平成元年2月 和歌山県議会定例会会議録 第7号(全文)


県議会の活動

 平成元年 和歌山県議会二月定例会会議録 第 七 号
 
 三月 十五日 (水曜日) 午前 十時 六分 開議
   午後 一時三十八分 散会
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議 事 日 程 第七号
   平成元年三月十五日(水曜日)
   午前十時開議
 第一 議案第一号から議案第八十五号まで並びに報第一号及び報第二号(質疑・委員会付託)
 第二 一般質問
 第三 請願付託
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本日の会議に付した事件
 第一 議案第一号から議案第八十五号まで並びに報第一号及び報第二号(質疑・委員会付託)
 第二 一般質問
 第三 請願付託
 第四 休会決定の件
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出 席 議 員(四十五名)
 1 番 井 出 益 弘 君
 2 番 和 田 正 一 君
 3 番 町 田  亘 君
 4 番 中 村 利 男 君
 5 番 山 本  一 君
 6 番 宗  正 彦 君
 7 番 岡 本  保 君
 8  番 鈴 木 俊 男 君
 9 番 阪 部 菊 雄 君
 11 番 平 越 孝 哉 君
 12 番 大 江 康 弘 君
 13 番 中 西 雄 幸 君
 14 番 橋 本  進 君
 15 番 古 田 新 蔵 君
 16 番 浦  武 雄 君
 17 番  堀 本 隆 男 君
 18 番 宇治田   栄 蔵 君
 19 番 下 川 俊 樹 君
 20 番 石 田 真 敏 君
 21 番 木 下 秀 男 君
 22 番 中 村 隆 行 君
 23 番 藁 科 義 清 君
 24 番 門  三佐博 君
 25 番 尾 崎 要 二 君
 26 番  那 須 秀 雄 君
 27 番 木 下 義 夫 君
 28 番 上野山 親 主 君
 30 番 尾 崎 吉 弘 君
 31 番 西 本 長 浩 君
 32 番 岸 本 光 造 君
 33 番 松 本 貞 次 君
 34 番  浜 本  収 君
 35 番 和 田 正 人 君
 36 番 浜 口 矩 一 君
 37 番 山 崎 幹 雄 君
 38 番 貴 志 八 郎 君
 39 番 田 中  実三郎   君
 40 番 森  利 一 君
 41 番 村 岡  キミ子   君
 42 番 森 本 明 雄 君
 43 番 中 村  博 君
 44 番 中 村 千 晴 君
 45 番 小 林 史 郎 君
 46 番 渡 辺  勲 君
 47 番 藤 沢 弘太郎 君
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欠 席 議 員(二名)
 10 番 部 矢 忠 雄 君
 29 番 平 木 繁 実 君
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説明のため出席した者
 知 事 仮 谷 志 良 君
 副知事 西 口  勇 君
 出納長 梅 田 善 彦 君
 知事公室長 市 川 龍 雄 君
 総務部長 斉 藤 恒 孝 君
 企画部長 川 端 秀 和 君
 民生部長 高 瀬 芳 彦 君
 保健環境部長 尾 嵜 新 平 君
 商工労働部長 花 岡  弘 君
 農林水産部長 安 田 重 行 君
 土木部長 松 永 安 生 君
 企業局長 吉 井 清 純 君
 以下各部次長・財政課長 
 教育委員会委員長
  上 野  寛 君
 教育長 高 垣 修 三 君
 以下教育次長
 公安委員会委員 玉 置 英 夫 君
 警察本部長 津 和 孝 亮 君
 以下各部長
 人事委員会委員長
  寒 川 定 男 君
 人事委員会事務局長
 代表監査委員 宮 本 政 昭 君
 監査委員事務局長
 選挙管理委員会委員長
  浜 崎 浩 洋 君
 地方労働委員会事務局長
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職務のため出席した事務局職員
 事務局長 山 本 恒 男
 次 長 倉 本 辰 美
 議事課長 栗 本  貞 信
 議事課副課長 中 西 俊 二
 議事班長 荻 野  薫
 議事課主査 松 谷 秋 男
 議事課主事 石 井  卓
 総務課長 神 谷 雅 巳
 調査課長 西 村  明
 (速記担当者)
 議事課主査 吉 川 欽 二
 議事課速記技師 鎌 田  繁
 議事課速記技師 中 尾 祐 一
 議事課速記技師 保 田 良 春
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 午前十時六分開議
○議長(西本長浩君) これより本日の会議を開きます。
○議長(西本長浩君) 日程第一、議案第一号から議案第八十五号まで、並びに知事専決処分報告報第一号及び報第二号を一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 26番那須秀雄君。
 〔那須秀雄君、登壇〕(拍手)
○那須秀雄君 今定例議会は当初予算議会でございまして、初日から大変立派な一般質問を一生懸命聞いてまいりました。まことに聞きごたえのある議会でございました。ここまで参りまして、もう先輩各議員からいろんな御提案、御提言がございましたので、私はいささか毛色の変わった一般質問になろうかと思いますが、お許しを願いたいと思います。
 「飽食暖衣逸居して教無くばすなわち禽獣に近し」──二千年もの昔、時の権力者、富豪に対して中国の賢人・孟子が戒めた言葉であります。今、二千年の歳月を経て、私たち日本人すべてがこの戒めをかみしめるときではないかと思うのであります。あり余る物質文明の中で人々は物欲に狂奔し、口に文化を唱えながらも、人としての最も大切な本質を忘れ、堕落の潮流に押し流される風潮はないかと、厳しく反省すべきときではないかと思うのであります。少なくとも、政官財界に君臨する人々にとって、まさに心して傾聴すべき重い言葉と言わざるを得ないと思うのであります。
 今、リクルート疑惑の中でうごめいている人たちは、世界的にも恵まれたいわゆる飽食暖衣の階層なのであります。貧しさゆえに罪を犯す、すなわちジャン・ヴァルジャンのようなケースは洋の東西を問わずよくあることでありますが、最高に恵まれた人々がさらにおのれの物欲、権勢欲に目がくらみ、よくもこれほど、ばらまき、危険な金とわかりつつも手を出したものであります。その結果が今のリクルート疑惑とするならば、世の指導者として厳しくおのれを律し、また、人間としての道徳心を忘れ教を怠った禽獣に近い恥ずかしい行為として、責めらるべきことであります。物質の豊かさゆえの堕落と言わざるを得ません。政治不信を招いた今日の風潮は、心の貧困、文化の低さが招いた結果であります。政治改革や倫理綱領などという小手先でぬぐい得るものではありません。けじめをつけ、出直すべきであります。
 さて、和歌山県でありますが、四期十四年、「まごころ県政」を標榜して恩情知事と言われてきた仮谷知事であります。この二年間、知事さんの真正面に座ってお顔を拝見してまいりました。まことに立派な顔であります。これが温顔というのでありましょうか。私も十年たったらこんな顔になりたいなという気をしておるのであります。
 そこで、政治不信で揺れ動く日本国にあっても、少なくとも百八万県民は仮谷志良を信頼し、豊かな心を失うことのない立派な県民性を確立しようではないかと、知事さんのその温顔で呼びかけていただきたいと思うのであります。また、県民の側から見れば高い地位にあるのが県職員の皆さんであります。厳しくおのれを律し、新しい平成の時代を期し、文化の薫りの高い県行政を打ち立てようと職員に対して大号令を発すべきときではないかと思いますが、いかがでございましょうか。
 「たらい半切りを笑う」という例えがあります。国政に対して厳しい批判をする我々でありますが、少なくとも県政も、また県民からそのそしりを受けるようなことがあってはならないと思うのであります。
 私のおじいさんが教えてくれたことがありました。「カラス黒鳥を責める」という言葉であります。カラスがカラスを見て「お前はカラスと違う。黒鳥や」と言うてつついてつつきまくった。まあ、今の国会における論議を聞いていると、いささかカラスが黒鳥をつついているような気もするのであります。そうあってはならない。我々が国政を責める。その場合、県政は国政とは違う、県民に信頼される立派なものを打ち立てなければならないと思うのであります。
 さて、そこで、おのれ自身を振り返ってみたいと思います。平成元年度の予算案の中では、議会棟の基金の積み立て三億円が上程されております。「議会の権威」──よく言われる言葉であります。議会の権威や議会の品位を高めるのは、入れ物ではなく議員そのものであることを思うのであります。議員としてこの予算を眺めながら、さらにさらに研さんを積まなければならないと思うのであります。
 また、議員歳費のアップも上程されているのであります。百八万県民の中で、県会議員の待遇は決して軽いものではないと思うのであります。その上、与えられた職権、職能、職員の議員に対する気遣い等々、考え合わせると大変なものであります。人は皆、時としておのれを見失うことがあると言われております。多くの県民の負託を受けて県民注視の中で重大な職責を課せられたおのれを思うとき、時としてそら恐ろしくもなるのであります。あふれるばかりの物質文明の中にあって、権力のぬるま湯に浸り、豊かさゆえの堕落に落ち込まぬためには、常におのれの心に警鐘を乱打しつつ、物や金より人としての質の向上に邁進すべきであると、みずから反省するものであります。まさに「飽食暖衣逸居して教無くばすなわち禽獣に近し」と、おのれの心に言い聞かせるべきであると思うのであります。
 そこで、予算案編成に当たって議員歳費アップを上程されたその真意が那辺にあるのか、お聞かせを願いたいと思うのであります。
 さて、文化であります。
 私は、若いころからたびたび和歌山市を訪れる機会がありました。それは、和歌山市が県都であるからであります。県会議員になって二年間、草深い田辺から和歌山に、言いかえれば、ひなから都に、通い続ける日が多くなりました。ひなから都会へ、都会から田舎へ、人々が文化を求めて移動する中で、私はこの和歌山市で文化の薫りに接することが少し少ないのではないかと思っておるのであります。
 しからば、文化とは一体何なのでありましょうか。ある人は、それは人の幸せをつくることだと言います。ある人は、人々が幸福感を持つことだとも言われております。しかし、人により幸福感というものは、その尺度が異なるものであります。ある人は幸せを物質に求め、ある人は豊かな心に求めるものであります。
