平成元年9月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(木下秀男議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

○議長(門 三佐博君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 21番木下秀男君。
 〔木下秀男君、登壇〕(拍手)
○木下秀男君 私は、去る八月末から九月上旬にかけてカナダからアメリカ西海岸を回ったその視察報告と、先ほど来質問されている集中豪雨の災害について、三、四項目の質問をいたします。
 今回、原稿は持っておりませんが、今申し上げましたように九月の上旬にはカナダからアメリカを視察、そして帰ってまいって災害地の視察ということで原稿を書く時間がなかったこともありますけれども、原稿を欲しい、ここを抜いてほしいという煩わしさもございましたので、今回は原稿を持っておりません。数字を間違ったら悪いので、ここに資料だけ持ってきておりますが。
 八月三十一日、知事並びに門県会議長、それに岸本議員と私、そして知事の秘書さん等、一行七名で、成田空港経由で第一の目的地であるバンクーバーへ参りました。バンクーバーでは、ブラジルから回ってこられた先発の橋本議員、小林議員、松本議員、那須議員、そして事務局の職員ともども空港で出迎えをいただき、現地時間で八月三十一日の十時過ぎに合流しました。これが正規なカナダ訪問団でございますが。
 それから、第一の目的地である、今を過ぐる百年前にカナダの地に新天地を求めてまいった工野儀兵衛翁が第一歩をしるされたフレーザー河畔に立てられている日本式庭園の碑に参り、その工野儀兵衛翁の雄飛というか大志というか、百年前にカナダに渡った遺徳をしのんでまいりました。さらに、そのフレーザー河畔からほど近いところにある、日本のお寺の分院のような形で落慶した東漸寺という、できて間もないお寺に参詣いたし、御案内いただいた県人会の皆さん方ともども、先人物故者の慰霊法要を行いました。
 明けて一日には、知事、議長は州都の首相に表敬訪問され、残った我々一行は、いろいろの目的を持っておりますが、まず海岸を中心としたリゾート開発、そしてバンクーバーを中心とする学園の中でも中心的なコロンビア大学、さらに山岳の公園地帯と、一日かけて各地を観光視察という名目で参りました。一日の晩には、日本人の一番多いブリティッシュ・コロンビア州に参り、ここの和歌山県人会の皆さん方からカナダ移住百年の記念式典に招かれました。知事、議長からいろいろと記念品を贈り、また向こうから記念品をいただきという温かい交流を深める中で、今日まで百年の長きにわたって営々と今の地位を築かれた先人はもちろんのこと、今おられる皆さん方の御苦労をたたえ、今後一層の友好と交流を深める意義ある催しでありました。
 そして二日目、この日は移動日で、朝早くバンクーバーからトロントを経てナイアガラまで参りました。トロントからナイアガラまでの間、約百六十キロはバスで移動しました。それこそ八車線、十車線という高速道路を走るわけでございますが、左手には湖岸のウォーターフロントと申しますか、海と陸を開発したすばらしい地域を眺め、また右側にはカナダで一番腐葉土が多いと言われている農業地帯を眺めることができました。さすがソ連に次ぐ世界第二の大陸だけあって、走れども走れども同じような広々とした風景で、約一時間半余りでナイアガラに参りました。ナイアガラは、さすが「世界の観光地」と言われるだけあって、言葉に言いあらわせないほど豪壮な滝でございました。そして、その周辺の観光施設も見てまいりました。ここはお国も違いますから、日本と比べるということは少し無理があるかもしれませんが、一つ橋を渡ればアメリカという、そういう地域にあるカナダの観光地のあり方というものも勉強してまいりました。
 そして、三日目にはもとのところに引き返し、トロントの東部県人会──婚姻等の関係から他府県の皆さんも和歌山県人会へ入られておりますが、ここの皆さん方からも渡加百周年記念祝賀式典に招かれました。同じような催しではありましたけれども、やはりバンクーバーとトロントとは幾分差のあることを参加者一同、感じました。
 目的である両都市の記念祝賀式典も無事終了いたしまして、四日に、先ほど申されましたように一行は日本へ帰られ、知事ら三人はアメリカからヨーロッパへ、そして私と岸本議員の二人はロサンゼルスへ参りました。案内者も通訳も予定しておりませんでしたが、アメリカ生まれ、アメリカ育ちという私の友人にお願いいたし、二日間お世話になりました。
 私ども二人が参った目的は、アメリカの実情というよりも、今、日本が一番頭を痛め、特に果実を産出している和歌山県が頭を痛めているというどころか、頭にきておるミカンの問題について、何とか逆に輸出できないものだろうかという気持ちから各地を見てまいりました。
