平成元年6月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(堀本隆男議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

○副議長(山本 一君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 17番堀本隆男君。
 〔堀本隆男君、登壇〕(拍手)
○堀本隆男君 先輩議員、同僚議員の御高配にあずかり、三回目の登壇の機会を得ましたことを感謝申し上げます。
 去る六月二十三日、仮谷知事には、串本町大島架橋促進大会に御出席いただき、新春の記者発表に引き続き大島架橋の決意を再び表明してくれましたこと、心から感謝申し上げます。同時に、六十二年二月議会において大島架橋の請願を採択していただきました当議会の先輩議員の皆様にも、厚くお礼申し上げます。
 おかげさまで、本州最南端地方にも展望が開けてまいりました。災害時や夜間医療などの民生上の安心と観光、リゾート開発における一大拠点としての可能性が生まれ、地域住民の喜びはひとしおで、この上は何分にも一日も早い完成を願っており、なお一層の御指導と御支援を賜りますよう、伏してお願い申し上げる次第であります。
 さて五月八日、県の悲願でもありました関西国際空港埋立用土砂の搬出が和歌山市加太地区において始まりましたが、これによりコスモパーク加太計画も実現に向けて大きく弾みがつきました。また五月二十六日には、国際的な海洋性レクリエーション基地を目指した和歌山マリーナシティの起工式が行われました。
 仮谷知事は、年頭において本年を「リゾート元年」と位置づけ、現在、二十一世紀に向けて和歌山の活性化、県勢浮上のために積極的に取り組まれていることは、まことに心強い限りでございます。そうして今、県民意識の中にも国際化に向けての認識が年々高まってきております。私も、和歌山県の飛躍発展はいよいよこれからだなと思うとき、万感胸が躍る思いがいたします。そして、これからの町づくり、地域づくりは、それぞれ個性を十分に生かしつつ、それぞれの地域に合った二十一世紀にふさわしい文化都市づくりを目指していくことが大変重要であると考える次第であります。
 本県には、豊かな自然を背景にした古い歴史と恵まれた文化遺産があります。空海が開祖した高野山は、真言密教の根本道場として、平安初期、天台宗の比叡山とともに山岳仏教の拠点として広く信仰を集めてきました。山内には金剛峰寺を初めとして百二十余の寺院と約五十にも及ぶ宿坊があり、日本で唯一の珍しい山内町を形づくっております。また、根本大塔や伽藍、御影堂などの建造物、奥ノ院に続く約二キロメートルの参道と二十五万の墓石など、物心両面にわたり、現在においても多くの信仰を得ているところであります。
 一方、紀南には熊野三山があります。熊野の地は、その地勢からか古くから神秘の地と見られ、奈良時代末期には仏教者がこの地で修行し、また平安初期には修験の道場が開かれたと聞いております。その後、熊野信仰は、宇多法皇が本宮、新宮に行幸されたのをきっかけとして院政時代より流行し、一○九○年の白河上皇の行幸より急激に隆盛をきわめるようになり、そして「蟻の熊野詣」と言われるほど多くの参詣者を出したのであります。
 これらを初めとして、本県にはまだまだ多くの文化遺産が残されております。また、文豪・佐藤春夫や南方熊楠、華岡青洲などに見る傑出した人材とそれをはぐくんできた豊かな人情とふるさとがあるわけであります。つまり、文化的風土も豊かであります。私たちは、こうした先人たちが築き上げてきたこれら多くの文化資源を決して埋もれさせてはならない。また今後、これらの資源を積極的に活用することにより、個性ある地域づくりに役立てていかなければならないと考える次第であります。
 新宮市では、佐藤春夫記念館が完成し、十一月の開館に向けて現在、募金活動を行っていると聞いております。また県では、南方熊楠記念館の整備にも積極的に取り組んでおられるとも聞いております。こういった運動が官民にわたって繰り広げられることは大変好ましいことと思っている次第であります。

