平成元年2月 和歌山県議会定例会会議録 第7号(浜本 収議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

○議長(西本長浩君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 34番浜本 収君。
 〔浜本 収君、登壇〕(拍手)
○浜本 収君 四点にわたって質問をいたします。
 その一つは、原子力発電立地に関する問題であります。第二点はリゾート開発、その指導理念について伺いたいと思います。第三点は空港対策についてであります。第四点は保育行政であります。
 今議会に提案されております電源立地地域整備事業費は、昨年の四千万から千六百万円の減額すなわち二千四百万となっているが、その理由とその使途について、まず明らかにされたいのであります。
 さて、去る一月三十一日、自民党の大会で曽野綾子さんは「皆様方は常にやかましい少数に触れておられますので、日本じゅうのサイレント・マジョリティー(静かなる大多数)の真の恐ろしさを時にお忘れになるのかもしれません」として、政治家が真の意味でのコモンセンスと自己への厳しさを失って恐れを知らぬものになっているのではないか、そうなってはならないとの提言をされましたが、この提言は、政党政派を超え、まさに国民大衆の共感を生んだことは周知の事実であります。
 翻って、今、紀伊半島に住む人々なかんずく日置川町民は、あの壮絶な昨年夏の原発反対の町長選挙がもう遠い過去の物語となり、闘い抜いた町民大衆は今、サイレント・マジョリティーとして県や国の原発政策をじっと見守っているのであります。
 昨年の十二月県議会で私は日置川原発電源立地温排水対策について質問をいたしましたが、予想したとおり、この二月十五日から日置漁協は原発温排水調査を始めたのであります。そこで、私は十二月県議会での県当局の答弁を再現し、その後の経過等を踏まえ、質問をいたします。
 川端企画部長答弁、「電源立地地域温排水対策費補助金については、国の要綱によると、補助金の交付対象事業主体は漁業協同組合、漁業協同組合連合会、地方公共団体、または国もしくは都道府県から設立認可を受けた公益法人となっており、通産大臣が直接補助金を交付することができる仕組みになっている」。
 安田農林水産部長答弁、「交付申請は事業主体となる漁協の自主的な判断でなされたもので、県は直接かかわりがない。(中略)温排水有効利用のための基礎調査であり、水産動植物の生息状況等、周辺地域の漁海況資料を得ることは、今後の漁業振興を図る上からも、この海域の総合的、計画的な利用を考えるためにも必要であると思う」。
 両部長の答弁は、いずれもそつのない、しかも要を得た答弁であります。要約するならば、一つは、この温排水対策費補助金については町や県、具体的に言えば日置川町と和歌山県とはかかわりなく──素通りでという意味ですね──漁業協同組合と通産省が直接申請・交付という手続のとれる仕組みになっているという、制度上の答弁であります。
 いま一つは、この補助金は温排水有効利用のための基礎調査であって、今後の漁業振興、海域の利用のためにも必要であるとする、極めて現実的な答弁であります。この意味は、私はよくわかるのであります。
 そこで、次の質問をいたします。
 一つ。この補助事業は、原発施設を立地する目的をもって海域の調査を行うと、通産省要綱の最初にその目的がうたわれているが、日置漁協の組合長が新聞紙上(二月十七日「紀伊民報」)で、「この事業は原発立地とは無関係だが、原発候補地に交付される補助金なので、全く関係ないとは言っていない」──最近、こういう答弁の仕方がはやっているようであります。たしか、きのうもそういう発言があったように思います──と発表したり、また二月十七日の「紀州新報」では、「原発立地とは関係がない、結びつくものではないと組合総会で説明している」と公言している記事が掲載されておりました。
 また、前日置川町長は、町議会で反対の人々から質問があると、しどろもどろ──前の町長ですよ。今の町長と違う。「この温排水事業の補助金は決して原発のひもつきではない。これをやったからというて原発はやらなければならないということではない」との答弁を繰り返しているが、企画部長並びに農林水産部長はこの事業の目的をどう把握しているのか、明確に答弁をされたいのであります。
 二つ目。この補助事業は漁協と通産省の間で直接決められたもので県や町はかかわっていないが、少なくとも、第四次長計にもうたわれている原発立地にかかわる重要な行政部門を受け持つ企画部の立場から見て、このような制度というか仕組みについてどのような感覚を持ち合わせているのか、お答え願いたいのであります。