 「文化都市の建設」とか「文化国家樹立」とか、耳にさわやかな言葉でありますが、文化とは、一言にして言いあらわせないものであります。文化の定義に思い悩み、幾多、先人の門をたたき、賢人の残した書物を頼ったこともございました。その中で、ある宗教の大家が教えてくれた古い言葉が今も鮮烈に残っているのであります。
 文化とは人がつくり出すものであります。「人は地にのっとり、地は天にのっとり、天は自然にのっとる。自然とは、みずから然あるものなり。その自然から、人から、文化が生まれる。人そのものが文化である」と教えられたことがあります。難しく考えずに単純に考えれば、みずからの態度、立ち居振る舞い、言葉遣いがその人の文化そのものであります。いわゆる「らしさ」というものがその国の、その地方の、その組織の文化を築くものであると思うのであります。すなわち、県会議員らしさというものが、この県議会の文化をつくり出すのであります。県職員らしさというものが、県庁の文化をつくり出すものであります。
 今や飽食の時代、イギリスの服を着、イタリアの靴をはいた紳士、淑女が県庁を右往左往しております。その中でも、やはり「おはようございます」、「こんにちは」という一つのあいさつから文化が生まれるのであります。県庁を訪れる県民やお客に「何々の課はどこにあるんですか」と聞かれたときに「その向こう曲がったらあらいしょ」──これでは、文化の芽生えはないと思うのであります。
 和歌山市の玄関口、JR和歌山駅でタクシーを拾って「三年坂の岡公園の横の議員会館まで行ってよ」と言うたら「おいやん、そこやったら歩いていかんせ」と言われたと、阪部議員が言っております。こんな言葉を耳にしながら、徳川三百年の歴史の殿堂・伏虎の城の偉容もむなしい虚像としか映らないのは、私一人の感想でございましょうか。
 その和歌山で、突如として「万葉の文化を守れ」と新不老橋建設反対の運動が起こるのであります。少し驚いております。むしろそのことより、「望郷五月歌」や「秋刀魚の歌」等、すばらしい歌を残された大詩人・佐藤春夫先生や世界的な学者・南方熊楠先生、合気道創始者・植芝盛平先生、つい先ごろ亡くなられた文学者・有吉佐和子さんなど、偉大な文化人を生み出した土地柄であります。この偉大な先人たちをさらに顕彰し、思い起こす機会を多くすることが本県文化の高揚に欠かせないものでないかと思うのであります。どなたか、文化の高揚、文化についてお教えを願いたいと思いますが、いかがでございましょう。──まあ、文化担当の公室長にお願いをいたします。
 新聞は、その国、その地方の文化のバロメーターだと言われております。「文藝春秋」では日本の新聞に対して手厳しい批判を加えておるのも見聞きしておるのでありますが、総じて、日本の新聞は世界的にも立派だと思っております。特に文化面、スポーツ面で果たしてきた役割は、あの朝日新聞の高校野球を世界的なイベントにまで定着させるほどの力があるのであります。
 地方においても同じであります。私は、県下の他の地方のことは余り詳しくは存じませんが、例えば田辺地方には、戦後、早川崇先生を社主として復刊された、長い歴史を持つ紀伊民報社があります。これは、田辺地方の文化とともに歩んできたと言っても過言ではないと思うのであります。
 ちなみに、同社が文化・スポーツ面で主催・後援している事業について拾ってみたのであります。例えば、紀南地方で既に定着した紀南八高校春季・秋季野球リーグ戦、中国書画名宝展、和歌山独立美術クラブ展、近畿剣道大会──これはもう三十六回の歴史があります──映画「火垂の墓」、わんぱく祭「雪の祭典」など、昨年一年間で三十一の文化事業をしておるのであります。
 また、一昨年創刊された紀州新報社も非常に意欲に燃えております。田原総一朗先生を迎えての市民文化講演会、是川銀蔵講演会、全国経営者大会──これは東京でやっています──平和を考える映画と講演の夕べ、市民健康講座──これは年に十六回やっています──これらすべてで二十三回。これら両方合わせますと四十四回の文化事業がこの二つの新聞社によってやられておるのであります。まさにこの二つの新聞は、田辺地方の文化を守る灯であります。
 それにいたしましても、県都を中心としたこの地方に、文化事業を主催し、後援し、地方文化の高揚に貢献できる県紙的な存在のないことはまことに寂しい至りであります。関西国際空港の開港を迎えて、和田先生は国際都市への脱皮を大きく訴えておられます。マリーナシティの建設で文化都市・和歌山への脱皮をしようとしているところであります。非常に優秀なジャーナリストが大勢おられるのに、なぜ県を代表する県紙がないのでしょうか。
 私は、今こそ、和歌山、和歌山市の文化のルネッサンスのときだと考えるべきであります。ルネ新聞、ルネ文化と、私は思います。「あっしにはかかわりのねえことでござんす」というふうな顔をして済ませていいのでありましょうか。政界人、財界人、ここで立ち上がる人があることを心から期待いたしたいと思うのであります。これは、答弁せえと言うても無理やと思います。答弁は要りません。言いっ放しであります。
 さて、次に参ります。次も、文化であります。
 知事は、本県政策の大きな柱としてリゾート開発による県勢の活性化を目指し、燦黒潮リゾート開発に向けてまっしぐらに進んでおられますが、その中で一つ気にかかる点があるのでございます。日本列島総リゾート化の熱の中で、論議されているメリットの大部分は経済浮揚であり地域活性であります。ややもすると、文化の高揚、豊かな心の涵養ということが忘れられているのではないかということであります。
 リゾートとは、もともと、物質文明に飽き足らず、都会の喧騒を逃れて地域の文化や歴史、風土、心のぬくもりに接することを求める場を提供することではないかと考えるのであります。その目的が経済浮揚、地域活性の一点に絞られておると、リゾートを求める人々に後から「こんなはずじゃなかったのに」と言わせることになりはせぬかと心配するのであります。
 田辺市では、丸紅リゾート構想の実現を目指すとともに、学術文化ゾーンの設置の構想に取りかかっているのであります。リゾートの成功は、学術文化ゾーンの並立にこそ負うところが大であると考えている田辺市の方針は誤っていないと思うのでありますが、当局としてはどうお考えか、お聞かせ願いたいと思います。
 また、学術文化ゾーンの目玉として大学の誘致を考えておられるのであります。大学は大都市、地方都市──まあ田辺あたりはせいぜい高校やのというような古い発想を一大転換して、魅力あるリゾート地・田辺に大学の誘致を目指す心構えはないか、お聞きいたしたいと思います。学生の都会志向や教授陣の充足の困難さ等、いろいろな問題が山積しておる中ではありますが、考えようによっては、リゾートなればこそ立地が可能なものもあるのではなかろうかと思います。
 例えば、堀本議員の提唱のように、白浜・田辺地域の実情に合致したユニークなもの、例えばリゾート産業大学などというものを考えたらどうかということを提唱いたしたいと思うのでありますが、知事の所見を承りたいと思うのであります。
 最後に、農政についてであります。
 農政問題につきましては、先輩各議員より多くの意見が出され、集中されたように思いますので、私は二点だけ提言申し上げたいと思います。
 ミカンの改植については、県議会の果樹議連や農林水産常任委員さん、知事初め農林水産部当局の大変なお骨折りで改植助成金の予算を獲得されました。その御労苦には心から感謝を申し上げたいと思います。──ここから向こうは言うなと言われてあるんやけども。
 ミカンの改植補助金制度。私はやっぱり、ここへ来るまでに解決するのが農政だと思っておるのであります。せっかく生産意欲に燃えてつくり出した作物を、切ったらお金を上げます、お金を上げますから切ってくださいなどというのは、およそナンセンスであります。それから見れば、貿易赤字という言いがかりをつけて他国に自国のオレンジを押しつけてくるアメリカの農政の方が正しいと思うわけであります。国の農政としては正しい。
 それにしても、本県は我が国でも最も古いミカンの産地であります。紀伊国屋文左衛門の昔から聞こえたミカンの国であります。老木園の不良品種から優良品種への転換に対して県単独事業でもって助成をされている措置は、ミカン王国紀州を守る気骨に満ちております。高く評価するものであります。
 紀南地方(南部、田辺、西牟婁)でミカンの改植が進む中で、転換作物のほとんど、南部などは一〇〇%、梅への改植が進んでおるのであります。改植転換で梅に転換されるものが、三地区合わせておよそ三百町歩あると考えられております。この地方の梅は、世界一優秀な梅干しができるのであります。しかし、梅干しにも需要に限度があると思います。ここ三年、不作続きで梅干しの引き合いは続いておるのでありますが、ミカン転作の梅が成木となり、梅の習性である何年か続けての豊作が続くと、生産過剰になるのではなかろうか。
 そこで、ジュース等への加工研究の取り組みが必要であると思うのであります。また、ジュース会社やドリンク会社等、企業が既に食指を動かしているということも聞き及んでおります。ジュース工場を生産地に誘致することは、雇用の拡大でもあり、地場産業の育成でもあります。これは、地場産業ということになりますと商工労働部の方ですが、産業対策としてこのジュース工場の産地への誘致についていかがお考えか、お聞かせを願いたいと思うのであります。
 次に、「ことしも梅は不作やよ」、こういう声が聞かれます。暖冬異変で花が早く咲いた、あるいは花しんがなかった、ハチの飛ぶのが遅かったとか、いろんなことが言われておりますが、梅という作物はまことに難しいものであります。ミカンは、神奈川県から沖縄に至るまで既に産地化されておる作物でありまして、その研究、肥培技術は既にでき上がったものであります。
 梅は、これからの産業であります。したがって、この技術確立が必要ではなかろうかと思うのであります。農林水産部として、この梅の技術の確立、生産安定のために何とか、県、農協の指導者、生産者でお互いに持ち寄った技術、知識をもって生産安定を確立するための対策はないものでありましょうか。
 例えば、実験圃場。お金はそんなにかかりません。実験圃場をつくり、人の交流の中で確立していくという気構えはないのか、農林水産部長にお伺いをいたしたいと思います。
 本日用意をいたしましたテーマは、これだけであります。知事は、少年のころに学んだ学校にこんな歌があったのを思い出していただきたいと思います。「浮世の風は荒くとも、世も揺るがしな我が心、花は都に美なりとも、実るまことはひなにあり」──日本国でリクルートのあらしが吹き荒れておりましても、和歌山県では立派にまごころ県政が実るんだという、ひとつ確信を持って、自信を持って御答弁をお願いいたしたいと思います。
 終わります。
○議長(西本長浩君) ただいまの那須秀雄君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 那須議員にお答えいたします。
