聞くことになったのであります。担当官の言明によりますと、「和歌山県の関西空港埋め立ての土取り事業は設備投資に金がかかり過ぎて高いものになっている。淡路島は非常に安い」ということでありました。
 先般、関西空港会社がターミナルビルの設計をフランス、イタリーの専門家に委託し、設計が完了した際に大蔵省から大き過ぎるというクレームがついたことが報道されておりましたが、国際的な問題にまでわたってクレームをつける事態でありますから、本県の土砂採取事業などにクレームをつけるなどはいとも簡単なことでありましょう。それだけに、現在の暫定価格一立方メートル当たり千円に知事がどれだけ努力をして上乗せをしていくのか、非常に重要な問題に差しかかっております。しかし残念ながら、先ほど申し上げましたように、今、本県にとりましては非常に厳しい状況にあるんではないか。
 本年四月十九日でございましたが、関西空港特別委員会で加太土取り事業の価格問題で関西空港会社の竹内社長と折衝いたした経過があります。土砂搬出を直前にしていたときでありましたが、会社側から価格問題について具体的な説明が全くない状態で、私どもとの間で大変な激論になった場面もありました。今からこうした点を考えてみますと、大蔵省の「和歌山は高い」という認識のもとで関西空港会社に対し非常に厳しい対応をしていた、そういうせいではないかと考えざるを得ません。
 土砂搬出から七カ月も経過した今日において、前段で申し上げたように、暫定価格のままで、まだ単価問題に決着がついていないということは大変大きな問題であります。早急に決着をつけなければならない問題であります。
 御承知のように、商売をしていく場合、当然、値段が決まります。しかし、今日、開発公社と関西空港会社との間におきましては、正式な値段も決まらないまま商取引を続けていることになります。どこの世界を探しても、こういうことはありません。したがって、大蔵省への対応も重要であるということを強調いたしたいと思います。
 御承知のとおり、土砂採取事業に要した二百億円に上る投資がこうしたことで回収できないとなる場合、開発公社といたしましては多大の損害を受けることになるのでありますから、関西空港会社はもとより、大蔵省に対しましても早期に強力な折衝が重要であります。
 かねがね、知事に土取り事業での価格問題の重要性について御指摘申し上げてきたところでありますが、先ほど申し上げたように、七カ月も経過しながらまだ価格が決まっていない、こういう現状について知事としてはどのように現在把握されておられるのか。開発公社の理事長でございますから。
 本県として、暫定価格──今決まっているのは千円でありますが──をどの程度上積みしていくのか。開発公社の非公式な話によりますと千五百円というように我々聞いておりますが、これを大蔵省との対応も踏まえていただき、関西空港会社といつごろまでにどういう決着を知事はつけられようとするのか、その点をお尋ねいたしたいと存じます。
 土木部長にお尋ねを申し上げます。
 関西空港立地に伴う地域整備の問題でありますが、運輸省は三点セットの一つに地域整備についての「考え方」なるものを示しては来ましたが、国としての具体的な裏づけがないまま今日に至っています。現時点において、「考え方」で示された内容について建設省との折衝により内容的にどの程度にまで固まっているのか、この際、具体的に明らかにしていただきたいと思います。
 なお、大阪府との関連道路におきまして、相互間の協議がなされ、ある程度内容的にも詰まってきているのではないかと思われますので、これらの道路整備計画について、計画終了時点をも含め、具体的に御説明願いたいと思います。
 御承知のように、土木部にありましては関空関連の地域整備について、その果たす役割は非常に大きいものがあります。本県においては大阪府の紀の川広域利水計画に同意を与えてまいっておりますが、このことが、大阪府として十分理解を深め、府県間の道路整備などの問題において有効に機能しているのかどうか。折衝の過程で感じられることもあろうかと存じますので、その点も含め、重ねてお尋ねをいたしたいと存じます。
 次に、住民監査請求についての結果措置の問題で、代表監査委員にお尋ねをいたしたいと存じます。
 和歌の浦の歴史的景観保全及び関係住民の日常生活の上から、本県が進めている都市計画街路事業和歌浦廻線に係る新不老橋建設に伴う事務執行について、不法不当な行為があったものとして、本年九月二十七日に関係住民の方々から地方自治法二百四十二条第一項に基づく請求が行われ、この請求を受理いたしました本県監査委員は、本年十一月十三日付をもって請求人の方々に結果を通知いたしております。