 さらに、この種の補助金実例が、私も少しは知っておりますけれども、他の行政分野であるならば、この際ぜひ開陳されたいのであります。
 私は、このような措置というものはもはや行政ではないと思う。市や町や県と何の関係もなしに一漁業組合と通産省とでやれる、確かにそういう制度になっているにしても、これはもう行政ではない。最初にその答えを聞いて、再質問でなぜかということをもう一遍確かめてみたいと思います。
 なぜならば、何遍も繰り返しているように、原発予定地にされたその町は世論が真っ二つに分かれ、また好むと好まざるにかかわらず住民は巻き込まれてしまう。もう日置川町は、この夏で十四年になる。十四年以上の歳月にわたって争わなければならない事態を余儀なくされる。そういう現状の中で、たとえ年一千万──三年、四年と継続事業になっておりますが──の温排水事業といっても、それは明らかに原発立地を目的とするものでありながら、県行政も町の行政も素通りして通産省と漁業協同組合だけで申請や交付を行うなどという行政措置は、もはや行政ではないと私は思うからであります。
 原発と関係あるから、賛成派の人は「そうではない」と言うだろうけれども、一般的に言うて、皆さんの中にも市長さんや町長さんになられた方はいらっしゃると思いますが、そんなことだったらおかしいな、町長も知らんて──知っておるんですよ。しかし、判をつくことも何もする必要がない。ただ漁業組合と通産省とだけでやる。一体そういうことが行政の名に値するのかどうか。どうぞ御理解を願いたいと思います。答弁を求めます。
 三つ目。三月八日、白浜町議会総務委員会は、日置川町への原子力発電所立地計画に反対する決議を求める町民約四千名による請願について、その請願を採択し、関西電力株式会社が日置川町に立地計画中の原子力発電所の立地について同町議会は現時点においては反対である旨の表明をするやに聞いておりますが、やがてこのような反対決議が各市町村自治体議会においてなされていくであろう趨勢にかんがみ、同町議会の議決にどのような判断を持っているのか、答弁されたいのであります。
 また、これは重大だと思うのでありますが、白浜町議会総務委員会での議決は満場一致であります。一年間、全国二カ所へ視察に行って、各種資料を整えて白浜との関係でどうだろうかと。この議決の内容については、私は大変立派なものだなという感触を得ておりますが、これはまだ決まっておりませんので、その文章をここへ持ち込むことは法的にちょっとおかしいので。そうして委員会で一カ年間、賛成の方、反対の方ともに、ああでもない、こうでもないといろいろ論議をして、「現時点では反対である」とまとめ上げた。一生、百年たっても三百年たっても反対とは書いてない。「現時点では反対」。議会の皆さんが町民の動向の上で組み立てられた立派な議決だなと思っておるのであります。
 この総務委員会で満場一致のものが三月二十二日からの議会──二十八日に終了すると聞いてございますが──の本会議にかけられて、委員会で満場一致でありますから、手続的には多分、「多分」という形でしか言えませんけれども、満場一致で議会は採択するであろうという趨勢にある。
 ところが、この総務委員会の動きに対し県は──あなた方です──「なるべくならそのような議決をしないでほしい」と働きかけたと流布されているが、これは一体どういうことなのか、答えられたいのであります。これも答弁をいただいて(発言する者あり)──やかましいこと言うな。私は全部知っておるんだ。知っておる者に言うてもあかん。やかましいこと言うな。
 だから、これについては答弁を聞いた上で、答弁によってはまだ言いたいことが──これは省きますが、そういうことは一体どういうことな。町議会の委員会で採択され、それが議決されるであろう。文章もほぼでき上がっている。それへ県の方からちょろちょろ来て「できたらせんといて」て。そんな事実がないとは言わさないぞ、これは。町の助役がべらべらしゃべっているんや、県が来たんやと。それだけ言うておく。それだけ言うておけば間違いない。
 四つ目。去る二月二十五日、田辺湾岸総合利用とリゾート開発シンポジウムは、午後五時三十分から午後九時三十分まで──予定は九時までだったんですが、会場は熱気あふれて九時三十分まで延長した。私などは、五時半やからというて飯も食わんと行ったんで、腹が減ってどもならんかった。九時半まで熱心に聞いた千二百名の中の一人でありますが、この会の雰囲気は、先ほど那須議員からも、あるいは皆さんからも連日リゾートの問題が訴えられておりますが、今、郡市民は県政に何を求め、何に希望をつなごうとしているのかといった感じでいっぱいであった。そこで、パネラーとして出席され、非常にいい発言をなされておった企画部長の本会に対する感想について──それだけとは違う、原発との関係であなたはどう感じ取っているのか、率直にお答え願いたいのであります。
