平成元年6月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(木下秀男議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 午前十時七分開議
○議長(西本長浩君) これより本日の会議を開きます。
○議長(西本長浩君) この際、報告いたします。
 過日提出のあった議案第八十七号から議案第八十九号まで及び議案第九十二号から議案第九十四号までについては、職員に関する条例の制定及び改正案でありますので、地方公務員法第五条第二項の規定により人事委員会の意見を徴しましたところ、次のとおり回答がありました。
 職員に回答文を朗読させます。
 〔職員朗読〕
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   和人委第81号
   平成元年6月21日
 和歌山県議会議長 西 本 長 浩 殿
 和歌山県人事委員会委員長 寒 川 定 男
 職員に関する条例の制定に係る意見について
 平成元年6月20日付け和議会第75号で意見を求められた標記のことについて、地方公務員法第8条第1項第3号の規定により下記のとおり回答します。
  記
 議案第87号 和歌山県の休日を定める条例
 議案第88号 職員の給与等に関する条例の一部を改正する条例
 議案第89号 職員の退職手当に関する条例の一部を改正する条例
 議案第92号 教育職員の給与等に関する条例の一部を改正する条例
 議案第93号 市町村立学校職員の給与等に関する条例の一部を改正する条例
 議案第94号 警察職員の給与等に関する条例の一部を改正する条例
 (意 見)
 上記条例案については、いずれも適当であると認めます。
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○議長(西本長浩君) 次に、報告いたします。
 知事から、議案の追加提出がありました。
 職員に公文を朗読させます。
 〔職員朗読〕
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   財第49号 
   平成元年6月26日
 和歌山県議会議長 西 本 長 浩 殿
  和歌山県知事 仮 谷 志 良
 和歌山県議会平成元年6月定例会追加議案の提出について
 地方自治法第96条の規定に基づく議決事件について、次のとおり議案を提出します。
  記
 議案第98号 選挙長、選挙分会長、審査分会長、選挙立会人及び審査分会立会人の報酬及び費用弁償条例の一部を改正する条例
 議案第99号 投票管理者、開票管理者、投票立会人及び開票立会人の報酬及び費用弁償の額の基準を定める条例の一部を改正する条例
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○議長(西本長浩君) 日程第一、ただいま報告の議案第九十八号及び議案第九十九号を議題といたします。
 議案はお手元に配付しておりますので、まず知事の説明を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) ただいま上程されました議案につきまして、御説明申し上げます。
 今回追加提案いたしました議案第九十八号及び第九十九号は、去る六月二十二日に成立いたしました国会議員の選挙等の執行経費の基準に関する法律の一部改正に伴い、選挙長、選挙分会長等の報酬額及び投票管理者、開票管理者等の報酬額の基準をそれぞれ改正しようとする条例案件であります。
 何とぞ、御審議の上、御賛同賜りますようお願い申し上げます。
○議長(西本長浩君) 以上で、知事の説明が終わりました。
○議長(西本長浩君) 次に日程第二、議案第八十六号から議案第九十七号まで、並びに知事専決処分報告報第三号から報第九号までをあわせ一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第三、一般質問を行います。
 21番木下秀男君。
 〔木下秀男君、登壇〕(拍手)
○木下秀男君 平成元年六月議会において、一般質問の先陣を与えていただきました先輩並びに同僚諸兄に感謝申し上げます。
 動乱の国会と言われた第百十四予算国会もようやく閉会いたしましたが、昭和時代の終幕から平成時代の幕あけにかけて、政財官界を巻き込んだ大疑獄事件・リクルート事件が発生し、全国民に疑惑を持たせ、政治不信を募らせた国会でもありました。政治に携わる者すべてが反省し、原点を見直し、心身清新にして疑惑解明と政治不信の回復に努力するとともに、県勢の発展に取り組まなければならないと、決意を新たにしたところでございます。
 まず、通告に従いまして教育長に質問いたします。
 学習指導要領についてでありますが、この質問をするに際しまして、臨時教育審議会が三年間にわたって調査、審議した答申を読みました。