 しかしながら、ここで私たちがこれから真剣に考え取り組んでいかなければならないのは、二十一世紀にふさわしい和歌山の文化をいかに創出していくのかということだと思うのであります。私は、二十一世紀に向けての和歌山の文化の創出は、都市づくり、町づくりにあると思います。県の長期総合計画でも、来るべき二十一世紀は長寿化、国際化、高度情報化、技術革新の社会だと述べております。また、国民の自由時間の増大や物から心、量から質などの価値観の変化が起こると予測しております。
 皆さん御承知のとおり、関西国際空港は二十四時間世界に開かれた空港として平成五年春に開港予定となっております。和歌山市を例に考えた場合、JRなどの鉄道とあわせて、空港から直結する高速艇や高速バスの導入を考えた場合、当然、交通機関は空港に合わせて二十四時間稼働となります。そうすると、それに必要なバスターミナルの建設や高速艇が接岸できる場所の整備、あわせてこれらの人々の受け入れ態勢や設備が必要となってきます。つまり、二十四時間開かれた町づくりを考えていかなければなりません。しかし現在、和歌山市においてそうした動きがあるとは聞いておりません。
 また最近、他府県を旅行して感じることは他府県の県都の立派なことであり、本県のことを寂しく思うのは私一人だけでありましょうか。そして、これは何も和歌山市に限ったことではなく、県全体が町づくりを考えていかねばならないときだと思うのであります。地方へ行きますと、学校でも鉄筋の校舎が建っています。役場はといいますと、これまた鉄筋の立派な建物が建築されています。他の公共施設も同じです。これらの建物は、東京のど真ん中に移しても決して恥ずかしくない立派なものです。私は、これは「地方の東京化」だと思っております。木造の町があってもよいのではないか。学校も役場もすべての公共施設が木造でできている、私はそれが一つの個性だと感じるわけです。
 これは一つの例示でありますが、それが固有の文化にまで昇華されて風貌のある町になると思うのであります。それぞれの地域が個性を持ち、遊び心を持ち、生活をしていても楽しくなるような、そんな町づくりが必要ではないか。
 ここで知事にお尋ねしたいのは、県としてこうした町づくりを県下全体に広めていくことを考えておられるのかどうかということであります。県都である和歌山市などでは、県が十分イニシアチブをとりながら文化都市づくりをしていかなければならないと思いますが、御所見をお伺いいたします。
 次に、観光問題に移ります。
 さて、観光の振興と申しますと、観光資源や施設などハード面の整備以上にソフト面の整備が重要視されます。さきに三年ぶりに開催された紀伊半島知事会議(三県サミット)におきまして、TAP90''s観光立県推進地方会議の誘致を図ることが和歌山、奈良、三重
の三県知事の間で合意されたと聞いております。この観光立県推進地方会議は、地域の活性化と国際化を目指す観光立県を推進するため、運輸省が昨年、九○年代観光振興行動計画を策定し実施しているものでありまして、中央会議と地方会議があり、関係者の創意と知恵を結集して観光振興に関する具体的施策を提言し実行に移すもので、毎年、数地域を選定して開催する考えのようであります。いわゆる観光国体とも言われ、本年からスタートした地方会議は既に二回開催されていると聞いております。
 我が和歌山県においても、仮谷知事は従前より観光立県を強く推し進められ、観光を県を支える重要な産業と位置づけ、積極的に取り組まれておりますことに敬意を表する次第でありますが、六十三年一年間の県内への観光客総数は二千四百六十八万五千人と六十二年に比べ二・七%減で、残念ながら、県内への観光客数は毎年ほぼ横ばい状態という域を脱してはおりません。本年は、県当局の大変な御努力のおかげで、待望久しかったJR特急くろしおが新大阪、京都へ七月二十二日から乗り入れることとなり、さらに同日、日本エアシステムが東京─南紀白浜間の増便と明るい材料が並びましたが、しかし二十一世紀を展望した観光への新たな展開を進める土壌を今から形成していくことが大変重要であると考える一人であります。
 言うまでもなく観光は、地域経済に広範な波及効果を与え、さらに余暇、レジャーは国民生活の上で大きな地位を占めてまいり、特に最近大きなうねりとなっているリゾートとも密接不可分の間柄にあり、今後ますます大きな役割を果たすことが期待され、本県ではとりわけ重要となってまいります。
