平成元年9月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(貴志八郎議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

○副議長(宗 正彦君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 38番貴志八郎君。
 〔貴志八郎君、登壇〕(拍手)
○貴志八郎君 私は、今日ほど地球規模の環境について懸念される時代、時はないと思います。特に昨今の大きな問題としてはフロンガスによるオゾン層の破壊が挙げられますが、これが地球規模においてあらゆる生物に大きな影響を与えるとされております。また、アフリカや中国、あるいは中近東における地球の砂漠化が大変な問題となっております。四国、九州を合わせたような地域が一年間に砂漠化していくという問題は、人類にとっても、地球上のあらゆる生物にとっても、重大関心を払わなければならない問題であるとしなければなりません。さらに昨今、熱帯雨林の問題が盛んに我々の耳目を集めておりまして、熱帯の森林乱伐による影響が地球全体に大きな環境上の問題を起こそうといたしております。地球の温暖化で北極の氷が解けてしまうかもしれないということも、我々の情報に入ってくるわけであります。
 こういう地球規模の環境問題を耳にし目にするたびごとに、私はいつも思うのであります。今、日本の食糧自給率は三○%を割ったということでありますけれども、この地球環境の変化の中で世界大凶作がいつ起こるかもしれないという懸念をだれしもが持つわけであります。我々は、戦前・戦中・戦後の飢餓の時代を過ごしているだけに、もしいろんな形で日本への食糧の供給が途絶えたときには一体どうするんだということを常に心配するわけであります。そういう意味では、農業という問題は、ただ単に一つの「産業」としてだけ見るのではなしに、日本の自衛力を考えるより前に考えなければならない自営の問題ではないだろうかと思うわけであります。
 そういう意味から、きょうは農業の問題について、和歌山に視点を当てながら論じてみたいと思うのであります。
 本県の場合は、地勢の関係上、平野率は極めて低く、したがって耕地面積そのものも、水田で全国順位四十三位、普通畑で四十五位と、低位であります。県人口と農産物との比率を見ましても、その自給率は米で五九%と、かなり低位にございます。この本県の状況は世界の中で対比する日本を縮図にしたようなものであり、その意味では、本県農政の悩みはそのまま日本農政のウイークポイントと相なるわけであります。
 さて、そこで私は、農業問題を大上段にかぶり、先ほど申したようにアフリカの食糧危機や日本の減反を論じ、あるいは地球規模の環境破壊と世界的凶作の可能性までをもここで深く論じようとは思いませんけれども、少なくとも、かつては本県にとっても主要な産業の主人公であった農業が、今、いずこへ行こうとしているのか。国の農政の失敗のあふりを受けて未来産業としての夢もまた消えなんとする今、果たして県当局に村おこし、農業おこしの具体的な展望とビジョンがあるのか。二十一世紀につなぐあすの和歌山県農林業基本計画が、果たしてこの命題にこたえていると言えるでしょうか。私は、大きな疑問を抱きながら質問を続けてみたいと思います。
 まず、耕地面積と農家戸数の減少についてであります。
 昭和四十年を基準といたしまして、今日では、水田の場合五八・五%、普通畑の場合五六・七%の減少であり、農家戸数も、専業で実に八四・六%、兼業でも七五%と減り続けているのであります。こうした農業の衰退は、高度経済成長の時代から、より顕著な傾向となり、工業の発展と人口の都市集中、農村の過疎化時代を迎えたのであります。要するに、農業は「魅力がない」「もうからない」「労働がきつい」ことなどを理由に、若者の農村離れに拍車をかけました。日本全体において農業が衰微の傾向にありますが、本県の場合も、数字が示すとおり、例外ではありません。
 知事は、国の農業政策のどの点に誤りがあったと思うのか。また、国の政策の誤謬に対してどのような対応をしようとしたのか。まず、基本的にお伺いをしておきたいと思います。
 次に、具体的な課題としてミカン問題と減反問題を取り上げますので、農林水産部長にお答えをいただきたいと思います。
 まず、ミカンであります。