 「学制百年史」によりますと、我が国の教育の歴史は、明治五年の学制公布以降の近代教育制度の創始期、整備期、拡充期、戦時統制下の軍国主義による画一主義教育の時期──いわゆる戦時教育でありますが──の四つに区分してございます。
 そして、戦後教育の改革が昭和二十二年に行われ、軍国主義及び極端な国家主義を排除し、教育の機会均等の理念のもとに、自由、民主、平等の実現を期し、心身ともに健全な国民の育成を図ることを目的として教育基本法が制定されたのであります。この基本法のもとで教育の普及、量的拡大と維持向上が図られ、それが今日の社会経済の発展と生活文化の向上に大きく寄与したことは万人の認めるところであります。まさに「教育は国の基本なり」であります。
 反面、時代の急速な進展、科学技術の進歩、生活文化の変動等々、さまざまな問題が指摘され、これから迎える二十一世紀社会に向けて教育がいかにあるべきかを示したのが「教育改革に関する答申」だと思います。そして、この答申をもとに策定されたものが、文部省告示第二十四号「学習指導要領」であると思うのであります。
 そこで、学習指導要領の改訂に関してお尋ね申し上げます。
 今回の改訂は、今日までの改訂の中で最大のものと言われ、二十一世紀を目指し、社会の変化にみずから対応できる心豊かな人間の育成を図ることがねらいとされていると聞いております。学習指導要領は、公教育の一定の水準を保つため、国の責任において定められるものと思います。今後、この指導要領の趣旨が各学校において生かされていくものと思うのでありますが、その趣旨の周知徹底について教育委員会はどのように考えているか、また、その改訂の基本方針、改善内容の特徴的な点を含めて御説明をお願いいたします。
 次に、国旗・国歌についてお尋ねいたします。
 この問題につきましては、今日までさまざまなトラブルの起こったこともあり、それぞれの受けとめ方や理解の違いもありますけれども、今回ははっきりと文章化されてございます。国歌「君が代」として明示されたこの三十二文字の意義について、教育長はどう理解しているのかをお伺いいたします。
 私は、外国旅行をした折、国旗「日の丸」を掲げ、国歌「君が代」を演奏して温かく出迎えていただいたこと、異国で見る「日の丸」、異国で聞く「君が代」は、日本人であることを自覚し、言葉では表現しにくい、何か胸の内が熱くなるような、じんとくるような思いをしたことが忘れられないのであります。また、公共施設や学校、民家にもその国の国旗が翻り、愛国心と自国への誇りが高いのに感服したものであります。
 今日、国際化の進展が著しい我が国において、教育の場で国歌や国旗を大切にする態度や心情を育成することが、国際社会の中で尊敬され信頼される日本人として成長していくために最も重要なことであると考えます。
 また、新聞等によりますと、文部省は国歌「君が代」を象徴天皇を持つ日本国の繁栄を祈念したものとしております。私も、時代の変遷の中でそうした解釈が国民の間に定着しているものと考えるところであります。
 国際社会の中で、今日、我が国は経済的にも繁栄し、世界の平和に貢献していると考えています。国旗・国歌が日本国憲法で規定する主権在民の原則のもとに平和国家の象徴として愛され、定着するよう指導するとともに、他国の国旗・国歌を尊敬する心情を育てることも大切だと考えるものであります。
 教育長の見解をお伺いいたします。
 続いて、農林関係でございます。
 農政審議会が策定いたしました「二十一世紀に向けての農政の方向」の近畿版「近畿農政の基本方向」によりますと、近畿地方の農業の役割として、生鮮農産物の供給、消費者ニーズに対して速やかに生産に取り組む先駆性、都市住民への快適な緑空間の提供、高齢者、中年婦人への安定的就業機会の提供等が挙げられてございます。方向づけといたしましては、集落営農方式の推進や中核農業の育成、都市近郊農業地帯での野菜、花卉等を中心とした専業的経営の推進、多品目・少量産地の育成が挙げられてございます。
 中でも注目しなければならない点は、全国の高速道路網、瀬戸大橋の完成、関西新空港及び地方空港等、近畿を中心とする総合交通体系の整備進展に伴い、他地域からの生鮮農産物の供給能力が急速に高まり、近畿地域と他地域、伝統的産地と新興産地との競争の激化への対応が迫られていることであります。
 国際化への対応として、オレンジ等の輸入自由化でミカン等、かんきつ類の産地は大きな打撃を受けるため、品種改良や施設栽培などの高付加価値型生産への転換、管理作業の省力化によるコスト削減が挙げられ、生産効率化の徹底が求められています。農業の国際化は世界的な方向としてとらえ、我が国の高度な技術水準を生かした技術集約的な輸出農産物の開発等により、農産物の輸出拡大を図り、計画的対応を進めるべきであるとしてございます。この方向づけと農産物自由化の中の果実を主として、以下、具体的に質問いたします。