 近年、経済優先、物質の時代から心の時代へと移りつつあるわけでございますが、そうした中での県職員に対する姿勢の問題等でございます。
 お話のように、物が豊富になり生活も安定してきた反面、心が貧しくなっている点、私も同感でございます。私は常々、文化を初めとして産業、健康、福祉、あすの和歌山の創造は、何といっても人材、人にあるんではないかと思っておるわけでございます。また、県政を行う場合においても、県の指導力を発揮しなければならないという点からも、県庁職員の占める比重というものは非常に重要なことでございます。
 そうした面から、県政を行う者の心構えをはっきり持つように申しておるわけでございまして、まごころ県政をもって、県民の立場になって県政をともに推進していくという気概を持っていかなければならないと思います。
 特に、国際化、技術革新、長寿化といった変化の激しい時代でございますから、研修を積み重ね、自己を革新し、未来を先取りする能力がより一層県職員に求められていると思うわけでございます。そうした意味において、現在、県職員打って一丸となって努力しているところでございますけれども、なお一層そうした面について、自重自戒しつつ県政の推進に努めてまいりたいと思います。
 それから、議員の報酬でございますけれども、議員としての活動、社会的役割の重要性、また県の財政状況、物価水準の動向等を総合的に勘案したものでございます。昨年の二月に特別職報酬等審議会から答申を受けたんでございますけれども、本県の諸情勢にかんがみ、実施を延期してきたところでございます。しかし、その後の諸情勢の変化もありましたので、今回、新年度から答申のとおり改定をお願いしているところでございます。
 次に、文化とリゾートの問題でございます。
 お話ございましたように、リゾートとは、一般に「自然環境が豊かなところで滞在してスポーツや芸術その他に親しみ、より生活を楽しむところ」と言われており、リゾート法もそうした観点に立っているわけでございまして、田辺が現在進めつつあるリゾートについても、私は敬意を表するところでございます。
 したがいまして、リゾート地域と芸術・文化機能との一体の問題も考えられるわけでございまして、お話ございました大学誘致の問題等、リゾート地域で何をするかという問題もあるわけでございます。
 ただ、大学誘致ということは非常に厳しい問題であって、私の知事在任中も、近大の誘致、短大を御坊から和歌山へお願いして持ってきた程度で、相当いろんな難しい点がございます。やはり地元の市町村の熱意ということが大きな影響を持つと思うわけでございまして、そうした面において市町村ともども、大学誘致について、田辺市等においてございましたならば努力してまいりたいと思っておるところでございます。
○議長(西本長浩君) 知事公室長市川龍雄君。
 〔市川龍雄君、登壇〕
○知事公室長(市川龍雄君) 文化とは何か、偉大な先人たちを顕彰することが文化の高揚に欠かせないと思うがという質問でございます。
 御指摘のように、文化を定義づけることは非常に難しく、人々の価値観の相違により千差万別でございます。しかし一般的には、人間が心豊かな人間として、安定・快適な生活を営む上で必要なものを文化と言うのではなかろうかとも考えてございます。
 本県は、熊野、高野などの伝統文化を有しており、また伝統産業、豊富な文化財、南方熊楠翁、華岡青洲先生などに見られる人材など、すぐれた文化や産業を生み出してございます。このような風土、伝統を守り育てていくことが私どもに課せられた責務でもございます。
 中でも、本県が生んだ偉大な先人を顕彰することは極めて大切でございます。現在、本県が生んだ世界的偉人・南方熊楠先生を顕彰するために白浜町に記念館を設置し、その偉業を紹介してございます。また、新宮市においても佐藤春夫記念館の建設が進められ、さらに田辺市においては、昨年八月、植芝盛平先生の功績をたたえる国際合気道大会が盛大に開催されまして、その顕彰像が建立されたところでございます。
 このように、県内各地で偉大な先人を顕彰する機運が大いに盛り上がってきてございますが、こうした動きが本県の文化の向上、ひいては本県の活性化につながるものと認識いたしまして、今後ともそのための施策推進に、また町づくりや人づくりに、市町村、各界ともども協力しながら、さらに努力をしてまいりたいと考えてございます。
○議長(西本長浩君) 商工労働部長花岡 弘君。
 〔花岡 弘君、登壇〕
○商工労働部長(花岡 弘君) 果樹生産地へのジュース工場などの誘致についての御質問にお答えします。
 議員のお話にもございましたように、ジュース工場などを生産地に誘致することにつきましては、地域の一次産品を原材料とする産業振興あるいは雇用開発の面から大変有効な施策と考えられますので、これまでも企業誘致等に努力をしてきたところでございます。
 最近でも、有田地方に食品工場を誘致し、また西牟婁地方においても食品工場の立地を見ているところでございまして、このほかにもジュース工場等、食品関連企業の引き合いもなお現在あるところでございます。
 しかし、この果実等の加工については、原材料の定量確保、ある程度決まった量をコンスタントに確保できるかといった問題、あるいはその工場が一年を通じての操業ができるかどうかといった問題、あるいは生産の調整などのいろいろな課題もあるところでございますが、こうした企業の誘致については、地元関係団体等の受け入れ態勢、原材料の供給体制等を十分に見きわめるとともに、企業誘致による工場設置が適切なのか、あるいはまた地元の農家、農協等によるいわゆる地場工場の育成方式が適切なのか、そういったことについて農林水産部とも十分な連携をとりながら、地元市町村ともども検討の上、地場産業創設のためにも適切な対応をしてまいる必要があると考えているところでございます。
 以上です。
○議長(西本長浩君) 農林水産部長安田重行君。
 〔安田重行君、登壇〕
○農林水産部長(安田重行君) お答え申し上げます。
 議員お話しのとおり、梅はまだまだ研究課題の多いことも事実でございます。そのため、これまでも果樹試験場において、生産の安定向上のために、ミツバチによる受粉や結実の安定技術の開発及び青梅の鮮度保持のための予冷技術の確立を図ってまいったところでございます。さらに、昭和六十二年六月に御坊市に開設をした県暖地園芸総合指導センターに新たに梅の研究部門を設置するとともに、実験園で栽培技術の確立に鋭意取り組んでいるところでございます。今議会には、緊急度の高い新技術としての人工授粉技術の確立やバイオテクノロジーによる優良台木の育成などを研究する経費をお願いしているところでございます。
 なお、技術指導については、農林水産技術会議果樹部会で研究機関を初め普及所、農協技術員等、関係者による検討を行い、取り組みに努めているところでございます。
 議員お話しの実験圃場については、暖地園芸総合指導センターを核として、産地の圃場を活用して今後取り組んでまいりたいと存じているところでございます。
 以上でございます。
○議長(西本長浩君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 26番那須秀雄君。
○那須秀雄君 文化論議というのはもうこんにゃく問答みたいなものでありまして、できたらもっとこう、肩凝らんと、リラックスしていろいろ話を伺いたかったなと思いますけれども、これはもうやむを得んと思います。無理な注文やと思います。また後で教えてください。
 そこで、知事さん、これはけさの読売新聞の和歌山版です。ふるさと創生基金一億円の第一号ですが、南部川村が梅研究センターをつくるということが発表されております。すばらしいことやと思います。やはり梅の産地、梅で生きる村の心意気が感じられて、大変立派なことやと思うわけであります。
 ここらをやはり、南部川村だけに任せて放っておかんと、和歌山県もお手伝いをしながら──これはもう一つの村のことだけではありませんから、紀南の産業のために県も力を入れて一緒になってやっていったらどうだろうかなと、こういう提案でございます。これだけ申し上げて、終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。
○議長(西本長浩君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で那須秀雄君の質問が終了いたしました。
○議長(西本長浩君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 34番浜本 収君。
 〔浜本 収君、登壇〕(拍手)
○浜本 収君 四点にわたって質問をいたします。
 その一つは、原子力発電立地に関する問題であります。第二点はリゾート開発、その指導理念について伺いたいと思います。第三点は空港対策についてであります。第四点は保育行政であります。
 今議会に提案されております電源立地地域整備事業費は、昨年の四千万から千六百万円の減額すなわち二千四百万となっているが、その理由とその使途について、まず明らかにされたいのであります。
 さて、去る一月三十一日、自民党の大会で曽野綾子さんは「皆様方は常にやかましい少数に触れておられますので、日本じゅうのサイレント・マジョリティー(静かなる大多数)の真の恐ろしさを時にお忘れになるのかもしれません」として、政治家が真の意味でのコモンセンスと自己への厳しさを失って恐れを知らぬものになっているのではないか、そうなってはならないとの提言をされましたが、この提言は、政党政派を超え、まさに国民大衆の共感を生んだことは周知の事実であります。
 翻って、今、紀伊半島に住む人々なかんずく日置川町民は、あの壮絶な昨年夏の原発反対の町長選挙がもう遠い過去の物語となり、闘い抜いた町民大衆は今、サイレント・マジョリティーとして県や国の原発政策をじっと見守っているのであります。
 昨年の十二月県議会で私は日置川原発電源立地温排水対策について質問をいたしましたが、予想したとおり、この二月十五日から日置漁協は原発温排水調査を始めたのであります。そこで、私は十二月県議会での県当局の答弁を再現し、その後の経過等を踏まえ、質問をいたします。
 川端企画部長答弁、「電源立地地域温排水対策費補助金については、国の要綱によると、補助金の交付対象事業主体は漁業協同組合、漁業協同組合連合会、地方公共団体、または国もしくは都道府県から設立認可を受けた公益法人となっており、通産大臣が直接補助金を交付することができる仕組みになっている」。
 安田農林水産部長答弁、「交付申請は事業主体となる漁協の自主的な判断でなされたもので、県は直接かかわりがない。(中略)温排水有効利用のための基礎調査であり、水産動植物の生息状況等、周辺地域の漁海況資料を得ることは、今後の漁業振興を図る上からも、この海域の総合的、計画的な利用を考えるためにも必要であると思う」。