 昭和三十六年三月に果樹振興特別措置法が制定され、それに基づいて本県でも独自の果樹農業振興計画を立ててミカンの需要予測を行い、水田等よりの転換を推進いたしました。本県の場合、法制定よりも早く、昭和三十三年ごろより転換が始まり、昭和四十二年ごろまでの十年間で約三千ヘクタールに達したということであります。
 当時、ミカン農家の経営が順風であったこともわかりますけれども、九州、四国を初め全国的にミカンへミカンへと草木もなびいた状況から言って、生産過剰への危惧は当然に推測できたと思うのであります。しかし本県では、そういった推測があるにかかわらずみかん園芸課を創設し、一方ではミカン園の農業構造改善事業を推進するなどミカン熱をいやが上にもあふり立て、ついには需給のバランスが崩れ、「有田みかん」という固有の銘柄基盤まで揺らいでしまう結果を招来いたしたのであります。(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)
 そして、それからわずかに二十年を経過した今、転作したミカン園にミカンがたわわに実るころを迎えた昭和六十三年より平成二年までの三年間に実施するみかん園等再編整備推進事業が、農水省の推進で実施に移されました。今度は、ミカン園を廃園または転作するなら助成金を出そうと言うのであります。これは、今、議場から「そんなことはない」という声がありましたけれども、ミカン農家の今日の実態を政府自身が認めておるということであり、我々も、またミカン農家の皆さんもそれをお認めになっておると思うのであります。
 本県への割り当ては、温州ミカンで二千四百二十ヘクタール、ハッサク等他のかんきつでは、県独自の目標で千百五十ヘクタールということであります。お国の指導でミカンづくりに転換をし、次にはお国の勝手でオレンジの輸入自由化、そして今度はお国の都合でミカン、ハッサクは切りなさいであります。
 本県のミカン農家、中でも紀の川筋の農家は、国の需要予測に基づいてかんきつへの転換を行い、そして最後にはばっさり根こそぎ切らされる運命となったのであります。しかも、構造改善事業や、後で述べる紀の川用水に関しても、そのツケを払い終わらない間に廃園が始まっているのであります。
 県当局は、こうした現象をどのように見ているのか。国の農政の誤りに対し、何らかの対応をされたことがあるか。多分、「やった」ということでありましょうが、具体的にそのことを示していただきたいのであります。
 また、その国の施策に対する抗議や提言、あるいは損害を補完する要求をどのような形でやってきたのか。国に追随した本県のミカン行政に反省点はなかったか。反省すべき点があったとすれば、それをどのようにフォローしたか。具体例を挙げてお答えをいただきたいのであります。
 さて、次は米の減反政策についてであります。
 米の減反については、古く昭和四十四年ごろより始まっておりますが、実際には、水田利用再編奨励補助金制度が打ち出され、軌道に乗ったのは昭和五十三年以降のことであります。ざっとその実績を見ますと、自来十年間で、昭和五十六年を除いてその達成率は、実に歴年一〇〇%を超えているのであります。本県がいかに忠実に農水省の割り当てを消化してきたかが如実に示されておる数字であります。
 さて、この間に、県の水田本地面積に対して約三三・一%が休耕あるいは転換を行ったことになっております。ここで注目すべきことは、この間の補助金の推移であります。
 この補助金制度が始まった昭和五十三年当初では、十アール当たり、果樹等への転作で五万五千円、休耕などについては四万円で、別に計画達成加算金が出されております。そして、三年ごとに補助金が見直されておりますが、その間、逐次減額され、現在では一般作物への転換でわずかに二万円、休耕田に至っては七千円を補助されているにすぎません。
 数字を追っていくならば、まず転作・休耕ありきであります。一たび転作・休耕を行えば、後はお茶を濁すというやり方でございます。減反さえできればよしとする姿勢が見え見えであります。
 ところで、ここで質問をしたいのでありますが、本県の水田本地面積に対して休耕・転作の比率が、統計資料から見て全国的に高い水準にあることに気がつきます。冒頭述べたように、本県の場合は比較的耕地面積が少なく、その自給率も低位であるのに、休耕・転作目標面積が他府県の比率より高いが、その理由は一体どこにあるのか、ぜひ聞いておきたいと思うのであります。
 また、この本県に対する目標割り当てが妥当なものであると思っているのかどうかもお尋ねをいたします。