 昨年の昭和六十三年五月、日米間で牛肉等の輸入自由化交渉が決裂し、我が国がガット(関税貿易一般協定)に提訴し、ジュネーブにおける審議に移り、我々県民挙げて自由化阻止に取り組んだその願いもむなしく、七月に調印されたことは記憶に新しい出来事でございます。あれから一年たちました。その間、当局初め関係団体は、英知を集める中でいろいろと真剣に取り組み、対策を講じてきたことであろうと思うのであります。
 我々県議会におきましては、全会派連名で提案の「オレンジ・果汁・牛肉等の輸入自由化に伴う産地の体質強化対策についての意見書」を昨年の六月議会において全議員一致で可決・採択し、政府並びに関係省庁へ申し入れたところであります。さらに七月には、ミカン生産府県に呼びかけ、二十三府県の加盟を得る中で「全国みかん生産府県議会議員対策協議会」を組織して、政府初め農林水産省、外務省、大蔵省、自民党等へ強力に働きかけ、補正予算に緊急対策として予算措置を求めてきたところであります。協議を重ねる中で各生産地の要望を具体的にまとめ、当初予算に計上されるべく取り組んでまいったところでございます。
 その後、国においては輸入自由化に伴う国内対策が打ち出されましたが、それを受けて県農林水産部としてどのように具体化しつつあるのか、今日までの取り組みをお聞かせいただきたいと思います。
 オレンジ、牛肉等の自由化が目前に迫り、二年後の平成三年には生果が、三年後には果汁が入ってくることは確実でございます。この事実は、御承知のとおり、生産農家はもちろん関係業界に及ぼす影響ははかり知れず、我が和歌山県経済に及ぼす影響の大なることを憂慮するものであります。
 耕地面積の少ない和歌山県は、全国第二位のミカン生産県であり、果実生産額が生産額の約四六%を占めるという果実依存の農業形態でございます。この現実を見るとき、早急な施策を講じなければならないと思うのであります。
 私たち全国みかん生産府県議会議員対策協議会のまとめたものとして、次の三項目がございます。その第一点は生産対策であり、第二点は流通加工対策であり、第三点は消費拡大対策でありますが、これについてお伺いいたします。
 まず、廃園と転換対策についてであります。
 国の方針転換によって、ミカン農家が厳しい国際競争に勝ち残るため二万二千ヘクタールの廃園を計画し、十アール当たり三十万円の補助金を支払うというのが今回の施策の大きな一つの柱でありますが、和歌山県にもこの減反割り当ての大きな数字が来たのであります。一年を経た今日の状況と、平成三年までの残された二年間の計画をお伺いするものであります。
 「廃園」というのは抜根するか枯死させることでありますが、その後の転換対策が問題であります。何に転作しているか、県としては何を指導・奨励しているのか、この点についてもお伺いいたします。
 ミカン農業については、自由化問題をまつまでもなく、生産過剰で減反の必要に迫られていたこの実情を十分に認識し、今後の指導と対策をすべきであります。国際競争と国内産地間競争に勝ち残るためにも、あらゆる情報と先を見通した判断が求められているのであります。
 次に、園地改良と整備事業であります。
 ミカン園の廃園、転作のでき得る畑であれば今回の対策事業を受け入れることもできるのでありますが、高いところの小規模の畑や急傾斜の畑、狭隘な畑、再編のできない山畑等を持つミカン農家は、何を作付すべきか品目選定に大変苦労されていると聞くのであります。ミカン農家でほかに耕地を持たない人々に対する減反割り当てというのは、大変難しい、無理なことであります。
 一方、ミカン専業でなく水田を持つ農家は、この際、品目の一本化ということもあって、廃園と水田転作により落葉果樹──これは主として梅でございますが──に転換している地域も多く見かけるのであります。ブルドーザーやユンボで水田を耕し、客土をして樹園地としていますが、山畑のように配水がよくないため、用配水路や農道整備いわゆる生産基盤の整備が必要となり、この取り組みも急がなければならないと思うのであります。
 次に、農業経営の安定対策であります。
 減反、転作、施設栽培等によって、一定期間の収益の減収、設備投資の資金捻出等、新しい事態の起きることが必定でありますが、制度資金や合理化資金等、金銭面での貸付条件の緩和と対象の拡大等、抜本的な改善を図るべきであると思うのであります。
 現に、このような事態に当たり、面倒だから売り払ったという話も聞くし、ミカン園の売り物が多くあると耳にするのであります。県内各地では施設栽培が急増しており、品目も多品目にわたっておりますが、制度融資を申請しても、予定枠が終わったから次年度に回してくれというようなことを再三聞かされるのであります。この際、県としても十二分な資金枠を確保し、スムーズに対応できるようにすべきであると考えるものでございます。
 次に、流通加工対策であります。
 消費者の食物に対する嗜好の変化と供給の多様化によって、食料品の消費構造は大変化を来していると言われてございます。食生活の高度化により、量や価格よりも食品の安全性や鮮度、本物への関心が高まり、さらに周年供給が要求されてきている現実を認識し、高度な食文化を持った京阪神の大消費地の消費者ニーズをより早く的確に把握するよう情報収集に取り組み、生産農家との連携を強める必要があると思うのであります。
