平成元年6月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(井出益弘議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

○議長(西本長浩君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 1番井出益弘君。
 〔井出益弘君、登壇〕(拍手)
○井出益弘君 一般質問を始めさせていただきます。私の質問は、知事さんの立場に立って考えますと、知事さんもぜひやりたい、何とかせないかんと思って一生懸命取り組んでくださっておることでありましょうが、なかなかうまくいっていない。うまくいっていないが一生懸命頑張っておるんでそれでよいかというと、そうではなくて何とかそれをやってもらわないかん。そういう大変難しい内容でもあろうかと思いますけれども、何とかできる方向に頑張っていただく答弁を期待いたします。
 まず、国土の開発かつ有効的、合理的、高度に利用するための県の取り組みについてであります。
 一番目の、国土調査法第十七条の国土調査地図について。
 我が国における地籍調査の実態は、西欧先進国に比べ対応が極めておくれていて、明治時代に全国的に行われた地租改正事業に伴う土地調査の成果を改良制度化したもので、現況の土地に関する資料は非常に貧弱であり、登記所に備えつけられた地図や登記簿も明治初期につくられたものを基礎としてこれに加除訂正を加えたもので不備、欠陥があり、特に地図は、当時の幼稚な測量技術と課税に対する配慮のため、実際の土地に比べて大きいものは極端な場合、何分の一になっていたり、形が異なっているものも数多くあります。
 本県においても、昭和三十三年印南町が初めて特定計画に基づいて地籍調査事業に着手され、昭和四十三年下津町が着手、昭和五十六年野上町、太地町、昭和五十九年高野口町、昭和六十年美里町、九度山町、吉備町、昭和六十二年田辺市、昭和六十三年金屋町とそれぞれ着手し、貴志川町、かつらぎ町、清水町も本年着手の運びとなり、この件については仮谷知事も大変意欲的に取り組まれているようであります。昭和五十五年には下津町が地籍調査事業完了の第一号として国土地図の承認を受け、その地図が登記所に送付されており、今後の重要な資料として活躍するものと考えます。
 企業が進出してくる場合でも、まず地元で用地が必要となり、必要な部分について土地の買収や契約等で登記が必要となります。その際に地籍調査事業の国土地図が完成していたら権利・境界で争うことがなく、この重要な業務が簡潔、的確に処理できて大変役立つものであります。
 ところが、この地図に問題点が残っています。
 完了しているはずの地図は一○○%の完了ではないのです。調査時にトラブったところは未確定のままにしており、そのような箇所が何カ所もあるのに完了してしまっているのであります。このため、企業が進出しようとしてきて、国土調査地図のある地域のため用地の確保はスムーズに進むと信じて着手したのに、境界未確定で用地確保が困難となり、企業進出を断念することに直面している企業もあるようでございます。
 国土調査法によって、地籍調査については第二十四条「立入」についてや第二十五条「立会又は出頭」その他、法的に権限を認められているのに、何とか未確定地を確定できないものかと考えます。このようなことでは県勢の発展は期待できず、今後の対応について県当局の取り組みを強力に推進すべく施策をお聞かせいただきたい。
 次に、市街化、市街化調整区域の決定及び見直しについてであります。
 昨年の議会で、二度にわたり市街化、市街化調整地域いわゆる線引きの見直しを早期に実施する必要があると提言いたしましたが、当時の土木部長の答弁は、早期に線引きの見直しをやりたいとのことでございました。特に県都和歌山市については、市街化調整区域内の農地が日々無秩序に、そしてその多くは不法に埋め立てられ、行政の指導が後手後手になり、県民に受け入れられず業者サイドで強引に造成され、またこの部分を分析して考えますと、場所によっては現状の都市づくりに不適当な線引きになっているものも多いようです。調整区域内の開発申請や農地転用申請についても許可され、手続を踏んでいるものでさえ随分いろいろな問題のある処理をしていることが多くあるようです。これらは、線引き見直し決定後、改めて問題として取り組みたいと考えていますが、とりあえずは線引きの早期決定の状況について土木部長の見解をお尋ねします。
 次に、市街化区域内の市街化されない地域の対策についてであります。