 本県が行う事務について住民監査請求が出され、結果通知を出すに至りましたことは前例のないことで、現在、請求関係者の方々がこの結果を不服として、和歌山地裁に行政訴訟を提起される準備を進めているということであります。したがいまして、この機会にお尋ねをいたす次第であります。
 請求人の請求の趣旨を申し上げてみますと、知事に対し、昭和二十一年十月三日、都市計画道路決定(昭和四十八年十一月二十六日、都市計画決定変更)に基づく和歌浦廻線の車道橋建設工事の即時中止、原状回復、工事請負契約の解除及び工事代金の支払いの停止、並びに右工事に関連して県に生じた損害の賠償をするよう措置を求めるとのことでありました。これに対し本県監査委員は、この和歌山県職員措置請求に該当する工事、昭和六十三年度街臨海改第三号の三、都市計画道路和歌浦廻線道路改良工事施行について、誤りなく適正に行っていたということで請求を退けているのであります。
 そこでお尋ねをいたしますが、本事業は都市計画法に基づくものでありますから、法の目的、基本理念などについて的確に踏まえていただくことが重要と考えます。
 参考までに、この点について触れておきますと、目的といたしましては、都市の健全な発展と秩序ある整備を図ることにあるとされております。理念におきましては、健康で文化的な都市活動を確保すべきであるとされているのでありまして、この基本的立場から、都市計画の内容及び決定手続、都市計画制限など、適正な制限のもとに土地の合理的な利用を図るために都市計画法が整備されているのであります。したがいまして、本請求に対する監査に当たりましては、以上の基本的立場から慎重な審議が行われ、結果において請求された方々を納得さすものでなければならないと思います。
 そこで、不整合と思える点について申し上げ、見解をただしたいと存じます。
 御承知のように、和歌浦廻線なる街路事業は昭和二十一年十月の計画決定であります。戦後四十三年を経過しながら事業決定の手続がなされないまま本県の事務が推移している事実関係、同計画線が昭和四十八年十一月に計画変更されているが、これは同計画線上に都市計画公園を設置したためのものでありまして、これがために計画線が行きどまりのままで廻線としての変更手続がなされていない事実関係、不老橋から片男波にかけての間の道路幅員が六メーターないし八メーターで計画幅員が十一メーターとなっている関係から、当然、建物の移転、除去、用地買収が必要であります。
 しかるに、この間の事業決定もなされていないために、利害関係人に法的手続もし得ないまま新不老橋の建設に着手している事実について、法にいう「秩序ある整備」とは言いがたく、手続上においても整合性に欠ける事務執行となっている事実関係。和歌浦地区における車の通過の上からも和歌浦廻線の必要性を主張しておりますが、現在、廻線としての計画決定がないままの状態で、新不老橋を架設し、夏場、海水浴に車が殺到した場合、交通渋滞はもとより、付近住民の生活環境にも重大な支障が生じるおそれがあるとしている請求理由については、法でいう「秩序ある整備」が行われないために、関係人は健康で文化的な都市活動が保障されないことになるのであります。
 かかる点について、現地での状況調査や当局に対しどのような対処がなされてきたのか、また、法でいう「秩序ある整備」に係る事務執行と考えているが、どうであるのか、詳しく御説明を願いたいと存じます。
 和歌浦の歴史的景観の問題に関連してお尋ねをいたします。
 監査委員においても、本請求に当たり十分調査されたことだと思いますが、本県は、和歌の浦につきましては明治二十二年、五十五ヘクタールを県立公園とし、大正十四年には本県史蹟名勝天然記念物保存顕彰規程によって名勝地に指定を行ったという経緯がありますが、こうした関係からいたしまして、現在では都市計画法に基づく都市公園に指定されていると聞き及んでおります。こうした点について十分承知の上で結果を出されたのかどうか、お答えを願いたいと存じます。
 そこで、重ねてお尋ねを申し上げますが、和歌公園なるものの区域及び面積についてどのように把握されてきたのか。観海閣という建物がございますが、これらの管理は本県にあると聞き及んでいますけれども、どこの所管になっているのか。これらの状況からして、名勝の地として重要な役割を果たしている不老橋、三断橋などの建造物についても、観海閣同様、本県の管理に係るのではないかと見ているのでありますが、どのように精査されたのか。
 なお、都市計画公園内における開発行為については法的に何らかの制限があるかと思われますが、審査の対象として検討がなされたのかどうか。多岐にわたる質問を申し上げましたが、具体的にお答えをいただきたいと存じます。