 生産技術の向上と消費者ニーズの多様化に対応して個性化商品が開発されてまいりましたが、これらの生産物を価値あらしめるためには、出荷体制や選別に厳しく当たるとともに、高性能選果施設の整備充実を図ることも重要なことであります。
 特に、ミカンは関東、東北方面へも市場を広げている現状から、国内競争に勝ち残るためにはこれらのことが最も大事であります。自由化に向けてこれらについて早急に指導・点検することが必要かと思うのでございます。
 続いて、販路拡大対策であります。
 前にも述べましたが、農業部門にも「国際化」という言葉が定着してまいりました。しかしこれは、国内農業の生産量、基本的な食料の安定供給力の不足、消費者ニーズへの対応等々を考え合わせますと、自給力のない我が国としては輸入に頼らざるを得ないというのが実情であります。輸出国との相互信頼関係を醸成しながら安定輸入を図るべきであり、この現状は世界的な方向としてとらえるべきであって、対応をおくらせることがあってはならないと思うのであります。
 農産物自由化によって輸入食料と国内生産物とのバランスに狂いの生じることは間違いないのでありますが、ただ生産量が少ないからとか生産コストが高くつくからと言っていたのでは伸びないのであって、私はこの自由化を逆手にとって、海外輸出に向けて積極的な取り組みをすべきだと考えるものであります。
 オランダのチューリップが東京銀座の花店で売られ、アメリカ西海岸から輸入されたサクランボが和歌山市内の店頭で売られている実情であります。農産物の輸出は国際経済変動の影響を受けやすいと言われますけれども、生産過剰で国内消費が飽和状態になっている現況から、海外輸出に向けて、特に対米輸出の緩和について、外務省を通じて強力に働きかけるべきであります。
 アメリカは輸入解禁州を三十八州にまで広げておりますけれども、無病地区設定や表面殺菌等の条件が大変厳しく、輸出拡大のネックとなっているようであります。これらの撤廃を強く求め、アメリカに販路を求めてはと考えるのであります。
 さらに、カナダに向けてでありますが、御承知のように、太平洋岸のバンクーバーを中心に、日系人やアジア系移民の多くいる国であります。
 昨年の十月、美浜町三尾地区でカナダ移民百年記念の諸行事が催されました。カナダ移住者の代表百余名の出席のもと盛大に行われましたが、そのときに懇談する機会を得たのであります。
 年配者の方々は、ふるさとの発展ぶりに目をみはり、往時をしのんでおられましたけれども、「子供のころ食べた紀州ミカンの味が忘れられない。今の国際自由化の中、カナダへ送って──これは輸出の意味でございますが──もらえないものだろうか」という話を聞かされたのでございます。私はこのとき、このふるさとを離れて異国に生活する方々の願いをかなえる努力をしたいと、誓ったものであります。
 来る九月には、バンクーバーで和歌山県人会主催の百年記念の式典が催されるそうで、その催しに知事も出席予定と伺っております。知事は、みかん生産府県知事会議の会長として今日まで日本のミカン生産に先頭を切って努力されてまいりましたが、この機会にカナダ政府と交渉してみられたらと思うのであります。その所見をお伺いいたします。
 次に、減反と転作対策であります。
 自由化に伴う減反面積が全国で二万二千ヘクタール、和歌山県への割り当ては、ミカンが二千四百二十ヘクタール、中晩柑が千百五十ヘクタール、合計三千五百七十ヘクタールとなってございます。和歌山県のミカン生産全盛期と言われた昭和五十五年ごろと比較してみますと、約三分の一弱の一万二千ヘクタールと大幅な落ち込みを見てございます。
 ミカン農家として、つくりたくても減反割り当てがあり、つくっても収益が上がらないこの悩みと、さすれば減反後に何を作付すれば農業経営が成り立つかという作目選択に迷っているのが、今のかんきつ農家の現状であります。
 一方、農産物自由化に伴う転作目として、梅がミカンにかわって全国各地に植栽されているようであります。関東から中部、北陸、九州と生産地がありますが、特に九州方面と、新しく四国にもふえつつある現状と伺っております。
 県内の状況を見ますと、主産地の中紀地方はもちろん、紀北、紀南でも大幅に植栽されたと聞くのであります。ここ一年間の苗木の動向を調べてみますと、県内だけで十五万本が出荷されてございます。自然食品だ、健康食品だと、今、大変なブームで好況を博してございますけれども、前段申し上げましたように、このように増植してふえ続ければ、ミカン生産の二の舞となるのではないかと懸念するものでございます。
 今の県当局の指導体制を見ますと、ミカンや花卉、野菜等の技術者は多く見受けられるのでありますが、落葉果樹、特に梅に関する権威者が皆無と言っていいほど少ないように見受けられるのであります。県下の農業作目が大きく転換しつつあるとき、早急な対応をすべきではなかろうかと思うのであります。
