平成31年2月 和歌山県議会定例会会議録 第6号


平成31年2月 和歌山県議会定例会会議録

第6号(全文)


◆ 汎用性を考慮してJIS第1・2水準文字の範囲で表示しているため、人名等、会議録正本とは一部表記の異なるものがあります。人名等の正しい表記については「人名等の正しい表記」をご覧ください。

平成31年2月
和歌山県議会定例会会議録
第6号
────────────────────
議事日程 第6号
 平成31年2月25日(月曜日)
 午前10時開議
 第1 議案第1号から議案第17号まで、議案第34号から議案第84号まで、議案第86号から議案第88号まで及び議案第90号から議案第104号まで(質疑)
 第2 一般質問
────────────────────
会議に付した事件
 第1 議案第1号から議案第17号まで、議案第34号から議案第84号まで、議案第86号から議案第88号まで及び議案第90号から議案第104号まで(質疑)
 第2 一般質問
────────────────────
出席議員(40人)
 1番 中西峰雄
 2番 秋月史成
 3番 立谷誠一
 5番 前芝雅嗣
 6番 花田健吉
 7番 井出益弘
 8番 宇治田栄蔵
 9番 川畑哲哉
 10番 玉木久登
 11番 濱口太史
 12番 鈴木太雄
 13番 尾﨑太郎
 14番 藤山将材
 15番 尾崎要二
 16番 中村裕一
 17番 岩田弘彦
 18番 中本浩精
 19番 山本茂博
 20番 岸本 健
 21番 冨安民浩
 22番 吉井和視
 23番 堀 龍雄
 24番 中 拓哉
 25番 森 礼子
 26番 服部 一
 27番 谷 洋一
 28番 新島 雄
 29番 岩井弘次
 30番 多田純一
 31番 片桐章浩
 32番 藤本眞利子
 33番 浦口高典
 34番 山下直也
 35番 山田正彦
 36番 菅原博之
 37番 谷口和樹
 38番 奥村規子
 39番 雑賀光夫
 41番 坂本 登
 42番 長坂隆司
欠席議員(なし)
〔備考〕
 4番 欠員
 40番 欠員
────────────────────
説明のため出席した者
 知事         仁坂吉伸
 副知事        下 宏
 知事室長       宮﨑 泉
 危機管理監      藤川 崇
 総務部長       田村一郎
 企画部長       田嶋久嗣
 環境生活部長     山田成紀
 福祉保健部長     山本等士
 商工観光労働部長   山西毅治
 農林水産部長     原 康雄
 県土整備部長     髙松 諭
 会計管理者      中西 淳
 教育長        宮下和己
 公安委員会委員    竹田純久
 警察本部長      檜垣重臣
 人事委員会委員長   平田健正
 代表監査委員     保田栄一
 選挙管理委員会委員長 小濱孝夫
────────────────────
職務のため出席した事務局職員
 事務局長       田村公一
 次長         糸川 徹
 議事課長       松山 博
 議事課副課長     山田修平
 議事課議事班長    岸裏真延
 議事課主任      保田良春
 議事課主査      伊賀顕正
 議事課主事      浅田晃秀
 総務課長       田中健司
 政策調査課長     中平 博
────────────────────
  午前10時0分開議
○議長(藤山将材君) これより本日の会議を開きます。
 日程第1、議案第1号から議案第17号まで、議案第34号から議案第84号まで、議案第86号から議案第88号まで及び議案第90号から議案第104号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第2、一般質問を行います。
 10番玉木久登君。
  〔玉木久登君、登壇〕(拍手)
○玉木久登君 おはようございます。
 昨日は、天皇陛下御在位30年記念式典が行われました。私も、早朝から県庁の記帳所で記帳をさしていただきました。陛下のお言葉を聞くと胸に熱いものが込み上げてまいります。自分自身、やはり日本国民として誇らしく思います。
 この場に立たせていただいて、はや2年が過ぎました。一生懸命これからも頑張ってまいりたいと思っております。御清聴のほど、よろしくお願い申し上げます。
 議長のお許しをいただきましたので、一般質問に入らせていただきます。
 まず1項目め、県内における特定診療科(小児科・産婦人科)の医師数の状況及び現状についてお伺いいたします。
 以前から定例会においても、医師の地域遍在について多くの議論がされております。私の地元有田市においても、市民の皆様から早期の安定した医療体制を望む声が多く寄せられています。というのは、公立病院である有田市立病院において、平成25年を境に勤務医不足の状況となり、常勤内科医師は1名、小児科医師、産科医師においてはゼロの状況となり、市民の不安は高まりました。
 その状況下では、医療体制はもちろんのこと、運営面でも危機的な状況となり、県立医大との連携を軸に懸命な医師確保に取り組んだことにより、内科医師については平成29年度以降7名体制となり、現在に至っています。しかしながら、小児科、産科に関しては、現在も小児科医師1名、産科医師1名と勤務医不足の状況に変わりはありません。
 私は、県民の命を守ること、安心して生活を送れる医療圏であることとの考えから、採算をとることの難しい部門の医療を安定的に行うことが、税金を使って運営する公立病院の使命であると常々から思っています。
 そこで、今回、県内における小児医療と産科医療の現状、特に有田医療圏の現状について、福祉保健部長にお伺いいたします。
○議長(藤山将材君) ただいまの玉木久登君の質問に対する答弁を求めます。
 福祉保健部長山本等士君。
  〔山本等士君、登壇〕
○福祉保健部長(山本等士君) まず、小児医療の現状につきましては、各医療圏において、公的病院を初めとする医療機関により、小児患者の診療体制が確保されております。また、小児救急医療体制につきましては、軽症患者は各医療圏の休日急患診療所等で対応し、入院を要する救急患者は各医療圏の公的病院を中心に対応しております。
 しかしながら、有田医療圏では、有田市立病院の小児科常勤医師が1名しかなく、入院を要する救急患者の対応が困難であり、隣接する御坊医療圏や和歌山医療圏で受け入れている状況です。
 次に、産科医療の現状につきましては、各医療圏において、公的病院を初めとする分娩医療機関により、それぞれの地域で出産できる体制が確保されております。なお、有田市立病院では、平成25年11月から分娩が休止されていましたが、県と有田市立病院が医師確保に尽力した結果、1名の産科医師が赴任し、平成29年5月から分娩が再開されたところです。したがって、現在、有田医療圏においては、有田市立病院医師1名と診療所医師1名の2名が分娩を担っている状況です。
○議長(藤山将材君) 玉木久登君。
  〔玉木久登君、登壇〕
○玉木久登君 小児医療に関しては、各医療圏において診療体制の確保がされているものの、小児救急医療に関しては、有田医療圏では入院を要する小児患者の受け入れが困難になっている状況であること、産科医療の現状では、各医療圏とも出産できる体制を確保しているとの御答弁をいただきました。
 資料としていただきました厚生労働省調査の特定診療科の医師数の状況を見ると、小児科、産科の医師数ですけども、平成28年度の数字ではありますが、和歌山医療圏では小児科医師74名、産科医師63名とあり、それに対して有田医療圏の医師数は小児科医師4名、産科医師は民間産科医師1名、公立病院産科医師1名であり、事実上オーバーワークが現状であります。診療体制の確保、出産できる体制を確保しているとはいえ、有田医療圏での特定診療科は大変厳しい状況であると言わざるを得ません。
 小児科医師、産科医師の確保については大変難しい状況であることは私も認識をしております。ですが、この問題については、今後、より一層の取り組みが必要であると考えています。県として少子化に対するさまざまな取り組みは、従来から、また、新政策でも盛り込まれ、どうにかして食いとめると皆が考えているところであります。私は、その根幹として安心して子供が産める環境、安心して子供を育てられる環境をとの考えの中で、小児科医療、産科医療の充実は外すわけにはいかないと思います。
