平成元年2月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(浜口矩一議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 午後一時六分再開
○副議長(山本 一君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
○副議長(山本 一君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 36番浜口矩一君。
 〔浜口矩一君、登壇〕(拍手)
○浜口矩一君 私は、これまで再三にわたり、原発問題について、事故などの事例を提示し、また放出放射能被害の実情と特異性などを述べて、廃棄物処理問題も含めた安全性に関する問題、また言われる地域活性化、経済浮上等の経済波及効果、エネルギー論としての原発推進の是非等々について質問してまいりました。
 特に安全性に関しましては、事、生存にかかわる重大問題との認識から、設備や機器の安全性だけでなく、運営・管理のあり方、関連する管理運転員の人的な問題をも含めて、ただ一度の失敗をも許されないとする企業対応の基本姿勢、またエネルギーシステムの問題等々について問題点を指摘し、御所見をお伺いしてまいりました。それに対する当局の御答弁は、安全確保は一義的には国の責任であり、国が安全だと言い、また安全確保に万全を期して慎重な対応をされているので安全と信じる、ただしかし、安全性は県の原発立地三原則の中でも最重点課題ゆえ、可能な限り県独自の立場からも追及する云々、おおむね以上のとおりですが、原発立地をめぐる県内情勢、なかんずく日高町、日置川町における動きは傍観を許さない重大事と案ずるの余り、重ねて原発問題について、以下数点、事実を述べて質問いたします。
 去る二月二十八日、朝日新聞報道の「高浜原発の運転管理を評価」との見出し記事によると、関西電力は二十七日、国際原子力機関(IAEA)の専門技術者チーム運転管理調査団が、昨年十月、関電高浜三、四号機を調査し、このほど通産省に提出の報告書を発表した。同調査団は、昭和五十八年、韓国を皮切りに、世界十五カ国、延べ二十五回の調査をしたが、日本での調査は初めてとのこと。また、受け入れの関電の要請で、運転を開始して約三年半と、比較的新しい両原発が調査先となった由。その結果、「安全の重要性がしっかりと認識されており、運転の質は高い。高浜三、四号機は世界の原発の中でもトップグループの位置を確保した」との結論づけに対して、反原発グループは、「美浜一号機など老朽化した原発を調査してほしかった。これでは、原発推進、安全PRの意図が見え見えだ」と反発。それに対し関電は、「美浜一号機であっても、満足のいく結果が得られたと思う」と報道されております。
 なお、この報道に加えまして、「東電福島第一原発また異常」との見出しで、同五号機で冷却水送水再循環ポンプ電気回路の保護用検知機作動によるポンプ停止、原子炉を手動で停止し、原因調査中との報道がなされていたこともあわせ申し上げ、後刻提示の問題例とともに御検討を願いたいと存じますが、この前段の事実報道から考えられる、いわゆる原発の安全性に関する評価について、果たして関電側の言い分をそのまま受け取ってよいのかどうか。私は、次の事実を述べて御検討を請いたいと存じます。
 それは、一昨年九月二日、安全性にかかわる重大な変更工事であるにかかわらず、安全審査も経ずに定検中に若狭の五原発──いずれも加圧水型軽水炉です──で改造を行ったとして、原発反対福井県民会議が関西電力を福井地検に告発したという事実内容についてであります。
 私は、この事実内容から、次の問題二点を指摘いたしたいと存じます。その第一は、原発の重大な危険性が、運転中だけでなく、定検を隠れみのにした、その定検中にも潜んでいるということ、その第二は、現在の原発行政では設置から運転中に対しては一定の規制下に置いているものの、停止中の定検については無法地帯として野放しにされていたことが明らかにされた告発内容であるという点であります。もちろん、この取り扱いは法の手にゆだねられるとしても、十分注目に値する重大事と存じますので、若干具体的な事実を付加いたしたいと思います。