 私は、この際、県下の各種試験場、農業改良普及所の体制の見直し、高度な技術者と加工面の研究者の養成を図るべきであると提言申し上げるものであります。
 南部郷や田辺地方の梅の歴史は古く、生産技術は高く、販路も広く、意欲も高いのでありますけれども、産地が紀北から紀南までと分布し、食文化の向上と消費者の嗜好が多様化している今、加工面でさまざまな工夫をすることが大事であると考えるのであります。
 大手メーカーの食品研究所や飲料メーカーの醸造研究所等と提携する形で、消費量を伸ばす努力が必要かと思います。アメリカでは日本食ブームで、日本酒の輸出がふえ、しょうゆなどは日本企業が進出し、現地で製造している今、梅の外国人向けの加工開発を急ぎ、輸出品にするまで取り組んではと考えるものであります。
 県農林水産部は、昭和六十二年に「21世紀につなぐ『明日の和歌山県農林業』基本計画」を立ててございますが、昨今のように減反・転作がふえ続きますと、かんきつ農業から落葉果樹農業へと基幹作目が変換してしまいそうな勢いであります。この際、この計画も大きく見直さなければならないと思うのでありますが、いかがお考えでございますか、お伺いするものであります。
 次に、施設栽培とその対策についてでございます。
 農業形態の変化が厳しく、機械化が進み、化学や科学の知識が必要となり、バイオテクノロジーによる品種改良や新品種の創造など、高度な技術が要求される近代農業へと急速な変化をしています。これらを取り入れることによって、想像もできなかった品種が生まれ、予想もできなかった量の収穫を得、しゅん外れの果物をつくれるという農業に移行してまいりました。「施設栽培」であります。さらに、国際的に視野を広め、各地の情報を収集して作付をしていかなければならない時代となりました。
 今回の自由化に伴ってこれらのことが一層強まり、施設栽培が一層広まると思うのであります。また、施設栽培を取り入れなかったらこれからの農業は成り立たず、競争に打ちかっていけないとも思うのであります。
 最近は、施設栽培のハウスが県下各地に建ち並び、多くの花卉、野菜がつくられ、樹園地にもビニールハウスが見られるようになりました。耕地面積が少なくなりましたが、生産高が上がり、増収につながっていることはまことに喜ばしい限りであります。しかし、設備するには多額の資金が要ります。この問題に対処することも急がなければなりません。
 そして、施設栽培で問題になるのは廃ビニールの処理の問題であります。このまま放置すると、漁業にも大きく影響を及ぼすおそれがあります。海に流れ込んで海底に沈んだ場合、海藻の生育や産卵に大きな影響を及ぼすと言われております。国の施策に補助事業がないからと手をこまねいていては、大問題になることは必定であります。生産者や農協、製造メーカーとの連携をとりながら対策を急ぐべきであると思うのでありますが、お考えをお伺いいたします。
 最後に、「シーサイドロード」──私がつけた名前でございますが、リゾートに関する道路整備について、土木部長に伺います。
 本県は、全国的に類を見ない非常に変化に富んだ美しい海岸を多く有しております。ただいま、全国的には週休二日制が定着化しつつあり、余暇の時代が急速に進んでいるときに、この海岸美を利用せずにほうっておくことはないと思うのでございます。
 幸い、県当局におかれましても、本格的な余暇時代の到来を見越したリゾート開発を進めようとしており、県は本年度中に総合保養地域整備法の適用申請を行うこととして、適用地域は沿岸市町村域となってございます。これを受けて各市町村が工夫を凝らして種々検討中でありますが、私はここで提言を申し上げます。
 海岸美を誇る有田市千田から湯浅、広川、由良、日高、美浜、煙樹海岸の区間を結ぶリアス式海岸道路、名づけて私は「シーサイドロード」としたのでございますが、高速自動車道湯浅御坊道路と一体となったネットワークが必要かと考えるのであります。
 このルートは、砂浜あり、磯あり、なぎさあり、奇岩あり、絶壁ありと、大変バラエティーに富んだ海岸が続き、紀州ミカンの産地でもあり、魚釣りのメッカでもあります。各地区の観光地、漁港、キャンプ場等々、各拠点を連絡し、余暇を生かして家族ともども海水浴をしたり、キャンプ、魚釣り、磯遊び、ミカン狩り等々、楽しみながら観光できるようなネットワークを強化すれば、観光客の誘致を飛躍的に増大させることができると考えるものであります。ただ単にリゾートやレジャーだけでなく、沿道の農産物、海産物の集出荷等、地域の振興発展に大きく寄与することとなると思うのでございます。
 一部、農林水産省、国土庁の関係で漁免道路の計画もされてございます。あわせて、リゾート開発だ、観光客誘致だとよく聞かされますが、まず受け入れ態勢の整備ができなくては客の受け入れができないのであります。