 両部長の答弁は、いずれもそつのない、しかも要を得た答弁であります。要約するならば、一つは、この温排水対策費補助金については町や県、具体的に言えば日置川町と和歌山県とはかかわりなく──素通りでという意味ですね──漁業協同組合と通産省が直接申請・交付という手続のとれる仕組みになっているという、制度上の答弁であります。
 いま一つは、この補助金は温排水有効利用のための基礎調査であって、今後の漁業振興、海域の利用のためにも必要であるとする、極めて現実的な答弁であります。この意味は、私はよくわかるのであります。
 そこで、次の質問をいたします。
 一つ。この補助事業は、原発施設を立地する目的をもって海域の調査を行うと、通産省要綱の最初にその目的がうたわれているが、日置漁協の組合長が新聞紙上(二月十七日「紀伊民報」)で、「この事業は原発立地とは無関係だが、原発候補地に交付される補助金なので、全く関係ないとは言っていない」──最近、こういう答弁の仕方がはやっているようであります。たしか、きのうもそういう発言があったように思います──と発表したり、また二月十七日の「紀州新報」では、「原発立地とは関係がない、結びつくものではないと組合総会で説明している」と公言している記事が掲載されておりました。
 また、前日置川町長は、町議会で反対の人々から質問があると、しどろもどろ──前の町長ですよ。今の町長と違う。「この温排水事業の補助金は決して原発のひもつきではない。これをやったからというて原発はやらなければならないということではない」との答弁を繰り返しているが、企画部長並びに農林水産部長はこの事業の目的をどう把握しているのか、明確に答弁をされたいのであります。
 二つ目。この補助事業は漁協と通産省の間で直接決められたもので県や町はかかわっていないが、少なくとも、第四次長計にもうたわれている原発立地にかかわる重要な行政部門を受け持つ企画部の立場から見て、このような制度というか仕組みについてどのような感覚を持ち合わせているのか、お答え願いたいのであります。
 さらに、この種の補助金実例が、私も少しは知っておりますけれども、他の行政分野であるならば、この際ぜひ開陳されたいのであります。
 私は、このような措置というものはもはや行政ではないと思う。市や町や県と何の関係もなしに一漁業組合と通産省とでやれる、確かにそういう制度になっているにしても、これはもう行政ではない。最初にその答えを聞いて、再質問でなぜかということをもう一遍確かめてみたいと思います。
 なぜならば、何遍も繰り返しているように、原発予定地にされたその町は世論が真っ二つに分かれ、また好むと好まざるにかかわらず住民は巻き込まれてしまう。もう日置川町は、この夏で十四年になる。十四年以上の歳月にわたって争わなければならない事態を余儀なくされる。そういう現状の中で、たとえ年一千万──三年、四年と継続事業になっておりますが──の温排水事業といっても、それは明らかに原発立地を目的とするものでありながら、県行政も町の行政も素通りして通産省と漁業協同組合だけで申請や交付を行うなどという行政措置は、もはや行政ではないと私は思うからであります。
 原発と関係あるから、賛成派の人は「そうではない」と言うだろうけれども、一般的に言うて、皆さんの中にも市長さんや町長さんになられた方はいらっしゃると思いますが、そんなことだったらおかしいな、町長も知らんて──知っておるんですよ。しかし、判をつくことも何もする必要がない。ただ漁業組合と通産省とだけでやる。一体そういうことが行政の名に値するのかどうか。どうぞ御理解を願いたいと思います。答弁を求めます。
 三つ目。三月八日、白浜町議会総務委員会は、日置川町への原子力発電所立地計画に反対する決議を求める町民約四千名による請願について、その請願を採択し、関西電力株式会社が日置川町に立地計画中の原子力発電所の立地について同町議会は現時点においては反対である旨の表明をするやに聞いておりますが、やがてこのような反対決議が各市町村自治体議会においてなされていくであろう趨勢にかんがみ、同町議会の議決にどのような判断を持っているのか、答弁されたいのであります。
 また、これは重大だと思うのでありますが、白浜町議会総務委員会での議決は満場一致であります。一年間、全国二カ所へ視察に行って、各種資料を整えて白浜との関係でどうだろうかと。この議決の内容については、私は大変立派なものだなという感触を得ておりますが、これはまだ決まっておりませんので、その文章をここへ持ち込むことは法的にちょっとおかしいので。そうして委員会で一カ年間、賛成の方、反対の方ともに、ああでもない、こうでもないといろいろ論議をして、「現時点では反対である」とまとめ上げた。一生、百年たっても三百年たっても反対とは書いてない。「現時点では反対」。議会の皆さんが町民の動向の上で組み立てられた立派な議決だなと思っておるのであります。
 この総務委員会で満場一致のものが三月二十二日からの議会──二十八日に終了すると聞いてございますが──の本会議にかけられて、委員会で満場一致でありますから、手続的には多分、「多分」という形でしか言えませんけれども、満場一致で議会は採択するであろうという趨勢にある。
 ところが、この総務委員会の動きに対し県は──あなた方です──「なるべくならそのような議決をしないでほしい」と働きかけたと流布されているが、これは一体どういうことなのか、答えられたいのであります。これも答弁をいただいて(発言する者あり)──やかましいこと言うな。私は全部知っておるんだ。知っておる者に言うてもあかん。やかましいこと言うな。
 だから、これについては答弁を聞いた上で、答弁によってはまだ言いたいことが──これは省きますが、そういうことは一体どういうことな。町議会の委員会で採択され、それが議決されるであろう。文章もほぼでき上がっている。それへ県の方からちょろちょろ来て「できたらせんといて」て。そんな事実がないとは言わさないぞ、これは。町の助役がべらべらしゃべっているんや、県が来たんやと。それだけ言うておく。それだけ言うておけば間違いない。
 四つ目。去る二月二十五日、田辺湾岸総合利用とリゾート開発シンポジウムは、午後五時三十分から午後九時三十分まで──予定は九時までだったんですが、会場は熱気あふれて九時三十分まで延長した。私などは、五時半やからというて飯も食わんと行ったんで、腹が減ってどもならんかった。九時半まで熱心に聞いた千二百名の中の一人でありますが、この会の雰囲気は、先ほど那須議員からも、あるいは皆さんからも連日リゾートの問題が訴えられておりますが、今、郡市民は県政に何を求め、何に希望をつなごうとしているのかといった感じでいっぱいであった。そこで、パネラーとして出席され、非常にいい発言をなされておった企画部長の本会に対する感想について──それだけとは違う、原発との関係であなたはどう感じ取っているのか、率直にお答え願いたいのであります。
 第五点。紀伊半島に原発は要らない、原発よりも快適なリゾートを、原発よりも一日も早く高速道路の完成をと、私は特に紀南における県政の基本をそこに定め、第四次長期総合計画に盛られたエネルギー政策、なかんずく原発立地の政策からの撤退を知事に求めるものであります。
 既に御承知のように、六十二年三月の高知県議会において、原発推進の旗を振ってきた中内高知県知事は、原発よりも高知の新しい港を開け、原発よりも高速道路を一日も早くやろうと、その軌道修正を本会議場を通じて訴え、その政策はやがて一年後の窪川町の原発廃止の政治的背景となったことも周知の事実であります。
 六十二年の県議会の一般質問において、私は原発とリゾートは両立しないとの立場から知事の所見をただしたけれども、いま一度「ふるさとに生きる(著者・仮谷知事)」に知事みずから書いたその文章の一節──六十二年の六月にも読み上げました。私はあの文章が好きであります──を読み上げ、その所見を再び伺いたいのであります。
 「西洋にはアトランティスという海洋王国のユートピア伝説があります。そして東洋では、観音菩薩のすむ補陀洛山(ポータラカ)という海上の楽園があると信じられていました。海を活用した、美しい理想郷。それは、島でありまた半島にあると考えられていたのです。私は、そんな理想郷を思い浮べながら、海と山を総合的に活用した生活環境づくりと文化、産業の振興を計画化・具体化し、紀伊半島、そして和歌山県を世界に誇れる海洋王国にしていきたいと考えています」──名文であります。それは知事の哲学であります。海に生きた、ふるさとを海に持つ知事の名言であります。そしてそれは、政治の哲学でもあります。
 この明るさに満ちあふれた海洋王国の理念。そして原発。どうも最近は「原発」というと言う私の顔まで暗くなる。答弁する人も暗くなる。その暗いイメージを持たす原発立地と明るさに満ちた海洋王国の理念との矛盾──私はあえて矛盾と言いたいが、その矛盾について、もうぼつぼつ、わしの書いたこの文章の原点に戻る方が正しいんではないかと知事は考えていないかどうか。「はい」とは言わないだろうけれども、その所見を再び伺っておきたいのであります。
 以上で、原発を終わります。
 田辺市は、既に昨年の夏、丸紅による田辺湾岸リゾート開発の大綱計画を明らかにし、今後の具体的な作業に入ろうとしております。引き続き白浜町は、南紀白浜温泉の玄関口・綱不知湾岸を中心としたリゾート開発のため、町議会にこれが調査費一千百万を計上し、その策定調査に着手しようとしております。
 三月七日、地方紙はもとより朝日、読売、産経、毎日の各紙は一斉にこのことを報道したところでありますが、その大要は次のとおりであります。いろんな新聞が書かれておったのを、四、五社のものを私流に要約して書いたのですが、こういうように報道している。
 「綱不知湾は白浜温泉の中心街から東約一キロにあり、入り江の深い波静かな良港。昭和二十一年の南海震災や三十五年のチリ津波などにより、海岸施設が補強されてきた。─中略─このため、町は同湾岸の保全と漁港整備も兼ねて周辺一体の海岸線と交通対策上の道路整備に乗り出すもので、町は『リゾート時代の観光地にふさわしい海岸を総合開発したい』としている。しかし、同湾の埋め立てには住民の反応複雑。同湾は田辺湾南側の奥深い入り江で、昔から漁船を陸につけても綱が要らないほど波静かで、綱を知らないという意味で『綱不知』とか『風なしの港』と呼ばれ、沿岸漁民や地域住民の安らぎの海である。また、美しい景観と深い海は万葉の時代から人々の心をとらえ──ここでも「万葉」が出ている──『風莫の濱の白波いたづらに此處に寄せ來る見る人無しに(柿本人麻呂)』と万葉の歌人にも歌われている。また、マリンリゾートの本質は美しい海を保護することでそれを破壊するのは逆効果等、反対の意見が出ている。また、ここを埋め立てるとなると地元や文化人から反対の声が上がるのは必至で──この後の文章、新聞に書いてるんやから──第二の不老橋になるという指摘もある」──小さい声で言うても聞こえますね。これに対して町当局は、「除去したヘドロや土砂で人工島をつくる構想だが、十分調査して地元住民と懇談会を開いて柔軟に対応したい」と書かれているのであります。立派な報道であると思います。