 さらに、休耕田、転作等の奨励補助金制度及び逐年補助率の引き下げについてはどのように評価をされているのか。農政に取り組む基本的立場を踏まえて答弁を願いたいのであります。
 特に、さきの参議院選挙において、現在の国の農政に対する批判がその得票数に大きく示されておりましたけれども、政府・自民党は、農政の見直し作業を国民の前に一つも明らかにされておらないのであります。むしろ、消費税の見直しは声高に言っておりますけれども、この農政の見直しについて、果たして国民のわかる形で検討がなされておるというのでありましょうか。この際、国の農政に対する見解を含めてお答えいただきたいと思うのであります。
 さて、そこで、いよいよ具体的な質問に入ります。紀の川用水の問題であります。
 県当局は、国営十津川紀の川総合開発事業の一環として昭和三十九年十一月に発足以来の事業内容、経過についてはよく御承知のことであると思いますので、あえてここでは説明を省略いたします。
 また、昭和六十年六月定例会において、「国営紀の川用水農業水利事業の地元負担金の軽減、償還条件緩和に関する意見書」が全会一致で採択され、政府各機関に送付されております。にもかかわらず、県議会全会一致の意見書は完全に無視されたのか、全然改善の糸口が見えてまいりません。県当局は、この県議会全会一致の意見書をもとに農水省に対してどのような交渉をされたのか、その経過についてぜひここで御報告を願うものであります。
 紀の川用水は、国営、県営、団体営の三種類ありますが、ここでは主として国営分についてのみ質問をいたしておきます。
 ここで、どうしても明確に答えていただきたいことがあります。御承知のごとく、この紀の川用水は、当初、昭和三十九年より七年間の計画で、関係者の承諾を経て立案実施されたわけですが、石油ショック等のため完成まで実に二十年もかかり、工事費も、当時の予算の約四倍の百十五億円にはね上がっております。工事がおくれた責任はもちろん、工事費のはね上がりを一方的に地方団体や農民に転嫁負担させている現状に対して、それでよろしいとお考えになっておるのでありましょうか。
 ところで、当事業の計画は、水田二千三百九十一ヘクタール、果樹二千五十一ヘクタール、計四千四百四十二ヘクタールの面積であります。そして、五十九年完成当時、結果的には水田で約五百ヘクタール減の千八百二十三ヘクタールだけが転換賦課対象となり、果樹はほとんど国営事業の賦課対象から外されているのであります。必然的に、果樹園分の賦課は水田農業者にしわ寄せをされているのであります。そして、使用していない果樹園用水利分まで負担をさせていることになっております。これが重要な第二点目の問題であります。
 次いで、この負担金には、国営の大迫ダム、津風呂ダムの水源分一億七千万円余が含まれているはずであります。また、水利費につきましても、使用していない水についても負担させていることになってはいないかと思うのであります。要するに、使用していない果樹園分の水利費も、従来の経緯から言って水田農業者に負担を求めているのではないかと思うのであります。
 さらに三点目の質問といたしまして、果樹二千五十一ヘクタール分のかんがいがなくなったのであれば、この分の水は大いに利用できるはずであります。特に、水田の場合と違い、畑地かんがいの場合、再び紀の川には戻らない性質の水であります。理論的に言えば、その分の水が余るわけであります。
 県は、さきに紀の川の水を大阪に分水することに合意をし、その協力費として百七十億円を受け取り、また道路建設を含めて、さまざまな内容の協定が行われておるわけであります。
 一方、御承知のとおり、米作の利益は、反当たり平均わずか三ないし四万円とされております。ここから紀の川用水の償還金やため池維持費等、平均反当たり二万円を差し引けば、うまくいっても、とんとんということであります。休耕田の場合は、完全な赤字であります。これが将来、十五年にわたって続くのであります。
 このように、苦しい農家経済に拍車をかけているのが紀の川用水償還金であります。しかも、この用水の利用面積は当初計画の半分以下になっております。
 私は、急速に訪れた時代の変転ゆえに、先人たちが苦労して築いたこの水利権を簡単に放棄するということを申し上げているのでは、絶対ございません。この水が利用できなくなっておるその事実を嘆き、この水が再び生きた形で利用できることを望むものであります。しかし現実の問題として、休耕田や果樹かんがいでは用水利用が放棄をされておることになっております。県は、この分の水利費だけでも肩がわりするか、あるいは肩がわりの意味で、少なくとも行政の手を水田農業者に伸べていくべきではないだろうかと質問をいたしたいのであります。