 お聞きするところによりますと、十二月十一日ごろに、本件監査請求の結果について不服であるとして、請求人の方々が地方自治法二百四十二条の二による住民訴訟の申し立てを和歌山地裁に行うようであります。
 そこで、知事にお尋ねをいたします。
 千数百年にわたる歴史の重みを重ねてまいりました天下の景勝地・和歌の浦の景観保全への十分な配慮に欠けた本県行政の結果が、今日の事態を生み出したものと考えております。和歌の浦が持つ千数百年の歴史的景観を何としても保存し、後世に残したいと願う多くの有識者の方々には、小手先のような行政では妥協は許さないとする気持ちから、あえて住民訴訟の道を選ばれたものと思料いたしているところであります。
 新不老橋問題の行政の対応におきましても、果たして和歌浦廻線として整備がされていくのか、明確な手順が全く示されておりません。また、マリーナシティとのアクセス道路問題も俎上に上りつつある状況のもとで、本問題が法廷での争いになろうといたしているのであります。
 以上申し上げました事柄を十分踏まえていただきまして、本県行政のあり方から、申し上げてまいりましたように、住民訴訟に発展しようとしている事態は極めて重大だと考えます。これらの事態に対応していく知事としてどのような所見を持たれるのか、ひとつこの機会にお尋ねを申し上げておきたいと存じます。
 以上で、第一回の質問を終わります。
○議長(門 三佐博君) ただいまの中村博君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 中村博議員にお答え申し上げます。
 第一点、関西国際空港の全体構想と国内便確保についてでございますけれども、これにつきましては機会あるごとに要望しておるわけでございまして、先月八日にも運輸省に出向いてまいったところでございます。
 まず全体構想につきまして、運輸省から示された関西国際空港計画案等の三点セットに対する回答時の問題でございますが、国家プロジェクトとして早期に計画の具体化を図られるように回答してございますし、その後も、本県は一貫してその実現を求めてまいっておるところでございます。
 国の財政状況とか航空需要、さらには関西空港会社の採算など、その早期実現について困難な課題も多うございますけれども、過日の話し合いの中で、運輸省においても全体構想実現の必要性を十分認識しておるわけでございまして、現在、国と関西国際空港会社において、平成三年度からスタートする第六次の空港整備計画に向けて調査を行っているところでございます。また運輸大臣も、全体構想を早期に明らかにしなければならないと言っておるわけでございます。
 全体構想早期実現のためには、議員が指摘した航空行政のあり方等の視点、あるいは国土の均衡ある発展のための基盤整備という観点から、関西がまず一丸となって、我が国の基幹空港である関西国際空港の全体構想の実現に取り組んでいる現状でございますし、来る十四日には、東京において関西の政財界の代表が一堂に会しまして、全体構想の東京アピールを行うなど、今後とも、関西国際空港全体構想早期実現期成会の代表理事でもございますので、六空整への位置づけを目指して全力を傾注してまいる考えでございます。
 次に、国内便の確保の問題でございます。
 関西国際空港が国内線の基幹空港として十分な国内便を確保するようにかねてから主張してきているところでございますけれども、運輸省においても関西国際空港は国内線、国際線の基幹空港として明確に位置づけておるとのことでございますし、また、関西空港会社の採算面からも国内便の確保を図っていくとの考え方をお聞きしている次第でございます。
 この問題につきましては、昭和六十一年の九月議会におきまして、私は「国内便がなくなるということであれば、私の政治生命の問題である」と答弁を申し上げましたが、現在もそのような決意で取り組んでいるところでございます。
 また、関西国際空港の全体構想の推進、国内便の確保につきましては、大阪府あるいは近畿の各府県と一致して取り組んでおりまして、先日の阪和開発協議会、また近畿の知事会議においても、政府に対して力を合わせて要望していく合意決定がなされたところでございます。
 大阪国際空港の存廃問題につきましては、私なりの主張を申し上げてきているところでございます。現在、国においてそのあり方調査が行われている段階でございまして、地元の意見を聞いた上で国の責任において決定されるものでございます。
