平成元年6月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(全文)


県議会の活動

 平成元年 和歌山県議会六月定例会会議録 第 四 号
 
 六月二十八日 (水曜日) 午前 十時 六分 開議
  午後 二時五十二分 散会
 ────────────────────
議 事 日 程 第四号
  平成元年六月二十八日(水曜日)
  午前十時開議
 第一 議案第八十六号から議案第九十九号まで並びに報第三号から報第九号まで(質疑)
 第二 一般質問
 ────────────────────
本日の会議に付した事件
 第一 議案第八十六号から議案第九十九号まで並びに報第三号から報第九号まで(質疑)
 第二 一般質問
 ────────────────────
出 席 議 員(四十三名)
 1 番 井 出 益 弘 君
 3 番 町 田 亘 君
 4 番 中 村 利 男 君
 5 番 山 本 一 君
 6 番 宗 正 彦 君
 7 番 岡 本 保 君
 8  番 鈴 木 俊 男 君
 9 番 阪 部 菊 雄 君
 10 番 部 矢 忠 雄 君
 11 番 平 越 孝 哉 君
 12 番 大 江 康 弘 君
 13 番 中 西 雄 幸 君
 14 番 橋 本 進 君
 15 番 古 田 新 蔵 君
 16 番 浦 武 雄 君
 17 番  堀 本 隆 男 君
 18 番 宇治田   栄 蔵 君
 19 番 下 川 俊 樹 君
 20 番 石 田 真 敏 君
 21 番 木 下 秀 男 君
 22 番 中 村 隆 行 君
 23 番 藁 科 義 清 君
 24 番 門 三佐博 君
 25 番 尾 崎 要 二 君
 26 番  那 須 秀 雄 君
 27 番 木 下 義 夫 君
 28 番 上野山 親 主 君
 30 番 尾 崎 吉 弘 君
 31 番 西 本 長 浩 君
 32 番 岸 本 光 造 君
 33 番 松 本 貞 次 君
 34 番  浜 本  収 君
 35 番 和 田 正 人 君
 36 番 浜 口 矩 一 君
 37 番 山 崎 幹 雄 君
 40 番 森 利 一 君
 41 番 村 岡  キミ子   君
 42 番 森 本 明 雄 君
 43 番 中 村 博 君
 44 番 中 村 千 晴 君
 45 番 小 林 史 郎 君
 46 番 渡 辺 勲 君
 47 番 藤 沢 弘太郎 君
 ────────────────────
欠 席 議 員(四名)
 2 番 和 田 正 一 君
 29 番 平 木 繁 実 君
 38 番 貴 志 八 郎 君
 39 番 田 中  実三郎   君
 ────────────────────
説明のため出席した者
 知 事 仮 谷 志 良 君
 副知事 西 口 勇 君
 出納長 梅 田 善 彦 君
 知事公室長 市 川 龍 雄 君
 総務部長 斉 藤 恒 孝 君
 企画部長 川 端 秀 和 君
 民生部長 高 瀬 芳 彦 君
 保健環境部長 尾 嵜 新 平 君
 商工労働部長 天 谷 一 郎 君
 農林水産部長 安 田 重 行 君
 土木部長 松 永 安 生 君
 企業局長 吉 井 清 純 君
 以下各部次長・財政課長 
 教育委員会委員長
 上 野 寛 君
 教育長 高 垣 修 三 君
 以下教育次長
 公安委員会委員長
 築 野 政 次 君
 警察本部長 井 野 忠 彦 君
 以下各部長
 人事委員会委員長
 寒 川 定 男 君
 人事委員会事務局長
 代表監査委員 宮 本 政 昭 君
 監査委員事務局長
 選挙管理委員会委員長
 稲 住 義 之 君
 選挙管理委員会書記長
 地方労働委員会事務局長
 ────────────────────
職務のため出席した事務局職員
 事務局長 山 本 恒 男
 次 長 倉 本 辰 美
 議事課長 栗 本  貞 信
 議事課副課長 中 西 俊 二
 議事班長 高 瀬 武 治
 議事課主任 松 谷 秋 男
 議事課主事 石 井 卓
 総務課長 神 谷 雅 巳
 調査課長 阪 上 明 男
 (速記担当者)
 議事課主査 吉 川 欽 二
 議事課速記技師 鎌 田 繁
 議事課速記技師 中 尾 祐 一
 議事課速記技師 保 田 良 春
 ────────────────────
 午前十時六分開議
○議長(西本長浩君) これより本日の会議を開きます。
○議長(西本長浩君) 日程第一、議案第八十六号から議案第九十九号まで、並びに知事専決処分報告報第三号から報第九号までを一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 46番渡辺 勲君。
 〔渡辺 勲君、登壇〕(拍手)
○渡辺 勲君 おはようございます。
 二月定例会で言い足りなかったことを、今定例会で引き続いて質問をいたしたいと思います。
 関西国際空港に関連する諸問題でございます。
 関西国際空港の第一期計画につきましては、昨年末に空港島の護岸が概成し、平成五年春の開港を目指して建設工事が着々と進んでいるところであります。本県からも、去る五月八日に知事を初め県当局、開発公社、工事関係者の涙ぐましい御努力と関係地域の皆さんの御理解によりまして、幾多の困難を乗り越えて空港島の埋立用土砂搬出が開始されました。土砂を満載した土砂運搬船の船出を見送る関係者の中には、目に涙をいっぱいため、感無量の姿がありました。男が力いっぱい仕事をやり遂げたすばらしい顔がその場にあったと聞いております。私も大変感激し、感動いたした次第でございます。ここに改めて、正月休暇まで返上し、不眠不休で目的達成のため御努力をいただいた関係者の皆さんに、最大の敬意を表したいと存じます。
 このように、本県においても関西国際空港の建設に懸命の努力がなされているところであります。関西国際空港の建設を契機として、陸路の面では今まで近くて遠かった大阪を初めとする近畿圏とも、近畿自動車道を初めとする道路網の整備等により大変近くなろうとしておりますし、また県民の悲願でございました国土軸への直結も、七月には特急くろしお号が新大阪に直結され、県民の利便性の高まることが期待されるわけでございます。
 しかし、空路の面において、今まで和歌山は「キンキのおまけ」という歌に代表されるように、国土軸から大きく離れ、東京での諸行事に参加するのに全国県庁所在地の都市からは和歌山が一番時間がかかると言われるくらい、不名誉ながら、最も不便な立地条件にあります。
 大多数の県民が期待する国土軸への直結が果たして関西国際空港を拠点として実現可能か否か、この問題に関連する質問は後ほどさせていただくことといたしまして、確かに国際軸への直結は、ニューヨーク、ロンドン、パリ等、世界の主要都市に一番近い県になることは明白であります。二十四時間空港のメリットが遺憾なく発揮されるものと思います。二十四時間、世界と結ばれるわけであります。
 先日も、ジャンボ尾崎が活躍の全米オープンをテレビで応援したわけでございますが、眠たい目をこすりながらチャンネルを回したのが朝の五時過ぎでございました。アメリカの全米オープンをやっていた地区は、夕方を迎えようとする時間です。また、全英オープンを見るときは、夜中の十二時を回ってからほっぺたをつねりながら観戦するわけであります。このように、我々が眠っている間にどこかの国は朝を迎え、またある国は太陽をさんさんと受けながら真っ昼間の活動をしているわけでございまして、まさに世界は二十四時間休みなく動いているのでございます。
 国際化が急速に進展し、国際的相互依存関係がますます強まっていく中、二十四時間世界に開かれる関西国際空港は、本県だけでなく、関西あるいは日本の期待を一心に集めていることは論をまちません。そして、我が和歌山県が世界の主要都市と二十四時間結ばれることに大きな期待が寄せられています。このチャンスを生かし、二十一世紀を和歌山の時代としなければなりません。
 もう一方では、関西国際空港の着工を契機として、松下電器を初めとする二十数社の企業立地の決定、近畿大学の誘致、先月着工した和歌山マリーナシティ、コスモパーク加太等、今、和歌山県内のビッグプロジェクトの展開も関西国際空港が和歌山から十五キロメートルの至近距離に位置することのメリットであることも間違いありません。しかし、これらを確かな永続性のある県益に結びつけるために、今後の取り組みの悔いなき対応はいかにあるべきかを考えなければなりません。
 今月私は、二つの設立総会に参加してまいりました。一つは六月五日、和歌山県関西国際空港全体計画促進協議会設立総会でございまして、和歌山県下の政界、官界、財界の代表七百名ばかりが結集し、近畿の府県に先駆けて関西国際空港の第二期計画の早期着工の要望決議を採択し、行動を開始いたしました。今まで、このような県民各界各層の方々がお集まりになり、一つになって大きな目的達成に向かって行動することは、私の知る限り、数少ない出来事であります。関西国際空港に期待する県民の熱い願いが大きいということを改めて感じたわけでございます。
 もう一つの設立総会は六月十六日、大阪の中之島中央公会堂で開催された関西国際空港全体構想早期実現期成会の設立総会でございます。関西国際空港株式会社に出資している大阪府、兵庫県、和歌山県を初めとする十二の地方公共団体と関西経済連合会、大阪、和歌山商工会議所を初めとする関西の経済界が一体となって呼びかけられたわけでございますが、あの大きな中之島中央公会堂が揺るがんばかりの熱気でいっぱいでございました。関西国際空港への熱い思いがひしひしと伝わってまいりました。各府県それぞれの思惑を秘めながらも、関西が一致して全体構想実現を確かなものへとの熱意のあらわれであります。
 さきの県議会においても要望決議をしたところでございますが、関西国際空港の和歌山に与えるインパクトをより大きくするためにも、現在の一本の滑走路だけでは到底不十分であることは周知の事実であります。促進協議会のスローガン「三本の滑走路で躍進和歌山」、「私たちの熱意でつくろう完全空港」、そのとおりであります。今後とも、我々県民一丸となって三本の滑走路を備えた完全空港を目指して頑張っていかなければならないことは言うまでもありません。
 そこで質問の第一点は、去る六月十四日に、仮谷知事、西本議長を先頭に、県内の市町村、経済界の代表発起人で、宇野総理を初め大蔵・運輸両大臣ほか、政府要人に対し促進協議会の要望を陳情された旨、お聞きしております。また昨日は、仮谷知事の代理で西口副知事が、大阪府岸知事、関経連宇野会長らとともに関西を代表して宇野総理に陳情されたようでありますが、知事が直接総理に会われた感触と感じられたこと、また今後の関西国際空港全体計画の取り組みに対する御決意のほどをお聞かせ願いたいと存じます。
 次に、関西国際空港の国内便確保と最も関連の深い現大阪空港の存廃問題についてでございます。
 二月定例会に引き続いて、再度質問をいたしたいと思います。
 さきの県議会において、この問題についてお尋ねしたところ、仮谷知事からは、重要な時期であるので重大な関心を寄せているとの答弁をいただいたところでありますが、先週の金曜日、関西国際空港開港後の大阪空港の存廃問題を調査している運輸省から、空港廃止が周辺地域などに与える影響や存続した場合の環境対策等、存廃調査の中間報告が発表されたと、二十四日の朝刊各紙で知りました。各紙の報道によりますと、大変遺憾ながら、大阪空港の存続を色濃く打ち出した内容と思われます。
 三年前の第一回の中間報告では、「国内線の航空輸送需要は、アクセスが便利な大阪空港が新空港を上回り、新空港だけでは航空需要を賄い切れない」との調査結果を出していまして、今回の報告は、存続の場合に必要とされる環境対策のあり方、廃止した場合の空港周辺地域や近畿圏に与える経済的影響等、四項目についての調査結果が出されたわけでありますが、空港が廃止された場合の空港周辺に与える経済効果の減少を示すなど、間接的ながら存続を強く示唆した内容となっております。大阪府の岸知事は、六月十六日の記者会見で大阪空港の存廃問題に触れ、「国が調査中だが、新空港開港後も第一期(滑走路一本)のうちは一定の期間存続が必要と考えている」と話しております。また、ことし四月に発表された関西経済連合会の「航空新時代における空港整備について」の中でも、大都市圏複数空港の必要性を唱え、大阪空港の存続を主張している。
 このように、いろんな方面から大阪空港の存続についての世論形成がなされようとしている中、今回の運輸省の発表で存続論に拍車がかかり、さらに弾みがつくものと思われます。大阪空港の存廃について、経済効果や航空需要だけの観点で判断をしてよいのでしょうか。空港廃止で経済効果が減少することは、空港周辺十一市協が昭和四十六年に大阪空港撤去運動を起こしたときからわかり切っている話であります。それを、いざ新空港ができるから伊丹周辺は不便になる、いや経済も落ち込むからと手のひらを変えて空港の存続運動を起こしていくというのは、余りにも身勝手な地域エゴではないかと思うのであります。昭和五十六年十二月に最高裁で「欠陥空港」と断罪された大阪空港の問題解決こそが昭和四十九年の航空審議会の答申に明記されているのであります。「新しい空港は、大阪空港の廃止を前提として同空港の機能をかわって受け持つ能力のあるものとしなければならない」との新空港着工前の大義名分はどこへ消えてしまったのか。
 航空審議会の答申が出された当時、県内には、和歌山は扇風機の裏側になってしまうと、新空港絶対反対の大きな声がありました。さらには、新空港など絶対できるものかとの声が聞こえる中、知事は本県の将来を考え、みずから決断され、県民一丸となって新空港建設に取り組んできたのは何であったのか、今こそ新空港建設決定の原点に返ってみる必要があると思うのであります。
 新空港の三本の滑走路を備えた全体計画を論議するとき、大阪空港問題の解決、いわゆる廃止の原則を確認し、出発点とすべきであります。伊丹周辺の十一市協や関経連が主張している、経済が落ち込むとか便利だというだけでは存続の理由にならないと私は思います。