 第五点。紀伊半島に原発は要らない、原発よりも快適なリゾートを、原発よりも一日も早く高速道路の完成をと、私は特に紀南における県政の基本をそこに定め、第四次長期総合計画に盛られたエネルギー政策、なかんずく原発立地の政策からの撤退を知事に求めるものであります。
 既に御承知のように、六十二年三月の高知県議会において、原発推進の旗を振ってきた中内高知県知事は、原発よりも高知の新しい港を開け、原発よりも高速道路を一日も早くやろうと、その軌道修正を本会議場を通じて訴え、その政策はやがて一年後の窪川町の原発廃止の政治的背景となったことも周知の事実であります。
 六十二年の県議会の一般質問において、私は原発とリゾートは両立しないとの立場から知事の所見をただしたけれども、いま一度「ふるさとに生きる(著者・仮谷知事)」に知事みずから書いたその文章の一節──六十二年の六月にも読み上げました。私はあの文章が好きであります──を読み上げ、その所見を再び伺いたいのであります。
 「西洋にはアトランティスという海洋王国のユートピア伝説があります。そして東洋では、観音菩薩のすむ補陀洛山(ポータラカ)という海上の楽園があると信じられていました。海を活用した、美しい理想郷。それは、島でありまた半島にあると考えられていたのです。私は、そんな理想郷を思い浮べながら、海と山を総合的に活用した生活環境づくりと文化、産業の振興を計画化・具体化し、紀伊半島、そして和歌山県を世界に誇れる海洋王国にしていきたいと考えています」──名文であります。それは知事の哲学であります。海に生きた、ふるさとを海に持つ知事の名言であります。そしてそれは、政治の哲学でもあります。
 この明るさに満ちあふれた海洋王国の理念。そして原発。どうも最近は「原発」というと言う私の顔まで暗くなる。答弁する人も暗くなる。その暗いイメージを持たす原発立地と明るさに満ちた海洋王国の理念との矛盾──私はあえて矛盾と言いたいが、その矛盾について、もうぼつぼつ、わしの書いたこの文章の原点に戻る方が正しいんではないかと知事は考えていないかどうか。「はい」とは言わないだろうけれども、その所見を再び伺っておきたいのであります。
 以上で、原発を終わります。
 田辺市は、既に昨年の夏、丸紅による田辺湾岸リゾート開発の大綱計画を明らかにし、今後の具体的な作業に入ろうとしております。引き続き白浜町は、南紀白浜温泉の玄関口・綱不知湾岸を中心としたリゾート開発のため、町議会にこれが調査費一千百万を計上し、その策定調査に着手しようとしております。
 三月七日、地方紙はもとより朝日、読売、産経、毎日の各紙は一斉にこのことを報道したところでありますが、その大要は次のとおりであります。いろんな新聞が書かれておったのを、四、五社のものを私流に要約して書いたのですが、こういうように報道している。
 「綱不知湾は白浜温泉の中心街から東約一キロにあり、入り江の深い波静かな良港。昭和二十一年の南海震災や三十五年のチリ津波などにより、海岸施設が補強されてきた。─中略─このため、町は同湾岸の保全と漁港整備も兼ねて周辺一体の海岸線と交通対策上の道路整備に乗り出すもので、町は『リゾート時代の観光地にふさわしい海岸を総合開発したい』としている。しかし、同湾の埋め立てには住民の反応複雑。同湾は田辺湾南側の奥深い入り江で、昔から漁船を陸につけても綱が要らないほど波静かで、綱を知らないという意味で『綱不知』とか『風なしの港』と呼ばれ、沿岸漁民や地域住民の安らぎの海である。また、美しい景観と深い海は万葉の時代から人々の心をとらえ──ここでも「万葉」が出ている──『風莫の濱の白波いたづらに此處に寄せ來る見る人無しに(柿本人麻呂)』と万葉の歌人にも歌われている。また、マリンリゾートの本質は美しい海を保護することでそれを破壊するのは逆効果等、反対の意見が出ている。また、ここを埋め立てるとなると地元や文化人から反対の声が上がるのは必至で──この後の文章、新聞に書いてるんやから──第二の不老橋になるという指摘もある」──小さい声で言うても聞こえますね。これに対して町当局は、「除去したヘドロや土砂で人工島をつくる構想だが、十分調査して地元住民と懇談会を開いて柔軟に対応したい」と書かれているのであります。立派な報道であると思います。
 私は、さきの九月県議会において田辺湾岸リゾート構想の概要についての質問や意見を述べたが、今、ようやくリゾート創成の時に当たり、県の基本的な方針とこれが自治体や関係者への指導理念、その意識統一の必要性を痛感するものであります。
 その第一は、何といっても住民の納得と合意の形成であります。それは開発OKという単なる筋論ではなくて、その開発を住民みずからのものとし、その開発によって住民の生活がより高まり、また環境がより向上するのかどうかという点での合意形成であります。