 日本がまねをしたのでございましょうが、あのような形のスーパーへも入り、不必要なものを買いながらも、そのスーパーの中も見てまいりました。そんな中で、邦人が中心でございますけれども、できれば日本のミカンが欲しいという生の声も聞いてまいりました。そして、これからが大変であろうけれども、日本として、果実を産出する和歌山県として、この問題に取り組んでいかなければならないと強く感じたものでございます。
 ここで、まとめとして、まずカナダを中心に申し上げたいと思います。現在、全国で二十四の市、区、町がカナダと姉妹提携を結んでございますけれども、和歌山県内では和歌山市とブリティッシュ・コロンビア州にあるリッチモンドとの、ただ一カ所でございます。和歌山市は、新聞等の報道を見ますと、市会議員の皆さんや各種団体の皆さんも交流を深める中で、最近は特に中高校生を中心としたサマースクールといった形でも交流が行われていると聞いておりますが、これをさらに強めていくべきであろうということも感じたわけでございます。
 国家間におきましては、御承知のとおり海部総理大臣が誕生いたし、これは歴代総理大臣のなさっておることでございますが、アメリカ訪問の後に次いで選択したのがカナダでございました。このように、国においてもカナダ国に重きを置いているということを知り、我々も意を強くしたわけでございます。
 ちょうどトロントにおるときに、オタワで海部総理夫妻がカナダ首相と会見するためにこちらに到着する旨のニュースが流れておりました。日本もそうでございますけれども、カナダも日本に対して大きなウエートを置いているあらわれを目の当たりに見たわけでございます。
 今のカナダというのは、深くは知りませんけれども、日本に対する貿易がアメリカに次いで二番目であるということは事実でございます。大きな自動車工場もございましたが、アルミ軽金属、そして世界で一番多いと言われる木材を利用したパルプが最重要な産業となっており、これらはほとんど天然資源活用型の産業でございます。そのエネルギーはと申しますと、「水の国」と言われるほど水が多うございますから水力発電もその一つでありますが、今一番注目されているのは、アルバータ州の無尽蔵と言われる天然ガス、さらに石油と砂がまざったタールサンドでございます。これにはまだ手をつけておりませんが、今の世界の石油量に換算すると三千億バレルはあるであろうということでございます。三千億バレルと申しますと、今世界で確認されている石油の埋蔵量よりもはるかに上回っている数字でございます。そして、タールサンドの開発も間近であろうと予想されますが、その一例をとってみても、カナダという国はこれからであるということを強く感じたわけでございます。
 今、国際交流と言われている中で、先ほど申し上げました和歌山市も取り組んでおりますけれども、工野儀兵衛翁が百年前に結んでこられた和歌山とカナダとのきずなを、紀州人の血と心でつながっているカナダとの交流をこれから深めていくことが大事であろうし、大きくは日本にとっても必要なことであろうと感じたものでございます。
 そしてロサンゼルスでございますが、これは特に農林水産部長にお伺いいたしたいと思います。
 今まで日本はクリスマス用にとミカンを送ってはきておるけれども、クリスマス前にほんの少し来るだけであって、いつも食べられるものではない非常に貴重なもののようであり、邦人の間では、ぜひ送ってほしいという強い希望のあったことを申し上げておきたいと思います。
 ちなみに、帰ってきてから、果実生産県と言われる、主として神奈川県から南について調べてみますと、六十三年度に一番多く出ておるのが静岡県の五千九百八十トン、次には神奈川県の千八百トン、徳島県の千三百五十トンで、和歌山県はと言いますと二百十トンでございます。生産県として重きをなしており、国においても中心的な立場にある和歌山県の出荷数量とすると大変寂しい感じがするのでありますが、農林水産部長、このことに対するお考えについて、ごく簡単で結構ですので、お聞かせ願いたいと思います。
 今までのあり方、そして農産物の自由化という中から、今後、新しい出荷販売体制というものに積極的に取り組んでいかなければならないということをつぶさに感じたわけでございますが、部長の見解を伺います。
 続いて、これは総務部長さんの所管かと思いましたが、きのうの担当との打ち合わせで土木部長にお伺いいたします。
 ことしの三月三十一日の官報によると、法第十二号租税特別措置法の一部を改正する法律が成立し、ことし一年限りということで実施されております。その内容は、公共用地の買収に係る税制優遇の問題でございます。