 今までのように、運輸省の存廃調査が終わらないことを理由に、はれものにさわる扱いをする段階ではないと思います。もし仮に関西国際空港が主として国際線、伊丹は国内線と位置づけられたとき、本県の県益は縮小されてしまいます。大阪は大阪の、兵庫は兵庫の、それぞれの立場を機会あるごとに華々しくアピールしております。この辺で、我が県も真正面からの主張があってよいのではないかと思うのでございます。大阪空港の存廃について、知事の御所見を賜りたいと思います。
 御清聴ありがとうございました。
○議長(西本長浩君) ただいまの渡辺勲君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 渡辺議員にお答え申し上げます。
 関西国際空港問題についての第一点は、全体構想実現への取り組みと決意の問題でございます。また、中央陳情への見通しでございます。
 さきの議会において要望決議をいただきました関西国際空港全体計画については、先ほど渡辺議員から話ございましたように、六月五日に県内の政界、官界、財界の七百名の多数の皆さんが集まって、また県議会の皆さんの御協力を得まして和歌山県関西国際空港全体計画促進協議会を結成して要望決議を行ったところでございます。また私も、その際に、空港に対する熱意をひしひしと感じたわけでございます。
 六月十六日には、関西全体の関西国際空港全体構想早期実現期成会が設立され、多数の皆さんがお集まりになって、私も代表発起人として決意表明を行ったところでございます。また、六月十四日には、私と西本県会議長ほか、市長、経済団体の代表の皆さんと一緒になって、宇野総理初め運輸大臣等関係各大臣に要望してまいったわけでございます。昨日、副知事が、大阪府の岸知事初め関西の財界人と一緒になって全体計画の推進を要望してきたところでございます。
 私が、総理並びに運輸大臣、関係当局と会ったときに感じたことは、率直に言いまして、全体計画の実現は容易なことではないということをひしひしと感じたのでございます。航空需要の問題、関西国際空港株式会社の採算性の問題など、解決しなければならない課題がたくさんございます。ただ、和歌山県の関西国際空港に取り組む積極的な姿勢、情熱は理解していただけた、かように存じております。
 関西国際空港の三本の滑走路は、関西の活性化にとって是が非でも必要でございますし、本県の発展のためにも不可欠なことでございます。ただ、関西が一丸となってその実現に向かって努力しておる姿勢というものは、前よりも増してありがたいことではないかと感じておるわけでございます。県議会の皆さん方初め、県民の皆さんの協力を得ながら、全体計画をぜひ実現させるよう全力を傾注して取り組んでまいりたいと思っておる次第でございます。
 また、大阪空港の存廃問題についての見解でございます。
 経過を踏まえての御質問でございました。私は、大阪国際空港の存続問題については、原点は環境問題でございまして、関係者である国、大阪府、兵庫県、地元市、地元住民の間で結論を出すべきであると認識している次第でございます。しかし、お話ございましたように、この問題はやはり昭和四十九年の航空審議会の答申に基づいて対応されるべきでございます。また、その趣旨に沿って対処されるように絶えず申し上げてきているところでもございます。申し上げるまでもございませんが、関西国際空港の建設は関西に完全空港がぜひ必要であるとの関西の総意で現在まで進められてまいっておる次第でございます。
 本県としましては、今後とも大阪国際空港の存廃問題に重大な関心を寄せながら、国内、国際の基幹空港としての関西国際空港の全体計画を早期に実現する、そして関西国際空港を完全空港とするために発足した関西国際空港全体構想早期実現期成会の一員として、関係府県とともに全力を傾注してまいる所存でございます。
○議長(西本長浩君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 46番渡辺 勲君。
 〔渡辺 勲君、登壇〕
○渡辺 勲君 再質問をさせていただきたいと思います。
 関西空港と和歌山県の今日の置かれている立場から、情熱を込めて知事に質問をさしていただいたわけでございますけれども、ただいまの御答弁、何に、どこに遠慮をされておるのか、どうも歯切れが悪い。こういう答弁を「ろうそくでおかいさんを炊く」──煮え切らんと、こう言う。
 和歌山県と関空問題についての歴史というものを考えてみますと、今日私は三つ目の大きな山場を迎えておる、こういうふうに認識をしておるのでございます。
 第一番目の山場は昭和四十九年に航空審の答申が出されたとき、九月議会にこの壇上から当時の大橋知事に、航空審議会の中に和歌山県が入っていないじゃないか、大阪と兵庫県がオブザーバーとして審議をされてきた、和歌山県を無視して関西空港の存在があり得るのかということを質問いたしたわけでございます。そのとき大橋知事は、顔を紅潮させながら「そんなことは絶対にさせない」、こう答弁されたことを記憶しております。そして、翌年の五十年七月二十三日に、当時の木村睦男運輸大臣、梶原飛行場部長に来県を求めまして、大橋知事は県庁の正庁で運輸大臣、飛行場部長に激しく詰め寄ったと聞いております。当時の模様を、特別秘書であった橋本進さんが熱っぽく語ります。たばこを吸わなかった大橋知事が、みずからの気分を落ちつけるためか、橋本進さんにたばこを要求して、橋本進さんが、こう火をつけた。その手を震わせながら、和歌山県を無視して泉南沖に空港ができると思いますか、やれるものならやってみなさい、こう正庁で詰め寄ったと聞いております。烈火のごとくお怒りになったと聞いております。そして、その年の十月四日に大橋前知事は帰らぬ人となったわけでございます。私は、一期目の駆け出しの議員の一人として熱意を込めて質問をさせていただいたのですが、その対応の姿を聞かせていただいて本当に感動いたしたわけでございます。そして昭和五十一年五月二十六日に、仮谷知事あてに「関西空港と和歌山県」という、和歌山県を関係府県の中に位置づけた調査資料が提示されたこと、この時期が第一回目の山場であったと思うんです。
 第二回目は、五十七年六月七日に、仮谷知事あなたがホストワークをして和歌山で大阪湾岸サミットが開かれました。そのときに突如として神戸沖空港が急浮上いたしまして、政財界がそれをバックアップするという情勢の中で、水面下では運輸省関係者も、関西が反対が多くてだめならば神戸沖でもいいんですよという態度に変わってきた。大橋知事が「警戒的白紙」という旗を掲げながら慎重に関西空港問題に取り組んでおられましたが、その時点で仮谷知事が決断をされて「警戒的白紙」の旗をおろし、県益優先のために積極的に関与するという姿勢を表明して、そこで和歌山が関西国際空港の関係府県としての確固たる位置づけがされたというふうに私は感じておるのでございます。
 今また三つ目の山場と申し上げておりますのは、もはや航空審答申の精神、大前提というものがどこかに置き去られて、関西財界の動き、大阪府の動き、運輸省の動き、それらの動きがすべて伊丹空港存続の方向に向かいつつある。伊丹空港存続で位置づけられたときに、和歌山県の県益は一過性に終わってしまうのではないか。今この第三の山場を迎えて、仮谷知事の決断こそが永続性のある和歌山の県益を築き上げるもの、こう私は確信いたしておるのでございます。
 再度、仮谷知事の確固たる決意、伊丹空港存廃問題に対する見解をお聞かせ願いたいと思います。
 以上。
○議長(西本長浩君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 渡辺議員に、伊丹空港の存廃について答弁させていただきます。
 先ほど申し上げましたように、私は関西国際空港の全体計画の推進を第一目標に掲げて進めておる現在でございます。大阪国際空港の存続ということが関西国際空港の国内便確保の問題や全体計画実現に影響を与えるものとなったならば、私は関西国際空港の関係府県として毅然たる態度で臨んでまいりたい、かように存じております。
○議長(西本長浩君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
 46番渡辺 勲君。
 〔渡辺 勲君、登壇〕
○渡辺 勲君 国内便の確保や全体構想に現伊丹空港の存廃問題が大きな影響を来すということになれば毅然たる態度で臨むと、こういう再答弁をいただいたわけでございますけれども、これは第一回目の答弁より少し前進をした。こういう答弁を「砂の上に落としたあんころもちみたいな答弁」と。食おうに食えんし、拾わなもったいないしという答弁です。
 私は、毅然たる態度を示さなければならない時期は今だと主張している。確かに、関西の三府県で全体構想実現の第一歩を大同団結して歩み始めた時期でございますから、随分とお気を使われておるということもよくわかります。けれども、大阪や大阪財界や運輸省は、余り我々和歌山のことにはお気を使ってくれているようには私は思わない。この際、そうお気を使わずに和歌山県の立場を明確に主張されておいた方が将来に悔いを残さないんではないか。遠回しに「航空審の答申の原点に戻るべきである」というふうな表現ではなしに、和歌山県としては現伊丹空港は断固として廃止すべきである、こう明確に答弁をしていただきたいのでございますが、少し答弁しにくいようでございますので、私はこう主張しますということをここで表明をいたしまして、後、しっかりと頑張っていただきますように要望いたします。
 終わります。
○議長(西本長浩君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で渡辺勲君の質問が終了いたしました。
○議長(西本長浩君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 1番井出益弘君。
 〔井出益弘君、登壇〕(拍手)
○井出益弘君 一般質問を始めさせていただきます。私の質問は、知事さんの立場に立って考えますと、知事さんもぜひやりたい、何とかせないかんと思って一生懸命取り組んでくださっておることでありましょうが、なかなかうまくいっていない。うまくいっていないが一生懸命頑張っておるんでそれでよいかというと、そうではなくて何とかそれをやってもらわないかん。そういう大変難しい内容でもあろうかと思いますけれども、何とかできる方向に頑張っていただく答弁を期待いたします。
 まず、国土の開発かつ有効的、合理的、高度に利用するための県の取り組みについてであります。
 一番目の、国土調査法第十七条の国土調査地図について。
 我が国における地籍調査の実態は、西欧先進国に比べ対応が極めておくれていて、明治時代に全国的に行われた地租改正事業に伴う土地調査の成果を改良制度化したもので、現況の土地に関する資料は非常に貧弱であり、登記所に備えつけられた地図や登記簿も明治初期につくられたものを基礎としてこれに加除訂正を加えたもので不備、欠陥があり、特に地図は、当時の幼稚な測量技術と課税に対する配慮のため、実際の土地に比べて大きいものは極端な場合、何分の一になっていたり、形が異なっているものも数多くあります。
 本県においても、昭和三十三年印南町が初めて特定計画に基づいて地籍調査事業に着手され、昭和四十三年下津町が着手、昭和五十六年野上町、太地町、昭和五十九年高野口町、昭和六十年美里町、九度山町、吉備町、昭和六十二年田辺市、昭和六十三年金屋町とそれぞれ着手し、貴志川町、かつらぎ町、清水町も本年着手の運びとなり、この件については仮谷知事も大変意欲的に取り組まれているようであります。昭和五十五年には下津町が地籍調査事業完了の第一号として国土地図の承認を受け、その地図が登記所に送付されており、今後の重要な資料として活躍するものと考えます。
 企業が進出してくる場合でも、まず地元で用地が必要となり、必要な部分について土地の買収や契約等で登記が必要となります。その際に地籍調査事業の国土地図が完成していたら権利・境界で争うことがなく、この重要な業務が簡潔、的確に処理できて大変役立つものであります。
 ところが、この地図に問題点が残っています。
 完了しているはずの地図は一○○%の完了ではないのです。調査時にトラブったところは未確定のままにしており、そのような箇所が何カ所もあるのに完了してしまっているのであります。このため、企業が進出しようとしてきて、国土調査地図のある地域のため用地の確保はスムーズに進むと信じて着手したのに、境界未確定で用地確保が困難となり、企業進出を断念することに直面している企業もあるようでございます。
 国土調査法によって、地籍調査については第二十四条「立入」についてや第二十五条「立会又は出頭」その他、法的に権限を認められているのに、何とか未確定地を確定できないものかと考えます。このようなことでは県勢の発展は期待できず、今後の対応について県当局の取り組みを強力に推進すべく施策をお聞かせいただきたい。
 次に、市街化、市街化調整区域の決定及び見直しについてであります。
 昨年の議会で、二度にわたり市街化、市街化調整地域いわゆる線引きの見直しを早期に実施する必要があると提言いたしましたが、当時の土木部長の答弁は、早期に線引きの見直しをやりたいとのことでございました。特に県都和歌山市については、市街化調整区域内の農地が日々無秩序に、そしてその多くは不法に埋め立てられ、行政の指導が後手後手になり、県民に受け入れられず業者サイドで強引に造成され、またこの部分を分析して考えますと、場所によっては現状の都市づくりに不適当な線引きになっているものも多いようです。調整区域内の開発申請や農地転用申請についても許可され、手続を踏んでいるものでさえ随分いろいろな問題のある処理をしていることが多くあるようです。これらは、線引き見直し決定後、改めて問題として取り組みたいと考えていますが、とりあえずは線引きの早期決定の状況について土木部長の見解をお尋ねします。
 次に、市街化区域内の市街化されない地域の対策についてであります。