 私は、さきの九月県議会において田辺湾岸リゾート構想の概要についての質問や意見を述べたが、今、ようやくリゾート創成の時に当たり、県の基本的な方針とこれが自治体や関係者への指導理念、その意識統一の必要性を痛感するものであります。
 その第一は、何といっても住民の納得と合意の形成であります。それは開発OKという単なる筋論ではなくて、その開発を住民みずからのものとし、その開発によって住民の生活がより高まり、また環境がより向上するのかどうかという点での合意形成であります。
 その第二、自然と開発の調和であります。このことは、自然と開発とを足して二で割るといった形式的な調和論ではなくて、開発は自然に従属すべきもの、つまり開発によって残すべき自然がより価値あるものとして生かされるという、自然優位に立った開発でなければならないという論点を貫くことであります。
 その第三は、開発地点での歴史や文化、とりわけ史跡等に着目し、それらをより一層輝くものによみがえらすという立場であります。
 今、大まかに申し上げたこれらの考え方を、開発に当たる行政や企業に対して確固たる指針にまで高めることであろうかと思います。「難しいことを言うのう」、「そんなこと言うてたら企業ら来るもんか」と人は言うかもしれない。さにあらず、白浜には二つの企業が以前来ました。そんなこと言うてたら企業ら来るか、そうではないと。よきものを残し、自然の優位性を保護し、それをさらに発揚していく、そしてよりよき生活環境をつくり出し、文化や歴史を高めることに我々はいささかも悔いを残してはならないからであります。その指導理念を問うものであります。
 ──ちょっと初めに力み過ぎて、あと十四枚ある。つらいな、こりゃ。
 次に、空港対策について二つ申し上げたいと思います。
 A、「過日御指摘を受けました当空港対策室職員による空港用地に係る相続関係調査につきましては、貴台を初め御親族の方々に御心労と御迷惑をおかけし、まことに申しわけありません。(中略)今後、二度とこうした御迷惑をおかけすることのないよう十分注意していく所存であります。略儀ながら、書状をもちましておわび方々お願い申し上げます。六十三年六月二十八日」。昨年の六月です。
 B、「先般は、当建設事務所駐在職員が空港建設業務の相続関係調査において貴殿初め御親族の皆様に多大の御迷惑をおかけしましたこと、大変申しわけなく思っております。(中略)御指摘をいただき、早速陳謝申し上げたところでありますが、重ねて書状をもっておわび申し上げます。六十三年七月四日」。
 この書状は、それぞれ白浜町総務部長並びに空港建設事務所長のわび状であり、極めて適切なものであります。この内容について詳細を話すことは省略いたしますが、空港用地買収の該当地に居住するAさんに対し、用地買収の取り組みの一過程における不手際についての反省と陳謝の文章であります。これは、昨年の夏のことであります。
 先日、田辺市でお医者さんの組合をつくるんだという総会があって、私も西牟婁の県会議員の皆さんと同席させてもらったんですけれども、その会合で、たまたま西口副知事のそばに座っておったんですが、副知事から「きのう──きのうというのは二月二十四日のことを指します──紀伊民報に大きく報道されとったあのことよ。ほんまに悪いなあ。ああいうこと載っておったのはつらかったよ」と、遺憾の意を込めて話をされておりました。その内容は、「地権者カンカン! 新空港建設事務所 無断 樹木伐採連絡せず測量調査 県、用地交渉を控え困惑」の見出しであります。
 簡単に言えば、空港全体の実施設計をするための準備作業で、建設事務所は建設用地百五ヘクタールの中に含まれているAさんの山林を、何の連絡もせず、また本人の了解も得ず、勝手に伐採したのであります。伐採された翌朝、Aさんから私に連絡があり、今後の対応策について、前にもあんなことあったしこれは弱ったなと、そういう話をしておったんです。別に私はそのことを秘密にしようとも何とも思ってなかったけれども、「紀伊民報」の記事を見て二度びっくりしたのであります。やっぱり新聞記者というのは大したもんや、黙っておっても三日後にはぱっと載っておると、この取材の速さに敬意すら覚えたのであります。
 最初に読み上げた文書二通の件は、昨年の夏、私がAさんから御相談を受け、御本人の納得を得るように話し合った結果が、紹介したA、B二つの書状となったんです。何としても空港建設に支障があってはならないとする小さな私の思いからだったし、また、今申し上げた伐採の件についても、誠意を込めて、もうちょっと日を置いて、相手の立場を十分お聞きしてゆっくり話をしようと、その対応に私自身も熟慮していたのであるが、この二回にわたる行政対応の特徴は、いずれも本人の了解を得ていない、本人を無視した、人権にかかわるものであります。
 人はだれもが失敗を繰り返すものである。しかし、相手の人権を無視するがごとき行政の対応は、そしてそれが、和歌山県の片隅に住み営々として四十有余年、第二のふるさととしてこの地を定め、開拓し、農業一筋に生きてこられたAさんへの対応であってはならないのであります。
 空港建設のプロジェクトの中で、やがてこの地からどうしても離れなければならないAさん。今、どこに替え地を求めたらいいのか、住居はどうなるのか、農業は、花づくりはどこでさせてくれるんかといった気持ちが錯綜しているのであります。最初、空港建設と聞いたときには戸惑いをした、しかし今ではすっきり賛成の立場になってくださっているAさんに対するこの二つの行政対応、文書で読み上げて説明することは簡単であっても、数十時間いろいろお話を伺った私にとっても、憤りを感じるのであります。土木部長の答弁を求めるものであります。
 いま一つ、本定例会冒頭、知事はその説明要旨の中で南紀白浜空港東京便の増便について述べられたが、この増便について御努力を払われた関係者の皆様に、大江県議ともども心から感謝をいたしたいと思います。
 いよいよ白浜空港も本年度より土地買収に着手、またこれが関係の整備等、県、町ともども努力を払われつつあるが、私は、やがて完成されるであろうその日までに、白浜空港の空路の確保対策について今から準備すべきものと思うのであります。
 過去、白浜空港は大阪、名古屋への空路を持っていたが、関係者の努力にもかかわらずこれらの二線が廃止となったことは御承知のとおりであります。そこで私は、この際、この空港を起点とした、また中継基地とした、白浜と四国を結ぶ仮称「黒潮ライン」あるいはまた九州等、今後の経済や観光の動向に着目する中で、これらの空路創設の方針をもうぼつぼつ検討するとともに、フライト農業・水産等の運輸空路等についてもぜひ検討を開始すべきものと思うが、御所見を伺うものであります。
 次に、保育行政について。
 核家族化に伴う家族構造の変化、生活環境の変化、婦人就労の増大、勤務時間の多様化、通勤距離の遠隔化等、さまざまな条件の重なる中で、今日、保育需要も多様化し、また保育所の役割も質量とも増大しつつあることは周知の事実でありますが、今日はまた全国的に、都市部等を中心にいわゆるベビーホテル等の保育施設の増加も見られる趨勢にあります。
 さて、本県における保育所の概要は、ほぼ次のとおりであります。公立保育所、社会福祉法人保育所合わせて二百三十九園、措置児童数二万九十名、その充足率は八八%、また僻地保育所五十二、措置児童数千百九十八名、充足率六三%、六十二年度決算額、国庫負担金十九億四千二百余万、また県費負担額九億七千百余万、市町村負担額合計同額であります。
 ちなみに私の町・白浜町では、町立四園、法人三園、両園合わせて六百五十名の定員に対し、充足率八八%、五百七十二名の児童の入所状況であります。町立・法人両園の共同によってこの町の保育行政は財政的負担やさまざまな努力の中で円滑に進められておりますが、保育所数の少ない市町村の中には、行政から落ちこぼれた児童や長時間保育にこたえ切れない保育所等の現状、乳児産休あけ保育や親の就労時間を保障する中から共同保育所や無認可保育所が生まれてきたのも、また当然であります。
 また、それらの無認可保育所は、客観的にはそれぞれの市町村の保育行政、大きくは県の保育行政をも助けていると言っても過言ではありません。県は、保育時間の延長に対する需要にこたえるため、長時間保育を実施する公立・法人の保育所に対し、本年は新たに二百万の補助経費を計上しているが、きめの細かいその視点に私は敬意を表したいのであります。
 しかしながら、先ほど来述べた無認可保育所はそのらち外であり、また行政という筋から疎外されているのであります。しかし、無認可保育所に通わざるを得ない児童もまた、立派な県民であります。
 某月某日、私は御坊市にある「たんぽぽ保育園」に足を運んでみたのであります。坪数六十坪、その周りに畑があり、児童定員は、ゼロ歳児三名、一、二歳児十一名、三歳児三名、四歳児一名、計十八名、保育担当者六名、板の間と畳、廊下、運動場、少ない遊び器具、小さな保育園であります。しかし、その部屋の片隅に張られた次のような言葉に、私は小さな感動すら覚えたのであります。
 「自然の中にいると 人は誰でもやさしくなれるという 道ばたの小さなイヌフグリの花にみとれ みどりの中で 心を洗われながら 子供たちと歩きつづける日々 澄みきったそのひとみは何を見つめているの 貴方たちのその光るひとみに見つめられたら まぶしくて ちょっぴりはずかしい こぼれるような ほほえみに出会う時 ほんわかと しあわせなきもちになってくる 私たちにゆめと希望を与えてくれる たんぽぽっ子たち 想い出してください 目をとじて 幼い頃あそんだ あの原っぱを たんぽぽ笛を ならしたり レンゲをつんだり 日のくれるまで あそんだことを お日様の光を いっぱいあびて 山道を田んぼのあぜ道を かけまわる たんぽぽっ子たち 私たちも子供らといっしょに つい メルヘンチックになって 四つ葉のクローバーを さがしているのです」。
 共稼ぎの親たち。仕事の関係で遅くなった夕方の六時過ぎ、教師である父が子供を迎えに行く。二歳の女の子は泣き出しそうになって「パパ」と言って飛びついていく。でもその子供は、「先生バイバイ」という言葉は忘れない。
 共稼ぎの親たちにとっては一日一日が生活との闘いであり、その日々の積み重ねの中で、無認可保育所で一日の大半を過ごしながら子供たちは育っていく。そしてこれが、世界第一とか言われる経済大国の庶民の生活であります。私は、そんな庶民の日々の生活を知っている。そして、この庶民の暮らしの中から子供たちを見詰め、その若い父、母、そして保母さんたちとともに、県政に一つのことを求めたいのであります。
 設備も財産もない無認可保育所。また、土地すらも他人から借りている無認可保育所。でも、そこに集う、いや集わなければならない子供たちのために、父や母、保母さんたちは励まし合い、その中で子供たちは育っていく。