 その第二、自然と開発の調和であります。このことは、自然と開発とを足して二で割るといった形式的な調和論ではなくて、開発は自然に従属すべきもの、つまり開発によって残すべき自然がより価値あるものとして生かされるという、自然優位に立った開発でなければならないという論点を貫くことであります。
 その第三は、開発地点での歴史や文化、とりわけ史跡等に着目し、それらをより一層輝くものによみがえらすという立場であります。
 今、大まかに申し上げたこれらの考え方を、開発に当たる行政や企業に対して確固たる指針にまで高めることであろうかと思います。「難しいことを言うのう」、「そんなこと言うてたら企業ら来るもんか」と人は言うかもしれない。さにあらず、白浜には二つの企業が以前来ました。そんなこと言うてたら企業ら来るか、そうではないと。よきものを残し、自然の優位性を保護し、それをさらに発揚していく、そしてよりよき生活環境をつくり出し、文化や歴史を高めることに我々はいささかも悔いを残してはならないからであります。その指導理念を問うものであります。
 ──ちょっと初めに力み過ぎて、あと十四枚ある。つらいな、こりゃ。
 次に、空港対策について二つ申し上げたいと思います。
 A、「過日御指摘を受けました当空港対策室職員による空港用地に係る相続関係調査につきましては、貴台を初め御親族の方々に御心労と御迷惑をおかけし、まことに申しわけありません。(中略)今後、二度とこうした御迷惑をおかけすることのないよう十分注意していく所存であります。略儀ながら、書状をもちましておわび方々お願い申し上げます。六十三年六月二十八日」。昨年の六月です。
 B、「先般は、当建設事務所駐在職員が空港建設業務の相続関係調査において貴殿初め御親族の皆様に多大の御迷惑をおかけしましたこと、大変申しわけなく思っております。(中略)御指摘をいただき、早速陳謝申し上げたところでありますが、重ねて書状をもっておわび申し上げます。六十三年七月四日」。
 この書状は、それぞれ白浜町総務部長並びに空港建設事務所長のわび状であり、極めて適切なものであります。この内容について詳細を話すことは省略いたしますが、空港用地買収の該当地に居住するAさんに対し、用地買収の取り組みの一過程における不手際についての反省と陳謝の文章であります。これは、昨年の夏のことであります。
 先日、田辺市でお医者さんの組合をつくるんだという総会があって、私も西牟婁の県会議員の皆さんと同席させてもらったんですけれども、その会合で、たまたま西口副知事のそばに座っておったんですが、副知事から「きのう──きのうというのは二月二十四日のことを指します──紀伊民報に大きく報道されとったあのことよ。ほんまに悪いなあ。ああいうこと載っておったのはつらかったよ」と、遺憾の意を込めて話をされておりました。その内容は、「地権者カンカン! 新空港建設事務所 無断 樹木伐採連絡せず測量調査 県、用地交渉を控え困惑」の見出しであります。
 簡単に言えば、空港全体の実施設計をするための準備作業で、建設事務所は建設用地百五ヘクタールの中に含まれているAさんの山林を、何の連絡もせず、また本人の了解も得ず、勝手に伐採したのであります。伐採された翌朝、Aさんから私に連絡があり、今後の対応策について、前にもあんなことあったしこれは弱ったなと、そういう話をしておったんです。別に私はそのことを秘密にしようとも何とも思ってなかったけれども、「紀伊民報」の記事を見て二度びっくりしたのであります。やっぱり新聞記者というのは大したもんや、黙っておっても三日後にはぱっと載っておると、この取材の速さに敬意すら覚えたのであります。
 最初に読み上げた文書二通の件は、昨年の夏、私がAさんから御相談を受け、御本人の納得を得るように話し合った結果が、紹介したA、B二つの書状となったんです。何としても空港建設に支障があってはならないとする小さな私の思いからだったし、また、今申し上げた伐採の件についても、誠意を込めて、もうちょっと日を置いて、相手の立場を十分お聞きしてゆっくり話をしようと、その対応に私自身も熟慮していたのであるが、この二回にわたる行政対応の特徴は、いずれも本人の了解を得ていない、本人を無視した、人権にかかわるものであります。
 人はだれもが失敗を繰り返すものである。しかし、相手の人権を無視するがごとき行政の対応は、そしてそれが、和歌山県の片隅に住み営々として四十有余年、第二のふるさととしてこの地を定め、開拓し、農業一筋に生きてこられたAさんへの対応であってはならないのであります。