 市街化されないところについては、以前、線引きの決定が不適当であって、市街化するには適当でないところが多かったのではないかとも考えます。市街化区域内の市街化されない地域については、今までのはかどらない進捗状況から見てもおわかりのとおりで、行政サイドで何らかの市街化促進施策を考え、国土の有効利用、高度利用や都市整備としての基本的な取り組みが必要であります。以上については県行政の指導力を問うもので、特に今回初めてお尋ねする国土調査地図の問題については県知事に答弁をいただきたい。
 第二に、第二阪和国道と新南海橋について。
 まず、第二阪和国道について土木部長にお伺いいたします。
 第二阪和国道については、昭和六十三年三月に都市計画決定し、引き続き六十三年度にこのうち一部区間の和歌山市楠見地区より元寺町長崎屋前までの二・二キロメートルが和歌山北バイパスとして事業化されております。私は、かねてより一貫して第二阪和国道の整備促進、早期完成を強く訴えてきたのでありますが、去る十二月議会においても事業化後の進捗状況と県の取り組みについて、関連道路網の整備も含め、土木当局の考えをただしたのであります。
 そこでまず一点目は、都市計画決定後の事業計画について、第二阪和国道の用地買収に至るまでのスケジュールをお尋ねいたします。
 次に、事業推進に当たり、国と県と市の接点業務についてであります。
 第二阪和国道は、国道二十六号の二次改築として建設省が事業主体となって進められているわけですが、南海橋を含む紀の川を渡る区間については、和歌山市にとっても緊急に整備を要するとして、もともと市事業として進められていた事業であります。こうした経緯を振り返りますと、おのずと市の責任と申しますか、市の取り組みが非常に重要であると考えるのでございます。
 市においては、昨年、第二阪和国道関連建設事務所を設置し重点的に取り組まれているところでございますが、第二阪和国道の事業進捗に大きな影響を及ぼすJR線の高架などの市事業について、県としてどのように把握され、市当局への働きかけはどのようにされているのかをお尋ねしたい。また、県市一体となった協力体制がぜひ必要でありますが、このことについての考えをお尋ねします。
 次に、県都和歌山市にとっての新南海橋の重要性と位置づけについてお聞きします。
 新南海橋は、約四十年前より和歌山市の中心部の紀の川右岸、左岸を結ぶ大動脈として必要と多くの方面より切望され、私も十数年前、市議会議員としてこのことに取り組み、故人となられた宇治田前和歌山市長が都市計画街路として市単独でも早期建設が必要と事業着手した経過のあるものであります。県都四十万和歌山市民にとって、また和歌山の玄関口として、道路・交通網整備の最も緊急を要する事業と考えております。
 北島橋や六十谷橋を初め、紀の川北岸地域の交通の集中、停滞は、この地域の住宅開発等による交通量の増加に加え、紀の川を渡る橋梁の周辺部がボトルネックとなり、日増しに混雑してきているところであります。こうした地区の実態を踏まえ、紀の川を渡る橋梁すなわち新南海橋の一日も早い完成がぜひとも必要であると考えるのでありますが、新南海橋の整備の緊急度をどのように考えておられるのか、また橋梁部の先行着工ができないか、お尋ねしたい。
 次に、第二阪和国道開通までの供用開始についてお聞きいたします。
 市の都市計画街路事業として着手した約十年ぐらい前から、用地買収に協力していただいたまま現地を放置してあります。土地を手放した協力者は、地元の道路事情が余りにも悪く、用地協力をすれば毎日、地区内で車が対向できずに嫌な思いでバックをしなくても済むようになるし、橋ができると医大病院までも便利になり、今では助からない命でも助かるようになると、地元道路整備も願って協力していただいたのであります。水道道から紀の川堤防までの間については、既に市事業において用地を先行買収されております。現在の周辺道路網の交通混雑を考えれば、緊急の対策としてこの区間の道路の仮供用などについても真剣に検討する必要があると思うが、当局の見解をお尋ねしたい。
 以上の四点の質問について、土木部長の答弁をお願いします。
 第三に、紀淡海峡トンネル構想についてお伺いします。
 紀淡海峡トンネル構想については、昭和五十四年に「新春の夢」として仮谷知事が発表したものと記憶しております。まことに壮大な構想であり、和歌山県浮上のためにぜひ実現していただきたいと考えておりましたが、それからはや十年が経過しようとしております。昭和五十八年から日本鉄道建設公団による四国新幹線ルートの一つとしての調査が進められてきているところでございますが、この調査は現在どのような段階に来ているのか、また今後どのように見通しているのか、まずお伺いいたします。
 一昨年発表された四全総においては、「交流の促進」ということが高くうたわれており、大阪湾環状交通体系の位置づけもなされているところでございます。また、本州四国連絡橋や関西国際空港等の整備がその完成に向けて着々と進められている中で、「次は紀淡だ」という期待も高まってきており、このような情勢変化に的確に対応していくことが必要であると考えます。これだけのビッグプロジェクトは和歌山県の力だけでは難しいとは思いますが、単に構想に終わらせるのではなく、その実現に向けて今後どのように取り組んでいくのか、お考えをお聞かせ願いたいと思います。
 以上で、一回目の質問を終わります。
○議長(西本長浩君) ただいまの井出益弘君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 井出議員にお答え申し上げます。
 国土調査法に基づく地籍調査でございます。
 お話ございましたように、公共事業を推進する上においても非常に重要なものでございます。特に、基盤整備づくりやリゾート開発などが進捗している現在におきまして、これを計画的かつ円滑に実施するために、議員お話しのとおり、地籍調査の推進を積極的にやらなければならない必要を私もかねがね感じておるわけでございます。
 そうした意味から、本年度予算において地籍調査推進事業を創設いたしまして、より積極的に取り組んでおるわけでございまして、今後とも地籍調査の促進に努めてまいりたいと思います。
 具体的な問題については、農林水産部長から答弁させていただきます。
 その他の問題は、関係部長から答弁いたします。
○議長(西本長浩君) 農林水産部長安田重行君。
 〔安田重行君、登壇〕
○農林水産部長(安田重行君) お答え申し上げます。
 地籍調査事業の重要性については、ただいま知事から基本的な答弁がございましたが、地籍調査事業は、地籍の明確化を図る目的で、地籍図及び地籍簿を作成する事業でございます。この事業は、市町村が事業主体で実施するものでございます。筆界──やさしく言えば一筆一筆の土地の境界線でございます──を確定するためには、隣接する双方の土地所有者あるいは利害関係人の合意を得る必要がございます。しかし、この合意が得られないで確認ができない場合、国土調査法によって最小限の範囲内において筆界未定地として処理し事業を完了することになってございます。
 議員御指摘の下津町のケースについては、地籍調査事業が既に完了いたしておりますので、再度、地籍調査事業を実施することができないこととなってございます。県下では十一市町村がただいまこの事業を実施中でございますが、今後とも地籍調査事業実施の中で、土地所有者に地籍調査の意義並びに筆界未定地となる場合の不利益を十分説明してその理解を得るよう努め、できるだけ筆界未定が生じないよう市町村を通じてさらに指導してまいりたいと存じてございます。
○議長(西本長浩君) 土木部長松永安生君。
 〔松永安生君、登壇〕
○土木部長(松永安生君) まず、市街化区域、市街化調整区域いわゆる線引きの見直しについてお答えいたします。
 和歌山・海南都市計画地域の線引きの見直しについては、現在国と協議中であり、協議が済み次第、この秋にも公聴会を開催して早期に見直しを完了させたいと考えております。
 次に、市街化区域内の市街化されない地域の対策についてでございます。
 和歌山市の市街化区域内には、五ヘクタール以上のまとまった農地が十五カ所、三百二十ヘクタールもあります。また、五ヘクタール以下の農地を含めますと、市街化区域面積六千五百七ヘクタールのうち、その一四%にも当たる八百九十ヘクタールの残存農地があります。これらの農地などではミニ開発が進み、いわゆるスプロール現象が進行し、計画的な市街化をますます困難にさせており、これら農地等の計画的な市街地整備は極めて緊急の課題と認識しております。線引き見直しに当たってもこの問題が最大の課題であり、和歌山市に対し、逆線引きを含め土地区画整理事業や地区計画制度の導入を指導してまいりました。市ではこれを受け、昨年十月に地区計画の策定手続に関する条例を制定し、現在、地区計画の案をまとめているところでございます。今後とも、面的な整備事業の導入や地区計画制度の積極的な活用を市に指導してまいりたいと考えております。
 次に、第二阪和国道と新南海橋に関連して、まず都市計画決定後の第二阪和国道の事業計画はどうなっているかという問題でございます。
 第二阪和国道については、建設省において昨年度事業化後、測量作業を始め、現在、地質調査及び詳細設計を行っております。今後の作業スケジュールとしては、十月末ごろまでに設計を終え、地元関係者の了解を得た上で幅ぐい設置を行い、年度内に用地交渉に入りたいとしております。
 次にJRの高架については、現在、建設省、市、JRの間で設計協議中でありますが、この事業は、元の和歌山駅である紀和駅周辺を初めとする鉄道による地域分断を解消し、市街地の再生に大きく貢献するとともに、第二阪和国道が元寺町の街路に取りつくための構造上の前提条件としても必要不可欠な事業でありますので、建設省及び市当局に事業促進を強く働きかけているところでございます。
 次に、県、市の協力体制については、昨年四月、市において第二阪和国道関連建設事務所を設置し、市が主体的に取り組んでいるところでございますので、県としては、今後とも密接な連携をとりながら事業の促進に努力をしてまいりたいと考えております。
 次に、新南海橋の整備の緊急性についてでございます。
 現在、紀の川左岸側の和歌山市の中心市街地と右岸側の新市街地地域を連絡する橋梁が不足しているため、紀の川を渡る区間が交通の隘路となっており、この解消が和歌山市の交通対策上で大きな課題となっております。このため新南海橋の早期整備が必要であると考えておりますが、限られた予算の中で効率的な投資を図るため、関連する区間の用地取得の見通しがついた時点で、本橋の整備がおくれることのないよう国に働きかけてまいりたいと考えております。
 最後に、市道楠見百十一号線いわゆる水道道から紀の川堤防間の仮供用については、現在、未買収の状況から見て現状のままでは道路として供用することは困難でございます。今後、国に対し用地買収を促進し、全体の整備計画の中で部分供用が可能な区間を検討するよう働きかけてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(西本長浩君) 企画部長川端秀和君。
 〔川端秀和君、登壇〕
○企画部長(川端秀和君) 紀淡海峡トンネル構想について、調査の進捗状況及び今後の見通しについてお答えを申し上げます。
 紀淡海峡における日本鉄道建設公団の調査については、昭和五十八年から毎年調査費一億円を計上して調査を進めていただいているものでございます。今年度は、地元の御協力をいただきまして、友ケ島付近の二カ所において和歌山県側としては初めての海上ボーリング調査を実施していただくことになってございます。そういうことで、調査の大きな山場を迎えたものと理解をいたしてございます。
 次に、この構想の取り組みについてでございます。
 これまでも関係方面への働きかけを行ってきたところでございまして、阪和開発連絡協議会や関西経済界において近畿圏における次のリーディングプロジェクトとしての位置づけがなされるなど認識が高まってきてございまして、成果があらわれつつあると考えてございます。今後とも、関係府県、経済界等との連携を強めつつ、国等に対してその実現を強く働きかけてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(西本長浩君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 1番井出益弘君。
○井出益弘君 紀淡海峡トンネルについては、企画部長からなかなかいい答弁をいただきました。
 紀淡海峡トンネルが、関空、関西文化学術研究都市、明石海峡大橋に次ぐ大プロジェクトとして、いよいよ本当に具体的に実現の方向に向かってきているような感じがいたしますので、今後も県当局の頑張りを一層期待しております。
 それから、線引きの件であります。
 五ヘクタール以上のまとまった農地が十五カ所もあると。これは三百二十ヘクタールで、五ヘクタール以下の農地を含めると八百九十ヘクタールも残存農地があるということで、全然数字が減ってきていないように思います。毎年、聞いてえらい悪いんですけれども。
 ですから、逆線引きなどについても本当にやるぞという姿勢、やらないかんという姿勢を見せてほしい。そうしたら進むんじゃないかと思います。
 以前、私は、宅地並み課税というようなことも市議会でちょっと言いまして反発を受けたこともありますけれども、しかし本当に何とかしなかったら、ほうっておいたんでは進まない。
 だから、市街化促進対策について、今までにないような何か新しい施策、あるいは今までになかったようなことを今度やるという実行の姿勢を見せていただいて指導していただきたいと思います。
 最後に、公共事業として行われる国土地図の問題、新南海橋の早期完成を目指しての問題についてであります。
 土地所有者の協力が得られなければ──保留にしておかれると、協力した人たちも困る結果になります。これは実際、協力した人たちが困る結果になっておるからこういう話になってきております。知事初め大変御苦労ですけれども、県当局の市町村への絶大なる指導力を期待するとともに、今後、この進捗状況を関心を持って見守らせていただきたいと思います。