 市街化されないところについては、以前、線引きの決定が不適当であって、市街化するには適当でないところが多かったのではないかとも考えます。市街化区域内の市街化されない地域については、今までのはかどらない進捗状況から見てもおわかりのとおりで、行政サイドで何らかの市街化促進施策を考え、国土の有効利用、高度利用や都市整備としての基本的な取り組みが必要であります。以上については県行政の指導力を問うもので、特に今回初めてお尋ねする国土調査地図の問題については県知事に答弁をいただきたい。
 第二に、第二阪和国道と新南海橋について。
 まず、第二阪和国道について土木部長にお伺いいたします。
 第二阪和国道については、昭和六十三年三月に都市計画決定し、引き続き六十三年度にこのうち一部区間の和歌山市楠見地区より元寺町長崎屋前までの二・二キロメートルが和歌山北バイパスとして事業化されております。私は、かねてより一貫して第二阪和国道の整備促進、早期完成を強く訴えてきたのでありますが、去る十二月議会においても事業化後の進捗状況と県の取り組みについて、関連道路網の整備も含め、土木当局の考えをただしたのであります。
 そこでまず一点目は、都市計画決定後の事業計画について、第二阪和国道の用地買収に至るまでのスケジュールをお尋ねいたします。
 次に、事業推進に当たり、国と県と市の接点業務についてであります。
 第二阪和国道は、国道二十六号の二次改築として建設省が事業主体となって進められているわけですが、南海橋を含む紀の川を渡る区間については、和歌山市にとっても緊急に整備を要するとして、もともと市事業として進められていた事業であります。こうした経緯を振り返りますと、おのずと市の責任と申しますか、市の取り組みが非常に重要であると考えるのでございます。
 市においては、昨年、第二阪和国道関連建設事務所を設置し重点的に取り組まれているところでございますが、第二阪和国道の事業進捗に大きな影響を及ぼすJR線の高架などの市事業について、県としてどのように把握され、市当局への働きかけはどのようにされているのかをお尋ねしたい。また、県市一体となった協力体制がぜひ必要でありますが、このことについての考えをお尋ねします。
 次に、県都和歌山市にとっての新南海橋の重要性と位置づけについてお聞きします。
 新南海橋は、約四十年前より和歌山市の中心部の紀の川右岸、左岸を結ぶ大動脈として必要と多くの方面より切望され、私も十数年前、市議会議員としてこのことに取り組み、故人となられた宇治田前和歌山市長が都市計画街路として市単独でも早期建設が必要と事業着手した経過のあるものであります。県都四十万和歌山市民にとって、また和歌山の玄関口として、道路・交通網整備の最も緊急を要する事業と考えております。
 北島橋や六十谷橋を初め、紀の川北岸地域の交通の集中、停滞は、この地域の住宅開発等による交通量の増加に加え、紀の川を渡る橋梁の周辺部がボトルネックとなり、日増しに混雑してきているところであります。こうした地区の実態を踏まえ、紀の川を渡る橋梁すなわち新南海橋の一日も早い完成がぜひとも必要であると考えるのでありますが、新南海橋の整備の緊急度をどのように考えておられるのか、また橋梁部の先行着工ができないか、お尋ねしたい。
 次に、第二阪和国道開通までの供用開始についてお聞きいたします。
 市の都市計画街路事業として着手した約十年ぐらい前から、用地買収に協力していただいたまま現地を放置してあります。土地を手放した協力者は、地元の道路事情が余りにも悪く、用地協力をすれば毎日、地区内で車が対向できずに嫌な思いでバックをしなくても済むようになるし、橋ができると医大病院までも便利になり、今では助からない命でも助かるようになると、地元道路整備も願って協力していただいたのであります。水道道から紀の川堤防までの間については、既に市事業において用地を先行買収されております。現在の周辺道路網の交通混雑を考えれば、緊急の対策としてこの区間の道路の仮供用などについても真剣に検討する必要があると思うが、当局の見解をお尋ねしたい。
 以上の四点の質問について、土木部長の答弁をお願いします。
 第三に、紀淡海峡トンネル構想についてお伺いします。
 紀淡海峡トンネル構想については、昭和五十四年に「新春の夢」として仮谷知事が発表したものと記憶しております。まことに壮大な構想であり、和歌山県浮上のためにぜひ実現していただきたいと考えておりましたが、それからはや十年が経過しようとしております。昭和五十八年から日本鉄道建設公団による四国新幹線ルートの一つとしての調査が進められてきているところでございますが、この調査は現在どのような段階に来ているのか、また今後どのように見通しているのか、まずお伺いいたします。
 一昨年発表された四全総においては、「交流の促進」ということが高くうたわれており、大阪湾環状交通体系の位置づけもなされているところでございます。また、本州四国連絡橋や関西国際空港等の整備がその完成に向けて着々と進められている中で、「次は紀淡だ」という期待も高まってきており、このような情勢変化に的確に対応していくことが必要であると考えます。これだけのビッグプロジェクトは和歌山県の力だけでは難しいとは思いますが、単に構想に終わらせるのではなく、その実現に向けて今後どのように取り組んでいくのか、お考えをお聞かせ願いたいと思います。