 有田医療圏では、子供の救急医療は和歌山市や御坊市へ、また、有田での里帰り出産もなかなかかなわないと嘆く声も少なくありません。近くで診てもらえたら、ふるさとで安心して産みたいと思うのは当然だと思います。
 平成30年6月定例会一般質問において、中村裕一議員から、県立医科大学における地域医療枠、県民医療枠の医師の進路について、また、県民医療に必要な病院への必要な診療科目への取り組みについての質問もありましたが、今後の小児科医師、産科医師確保に向けた取り組みについて、知事にお伺いいたします。
○議長(藤山将材君) 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 本県では、11年前ぐらいの医大の定員増、特に県民枠、地域枠の活用等によって、地域拠点病院とか中山間部の診療所に医師を回せるようになってまいりました。考えてみますと、特に有田市立病院が大変でありまして、有田市立病院へ1人の医師を回すということのために、私自身が医大の教授とか、それから実は、こっちから1人抜いてというような、そういうところの病院の管理者の方なんかと大変な議論をした覚えがありまして、そういうことから考えますと、今は大分楽になって、感無量の感もあります。
 しかし、科別の医師の不足が解消されたかというと、そうでもございませんで、御指摘のように、特に和歌山では公的病院で勤務する小児科とそれから産婦人科の医師が不足している状況であるということは明らかであります。
 このため、県では、これらの専門医を目指す若手医師に対して、一定期間、県内の公的病院で勤務することを条件に、返還を免除する研修資金貸与制度を創設し、医師の確保を図っております。その結果、現在、小児科1名、産科2名の若手医師が、この制度を利用して専門医を目指して研修を行ってくれているところであります。
 さらに、産科については、県外から県内の公的病院に赴任する専門医に対する研究資金貸与制度を創設し、県がワンストップ窓口となって赴任先の病院を紹介する取り組みを行っておりまして、平成29年4月から1名の産科専門医が県内の公的病院で勤務しておるところであります。
 加えて、僻地拠点病院等において内科での勤務を原則としている和歌山県立医科大学の地域医療卒業医師、これは県民枠じゃなくて地域医療枠のほうですね、地域医療卒業医師について、例外的に派遣中の診療科として産科での勤務を認めておりまして、現在1名が公的病院で産科医師として勤務を行っております。
 こうした取り組みを継続しつつ、来年度は小児科及び産科医師の偏在の状況を踏まえた医師確保計画を策定することとしておりまして、和歌山県立医科大学と連携し、さらなる医師の確保と効果的な配置に努めていきたいと思っております。
 県としては、地域の中核を担う公的病院の小児科及び産科の医師を充足させることにより、住みなれた地域で安心して子供を産み育てることのできる医療提供の充実を図っていきたいと思っております。
○議長(藤山将材君) 玉木久登君。
  〔玉木久登君、登壇〕
○玉木久登君 どうもありがとうございます。
 今日までの取り組み、また、来年度から新たに医師確保計画の作成など、知事のほうから御答弁をいただきました。知事、先ほどお話がありましたとおり、有田市立病院の医師確保の取り組みは、私が市議のときからの問題であり、知事もよく御存じのことだと思います。有田市長である望月市長みずから全国自治体病院協議会医師求人求職支援センターに赴き、医師確保に奔走もされております。
 こちらが望む気持ちだけではなかなか難しい特定診療科への取り組みではあると思いますが、お聞きすると、臨床研修終了後に小児科、産科を希望する若手医師がふえつつあるというお話もお聞きしております。
 私は、人づくりとして取り組んでおりますキャリア教育の一環として、小学校での県立医科大学地域医療支援センターの取り組みであります「医師の仕事」などの出前講座について、大変有意義なことだと思っております。キャリア教育の充実に向け、今後も取り組んでいきたいなと考えております。その中から、これからの和歌山の地域医療を支える人材が芽生えてくれたらなと思っております。私も、できる限り懸命に取り組んでまいりたいと思いますので、今後は県、県立医大、医師会等、公的機関、民間が連携してこの問題に取り組んでいただくことを切にお願いいたします。
 続きまして、2項めに移ります。
 森林環境譲与税について、これの活用についてお伺いいたします。
 平成31年度から施行予定の森林環境譲与税は、森林整備のために必要な費用を国民一人一人がひとしく負担を分任して森林を支える仕組みに活用する財源として都道府県、市町村に交付される予定であります。
 その活用内容については、市町村が行う間伐や人材育成・担い手の確保、木材利用の促進や普及啓発、森林整備及びその促進に関する費用とあり、都道府県は、市町村による森林整備に対する支援等に関する費用となっております。今後の紀州材の利用拡大にもつながり、大きな可能性への期待も膨らみます。
 譲与割合は、当初は市町村8割、県2割で譲与される予定で、私有林人工林面積、林業就業者数、人口割で交付額が変わります。そのことから、人工林面積の少ない市であっても交付されることとなります。
 そのような市等への具体的な活用例についての県の考え方を農林水産部長にお伺いいたします。
○議長(藤山将材君) 農林水産部長原 康雄君。
  〔原 康雄君、登壇〕
○農林水産部長(原 康雄君) 森林環境譲与税につきましては、森林整備等森林吸収源対策に係る地方財源として、平成31年度から県及び市町村に交付される予定となっております。その額を試算しますと、県に約9600万円、市町村ごとの交付額は約20万円から1億円と幅はありますが、市町村の総額は約3億8000万円となっております。
 議員お尋ねの人工林面積が少ない市等での活用につきましては、県といたしましては、森林整備につながる公共施設での木材利用などを考えているところでございます。なお、昨年末に県が行った調査では、小中学校等公共施設の木造・木質化や木材製品の購入等に活用するという結果になっており、県の考えと一致しております。
 いずれにしましても、市町村に交付される譲与税については、税創設の趣旨を踏まえ、森林整備の促進につながるよう、各地の事情に沿って助言してまいります。
○議長(藤山将材君) 玉木久登君。
  〔玉木久登君、登壇〕
○玉木久登君 引き続きお伺いいたします。
 県に配分される森林環境譲与税の活用についてはどのように考えているのか、再度、農林水産部長にお伺いいたします。
○議長(藤山将材君) 農林水産部長。
  〔原 康雄君、登壇〕
○農林水産部長(原 康雄君) 森林環境譲与税における県の役割といたしましては、林業の担い手の確保、人材育成や市町村の支援となっております。
 担い手の確保としては、都市部において田舎暮らしや森林、林業に関心のある方に対して、作業の実体験を通し、林業の魅力を発信するとともに、就業相談から事業体への就労あっせんまで一貫した取り組みを行ってまいります。
 人材育成としては、農林大学校林業研修部において、最先端林業を学ぶための最新の林業機器や労災防止に向けた練習装置を導入し、林業就業者のスキルアップや安全対策を推進してまいります。
 市町村支援としては、県において航空レーザー測量を用いて森林の現況を詳細に把握し、その情報を共有することで、市町村が行う森林の現地調査の軽減を図ります。さらに、市町村職員に対する実務研修の実施や各市町村を巡回しアドバイスを行うなど、事業の円滑な執行を支援してまいります。
○議長(藤山将材君) 玉木久登君。
  〔玉木久登君、登壇〕
○玉木久登君 御答弁いただきましてありがとうございます。