 そこで、知事が紀伊半島三県で来年誘致を図ろうと取り組んでおられる観光立県推進地方会議の誘致の見通しと観光振興を図る上での位置づけについて御所見をお伺いいたします。
 さて、和歌山県は関東大都市圏の消費者からどのようなイメージを持たれているのか。資料は若干古くなりますが、日本経済新聞社・日本地域経済研究所が昭和六十二年に行った「地域・都道府県・観光地イメージ調査」に詳しく分析され、その一部は日経地域情報ナンバー33号、34号に紹介されております。なぜ私がこれを取り上げたのかと申しますと、日本の中心地であり巨大な消費市場である東京圏のどのくらいの人々が和歌山を知ってくれているか、どのように和歌山を理解し、関心を持ってくれているか、県及び県民にとって物産なり観光なりの戦略を立てる上で極めて重要であると考えるからであります。
 調査は、首都圏から三千人、京阪神圏から二千人を対象に、各府県のイメージ調査、及び全国の代表的な観光地百カ所についてのイメージ調査を実施しております。
 まず都道府県についてのイメージでは、和歌山県は近畿圏の人々には高い得点でありますが、首都圏ではまことに低い。例えば、「自然の景観や温泉に恵まれている」は二十四位、「温かい人情に触れられる」は四十二位、「親しみがある」は三十六位、「経済的に豊か」は三十一位、「話題性のある催しや行事が多い」は四十二位──つまり、少ないと受けとめられておるわけです。「新しい物産をよく見かける」は三十二位、「PR、宣伝に熱心」は四十七位──最下位であります。
 次に、全国の代表的な観光地百カ所のイメージ調査では、本県からは南紀白浜が選定され、この調査でも近畿圏の人々は白浜に対し高い評点を与えております。これに反し、首都圏では著しく低い順位であります。全部で十二の調査項目があります。例えば、「行ってみたい」は六十一位、「三泊以上滞在しても飽きない」は五十一位、「マスコミ、広告で新しい情報を得やすい」は六十位、「自然の景観や温泉に恵まれている」は三十四位、「名所旧跡が多い」は七十一位、「話題性がある催しや行事が多い」は九十二位と、大変低いのであります。観光地全体としては京都、伊豆、熱海が高く評価されております。
 すなわち、この調査の結果から見ますと、本県は首都圏の人々からはPR不足で余り知られていない県、話題性のある催しや行事が少ない県ということになるわけであります。つまり、地理的に遠隔であるために知られにくい面と、これまでの本県のイメージ作戦が十分に浸透していないのではないかという面とが考えられるわけであります。今はやりのCI戦略──コーポレート・アイデンティティーが、民間も行政もともに関東への売り込みが十分でなかったと言えるのではないでしょうか。
 一つのケースを申し上げますと、これは私の勝手な見方でございますが、一昨年、串本町観光協会の役員の皆さんと東京及び伊豆半島の観光施設整備状況を視察してまいりました。その際、東京池袋のサンシャインビルで開催された全国物産展を見学しました。
 全国の都道府県が自慢の物産を山積みにし、大勢の売り子をそろえ、活気に満ちて多くの見物人があふれ、さすがに東京の人の集まりはすごいと感じました。ところが、和歌山県のコーナーに来てがっくりしました。展示品が全く少ない。売り子も二、三人しかおらず、同行の役員の皆さん方から、異口同音に「これはひどい。県は一体どうしているのか。多少の出費は覚悟で、もっと参加しないことには県が恥ずかしい」というような声が聞かれました。つまり、東京で売らんかなの積極姿勢が見られないのはまことに寂しい限りでありました。
 聞くところによりますと、近年、東京での各種の物産展への和歌山からの出品が著しく少なくなっている。東京では出展経費がかさみ赤字がきつい等の事情が重なって希望者が少ないとのことでありますが、「貧すれば鈍する」の例えどおり、これでは和歌山のイメージは低くなるばかりと言わざるを得ません。ただし、去年、東京ドームにも行ってまいりましたが、ドームでの物産展は本県もかなり頑張っておりました。ことしは、もっと多くの出品を期待いたしたいのであります。