 幸い、湯浅御坊道路建設も今月十二日、工事が着工され、広川町インターチェンジ付近から郡境の広川町唐尾地区に向けて農免道路の建設が計画されており、高速道路との連結もできると思うのでありますが、土木部長の御意見をお伺いいたします。
 以上で、私の一般質問を終わります。御清聴ありがとうございました。
○議長(西本長浩君) ただいまの木下秀男君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 木下議員にお答え申し上げます。
 かんきつ自由化決定後の取り組みについて、いろいろの質問なり御提言があったわけでございます。
 担当の農林水産部長から答弁いたしますけれども、お話ございましたように、和歌山県ではミカンが農業生産の四六%というような実情でございまして、非常に重要な問題でございます。また、農業も非常に厳しい現況でございますので、全力を挙げて取り組む覚悟でございます。
 それから、販路拡大対策につきまして、私から説明させていただきたいと思います。
 お話ございましたように、果樹農業の振興、その中でも海外市場の開拓ということは非常に重要なことでございまして、現在の貿易事情を逆手にとって、攻めの農業政策を進めなければならないということ、同感でございます。
 本県としても、東南アジア、カナダへのミカンを初め、千五百トンの果実を輸出してございますけれども、最近の円高傾向、流通コストの高騰などで厳しい現状にございます。
 しかしながら、アメリカやカナダへのミカン輸出については、先人の皆さんの努力があるわけでございまして、あらゆる機会を通じて十分研究して努力せよということ、ごもっともでございます。特にカナダについては、なお一層努力してまいりたいと思います。
 シーサイドロードの問題については部長から答弁いたします。
○議長(西本長浩君) 農林水産部長安田重行君。
 〔安田重行君、登壇〕
○農林水産部長(安田重行君) お答え申し上げます。
 私に対する質問は、七点でございます。
 まず、農産物の自由化が決定をしたけれども、農林水産部として今日までどのように具体的に取り組んできたかということでございます。
 今回のミカン園の再編対策は、自由化を目前に控えて適地適産と需給の安定調整を図るものでございますので、県としても、国の基本方針に沿って、かんきつ産地対策推進本部の設置を初め、その組織体制の確立が非常に重要だと考え、整備を図るとともに、基本指針の策定や三カ年計画の取りまとめ等、かんきつ園地再編対策の円滑な推進に努め、初年度の転換等を実施したところでございます。
 参加農家は、今日、一万三千戸、件数にして四万件を優に超えるものでございまして、現在、現地の確認を終わっておりますが、助成金交付のための書類チェックを行っておる最中でございます。
 また、県単独の予算措置としては、議会の全面的な御協力をいただき、昭和六十三年度十二月補正予算において、再編対策助成補助金への県費の上乗せ措置、あるいは加工原料柑への価格補てんに係る県費の負担、県独自の事業として、ミカン優良品種の系統への更新事業、地域特産果実の種苗母樹園の設置事業等、総額三億円に上る自由化対策を講じたところでございます。
 さらに、平成元年度当初予算においても、これら事業を継続実施するに加え、新たにかんきつ産地の緊急対策事業、果樹産地活性化推進事業を創設するなど、県単で総額六億六千万円、前年度対比一五〇%に及ぶ関連事業予算を計上し、ただいま生産者団体、市町村と一体となってかんきつ産地の体質強化に取り組んでいるところでございます。
 次に、廃園と転換の問題でございます。
 かんきつ園地の再編対策は、適地適産と需給安定を基本に、昭和六十三年度を初年度として三カ年で実施するものであることはただいま申したとおりでございますが、生産者団体及び関係機関が一体となって推進をしてございます。
 転換先の品目については、さきに県が地域別、地帯別の転換先品目指標を具体的に示しておるわけでございますが、これによって農家が選択導入することといたしてございます。
 昭和六十三年度の実績についてその概要を申し上げますと、温州ミカンについては、三カ年の目標面積として、和歌山県では二千四百二十ヘクタールという一応の割り当てが国からございまして、初年度ではこれの約五〇%の千二百ヘクタール、また、ハッサクを初め中晩柑では初年度で予想を上回る七百八十ヘクタールが既に実施されているところでございます。
 これを態様別に見ますと、温州ミカンと中晩柑を合わせて、他の落葉果樹等への転作は全体の五五%と最も多くなってございます。次いで廃園が三一%、他作物へは九%、植林へは四%の順となってございます。
 次に、転換先品目でございます。
 紀の川流域では落葉果樹の柿が一位、次いで梅、桃への転換が主で、有田地域については、転換面積が少ないながらも、梅、野菜、花卉、紀南地域では梅を主体に野菜、花卉となってございます。
 今後は、全国的な再編整備事業の実施の状況あるいは生産者の意向を十分踏まえ、本対策の円滑な推進に努めてまいりたいと存じてございます。
 次に、園地改良と整備事業でございます。