 私は、和歌山県の林業の発展、これはやはり紀州材の利用の拡大により、安定した収入が確保できると思います。それにより、後継者や担い手が確保できると考えております。それには、やはり地産地消がまず大前提であると思います。しっかりと紀州材の利用拡大に向けた、各市町村はもとより、民間に対しても紀州材の利用促進を働きかけていただきたいなと思います。
 また、先日、昨年12月と2度にわたり紀州林業懇話会の皆様との意見交換の席に出席をさせていただきました。その中で、和歌山県の林業の現状について勉強もさせていただき、今後の課題についてもお聞きをいたしております。県として、国との連携も含め、今後の森林環境譲与税の活用について、より研さんをしていただければなと思いますので、よろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。
 最後の3項目めに入らしていただきます。
 平成31年度新政策、日本一の果樹産地づくり事業についてお伺いいたします。
 本年1月の記者発表で、平成29年度産のミカンの産出額は335億円、3年連続で日本一となり、果樹産出額においてもミカンと梅の産出額増加により816億円と、15年ぶりに日本一といううれしい知らせが届きました。
 ミカンの市場での販売単価については、キログラム当たり304円と、平成28年度の7位から4位、着実に順位を上げております。JAグループとの連携により、光センサー選果機を利用した厳選ミカンを出荷するミカン厳選出荷促進事業による成果が実を結んだ結果だと思います。
 販売単価の高値安定は今後の生産者の励みにもなり、ひいては事業承継、後継者の育成や担い手の確保などにも明るい兆しとなると私も考えています。
 このことから、来年度新政策案として、日本一の果樹産地づくり事業として三つの戦略が上程されています。
 その戦略の一つとして、県産オリジナル品種や国育成の優良品種を戦略品種として定め、その早期産地化を図る戦略品種の早期産地化について取り上げてみたいと思います。
 その取り組みの内容について、農林水産部長にお伺いをいたします。
○議長(藤山将材君) 農林水産部長。
  〔原 康雄君、登壇〕
○農林水産部長(原 康雄君) 本県では、試験研究等により、ミカンのゆら早生、YN26、きゅうきを初め、梅のNK14や橙高、柿の紀州てまりなど、品質が高い優良品種を育成してまいりました。
 新政策では、こうした品種や国育成の優良品種を戦略品種と位置づけた上で、マーケットが希望する出荷基準や量の情報をもとに、産地は栽培方法や出荷基準を統一し、商品性を高めることで販売数量をふやし、産地拡大を図っていくものであります。
 具体的には、生産者やJA及び苗木組合等の産地関係者と百貨店や高級果物店のバイヤーなどマーケットの関係者で戦略品種推進協議会を品目ごとに設置し、必要な情報を交換しながら進めていくこととしております。
○議長(藤山将材君) 玉木久登君。
  〔玉木久登君、登壇〕
○玉木久登君 続いてお伺いいたします。
 その戦略品種推進協議会が行う中で、産地と苗木組合との連携が挙げられています。従来は、生産者と苗木業者は直に取引を行っていますが、今後、改植計画と苗木の安定供給の促進にJA、県、市町村が生産者とともに絡んでいくということであります。
 そのことについて、県の役割とはどんなものなのか、農林水産部長に再度お伺いいたします。
○議長(藤山将材君) 農林水産部長。
  〔原 康雄君、登壇〕
○農林水産部長(原 康雄君) 戦略品種の産地拡大のためには、苗木の安定供給が非常に重要であると考えております。しかしながら、農家からは「優良品種は苗木が手に入りにくい」、苗木業者からは「産地拡大の計画がわかれば増産しやすい」といった声が上がりました。
 こうしたことで、県では、来年度新政策で、先ほど御答弁させていただいた戦略品種推進協議会を新たに設置し、苗木組合にも参加いただき、産地側が改植計画を立てた上で、必要な苗木の増産について苗木組合に依頼することにより、安定供給を図ってまいりたいと考えております。
 今後、マーケットや苗木組合等と連携を密にしながら、戦略品種の早期産地化等を通じ、農家の所得向上に努めてまいります。
○議長(藤山将材君) 玉木久登君。
  〔玉木久登君、登壇〕
○玉木久登君 御答弁ありがとうございます。
 このことと関連があるかどうか、あると私は思ってるんですけども、昨年連続して和歌山県に甚大な被害をもたらした台風による果樹の倒木被害が挙げられると私は思っています。効果的な支援策により改植を進める生産者の要望と苗木供給とのバランスが崩れて、望む品種の苗木が足りない状況となりました。
 私は、昨年末、自由民主党国会議員で構成する果樹農業振興議員連盟による平成31年度強い農業・担い手づくり総合支援に関する予算案の説明の席に、オブザーバーとして参加させていただきました。その中で、災害時に苗木の持続的安定供給への不安がある状況を踏まえ、新たな苗木生産体制の確立としての計画があることを知りました。
 そのことを踏まえながら、この戦略がうまくいったらええなと素直には思っているんですけども、さまざまな問題もクリアしなければならないと思います。例えば、生産者が望む県産オリジナル品種、これも種類が幾つかあります。また、園地に適合した品種を選ぶ生産者は多岐にわたります。苗木を育て、生産管理をする苗木組合も発注後の育成期間の災害対策、また、育成期間中のトレンドの変化によるキャンセルはないかなど、さまざまな協議がこれから必要であると私は思います。
 その点について、しっかりと県がリーダーシップをとり、取り組んでいただくことで、今後の県オリジナル品種によるより一層の果樹生産体制が整うと私は思いますし、大変期待もしておりますので、今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
 以上で、私の一般質問を終わります。御清聴どうもありがとうございました。(拍手)
○議長(藤山将材君) 以上で、玉木久登君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 32番藤本眞利子君。
  〔藤本眞利子君、登壇〕(拍手)
○藤本眞利子君 皆さん、おはようございます。春めいてまいりまして、きょうの服もちょっと春めいた色にしてまいりましたが、議長のお許しをいただきましたので、一般質問を行います。
 まず、1問目は、児童虐待の防止についてであります。
 東京都目黒の5歳の女の子が虐待死してから1年、またぞろ虐待によって千葉県野田市の10歳の女の子の命が奪われました。両方の事件とも父親がしつけだったとコメントしています。しつけのためにたたく、体罰を加えることが日本で容認されているからこそ、それがエスカレートし、子供の命を奪うケースが後を絶ちません。
 公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが子どもに対するしつけのための体罰等の意識・実態調査結果報告書を2018年2月15日に発表しています。きょうは、机上に抜粋したものを配付させていただいております。
 調査方法は、調査会社による専用調査画面を用いたウエブアンケートで、全国の20歳以上の男女を対象としており、そのうち意識調査については2万人から回答がありました。その中で、「しつけのために、子どもに体罰をすることに対してどのように考えますか」との質問に、「積極的にすべきである」1.2%、「必要に応じてすべきである」16.3%、「他に手段がないと思った時のみすべきである」39.3%、「決してすべきではない」43.3%という結果になっています。しつけのための体罰を容認する回答者が何と6割も存在するという結果になりました。
 たたく行為に係る意識調査では、「こぶしで殴る」、「ものを使ってたたく」、「加減せずに頭をたたく」については「決してすべきではない」と回答する人の割合は約90%となっていますが、「お尻をたたく」、「手の甲をたたく」となると約30%となり、たたく行為を容認する割合が高くなっているのです。
 子供をたたくべきと考えている理由を見てみると、「その場ですぐに問題行動をやめさせるため」23.6%、「大人の威厳を示すため」1.8%、「痛みを伴う方が、子どもが理解すると思うから」が20.6%、「口で言うだけでは、子どもが理解しないから」42.8%、「たたく以外に子どもをしつける方法がわからないから」2.6%という結果になりました。