 そこで私は、現実を踏まえて、県当局に対してとりあえずの行政として次のことを提言し、質問をいたしておきたいと思うのであります。
 紀の川用水自体が使用されておらない余剰の水利権を保全するという意味でも、一、現行の利息五%を、例えば三・五%あたりまで引き下げること。当面、県は、水利権の保全ということを考え合わせて利子補給を行えないだろうか。二、償還条件は十五年ということであるけれども、当面、十年繰り延べて二十五年にできないだろうか。県の財政運用の中で補うということを考えられないだろうか。
 以上の二点については、早速検討を始め、実施に移してもらいたいものであります。そして農水省に対しては、用水の計画変更、オレンジの自由化、減反などの責任をとる意味でも、国の負担率を現行の六〇%から七〇%に引き上げて農家負担の軽減を図るよう、県議会の意見書に沿ってさらに運動を強化すべきであると思います。県当局の今後の取り組み姿勢をお伺いする次第でございます。
 さて、私の本日の質問はここまででありますが、あと少しだけ時間をいただき、発言を続けさしていただきたいと思います。
 幸か不幸か、ことしの十二月議会に、私、この県議会議場の演壇に立てるかどうか、非常に心配をいたしておるのであります。時によっては、本日のこの質問が私の県議会議員としての最後になるかもしれない。もし十二月にこの演壇に立たしていただく機会があれば、私の今日までの長い間の経験をもとにしたさまざまな提言やらお礼やらを申し上げたいと思っておるのでありますけれども、時としてその機会がないかもしれない。そんな気持ちがいたしますので、少しだけお礼などを申し上げたいと思うのでございます。
 昭和四十二年の五月、私は初めてこの議会の演壇に立たしていただきました。途中二回ばかり議員を辞職して他の選挙に出たことがありますが、今日まで六期間、本会議が開かれるたびごとに、ただの一回も欠かすことなしにこの演壇に立って一般質問を続けさしていただいてまいりました。これはひとえに、同僚議員各位の厚い友情と先輩諸氏の御叱正、御鞭撻があったればこそであると、非常に感謝をいたしておるところでございます。
 この間買い求めたのでありますが、和歌山県の生んだ作家・津本陽さんの著書に「下天は夢か」という名の作品があります。織田信長の伝記であります。これを読んでおりますと、織田信長はよく幸若舞という舞を舞ったそうでありますが、その際、「人間五十年下天の内を比ぶれば夢幻のごとくなり」という句を口ずさみながら舞ったということであります。
 天には九つの天があるが、そのうちの一つ「下天」にあっては「五十年は一日一夜なり」と仏教の倶舎論にあるそうでありますが、信長はその生涯を、おのれの信ずる道をただ生き抜き、その言葉に寄せて無心に舞ったのではないかと推察をするわけであります。
 私は、決してそのような大それた物の考え、大悟徹底できるほどのものではありませんけれども、今日まで政治の道に入って約四十年、その所信を貫くことが我が人生に対する最も忠実な生き方である、また県民の皆さん方に訴え続けてまいった所信を貫いていくことが生きる道ではなかろうかと、ひそかに胸の中で思っておるわけであります。
 あとどれだけの期間、皆様とともにこの席に座らせていただけるかわかりませんけれども、その間も、従来同様、皆様方の温かい友情と御指導、御鞭撻を賜りますよう、この席をおかりしてお願い申し上げ、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
○副議長(宗 正彦君) ただいまの貴志八郎君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) ただいま貴志議員から、本議場において、思い出の多い、意義ある該博な提言、また質問をいただいたわけでございます。これに答えるにはちょっとお粗末になるかもわかりませんけれども、農業問題についての答弁をさせていただきます。
 農業は魅力がない、もうからない、労働がきついということで、若者が農村離れをしているとのお話ですが、そうした一面、バラづくりやトマトの養液栽培にいそしむ那賀郡や有田郡の若者、また稲、レタス、スイートコーンなどの三毛作に取り組む御坊市の農家、梅と花の複合経営に熱意を燃やす南部から田辺地域の皆さん、花卉生産に情熱を注ぐ西牟婁の方々、いずれの農家の皆さんも意欲を持って農業に取り組み、高収益を上げているのも事実でございます。