 空港建設のプロジェクトの中で、やがてこの地からどうしても離れなければならないAさん。今、どこに替え地を求めたらいいのか、住居はどうなるのか、農業は、花づくりはどこでさせてくれるんかといった気持ちが錯綜しているのであります。最初、空港建設と聞いたときには戸惑いをした、しかし今ではすっきり賛成の立場になってくださっているAさんに対するこの二つの行政対応、文書で読み上げて説明することは簡単であっても、数十時間いろいろお話を伺った私にとっても、憤りを感じるのであります。土木部長の答弁を求めるものであります。
 いま一つ、本定例会冒頭、知事はその説明要旨の中で南紀白浜空港東京便の増便について述べられたが、この増便について御努力を払われた関係者の皆様に、大江県議ともども心から感謝をいたしたいと思います。
 いよいよ白浜空港も本年度より土地買収に着手、またこれが関係の整備等、県、町ともども努力を払われつつあるが、私は、やがて完成されるであろうその日までに、白浜空港の空路の確保対策について今から準備すべきものと思うのであります。
 過去、白浜空港は大阪、名古屋への空路を持っていたが、関係者の努力にもかかわらずこれらの二線が廃止となったことは御承知のとおりであります。そこで私は、この際、この空港を起点とした、また中継基地とした、白浜と四国を結ぶ仮称「黒潮ライン」あるいはまた九州等、今後の経済や観光の動向に着目する中で、これらの空路創設の方針をもうぼつぼつ検討するとともに、フライト農業・水産等の運輸空路等についてもぜひ検討を開始すべきものと思うが、御所見を伺うものであります。
 次に、保育行政について。
 核家族化に伴う家族構造の変化、生活環境の変化、婦人就労の増大、勤務時間の多様化、通勤距離の遠隔化等、さまざまな条件の重なる中で、今日、保育需要も多様化し、また保育所の役割も質量とも増大しつつあることは周知の事実でありますが、今日はまた全国的に、都市部等を中心にいわゆるベビーホテル等の保育施設の増加も見られる趨勢にあります。
 さて、本県における保育所の概要は、ほぼ次のとおりであります。公立保育所、社会福祉法人保育所合わせて二百三十九園、措置児童数二万九十名、その充足率は八八%、また僻地保育所五十二、措置児童数千百九十八名、充足率六三%、六十二年度決算額、国庫負担金十九億四千二百余万、また県費負担額九億七千百余万、市町村負担額合計同額であります。
 ちなみに私の町・白浜町では、町立四園、法人三園、両園合わせて六百五十名の定員に対し、充足率八八%、五百七十二名の児童の入所状況であります。町立・法人両園の共同によってこの町の保育行政は財政的負担やさまざまな努力の中で円滑に進められておりますが、保育所数の少ない市町村の中には、行政から落ちこぼれた児童や長時間保育にこたえ切れない保育所等の現状、乳児産休あけ保育や親の就労時間を保障する中から共同保育所や無認可保育所が生まれてきたのも、また当然であります。
 また、それらの無認可保育所は、客観的にはそれぞれの市町村の保育行政、大きくは県の保育行政をも助けていると言っても過言ではありません。県は、保育時間の延長に対する需要にこたえるため、長時間保育を実施する公立・法人の保育所に対し、本年は新たに二百万の補助経費を計上しているが、きめの細かいその視点に私は敬意を表したいのであります。
 しかしながら、先ほど来述べた無認可保育所はそのらち外であり、また行政という筋から疎外されているのであります。しかし、無認可保育所に通わざるを得ない児童もまた、立派な県民であります。
 某月某日、私は御坊市にある「たんぽぽ保育園」に足を運んでみたのであります。坪数六十坪、その周りに畑があり、児童定員は、ゼロ歳児三名、一、二歳児十一名、三歳児三名、四歳児一名、計十八名、保育担当者六名、板の間と畳、廊下、運動場、少ない遊び器具、小さな保育園であります。しかし、その部屋の片隅に張られた次のような言葉に、私は小さな感動すら覚えたのであります。
 「自然の中にいると 人は誰でもやさしくなれるという 道ばたの小さなイヌフグリの花にみとれ みどりの中で 心を洗われながら 子供たちと歩きつづける日々 澄みきったそのひとみは何を見つめているの 貴方たちのその光るひとみに見つめられたら まぶしくて ちょっぴりはずかしい こぼれるような ほほえみに出会う時 ほんわかと しあわせなきもちになってくる 私たちにゆめと希望を与えてくれる たんぽぽっ子たち 想い出してください 目をとじて 幼い頃あそんだ あの原っぱを たんぽぽ笛を ならしたり レンゲをつんだり 日のくれるまで あそんだことを お日様の光を いっぱいあびて 山道を田んぼのあぜ道を かけまわる たんぽぽっ子たち 私たちも子供らといっしょに つい メルヘンチックになって 四つ葉のクローバーを さがしているのです」。
 共稼ぎの親たち。仕事の関係で遅くなった夕方の六時過ぎ、教師である父が子供を迎えに行く。二歳の女の子は泣き出しそうになって「パパ」と言って飛びついていく。でもその子供は、「先生バイバイ」という言葉は忘れない。