 「口で言うだけでは、子どもが理解しないから」と答える割合が42.8%と高いのですが、子供がわかるように伝えているのか。自分の感情でたたいてしまっているのではないかと考えられます。また、「痛みを伴うほうが理解すると思うから」との回答は、犬や猫のしつけと間違えているのではないかと思ってしまうのです。今どき、犬や猫でも、できたことを褒めてしつける方法が主流です。
 また、子育て中の1030人への実態調査では、しつけの一環として子供をたたくことがあるかという問いに対して、「日常的にあった」1.9%、「時々あった」37.0%、「1~2回あった」31.2%、「全くなかった」29.9%となっています。約7割の方が実際に体罰をしながら子育てをしているという実態でありました。
 「子供の心を傷つける罰を用いたことがあるか」との問いに、怒鳴りつけるという行為が「日常的にあった」5.4%、「時々あった」28.6%、「1~2回あった」22.9%、「全くなかった」43.0%という結果になっています。
 このように、意識調査において体罰を容認する人が約6割に上るという結果であります。また、子育て中の方々の実態調査の結果を見てみると、何と約7割の人がしつけの一環として子供をたたいたことがあると回答しています。
 一方で、子供の心を傷つける罰についての意識では、「怒鳴りつける」、「『だめな子だ』と言う」、「にらみつける」といった子供の心を傷つける罰を容認する回答者が一定数存在していることがわかりました。「体罰は決してすべきでない」という回答者の中にも、子供の心を傷つける罰は容認する人もいることがわかりました。
 しかし、体や心を傷つける罰は子供の権利を侵害する行為であり、どんな軽いものであっても許されないという意識が大変重要だと考えます。また、体罰は子供の発達に負の影響を与えることが科学的根拠を伴って既に明らかになっています。
 福井大学子どものこころの発達研究センター教授・友田明美さんは、「子どもの脳を傷つける親たち」という本の中でこのように語っています。
 「生まれたときはわずか300グラムしかない人間の脳は、ゆっくりと成長し、時間をかけて生きるすべを習得していきます。その発達過程において、脳には外部からの影響を受けやすい、非常に大事な時期があります。胎児期、乳幼児期、思春期です。こうした人生の初期段階に、親や養育者といった身近な存在から適切なケアと愛情を受けることが脳の健全な発達には必要不可欠です。しかし、この時期に極度のストレスを感じると、子供のデリケートな脳は、その苦しみから何とか適応しようとして自ら変形してしまうのです。生き延びるための防衛反応だと言えます。これは悲しく、そして驚くべき事実です。その結果、脳の機能にも影響が及び、子供の正常な発達が損なわれ、生涯にわたって影響を及ぼしていきます」と述べられています。
 友田教授がハーバード大学との共同で親や養育者による不適切な養育が脳に与える影響を研究した結果、過度な体罰を受けた人は、体から脳の視床を経て大脳皮質の感覚野に痛みを伝える神経回路が細くなっていることが明らかになっています。また、性的に不適切な養育が視覚的なメモリー容量の減少につながっている可能性があるということです。被害者の脳は、メモリー容量を減少させることにより、苦痛を伴う記憶を脳内にとどめておかないようにしているのではないかと考えられています。
 子供たちが受けたであろう危険や不安に満ちた不適切な養育により、子供たちの脳はみずからの力で何とかするしかありません。その結果、脳そのものが変形し、変化が起きてしまうのです。暴力がいかに子供たちの心や体を傷つけていくか。家庭を含むあらゆる場面での子供に対する体罰等をなくすための取り組みが求められています。
 世界では、54カ国が家庭を含むあらゆる状況において子供への体罰を法的に禁止しています。今から40年も前、1979年、世界で初めて家庭を含むあらゆる場面での子供に対する体罰等を禁止したスウェーデンでは、法改正の前後にわたり全国で啓発キャンペーンを行う一方、暴力によらない子育てのための支援も積極的に展開した結果、体罰に対する肯定的な態度を示す人や体罰を用いる人の割合が大幅に減少していったのです。
 日本においては、いまだに体罰を禁止する法律がありません。しかも、民法では、基本的な親子関係について第820条に「親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う」、第822条では「親権を行う者は、第820条の規定による監護及び教育に必要な範囲内でその子を懲戒することができる」としています。「懲戒のためには、しかる・なぐる・ひねる・しばる・押入れに入れる・蔵に入れる・禁食せしめるなど適宜の手段を用いてよいであろう」と民法注釈書は示しているのです。懲戒こそがまさしく虐待そのものであり、それを容認する法がまだ放置されているという驚くべき国の体制です。
 国連の子どもの権利委員会が体罰の法的禁止を日本政府に勧告したことなどを踏まえ、2月17日の「毎日新聞」によると、安倍首相が13日の衆議院予算委員会において「懲戒権の規定のあり方について法務省に検討させる」と答弁し、山下貴司法務大臣は、15日の記者会見で「検討方法やスケジュールを担当部局に検討させている」と表明しています。
 そこで、知事にお伺いします。
 県では、平成20年、子どもを虐待から守る条例を施行しました。この条例は他の県に先駆けて制定したもので、その取り組みは高く評価されるものであります。条例の中には、「虐待は、子どもに対する著しい人権侵害であり、子どもの人権を守ることは私たちの責務である。」と明記されています。
 しかし、今申し上げたように、しつけのための体罰を容認するとした人が約6割存在し、子育て中の人のうち、実際体罰を行っている人の割合が約7割存在することから、少しばかりの体罰は必要であると考える方の割合が高いということが明らかになりました。
 私は、体罰はどんな軽微なものであっても、家庭や地域や教育の場面でも人権を侵害するものであり、あってはならないものと考えており、体罰を禁止する条例等の制定を視野に入れた具体的な取り組みが必要であると考えています。
 そこで、体罰について容認されている今の状況をどう考えるのか、体罰についてはどの程度まで許されると考えているのか、体罰についての御意見を知事にお伺いします。
○議長(藤山将材君) ただいまの藤本眞利子君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 子供に対する暴言を含む体罰は、子供の人格を損なうもので、御指摘の和歌山県の条例にあるように重大な人権侵害でありまして、いかなる理由があろうとも決して許される行為ではないと私は思います。これによって命が失われたり、傷ついたり、そうでなくても、親を慕っている子供がかわいそうでありますから、いかんというふうに思います。
 さらに医学的に言いますと、体罰によって、第1に子供の脳の発達に深刻な影響が及ぶこと、第2に特に幼児期については子供から親への信頼や愛情を損なうこと、第3に鬱、著しい不安、多動など精神的な問題が生じること、第4に感情的にキレやすくなり攻撃性が強くなることとなって、こうした影響は幼児期だけにとどまらず、成人になってからも続くとの研究結果もございます。
 一方、最初はしつけの一環であっても、いつの間にか虐待へとエスカレートしてしまうということもあると思いますので、平成28年度には児童虐待防止法が改正されましたが、その中身は、「親権者は、児童のしつけに際して、監護・教育に必要な範囲を超えて児童を懲戒してはならない」とありまして、しつけを理由にした体罰を容認する余地を残した表現となっているところであります。
 家庭内でしつけと称した虐待が後を絶たないことから、現在、厚生労働省においても、親による体罰禁止の規定を今国会に提出予定の児童虐待防止法や児童福祉法の改正案に盛り込むことを検討していると聞いております。このたびの法改正への取り組み姿勢に全面的に私は賛成でございまして、早期の実現を期待しておるところでございます。