 定格出力で運転中の高浜一号において、一昨年七月十一日午前零時、B蒸気発生器で一次冷却材ポンプ振動大の警報が発信され、約二時間後、手動で緊急停止。振動原因は、蒸気発生器内に無許可で取りつけていた重さ七・八キログラムの金具二個が脱落して一次冷却材ポンプの羽根に衝突し、それをかみ込んだためであった。また、脱落金具はポンプの回転翼と主軸受け蒸気発生器細管管板を損傷しただけでなく、部品の一部は原子炉にまで達しており、約二カ月間の運転停止に追い込まれたという重大事故。加えて、同県民会議の調査の中で判明した驚くべき事実、すなわち構造上必要でもない金具の取りつけ工事が、定検期間短縮のため、一昨々年十月から一昨年二月にかけての定検中に、何らの法的手続も経ずに定検作業の仮設工事ゆえ運転に影響のない行為としてまかり通っていたとのこと。
 念のため、この工事内容を申し上げますと、原子炉内で行われる核燃料取りかえ作業と並行して蒸気発生器での点検作業をするため、原子炉につながるパイプに仮設のふたを取りつけて原子炉からの水の流入を防ぐものであり、仮ぶたは運転中は外されるが、それを支える金具はボルトで固定され、運転中も蒸気発生器水室仕切り板に常設されていたとのこと。また、同種の工事が一昨々年から一昨年にかけて大飯一、二号、美浜二、三号でも、工事申請も届け出もないまま行われていたという事実。加えて、脱着自由な仮設ぶたの取りつけ工事とはいえ、作業員と原発自体の安全性に重大な結果をもたらすところの蒸気発生器隔離装置において蒸気発生器の構造に重大な変更を加え、さらに核燃料取りかえ設備の一部をなす重要工事の上、核燃料取りかえ作業自体危険な作業であり、原子炉設置申請の安全審査でも原子炉及び炉心に次ぐ重要項目として位置づけられていることなどを考え合わせるとき、定検中の使用済み核燃料取りかえ手順の変更は、当然、安全審査の対象となります。
 また、核燃料取りかえ作業はすべて水中で行われ、空気中に燃料が露出しないよう、格納容器内のキャビティーに硼酸水が満たされます。このとき、水位の関係で、原子炉のパイプから硼酸水が蒸気発生器内に流入する。それゆえ、蒸気発生器内の作業は同時にできない構造になっていたのを同時にするための簡易ぶたが、蒸気発生器隔離装置であります。さらに、この簡易ぶたには、原子炉を経てキャビティー内の水圧がまともにかかっていると言われますゆえに、もし隔離ぶたが破損された場合、水は一気に蒸気発生器内に流入し、作業中は外部に通じているマンホールから硼酸水が外部に流出。また、キャビティー内の水位は低下して、取りかえ中の燃料はむき出しになりかねない。それゆえ、この場合、崩壊熱による燃料溶融、作業員の被曝は避けられません。そのような危険増幅の作業実態の告発とも解さざるを得ないのであります。
 もう一つ申し上げます。東京電力福島第二、三号機において、去る二十八日朝、再循環ポンプの破損で行方不明の金属片の一部が圧力容器内の炉心底部で発見された。また、水中テレビカメラによる調査で、死の灰の詰まっている核燃料体の一部にも付着していることが判明。加えて、この再循環ポンプの故障で原子炉を停止した五日も前から異常警報が出ていたにかかわらず、運転が強行されていた事実も明らかにされています。
 私は、これら二件を総合して、言われる「設備利用率向上」という稼働優先の企業体質をかいま見た思いであります。また多重防護云々についても、小さな故障が大事に至らないためのもの、したがって潜在的危険の存在は当初から認められていること等から、異常の早期発見、的確な対応が何よりも大切であるにかかわらず、それがおろそかにされている。加えて、運転管理専門官常駐制度も形だけで、機能されていない実例の一つと申さざるを得ません。
 以上の企業対応について、安全確保の観点からどのような御見解をお持ちか、お伺いいたします。
 次に、これも朝日新聞一月七日報道の「原発稼働率急落 昨年七〇% 事故などで長期検査」との実態について、その原因の考察をも含めて当局の御見解をお伺いします。
 集計によりますと、昨年一月から十二月にかけての我が国原発商業炉三十五基の設備利用率は、先ほど指摘の経済性優先の企業体質にもかかわらず七〇・四%で、前年の七九・四%より大幅に低下しております。資源エネルギー庁は、定検の偏りが主因と弁明されていますが、その事実は一応認めるとしても、見過ごしてならない大きな原因である事故、トラブルの事実内容について注目すべきと存じ、若干その点に触れたいと思います。