 以上で、一回目の質問を終わります。
○議長(西本長浩君) ただいまの井出益弘君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 井出議員にお答え申し上げます。
 国土調査法に基づく地籍調査でございます。
 お話ございましたように、公共事業を推進する上においても非常に重要なものでございます。特に、基盤整備づくりやリゾート開発などが進捗している現在におきまして、これを計画的かつ円滑に実施するために、議員お話しのとおり、地籍調査の推進を積極的にやらなければならない必要を私もかねがね感じておるわけでございます。
 そうした意味から、本年度予算において地籍調査推進事業を創設いたしまして、より積極的に取り組んでおるわけでございまして、今後とも地籍調査の促進に努めてまいりたいと思います。
 具体的な問題については、農林水産部長から答弁させていただきます。
 その他の問題は、関係部長から答弁いたします。
○議長(西本長浩君) 農林水産部長安田重行君。
 〔安田重行君、登壇〕
○農林水産部長(安田重行君) お答え申し上げます。
 地籍調査事業の重要性については、ただいま知事から基本的な答弁がございましたが、地籍調査事業は、地籍の明確化を図る目的で、地籍図及び地籍簿を作成する事業でございます。この事業は、市町村が事業主体で実施するものでございます。筆界──やさしく言えば一筆一筆の土地の境界線でございます──を確定するためには、隣接する双方の土地所有者あるいは利害関係人の合意を得る必要がございます。しかし、この合意が得られないで確認ができない場合、国土調査法によって最小限の範囲内において筆界未定地として処理し事業を完了することになってございます。
 議員御指摘の下津町のケースについては、地籍調査事業が既に完了いたしておりますので、再度、地籍調査事業を実施することができないこととなってございます。県下では十一市町村がただいまこの事業を実施中でございますが、今後とも地籍調査事業実施の中で、土地所有者に地籍調査の意義並びに筆界未定地となる場合の不利益を十分説明してその理解を得るよう努め、できるだけ筆界未定が生じないよう市町村を通じてさらに指導してまいりたいと存じてございます。
○議長(西本長浩君) 土木部長松永安生君。
 〔松永安生君、登壇〕
○土木部長(松永安生君) まず、市街化区域、市街化調整区域いわゆる線引きの見直しについてお答えいたします。
 和歌山・海南都市計画地域の線引きの見直しについては、現在国と協議中であり、協議が済み次第、この秋にも公聴会を開催して早期に見直しを完了させたいと考えております。
 次に、市街化区域内の市街化されない地域の対策についてでございます。
 和歌山市の市街化区域内には、五ヘクタール以上のまとまった農地が十五カ所、三百二十ヘクタールもあります。また、五ヘクタール以下の農地を含めますと、市街化区域面積六千五百七ヘクタールのうち、その一四%にも当たる八百九十ヘクタールの残存農地があります。これらの農地などではミニ開発が進み、いわゆるスプロール現象が進行し、計画的な市街化をますます困難にさせており、これら農地等の計画的な市街地整備は極めて緊急の課題と認識しております。線引き見直しに当たってもこの問題が最大の課題であり、和歌山市に対し、逆線引きを含め土地区画整理事業や地区計画制度の導入を指導してまいりました。市ではこれを受け、昨年十月に地区計画の策定手続に関する条例を制定し、現在、地区計画の案をまとめているところでございます。今後とも、面的な整備事業の導入や地区計画制度の積極的な活用を市に指導してまいりたいと考えております。
 次に、第二阪和国道と新南海橋に関連して、まず都市計画決定後の第二阪和国道の事業計画はどうなっているかという問題でございます。
 第二阪和国道については、建設省において昨年度事業化後、測量作業を始め、現在、地質調査及び詳細設計を行っております。今後の作業スケジュールとしては、十月末ごろまでに設計を終え、地元関係者の了解を得た上で幅ぐい設置を行い、年度内に用地交渉に入りたいとしております。
 次にJRの高架については、現在、建設省、市、JRの間で設計協議中でありますが、この事業は、元の和歌山駅である紀和駅周辺を初めとする鉄道による地域分断を解消し、市街地の再生に大きく貢献するとともに、第二阪和国道が元寺町の街路に取りつくための構造上の前提条件としても必要不可欠な事業でありますので、建設省及び市当局に事業促進を強く働きかけているところでございます。