 議員御指摘のとおり、近年、水田転換により、梅等の落葉果樹への転作が進んでございます。今後、関係市町村、農家等の意向を十分聞いて、議員お話しの趣旨を十分踏まえ、かんがい排水、農道等の基盤整備事業にきめ細かく努めてまいる所存でございます。
 次に、農業経営の安定対策ということで、特に、議員の言われる融資の関係でございます。
 農業経営の安定対策に係る制度融資、制度資金については、本年度は融資枠の拡大を図って農家の要望に対処することといたしてございます。ハウス等の施設農業への資金の対応につきましては、特に、オレンジの自由化対策の一つとして無利子の資金枠の拡大を図ったところでございます。
 議員お話しの制度資金の貸付条件の改善等については、国に対してさらに強く要望をしてまいりたいと考えてございます。
 次に、流通加工対策でございます。
 最近の高級・多様化する消費者ニーズに対応して、全国に先駆けてブランド化した本県独自の味一ミカンは、御承知のように、市場で高い評価を得てございますが、厳しい品質基準等もございまして、まだまだ量的には大変少ない現状でございます。
 輸入自由化を控えて、今回のかんきつ園地再編対策を実施する過程において、高品質生産に対する生産者の意識も急激に高まってまいりました。今後、厳しい産地間競争、消費者の実態を十分に踏まえながら、高品質果実生産の拡大に向けて、生産者を中心に関係機関が一体となって、地域での取り組みを進めてまいる必要があると考えてございます。
 また、加工研究分野については、農産物の加工研究者や梅加工開発センターを初め、関係機関において、現在、新しい製品の研究開発に努めてございますが、今後とも、予想される加工需要の増大に対応して、梅を初め地域特産品の商品開発に積極的に取り組んでまいる所存でございます。
 次に、施設栽培、特に廃プラスチック問題でございます。
 関空立地、あるいは南紀白浜空港の整備等をインパクトに、フライト農業の推進やかんきつ園地の再編対策による施設化の推進など、施設栽培面積の大幅な増加が見込まれる中で、廃プラスチック対策は極めて重要な課題であると受けとめてございます。
 その処理については、基本的には排出者みずからが適正に処理することとなってございますが、県としても、施設園芸の振興上、これまで適正処理に向けての啓発推進や他府県における処理状況の調査を行うとともに、助成事業の創設を強く国に働きかけてまいったところでございます。
 処理施設の設置については、既に設置している施設栽培先進県である千葉、山梨、茨城等、他県の例に見られるように、回収方法やその後のランニングコスト等、管理運営面に大きな問題があり、赤字を抱えて休止、縮小のやむなきに至っておる事例が多く発生をしていることも事実でございまして、慎重に検討する必要があると考えてございます。
 今後、さらに施設園芸協会を中心にした組織づくりを行い、まず回収体制の整備などについて積極的に取り組んでまいりたいと考えてございます。
 一方、最近の新しい動きとして、民間企業による広域的な廃プラスチックの再生利用の話もございまして、こうした面の活用も含めて、市町村、生産者団体ともども、総合的に検討をしてまいる所存でございます。
 最後に、減反と転作の対策でございます。
 再編対策の実施については、先ほども申し上げたように、地域別、地帯別の転換先品目指標に基づいて農家が選択導入したものでございますが、本県では、梅、柿、桃などの落葉果樹の大幅な伸びが予想されることから、主産地において専門普及員を重点的に配置し、技術指導を行うべく積極的に取り組んでいるところでございます。
 今後も、資質向上のための研修や試験研究機関、関係団体と密接な連携のもとに現地での指導体制を強化し、産地の要望にこたえてまいる所存でございます。
 また、生産振興計画の見直しの問題でございますが、議員御承知のように、果振法に基づく果樹農業振興計画は中長期的な展望に立った計画でございます。オレンジ、果汁等、輸入自由化の決定に伴い、緊急対策として現在取り組んでいるかんきつ園地の再編対策を初め、消費動向の急激な変化等を踏まえて、現在、国では長期的な需給安定等を内容とする果樹農業の振興基本方針を一年前倒しして本年度中に策定、公表される見通しでございます。
 県としては、それを受けて果樹農業振興計画の見直しをすることとしてございます。本県の地域特性を最大限に生かすことのできるよう十分留意して、本県果樹農業の健全な発展に取り組んでまいる所存でございます。
 以上でございます。
○議長(西本長浩君) 土木部長松永安生君。
 〔松永安生君、登壇〕
○土木部長(松永安生君) 有田から美浜町にかけての、いわゆるシーサイドロードについてお答えいたします。
 有田から御坊にかけての沿岸は、白崎や日ノ御埼に代表されるように、リアス式海岸のすぐれた景観を有し、県立自然公園にも指定されており、また海水浴場、キャンプ場、釣り場としてもすぐれた観光資源を有する地域でございます。