 なるほど、原発の稼働率がここ数年間異常に高かったのは事実ですが、それは、言われる「原発の信頼性向上の結果」では決してなく、電力会社が高稼働率達成に無理をしたためで、その何年かの無理が限界に来て稼働率低下を招いたのではないか。
 例えば、定検が長引いたという言い分についても、それは事故や部品の損傷が深刻化したせいである。事実、浜岡一号炉では、定検と称してはおりますが、実情は、中性子計測器の収納管の穴あきで強いられた長期の運転停止であった。また、高浜二号炉なども、蒸気発生器細管のひび割れで定検期間が延長されました。
 他は省略いたしますが、さらに事故は依然として多発という現象も昨年の傾向の一つです。これも、何年かの定検短縮による手抜きの結果という識者の批判に加えて、その事故、トラブルの内容についても、ごく最近の例を見ると、例えば先述の百キログラムのリングが脱落、座金四個まだ不明という福島第二、三号炉事故、さらに昨年十月二十七日、大飯一号機で発生の、放射能を含む一次冷却水が二次冷却水側に漏れた事故。この原因は蒸気発生器細管一本の横割れで、蒸気発生器製造時に細管を内部から広げる際、工具の一部欠損のため細管内部に不規則な力が加わり、円周に沿って水平方向に金属疲労が起き、細管に極めてまれな横割れが生じたらしいとの分析。なお、まれな横割れであったがために、三カ月前の定検でも見落としていたという事実。
 また、定検中の発見ですが、美浜二号機で、一次冷却材ポンプから冷却材を原子炉に送り込むための変流翼取りつけボルト四十八本中、実に十八本に応力腐食割れがあり、それが原因でひび割れが発生。
 東海一号炉では、炭酸ガス温度測定用ケーブルの鉄製カバーの一部が腐食して炉心の上に落ちているのが定検で見つかったと一月十三日発表されていましたが、このことは前回の定検時から判明していたトラブルで、完全に直しようのないまま運転を強行、今回も完全修理は期待できない由であります。
 そこで、これらのことをつぶさに検討したときに、すべてが安全性に直接かかわる重大問題としての問いかけを事実として投げかけていると思料いたしますが、それでもなおこれまでの、政府が安全云々ゆえ安全との御説明をされるのかどうか、明快な御見解をお伺いいたします。
 次に、原発低コスト論についてお伺いいたします。
 先月十三日申請の電力会社十社における電気料金値下げ内容を一べつしますとき、まず最初に言えることは、関西電力の、原子力比率が高いので安い電気供給という「低料金全国一、それは原発」との言い分は、数字の上からも論拠が崩れ、経済性の上からも疑問が深まったということであります。
 加えて、昨年度運転開始の発電所をモデルにした、昨年暮れ、資源エネルギー庁発表の一キロワット当たり平均発電コスト試算によると、原発は九円程度、これに対して石油火力、LNG火力は十円ないし十一円、石炭火力十円程度、水力十三円程度と、辛うじて原発の経済的な優位さを示しているとは申せ、この試算には放射性廃棄物の最終処分、廃炉処分費用は含まれていません。しかも、為替レートを今回の料金改正での想定より一ドル五円安の百二十九円と算定し、また紀元二〇〇〇年には石油価格は現在の倍近い値上がり、一方、ウラン燃料は加工費、再処理費用を含めて年○ないし一%しか上がらないと仮定しての平均コストであり、消費者はもちろん、学者間にも批判が出ている事実を考えましたとき、経済性についても多角的な論議の必要性があり、将来展望を含めた原発の経済的優位さはその論拠を失いつつあると解する一人ですが、御見解をお尋ねいたします。
 最後に、このような情勢下、しかも当然とも言える反原発の高まりという世論の中で、県内における、例えば日高町を中心とした推進としか解しようのない原発講演会の開催、日置川町の行政の筋を無視した同漁協の動きなどは、明らかに原発立地を目指すものと考えられます。
 そこで、このような動きは御承知と存じますが、これらはすべて政府機関との関係でなされているもの、県は関知せずとお考えか。そして、どのような御見解を持って対処されたのか、また対処されるお心づもりか。今後の見通しも含めた明確な御見解をお伺いし、私の原発に関する第一回の質問を終わります。