 共稼ぎの親たちにとっては一日一日が生活との闘いであり、その日々の積み重ねの中で、無認可保育所で一日の大半を過ごしながら子供たちは育っていく。そしてこれが、世界第一とか言われる経済大国の庶民の生活であります。私は、そんな庶民の日々の生活を知っている。そして、この庶民の暮らしの中から子供たちを見詰め、その若い父、母、そして保母さんたちとともに、県政に一つのことを求めたいのであります。
 設備も財産もない無認可保育所。また、土地すらも他人から借りている無認可保育所。でも、そこに集う、いや集わなければならない子供たちのために、父や母、保母さんたちは励まし合い、その中で子供たちは育っていく。
 私の調査では、千葉、愛知、静岡、神奈川、北海道、東京都、また大阪府下二十七市のこれらの無認可保育所には、それぞれの形態を異にしながらも温かい予算、補助金が支出されている。「よその府県がそのようなことをやっているから」といった設問は余り好まないので、ここでは深くそれらの具体的例を述べることは差し控えておくが、私の言いたいことは、政治は時には激突や激しい争いを巻き起こし、行政もまた厳しいきょうこのごろではあるけれども、政治はまた一面、ソフトで優しくもなければならない。県下十数カ所に点在する無認可保育所への配慮ある補助制度の創設をぜひ実現されるよう、答弁を求める次第であります。
 以上で、終わります。
○議長(西本長浩君) ただいまの浜本収君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 浜本議員にお答え申し上げます。
 原子力の問題については関係部長から答弁いたしますけれども、原子力発電立地とともに、私の言う海洋王国理念について述べたいと思います。
 御指摘の問題につきましては以前にもお答えしたところでございますけれども、今後の海洋開発というものは、漁業振興や観光利用だけではなしに、海洋研究、エネルギー開発あるいはリゾート開発といった多面的な開発利用が期待されているわけでございます。こうした面からも海洋開発と発電施設の立地は併存することはあり得ると考えてございますが、今後なお一層、調査研究が進められるものと考えられているところでございます。
 以上でございます。
○議長(西本長浩君) 企画部長川端秀和君。
 〔川端秀和君、登壇〕
○企画部長(川端秀和君) 原子力発電立地についての五点の御質問にお答え申し上げます。
 まず第一点は、温排水対策の予算についてでございます。
 電源立地地域振興事業費として二千四百万円をお願いしてございますが、これは全額、国庫補助金でございます。このうち二千万円は日高町への補助金で、日高町は電源立地地域温排水対策費補助事業及び重要電源等立地推進対策補助事業を行うこととなっており、県の事業費は関係機関との連絡調整等でございます。
 なお、昭和六十三年度と比較して減額となっておりますのは、日置川町分を計上していないことによるものでございます。
 第二点は、温排水対策補助金の目的についてでございます。
 電源立地地域温排水対策費補助金は、電源開発促進対策特別会計法に基づいて通産省が交付するもので、発電用施設の設置の円滑化に資するため、発電施設から排出される温水の有効な利用方法の実施に関する調査に要する費用に充てられるものでございます。
 その内容としては、温排水を有効に利用して漁業振興に資するもののほか、地域の漁業の実態に即した調査として漁場環境調査、漁場資源調査、漁業振興に資する指導研修事業などを実施するため設けられた制度となってございます。
 第三点は、通産省から漁協に補助金を直接交付することについてでございますが、制度上そうした方法もあり得るということにつきましては、昨年十二月の議会で御答弁申し上げたところでございます。
 なお、国から県を経由しないで直接民間団体等に補助金が交付される事例としては、通産省関係では中小企業指導事業や民活法に基づく事業、厚生省関係では食品衛生協会や食生活協会への活動費補助等々、幾つかの事例がございます。
 いずれにしても、国の制度上の問題でございまして、極めて難しい問題であろうかと考えますが、今後の課題としてまいりたいと存じます。
 第四点は、近隣町議会の動向についてでございます。
 昨年六月、日置川原発反対白浜町民連絡会議から白浜町議会に対して、日置川への原子力発電所立地計画に反対する意見書の提出を求める請願が提出され、白浜町議会総務委員会において審議されていることは承知いたしてございます。
 県としては、従来から申し上げているとおり、三原則の一つである地元の同意については、事前調査の段階では立地町、建設段階では立地町とその隣接市町村のそれぞれの市町村長及び議会の同意が必要であると考えてございまして、この基本姿勢で対処しているところでございます。