 以上、要望いたしまして終わります。
○議長(西本長浩君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で井出益弘君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
○議長(西本長浩君) この際、暫時休憩いたします。
 午前十一時十三分休憩
 ────────────────────
 午後一時五分再開
○副議長(山本 一君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
○副議長(山本 一君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 41番村岡キミ子君。
 〔村岡キミ子君、登壇〕(拍手)
○村岡キミ子君 お許しをいただきましたので、通告に従い、質問をいたしてまいりたいと思います。
 折しも、クリーンを売り物に首相に選ばれた宇野宗佑氏の、女性を金で買うという女性べっ視のスキャンダルが、国内はもとより海外にも広く問題を巻き起こしたのであります。また、多くの婦人団体などから首相に対する抗議や声明が出され、新たな怒りが沸き起こってまいりました。
 昨日、県下の我が日本共産党婦人議員団八名は、首相官邸に対し「宇野首相の『女性問題』の真相究明を求める声明」を送付いたし、県政記者クラブにおいて声明を明らかにいたしたところでございます。この問題は、首相だけに限らず、よからぬ全男性に警告を発するよき機会でもありましょう。
 この問題については時間の都合で省略しますけれども、知事は和歌山県の婦人問題企画推進本部の本部長でもありますから、婦人問題について男女平等を本当に大切にする政策を行っていく上で、今後それを十分参考にして励んでいただきたいと、心からお願いをするものです。
 さて、本論に入ってまいります。
 一九八五年、婦人労働者の反対を押し切って保護抜き・平等の労基法改悪をセットにした男女雇用機会均等法が施行されましたが、その後の婦人の実態についてお尋ねをいたします。
 今日、働く女性は年々増加し、専業主婦を七十九万人も上回っております。また、専業主婦の中で働きたいと希望している婦人が四割近くを占めていることも重要な問題であります。さらに、既婚女性の増加と高学歴、高年齢化が進んでいる状況も特徴と言えるでしょう。結婚後も働き続けている女性は、働く女性の中で六五・五%、約三分の二を占めているのであります。
 婦人労働問題研究会の調査によりますと、均等法施行後、労働協約または就業規則が変わった企業で、時間外が三二%、休日労働が一七%、深夜労働が一三%も多くなっています。大手スーパーやデパートなどが営業時間を午後七時までに延長したりしていますし、早朝からサービス業で働くなど、女性の職種も多様化しているのであります。その結果、保育所の送迎が困難となり、ベビーホテルなどの認可外保育施設に頼らざるを得なくなっている実態をつくり出しているのであります。男女平等という名のもとに、「母性保護抜き」平等の労基法が職場に働き続けられない実態をつくり出してきているのも特徴となっています。
 時間外労働、深夜労働の緩和、生理休暇が削除をされました。一方、産前産後の休暇が六週から八週に改善されたものの、賃金保障がボーナス時に差し引かれるなど、働く意欲さえ失いそうな事態が前にも増して増大しているのであります。子供を産むための道具としか思っていない母性に対する思想は、あの戦時中の「産めよふやせよ」の時代を再現させられるような感じさえしてなりません。
 先日、大阪で開かれた「『検証、均等法』知りたい、知らせたい女たちの三年」と題する集いで、さまざまな職場の実態が報告されました。
 関西の女子学生がつくっている婦人問題研究会が毎年行っている就職実態アンケートでは、企業説明会、面接における男女雇用差別の生々しい報告が出されています。
 例えばキッコーマンでは、「我が社は、古いタイプの昔からの歴史ある会社ですので、男女雇用機会均等法など受け入れられない。女の方は結婚したら退職をしてもらいます」、またあの大手建設業の大林組では、「初任給も違うし、女性には手当もつかない。昇給率も男女間全く違うので、どんどん男女の給料の差はついていきますよ」と、あたかも早くやめよと言わんばかりの説明会であったそうです。
 金融機関や証券会社、損保会社では残業は当たり前で、一般職──平コース、総合職──管理職コースと言われ、これらを選択させるコース別人事制度は一五・一六%の企業で実施され、今後さらに拡大される傾向にあると言われています。総合職を女性が選択すると、頻回にわたっての面接が繰り返され、その中で「子供を連れて転勤できるか。あんた、だんなに炊事させる気か。やくざ相手に示談の交渉ができるんか。総合職になったら子供は産むな」と言われ、それでも総合職をと頑張れば、「会社と対立する特殊な活動家とみなす」と言われる。皆さん、この一言一言に、まさしく男女差別の思想が根深く残っていることが明らかではないでしょうか。これは大阪だけの実態ではなく、日本じゅうの職場の実態でもありましょう。
 私は、この質問をするに当たり、県下の金融機関で働く婦人労働者や損保で働く数名の労働者に直接お会いをして話を聞いてまいりました。そして、さきに述べた人事問題や職場の実態とまさしく同じことが行われていることがわかりました。私も、女性の一人として怒りを禁じ得ないのであります。
 結局、コース別人事管理制度は新たな男女差別を生み出しているのであります。賃金、昇格などの差別を固定化していくものであり、共働き夫婦には「主人の出世に影響するから」と退職をほのめかしたり、内勤から外勤への配転、これを拒否すれば遠くの支店への配転、産休明けで、さあ働こうと思って頑張って出勤してくれば、これまた遠い支店に配転が強要される。こうなりますと、やめるか転勤に応じるかしかありません。結局は退職へと追い込まれ、そうして自社でつくる派遣事業団へパートとしての登録がされて、働きたければパートでどうぞという人事整理の合理化版が今つくられているのです。幹部登用においても、二千人を超す職員の中でわずか五人だけの幹部です。九百人の職員のところではゼロという実態なのです。また、年休は年に二日から三日とれればいい方です。週休二日制実施によって、月曜日から金曜日で一日二十分、勤務時間が延びています。
 このように、男女雇用機会均等法の実施によって婦人が働き続けるための保障がつらく苦しいものになってきています。
 知事、あなたはこうした県下で働いている女性の実態をどのように把握されているのか、お答え願いたいと思います。
 次に、育児休業、産休明け保育、延長保育についてお尋ねをいたします。
 今日、働くことに楽しみや生きがいを感じる女性もふえてまいりました。共働きでないと暮らせないなど、働く理由はさまざまでありますが、働き続ける女性にとって、産休明けから入所できる保育所があったらという願いは切実になっております。同時に、職場の勤務時間とかかわっての保育時間の問題も入所を困難にしている理由の一つになっていると言えるでしょう。
 働く婦人にとって、育児休業法の法制化は切実さを増していると言えるでしょう。現在、育児休業は、公務員のうち教師、看護婦、助産婦、保健婦、保母に限定されており、本県下の多くの事業所への広がりは皆無と言えるのではないでしょうか。この原因は、育児休業の事業そのものに問題があるわけではありません。働く婦人がふえる中で、労働省が内容的にも不十分なまま発足させた奨励事業、すなわち労働省の「お勧め商品」なのです。これを採用して実施する事業所にはわずかばかりの奨励金を支給して普及しようというのですから、事業所への努力義務だけであって、これでは積極的に取り入れるということにはならないのです。労働省は本年度の予算で、このお勧め商品の奨励金の消化実績が低いためとして減額をしております。新規に、育児休業普及重点使用者会議及び仕事と育児を考えるシンポジウムの開催を組んではおりますが、本年も啓蒙的な普及指導にとどまっており、既に奨励制度は行き詰まりを見ているのです。
 ですから、原職復帰、代替要員の確保、有給(三○%)、選択制の四原則を踏まえ、全産業に義務づけした法制化が必要と考えます。政府への県当局の働きかけを積極的に行っていただきたいのであります。商工労働部長の所見をお尋ねいたします。
 次に、延長保育についてお聞きいたします。
 自民党政府は、一九八五年以降、保育所など福祉施設への国庫負担率を十分の八から十分の五に減らし、三年の期限つきをそのまま恒久化しようという八九年度の予算となっているのです。その結果、地方自治体の負担はふえ、深刻な財政難をもたらし、最終的には保育料の値上げや入所基準の厳正化による保育離れ、定員割れを引き起こしているのであります。母親たちの願いである「ポストの数ほど保育所を」と長く粘り強い運動の中で、全国的にも県下的にも大きな前進を見るに至ってまいりましたが、以前にも増して保育施設の充実、条件整備が急がれなければならないところに来ています。それは、働く婦人の労働実情の変化を見てもよくわかります。週休二日制実施に伴う月曜日から金曜日までの勤務時間の延長、土曜日の半ドン保育や夕方四時ないし五時までの保育時間では働く婦人の勤務の条件に全く合っていないのです。保育所に送迎ができないなど、公的保育所を利用しにくくしている現状が改善されていない実情にあります。もはや、現在の保育要求は延長保育や夜間保育にまで進まなければならないものがありますし、公的責任で急がなければならないところに来ている実態にあります。
 本県における二百三十九ある保育施設を見てみますと、公営保育所百七十七、私立六十二、人口十万人当たりの全国水準を見ますと第二十一位となっています。県都和歌山市を見てみますと、今年度の入所希望者は六千七十名、入所児数五千八百八十七名で、百八十三名が保育所に入れませんでした。六十名定員の保育所が三カ所不足していることになります。入所できなかった子供たちは、無認可保育所や母親の実家に預けたり、一人十万円も出して個人に預けるなどしています。また、また働くのをあきらめ、やむなく退職をしている方もあります。
 続いて、産休明け保育についてお尋ねしてまいりたいと思います。
 現在、産休明け保育所の実施は、公立保育所で二施設、定員二十四名、私立保育所で三施設、定員百二十名。このことからも明らかなように、公的責任のおくれと民間依存の強い保育行政を指摘しなければなりません。しかも、公立保育所では昨年九月まで産休明け保育は全く実施されておりませんでしたが、地域のお母さんたちや共産党和歌山市議団の粘り強い運動の中で実現を見ました。父母の勤務、営業時間に見合った延長保育を実施しているのも民間保育所であり、ここにも公的責任のおくれが目立ちます。民生部長の所見をお聞かせいただきたいと思います。
 続いて、無認可保育所の運営費補助についてお伺いします。
 ゼロ歳児保育を実施している保育所でも、離乳食が完了したら、あるいは早くてもせめて六カ月過ぎていたら受け付けますよという基準によって、父母の希望はかなえられていないのであります。このように、産休明け保育や延長、長時間保育を、厳しい条件の中で父母と保母の必死の努力で続けられているのが、公的補助も援助もない無認可保育所なのです。子育てをしながら働き続けたいと願う母親たちの強い思いから、古い民家を借り、地域住民の大きな励ましと援助を受けながら、父母と保母が協力し合い、積極的にすばらしい、ともに育ち合う保育活動を発展させているのであります。
 県下に十一カ所無認可保育所がございます。このことについては、民生部長もよく御承知のことであります。働く婦人の願っている産休明け保育、安心して預けられる長時間保育所への期待はこれからも大変大きいのでありますが、何しろ認可保育所と違い、全く補助金が出ていないこと、運営にかなり無理があること、保育料がどうしても高くなること、保母の労働条件が厳しく身分保障や厚生面に何の保障も確立できないなど、かなり厳しい実情です。バザーや廃品回収、日用品販売、カンパの訴えなど常に行っております。保育時間は朝七時から夜七時ないし八時と長く、保育内容も毎日の散歩や泥んこ遊びと、多種にわたって工夫を凝らして一生懸命頑張っています。この努力が、今までこの和歌山の本当に働き続けたいと願うお母さんたちを大きく励まし、運営を維持しているのであります。保母の給料も十万円未満、専門職としては考えられないほど低賃金なのです。また、よい保育をしたいという保母さんたちの新しい知識、技術を得るための研修費もままなりません。こうした悪条件のもとで子供たちの発達を保障しようと、働く婦人の労働保障を一生懸命援助している無認可保育所に対する補助金支給を強く私は求めたいと思います。民生部長の答弁をお願いいたします。
 次に、都市児童健全育成事業の拡大と充実についてお伺いをいたします。具体的には、共働き家庭、母子・父子家庭の児童に豊かな放課後を保障する学童保育あるいは共同保育への補助事業の実現についてであります。
 ことしは、国連で子供の権利宣言が採択されて三十周年に当たり、また国際児童年十周年の記念すべき年でもあります。私は、我が家の子供を通して、子供たちの会話について、どうしてかな、変だなと、ふっとしばらく考えさせられた言葉があります。「○○ちゃん、遊べる」「遊べやん」──おかしくありませんか。私たちの小さいころの会話は、「○○ちゃん、遊ぼう」「うん、遊ぼう」「何々してからな」、こういうごく普通の、子供たちの自然な呼びかけであったと思うんです。昨今の子供たちは、おけいこ事や塾という管理社会の中で育っている姿が浮き彫りになった感を強く抱くものです。
 児童・子供たちはたくさんいるけれども、集団で遊ぶには、また友達をつくろうと思えば塾かスイミングスクールに行くしかない。子供たちの遊びも、自然の中での戸外の遊びから、ファミコンや商品を仲立ちにした室内遊びに変わり、仲間遊びから一人遊びへと大きくさま変わりしているのが特徴とも言えるでしょう。