 次に漁業問題について、その現状、将来展望、振興策についての方向と当面の課題等の観点から、求められる基本姿勢にかかわるであろうと思われる問題一点について質問いたします。
 なお、私、農林水産委員会に所属していますが、事、将来の地域漁業存続にもかかわりかねない要因を秘めている重要問題と考えますので、あえてこの場をおかりして御見解をお伺いいたしたいと存じます。また、残り少ない時間でございますので、ごくかいつまんで申し上げることをお許し願いたいと思います。
 さて、数日前、私たちの漁協にイワシ──私たちは「ヒラゴ」と呼んでいる一種ですが、大敷網で大量水揚げされました。そしてその値段は、浜値キロ当たり三円。大量ゆえ全部の水揚げが同日かなわず、翌日に相当量持ち越されたが、それは全部網の外に放ち捨てて処理いたしました。また先月、サンマが大量水揚げされたが、値段はキロ当たり十円。サバコも同様の実情でございます。これでは漁業経営の好転が望めないのは当然の事と存じます。ただ、少量ながら他の値の張る魚の水揚げもあり、経営カバーの状況でございます。
 私は、今や大漁型漁業の時代は既に過ぎ、沿岸・近海を含めた漁業振興というより、今後は消費の動向、需要に見合った必要な魚介を必要量だけ漁獲する、いわゆる管理型漁業指向以外に生き残りの道なしと極論する一人です。
 このような観点から、水産試験場、その他の研究機関、試験機関、また栽培漁業センター等、中間育成場をも含めてその充実を切に願うとともに、漁業生産基盤の向上を目指した熊野灘海域総合開発事業実施に対して心から敬意を表しつつ、大きな期待を寄せてまいりました。その計画も七〇%達成と伺い、喜んでいる一人ですが、関連して、昭和五十七年策定と伺う、今後の漁場利用を含めた管理経営計画第二項「漁場利用計画」の存在にもかかわらず、最近、私たちの地先沖合では、まき網と一本釣り漁業の免許漁業間でたびたび海上トラブルとの現状を仄聞し、心を痛めている次第です。
 その実情をかいつまんで申し述べますと、黒潮の流れも影響して、今期はブリ、カツオ、マグロの水揚げが不振でしたが、ことしになってマグロ類が一時水揚げ、一本釣り、その他を含めて期待を寄せたのもつかの間、まき網、きんちゃく網が入って操業、漁獲期待は空振りの始末。以前、ブリの場合も同様であった由。しかも、定置網近くまで来て操業、また那智湾の入り口までの事例もあったと伺っております。これでは保護区域もなきに等しい現状と思います。
 御承知のとおり、まき網等は、使用集魚灯の燭光の大きさ、また一網打尽の漁獲漁法であるということなどから、その影響は単に定置だけでなくすべてにわたり、しかも甚大な被害を与える。それゆえ、思い余っての取り締まり善処の漁民の求めに対しても早速の行動は期待できず、また一部漁民代表の陳情も効果なし。具体例は後日に譲るとしても、事態改善の希望すら持てない現状と聞いています。
 申し上げるまでもございませんが、例えば二百海里問題、魚介類の輸入増大、またそれによる魚価の低迷等々、厳しさ倍加の中でこれに耐えて苦境を克服し、これ努めて漁業に精励している、それも昼夜をいとわない若者たちの、家業を守り、海を生活のよりどころとする貴重とも言えるひたむきな心にこたえるためにも、水産県和歌山の将来展望を認識され──これは申し上げるまでもなく御対応と存じますが、そのためにも関係漁協の陳情や要請にこたえられる対応は緊急の課題と存じ、必須の条件たる漁業秩序確立のため現在までとられた措置、また今後の対応について明快な御所見をお伺いし、私の第一回の質問を終わらせていただきます。
 御清聴ありがとうございました。
○副議長(山本 一君) ただいまの浜口矩一君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 浜口議員にお答え申し上げます。
 原子力発電所の問題については企画部長から答弁申し上げますが、私から、安全性に関する企業対応のあり方について述べさせていただきます。
 原子力発電所を運転・管理する電力会社は、安全確保を何よりも最優先すべきであるし、またそのように対応すべきであると考えております。
 それから、熊野灘の漁業秩序維持の問題につきましては、農林水産部長から答弁させていただきます。
○副議長(山本 一君) 企画部長川端秀和君。
 〔川端秀和君、登壇〕
○企画部長(川端秀和君) 原子力発電所についての四点の御質問にお答え申し上げます。