○議長(藤山将材君) 藤本眞利子君。
  〔藤本眞利子君、登壇〕
○藤本眞利子君 厚生労働省では「愛の鞭ゼロ作戦」というのを展開しております。県でも、親や養育者のみならず、子育てを見守る祖父母や家庭や地域住民にも啓発活動を強化する必要があると考えます。
 福祉保健部長に今後の取り組みについてお伺いします。
○議長(藤山将材君) 福祉保健部長山本等士君。
  〔山本等士君、登壇〕
○福祉保健部長(山本等士君) 体罰は、子供の成長につながらないばかりか、悪影響を及ぼしてしまうものであると認識しているところです。このことから、厚生労働省の「子どもを健やかに育むために」と題した「愛の鞭ゼロ作戦」について、その趣旨も含めて広く県民に理解を深めてもらう必要があると考えています。
 そのため、まず第1にテレビやラジオのマスメディアを活用した広報、第2に市町村の子育て世代包括支援センターや広報紙を活用した周知、第3に和歌山県子どもを虐待から守る条例に位置づけられた学校や医療機関などの関係機関に対する普及啓発の要請、第4に県内全事業所への啓発活動など、こうした取り組みにより、「愛の鞭ゼロ作戦」を県民に広く周知し、体罰を決して容認しない社会の実現を図ってまいります。
○議長(藤山将材君) 藤本眞利子君。
  〔藤本眞利子君、登壇〕
○藤本眞利子君 御答弁ありがとうございました。
 知事及び福祉保健部長については、子供に対する暴力を含む体罰は子供の人格を損なうもので、重大な人権侵害であり、いかなる理由があろうとも決して許される行為ではないというふうに御答弁いただきました。
 先ほども質問しましたけれども、もう世界の54カ国で子供への暴力を禁止する法律が制定されておりまして、日本においても一刻も早い法整備が望まれますが、条例は法律ではないので、体罰を禁止する条例は制定できるんじゃないかなあと私は考えています。虐待だけでなく、全ての体罰を禁止する条例を制定していただきたいと要望して、次の質問に移りたいと思うんですが、もう一言だけ。
 体罰によらない子育てをしたいと願っている方はたくさんいらっしゃるんですね。その望ましい子育ての方法というんですか、体罰を使わないで子供を育てるというふうな、そういった支援を行っていただくために、保育所とか幼稚園とか保健所とか子育て支援センターとか公民館とか、あらゆる場面を捉えて機会の拡充をお願いしたいということも要望して、次の質問に移りたいと思います。
 次、県立高等学校の制服についてお伺いしたいと思います。
 中学校3年生にとっては、「15の春」と言われる高校選抜入学試験の日が迫ってきております。どの高校にするのか、まだ迷っている中学生もあると思いますが、入学試験に向けての最後のラストスパートが続いています。近所に中学校3年生の保護者がいるのですが、子供が勉強しないと言っては毎日気が気でない様子です。みんな全員合格できるよう願うしかありません。
 さて、4月に高校に合格した途端、必要なものを購入しなければなりません。何が必要でしょう。制服、教科書、体操服等々、もろもろの費用が発生します。
 制服の費用を調査した結果、学校によって格差があることが判明しました。一番高額な制服がA高校と、ちょっとこれイニシャルで言わせていただくんですが、A校の女子のブレザー型制服で、サイズによりますが、5万2530円から7万4350円ということです。一番安いブレザー型の制服、これはB校の3万4450円となっています。セーラー服型ではC校の、サイズにもよりますが、これが6万330円から6万8620円、そこが一番高いんですが、安値では、D校というふうに言わせていただきますが、3万9450円です。女子は、セーラー服よりブレザー型のほうが高い、高額のものが多いという結果でした。
 男子の制服では、E校の、サイズによりますが、5万1810円から7万3110円が一番高いです。安値ではF校の3万1740円ですが、標準学生服であればいいという学校もありました。
 全体に見たときに一番多い値段帯が5万円台、次が4万円台、6万円台となっています。高校によって3万円近い差が生じているということがわかっています。
 そこに体操服、それが必ず購入しなければならないものとして追加されてきます。これも9612円という学校もあれば、体操服に作業服が必要な学校もあるので、ここは3万3050円が必要となっています。制服と必ず購入しなければならないものを合わせ、そこに教科書、副読本、辞書、高校育友会会費等々が入学時早々に必要となります。御家庭によっては20万円以上、30万円近い費用が必要となっています。
 このように考えると、保護者の経済的負担をできるだけ軽減するために、制服はできるだけ安くなるように工夫する必要があるんじゃないかと考えるのですが、県としては、学校に対してどのような指導を行っているのかお聞きします。
 それから、平成27年、文部科学省のほうから「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」という通知が各都道府県教育委員会等に出されています。近年、性同一性障害についても理解が進んできていますが、まだまだ取り組まなければならない課題も多いと感じています。
 制服の選択に限りませんが、学校では性同一性障害の児童生徒に対してどのような配慮や対策が行われているのか。また、制服の選択制について、教育長にお考えをお伺いしたいと思います。
○議長(藤山将材君) 教育長宮下和己君。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 高等学校入学時の制服、体操服、教科書、副教材等さまざまな準備の費用につきましては、保護者にとって経済的な負担になるものと考えてございます。各学校では、保護者が事前に準備できるよう、入学時に必要な諸費用をホームページや学校説明会などであらかじめ周知しております。また、各学校には、部活動に関する費用も含め、できる限り負担軽減を図るよう指導しております。
 なお、県教育委員会では、低所得世帯の授業料以外の教育費負担を軽減するため、奨学のための給付金を支給する制度や修学奨励金貸与制度を設けてございます。
 制服につきましては、中学校で使用した制服を認めている学校や、学校が制服として指定しているシャツやベスト等のかわりに一般に市販しているものを認めている学校もございます。また、卒業生の不要となった制服をPTA等が取りまとめ、新入生に譲る機会を設けている学校もあります。
 今後も、保護者の経済的負担を考慮し、さらに軽減を図るための工夫をするよう各学校を指導してまいります。
 次に、性同一性障害等に係る児童生徒への配慮につきましては、平成27年に文部科学省から「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」の通知が出されております。この通知を受け、県教育委員会では、県内全ての学校に対して、その趣旨を周知するとともに、児童生徒の心情等に配慮しながら個々の状況に応じて対応するよう指導いたしました。各学校におきましては、児童生徒や保護者と相談しながら、制服やトイレ、更衣室の利用等、学校生活の各場面でそれぞれの児童生徒に応じた配慮を行っております。
 また、制服のスカートやスラックスの自由な選択につきましては、多様な生徒に柔軟に対応する観点から、今後検討していく必要があると考えております。また、各学校においても、それぞれの状況に応じて議論を深めることが重要であり、コミュニティ・スクールの学校運営協議会等におきまして、協議していくことが大切であると考えてございます。
○議長(藤山将材君) 藤本眞利子君。
  〔藤本眞利子君、登壇〕
○藤本眞利子君 制服問題について御答弁いただきました。
 先日の「毎日新聞」に書かれていたんですが、カンコー学生服というブランドで知られております制服メーカーによると、女子用スラックスを制服として採用した学校は、防寒対策とか性的少数者への配慮などから全国の都道府県で採用が進んでおりまして、現在600校を超えたというふうに報道されています。東京都中野区では全区立中学校で女子生徒のスラックス着用を認めたと記載されていますし、世田谷区では、制服のカタログに男子用、女子用と明記せず、ことし4月から全区立中学校で制服を選べるようにしたというふうにありました。