 今まで三千万まで無税とされていたのが、この法律の施行により五千万までを無税とするというもので、この期限が平成元年十二月三十一日となっております。そこで、これを何とか延ばしてもらうよう手だてをすべきではないかと申し上げたいのでございます。
 特に、我々紀南に住む者が悲願として取り組んでいる高速自動車道路については、広川町から川辺町、御坊市に至る地域が、今、測量を完了し、ようやく用地交渉に入ろうとしてございます。しかし、今のままでまいりますと、なかなか法の恩典に浴することができないんではないかという心配をするわけでございます。もしこれが適用されるといいけれども、きのうまで恩典にあずかりながら、今になってあずかれないということであればということで用地交渉に困難を来すようなことになると、この建設促進にも大きな支障を来すのではないかと心配するがために申し上げるわけでございます。
 県としては、ことしの四月に御坊市において高速道路御坊事務所を設置していただき、県の職員、関係市町村の職員の合同で事務所を運営し、用地交渉専門に当たっていただいておりますけれども、これらの職員についても、今申し上げた優遇税について大きなつまずきのあろうことが予想されますので、これを国に向けて、もちろん所管の大蔵省にも申し上げていただきたいと思います。
 もう一点、先ほどから皆さんがいろいろと質問された災害についてでございます。
 私ども、カナダからアメリカへと回る中で水災害のあったことは国際電話を通じて承知しておりましたが、よもやこのような大きな災害になるであろうとは予測もしなかったわけでございます。
 県全域にわたって秋雨前線や台風の被害に遭ってございますが、その中で、私の出身地である日高地方の特に北部において、一週間に二度も床上まで浸水したという被災者もありますので、災害復旧を急いでやっていただきたいと思います。
 今、至るところで開発、開発ということを言われてはいるものの、その支流となる河川の改修がほとんどされておらないために、この前のようないっとき水が出ればあのような水災害に遭うということを如実に物語っております。
 その開発計画についていろいろ協議もされておるようでございますけれども、林地は農林水産部、計画は企画部、工事は土木部とばらばらになっていて統一した事業がされないままに物事が進んでおるためにこのようなことになるんではなかろうかと、その現場に立って感じたわけでございます。
 各省庁のいろいろの決まりというものもあることはわかりますけれども、被災者の立場に立って、それらの枠を超え、災害を二度と繰り返さないためにもこの災害復旧工事に取り組んでいただきたいと申し上げたいのでございます。
 もう一点、昨日、現場の写真もお見せしておりますけれども、中紀にある煙樹ケ浜海岸の浸食が大変激しゅうございます。この前の台風災害も大きな原因の一つでありましょうけれども、特に日高側の右岸は目に余る浸食状態でございます。
 私ごとき素人が申してどうかと思いますけれども、以前は日高川には豊富な水量がございました。しかし、ダムの湛水により水量が調整されておりますから水そのものの力がなく、沖から打ち寄せる風波により堆積することが間々あるわけでございますが、それが逆に浸食をされて海岸が変化してきておるということで、これが周辺住民の大きな心配の種となってございます。大きく言えば、「県立公園」と言って宣伝はしておりますけれども、その内容たるや被害惨たんたるさまでは、来ていただくお客さんに申しわけないことでもございます。自然の力のあることは重々承知でございますし、難しい問題であるということも十分聞いてございますけれども、これに対する積極的な調査が必要であろうと思います。この点について土木部長の見解を求めるものでございます。
 以上で、私の質問を終わります。ありがとうございました。
○議長(門 三佐博君) ただいまの木下秀男君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 農林水産部長安田重行君。
 〔安田重行君、登壇〕
○農林水産部長(安田重行君) お答え申し上げます。
 ただいま木下議員のアメリカ視察報告の中で、特にミカン問題に関して大変貴重な御意見を承り、喜んでおるところでございます。具体的に十分に生かしていきたいと考えてございます。
 国際化が進む中で、特に農産物の自由化を控え、攻めの農政の一環としてミカン等果実の海外市場の開拓に努めてまいらなければなりませんし、それがまた本県農業の振興にとって大変重要な意味があるというふうにも考えてございます。このため、本年八月に果樹の技術職員をカリフォルニアに派遣いたし、かんきつの技術開発あるいは普及状況を調査してまいりました。
 また、特に新規の県単事業として輸入自由化対策海外調査事業を本年から知事に認めていただき、来年一月、県職員を中心とした本県独自の調査団をアメリカに派遣することにしてございます。