 そこで商工労働部長にお尋ねいたしますが、観光における首都圏でのPR活動に費やす年間予算額は幾らでありますか。県観光協会の予算も含めてでも結構であります。それと、主な事業内容をお伺いいたしたい。また、その額が近畿の各府県と比較してどうか。さらに、本県東京事務所に観光照会に来る人は年間何人か、電話照会は何人か。特にお伺いしたいのは、東京都以外の関東近県への観光宣伝活動の内容についてであります。
 ここで一つの提案を申し上げたいのでありますが、日経のこの調査とは別に本県が独自に調査を行ってほしいのであります。それは、今後の本県の首都圏作戦施策──観光に限らず、物産、流通等々についても基本データとなること、さらに県独自調査そのものがPR活動の役割を果たすと考えられるからであります。御所見をお願いします。
 さて、この日経の調査で気にかかりますのは、話題性がある催しや行事の少ない県という本県のイメージであります。南紀白浜もそうであります。
 先般の連休に、島根県松江市で開催された全国菓子大博覧会──これは、四年ごとに主催地を変えて開催されております──を見てまいりましたが、大変な盛況でありました。島根県菓子工業組合と松江市の共催でありますが、先日、結果を聞きますと、目標入場者五十万人、採算入場者四十五万人を設定し、最終入場者七十三万人余と、大成功をおさめております。大成功と言えるのは、単に黒字経営を指すのではなく、イベントによる経済波及効果が非常に高かったということであります。松江市内の宿泊、県内観光地宿泊の伸び、お土産品の売り上げ増、その他各方面で潤ったということであります。特に成功の一つの原因に、博覧会実行委員会の中で入場者誘致促進委員会をつくり、その大変な活躍がこの成功に結びついたとお伺いしました。
 一方、このように成功したイベントとは別に、北海道の「食の祭典」のイベントのように六十億とも七十億とも言われる赤字を背負ったところもあり、全国的にイベントの乱立もあって、一時のように開催すれば成功する時代は過ぎ、よい企画でないと成功が難しくなってまいりました。イベントの運営が極めて難しい時代に入った、下手をすると責任問題も出るかもしれないということで慎重になり過ぎたり、ちゅうちょするようではその段階で地域の活性化への動きが静止してしまうことになりかねません。
 本県においても、かねてよりビッグイベントの研究をされており、知事は昭和六十二年一月に世界温泉博のようなものを今後検討していくと述べておられます。南紀白浜を初め龍神、勝浦、本宮と紀南の温泉地はかなり期待をしてございます。南紀白浜空港のジェット機化により紀南は関東圏に飛躍的に近くなり、こうしたイベントを契機として一段と活性化が期待されるわけであります。地域資源や地域の特性を生かしたユニークなイベント、それに地元の熱意が成功の重要な要素と言われております。また、こうしたイベントのもたらす効果が、本県のイメージアップを初め観光の振興、県民の連帯意識の向上など、さまざまな分野に及ぶと考えます。先日、中村千晴議員からもビッグイベントの見通しについて私と同趣旨の質問がございましたので、実施に向け積極的に対応されるよう、これは要望といたします。
 さて、観光資源の中でも白砂青松・松島と言えば典型的な純日本風景で、日本人の心の郷愁をかき立てます。最近、リゾート基地の建設で巨額の資金を注ぎ込んで、なぎさの復活と白砂青松をつくる動きが各地であるのもうなずけるところであります。松江市で行われた全国菓子大博覧会を視察した帰り、出雲大社にお参りをしまして、境内の老松と背後の全山の松の美林に感心いたしました。大社の荘厳さを引き立てて余りあります。お聞きしますと、大社では一本一本の松の保存に注意を傾け、消毒に大変な出費を行っているとのことであります。その努力が、天下に出雲大社を有名にしているわけであります。
 前置きが長くなりましたが、御承知のとおり、すさみ町から串本町にかけての枯木灘県立公園はフランスのコートダジュールに匹敵する日本有数の海岸美と言われております。中でも江須崎の黒島は、まさに絶景であります。ところが、ここ数年、この島に松くい虫が猛威を振るい、黒島が「赤島」となってどんどん松が枯れ、見るも無残に残り少なくなってまいりました。