 先日の農業まつりにおきましても、農業者大会が青年農業者、青年経営者で行われ、多数の皆さんが参加されました。そして、厳しい農業経営の中であるけれども、高付加価値、都市近郊型の施設栽培等、新しい意欲に燃えての農業経営の意見発表、討論、また自由国際化社会における農業のあり方についての研修等、そうしたいろいろの姿を見て私も非常に力強く感じたのでございます。
 現在、世界的に産業構造が大きく変転する中で、先進国では産業としての農業構造の改善が進んでおるところでございます。アスパラやイチゴの例にもあるように、時の流通・消費構造に合わせ品種改良を進めて企業生産するカリフォルニアの農業には遠く及ばないとしても、EC連合とりわけオランダの近代的な花卉農業は、本県農業の目標として大いに学ぶところがあると思うのでございます。
 我が国におきましても、基本食糧の安定供給ということを柱にして、土地利用型農業の生産性の向上を図るために農業構造改善施策を推進してきたところでございますけれども、近年、さらに国際化や技術革新が急速に進む中で、産業として自立し得る農業を確立するために高付加価値化農業の育成に取り組んでいるところでございます。
 本県としましても、こうした国の方向を踏まえながら、県下を紀の川流域、有田川流域、日高及び紀南の四地域に区分し、地域の特性を生かした高付加価値化農業の振興に努めているところでございます。
 今後とも、品質向上対策やバイテク技術の活用などソフト面の充実、施設園芸や空輸農業の振興とあわせて一・五次産品の育成など、時代に即応した流通加工対策を進め、国際競争力のある産地育成に努めてまいりたいと思っております。
○副議長(宗 正彦君) 農林水産部長安田重行君。
 〔安田重行君、登壇〕
○農林水産部長(安田重行君) 貴志議員にお答えを申し上げます。
 まず、ミカン対策の生産振興から転換対策に至る県の取り組みについて、四点の御質問でございます。
 産業構造の高度化や国際化の進展などに伴う社会経済情勢の変化の中で、農業も例外ではなく、他の産業同様、産業としての生産構造も大きく変革いたしてございます。中でもミカンにつきましては、国の果樹農業振興基本方針に基づき、本県の基幹品目として産地の拡大に取り組み、農家経済の安定向上に大きく貢献をしてきたところでございますが、その後の需要予測を上回る急激な消費構造の多様化の中で、需給の調整を図ることを余儀なくされてございます。
 さらに、貿易摩擦に端を発したアメリカとの激しい国際交渉の末、オレンジ・果汁の自由化の決着で、ミカン農家を守るため、早急に全国規模の生産調整を中心に再編整備の必要があったものと考えてございます。
 次に国の農政に対する対応でございますが、需給構造の急激な変化に対応するため、県といたしましては、生産基盤の整備を初め、落葉果樹や地域特産品目の導入など適正な産地誘導を図るとともに、施設栽培の導入や味一等の高品質果実の生産拡大に積極的に取り組み、産地の体質強化に努めているところでございます。
 国の施策に追随したのかということでございます。国は果樹農業振興基本方針を五年ごとに見直しており、県もこれに基づいて果樹農業振興計画を策定いたしておりますが、単に国に追随することなく、その事業の実施に当たっては国の施策を選択導入し、本県の特色を生かした産地の形成に努めているところでございます。
 そのフォローはどうしたのかということでございますが、急激な需給構造の変化から、国に先駆けて本県では昭和五十年度より、温州ミカン百万本改植事業を初め、特産果樹等の生産振興対策事業、施設栽培の推進、かんきつ優良品種産地化事業等を実施する一方、需給調整を目的とした加工場の整備、生産構造の改善に積極的に取り組んできたところでございます。
 今回のオレンジ・果汁の輸入自由化決定に伴うかんきつ園地再編対策を絶好の機会としてこれを生かし、特色のある、足腰の強い高品質な果樹産地の創生になお一層努めてまいる所存でございます。
 次に米の減反について、転作比率の高い理由と割り当ての妥当性の問題でございます。
 米は国民の基本食糧であることから、食管制度のもとで、公平、安定的に供給することを基本といたしてございますが、転作面積の配分に際しましては、東北、北陸の良品質生産地域には比較的有利に配分する一方、転作が容易な地域には高くなってございます。しかし、転作比率の高いこれらの地域については、転作促進の趣旨が生かせるよう、施設等の整備の措置が優先的に講じられていることから、妥当性の問題についても、本県の持つ地域の特性を生かした果樹を基幹とする複合経営や水田の持つ有利な機能を生かした知識集約型営農が図られているところでございます。