 なお、白浜町議会に対して何らかの働きかけをしたのではないかとのお尋ねにつきましては、そのような事実は把握してございませんが、審議の成り行きには関心を寄せているところでございます。
 第五点は、紀南でのリゾートシンポジウムについての感想と原発との関連についてでございます。
 去る二月二十五日、田辺市で開催されたリゾート開発シンポジウムは、議員御紹介のとおり、千二百余人参加のもとに大変盛会裏に開催されたところでございまして、このことは、とりもなおさず紀南地方の方々のリゾート開発に対する熱い期待のあらわれであると受けとめてございます。
 このことを原子力発電所の立地と関連してどう考えるかという点については、きのうも田中議員にお答えしたとおり、この二つのテーマはそれぞれの地域が持っておる立地条件によっておのずと手段、方法が異なってくるものと考えますが、ともに豊かな地域開発を目指して検討しなければならないテーマであると認識をいたしてございます。
 本県にあっては、現在、燦黒潮リゾート構想の承認やリゾート開発の具体化に懸命の努力を続けているところであります。一方、原子力発電所の立地問題についても三原則に基づいて対処いたしているところでございます。
 この二つのテーマについては必ずしもなじみがたいテーマではないものではないかと考える次第でございますが、なお、リゾート先進国である諸外国等をも参考にしながら調査研究を重ねることが必要であると考えてございます。
 次に、リゾート開発とその基本理念についてでございます。
 リゾート法の制定に当たっては、国民の多様化する余暇需要への対応、あるいは内需拡大による国際摩擦の解消、さらには第三次産業を中心とした新たな地域振興策という背景から国家的課題として取り組まれたところでございますが、本県にとっても海洋、山岳、河川、さらには温泉、歴史文化等の本県の恵まれた地域資源を最大限に活用できる事業であり、また最も本県に相ふさわしく、かつ有効な施策であると認識をし、第四次長計及び半島振興計画にも位置づけ、その推進に取り組んでいるところでございます。
 今後、リゾート開発の推進により、雇用の増大、滞在者の消費に伴う地域経済への波及効果、農林水産業や地域産業等の振興、さらには魅力ある快適な地域づくりによるリサーチ産業、ハイテク産業の立地の促進等、広範な地域振興が期待されるところでございます。
 こうした考え方のもとに燦黒潮リゾート構想の推進に取り組んでいるところであり、その実現に向けては、民間活力の導入とともに、地元の自発的、主体的な取り組みが不可欠であると考えてございます。推進に当たっては、本県の貴重な資源である自然環境や歴史文化との調和を図りながら、良好な生活環境と潤いのある地域づくりを基本として取り組んでまいりたいと存じます。
 最後に、南紀白浜空港の空路の開設についてでございます。
 議員御指摘のとおり、南紀白浜空港のジェット化整備に伴い、現在就航している東京便のほか、新規路線の開拓が今後の紀南地域の農林水産業を初めとする産業の活性化、観光の振興、さらには当空港の有効利用という観点から見ましても、今後検討すべき課題であると考えてございます。
 また、コミューターやヘリコプターによる定期便の就航につきましても、今後、関係部局と十分連携を図りながら対処してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(西本長浩君) 農林水産部長安田重行君。
 〔安田重行君、登壇〕
○農林水産部長(安田重行君) お答え申し上げます。
 この調査は、温排水有効利用を検討するに当たっての基礎調査であり、地域の沿岸漁業との関連性についての調査でございます。
 十二月議会でお答えいたしましたように、水産動植物の生息状況等、周辺海域の漁海況調査を得ることを目的として行っているものでございまして、今後とも必要に応じて技術的な指導助言を行ってまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(西本長浩君) 土木部長松永安生君。
 〔松永安生君、登壇〕
○土木部長(松永安生君) 議員から御指摘がございました、今回の南紀白浜空港の土地買収の対応をめぐって職員が起こしたトラブルにつきましては、職員間の連絡不十分が原因で起こした行為であり、遺憾に思っておる次第でございます。
 地権者の方からは御理解をいただいておりますが、今後は責任分担とチェック体制が間違いなく機能するよう心がけ、再度このような事態を起こさないよう努めてまいる所存でございます。
○議長(西本長浩君) 民生部長高瀬芳彦君。
 〔高瀬芳彦君、登壇〕
○民生部長(高瀬芳彦君) 保育行政について、お答えいたします。