 町で聞きますと、農林水産部の松くい虫の補助をもらって消毒を行っているがなかなか防止できないとのことであります。一つは技術的に困難と限界があるためで、島であるゆえに船を特別に借り上げ、ホースを長くつないでも足場が悪くて危険で十分に消毒が届きにくい、二つは資金的に持ち出しが大変厳しく、とても補助以外に何回も消毒できないし、ましてヘリコプターをチャーターしてなど無理であるとのことであります。しかし、このまま放置しますと、ここ数年で確実に一本の松も残らなくなってしまうでしょう。見るも無残な島になると思います。道はあります。あると思います。本当にこの観光資源を貴重なものとして保存する決断を当局でしていただけるなら、出雲大社の松のように残すことができます。
 一つの提案をいたしますと、千葉大学で開発したと言われる一本一本の松の根元に農薬を注入する方法で、予防の確率が極めて高く、既に県内の造園業者が行っております。ただ、難点は経費が若干高くつくということであります。それでも、残り少ない松、しかも小さな島であり、むちゃな出費とはならないと思います。本県、特に紀南は観光とリゾートに生存がかかっている、貴重な観光資源を守る努力と出費を惜しんではなりません。当局においても、一度見に行っていただきたい。寸時も待てない状況にあります。
 そこで、商工労働部長にお尋ねします。
 こうしたケースに、農林水産部の補助とは別個に観光資源の保存という視点から特別保護区域を設定し、新規に補助金を出せないものかどうか。この島に新たに松を植え、育て、すぐれた枝ぶりをつくるには最低百年の年月と膨大な経費がかかることを考えたとき、惜しんではならない補助金だと、私は声を大にしたいのであります。
 次に、観光資源の保存と同時に、新しい景観の創出も本県にとって極めて重要な事業であります。魅力あるポイントを一つずつ積み重ね、トータルとしてすばらしい和歌山県のイメージをつくり上げることが大切であります。
 国道四十二号は、JR紀勢線と並んで本県の魅力ある景観を余すところなく見せる唯一の動脈路線であります。最近の余暇ブームの中で観光バスの入り込みが目立って多くなっており、それだけに国道四十二号周辺の景観は和歌山県の顔であり、この修景事業に力を入れていただきたいのでありますが、ルート四十二号が富田川に沿って走る区間──上富田町岩崎の郵便橋から白浜町東富田に至る間、約五・三キロメートルの現状は観光立県にふさわしくない景観と言わざるを得ません。
 まず河床については、全般に雑木と草が生い茂っております。最近、郵便橋の上流数百メートルが、民活で表土を採取して非常に美しくなっております。郵便橋から下流河口までは、依然として雑木や草が生い茂り、見苦しい景色であります。
 そこで、土木部長にお伺いします。
 河川維持管理費が少ないということでありますが、毎年、若干ずつでも整備を進められないものかどうか、また牧草地や運動場、駐車場等をうまく利用しているところもあり、そうした活用を広げる方針があるのかどうか、さらに郵便橋上流のように表土の欲しい民間に有効活用を勧め、美化を促進できないものかどうか。
 次に、この富田川の堤防敷を活用して並木を積極的につくってほしいのであります。建設省では、全国のそうした要望にこたえ、規制の厳しい堤防への植樹も一部を認め、河川修景の補助金も昨年度から実施していると伺っております。私ども素人には国道敷や堤防敷、隣接民有地など難しい点もあるように伺いますが、要は観光和歌山、リゾート和歌山のために縄張りを超え、各種の補助金を持ち寄って立派な桜並木、松並木をつくってほしいのであります。燦黒潮リゾートを記念した植樹なども考えられるが、その見通しについてお伺いいたします。
 次に公立病院問題について、総務部長と保健環境部長に御所見を承りたい。
 例えは余り適切ではないのですが、ここに一つのおむすびがあります。これを二人の兄弟が食べます。二人分にしては最初から小さ過ぎる。それを兄弟が争ってどちらかが多く食べると、片方が慢性腹ぺこ、ついには栄養失調症に陥って危険な状態になる。先般出された六十二年度公営企業決算の串本病院と古座川病院の決算内容を見て、私はそのように感じたのであります。
 串本病院は、経常収益九億八千三百万円に対し、経常費用十億八千六百万円で一億三百万円の赤字、累積欠損金は何と十二億一千三百万円で、県下十三公立病院のワーストワンであります。そうして、病床数百四十一の利用率は六七%、県平均は約八○%。この結果、串本町の一般財源からの繰入額は一億六千万円と多額になっております。