 しかし、その決定に先立ちまして、我が国初の二十四時間空港である関西国際空港の全体構想と国内便の確保について明らかにすべきであると、運輸省に対して強く主張してまいっているところでございまして、今後とも関西国際空港の全体構想の第六次空港整備計画への明確な位置づけ、国内便の大幅確保に積極的に取り組んでまいる所存でございますので、中村議員もひとつよろしくお願い申し上げたいと、かように存ずる次第でございます。
 それから、土砂単価の問題でございます。
 土砂搬出開始に際して覚書を締結して以来、関空会社との間で、価格決定要因とされる生産原価、開発利益、残存価格等、各項目にわたりまして、県益を図る立場で現在交渉を重ねているところでございます。
 価格については、本県としまして、和歌山で土砂を取るという過去の経緯がございます。跡地利用に支障の生じない、納得し得る価格で合意が図られるように、強く交渉してまいる所存でございます。時期につきましては、お話ございましたように、できるだけ早期決着を図りたいと考えております。
 それから、和歌浦の件でございます。
 お話のように、和歌浦は古くから全国に知られた名所でございますし、また、文化あふれる個性味豊かな町づくりが非常に重要だと存ずるわけでございます。
 和歌浦の整備につきましては、和歌浦の持つ自然的、歴史的な意義を十分に踏まえながら、多くの人から喜んでいただけるような環境づくり、すなわち和歌公園の整備について、積極的に全力投球で頑張っている現状でございます。
 お話ございました和歌浦廻線につきましては、和歌浦地区の交通環境改善を図るために、新しい橋の建設に引き続き、地元の御協力をいただきながら整備を進めてまいる考えでございます。
 話ございました住民訴訟について、現在、所見を申し述べる段階ではございません。
○議長(門 三佐博君) 土木部長磯村幹夫君。
 〔磯村幹夫君、登壇〕
○土木部長(磯村幹夫君) お答えいたします。
 関西国際空港の地域整備につきましては、昭和五十六年五月、運輸省より示された「関西国際空港の立地に伴う地域整備の考え方」を受けて、昭和六十年十二月に関係閣僚会議において「関西国際空港関連施設整備大綱」が決定されております。国及び関係地方公共団体が協力して関連施設の整備を進めることとなっておりまして、現在、この大綱に示された空港アクセス道路等の関連施設の整備が重点的に進められているところでございます。
 このうち、近畿自動車道紀勢線を初め、第二阪和国道、主要府県道泉佐野岩出線、泉佐野打田線、泉大津粉河線、岬加太港線等の府県間道路については、空港開港時までに大綱に示された整備目標を達成するため、大阪府と緊密な連携を図りながら、鋭意、整備促進に取り組んでいるところでございます。
 泉佐野岩出線については、四車線化の事業に取り組んでおります。都市計画道路金熊寺男里線及び樽井男里線については、空港開港時までに暫定二車線で概成することとなっております。また、泉佐野打田線については、今年度、全線の概成を目途に整備を促進しております。さらに岬加太港線については、空港開港時までに大川─深山間のトンネルを完成させるべく取り組んでおりますが、用地交渉が難航しており、進捗がおくれております。
 今後とも、紀の川利水の問題を踏まえ、より一層両府県が協力して、府県間道路等の整備促進に努力してまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(門 三佐博君) 代表監査委員宮本政昭君。
 〔宮本政昭君、登壇〕
○代表監査委員(宮本政昭君) 住民監査請求の結果についての御質問にお答えを申し上げます。
 まず初めに、住民監査請求の対象となる事項は、地方自治法第二百四十二条第一項に定められている財務会計上の違法、不当な行為、またはその事実に限られるものでありまして、御承知のように、財務の伴わない一般行政上の行為は対象とならないものであります。
 しかし、財務会計上の行為が適正であっても、一般行政上の行為が重大かつ明白な瑕疵を有するときはその違法性が財務会計に及ぶことになり、監査請求の対象とすることができ得る場合もあります。こうした範囲も踏まえ、監査を実施したところでございます。
 したがって、今回の住民監査請求については、都市計画法に基づき計画決定されたもののうち、事業認可を受けて施行している新不老橋の工事関係を対象として監査を実施いたしました。
 議員御指摘の昭和二十一年十月に決定された都市計画道路和歌浦廻線が現在まで事業認可されていなかったこと、及び昭和四十八年十一月に計画変更がなされた際に計画線の一部が保留されていること等につきましては、承知をいたしてございます。
 また、新不老橋建設区間は、現在、事業認可を受けて工事を実施しているものであり、新不老橋から片男波への道路については、今後、事業実施に当たって事業認可等、所定の法手続がなされるという当局の説明を受けてございます。