 次に、奨励補助金制度と補助率の引き下げについての評価の問題でございます。
 転作奨励補助金制度につきましては、産業として自立する農業の確立を目指すもので、農地の保全と農家経営の安定を図るものでございます。奨励補助金の引き下げは、食管制度の維持からも、やむを得ない措置と考えてございます。
 次に紀の川用水について、三点の御質問がございました。
 まず、意見書とその後の問題でございます。
 昭和六十年六月定例会において御採択いただいた意見書の件につきましては、国に対して、その後、工費の高騰、減反や廃園問題等から農家負担の窮状を機会あるごとに訴え続けてまいりました。その結果、六十三年度には、国において土地改良事業償還円滑化特別対策事業──これは利子補給制度でございます──資金手当として償還円滑化資金、いわゆるリリーフ資金という制度が平成元年度で創設をされましたが、現時点では紀の川用水はこの資金活用をいたしてございません。
 国営事業の地元負担金の軽減、償還条件の緩和について有効に活用できるような、さらに大幅な制度の拡充、創設等、議員連盟のお力もいただきながら国に対して強く働きかけておりまして、国も検討を始めてございます。今後、さらに強く働きかけてまいる所存でございます。
 次に、果樹かんがい減に伴う負担金の対策でございます。
 果樹園に対する畑地かんがいの計画面積は二千ヘクタール余でございましたが、議員御指摘のように、昭和四十年代後半からのミカン情勢の変化により、大半の受益地では事業実施意欲が減退をし、大きく遅延をいたしてございます。さらに今日の農業情勢からしても、今後も事業実施は見込めない状況でございます。
 こうしたことから、頭首工及び幹線水路に係る国営事業の償還金につきましては、すべて事業開始時の水田受益者が負担をしている状況でございます。水源負担分及び水利費についても、同様でございます。
 以上の畑地かんがい未実施による水田受益者へのしわ寄せと事業が大幅に長期化、増高したことを勘案いたしまして、その負担金対策として、本来、地元負担金は総事業費の二〇%でございますが、昭和六十年度の国営事業償還開始の時点から県はさらに一〇%を援助しておりますし、六十三年度からは、関係二市七町の御協力を得て、さらに負担の引き下げを図ってまいっているところでございます。
 次に、余剰水の活用についてでございます。
 紀の川用水事業のうち畑地かんがいの工事につきましては、現状の農業情勢から事業の完全実施が困難な状況にあることは申し上げたとおりでございます。したがいまして、将来、畑地かんがいに必要な水は余剰水となりますが、農業用水の特異性、下流域への影響等、複雑な問題もございます。しかし、議員御指摘のとおり、厳しい農業情勢を考えますと、紀の川流域の農業用水については、関係の市町や農業団体等の協力を得ながら、将来の水需給をも含めた総合的観点から、農業用水のみならず貴重な水資源として有効な利活用方策について十分検討していかなければならないものと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(宗 正彦君) 答弁漏れありませんか。──再質問を許します。
 38番貴志八郎君。
○貴志八郎君 まず、用水の問題であります。
 部長自身もお認めになったように、いろいろと工夫はされておりますけれども、現実に使っていない水の分を水田農業者にかぶせておるということは厳然たる事実でありますし、しかもこの余った水──この呼び方がいいのかどうか、とにかく使わない水は貴重な水であり、金に換算すればかなりの財産であります。それを保全するために、その水を使っていない水田農家になお負担をかけ続けていくということは、どうしても基本的に検討してもらわなければならない問題であると思います。それで、当面の課題として、利息の引き上げや償還の繰り延べという形で検討を開始してもらいたいというのが私の主たる意思でありますし、恐らく関係農業者の皆さん方も、もっと強い希望をお持ちになっておるのではないかと思われます。