 まず第一点は、安全性に関する企業対応のあり方についてでございます。
 一昨年七月十一日に高浜発電所一号機で発生した事故は、定期検査の能率を向上するために蒸気発生器水室の仕切り板に取りつけていた金具が外れ、一次冷却ポンプの羽根に衝突し、かみ込んだというものでございます。その後、関西電力株式会社は、同様のトラブルの再発防止のために、美浜発電所二、三号機、大飯発電所一、二号機にも取りつけていたこの金具を定期検査時にすべて撤去したと聞いてございます。
 ことしの一月に福島第二発電所で発生した事故は、以前から損傷の可能性があるとして定期検査の際に点検・改修の予定であった再循環ポンプの水中軸受けが破損して羽根車に衝突、金属片や金属粉が原子炉圧力容器内に入り込んだというものでございます。
 国の見解によりますと、これらの事故は安全上問題となるものではなかったとされてございますが、いずれも蒸気発生器なり原子炉圧力容器といった安全上重要な設備の中に金属片が入り込んでいることから、蒸気発生器細管や燃料棒を損傷する可能性も否定できないという見方もあると聞いてございます。
 現在、福井地方検察庁は、福井県の原発反対県民会議の告発を受け、調査中とのことでございます。
 また、東京電力株式会社に対しましては、原子力安全委員会委員長らが「安全の配慮に慎重さを欠いた」と指摘しておりまして、今後、国の厳しい指導監督のもとに原因が究明され、適切な措置が講じられるべきものと考えてございます。
 県といたしましては、電力会社がこうした事故を教訓として生かし、安全確保の第一歩である故障、トラブルの未然防止のために最大限の努力を払うよう求めるとともに、厳しく見守ってまいりたいと考えてございます。
 第二点は、昨年中の稼働率低下の原因考察と安全性についてでございます。
 昭和六十三年度の設備利用率は前年より下回ってございますが、この要因として、通産省資源エネルギー庁の見解によりますと、定期点検の時期に当たった発電所が多かったことに加え、故障、トラブルによる停止期間の長引いたプラントが数基あったことが響いているとのことでございます。
 なお、原子力発電所の安全性は、第一に異常の発生を防止すること、第二に、万一発生してもその拡大を防止し、事故に至らぬよう措置すること、第三に、万一事故が発生しても周辺への放射性物質の放出を防止することという三段構えの考え方で確保が図られていると聞いてございます。
 異常を早期に発見し、事故に至らぬうちに停止することが安全確保にとって重要でございますので、そういうことから設備利用の低下が直ちに安全性の低下を示すものではないと考えておりますが、安全確保の第一歩である異常発生の防止になお一層の努力が求められるものと考えてございます。
 第三点は、原発低コスト論についてでございます。
 昭和六十二年十二月に発表された資源エネルギー庁の試算による新規電源の発電単価は議員御紹介のとおりでございまして、この試算には再処理費用は含まれておりますが、原子炉の廃止措置及び放射性廃棄物の最終処分費用は含まれてございません。
 しかしながら、昭和六十年七月に提出された総合エネルギー調査会原子力部会の報告書によりますと、百十万キロワット級の原子力発電施設を密閉管理の後に解体撤去する場合の廃止措置による単価増は約一割程度と見込まれ、これによって原子力発電の経済性が大きく損なわれるものではないとの目安が報告されてございます。
 また、火力発電との比較におきましては、現在の原油価格が大変安いという背景がございますが、長期的には、埋蔵量に対する不安や輸入先の偏在性、あるいは工業用製品の原料としての需要の高まり等から、一九九〇年代半ばまでには原油価格の大幅な引き上げが予想されるといった指摘もあり、施設による発電コストの比較には長期的な見通しを含めた検討も必要であると考える次第でございます。
 最後に第四点は、県の原発取り組みのあり方についてでございます。
 豊かな国民生活を維持・発展させるためには、長期的な観点からのエネルギー政策が必要であるということは理解しているところでございます。しかしながら、その具体的な方法、とりわけ原子力発電による電気エネルギーの確保につきましては、県内はもとより、全国的にも賛否さまざまな意見があることもまた事実でございまして、このため、地元の方々があらゆる機会を利用してこのことに関する知識を高め、理解を深めていくことは大変重要なことではないかと考えている次第でございます。