 次に、交通渋滞、違法駐車、騒音公害により環境が悪化するとの不当性については、和歌浦地区全体の都市計画の中での都市計画道路整備事業が完了をしていない現在、その不当性は判断できないものであるといたしております。
 以上のような観点から、監査委員全員による現地調査を実施するとともに、当局に対しても詳細な資料の提出を求めて調査し、一、工事の施行については誤りなく適正に行っていた、二、知事に対して措置を求める要件はなかった、という監査結果を監査委員全員の合意を経て決定し、請求人に通知をしたところであります。
 最後に、和歌公園に関する御質問でございますが、和歌公園は都市公園法に基づく都市公園に指定されていることは承知をいたしております。その区域は、権現山、奠供山、妹背山、片男波等、八地区で構成されており、都市公園面積は四十・〇五ヘクタールとなってございます。
 また、観海閣、三断橋については、公園施設であり、行政上県の管理施設でありますけれども、県有財産ではありませんので、地方自治法第二百四十二条第一項の規定により監査の対象外といたしたところでございます。
 なお、不老橋は、都市公園施設ではなく、かつ行政上の県の管理施設でもございません。また、新不老橋の工事区域は都市公園区域外でありますので、都市公園法の規制を受けないものと判断をいたしました。
 以上であります。
○議長(門 三佐博君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 43番中村 博君。
 〔中村 博君、登壇〕
○中村 博君 答弁をいただきましたので、重ねてお尋ねを申し上げたいと思います。
 まず、関空問題であります。
 非常に多岐にわたる質問で申しわけなかったと思いますが、関空特別委員会が、その都度、それぞれの機関なりお互いの会議等で検討を深めてまいっておりますので、今回の質問もそういう点を踏まえて申し上げてまいったわけであります。
 この問題を重視いたしましたのは、一つには、和歌山県が関西空港の立地そのものによって本当に県益を拡大できるものとなるのかどうかということ。わかりやすく申し上げますと、宝船となり得るのかどうか、あるいはまた扇風機の裏側になるのかどうか、こういう例えもありました。
 こういうような問題について、各論が詰まってまいりますと、かなり的確に判断できる内容も出てまいっております。特に、先般の関西国際空港特別委員会においては、副知事の出席をいただきまして、そこで大阪府と本県の対応、あるいは国等の対応について、現在、我々特別委員会として把握している状況では余り県益が大きく拡大されていきそうにもないといった条件等もございまして、大阪への分水について一つの重大な問題提起がされたわけです。和歌山の県益が余り拡大されないならば、もう大阪への分水は中止してはどうか、こういうもっともな意見も出たような次第であります。知事もこれは十分御承知いただいていると思いますし、それだけに関西国際空港問題をめぐる本県の環境は厳しいということ、これは皆さんが受けとめていることだと思います。
 そこで、知事から所要の御答弁をいただいたわけでありますが、大阪府との間で矛盾がないのかという点について、知事は具体的にお答えになってないんです。私の考えでは、伊丹空港の存廃問題は全体構想の計画実現に向かってもかなり大きな要素になるでしょうし、あるいはまた関西空港の機能の問題にも大きく影響してまいります。これは質問でも申し上げたとおりであります。
 伊丹空港の現状というのは、御承知のとおり、大阪府知事は存続をすると言っているし、モノレール建設の認可申請を運輸省に出しているんです。知事もごらんになって──もう大分できているでしょう。十一市協の問題を考えても、もうそういう方向に固まりつつある。アンケートの住民自体もそうです。そういう現況にありますから、必ずしも我が県と大阪府との間で利害が共通しないんです。
 この伊丹空港問題は、かねがね他の先生方の御発言もありましたように、非常に重大な問題として対応をしてきたと思いますが、この御認識が余り明確に示されていないんです。知事の答弁ではこの問題について大阪府との間で矛盾がないと考えておられるのか、共通する課題として一緒に提携していけるのかどうか、そういう点が非常に不明確でございますので、この機会にもう一度その点についてお答えをいただきたい。