 子供たちにとって、体を動かし、遊びは生活そのものです。遊びを通して豊かな想像力を膨らませ、お互いへの思いやりやルールを自覚し、精神的、肉体的に発達していくものです。しかし、都市部の高層住宅、密集地域で子供たちの遊び場所も制限される環境では、いや応なく室内遊びへと変化せざるを得ないのであります。だからこそ、子供たちが思い切り、感情や怒り、喜びをぶつけ合える、発散することのできる状況をつくらなければなりません。子供たちの放課後をどのように安全にするか、より豊かな生活を保障するかが今問われているのではないでしょうか。また、就労する母親も半数を超える実情になっていますから、母親の就労を保障する上でも施策が急がれなければなりません。
 さて、児童福祉法第二条は、「国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う」ことを明確にうたっております。この法の立場から、今日発生している幼い子供や児童の相次ぐ誘拐、そして悲しい事件に発展している現実に、新たな怒りを感じるのであります。
 学校が終わって両親が帰るまで、児童の安全でしかも豊かな生活を保障し得るかが問われます。その具体的事業が学童保育であり、共同保育であると思うのです。学童保育では、今日、欠けている、異年齢の子供たちが生き生きと遊び、学び、仕事をしているのです。
 政府もその必要性を認め、一九七六年以来、都市児童健全育成事業として児童クラブすなわち学童保育の補助事業を進めてまいりました。現在その数は六千百を数え、和歌山県下にも不十分ながらも二十九カ所つくられているのであります。和歌山市の場合を見てみますと、五十一小学校に二十三の学童保育──若竹学級を設置しております。担当は和歌山市の厚生課、事業主体は委託となっております。対象児童は母子、父子、両親のいない家庭の子供と枠の制限があるため、共働き家庭の子供が置き去りにされているのであります。田辺市や南部町にそれぞれ一カ所、教育委員会、学校敷地内に設置され、対象も共働き家庭の児童を保障しているのです。一方、新宮、上富田、湯浅、和歌山市に五つの共同保育所が、父母たちの並み並みならぬ努力で、古くは十一年前から開設をされ、今日まで続けられているのであります。五つの共同保育所の中で自治体からの補助金が支給されているのは和歌山市を除く全部で、金額の差はあるにせよ助成援助が行われています。

 本県の学童保育の設置数は近畿各府県とは比較にならないほど少なく、全国でも最もおくれているだろうと思われます。全国的に児童の絶対数が減っているにもかかわらず、学童保育の希望者は年々増加しているのです。その証拠に、現に学齢期が近づいてきますと学童保育のある地域に引っ越していく共働き家庭も少なくありません。多くの共同保育所は、場所の確保に頭を痛め、運営維持に大変な努力をし、また指導員の確保においても賃金を初めとして労働条件の不安定が大きな原因となって難しいなど、深刻な悩みを持ちながら頑張っています。こういった実態を直視していただきたいと思うのであります。
 ここで、教育長及び民生部長にお尋ねをいたします。
 第一に、県下の小学生の共働き家庭、父子・母子家庭の実態をどのように把握しているのか、お聞かせください。
 第二に、滋賀県の大津市などは公設民営で年次計画を立て、学童保育の設置を進めている自治体もあるようですが、本県においても、子供たちの放課後の生活保障と父母の就労の保障をする立場で、一小学校区に一カ所以上の学童保育所を設置されることを心から願うものです。そして、学校の空き教室の積極的な活用などの方法も検討されることをお願いいたします。
 第三に、あわせていまだ学童保育の制度が、文部省や厚生省の拒否する態度によって確立されておりません。国に対し制度確立を要請していただきたいと思うのであります。御所見をお伺いいたします。
 学童保育は子守ではありません。ここに、共同保育での子供たちの変化を紹介し、学童保育に対する理解を深めていただきたいと思うのであります。
 四年生の男の子。一年生から入所し、二年生の一学期ごろまで目に余る乱暴をやっていました。だれかれとなく殴る、ける、つばを吐きかけるなど、自分の気持ちを言葉に表現できず、暴力に訴える毎日、彼の暴力のたびに児童全員で話し合いを繰り返し、父母とも多くの話し合いを繰り返して、一定の前進を見ることができました。また、登校拒否をしている子供たちが、指導員の話しかけや訪問などによって、心をわずかずつ開き始めていること、いたずらで手をやいている子供の入所で、子供たちがみんなで話し合い、自分の存在、人格が認められたことによっていたずらも少なくなり、生き生きして勉強にも意欲が見られるようになったことなど、この事例から学び取ることができるのではないでしょうか。
 要するに、今、県や市町村が何を大切にするかが問われています。将来、和歌山を支える子供たちを地域と県行政がともに守り育てるため、学童保育(共同保育)があることをもっと認識する必要があります。和歌山に住みたいという県政にするのか、それともゴーストタウンにしてしまうつもりなのか、しっかり見きわめてほしいと思うのです。運営に行き詰まりながら一生懸命続け、発展させようと頑張っている、大きな役割を果たしている現存する五つの共同保育所に対し、思い切った運営費補助の支給と増額を措置されることが必要と考えます。積極的な答弁をお願いいたします。
 次に、安心して渡れる交差点対策を中心に交通事故対策についてお伺いいたします。
 私の調査によりますと、昨年・一九八八年の和歌山県下の交通事故による死亡者数は、一九七五年以降で最高の百四十一人という悲しい記録を残しました。中でも若者の交通事故による死亡が多く、お年寄りや子供など弱者の犠牲も多くあったことも重視しなければなりません。「一○○の指標からみた和歌山」によりますと、昭和六十二年の交通事故死亡者数は全国第十一位、交通事故発生件数はワースト八位であります。この発生件数のうち車両同士が圧倒的多数を占めておりますが、人対車両が八・四%、約一割近くになっていることは大きな問題であります。こうした人対車両事故の中心はどこにあるのかを見てみますと、昭和六十三年中の交差点による事故件数は三千五十四件で、交通事故全体の四七%を占め、死亡者数は三十二人、全死亡者数の二二・六%、負傷者数三千七百八人、四五%となっております。道路別に交差点事故を見てみますと、国道の交差点が七百三十七件、二四%、県道の交差点が九百十一件、二九・八%、市町村道の交差点が千三百六十二件、四四・五%となっております。
 そこで、県警本部長にお尋ねをいたします。
 昨年、本県の交通事故による死者数は最悪の百四十一名、六月二十七日の産経新聞によりますと、二十六日までの県下の交通事故は三千四十九件、昨年の同期は三千十四件で、事故件数でも三十五件増、うち死亡者数五十八件で六十二人、昨年同期五十二件、六十二人、六件増で死者数は同じに達したと報道されています。皮肉にもこの二十六日、六十一、六十二人目の十八歳の若者の事故死がありました。本当に心痛にたえないのであります。
 こうした重大事態を踏まえ、その問題点を含め、原因と今後の対応策をお聞かせください。同時に、交差点事故を防ぐ上で、各交差点における対策についてお答えをお願いするものです。
 続いて、交通安全施設整備についてお尋ねを申し上げます。
 一九八六年から一九九○年までの第四次五カ年計画は、あと二年を残すだけとなりました。過去三年間の取り組みと実績、残された二年間における計画、実践について、具体的に土木部長及び県警本部長にお答えいただきたいと思うのであります。
 最後に、健全な青少年の育成についてお尋ねをいたします。
 最近、青少年を取り巻く社会的環境は青少年たちに決してよい影響を与えているとは言えません。そこで、青少年のシンナー乱用についてお伺いをしたいと思います。
 本県の六十三年の少年非行の概況で見てみますと、薬物乱用非行のうちシンナー乱用が大多数であることを知り、改めて驚いております。
 私の居住する地域で起こっているシンナー問題にかかわり、子供たちの健康と将来を大変心配しているのであります。
 昨年四月か五月ごろだったでしょう。知り合いの方から、神社の境内で中学生と思われる子供たちが五、六人シンナー遊びをしているように思う、どうしたらよいだろうかと相談を受けたのであります。子供たちが帰った後、境内に行ってみますと、シンナーを吸うのに使ったであろうと思われる幾つものビニール袋が散らばっていました。場所は振興住宅地の一角にある神社でありますが、近くに家は一軒しかなく、人目につかない、こんもりした木に囲まれた絶好の場所だったのでしょう。学校の終わった四時ごろから夕方にかけて、集団のときもあれば、二人から三人のときもあったようです。中学校にもそれとなく連絡をとり、先生方の巡回もお願いをいたしました。私どもも、時々、境内に二人ないし三人連れ立って状況把握に行ってもまいりました。子供たちは、毎日神社に来るわけではありません。警察への連絡も行いましたが、なかなか私たち住民の期待にはこたえていただけなかったのです。七月ごろまで続いていたのでありますが、その後、子供たちの姿も見えなくなり、喜んでいたのです。
 ところが、本年五月、今度は十八歳前後と思われる子供たちが同じ神社の境内に時折来るようになりました。子供たちが来なくなってほっとしていたのに、確実にシンナーを吸っているとは言い切れないけれども、シンナーが入っていたと思われる瓶を持っている、一日二回も乗用車や単車、自転車で来ている、来るたびに見る顔は青白く、まるで元気がない、子供たちが来ている日は胸が痛くなる、また来るのではないかと気が気ではないと、知り合いの方は不安な日々を過ごしておられます。
 私どもの自治会、役員会においても、早く何とかしなければ大変なことになるのでは、地域でできることは何なんだろうと、心配をいたしている現状であります。警察の方々の巡回の強化を図っていただいてはおりますが、警察の定期的な巡回や住民によるシンナーから子供を守る積極的な運動があったとしても根本的解決にはならないと思うのです。現在の社会情勢の中で、青少年の生きがいに対する背景の反映が大きいと思うのです。
 子供たちは、友人関係や単純な好奇心から吸う気になるのでしょうが、一度経験するとやめられなくなり、ついに常習者となってしまいます。常習者の骨はもろくなり、細く、やせこけてしまうと言われています。すぐ息切れがし、やたらにつばを吐き、食欲もなくなり、体もやせてしまう、そして、ラリる状態になると見境がなくなり、繰り返すうちに精神状態もおかしくなり、廃人化し、死に至る事例もございました。以前、大阪茨木市の中学校の音楽室の戸棚でシンナーを吸った生徒二人が窒息死したショッキングなニュースも報じられていました。このような事態に達しない早い時期に発見することが大切ですし、早期対策の具体的取り組みが打ち出されなければなりません。
 県警本部長に伺います。
 シンナー事犯についての現状と、ここ数年間の推移及び特徴とその対策をお聞かせください。シンナーの入手経路についてもお聞かせください。
 最近の状況を聞きますと、暴力団あるいはシンナー生産者などから大量に入手しているということも聞いているのです。何といってもその入手経路を断つこと、これが根本問題だと思うのです。県警本部長、シンナーの主たる入手経路の調査は行われているのでしょうか。そして、事犯をなくしていく対策はどのようにされてきたのか、お聞かせ願いたいと思います。
 これで、質問を終わります。
○副議長(山本 一君) ただいまの村岡キミ子君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 村岡議員にお答え申し上げます。
 県下に働く女性の実態をどのように把握しているかという点でございます。
 働く女性は年々増加しており、我が国の経済社会の発展に大きな役割を果たしていただいているわけでございます。本県においても、女性の有業者は農林業を含めて二十一万一千人ございます。うち、十一万九千人が雇用されて働く女性でございます。
 お話ございましたように、女子労働者の地位向上の問題、また福祉の向上については、本県にとっても大変重要な課題であると考えておるわけでございます。男女雇用機会均等法等の趣旨を踏まえまして、国と十分な連絡をとりながら制度の普及等を進めてまいりたいと考えておるわけでございます。
 具体的な数値等については、担当部長から答弁いたします。
○副議長(山本 一君) 商工労働部長天谷一郎君。
 〔天谷一郎君、登壇〕
○商工労働部長(天谷一郎君) 具体的な数値でございます。
 県内の女子有業者は、就業構造基本調査によりますと二十一万一千人で、全有業者の四一%を占めている状況にございます。また、この二十一万一千人のうち、三十五歳以上の中高年齢層が七二%を占めており、女子有業者の増加とともに、中高年齢化が進んでいる状況にあり、また近年、特に女性のパート、アルバイト労働者が増加の傾向にございます。
 今後とも、働く女性のための育児休業制度、女子再雇用制度等の普及促進はもちろんのこと、パートタイム労働者の労働条件の明確化、労働時間、雇用管理の適正化等、国との連携を深めながら啓発等を進めてまいりたいと考えてございます。
 それから、育児休業制度の法制化の問題でございます。
 昭和六十一年施行の男女雇用機会均等法において、育児休業制度の実施について努力するよう事業主に対し求めてございます。県といたしましては、国と十分連携をとりながら、当面はこの制度の普及について積極的に啓発指導を行ってまいりたいと存じます。
 なお、法制化の問題については、今後の課題として、県と労働省の出先機関とで構成している労働者福祉対策連絡協議会の場において協議を重ねてまいりたいと考えてございます。
○副議長(山本 一君) 民生部長高瀬芳彦君。
 〔高瀬芳彦君、登壇〕
○民生部長(高瀬芳彦君) まず、保育所の問題についてお答えしたいと思います。