 次に、県、市の協力体制については、昨年四月、市において第二阪和国道関連建設事務所を設置し、市が主体的に取り組んでいるところでございますので、県としては、今後とも密接な連携をとりながら事業の促進に努力をしてまいりたいと考えております。
 次に、新南海橋の整備の緊急性についてでございます。
 現在、紀の川左岸側の和歌山市の中心市街地と右岸側の新市街地地域を連絡する橋梁が不足しているため、紀の川を渡る区間が交通の隘路となっており、この解消が和歌山市の交通対策上で大きな課題となっております。このため新南海橋の早期整備が必要であると考えておりますが、限られた予算の中で効率的な投資を図るため、関連する区間の用地取得の見通しがついた時点で、本橋の整備がおくれることのないよう国に働きかけてまいりたいと考えております。
 最後に、市道楠見百十一号線いわゆる水道道から紀の川堤防間の仮供用については、現在、未買収の状況から見て現状のままでは道路として供用することは困難でございます。今後、国に対し用地買収を促進し、全体の整備計画の中で部分供用が可能な区間を検討するよう働きかけてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(西本長浩君) 企画部長川端秀和君。
 〔川端秀和君、登壇〕
○企画部長(川端秀和君) 紀淡海峡トンネル構想について、調査の進捗状況及び今後の見通しについてお答えを申し上げます。
 紀淡海峡における日本鉄道建設公団の調査については、昭和五十八年から毎年調査費一億円を計上して調査を進めていただいているものでございます。今年度は、地元の御協力をいただきまして、友ケ島付近の二カ所において和歌山県側としては初めての海上ボーリング調査を実施していただくことになってございます。そういうことで、調査の大きな山場を迎えたものと理解をいたしてございます。
 次に、この構想の取り組みについてでございます。
 これまでも関係方面への働きかけを行ってきたところでございまして、阪和開発連絡協議会や関西経済界において近畿圏における次のリーディングプロジェクトとしての位置づけがなされるなど認識が高まってきてございまして、成果があらわれつつあると考えてございます。今後とも、関係府県、経済界等との連携を強めつつ、国等に対してその実現を強く働きかけてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(西本長浩君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 1番井出益弘君。
○井出益弘君 紀淡海峡トンネルについては、企画部長からなかなかいい答弁をいただきました。
 紀淡海峡トンネルが、関空、関西文化学術研究都市、明石海峡大橋に次ぐ大プロジェクトとして、いよいよ本当に具体的に実現の方向に向かってきているような感じがいたしますので、今後も県当局の頑張りを一層期待しております。
 それから、線引きの件であります。
 五ヘクタール以上のまとまった農地が十五カ所もあると。これは三百二十ヘクタールで、五ヘクタール以下の農地を含めると八百九十ヘクタールも残存農地があるということで、全然数字が減ってきていないように思います。毎年、聞いてえらい悪いんですけれども。
 ですから、逆線引きなどについても本当にやるぞという姿勢、やらないかんという姿勢を見せてほしい。そうしたら進むんじゃないかと思います。
 以前、私は、宅地並み課税というようなことも市議会でちょっと言いまして反発を受けたこともありますけれども、しかし本当に何とかしなかったら、ほうっておいたんでは進まない。
 だから、市街化促進対策について、今までにないような何か新しい施策、あるいは今までになかったようなことを今度やるという実行の姿勢を見せていただいて指導していただきたいと思います。
 最後に、公共事業として行われる国土地図の問題、新南海橋の早期完成を目指しての問題についてであります。
 土地所有者の協力が得られなければ──保留にしておかれると、協力した人たちも困る結果になります。これは実際、協力した人たちが困る結果になっておるからこういう話になってきております。知事初め大変御苦労ですけれども、県当局の市町村への絶大なる指導力を期待するとともに、今後、この進捗状況を関心を持って見守らせていただきたいと思います。
 以上、要望いたしまして終わります。
○議長(西本長浩君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で井出益弘君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
○議長(西本長浩君) この際、暫時休憩いたします。
 午前十一時十三分休憩
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