 学校とか保護者などの協議会とかで議論するのはいいんですが、生徒自身の意見もやはりしっかりと表明していただけるような、そんなことがとても大切だというふうに思いますので、今後の活発な議論を期待したいというふうに思います。
 では、最後の質問に移ります。
 統合型リゾート(IR)構想についてお伺いしたいと思います。
 平成31年度当初予算に、IR推進事業として2億3000万円が計上されました。「ええ、2億3000万」と驚いたのが今回の質問の発端であります。
 一昨年、多くの県民の要望で、教育委員会の中ですが、大学等への給付型奨学金制度が創設されまして、その額が4学年分で9625万円余りということであります。一方で、IRが2億3000万円かという桁違いの予算を使うということがちょっと理解できなかったというのが発端でありまして、IRに使う予算があれば、ちょっと自身の意見ですが、教育にもっと力を入れていただきたいというふうに単純に思ったんです。
 29年度に1000万円、30年度に7000万円、31年度に2億3000万円と約3億円を超える予算が使われようとしています。この統合型リゾート(IR)構想について、そういう意味で何点か質問したいと思います。
 IR構想で思い起こすのが、1987年に制定された総合保養地域整備法、通称リゾート法であります。自由時間の増大や創造的余暇活動への志向の高まり等を背景にした国民リゾートニーズへの対応、そして新たな地域振興策を展開していく必要が高まったことを理由に、リゾート法が制定されました。
 一例として、宮崎の日南海岸リゾート構想では、フェニックスリゾート社が総事業費2000億円をかけ、超高層ホテル、世界最大の屋内プール、国際会議場を併設する宮崎シーガイアを建設しました。宮崎県にとって大きな財産になると期待されたシーガイアも、開業からわずか7年で破綻し、この会社に出資していた宮崎県は打撃をこうむることになります。年間500万人と見込んだ入場者数は300万人と落ち込み、一度の黒字化もされることなく負債3261億円を抱え、2001年、会社更生法が適用されました。
 和歌山県においても“燦”黒潮リゾート構想が持ち上がり、平成2年のスタート時点では民間投資額は用地費以外で4500億円、雇用は6000人の増大、利用者は1200万人と説明されていました。当時の議会でも“燦”黒潮リゾート構想に対する大きな期待が寄せられ、和歌山の発展に大きく寄与するとの趣旨の質問が相次いでいます。
 3年経過した平成5年の県議会の議事録では、民間投資額は690億円、雇用者増700人、利用者数は80万人でしかなく、当初の見込みを大幅に下回る結果となっています。また、当時、“燦”黒潮リゾート構想について22人の議員が質問に立たれ、19人の議員が危惧を表明され、3人の方が見直しを求めていると記録されています。
 その後、平成6年に行われた世界リゾート博覧会は、150万人の来場者数の予想を上回る296万人の来場者を迎え、大成功をおさめたにもかかわらず、その後、県内各地で計画された構想は頓挫、今に至っております。
 宮崎や和歌山の例だけではなく、リゾート地域開発のほとんどは成果を上げることなく破綻し、地域に大きな傷跡を残しました。リゾート法で建設された施設は取り壊されたものもありますし、活用のめどが立たないで中止されたものもありました。結局、リゾート法で大きな負担を強いられたのは地方自治体であり、税金を納める県民でした。
 リゾート法制定から2年後、1989年発行の「朝日ジャーナル」で経済学者の宮本憲一氏は、リゾート法や地域開発について、こう述べておられます。宮本氏は、地場の資本と自治体を中心として行う地域開発を内発的発展、外部からの資本に依存して行う開発を外来型開発と呼んでいるわけですが、外来型開発は、初期には非常に華やかに発展しているように見えるが、長い目で見ると成功した例はほとんどないと指摘しています。
 今回、リゾート法を思い出したのは、民間主導による外来型開発であるということや、地域の活性化に寄与するとした国の方針が大変似通っていることです。ただ、以前のリゾート法では、カジノ施設が含まれていませんでした。カジノ施設の是非については、これまでも議論されてきました。IR構想がカジノを含まなければ成り立たないということでは、カジノありきの話であろうと理解するものですが、果たして地域の活性化につながるかどうかはクエスチョン、全面的にもろ手を挙げて賛成できるものではありません。それよりも、私はカジノを含む統合型リゾート施設に年間400万人もの人が訪れていただけるであろうかと心配しています。
 さて、その和歌山の目指すリゾート型IRは、夢のような構想です。エクセレントカンパニーの取締役会や国際的な学会や会議が開催可能なラグジュアリーな会議室、5000人以上が参加可能な大規模メーン会場、世界的なスポーツやライブイベント1000人以上規模のインセンティブツアーが開催可能な全天候型多目的アリーナ、展示場施設、もうすごい構想です。地方の活性化のために進められているこのIR構想ですが、またぞろ以前のリゾート法の二の舞になるのではないかと大きな危惧を抱いています。
 以前のリゾート法の失敗を繰り返してはならないと思います。そのためにも、私はどこに問題があったのか失敗を検証する必要があるのではないかと考えています。本気で和歌山にIRを誘致し、地域活性化につなげたいと考えるなら、巨額の資金を突っ込んで大きな施設をつくれば運営上のノウハウはなくても集客できるという安易な発想は捨てるべきだと考えます。
 そこで、企画部長にお伺いします。
 IR構想では、カジノを含めたホテル、国際会議場、展示施設、魅力増進施設等が建設されるとしていますが、先ほども申し上げたように、大型施設をつくるだけでは集客できないことが過去の事例からも明らかになっています。IR制度は、リゾート法とコンセプトが似ていますが、果たして成功に導けるのでしょうか。県の見解を企画部長にお伺いします。
○議長(藤山将材君) 企画部長田嶋久嗣君。
  〔田嶋久嗣君、登壇〕
○企画部長(田嶋久嗣君) 議員御質問の総合保養地域整備法、いわゆるリゾート法とIR整備法の関係につきましては、IR整備法を審議した国会の内閣委員会でも議論がなされております。その中で、リゾート法で多くの構想が破綻した原因は大きく二つあるとされておりまして、一つは収益の核となるエンジンが弱かったこと、もう一つは数をつくり過ぎたこととされているところです。
 一方、IR整備法では、収益の核となるエンジンにカジノ施設を含めることで複合的な観光施設全体を支えるという仕組みが導入されるとともに、認められるのは全国で当面3カ所とされているところです。
 リゾート法では、第3セクター方式による開発も認められており、中には事業採算性の見込みが甘い計画もあったのではないかと考えております。一方、IRは100%民間投資による設置運営であることから、そもそも収益が見込めないエリアであれば、民間企業の投資が行われないというふうに考えております。
○議長(藤山将材君) 藤本眞利子君。
  〔藤本眞利子君、登壇〕
○藤本眞利子君 じゃ、次のことを聞きたいんですが、県ではシンガポールをお手本にIR構想をお考えのようです。文化や歴史とか地理的環境など、日本とは全く異なるシンガポールと比較するのにもちょっと無理があるように思うんです。大阪を都市型IR、和歌山をリゾート型IRにしたい、シンガポールのマリーナ・ベイ・サンズとリゾート・ワールド・セントーサのようなリゾートにしたいと説明されていますが、大阪と和歌山ではそのようなことは実現可能なのか。その点について、相乗的な効果も含めてお考えでしたら、その考え方をお伺いしたいと思います。
○議長(藤山将材君) 企画部長。
  〔田嶋久嗣君、登壇〕