 保護者の就労形態の多様化に対する保育ニーズにこたえるため、障害児保育、乳児保育の充実を図るとともに、本年度から特に長時間保育促進事業を実施することといたしております。そういうことで、保育時間の延長の改善により、今後、かなりの保育ニーズにこたえられると考えてございます。今後とも努力をしていきたいと考えてございます。
 また、保育に欠ける児童は、従来より認可保育所で保育するものであると考えてございます。現在、これらの児童の措置については、現在の認可保育所の中で対応できるものと考えてございます。
 なお、無認可保育所については、認可保育所に適用なるよう措置権者である関係市町村を指導しているところでございまして、現時点では助成することは考えてございません。
 次に、小学生の共働き家庭、父子・母子家庭の実態把握の問題でございます。
 昭和六十年国勢調査時点で、夫、妻ともパート、内職等を含め就業している家庭数は十万九千二百三十世帯、夫、妻とも雇用されている世帯は五万一千十世帯でございます。母子家庭数は、昭和六十二年の実態調査時点で九千七百十一世帯、うち小学生を持つ世帯は二千八百三、父子家庭は、昭和五十六年の実態調査では千五百世帯、うち小中学生を持つ世帯は六百十五となっています。なお、父子家庭の実態調査については検討中でございます。
 次に、学童保育の問題でございます。
 働く女性の増加、核家族化に伴い、今後、留守家庭児童の増加が予想されてございます。民生部といたしましては、関係諸機関と連携の上、学童保育の実態把握に努めるとともに、施策の検討を進めてまいりたいと考えてございます。
 当面は、厚生省が実施している都市児童健全育成事業の周知徹底を図るため、今後も指導を強力に進めてまいりたいと考えてございます。なお、補助条件の拡大充実を国に要望していきたいと思います。また、子供のための地域組織である母親クラブの組織強化も同時に図ってまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○副議長(山本 一君) 土木部長松永安生君。
 〔松永安生君、登壇〕
○土木部長(松永安生君) 安心して渡れる交差点の対策のうち、交通安全施設整備の三カ年の実績と今後の計画についてお答えいたします。
 昭和六十一年に策定された第四次特定交通安全施設等整備事業五箇年計画において、本県の総事業費は七十億八千百万円で、その主な内容は自歩道整備七十一キロメートル、交差点改良二十五カ所、その他、道路標識、道路情報板の設置等でございます。六十三年度までの事業実績は、事業費四十二億一千七百万円をもって、自歩道整備三十一・二キロメートル、交差点改良六カ所、その他、交通安全施設の整備を行ってまいりました。
 平成元年度以降の主な残事業としては、自歩道三十九・八キロメートル、交差点改良十九カ所がございます。こうした残事業は、自歩道では人家が連檐している地域などであり、また交差点改良ではいずれも家屋の移転を伴うことなどから、用地の確保が大変難しいという問題を抱えておりますが、今後とも歩行者の安全確保のため一層の努力をしてまいりたいと存じます。
○副議長(山本 一君) 教育長高垣修三君。
 〔高垣修三君、登壇〕
○教育長(高垣修三君) 学童保育の拡大と充実につきましてお答えを申し上げます。
 本県における共働き家庭等の実態については、ただいま民生部長からお答えをしたとおりと、私どもも把握をいたしてございます。
 子供にとりまして、遊びというものは、学習とともに成長発達する要件でございます。また、子供の心と身体を生き生きとはぐくむためには安全な場所の確保が必要であります。
 学童保育の必要性については、私どもも理解をいたしているところでございまして、今後、教育の観点から実態の把握に努めるとともに、関係機関とも十分連携をとってまいりたいと考えているところでございます。
 また、今後の生徒減少に伴う、いわゆる空き教室等の利用につきましては、法的な制約も一方ではあるわけでございますけれども、必要が生じた場合には文部省等、関係機関とも十分協議をしてまいる所存でございます。
○副議長(山本 一君) 警察本部長井野忠彦君。
 〔井野忠彦君、登壇〕
○警察本部長(井野忠彦君) まず、本年の交通死亡事故の状況であります。
 昨日現在六十三人を数え、昨年同期を一人上回る結果となっております。昨年は百四十一人の死亡事故が発生したわけでありますが、このように近時、死亡事故が増加している背景には、運転免許保有者数や車両の増加、社会経済活動の活発化等が考えられ、全国的にも事故が増加しているところであります。
 また、その直接の原因は、飲酒、無免許、スピードのいわゆる交通三悪と言われるものが全事故の約六○%を占めているほか、信号無視、居眠り運転、わき見運転等も目立つのであります。中でも、若者の無謀運転による死亡事故が特に目立っております。
 このような現状を踏まえ、警察といたしましては事故抑止のため各種の対策を積極的に推進しているところであります。主な対策として、一つは、若者の安全運転意識向上のための組織化や、運転者に酒を勧めない交通安全新生活運動の推進等、地域に根差した啓発活動を進めております。その二は、悪質、危険性の強い違反に対する取り締まり等、街頭活動を強化しているところであります。
 次に、交差点事故を防ぐための具体的な対策であります。
 歩行者用信号灯機の新設、バイク等の二段停止線の設置、主要交差点における街頭監視活動等を行っているところであります。
 続いて、交通安全施設等整備事業五箇年計画については、交通弱者の保護、都市交通機能の確保等を基本方針として推進中であり、過去三年間に二十二億円余を投じ、信号機の系統化、高度化、交通管制エリアの拡大等の整備を図ってきたところであります。今後、引き続き、計画事業の目標達成を目指し努力してまいる所存であります。
 次に、シンナー事犯についてであります。
 まず現状でありますが、昨年中に検挙、補導した少年は四百六十一人であります。ここ五年間の推移を見ますと、一番多い年は六百八十人、少ない年は四百三十三人で、その平均は五百二十七人となっており、昨年は平均を下回っている状況にあります。
 昨年の特徴を見てみますと、有職、無職少年が全体の七六%、中学生、高校生等の学生が二四%であります。学生の中では中学生が減少傾向にあります。男女別では男子が七九%、女子が二一%となっております。乱用の形態では、グループによるものがほとんどでありますが、最近、吸入用具としてビニール袋にかわってジュースの空き缶を使用する者が多くなっております。
 次に防止対策といたしましては、シンナーの有害性、危険性の啓発活動や相談活動を進めているほか、シンナー遊びが予想される場所等に対して街頭補導活動を強化しているところであります。
 次にシンナーの入手先については、これまでに検挙、補導した都度追及しておりますが、それによりますと、大型量販店などシンナー販売店からの購入、自宅や勤務先からの無断持ち出しなどとなっております。
 こうした入手先に対する対策でございますが、シンナーは工業用品として日常生活の中で広く使用されており、難しい問題もありますが、警察といたしましては違法な販売行為、いわゆる事情を知った販売行為でありますが、これに対する取り締まりを強化しているところであります。
 以上でございます。
○副議長(山本 一君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 41番村岡キミ子君。
○村岡キミ子君 五秒という残り時間ですので、民生部関係については改めて厚生常任委員会で追及をさせていただきたいと思います。
 私は文教委員会に所属をいたしませんので、一つだけ要望としてお願いをしておきたいと思います。
 学童保育の問題ですが、留守家庭児童もやっぱり学校の子供だということを認識してほしい。そして、一人一人の放課後の子供の生活実態を把握して、一人一人の子供たちに今何を保障していかなければならないのかをお母さんやお父さんたちとともに考えて追求する学校であってほしいと願っています。生活を保障するため、民生部と連携を深め、学童保育を確立するために積極的に努力をしていただきたいということをお願いしておきたいと思います。
 終わります。
○副議長(山本 一君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で村岡キミ子君の質問が終了いたしました。
○副議長(山本 一君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 17番堀本隆男君。
 〔堀本隆男君、登壇〕(拍手)
○堀本隆男君 先輩議員、同僚議員の御高配にあずかり、三回目の登壇の機会を得ましたことを感謝申し上げます。
 去る六月二十三日、仮谷知事には、串本町大島架橋促進大会に御出席いただき、新春の記者発表に引き続き大島架橋の決意を再び表明してくれましたこと、心から感謝申し上げます。同時に、六十二年二月議会において大島架橋の請願を採択していただきました当議会の先輩議員の皆様にも、厚くお礼申し上げます。
 おかげさまで、本州最南端地方にも展望が開けてまいりました。災害時や夜間医療などの民生上の安心と観光、リゾート開発における一大拠点としての可能性が生まれ、地域住民の喜びはひとしおで、この上は何分にも一日も早い完成を願っており、なお一層の御指導と御支援を賜りますよう、伏してお願い申し上げる次第であります。
 さて五月八日、県の悲願でもありました関西国際空港埋立用土砂の搬出が和歌山市加太地区において始まりましたが、これによりコスモパーク加太計画も実現に向けて大きく弾みがつきました。また五月二十六日には、国際的な海洋性レクリエーション基地を目指した和歌山マリーナシティの起工式が行われました。
 仮谷知事は、年頭において本年を「リゾート元年」と位置づけ、現在、二十一世紀に向けて和歌山の活性化、県勢浮上のために積極的に取り組まれていることは、まことに心強い限りでございます。そうして今、県民意識の中にも国際化に向けての認識が年々高まってきております。私も、和歌山県の飛躍発展はいよいよこれからだなと思うとき、万感胸が躍る思いがいたします。そして、これからの町づくり、地域づくりは、それぞれ個性を十分に生かしつつ、それぞれの地域に合った二十一世紀にふさわしい文化都市づくりを目指していくことが大変重要であると考える次第であります。
 本県には、豊かな自然を背景にした古い歴史と恵まれた文化遺産があります。空海が開祖した高野山は、真言密教の根本道場として、平安初期、天台宗の比叡山とともに山岳仏教の拠点として広く信仰を集めてきました。山内には金剛峰寺を初めとして百二十余の寺院と約五十にも及ぶ宿坊があり、日本で唯一の珍しい山内町を形づくっております。また、根本大塔や伽藍、御影堂などの建造物、奥ノ院に続く約二キロメートルの参道と二十五万の墓石など、物心両面にわたり、現在においても多くの信仰を得ているところであります。
 一方、紀南には熊野三山があります。熊野の地は、その地勢からか古くから神秘の地と見られ、奈良時代末期には仏教者がこの地で修行し、また平安初期には修験の道場が開かれたと聞いております。その後、熊野信仰は、宇多法皇が本宮、新宮に行幸されたのをきっかけとして院政時代より流行し、一○九○年の白河上皇の行幸より急激に隆盛をきわめるようになり、そして「蟻の熊野詣」と言われるほど多くの参詣者を出したのであります。
 これらを初めとして、本県にはまだまだ多くの文化遺産が残されております。また、文豪・佐藤春夫や南方熊楠、華岡青洲などに見る傑出した人材とそれをはぐくんできた豊かな人情とふるさとがあるわけであります。つまり、文化的風土も豊かであります。私たちは、こうした先人たちが築き上げてきたこれら多くの文化資源を決して埋もれさせてはならない。また今後、これらの資源を積極的に活用することにより、個性ある地域づくりに役立てていかなければならないと考える次第であります。
 新宮市では、佐藤春夫記念館が完成し、十一月の開館に向けて現在、募金活動を行っていると聞いております。また県では、南方熊楠記念館の整備にも積極的に取り組んでおられるとも聞いております。こういった運動が官民にわたって繰り広げられることは大変好ましいことと思っている次第であります。

 しかしながら、ここで私たちがこれから真剣に考え取り組んでいかなければならないのは、二十一世紀にふさわしい和歌山の文化をいかに創出していくのかということだと思うのであります。私は、二十一世紀に向けての和歌山の文化の創出は、都市づくり、町づくりにあると思います。県の長期総合計画でも、来るべき二十一世紀は長寿化、国際化、高度情報化、技術革新の社会だと述べております。また、国民の自由時間の増大や物から心、量から質などの価値観の変化が起こると予測しております。
 皆さん御承知のとおり、関西国際空港は二十四時間世界に開かれた空港として平成五年春に開港予定となっております。和歌山市を例に考えた場合、JRなどの鉄道とあわせて、空港から直結する高速艇や高速バスの導入を考えた場合、当然、交通機関は空港に合わせて二十四時間稼働となります。そうすると、それに必要なバスターミナルの建設や高速艇が接岸できる場所の整備、あわせてこれらの人々の受け入れ態勢や設備が必要となってきます。つまり、二十四時間開かれた町づくりを考えていかなければなりません。しかし現在、和歌山市においてそうした動きがあるとは聞いておりません。
 また最近、他府県を旅行して感じることは他府県の県都の立派なことであり、本県のことを寂しく思うのは私一人だけでありましょうか。そして、これは何も和歌山市に限ったことではなく、県全体が町づくりを考えていかねばならないときだと思うのであります。地方へ行きますと、学校でも鉄筋の校舎が建っています。役場はといいますと、これまた鉄筋の立派な建物が建築されています。他の公共施設も同じです。これらの建物は、東京のど真ん中に移しても決して恥ずかしくない立派なものです。私は、これは「地方の東京化」だと思っております。木造の町があってもよいのではないか。学校も役場もすべての公共施設が木造でできている、私はそれが一つの個性だと感じるわけです。