 今後、関連する道路を整備することなどによって多くの人々がこの地域を訪れやすくすることは、地域の活性化のみならず、本県振興の観点からも有効であると考えます。
 しかしながら、この海岸線の道路は総延長が六十キロを超え、しかも急峻な地形のところを通過することもあって、全線を抜本的に改善するには莫大な費用を要します。
 このことから、交通の隘路となる幅員狭小部分や線型不良箇所から重点的に改良しているところでございますが、今後もその推進に努めてまいりたいと存じます。
 また、湯浅御坊道路とのネットワーク化についても、現国道四十二号を生かしつつ、その整備を図ってまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(西本長浩君) 教育長高垣修三君。
 〔高垣修三君、登壇〕
○教育長(高垣修三君) せんだって告示されました新しい学習指導要領についての四点について、お答えをいたします。
 御指摘のように、学習指導要領というものは、公教育の普遍性を確保するために国が全体として一定の基準を設けたものでございます。
 お尋ねの新しい学習指導要領の基本方針でございますが、これは、大まかに言って四つの柱から成り立ってございます。その一つは、心の教育の充実でございます。二つ目には、基礎・基本の重視と個性教育の推進が挙げられてございます。三つ目には、自己教育力の育成であります。そして四つ目には、文化と伝統の尊重と国際理解の推進でございます。この四つが柱となってございます。
 改訂内容においては、まず小学校においては生活科の新設が挙げられてございますし、中学校、高等学校においては選択履修の幅の拡大など、多くの面において基本方針の具体化が図られているところでございます。
 新学習指導要領のこれからの趣旨の徹底については、文部省が実施をする中央研修会を受け、本年度から本格実施までの期間中に県内各地において、すべての教員を対象とする伝達講習会を開催する所存でございます。
 次に、国旗・国歌についてでございます。
 御指摘のように、児童生徒が自国や他の国の国旗・国歌を大切にする気持ちを育成することについては、学校教育の中で指導するということが非常に重要なことであると考えてございます。
 また、国歌「君が代」の解釈に係る件についてでございますが、文部省が説明をしておりますように、日本国民統合の象徴としての天皇を持つ我が国が永遠に平和で繁栄することを祈念するものであると考えてございます。
 こうした認識に立ちまして、国歌が、日本国憲法の規定する主権在民の原則のもとに平和国家の象徴として愛され、定着するよう、指導することが極めて肝要であると考えてございます。
 以上のとおりでございます。
○議長(西本長浩君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 21番木下秀男君。
○木下秀男君 大変丁重な御答弁、ありがとうございました。あと、時間がございませんので、要望にかえたいと思いますが。
 農林水産部長でありますが、大変きめ細かく御答弁をいただきました。ただ、おしまいの方に「国の方針を一年間前倒し」という御答弁がございましたが、国の方針も必要でございましょうけれども、事、果樹生産にかけては、和歌山県は国に指導するぐらいの立場にあるほどの先進県であると私は思っております。
 そういう面で、和歌山県が「かくあるべきだ」と、いろいろの地域の状況を集約するものを国に突きつけて、これを実施の中に十二分に反映してほしいというふうな形をとることが本当の取り組みであろうと思います。ただ単に国の基本方針を待って県が受けるということでは、いつまでたっても受け身の形であるので、その生産地──特に和歌山県は江戸の時代からミカンの産地と言われておって、よその府県にまねられることはあってもまねることのないミカン産地として、今日まで来たと思うのであります。そういう面で、もっと積極的な取り組みをされるように要望しておきます。
 それから、教育長でございます。
 私が質問いたしました点、これから、国というか文部省を中心に、全国各地でその内容の徹底をするための講習会というか研修会が開かれる計画もあることは承知しておりますけれども、だれしも国の繁栄を願うのは同じでございます。この方針を全県下にくまなく徹底されまして、将来を託す青少年の、また今度の場合は幼児教育も新たに含まれておるということを聞いておりますので、その点を十分認識の上で、先頭に立ってその新しい取り組みに対する理解を求めるべく努力されるよう強く要望いたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
○議長(西本長浩君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で木下秀男君の質問が終了いたしました。

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