○企画部長(田嶋久嗣君) 昨年本県が実施しました本県IRへの投資意向調査(RFI)には、海外事業者7社、国内事業者26社から提案をいただいたところです。本県へ投資を希望する全てのIR事業者に対して、大阪にIRができたら和歌山への投資はやめるのかということを確認いたしましたところ、事業者の意見は全く逆で、IRは近くに複数あったほうが相乗効果があってよいというものでございました。
 和歌山のIRは、大阪とコンセプトが異なる本県の観光資源を生かしたリゾート型のIRであることから、現時点ですが、大阪、和歌山にはそれぞれ異なったタイプのIR事業者が投資意向を示しておりまして、シンガポールの事例と同様、二つのIRが共存可能だというふうに考えております。
○議長(藤山将材君) 藤本眞利子君。
  〔藤本眞利子君、登壇〕
○藤本眞利子君 じゃ、もう一つ。そうか、可能と考えておられるんやね。
 29年度の和歌山県観光客動態調査では、観光の入り込み客数が3375万9000人、本当にたくさんの皆さん、お越しになるようになりまして、県当局とか関係者の皆さんの御努力の成果だと感じております。
 県では、着地型の観光を進め、高野・熊野世界遺産や主要な温泉に加え、県内域を周遊していただくことで、県内での滞在時間をふやし、消費を拡大したいとしていますね。「水の国、わかやま。」、「サイクリング王国わかやま」、「わかやま歴史物語」など、国内に向けても、また外国人観光客に向けても、さまざまな取り組みを進めていただいています。これこそ、地方の資源を生かし、地方の皆さんとともに築き上げている観光の姿だと思います。
 このような観光振興への取り組みと、今回のIRの取り組みにはそごがあるように思います。例えば、IRにお越しになった旅行客は、和歌山県の体験を重視するような観光地に果たしてお見えになるのでしょうか。客の層が違うんじゃないかというふうに思うんです。県が推進している観光への誘導を考えておられるのであれば、安易な考えではちょっと到底無理な話ではないかなあと思ったりもします。
 和歌山県は、豊かな自然や食、文化などに恵まれており、そうした既存の資源を生かした観光振興策が成果を上げてきたと思いますが、和歌山県のIR構想との整合性はあるのでしょうか。あわせて、基本的なコンセプトをお示しください。
○議長(藤山将材君) 企画部長。
  〔田嶋久嗣君、登壇〕
○企画部長(田嶋久嗣君) 議員の御質問にございましたように、本県はマリンスポーツや海洋レジャーが満喫できるほか、高野山や熊野街道、温泉、美しい海岸線といった魅力ある観光資源が豊富にあります。和歌山県の今のIR構想は、これらを背景にしたリゾート型のIRの実現を目指しておりまして、和歌山県IR基本構想にその旨をお示ししたところです。
 和歌山IRが実現すれば、和歌山のIRを訪問する多くの観光客がIR内のさまざまな施設を楽しむことに加えまして、熊野古道や温泉、美しい自然といったIR外の本県の魅力ある観光資源を訪問することになるというふうに考えております。
 他方で、既存の観光資源を目的に本県を訪問した観光客が、新たな観光の目的の一つとしてIRを訪問するようになり、既存の観光振興策と新たに整備をされるIRが互いに観光客を呼び込む仕組みとして相乗効果をもたらすこととなると考えているところです。つまり、IRの構想とこれまで和歌山県が行ってきた観光振興策との間にそごはないというふうに考えております。
○議長(藤山将材君) 藤本眞利子君。
  〔藤本眞利子君、登壇〕
○藤本眞利子君 最後に一つ質問なんですが、県では、IRの来場者を数年間400万人というふうに言われて、建設投資額も2800億円を想定して、経済波及効果年間3000億円、雇用創出効果2万人というふうに算出しておられます。リゾート法でも経済波及効果が示されましたが、結果は言うまでもありません。雇用についても、地元からの雇用が限定されて外部人材が多かったとの結果が出ています。
 今回の雇用創出効果の説明ではさまざまな職種に雇用が生まれるとされていますが、県内にこれだけの人材が存在するのかと心配でもあります。和歌山県の地域振興のためのIR誘致でなければ意味がありません。和歌山県全体の発展に結びつくことが必要であると考えますが、そのための取り組みについてお示しください。
○議長(藤山将材君) 企画部長。
  〔田嶋久嗣君、登壇〕
○企画部長(田嶋久嗣君) IRは、裾野の広いさまざまな産業により運営される複合観光施設であり、誘致によりもたらされる経済効果、雇用効果はこれまでにない規模となります。
 県内に波及する効果を最大化するために、建設時においては可能な限り建設資材や建設工事の地元優先調達に努め、運営時にはIR内で消費する食材や資材に地元調達率を、雇用面では地元雇用率を設定するなどして、県内の隅々まで恩恵が行きわたる仕組みの構築をIR事業者に求めてまいるように考えております。
○議長(藤山将材君) 藤本眞利子君。
  〔藤本眞利子君、登壇〕
○藤本眞利子君 4点にわたって質問にお答えいただきました。
 このIR構想については、県民の中に大きなやっぱり不安があるんです。私も今いろいろお話聞かせていただいていますと、やはり「ああ、大丈夫か?」というふうな声をよく聞きます。カジノというだけでももうアレルギーを感じている方も大勢おられまして、「あれだけはあかんぞ」と私にそんなふうにおっしゃる方もおられるんですが、でも、和歌山県のためになるのであればというふうな気持ちで、今回質問させていただいたわけです。
 和歌山県が候補地というふうに決まったわけではありませんが、これだけの3億円近い予算を使ってそれを推進しているということですので、県民の皆さんには、これ以上の丁寧な説明が求められているというふうに思います。まだあんまりよくわかっていない県民の皆さんも多いですし、それから、何か──まだ決まったわけじゃないんですけど、そんな声もあるということをお伝えしたいというふうに思いまして、今回質問させていただきました。今後の進捗というのは私も冷静に待ちたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いします。
 これで、一般質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(藤山将材君) 以上で、藤本眞利子君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前11時21分休憩
────────────────────
  午後1時0分再開
○副議長(岸本 健君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 39番雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕(拍手)
○雑賀光夫君 今回、私にとって県議会最後の質問になりました。
 その前に、衝撃的なニュースが入りました。沖縄の辺野古新基地建設をめぐる県民投票の結果であります。投票率52.8%、反対、賛成、どちらでもないの3択にしたにもかかわらず、新基地建設反対は71.7%に上った。しかし、安倍内閣は沖縄県民の民意に従おうとはしていません。知事の感想をお聞きしたいところですが、質問通告をしておりません。考えは違っても、県知事として地方自治を守る立場に立って、沖縄県民の民意を守る立場にお立ちいただきたい。要望しておきます。
 さて、4期16年間、皆様には大変お世話になりました。先輩・同僚の議員の皆さん、知事初め当局の皆さん、地元の皆さん、特に毎議会ごとに傍聴においでいただいたあじさいの会の皆様に、心からお礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。
 私は、大学を卒業後、中学校の教員になりました。教員生活は7年程度で、教職員組合の役員を30年ほど務め、それで公的な仕事から引退するつもりでおりました。
 ところが、中山豊前県議から「わしの後を継いでくれ」というお話をいただきまして、県議会に出させていただくことになりました。その折には、教職員組合活動時代に親交いただいた元県教育長の井上光雄先生、県PTA会長をなさっておられた方なども応援をいただきました。子供の教育というものは、父母・教職員の団体であるPTA、教職員組合、そして教育行政も一致点はたくさんあるし、一致点では協力していこうという立場で教職員組合運動を進めてきたことが実ったものだと考え、感謝とともに誇らしく思ったところでございます。