 また、日置漁協が実施している電源立地地域温排水対策補助事業につきましては、関係する漁業者の方々が検討の結果、選択された方策であると認識いたしているところでございます。
 いずれにいたしましても、県としては、県が独自に定めている三原則に基づいて対処してまいる所存でございます。
 以上でございます。
○副議長(山本 一君) 農林水産部長安田重行君。
 〔安田重行君、登壇〕
○農林水産部長(安田重行君) お答え申し上げます。
 熊野灘海域における一本釣りとまき網漁業の問題でございますが、両者が同一漁場で操業するためトラブルが多発し、その解決のために、県及び海区漁業調整委員会の調整により、昭和五十四年六月に操業についての協定が関係十一漁業協同組合の間で合意・締結されたところでございます。しかし、その後もトラブルが生じており、その都度、みずからの協定を守るように指導をしてまいったところであります。
 御承知のように、五十七年度から実施している熊野灘海域総合開発事業のその後の進捗により新たな人工礁漁場も造成されていることでもあり、従来の天然礁を含め、今後、円満な漁場の利用が図られるよう、さらに漁業調整委員会との連携をとりながら積極的に関係漁業協同組合の指導を行ってまいりたいと存じます。
 以上でございます。
○副議長(山本 一君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 36番浜口矩一君。
○浜口矩一君 安全確保についての企業対応に対する県の御答弁は、事実に対する認識対応については大体そのとおりと存じますが、私が問題にしておりますのは、安全性にかかわる重大工事であるにかかわらず、安全審査、法的な手続もなしに工事がなされたという企業対応のあり方、それを定検中のゆえをもって許していたという国の規制についてどう受けとめられるかということでございます。それとともに、その工事目的はいわゆる定検期間短縮にあり、事実、仮設ぶたのために定検は六日間短縮されたということを聞いてございますが、このことが経済性優先の結果だと、このように申し上げておるわけでございます。この点につきましては、福井地検の調査に待つとのことですが、それは手続として一応認めるとしても、それらの措置を企業体質として見るか、一つの偶発的な事実として見るか、これが非常に大切だと思います。もし、その点について御見解があればお伺いいたしたいと思います。
 また、福島の件につきましては、先日の新聞に、いわゆる安全な措置がなされたというような報道がありましたので、この点も申し上げたいと思います。
 次に、設備利用率と安全性の問題につきましては、昭和六十三年に設備利用率が低下したことについて、資源エネルギー庁の言い分、また安全性に関する考え方を述べられ、設備利用率の低下は即安全性の低下を示すものではないという旨の御答弁がございました。もちろん、異常発生の防止はなお一層の努力が求められるとしておりますが、大体、以上の結論でございました。
 また、定検の申し上げた実情、あるいは事故やトラブルで運転停止が長引いたことにつきましても、つぶさに検討したとき、以前から無理をして運転を続行した結果招いたのが今回のトラブルであり低下であるという見方は、各方面から寄せられておる批判でございます。私も同感でございますが、そのことは裏を返せば、ただ事故さえ起こさなければいいと、こういうその場しのぎに似た考え方によっておるのではないかと考えます。もう一度、一歩踏み込んだ検討が必要と存じます。このことにつきましては、そのような厳しいとらまえ方が必要であるという私見を申し上げ、要望にとどめたいと思います。
 次に、原発のコスト優位性につきましては、総合エネルギー調査会の報告内容を示されて、原発の経済性の優位さは損なわれておらないという御答弁でございました。しかし、例えば廃炉費用は一割増の見込みということではございますが、試算では九円、それの一割増は約十円。そうすると、石炭火力の十円とほぼ匹敵するわけなんです。