 近年、婦人の就労等の増加で保育に欠ける児童も増加し、計画的に保育所の創設、定員増を図ってきたところでございます。現在は児童数の減少等により、議員御指摘のとおり、充足率は八八%となってございます。
 一方、本県においては、多様化する保育のニーズに対応するため、乳児保育促進事業や障害児保育事業、さらに来年度から県単独事業として長時間保育事業を行うことを予定してございまして、保育事業の充実に努めてございます。
 現在の無認可保育所については、認可保育所として運営ができないかどうか関係の市町村と話し合い、指導を行っていきたいと思います。
 以上でございます。
○議長(西本長浩君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 34番浜本 収君。
○浜本 収君 時間がありませんので、簡単に質問をいたします。
 知事が、原発についての答弁で「併存」するという言葉を使われた。前は「共存」すると言うていた。平成元年やから「併」と言うたんか。「併存」と「共存」、別に他意はないんですか。これ、個々の解釈はいたしませんけれども、「併存」と「共存」、どういうニュアンスの違いがあるのか、ちょっと気になりますのでお答え願いたいと思う。
 企画部長。
 私が温排水対策費補助金は原発を目的としていると言ったが、最近、企画部長や農林水産部長も「原発」という言葉が嫌いになったんかな。何か、「電源発電用施設」とか「発電施設」とか。私は火力発電なんか聞いてないんです。「原発」と言うている。しかし、部長らは「原発」という言葉を使わん。使わんというのはやっぱりこのごろ嫌いになってるなと、私はそういう解釈をしておきます。これは質問ではありません。
 二月十五日、先ほどもちょっと述べましたが、日置川町市江の沖で、その温排水調査事業について、もう船が出てそれをやるということになった。現地では集会を持って、沖でアピールするという話、あるいは直接、そんな船は間違うてるやないかと乗り込んでいくと、そういう阻止をする構えの運動があったんです。
 私はその現地に行って、それはやめておきなさいと言うて、大分時間がかかって、そういうことをしないことになったんですが、もしそういうことになっても、今のようなシステムでは、県は「予算に関係ないから知らん」、町も「知らん」ということになると思う。しかし、行政というのはそういうわけにはいかない。そういうものを包括的に包んでいくのが行政でなかったらいかん。事原発に限ってはそうなっている。
 もしそこで何かあった場合でも、東京で通産省の役人が朝コーヒーを飲みながら新聞を見て「ああ、そんなことがあったんか」という程度のもの。新聞を見ているのが関の山です。そういう原発の重大性から見ても──食品のいろんななにがあるということ、それは後刻、資料を要望しておきますけれども、そういうこととは違って、先ほどからいろいろ説明したとおり、原発の重大性から見てもこのような申請・交付の手続は間違いであるということをまず国に向かって宣言すべきと思う。答えられたい。
○議長(西本長浩君) 浜本議員にお願いいたします。
 三分以上経過しましたので、よろしくお願いします。
○浜本 収君(続) わかっております。お許しを願いたいと思います。
 白浜町議会に対する働きかけについてのあれがなかったけれども、それは私が知っておるんでありますから、どなたか答えられたいのであります。
 終わります。
○議長(西本長浩君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 浜本議員にお答えします。
 「共存」と「併存」、別に深い意味はございません。
○議長(西本長浩君) 企画部長川端秀和君。
 〔川端秀和君、登壇〕
○企画部長(川端秀和君) まず第一点は、行政のあり方の問題であります。
 先ほどもお答え申し上げましたように、地方公共団体を経由せずに国から直接各種団体に補助金が交付される制度はございますし、その実例もあるわけでございます。
 補助金に関する国の制度を変えることは大変難しい問題であろうかと考えますが、今後の課題としてまいりたいと存じます。
 第二点目は白浜町議会に対する働きかけの問題でございますが、関心を寄せているところでございまして、情報収集は必要であるというふうに把握をいたしております。
 以上です。
○議長(西本長浩君) 答弁漏れはありませんか。──発言時間が終了いたしましたので、以上で浜本収君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
○議長(西本長浩君) この際、暫時休憩いたします。
 午前十一時五十二分休憩
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