 それから、結果的に物を見てまいりますと、農家が衰微していく現状は否定できないと思うんです。第一次産業である農業がこれほど落ち込んできたことに対して、当然に国の農政に対する批判があるわけであります。それは、地方公共団体から見ても、国の農政のあり方に対して一言物申すべきものが幾つもあると思うんです。そういうことについて、どちらかと言えば和歌山県の行政は国の御意向に従うという面が多かったのではないか。むしろ、国のやり方に対して、もっともっと陳情するというよりも、時には怒って詰め寄るというふうなことが──特に「地方の時代」と言われながらも地方自治が縮小されている中で本県の農業者が大変苦しんでおるということを背景に、しっかりした立場をとってやってもらわなければならんのではないかというふうなことを思うわけであります。
 減反の問題についても同様でありまして、和歌山県はこれほど耕地面積が少ないのに減反率が他府県に比べて平均より高いのはなぜかという疑問を投げかけました。お答えはありませんでしたけれども、そういったことも国に対して物申すべき一つではないだろうか。
 また、我々は、例えばアフリカの飢餓を毎日のように新聞やテレビで見てまいりました。地球の一角に食べることができない多くの人々がおるのに、なぜ日本で減反なのか、そういう疑問や意見が当然起こっていいはずであります。ただ単に貿易上の問題や摩擦だけを考えるのではなしに、人類の課題として取り上げていく勇気も、また必要でないかと思うのであります。
 私は、農業問題について、どちらかと言えば余り詳しくございません。けれども、きょうは思い切って農業問題を取り上げさしていただきました。私の未熟さゆえに突っ込み足りない問題も多々あったと反省をいたしておるのでありますけれども、いずれにしても、昔から農林水産部は、和歌山県の最も大きな部である、力のある部であると言われてまいりました。その農林水産部が、これからの和歌山県の農業について、知事の描いたビジョン、あるいはそのビジョンに近づこうとしておる農家の若い皆さん方の熱意をどうして生かし、そして和歌山にこの産業を残し、かつ栄えさしていくかということで、県政全体としてもっともっと力を尽くしていただきたいし、冒頭に申し上げました農業用水のように、どこかしら矛盾があるというふうなことに明快に答えられる政策を樹立して実行に移してもらいたい。
 以上、激励を申し上げまして、私の再質問を終わります。
○副議長(宗 正彦君) ただいまの貴志八郎君の発言は要望でありますので、以上で貴志八郎君の質問が終了いたしました。
○副議長(宗 正彦君) お諮りいたします。質疑及び一般質問は、以上をもって終結することに御異議ございませんか。
 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(宗 正彦君) 御異議なしと認めます。よって、質疑及び一般質問はこれをもって終結いたします。
○副議長(宗 正彦君) 次に、議題となった全案件のうち、議案第百二十号昭和六十三年度和歌山県公営企業決算の認定についてを除くその他の案件は、お手元に配付しております議案付託表のとおり、それぞれ所管の常任委員会にこれを付託いたします。
○副議長(宗 正彦君) 次に日程第三、請願の付託について申し上げます。
 今期定例会の請願については、お手元に配付しております請願文書表のとおり、それぞれ所管の常任委員会にこれを付託いたします。
○副議長(宗 正彦君) 次に、お諮りいたします。明七日は議事の都合により、また十月九日及び十一日は各常任委員会審査のため、休会といたしたいと思います。これに御異議ございませんか。
 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(宗 正彦君) 御異議なしと認めます。よって、十月七日、九日及び十一日は、それぞれ休会とすることに決定いたしました。
○副議長(宗 正彦君) この際、各常任委員会の会場をお知らせいたします。
 職員からこれを申し上げます。
 〔職員朗読〕
 ────────────────────
 総務委員会 第 六 委 員 会 室
 厚生委員会 第 二 委 員 会 室
 経済警察委員会 第 三 委 員 会 室
 農林水産委員会 第 一 委 員 会 室
 建設委員会 第 四 委 員 会 室
 文教委員会 第 五 委 員 会 室
 ────────────────────
○副議長(宗 正彦君) 次会は、十月十二日再開いたします。
○副議長(宗 正彦君) 本日は、これをもって散会いたします。
 午後二時五十八分散会

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