 また、それだけでなしに原油価格にしても、一九九〇年代半ばまでに大幅引き上げが予想されるゆえ長期的な検討が必要との御答弁ですけれども、資源エネルギー庁の試算によると、二〇〇〇年には石油価格は倍近い値上がりをすると見込んであるわけなんです。しかも、この資源エネルギー庁の試算自体が多くの批判を受けておるという事実。加えて、太陽熱やその他のソフトエネルギーの開発の見通し等から考えたら、原発の優位性は今日失われつつあると断定する一人です。それでありますので、一般質問でも申し上げたように、多角的な論議の必要性ということを十分御検討願いたいと思います。もしこの点について県の見解がございましたら、御開陳をお願いいたします。
 それから、地元に対する県対応につきましては、原発による電気エネルギー確保については賛否さまざまな意見があるので、あらゆる機会を利用して知識を高め、理解を得ることが重要との御見解ですが、そのことは一応認めるとしても、その前段としての正しい理解を求めることは、特に原発について必要だと思います。理解だけでなしに、正しい理解です。その点について、県行政のあり方として、行政の筋は筋として私は心得ますが、少なくとも県民の立場に立った視点でいろいろなことを選択し、あるいは考える、また中庸的な立場に立って対処することの姿勢が必要であり、一方に偏するように誤解されるような行動は厳に慎むべきだと申し上げておきます。
 関連いたしまして、今議会に提出された電源立地地域整備事業費二千四百万──前年度は四千万計上されておったと思うんですが、これについての執行内容も、県の対応あるいは姿勢というものに関連すると思いますので、そのことも含め、今後の対応について十分に注目していきたいと考える次第です。もし補足回答がございましたら、お願い申し上げます。
 最後に、漁業問題につきましては、五十四年の六月に操業協定が結ばれた、しかしトラブルが現実に起こっており、その都度指導しておる、今後も強く漁協を指導すると、こういうようなことについては基本的に了解いたしたいと思いますけれども、具体的にどのように徹底さしていくか、あるいは時宜を得た対応としてどのように取り組んでいくか、このことが非常に大事だと思います。
 この点につきましては、私、農林水産委員会の委員に属しているので、また後刻、委員会でも御質問をしてお願いすることもあり得るということを申し上げ、今回はそれのみにとどめておきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。
 以上です。
○副議長(山本 一君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 企画部長川端秀和君。
 〔川端秀和君、登壇〕
○企画部長(川端秀和君) まず、企業への対応の問題でございますが、先ほどの知事答弁にもございましたとおり、原子力発電所を運転・管理する電力会社は安全確保を何よりも最優先すべきであり、またそのように対応すべきものであると考えてございます。
 それから、関連する予算の執行も含めての県の姿勢でございますが、県が独自で定めている三原則に基づいて対応してまいる所存でございます。
 以上でございます。
○副議長(山本 一君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
 36番浜口矩一君。
○浜口矩一君 ただいまの企画部長の再答弁につきまして。
 企業対応については何よりも安全確保を最優先にするという御答弁でございますが、その点については現実にきちっと県民にわからせるような行動を、これはそれがあっての行動でございますけれども、お願い申し上げます。
 それから、県の対応につきましては、三原則を堅持するということでございます。安全性、適地性、地元合意の三原則は、もちろん堅持してもらわなならんのですが、私は、その三原則の具体的な対応のあり方として県の御見解をお伺いしたんです。けれども、具体的なものにはなかなか答えにくいと思いますので、今後注目していきたい。これはもう要望だけにしておきますので、よろしくお願い申し上げます。
 以上で終わります。
○副議長(山本 一君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で浜口矩一君の質問が終了いたしました。

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