 一方の古座川病院は、経常収益九億三千万円に対し、経常費用は十億四千五百万円で一億一千五百万円の赤字、累積欠損金は三億四千万円と多額であります。そして病床数百八十二の利用率は何と四一%と、極めて低いのであります。この結果、古座、古座川両町の一般財源からの繰入額は九千八百五十万円となっております。
 新宮医療圏の中でも古座保健所管内のこの三町は地域的に連檐しており、病院数、ベッド数が全国平均を大きく上回り、人口が少ないために過剰投資となり、経営努力をいかに重ねても構造的に赤字であり、仮に一方の病院がよくなると、もう一方がその分赤字額が累積されるシーソーゲームに陥るわけであります。この病院会計の赤字で一般財源が苦しく、三町とも負担にあえいでおり、例えば串本町の昭和六十三年度当初歳出予算三十八億三千七百万円のうち土木費は三億四千七百万円で、歳出総額に占める割合は約九%、県下の町村の平均は約一八%であり、いかに建設事業が低位を余儀なくされているかがわかります。ちなみに、一般財源一億円あれば三億円の公共事業ができると言われております。国、県の補助があるからでありますが、病院会計への繰り出しの痛さがわかります。
 今や、自治体の活性化は知恵と金、人材と豊かな財源による経営力にかかっており、新しい地域づくりによる地域間競争の時代に突入しているのであります。お断りしなければならないのは、私は、医療を犠牲にして公共事業を多くやれと申しているのでありません。両病院の適切な運営が求められないものか、県と三町の知恵を結集して改善への道を見出したいのであります。
 そこで、独断と偏見で一つの提案をいたします。
 この際、串本病院と古座川病院を合併し、三町が一部事務組合で運営してはいかがなものでありましょうか。既に、水道事業はこの方式でやっております。もちろん、三町の合意と県の強力な支援が必要であります。合併後の病院は地域中核病院として重要な役割を果たします二次医療の水準とサービスの低下は許されません。
 そこで、総務部長にお尋ねいたします。
 公営企業経営の視点から、現状のままで両病院の経営改善の余地があるのかどうか、両病院が合併することに対する見解、合併に伴う不良債務等への財政支援措置が見込めるかどうか、その他の問題点について。
 次に、保健環境部長にお尋ねいたします。
 両病院の適正規模、特にベッド数、診療科目はそれぞれどの程度でありますか。両病院が合併することに対する御見解及びそれらの問題点、例えば医師派遣医大の一元化、職員問題等であります。
 次に関連質問でございますが、当地方では看護婦、准看護婦が大変不足しており、奨学制度を設けてもなかなか集まりません。そこで、和歌山高等看護学院と南紀高等学校専攻科の定員を倍増する計画をお持ちでないか、お伺いいたします。
 以上で、私の質問を終わります。御清聴ありがとうございました。
○副議長(山本 一君) ただいまの堀本隆男君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 堀本議員にお答え申し上げます。
 第一点、文化都市づくりでございます。
 お話ございましたように、和歌山県には高野山、熊野三山等、すばらしい文化遺産がございます。先人たちが長い年月をかけて築き上げてまいった文化遺産でございまして、決して無にさせてはいけないし、むしろ保存し活用して、さらにその地域地域に即した個性のあふれる文化町づくりを進めていきたいと思っております。しかし、非常に難しいところもございますので、着実に、地道に、積極的に、文化を生かしながら進めてまいらなければならないと思います。
 また、話ございました和歌山市の問題につきましては、空港また高速道路等によって国際化が進んでまいりますし、数々の文化遺産も多うございますので、国際都市として、また文化都市として進める。しかし、基本的に市が中心になるわけでございまして、私たちも市と十分相談しながら連携を密にしてまいりたいと思っております。
 それから、観光立県推進地方会議の誘致の問題でございます。