 私の調査では、千葉、愛知、静岡、神奈川、北海道、東京都、また大阪府下二十七市のこれらの無認可保育所には、それぞれの形態を異にしながらも温かい予算、補助金が支出されている。「よその府県がそのようなことをやっているから」といった設問は余り好まないので、ここでは深くそれらの具体的例を述べることは差し控えておくが、私の言いたいことは、政治は時には激突や激しい争いを巻き起こし、行政もまた厳しいきょうこのごろではあるけれども、政治はまた一面、ソフトで優しくもなければならない。県下十数カ所に点在する無認可保育所への配慮ある補助制度の創設をぜひ実現されるよう、答弁を求める次第であります。
 以上で、終わります。
○議長(西本長浩君) ただいまの浜本収君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 浜本議員にお答え申し上げます。
 原子力の問題については関係部長から答弁いたしますけれども、原子力発電立地とともに、私の言う海洋王国理念について述べたいと思います。
 御指摘の問題につきましては以前にもお答えしたところでございますけれども、今後の海洋開発というものは、漁業振興や観光利用だけではなしに、海洋研究、エネルギー開発あるいはリゾート開発といった多面的な開発利用が期待されているわけでございます。こうした面からも海洋開発と発電施設の立地は併存することはあり得ると考えてございますが、今後なお一層、調査研究が進められるものと考えられているところでございます。
 以上でございます。
○議長(西本長浩君) 企画部長川端秀和君。
 〔川端秀和君、登壇〕
○企画部長(川端秀和君) 原子力発電立地についての五点の御質問にお答え申し上げます。
 まず第一点は、温排水対策の予算についてでございます。
 電源立地地域振興事業費として二千四百万円をお願いしてございますが、これは全額、国庫補助金でございます。このうち二千万円は日高町への補助金で、日高町は電源立地地域温排水対策費補助事業及び重要電源等立地推進対策補助事業を行うこととなっており、県の事業費は関係機関との連絡調整等でございます。
 なお、昭和六十三年度と比較して減額となっておりますのは、日置川町分を計上していないことによるものでございます。
 第二点は、温排水対策補助金の目的についてでございます。
 電源立地地域温排水対策費補助金は、電源開発促進対策特別会計法に基づいて通産省が交付するもので、発電用施設の設置の円滑化に資するため、発電施設から排出される温水の有効な利用方法の実施に関する調査に要する費用に充てられるものでございます。
 その内容としては、温排水を有効に利用して漁業振興に資するもののほか、地域の漁業の実態に即した調査として漁場環境調査、漁場資源調査、漁業振興に資する指導研修事業などを実施するため設けられた制度となってございます。
 第三点は、通産省から漁協に補助金を直接交付することについてでございますが、制度上そうした方法もあり得るということにつきましては、昨年十二月の議会で御答弁申し上げたところでございます。
 なお、国から県を経由しないで直接民間団体等に補助金が交付される事例としては、通産省関係では中小企業指導事業や民活法に基づく事業、厚生省関係では食品衛生協会や食生活協会への活動費補助等々、幾つかの事例がございます。
 いずれにしても、国の制度上の問題でございまして、極めて難しい問題であろうかと考えますが、今後の課題としてまいりたいと存じます。
 第四点は、近隣町議会の動向についてでございます。
 昨年六月、日置川原発反対白浜町民連絡会議から白浜町議会に対して、日置川への原子力発電所立地計画に反対する意見書の提出を求める請願が提出され、白浜町議会総務委員会において審議されていることは承知いたしてございます。
 県としては、従来から申し上げているとおり、三原則の一つである地元の同意については、事前調査の段階では立地町、建設段階では立地町とその隣接市町村のそれぞれの市町村長及び議会の同意が必要であると考えてございまして、この基本姿勢で対処しているところでございます。
 なお、白浜町議会に対して何らかの働きかけをしたのではないかとのお尋ねにつきましては、そのような事実は把握してございませんが、審議の成り行きには関心を寄せているところでございます。
 第五点は、紀南でのリゾートシンポジウムについての感想と原発との関連についてでございます。
 去る二月二十五日、田辺市で開催されたリゾート開発シンポジウムは、議員御紹介のとおり、千二百余人参加のもとに大変盛会裏に開催されたところでございまして、このことは、とりもなおさず紀南地方の方々のリゾート開発に対する熱い期待のあらわれであると受けとめてございます。
 このことを原子力発電所の立地と関連してどう考えるかという点については、きのうも田中議員にお答えしたとおり、この二つのテーマはそれぞれの地域が持っておる立地条件によっておのずと手段、方法が異なってくるものと考えますが、ともに豊かな地域開発を目指して検討しなければならないテーマであると認識をいたしてございます。
 本県にあっては、現在、燦黒潮リゾート構想の承認やリゾート開発の具体化に懸命の努力を続けているところであります。一方、原子力発電所の立地問題についても三原則に基づいて対処いたしているところでございます。
 この二つのテーマについては必ずしもなじみがたいテーマではないものではないかと考える次第でございますが、なお、リゾート先進国である諸外国等をも参考にしながら調査研究を重ねることが必要であると考えてございます。
 次に、リゾート開発とその基本理念についてでございます。
 リゾート法の制定に当たっては、国民の多様化する余暇需要への対応、あるいは内需拡大による国際摩擦の解消、さらには第三次産業を中心とした新たな地域振興策という背景から国家的課題として取り組まれたところでございますが、本県にとっても海洋、山岳、河川、さらには温泉、歴史文化等の本県の恵まれた地域資源を最大限に活用できる事業であり、また最も本県に相ふさわしく、かつ有効な施策であると認識をし、第四次長計及び半島振興計画にも位置づけ、その推進に取り組んでいるところでございます。
 今後、リゾート開発の推進により、雇用の増大、滞在者の消費に伴う地域経済への波及効果、農林水産業や地域産業等の振興、さらには魅力ある快適な地域づくりによるリサーチ産業、ハイテク産業の立地の促進等、広範な地域振興が期待されるところでございます。
 こうした考え方のもとに燦黒潮リゾート構想の推進に取り組んでいるところであり、その実現に向けては、民間活力の導入とともに、地元の自発的、主体的な取り組みが不可欠であると考えてございます。推進に当たっては、本県の貴重な資源である自然環境や歴史文化との調和を図りながら、良好な生活環境と潤いのある地域づくりを基本として取り組んでまいりたいと存じます。
 最後に、南紀白浜空港の空路の開設についてでございます。
 議員御指摘のとおり、南紀白浜空港のジェット化整備に伴い、現在就航している東京便のほか、新規路線の開拓が今後の紀南地域の農林水産業を初めとする産業の活性化、観光の振興、さらには当空港の有効利用という観点から見ましても、今後検討すべき課題であると考えてございます。
 また、コミューターやヘリコプターによる定期便の就航につきましても、今後、関係部局と十分連携を図りながら対処してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(西本長浩君) 農林水産部長安田重行君。
 〔安田重行君、登壇〕
○農林水産部長(安田重行君) お答え申し上げます。
 この調査は、温排水有効利用を検討するに当たっての基礎調査であり、地域の沿岸漁業との関連性についての調査でございます。
 十二月議会でお答えいたしましたように、水産動植物の生息状況等、周辺海域の漁海況調査を得ることを目的として行っているものでございまして、今後とも必要に応じて技術的な指導助言を行ってまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(西本長浩君) 土木部長松永安生君。
 〔松永安生君、登壇〕
○土木部長(松永安生君) 議員から御指摘がございました、今回の南紀白浜空港の土地買収の対応をめぐって職員が起こしたトラブルにつきましては、職員間の連絡不十分が原因で起こした行為であり、遺憾に思っておる次第でございます。
 地権者の方からは御理解をいただいておりますが、今後は責任分担とチェック体制が間違いなく機能するよう心がけ、再度このような事態を起こさないよう努めてまいる所存でございます。
○議長(西本長浩君) 民生部長高瀬芳彦君。
 〔高瀬芳彦君、登壇〕
○民生部長(高瀬芳彦君) 保育行政について、お答えいたします。
 近年、婦人の就労等の増加で保育に欠ける児童も増加し、計画的に保育所の創設、定員増を図ってきたところでございます。現在は児童数の減少等により、議員御指摘のとおり、充足率は八八%となってございます。
 一方、本県においては、多様化する保育のニーズに対応するため、乳児保育促進事業や障害児保育事業、さらに来年度から県単独事業として長時間保育事業を行うことを予定してございまして、保育事業の充実に努めてございます。
 現在の無認可保育所については、認可保育所として運営ができないかどうか関係の市町村と話し合い、指導を行っていきたいと思います。
 以上でございます。
○議長(西本長浩君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 34番浜本 収君。
○浜本 収君 時間がありませんので、簡単に質問をいたします。
 知事が、原発についての答弁で「併存」するという言葉を使われた。前は「共存」すると言うていた。平成元年やから「併」と言うたんか。「併存」と「共存」、別に他意はないんですか。これ、個々の解釈はいたしませんけれども、「併存」と「共存」、どういうニュアンスの違いがあるのか、ちょっと気になりますのでお答え願いたいと思う。
 企画部長。
 私が温排水対策費補助金は原発を目的としていると言ったが、最近、企画部長や農林水産部長も「原発」という言葉が嫌いになったんかな。何か、「電源発電用施設」とか「発電施設」とか。私は火力発電なんか聞いてないんです。「原発」と言うている。しかし、部長らは「原発」という言葉を使わん。使わんというのはやっぱりこのごろ嫌いになってるなと、私はそういう解釈をしておきます。これは質問ではありません。
 二月十五日、先ほどもちょっと述べましたが、日置川町市江の沖で、その温排水調査事業について、もう船が出てそれをやるということになった。現地では集会を持って、沖でアピールするという話、あるいは直接、そんな船は間違うてるやないかと乗り込んでいくと、そういう阻止をする構えの運動があったんです。