 今後とも、ミカン等の海外市場の開拓について、あらゆる機会をとらまえて関係生産者団体ともども調査研究し、対処してまいりたいと存じてございます。
 次に、災害の対策でございます。
 このたびの秋雨前線及び台風による農林水産関係の被害についてでございますけれども、紀北から紀中を中心とした県下全域に、農産物、農林地、農林業用施設を合わせて六十八億六千万円に及ぶ大きな被害をこうむったところでございます。
 早速、関係市町村とともに現地調査を行い、緊急を要するものについては応急工事を実施するとともに、現在、災害復旧事業計画の作成に全力を挙げているところでございます。
 議員御指摘のとおり、農林業情勢の非常に厳しい中、まず迅速な復旧が肝要かと考え、国に対して早期災害査定を要請いたし、既に実地査定に入っているところでございまして、激甚災害の適用について強く国に働きかけながら、一日も早い復旧に努めてまいる所存でございます。
○議長(門 三佐博君) 土木部長磯村幹夫君。
 〔磯村幹夫君、登壇〕
○土木部長(磯村幹夫君) お答えいたします。
 租税特別措置法期限延長についてでございます。
 公共事業に係る譲渡所得の特別控除額は、平成元年十二月三十一日までの期限つきで三千万円から五千万円に引き上げられ、今日に至っているところであります。
 この特別措置法については、公共事業の円滑な促進を図るため、国等の関係機関に対して延長を要望してきたところでありますが、大変厳しいところがございます。しかし、公共事業の用地取得の円滑な促進を図るため、今後とも国等の関係機関に強く働きかけてまいります。
 次に、ことしの公共土木施設災害についてでございます。
 異常気象は八回を数え、県下市町村を合わせて、被害件数で二千百件余、約百億円で、昨年と同程度の大きな被災となりました。これらの被災箇所のうち、既に三百四十四件、十七億六千万円の査定の決定を見ております。残りにつきましては、十一月から十二月にかけて災害査定を受けることとしております。
 今後、二次災害を受けないよう、速やかに復旧してまいります。また、再度の災害を防止するために、災害関連事業等の改良復旧事業を積極的に活用していくことにしております。
 日高港湾海岸浸食対策についてでございます。
 議員御質問の煙樹ケ浜から塩屋にかけての海岸のうち、第一点目の煙樹ケ浜海岸につきましては、昭和六十二年度から学識経験者等の意見を聞きながら浸食対策調査を行っております。今後とも継続して調査を進めてまいります。
 二点目の塩屋の海岸につきましては、議員御指摘のとおり海岸変化が見られ、現地調査により、その結果を承知しているところであります。今後、海岸変化の状況を見守りつつ、国土保全上、対応が求められるような場合には、その対策を考えてまいります。
○議長(門 三佐博君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 21番木下秀男君。
○木下秀男君 どうもありがとうございました。
 これは農林水産部長に要望でございますが、知事にはミカンを持っていっていただき、私どもは梅を持っていったわけでございます。今、その視察報告書のようなものを写真も入れた形でまとめておりますので、また後刻見ていただきたいと思いますが。
 この前、帰ってきて知事にも申し上げたんですが、向こうでは九月にミカンを食べられるというのが理解できないほど「珍しい」という感覚がございますので、出す時期がよければ可能性があるのではなかろうかとも感じております。
 梅干しにつきましては、既にそれを食べた人から、レッテルが入ってございますから、こちらにおる身内を通じて、あの品物を買って送ってほしいと──これは商取引にはなりませんけれども、既にそういう反応が起こっております。
 そういうことも十二分に考慮した上で、私どもも資料は十分提供いたしますから──これは県を責めているわけではなく、農家の代表は農協ですので農協とも十分な連携をとり、先ほどの答弁のように年明けにアメリカに調査団を派遣するというのであれば、農協の職員もそれぞれの専門がありましょうから、そういう皆さんとともども取り組むよう、強く要望して終わります。
○議長(門 三佐博君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で木下秀男君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
○議長(門 三佐博君) 本日は、これをもって散会いたします。
 午後二時四十二分散会

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