 これについては、三県の知事会議で合意いたしまして積極的に進めておるわけでございます。来年の秋に開催いたしたいと存じて、現在進めております。この会議を行うことによりまして、運輸省はもとより、全国の観光業者もこれに参加していただき、いろいろな点についてサゼスチョンなりをいただくわけでございます。だから、三県の統一キャンペーンとしても重要でございます。また、本県の観光行政──二十一世紀を目指してのいろんな知恵を承るためにも極めて重要なものだと考えております。
 他の問題は、関係部長から答弁いたします。
○副議長(山本 一君) 商工労働部長天谷一郎君。
 〔天谷一郎君、登壇〕
○商工労働部長(天谷一郎君) 観光の首都圏でのPRでございます。
 これにつきましては、情報発信力等の面から見ましても、まことに重要であると考えてございます。来る七月二十二日には、紀勢本線の特急くろしお号が新大阪駅、京都駅に乗り入れられます。加えて、同じ日に東京─白浜間の航空便が一便増便され、三便になります。これを機会に、首都圏において本県のイメージアップ対策として大々的にキャンペーンを実施することにしております。その内容及び予算につきましては、特急くろしお号の新大阪への乗り入れを記念した和歌山県フェアを初め、首都圏キャンペーン、東京ドームでのフェア参加等を内容とする予算額四千九百万円でございます。
 次に、近畿府県との予算の比較でございますが、元年度当初予算においては本県はトップクラスに位置するものと考えてございます。
 続きまして、東京事務所における観光に関する照会でございます。昨年度実績で、訪問者が三万二百七十九人、電話照会が一万百十三件でございます。
 次に、東京都以外の関東近県での観光宣伝につきましては、近県からの都内通勤者の実態等を考慮して東京駅を中心にキャンペーンを実施してまいったところでございますが、本年は特に首都圏対策として渋谷駅周辺においても実施することといたしてございます。今後は、その効果、手法をも含めまして検討してまいりたいと存じます。
 次に、首都圏での物産等を含めた調査についてでございます。県勢活性化に向けての諸施策を実施する上で必要かと考えますので、観光展の機会を活用したアンケート調査など、関係部局とも協議してまいりたいと考えてございます。
 次に、すさみ町黒島の松くい虫防除対策でございます。
 議員御指摘のとおり、すさみ町黒島は熊野枯木灘海岸県立自然公園の中に位置するすばらしい海岸美と松の緑が織りなす景勝の地でございます。地元においても、この松の緑の維持保全を図るため御努力されてきたところでありますが、議員御提言の観光資源の保存といった観点から、関係部局とも早急に協議してまいりたいと存じます。
 以上です。
○副議長(山本 一君) 土木部長松永安生君。
 〔松永安生君、登壇〕
○土木部長(松永安生君) 国道四十二号周辺の景観に関連して、富田川堤防等を活用した桜並木の造成や富田川の美化についてお答えいたします。
 河川の景観については、できるだけ手を加えず自然のままとし、野鳥や昆虫の場として残す考え方から、一方、全面的に手を加えて利用する考え方まで、よく意見の分かれるところでございます。富田川にどのように手を加えていくかは、議員からの御提案もございましたが、今後、地元の関係者とも相談しながら検討してまいりたいと存じます。
 次に、郵便橋下流の河床整備については、限られた予算の中で草刈り、掘削など河川として正常な機能を果たすべく努めてきたところでございます。議員御提案の河川敷の有効利用と表土採取については、今後、地元白浜町など関係者の意見を聞きながら検討してまいります。
 次に、国道四十二号沿いの河川堤防への植樹については、その木をだれが管理していくかの問題のほか、河川管理上また道路管理上の制約が伴いますが、建設省や白浜町と今後協議しながら検討してまいりたいと存じます。
○副議長(山本 一君) 総務部長斉藤恒孝君。
 〔斉藤恒孝君、登壇〕
○総務部長(斉藤恒孝君) 串本病院及び古座川病院の経営状況は、御指摘のとおり大変厳しいものがございまして、昭和六十二年度決算で見ますと、一年間の経常的な赤字いわゆる経常損失で串本病院が一億三百万円、古座川病院が一億一千五百万円、それぞれ一億円を超える赤字になっております。また実質的な累積赤字の不良債務で見ますと、串本が約十一億円、古座川が一億五千万円となっております。また病床利用率で見ますと、串本が六七%、古座川が四二%と、大変厳しい内容となっております。経営の立て直しには、患者の確保、経常的経費の削減、町の協力等、相当の経営努力が必要でございます。