 これは一つの例示でありますが、それが固有の文化にまで昇華されて風貌のある町になると思うのであります。それぞれの地域が個性を持ち、遊び心を持ち、生活をしていても楽しくなるような、そんな町づくりが必要ではないか。
 ここで知事にお尋ねしたいのは、県としてこうした町づくりを県下全体に広めていくことを考えておられるのかどうかということであります。県都である和歌山市などでは、県が十分イニシアチブをとりながら文化都市づくりをしていかなければならないと思いますが、御所見をお伺いいたします。
 次に、観光問題に移ります。
 さて、観光の振興と申しますと、観光資源や施設などハード面の整備以上にソフト面の整備が重要視されます。さきに三年ぶりに開催された紀伊半島知事会議(三県サミット)におきまして、TAP90''s観光立県推進地方会議の誘致を図ることが和歌山、奈良、三重
の三県知事の間で合意されたと聞いております。この観光立県推進地方会議は、地域の活性化と国際化を目指す観光立県を推進するため、運輸省が昨年、九○年代観光振興行動計画を策定し実施しているものでありまして、中央会議と地方会議があり、関係者の創意と知恵を結集して観光振興に関する具体的施策を提言し実行に移すもので、毎年、数地域を選定して開催する考えのようであります。いわゆる観光国体とも言われ、本年からスタートした地方会議は既に二回開催されていると聞いております。
 我が和歌山県においても、仮谷知事は従前より観光立県を強く推し進められ、観光を県を支える重要な産業と位置づけ、積極的に取り組まれておりますことに敬意を表する次第でありますが、六十三年一年間の県内への観光客総数は二千四百六十八万五千人と六十二年に比べ二・七%減で、残念ながら、県内への観光客数は毎年ほぼ横ばい状態という域を脱してはおりません。本年は、県当局の大変な御努力のおかげで、待望久しかったJR特急くろしおが新大阪、京都へ七月二十二日から乗り入れることとなり、さらに同日、日本エアシステムが東京─南紀白浜間の増便と明るい材料が並びましたが、しかし二十一世紀を展望した観光への新たな展開を進める土壌を今から形成していくことが大変重要であると考える一人であります。
 言うまでもなく観光は、地域経済に広範な波及効果を与え、さらに余暇、レジャーは国民生活の上で大きな地位を占めてまいり、特に最近大きなうねりとなっているリゾートとも密接不可分の間柄にあり、今後ますます大きな役割を果たすことが期待され、本県ではとりわけ重要となってまいります。
 そこで、知事が紀伊半島三県で来年誘致を図ろうと取り組んでおられる観光立県推進地方会議の誘致の見通しと観光振興を図る上での位置づけについて御所見をお伺いいたします。
 さて、和歌山県は関東大都市圏の消費者からどのようなイメージを持たれているのか。資料は若干古くなりますが、日本経済新聞社・日本地域経済研究所が昭和六十二年に行った「地域・都道府県・観光地イメージ調査」に詳しく分析され、その一部は日経地域情報ナンバー33号、34号に紹介されております。なぜ私がこれを取り上げたのかと申しますと、日本の中心地であり巨大な消費市場である東京圏のどのくらいの人々が和歌山を知ってくれているか、どのように和歌山を理解し、関心を持ってくれているか、県及び県民にとって物産なり観光なりの戦略を立てる上で極めて重要であると考えるからであります。
 調査は、首都圏から三千人、京阪神圏から二千人を対象に、各府県のイメージ調査、及び全国の代表的な観光地百カ所についてのイメージ調査を実施しております。
 まず都道府県についてのイメージでは、和歌山県は近畿圏の人々には高い得点でありますが、首都圏ではまことに低い。例えば、「自然の景観や温泉に恵まれている」は二十四位、「温かい人情に触れられる」は四十二位、「親しみがある」は三十六位、「経済的に豊か」は三十一位、「話題性のある催しや行事が多い」は四十二位──つまり、少ないと受けとめられておるわけです。「新しい物産をよく見かける」は三十二位、「PR、宣伝に熱心」は四十七位──最下位であります。
 次に、全国の代表的な観光地百カ所のイメージ調査では、本県からは南紀白浜が選定され、この調査でも近畿圏の人々は白浜に対し高い評点を与えております。これに反し、首都圏では著しく低い順位であります。全部で十二の調査項目があります。例えば、「行ってみたい」は六十一位、「三泊以上滞在しても飽きない」は五十一位、「マスコミ、広告で新しい情報を得やすい」は六十位、「自然の景観や温泉に恵まれている」は三十四位、「名所旧跡が多い」は七十一位、「話題性がある催しや行事が多い」は九十二位と、大変低いのであります。観光地全体としては京都、伊豆、熱海が高く評価されております。
 すなわち、この調査の結果から見ますと、本県は首都圏の人々からはPR不足で余り知られていない県、話題性のある催しや行事が少ない県ということになるわけであります。つまり、地理的に遠隔であるために知られにくい面と、これまでの本県のイメージ作戦が十分に浸透していないのではないかという面とが考えられるわけであります。今はやりのCI戦略──コーポレート・アイデンティティーが、民間も行政もともに関東への売り込みが十分でなかったと言えるのではないでしょうか。
 一つのケースを申し上げますと、これは私の勝手な見方でございますが、一昨年、串本町観光協会の役員の皆さんと東京及び伊豆半島の観光施設整備状況を視察してまいりました。その際、東京池袋のサンシャインビルで開催された全国物産展を見学しました。
 全国の都道府県が自慢の物産を山積みにし、大勢の売り子をそろえ、活気に満ちて多くの見物人があふれ、さすがに東京の人の集まりはすごいと感じました。ところが、和歌山県のコーナーに来てがっくりしました。展示品が全く少ない。売り子も二、三人しかおらず、同行の役員の皆さん方から、異口同音に「これはひどい。県は一体どうしているのか。多少の出費は覚悟で、もっと参加しないことには県が恥ずかしい」というような声が聞かれました。つまり、東京で売らんかなの積極姿勢が見られないのはまことに寂しい限りでありました。
 聞くところによりますと、近年、東京での各種の物産展への和歌山からの出品が著しく少なくなっている。東京では出展経費がかさみ赤字がきつい等の事情が重なって希望者が少ないとのことでありますが、「貧すれば鈍する」の例えどおり、これでは和歌山のイメージは低くなるばかりと言わざるを得ません。ただし、去年、東京ドームにも行ってまいりましたが、ドームでの物産展は本県もかなり頑張っておりました。ことしは、もっと多くの出品を期待いたしたいのであります。
 そこで商工労働部長にお尋ねいたしますが、観光における首都圏でのPR活動に費やす年間予算額は幾らでありますか。県観光協会の予算も含めてでも結構であります。それと、主な事業内容をお伺いいたしたい。また、その額が近畿の各府県と比較してどうか。さらに、本県東京事務所に観光照会に来る人は年間何人か、電話照会は何人か。特にお伺いしたいのは、東京都以外の関東近県への観光宣伝活動の内容についてであります。
 ここで一つの提案を申し上げたいのでありますが、日経のこの調査とは別に本県が独自に調査を行ってほしいのであります。それは、今後の本県の首都圏作戦施策──観光に限らず、物産、流通等々についても基本データとなること、さらに県独自調査そのものがPR活動の役割を果たすと考えられるからであります。御所見をお願いします。
 さて、この日経の調査で気にかかりますのは、話題性がある催しや行事の少ない県という本県のイメージであります。南紀白浜もそうであります。
 先般の連休に、島根県松江市で開催された全国菓子大博覧会──これは、四年ごとに主催地を変えて開催されております──を見てまいりましたが、大変な盛況でありました。島根県菓子工業組合と松江市の共催でありますが、先日、結果を聞きますと、目標入場者五十万人、採算入場者四十五万人を設定し、最終入場者七十三万人余と、大成功をおさめております。大成功と言えるのは、単に黒字経営を指すのではなく、イベントによる経済波及効果が非常に高かったということであります。松江市内の宿泊、県内観光地宿泊の伸び、お土産品の売り上げ増、その他各方面で潤ったということであります。特に成功の一つの原因に、博覧会実行委員会の中で入場者誘致促進委員会をつくり、その大変な活躍がこの成功に結びついたとお伺いしました。
 一方、このように成功したイベントとは別に、北海道の「食の祭典」のイベントのように六十億とも七十億とも言われる赤字を背負ったところもあり、全国的にイベントの乱立もあって、一時のように開催すれば成功する時代は過ぎ、よい企画でないと成功が難しくなってまいりました。イベントの運営が極めて難しい時代に入った、下手をすると責任問題も出るかもしれないということで慎重になり過ぎたり、ちゅうちょするようではその段階で地域の活性化への動きが静止してしまうことになりかねません。
 本県においても、かねてよりビッグイベントの研究をされており、知事は昭和六十二年一月に世界温泉博のようなものを今後検討していくと述べておられます。南紀白浜を初め龍神、勝浦、本宮と紀南の温泉地はかなり期待をしてございます。南紀白浜空港のジェット機化により紀南は関東圏に飛躍的に近くなり、こうしたイベントを契機として一段と活性化が期待されるわけであります。地域資源や地域の特性を生かしたユニークなイベント、それに地元の熱意が成功の重要な要素と言われております。また、こうしたイベントのもたらす効果が、本県のイメージアップを初め観光の振興、県民の連帯意識の向上など、さまざまな分野に及ぶと考えます。先日、中村千晴議員からもビッグイベントの見通しについて私と同趣旨の質問がございましたので、実施に向け積極的に対応されるよう、これは要望といたします。
 さて、観光資源の中でも白砂青松・松島と言えば典型的な純日本風景で、日本人の心の郷愁をかき立てます。最近、リゾート基地の建設で巨額の資金を注ぎ込んで、なぎさの復活と白砂青松をつくる動きが各地であるのもうなずけるところであります。松江市で行われた全国菓子大博覧会を視察した帰り、出雲大社にお参りをしまして、境内の老松と背後の全山の松の美林に感心いたしました。大社の荘厳さを引き立てて余りあります。お聞きしますと、大社では一本一本の松の保存に注意を傾け、消毒に大変な出費を行っているとのことであります。その努力が、天下に出雲大社を有名にしているわけであります。
 前置きが長くなりましたが、御承知のとおり、すさみ町から串本町にかけての枯木灘県立公園はフランスのコートダジュールに匹敵する日本有数の海岸美と言われております。中でも江須崎の黒島は、まさに絶景であります。ところが、ここ数年、この島に松くい虫が猛威を振るい、黒島が「赤島」となってどんどん松が枯れ、見るも無残に残り少なくなってまいりました。
 町で聞きますと、農林水産部の松くい虫の補助をもらって消毒を行っているがなかなか防止できないとのことであります。一つは技術的に困難と限界があるためで、島であるゆえに船を特別に借り上げ、ホースを長くつないでも足場が悪くて危険で十分に消毒が届きにくい、二つは資金的に持ち出しが大変厳しく、とても補助以外に何回も消毒できないし、ましてヘリコプターをチャーターしてなど無理であるとのことであります。しかし、このまま放置しますと、ここ数年で確実に一本の松も残らなくなってしまうでしょう。見るも無残な島になると思います。道はあります。あると思います。本当にこの観光資源を貴重なものとして保存する決断を当局でしていただけるなら、出雲大社の松のように残すことができます。
 一つの提案をいたしますと、千葉大学で開発したと言われる一本一本の松の根元に農薬を注入する方法で、予防の確率が極めて高く、既に県内の造園業者が行っております。ただ、難点は経費が若干高くつくということであります。それでも、残り少ない松、しかも小さな島であり、むちゃな出費とはならないと思います。本県、特に紀南は観光とリゾートに生存がかかっている、貴重な観光資源を守る努力と出費を惜しんではなりません。当局においても、一度見に行っていただきたい。寸時も待てない状況にあります。
 そこで、商工労働部長にお尋ねします。
 こうしたケースに、農林水産部の補助とは別個に観光資源の保存という視点から特別保護区域を設定し、新規に補助金を出せないものかどうか。この島に新たに松を植え、育て、すぐれた枝ぶりをつくるには最低百年の年月と膨大な経費がかかることを考えたとき、惜しんではならない補助金だと、私は声を大にしたいのであります。
 次に、観光資源の保存と同時に、新しい景観の創出も本県にとって極めて重要な事業であります。魅力あるポイントを一つずつ積み重ね、トータルとしてすばらしい和歌山県のイメージをつくり上げることが大切であります。
 国道四十二号は、JR紀勢線と並んで本県の魅力ある景観を余すところなく見せる唯一の動脈路線であります。最近の余暇ブームの中で観光バスの入り込みが目立って多くなっており、それだけに国道四十二号周辺の景観は和歌山県の顔であり、この修景事業に力を入れていただきたいのでありますが、ルート四十二号が富田川に沿って走る区間──上富田町岩崎の郵便橋から白浜町東富田に至る間、約五・三キロメートルの現状は観光立県にふさわしくない景観と言わざるを得ません。
 まず河床については、全般に雑木と草が生い茂っております。最近、郵便橋の上流数百メートルが、民活で表土を採取して非常に美しくなっております。郵便橋から下流河口までは、依然として雑木や草が生い茂り、見苦しい景色であります。
 そこで、土木部長にお伺いします。
 河川維持管理費が少ないということでありますが、毎年、若干ずつでも整備を進められないものかどうか、また牧草地や運動場、駐車場等をうまく利用しているところもあり、そうした活用を広げる方針があるのかどうか、さらに郵便橋上流のように表土の欲しい民間に有効活用を勧め、美化を促進できないものかどうか。