 それと同時に、紀の川の広域──つまり、大阪府側から言いますと、紀の川の広域利水計画なんです。和歌山県から言うと大阪への分水なんですが、知事はかねがね、本議場におきまして「県益を拡大していくための大きなばねになるんだ」とおっしゃってこられました。こういう問題。また、県民もそう思っていらっしゃるかもわかりません。しかし、今日の事態を見る限り、県政の展開はそうなっていない、県政だけじゃない、国の対応も、大阪府との矛盾を考えても、そうなっていない、そう感じるがゆえに、大阪への分水は見合わせてはどうかというような意見も県議会では出ているわけでございますので、知事としてこういうような──恐らく勇断のある発言であったと思いますが、知事、これは黙視するわけにいかないでしょう。
 したがって、これらの問題とも関連いたしますので、この機会にひとつぜひとも知事の御認識を承りたい。
 さらに、関西空港の加太土取り問題です。
 お金の問題でしょうから、なかなかお答えにくいのはわかりますが、私が質問でも申し上げましたように、今の千円のままでいきますと経常経費でも赤字が出るんじゃないかと思います。開発公社は一平米当たり千五百円と考えているようですが、これが関空会社との間でうまく契約できたとしても──私は厳しいだろうと思いますよ。千円からこの五百円の上積みが非常に困難であろうと思う。
 知事から「よろしく頼む」と言われましたが、私は飛行場部長にも申し上げたんです。この現状について、運輸省は関空会社に対して行政指導権を持っていらっしゃるのだから、和歌山県が損をしないように、こういう問題にまできちんとしていただきたい、こういうことも飛行場部長にも申し上げたんです。非常に心配しているんですよ。
 知事は理事長でもあり知事でもあるんですから、二役でございますよ。大蔵省のあの御発言に対してどう見ていらっしゃるのか。これ、軽視しますか。私は軽視できないと思うんです。だから、大蔵へも所要の対応をしてもらわなきゃならんし、千五百円を割った場合には大変なことになるんです。仮に五千万立方メートルとすると、五百円上積みされることによって二百五十億円入るんです。つまり、この二百五十億円は設備投資の二百億円を償却できることになるんです。
 関西空港会社や大蔵省は、「あんたたちは土地がうまくできるんだ。そんな償却まで見れない」という考え方じゃないでしょうか。経常経費だけでひとつ商売しようと。だから、「淡路島は安いんだ」と。淡路島では投資に対する償却まで見ていないから。私はこう考えているんですが、知事はどう認識されていらっしゃるでしょうか。これは大変な問題です。もう年末、もうちょっとで正月ですよ。ことしじゅうに決着がつかないと大変だと思います。重ねてお尋ねを申し上げます。
○議長(門 三佐博君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 中村博議員にお答え申し上げます。
 大阪の伊丹空港の存廃についての大阪府と和歌山県の意見の食い違いの問題、中村議員おっしゃいましたように、外から見ても空気がある程度わかると思います。
 ただ、大阪府の知事として、果たして現在の段階で正式見解が出せるかどうか。共産党にも共産党の考え方があるし、各政党にも考え方がありますように、大阪府でも泉南地域と北部でも考え方の違いがあります。
 だから、そうした大阪府の考え方と和歌山の考え方と一致しない点もあるけれども、全体構想の実現と国内便の確保ということを共同でやろうじゃないかということで進めておるのが現状でございます。また、中村議員から見られた大阪市民の意見、また党なりの意見があったならばいろいろお教えいただいたらありがたいと思います。
 それから、価格の問題についてもお教えいただいたわけでございます。
 私たちも、大蔵省に対してもいろいろ説明しておるし、また、先ほども申しましたように、私たちが加太に土取り場を持ってきたのは砂を売るだけの問題ではない、和歌山県の発展も考えたんだと、そうしたいろんな要素があるわけでございます。
 しかし、和歌山県の開発公社に負担をかけないように、残存物件をいかにするかという問題等もあるわけでございます。そしてまた、値段の決める時期が早い方がいいのか、いつがいいのかということも慎重に考えておるわけでございまして、言われた趣旨を十分に踏まえまして、今後とも全力を尽くしてまいる所存でございます。
○議長(門 三佐博君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
 〔「もうよろしい。あと三十五秒ですから」と呼ぶ者あり〕
○議長(門 三佐博君) 以上で、中村博君の質問が終了いたしました。
○議長(門 三佐博君) この際、十分間程度休憩いたします。
 午後二時四十二分休憩
 ──────────────────── 

このページの先頭へ