 県としましても、串本病院については県の公立病院健全化措置によりまして、また古座川病院については国の第三次健全化措置ということで支援をしているところでございます。しかしながら、診療圏人口等から見て個別病院の経営改善努力だけでは抜本的な解決は容易でなく、構造的な面があることは御指摘のとおりでございます。
 したがいまして、病院経営健全化のためには、引き続き個別に経営努力を行うとともに、将来的な機能分担のあり方等を検討する必要があると考えておりまして、私どもとしても両病院及び関係三町の取り組みに対しまして必要な協力、支援を行ってまいる所存でございます。
○副議長(山本 一君) 保健環境部長尾嵜新平君。
 〔尾嵜新平君、登壇〕
○保健環境部長(尾嵜新平君) 御質問にお答え申し上げます。
 地域保健医療計画では、入院医療については、広域的な地域で行うことが効率的な医療を供給できるという観点から、広域圏を単位とした二次医療圏を設定して必要病床数の算定を行ったところでございます。三町を含む医療圏は新宮医療圏となっております。
 串本町、古座町、古座川町の関係三町という二次医療圏の一部地域での病院の適正規模はどれだけかというお尋ねでございますが、人口構成、疾病構造、交通事情等、種々の条件から検討を要するものであり難しいところでございますが、関係三町の一般病床は四百七十四床で、人口十万人当たりの病床数に換算すると千六百五十三床となり、県下平均の一千百八床と比較いたしますとかなり高い数字となっております。また、病床利用率は一般的には八五%前後となっておりますが、それに比較しても大幅に低い率でございます。診療科目においても、それぞれの病院が機能分担を行っていく必要があるなど問題点があり、両病院の今後のあり方については検討を要するものと考えております。
 御提案の件に関しましては、種々課題があろうかとは存じますが、いずれにいたしましても地元の意向が重要な要件となってまいりますので、保健環境部としても、関係町の取り組みに対し十分連携をとりながら協力してまいりたいと考えております。
 次に、看護問題でございます。
 県内の看護職員につきましては、充足率を満たしていないのが現状でございます。今後、さらにその需要は増大するものと考えております。御指摘がございましたが、県内でも地域間格差がございまして、串本、古座、古座川地域においては県平均よりも下回っていることは事実でございますが、看護の需給については県全体の問題としてとらえ、そのための充足対策として養成施設の新設や定員の増あるいは職員の増等、対応すべき種々の施策を官民一体となって講じる必要があるものと考えており、目下、鋭意検討を進めておるところでございます。
 以上でございます。
○副議長(山本 一君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 17番堀本隆男君。
○堀本隆男君 懇切な御答弁、ありがとうございました。
 「ローマは一日にしてならず」、ロンドンのあの立派な町並みも、ロンドン大火の後、百年をかけてつくり上げたとのことであります。また、ハワイのワイキキの浜も百年砂を投入してつくり上げたと聞いております。最初のコンセプトが、まず決め手となります。
 和歌山らしい文化都市づくり、和歌山らしい観光、景観づくりも、一つ一つの積み重ねが百年の後に大きく花開くわけでございます。特に、すさみ町黒島の消え行かんとする松の保存には、特別区域を指定していただき、特別の御配慮を賜りたく、これは要望といたします。
 どうもありがとうございました。
○副議長(山本 一君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で堀本隆男君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
○副議長(山本 一君) 本日は、これをもって散会いたします。
 午後二時五十二分散会

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