 私はその現地に行って、それはやめておきなさいと言うて、大分時間がかかって、そういうことをしないことになったんですが、もしそういうことになっても、今のようなシステムでは、県は「予算に関係ないから知らん」、町も「知らん」ということになると思う。しかし、行政というのはそういうわけにはいかない。そういうものを包括的に包んでいくのが行政でなかったらいかん。事原発に限ってはそうなっている。
 もしそこで何かあった場合でも、東京で通産省の役人が朝コーヒーを飲みながら新聞を見て「ああ、そんなことがあったんか」という程度のもの。新聞を見ているのが関の山です。そういう原発の重大性から見ても──食品のいろんななにがあるということ、それは後刻、資料を要望しておきますけれども、そういうこととは違って、先ほどからいろいろ説明したとおり、原発の重大性から見てもこのような申請・交付の手続は間違いであるということをまず国に向かって宣言すべきと思う。答えられたい。
○議長(西本長浩君) 浜本議員にお願いいたします。
 三分以上経過しましたので、よろしくお願いします。
○浜本 収君(続) わかっております。お許しを願いたいと思います。
 白浜町議会に対する働きかけについてのあれがなかったけれども、それは私が知っておるんでありますから、どなたか答えられたいのであります。
 終わります。
○議長(西本長浩君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 浜本議員にお答えします。
 「共存」と「併存」、別に深い意味はございません。
○議長(西本長浩君) 企画部長川端秀和君。
 〔川端秀和君、登壇〕
○企画部長(川端秀和君) まず第一点は、行政のあり方の問題であります。
 先ほどもお答え申し上げましたように、地方公共団体を経由せずに国から直接各種団体に補助金が交付される制度はございますし、その実例もあるわけでございます。
 補助金に関する国の制度を変えることは大変難しい問題であろうかと考えますが、今後の課題としてまいりたいと存じます。
 第二点目は白浜町議会に対する働きかけの問題でございますが、関心を寄せているところでございまして、情報収集は必要であるというふうに把握をいたしております。
 以上です。
○議長(西本長浩君) 答弁漏れはありませんか。──発言時間が終了いたしましたので、以上で浜本収君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
○議長(西本長浩君) この際、暫時休憩いたします。
 午前十一時五十二分休憩
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 午後一時六分再開
○議長(西本長浩君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
○議長(西本長浩君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 21番木下秀男君。
 〔木下秀男君、登壇〕(拍手)
○木下秀男君 平成元年の予算議会も、私がしんがりを務めて一般質問が終了いたしますが、六日間にわたり実に二十名の議員が登壇し、各般にわたって論議が展開されてまいりました。すべて言い尽くされた感じもいたしますが、なるべく重複を避けて、通告に従い質問いたします。
 新税制の導入と疑獄事件にも発展しかねないリクルート汚職問題を抱えて迎えた、昭和六十四年でありました。安定成長と言われて経済状況が伸びる中で、景気の方が余りぱっとしない六十年代も、ようやく好景気の兆しが見えて、国の予算も大幅な伸びを見せて編成された予算であります。
 国民のすべてが平和を享受し、若者は海外で新年を迎えるという例年どおりの正月風景でありましたが、一月七日早朝、病床にあられた天皇陛下の崩御が報ぜられ、全世界に電波が走ったのであります。「激動の時代」とも「戦争と平和の時代」とも、いろいろ言われた「昭和」も、一月七日が昭和最後の日となったのであります。
 私は、テレビが始まると、終日くぎづけになって動きを見守りました。新元号も「平成」と制定されて、新しい時代を迎えたのであります。この元号の出典は、これまで中国の古典に求められておりまして、今回も「史記」の「五帝本紀」に「内平かに外成る」、「書経」の「大禹謨」の中に「地平かに天成る」とあるのが典拠で、いずれも平和が達成されるという意味が込められていると言われます。
 古式にのっとり数々の皇室行事がとり行われ、新憲法下で初めての国葬として、二月二十四日、大喪の礼がとり行われました。大喪の礼に参列した弔問使節団は百六十三カ国、九千八百人にも上り、日本の国際的地位の高さをあらわす儀式でもありました。
 私も和歌山─東京を結ぶ夜行バスで上京いたしまして、東京にいる娘を伴い、お堀端に近い三宅坂の一隅からお見送りをしてまいりました。全国各地から上京して「天皇陛下に最後のお別れを」と葬列の通過する沿道に並んだ人々は、五十七万人もあったと報道されております。
 氷雨の降る中で葬列を待つ間に、私はいろいろと感じました。天皇陛下の玉音放送を聞いたのは小学四年生の夏の暑い日だったな、卒業記念の修学旅行はできなかったな、食べ物と着る物がなかったな、進駐軍という外国の兵隊が多くあったなと、終戦直後の少年時代のこと、また、ラジオから流れる引揚者の尋ね人のことや「戦災復興」という言葉もよく聞いたな、サンフランシスコ講和条約発効で「独立国日本」という言葉も、高校生の時代によく聞かされたなと、過ぎし日の人生を走馬灯のごとく次から次へと回想しながら待ったのでございます。
 私のそばに、栃木の生まれという八十歳近い老人が、白いつえを持って息子夫婦に手を引かれながら参列しておりました。この老人は、「私は天皇陛下の兵でありました」と、また「平和の時代に生きながらえてよかった」とも話しておりました。
 九時四十五分過ぎであったと思いますけれども、葬列が三宅坂から青山通りに向かって通過いたしましたが、霊轜──これは霊柩車に当たるものでございますが──に向かって瞑目しながら「これで昭和も終わりだな」と言った老人の言葉が、今も脳裏にはっきりと残っているのであります。
 私の昭和の終えんは、二月二十四日であります。
 前段が少し長くなりましたが、昭和に生きて改元を迎え、新年度予算議会に臨んだ知事の心境を、後学のためにお聞かせいただきたいと思います。
 続いて、国際化とは何かということで申し上げたいと思います。
 国際化とはこれだとの定義はないようでございますけれども、最近、大変よく聞く言葉でございます。「日本の政治用語」という解説に「日本が世界の経済大国としての地位を獲得するに及んで、諸外国との間の経済摩擦がますます激しくなってきた。この見地から、日本は市場開放などの「物の国際化」、金融の自由化などの「金の国際化」、さらに人間の自由化を図らなければ国際化とは言えない。外国人の雇用、留学生や先生の大幅受け入れ等、人の自由化を図ることが国際化である。しかし、人の自由化は、文化や宗教や習慣など、さまざまな摩擦を生む。これらを解決することが国際化である」とされてございます。
 さらにまた、あるジャーナリストは、「国際化とは、国際会議や国際交渉、また単に友人同士であっても、通訳を通していたのでは真意は六〇%しか伝わらない。日本人が外国語を使って日本の立場を主張したり、交渉、議論をしたりできるようにならなければならない。特に、国際社会にあってみずからの言葉で話せるように努力することが必要である」と申しております。外国語をマスターすることが国際化の第一歩であるとも明言しております。
 前段申し上げました昭和天皇の大喪の礼に、世界各国の百六十三カ国、二十七国際機関からの約一万近い参列者を見ましても、いかに日本が国際社会の中にあって重要視されているか、「大国日本」と言われる姿を如実に物語っております。知事は国際化ということについてどんなお考えをお持ちか、またどんな施策を講じられようとしているのか、お伺いいたします。
 また、ただいま国際化という言葉の定義らしきものを申し上げましたが、さきの議会において私は、ホームステイ組織をつくっての、学生を中心とした国際交流の促進を提言申し上げました。教育委員会は直ちに国際学科の創設や英語教師の招聘に取り組んで実行に移っておりますが、さらに次の二点について提言を申し上げます。
 まず、国際人の育英奨学制度の創設でございます。人づくりについて一つの例を挙げてみたいと思います。
 文明開化を叫ばれた明治時代の終わりでございますけれども、明治四十四年、旧紀州藩主徳川頼倫公が南葵育英会を設立し、みずから数十万円──時価にして約七億円に当たるそうでございますが──の自己基金を出して、賛助者を募り、学資不足で進学を断念しようとした旧紀州藩出身の子弟の育英に尽くされたのであります。さらに、自分の江戸屋敷の一角に進修学舎をつくり、京都に第二進修学舎、北海道に第三進修学舎をつくるなど、多大の尽力をされたのであります。功あって、紀州を代表する人物が続々と輩出されたことは知事も御承知でありましょう。
 大正十一年には財団法人の認可を受け、運営されてまいりました。戦災による焼失や戦後の経済事情で一時中止されたものの、関係者の努力で再開され、今もその精神が生かされ、多くの学生がその恩恵に浴しているのであります。
 国際化に向けての人づくりとして、向学心に燃える県下の学生諸君はもちろんのこと、海外へ雄飛を夢見る留学希望生にまで広げて取り組まれてはいかがかと思いますが、知事のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
 次に、国際交流館──これはあくまでも仮称でございますが──の設置を提言いたします。
 我が国は、敗戦の痛手から奇跡的な発展を遂げ、今や世界の経済大国と言われるようになりました。ここに至るまでには、いろいろな条件が重なり合い、各国の協力も相まって今日を迎えたものであると思いますが、一番大きな原因は日本人の勤勉と努力にあったと思います。
 資源のない小さな島国の日本が世界第二と言われる経済大国になったことは世界の七不思議とも言われ、外国の若者たちが理解できない国だとも言われているそうであります。また、行ってみたい国は日本だそうであります。特に、NIESと言われる国々の若者たちが日本留学を希望していると言われています。
 先日も、中国の上海市で、日本へ留学を希望する青年と受け入れようとする日本の学校経営者とのトラブルから軟禁事件が発生したことがテレビで報じられていましたが、さようにあこがれの国であります。
 今議会の冒頭で、我が会派の鈴木議員のコスモパーク加太計画の質問に対して企画部長は、「研究開発型施設、リゾート施設、良好な住宅を配置した複合的な市街地を形成し、二十一世紀に向けて国際化、情報化等に対応できる新しい町づくりを行いたい。本計画については数カ年かけて調査検討を重ねてきた。本年中には基本計画をまとめたい」と答弁されたのでありますが、私は、この一角に国際交流館のような施設をつくり、留学生や研究者や多くの外国の若者たちが自由に活動する中で交流を深めることが、本当の国際化につながると考えるものであります。