 次に、この富田川の堤防敷を活用して並木を積極的につくってほしいのであります。建設省では、全国のそうした要望にこたえ、規制の厳しい堤防への植樹も一部を認め、河川修景の補助金も昨年度から実施していると伺っております。私ども素人には国道敷や堤防敷、隣接民有地など難しい点もあるように伺いますが、要は観光和歌山、リゾート和歌山のために縄張りを超え、各種の補助金を持ち寄って立派な桜並木、松並木をつくってほしいのであります。燦黒潮リゾートを記念した植樹なども考えられるが、その見通しについてお伺いいたします。
 次に公立病院問題について、総務部長と保健環境部長に御所見を承りたい。
 例えは余り適切ではないのですが、ここに一つのおむすびがあります。これを二人の兄弟が食べます。二人分にしては最初から小さ過ぎる。それを兄弟が争ってどちらかが多く食べると、片方が慢性腹ぺこ、ついには栄養失調症に陥って危険な状態になる。先般出された六十二年度公営企業決算の串本病院と古座川病院の決算内容を見て、私はそのように感じたのであります。
 串本病院は、経常収益九億八千三百万円に対し、経常費用十億八千六百万円で一億三百万円の赤字、累積欠損金は何と十二億一千三百万円で、県下十三公立病院のワーストワンであります。そうして、病床数百四十一の利用率は六七%、県平均は約八○%。この結果、串本町の一般財源からの繰入額は一億六千万円と多額になっております。
 一方の古座川病院は、経常収益九億三千万円に対し、経常費用は十億四千五百万円で一億一千五百万円の赤字、累積欠損金は三億四千万円と多額であります。そして病床数百八十二の利用率は何と四一%と、極めて低いのであります。この結果、古座、古座川両町の一般財源からの繰入額は九千八百五十万円となっております。
 新宮医療圏の中でも古座保健所管内のこの三町は地域的に連檐しており、病院数、ベッド数が全国平均を大きく上回り、人口が少ないために過剰投資となり、経営努力をいかに重ねても構造的に赤字であり、仮に一方の病院がよくなると、もう一方がその分赤字額が累積されるシーソーゲームに陥るわけであります。この病院会計の赤字で一般財源が苦しく、三町とも負担にあえいでおり、例えば串本町の昭和六十三年度当初歳出予算三十八億三千七百万円のうち土木費は三億四千七百万円で、歳出総額に占める割合は約九%、県下の町村の平均は約一八%であり、いかに建設事業が低位を余儀なくされているかがわかります。ちなみに、一般財源一億円あれば三億円の公共事業ができると言われております。国、県の補助があるからでありますが、病院会計への繰り出しの痛さがわかります。
 今や、自治体の活性化は知恵と金、人材と豊かな財源による経営力にかかっており、新しい地域づくりによる地域間競争の時代に突入しているのであります。お断りしなければならないのは、私は、医療を犠牲にして公共事業を多くやれと申しているのでありません。両病院の適切な運営が求められないものか、県と三町の知恵を結集して改善への道を見出したいのであります。
 そこで、独断と偏見で一つの提案をいたします。
 この際、串本病院と古座川病院を合併し、三町が一部事務組合で運営してはいかがなものでありましょうか。既に、水道事業はこの方式でやっております。もちろん、三町の合意と県の強力な支援が必要であります。合併後の病院は地域中核病院として重要な役割を果たします二次医療の水準とサービスの低下は許されません。
 そこで、総務部長にお尋ねいたします。
 公営企業経営の視点から、現状のままで両病院の経営改善の余地があるのかどうか、両病院が合併することに対する見解、合併に伴う不良債務等への財政支援措置が見込めるかどうか、その他の問題点について。
 次に、保健環境部長にお尋ねいたします。
 両病院の適正規模、特にベッド数、診療科目はそれぞれどの程度でありますか。両病院が合併することに対する御見解及びそれらの問題点、例えば医師派遣医大の一元化、職員問題等であります。
 次に関連質問でございますが、当地方では看護婦、准看護婦が大変不足しており、奨学制度を設けてもなかなか集まりません。そこで、和歌山高等看護学院と南紀高等学校専攻科の定員を倍増する計画をお持ちでないか、お伺いいたします。
 以上で、私の質問を終わります。御清聴ありがとうございました。
○副議長(山本 一君) ただいまの堀本隆男君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 堀本議員にお答え申し上げます。
 第一点、文化都市づくりでございます。
 お話ございましたように、和歌山県には高野山、熊野三山等、すばらしい文化遺産がございます。先人たちが長い年月をかけて築き上げてまいった文化遺産でございまして、決して無にさせてはいけないし、むしろ保存し活用して、さらにその地域地域に即した個性のあふれる文化町づくりを進めていきたいと思っております。しかし、非常に難しいところもございますので、着実に、地道に、積極的に、文化を生かしながら進めてまいらなければならないと思います。
 また、話ございました和歌山市の問題につきましては、空港また高速道路等によって国際化が進んでまいりますし、数々の文化遺産も多うございますので、国際都市として、また文化都市として進める。しかし、基本的に市が中心になるわけでございまして、私たちも市と十分相談しながら連携を密にしてまいりたいと思っております。
 それから、観光立県推進地方会議の誘致の問題でございます。
 これについては、三県の知事会議で合意いたしまして積極的に進めておるわけでございます。来年の秋に開催いたしたいと存じて、現在進めております。この会議を行うことによりまして、運輸省はもとより、全国の観光業者もこれに参加していただき、いろいろな点についてサゼスチョンなりをいただくわけでございます。だから、三県の統一キャンペーンとしても重要でございます。また、本県の観光行政──二十一世紀を目指してのいろんな知恵を承るためにも極めて重要なものだと考えております。
 他の問題は、関係部長から答弁いたします。
○副議長(山本 一君) 商工労働部長天谷一郎君。
 〔天谷一郎君、登壇〕
○商工労働部長(天谷一郎君) 観光の首都圏でのPRでございます。
 これにつきましては、情報発信力等の面から見ましても、まことに重要であると考えてございます。来る七月二十二日には、紀勢本線の特急くろしお号が新大阪駅、京都駅に乗り入れられます。加えて、同じ日に東京─白浜間の航空便が一便増便され、三便になります。これを機会に、首都圏において本県のイメージアップ対策として大々的にキャンペーンを実施することにしております。その内容及び予算につきましては、特急くろしお号の新大阪への乗り入れを記念した和歌山県フェアを初め、首都圏キャンペーン、東京ドームでのフェア参加等を内容とする予算額四千九百万円でございます。
 次に、近畿府県との予算の比較でございますが、元年度当初予算においては本県はトップクラスに位置するものと考えてございます。
 続きまして、東京事務所における観光に関する照会でございます。昨年度実績で、訪問者が三万二百七十九人、電話照会が一万百十三件でございます。
 次に、東京都以外の関東近県での観光宣伝につきましては、近県からの都内通勤者の実態等を考慮して東京駅を中心にキャンペーンを実施してまいったところでございますが、本年は特に首都圏対策として渋谷駅周辺においても実施することといたしてございます。今後は、その効果、手法をも含めまして検討してまいりたいと存じます。
 次に、首都圏での物産等を含めた調査についてでございます。県勢活性化に向けての諸施策を実施する上で必要かと考えますので、観光展の機会を活用したアンケート調査など、関係部局とも協議してまいりたいと考えてございます。
 次に、すさみ町黒島の松くい虫防除対策でございます。
 議員御指摘のとおり、すさみ町黒島は熊野枯木灘海岸県立自然公園の中に位置するすばらしい海岸美と松の緑が織りなす景勝の地でございます。地元においても、この松の緑の維持保全を図るため御努力されてきたところでありますが、議員御提言の観光資源の保存といった観点から、関係部局とも早急に協議してまいりたいと存じます。
 以上です。
○副議長(山本 一君) 土木部長松永安生君。
 〔松永安生君、登壇〕
○土木部長(松永安生君) 国道四十二号周辺の景観に関連して、富田川堤防等を活用した桜並木の造成や富田川の美化についてお答えいたします。
 河川の景観については、できるだけ手を加えず自然のままとし、野鳥や昆虫の場として残す考え方から、一方、全面的に手を加えて利用する考え方まで、よく意見の分かれるところでございます。富田川にどのように手を加えていくかは、議員からの御提案もございましたが、今後、地元の関係者とも相談しながら検討してまいりたいと存じます。
 次に、郵便橋下流の河床整備については、限られた予算の中で草刈り、掘削など河川として正常な機能を果たすべく努めてきたところでございます。議員御提案の河川敷の有効利用と表土採取については、今後、地元白浜町など関係者の意見を聞きながら検討してまいります。
 次に、国道四十二号沿いの河川堤防への植樹については、その木をだれが管理していくかの問題のほか、河川管理上また道路管理上の制約が伴いますが、建設省や白浜町と今後協議しながら検討してまいりたいと存じます。
○副議長(山本 一君) 総務部長斉藤恒孝君。
 〔斉藤恒孝君、登壇〕
○総務部長(斉藤恒孝君) 串本病院及び古座川病院の経営状況は、御指摘のとおり大変厳しいものがございまして、昭和六十二年度決算で見ますと、一年間の経常的な赤字いわゆる経常損失で串本病院が一億三百万円、古座川病院が一億一千五百万円、それぞれ一億円を超える赤字になっております。また実質的な累積赤字の不良債務で見ますと、串本が約十一億円、古座川が一億五千万円となっております。また病床利用率で見ますと、串本が六七%、古座川が四二%と、大変厳しい内容となっております。経営の立て直しには、患者の確保、経常的経費の削減、町の協力等、相当の経営努力が必要でございます。
 県としましても、串本病院については県の公立病院健全化措置によりまして、また古座川病院については国の第三次健全化措置ということで支援をしているところでございます。しかしながら、診療圏人口等から見て個別病院の経営改善努力だけでは抜本的な解決は容易でなく、構造的な面があることは御指摘のとおりでございます。
 したがいまして、病院経営健全化のためには、引き続き個別に経営努力を行うとともに、将来的な機能分担のあり方等を検討する必要があると考えておりまして、私どもとしても両病院及び関係三町の取り組みに対しまして必要な協力、支援を行ってまいる所存でございます。
○副議長(山本 一君) 保健環境部長尾嵜新平君。
 〔尾嵜新平君、登壇〕
○保健環境部長(尾嵜新平君) 御質問にお答え申し上げます。
 地域保健医療計画では、入院医療については、広域的な地域で行うことが効率的な医療を供給できるという観点から、広域圏を単位とした二次医療圏を設定して必要病床数の算定を行ったところでございます。三町を含む医療圏は新宮医療圏となっております。
 串本町、古座町、古座川町の関係三町という二次医療圏の一部地域での病院の適正規模はどれだけかというお尋ねでございますが、人口構成、疾病構造、交通事情等、種々の条件から検討を要するものであり難しいところでございますが、関係三町の一般病床は四百七十四床で、人口十万人当たりの病床数に換算すると千六百五十三床となり、県下平均の一千百八床と比較いたしますとかなり高い数字となっております。また、病床利用率は一般的には八五%前後となっておりますが、それに比較しても大幅に低い率でございます。診療科目においても、それぞれの病院が機能分担を行っていく必要があるなど問題点があり、両病院の今後のあり方については検討を要するものと考えております。
 御提案の件に関しましては、種々課題があろうかとは存じますが、いずれにいたしましても地元の意向が重要な要件となってまいりますので、保健環境部としても、関係町の取り組みに対し十分連携をとりながら協力してまいりたいと考えております。
 次に、看護問題でございます。
 県内の看護職員につきましては、充足率を満たしていないのが現状でございます。今後、さらにその需要は増大するものと考えております。御指摘がございましたが、県内でも地域間格差がございまして、串本、古座、古座川地域においては県平均よりも下回っていることは事実でございますが、看護の需給については県全体の問題としてとらえ、そのための充足対策として養成施設の新設や定員の増あるいは職員の増等、対応すべき種々の施策を官民一体となって講じる必要があるものと考えており、目下、鋭意検討を進めておるところでございます。
 以上でございます。
○副議長(山本 一君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 17番堀本隆男君。
○堀本隆男君 懇切な御答弁、ありがとうございました。
 「ローマは一日にしてならず」、ロンドンのあの立派な町並みも、ロンドン大火の後、百年をかけてつくり上げたとのことであります。また、ハワイのワイキキの浜も百年砂を投入してつくり上げたと聞いております。最初のコンセプトが、まず決め手となります。
 和歌山らしい文化都市づくり、和歌山らしい観光、景観づくりも、一つ一つの積み重ねが百年の後に大きく花開くわけでございます。特に、すさみ町黒島の消え行かんとする松の保存には、特別区域を指定していただき、特別の御配慮を賜りたく、これは要望といたします。
 どうもありがとうございました。
○副議長(山本 一君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で堀本隆男君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
○副議長(山本 一君) 本日は、これをもって散会いたします。
 午後二時五十二分散会

このページの先頭へ