 調査検討の中にこのようなことがあるのか否か、また、なければ入れられないものかどうか、企画部長にお伺いいたします。
 以上で通告した項目を終わりますが、平成元年という記念すべき年に当たり、以上について提言を申し上げますので、知事の御答弁並びに企画部長の御答弁をお願い申し上げます。
 最後に、今議会の締めくくりといたしまして、一言申し上げます。
 今や、政・財・官界に対する不信は強く、特に政治家に対する不信感ははかり知れないものがあり、全国民に蔓延いたしております。リクルート問題しかり、消費税しかり、農産物自由化問題しかりであります。
 しかし、政治には一歩たりとも後退は許されないものであります。今、国民は何を求め、県民は何を言わんとしているか。真摯な態度で対応しなければならないときに至り、政治に携わる者すべてが反省し、襟を正し、改めるべきところは改め、捨て去るべきものは捨て去り、正しく大局を見きわめて正道を歩んでこそ、信頼を得られるものであると信じます。
 今予算の編成に当たり、財源不如意の中で県勢の発展と県民の福祉向上を願ってなされた苦心の数々が随所に見られるのであります。しかし、もち投げのように声の大きいところを重要視するのではなく、県政全般を正しく見ながら、気配りのある予算を編成すべきであります。
 議員は、それぞれの地域から選出され、日常、地域住民とじかに接する中で、その生の声を県政に反映さすため議会に臨んでいるのであります。にもかかわらず、いつものことでありますが、質問通告するや、「これを言われては困る」、「これは少し変えてほしい」等々、まことにもって失礼千万なことであります。「我々はこのような事業計画に取り組んでいるが、これを議会として取り上げて協力してほしい」というような建議があってこそ、本当の県勢発展につながるものと考えるものであります。
 少々苦言を呈しましたが、発言された議員すべてが県勢の発展を願って発言していることを重視し、本予算の成立後は知事を先頭に県職員一丸となって職務に精励されるよう強く要望して、私の質問を終わります。
 御清聴ありがとうございました。
○議長(西本長浩君) ただいまの木下秀男君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 木下議員にお答え申し上げます。
 改元を迎えて、新年度の予算議会に臨んだ知事の心境ということで、大喪の礼を娘さんとともに見送られた木下議員の心境、情景等をお話しいただいての質問でございました。
 大喪の礼には、私も出席させていただきました。百六十三カ国の代表が参列されたのを目の当たりにいたしまして、発展した日本を改めて認識するとともに、世界の大国となった日本の国際的に果たすべき役割の大きさを痛感したのでございます。
 おっしゃいましたように、昭和は激動の時代でございました。先日、本屋へ参りますと、昭和の時代の内閣総理大臣のスピーチがテープで売られておりました。私も、昭和の時代の内閣総理大臣は幾人あったんかなと思いましたが、昭和二十年までには十五人、終戦後は十七人と、多数の内閣総理大臣が就任されておりました。そして、いろいろなスピーチを聞きながら、陛下の心中をお思いいたすとき、本当に御苦労さまでしたという感じがするとともに、心から御冥福をお祈り申し上げたのでございます。
 激動の時代「昭和」から「平成」の時代へと、新しい時代が始まったわけでございます。これから、二十一世紀への新しい意欲というものを、県民の皆さんが待ち望んでいることをひしひしと感ずるわけでございまして、この二つの時代に知事として県政をやらせていただくことの責任をひしひしと感じておるわけでございます。
 財政状況は依然として厳しい中でございますけれども、各種のプロジェクトに積極的に取り組みまして、さらに県民生活を、福祉を向上させるためにきめ細やかな施策を進めてまいります。財政的に苦しい時代に、皆さんとともにまいた種が飛躍の芽として吹き出てくるこの時代に、日々新たな気持ちを持ちまして、なお一層努力してまいりたいと存じておる次第でございます。
 次に、国際化という問題でございます。
 国際化の施策は何かということでございます。
 御指摘のように、国際化というのを一言で言えと言ったならば非常に難しいと思います。国際交流の定義は、木下議員がおっしゃったように、一般的に人と金あるいは情報の国境を越えた相互の交流だと言われておると思うんです。その国際交流が盛んに、しかも円滑に行われている社会を国際化の進んだ社会と言えるのではないかと思います。
 本県は移民県でございます。国際的に今までは相当進んでおった県でございますけれども、県内の産業、教育、文化など、あらゆる分野で本県の特性を確立するとともに、外国の多様な価値観や生活様式も受け入れる中で県民意識の高揚を図ってまいりたいし、また観光県でもございますので、そうした面においても外国の皆さんを受け入れる態勢も進めていかなければならないと思います。
 しかし、施策につきましては、まず第一はやっぱり人づくりが重要な課題だと考えております。このために、外国人の招致による外国語教育の充実、星林高校への国際交流科の設置、移住諸国との青年の交流及び青年海外派遣などをいたしておりますし、また青年については、海外協力隊を青少年婦人課でもやっております。
 農業では、農業移民の問題もやっております。労働関係では、地労委の皆さんに外国へ勉強に行っていただく。また、国で行う、外国への洋上学校と申しますか、世界を回り、またアジア地域を回る、そうした制度とも相マッチして努力しておるわけでございます。
 特に、そうした皆さんがお互いになお一層交流を深められるよう、教育委員会でやっておる制度、知事部局でやっておる制度、国の総務庁でやっておる制度、外務省でやっておる制度等、いろいろな制度を生かして、お互いに一致団結してなお一層進めたいと思うわけでございます。
 次に、国際人としての人材育成でございます。
 国際社会で活躍できる人づくりの必要性につきましては、私は議員御提言のとおりだと思います。また、その中でお話しいただきました南葵育英会については、私ももう一度勉強させていただいたわけでございますが、その制度が戦後、一応途絶えました。そして、かつて寮であったのが廃止になりまして、現在、財団法人の東京学生寮として別の形になっておる経過等も、また改めて見直したわけでございます。
 また、私は県内に育英奨学会がどれだけあるのか知らなかったんですけれども、そうした先人たちの育英制度を見直した機会に調べてみますと、十七あるということでございます。そうした育英制度については、民間の皆さんにお願いしてまいっておるわけでございます。
 御提言のございました、国際人としての人材育成につきましては非常に重要な問題であるわけでございます。こうした人づくりのために、先ほどもちょっと申しましたような既存のいろいろな制度も十分検討させていただいて、国際化の時代──特に、和歌山県は国際的であり移民が多かったわけでございます。こうした海外へ移民された人たち、県人会との交流を深めて、また、お互いの子弟の勉強のために交流をさせる方法等についても十分検討してまいりたいと、かように思っております。
○議長(西本長浩君) 企画部長川端秀和君。
 〔川端秀和君、登壇〕
○企画部長(川端秀和君) 国際交流館の設置について、お答えを申し上げます。
 国際交流館をコスモパーク加太にとの御提言についてでございますが、コスモパーク加太計画の基本的な考え方として、国際化、情報化等に対応できる新しい町づくりを目指し、リサーチ、リゾート等のほか、交流機能を有した施設がぜひ必要と考えてございます。
 現在までの調査検討の中においても、導入施設イメージの一つとして国際交流機能等も考えてございます。
 今後は、関係機関とも協議しながら努力してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(西本長浩君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 21番木下秀男君。
○木下秀男君 大変御丁寧な答弁をいただきまして、ありがとうございました。
 質問でも申し上げましたように、国際化という──このことだけではございませんけれども、やはり、言っておることが実現できるように努力していただくことを強く要望いたしまして、終わります。
○議長(西本長浩君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で木下秀男君の質問が終了いたしました。
○議長(西本長浩君) お諮りいたします。質疑及び一般質問は、以上をもって終結することに御異議ございませんか。
 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(西本長浩君) 御異議なしと認めます。よって、質疑及び一般質問はこれをもって終結いたします。
○議長(西本長浩君) 次に、ただいま議題となっております全案件は、お手元に配付しております議案付託表のとおり、それぞれ所管の常任委員会にこれを付託いたします。
○議長(西本長浩君) 次に日程第三、請願の付託について申し上げます。
 今期定例会の請願については、お手元に配付しております請願文書表のとおり、それぞれ所管の常任委員会にこれを付託いたします。
○議長(西本長浩君) 次に、お諮りいたします。明三月十六日及び十七日、三月二十日並びに三月二十二日は常任委員会審査のため、また三月十八日は議事の都合により、それぞれ休会といたしたいと思います。これに御異議ございませんか。
 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(西本長浩君) 御異議なしと認めます。よって、三月十六日から三月二十二日までは休会とすることに決定いたしました。
○議長(西本長浩君) この際、各常任委員会の会場をお知らせいたします。
 職員からこれを申し上げます。
 〔職員朗読〕
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 総 務 委 員 会 第 四 委 員 会 室
 厚 生 委 員 会 第 五 委 員 会 室
 経済警察委員会 第 六 委 員 会 室
 農林水産委員会 第 一 委 員 会 室
 建 設 委 員 会 第 二 委 員 会 室
 文 教 委 員 会 第 三 委 員 会 室
 ──────────────────── 
○議長(西本長浩君) 次会は、三月二十三日再開いたします。
○議長(西本長浩君) 本日は、これをもって散会いたします。
 午後一時三十八分散会

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