 県議16年の間、特に地元選出の先輩・同僚の議員の皆さんには、仲よくしていただきました。阪井バイパスや有田海南道路、台風災害、蔵出しミカンなど、一致してやらなければならない問題がたくさんあるからであります。
 また、地理的条件から、私が取り上げ、皆さんに協力いただいた問題もございました。南海地震津波を経験した地域に育った者として、海南市は津波に弱いまちであるということを申し上げ、海岸に係留されているプレジャーボートが津波になると凶器になると申し上げると、知事はすぐに規制条例を提案してくれました。これは余りにタイミングがよ過ぎましたから、多分、知事が考えておられたことと一致したのでしょう。
 JR黒江駅の電車とプラットホームの段差解消。地元の自治会でも取り組んでいたことが、私の県議会質問で一気に進みました。その質問をする前に、当時の企画部長さんが「雑賀さん、黒江駅見てきましたよ。確かに段差が大きいですね」と言ってくれたのを思い出します。こうした問題は、会派を問わず、同僚議員の御理解を得て進めてきた問題だったと思います。
 また、長く教員組合の仕事をしてきたので、教育問題でも発言いたしました。お礼申し上げたいのは、宮下教育長が「定数内講師を5年間で半分に減らす」と言明していただいたことであります。この問題は、私ともう1人の教員出身議員の方が繰り返し求めてきた問題でございました。平成29年の6月文教委員会で、私が先に質問をして、宮下教育長の答弁がありました。
 ただ、見込み違いで計画どおりに進んでいないようですが、教育委員会はしっかりやっていただけるようお願いしておきます。
 一方、教育問題で忘れることができないのは、学力テスト問題です。一面的な指導は教育をゆがめるということで、厳しい批判をいたしました。福井県から呼ばれてきた方が、「和歌山には教育委員会の言うことを聞かない校長、校長の言うことを聞かない教員、先生の言うことを聞かない子供がいる」など、和歌山の教育を侮辱するような発言をするのは許せなかった。また、教育のゆがみに子供がみずからの死をもって抗議して初めて社会問題になるというようなことにしてはいけないと考えました。
 ほかにも、雑賀光夫ならでは、共産党ならではという問題も少なくなかったわけであります。
 一つは、乱脈な同和行政が今も残されているという問題です。子ども会の補助金が年に500万円にも450万円にも上る。誰が考えても不合理な問題。そのまま子ども会の名前を挙げて追及すると旧同和地区名を示す地名総監のようなことになると思って、議場にお配りする資料は、あえて子ども会の名前を示さず、A、B、C、Dで示したものです。
 乱脈な同和行政の負の遺産は、高度化資金の貸付金の焦げつき問題がございます。次々に返済の見込みがないと欠損処理が行われる、その最大のものは、プラスパフーズという豆腐をつくる会社。土地を買うと言って10億円借りた。建物と機械のために13億円借りた。その1%しか返済しないまま倒産した。県が競売にかけたが、1億2000万円にしかならなかった。この欠損処理には、私たちの会派の松坂英樹議員が見事な反対討論をして、欠損処理は継続審議になったのでした。
 こうした問題は、過去の問題だと言われるかもしれません。しかし、旧同和子ども会の問題に見られるように、反省が見られない以上、過去の問題だとすることはできないと私は申し上げてまいりました。
 同和問題には、高校入試の副申書に同和地区出身を示す記載が続いてきた問題を取り上げ、さすがにこれは中止になりました。また、「和歌山の部落史」を編さんする補助金を新規事業でつけながら、議会前に配付する主要事業の説明には一言も触れられていなかった問題。問題点を指摘する中で、補助金は計画の半分ぐらいにおさまったのではないかと思います。
 最近、私の質問で多くなったのが、風力発電やメガソーラーの問題でした。私たちは、原発ゼロの立場から、風力・ソーラー発電には賛成です。しかし、企業のもうけ主義の立場から進められると、自然破壊、健康破壊が問題になる。これでは、本末転倒だと申し上げてきました。
 風力発電・低周波健康被害を最初に取り上げたのが、下津町大窪の問題でした。その後、この企業、ユーラスエナジーが住民の苦情を封じ込む覚書を結んでいることを取り上げ、知事からは「民主主義のない国の話みたいだ。そんな覚書が有効なはずがない」と的確なコメントをいただきました。
 その後、外国資本による海南市、紀美野町、紀の川市を囲む超大型風力発電が問題になり、紀美野町の区長会、町議会の反対決議を初め、超党派で「ふるさとの山を外国資本に売り渡すな」という声が広がっています。地元の自民党の議員さんからも「この問題では雑賀さんと一緒やなあ」という声もかかるようになりました。
 ただ、私にとって心残りなのは、個人差がある低周波被害を訴えてこられた由良の谷口愛子さんが苦しみながら亡くなり、大窪から移転された方への救済、補償ができないままになっていることでございます。
 将来に向けての問題では、マリーナシティにカジノを含むIRを誘致する問題があります。
 そこで、質問に入らせていただきます。
 第1は、カジノ誘致と県民の民意をどう見るのかという問題です。
 12月県議会では、我が会派の奥村議員と知事との間で論戦が交わされました。知事と私どもの間で意見の違いがあるのはやむを得ないことで、それはそれでいいのです。しかし、知事の論理はちょっといただけない。
 まず、事実問題を整理しておきましょう。
 第1点、昨年の選挙で知事が圧倒的多数で再選されたということ、これは間違いありません。第2点、この選挙で、県下30の全ての市町村で、カジノ反対の候補者が得票率をふやし、仁坂候補が得票率を減らしたということ、これも間違いありません。第3点、NHKが投票所で行った出口調査では、58%の方が和歌山にカジノは要らないという趣旨の返事をされた、しかし、そのうちの70%の方は仁坂候補に投票したと報道されました。
 私たちは、以上の3点の認識に立って、奥村県議に質問してもらいました。それに対する知事の答弁を聞いて驚きました。知事は、「『IR誘致を進めるべきだ』という主張を掲げた私が──中略しますが──当選をしたということは、IR誘致も推進してよろしいと考えられるのではないかというふうに思います」というふうにお答えになったわけです。途中は少し抜かしましたが、趣旨はねじ曲げていないと思います。
 私が述べた三つの点から、どうしてそういう認識になるのでしょうか。知事に質問をいたします。
○副議長(岸本 健君) ただいまの雑賀光夫君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 答弁を申し上げる前に、雑賀議員は、お聞きするところ──今の御発言でもそうでございますが──によりますと、今期で議員を引退されるというふうにお伺いしております。4回議員に選出されてきたのは、そのお人柄によるところが大きいと思います。困ってる人、あるいは心配してる人の意見を代弁して、粘り強く問題を投げかけ、批判を展開されてきた内容は、時として共感を持ちつつ、きちんと聞かしていただき、施策の参考材料にもさせていただきました。長年の御活躍、御苦労さまでありました。
 その上でありますが、御質問にお答え申し上げます。
 さきの12月議会では、昨年の選挙で対立候補がIR誘致の是非を一番の争点に掲げる中、誘致を推進している私が、それも誘致を訴えて当選させていただいたという事実とその結果は、IRに限らず、政治家として今後の県の進むべき道を実直に訴えた点が県民に評価されたと考え、そのように答弁した次第でございます。
 確かに、カジノについて賛成か反対かの二択でお聞きいたしますと、もともと好きか嫌いかでいうと嫌いという方は結構おられると思いますし、嫌いというふうに思っておられる方は、そらまあ反対と書くだろうなあというふうに思う次第でございます。
 日本人はかけごとが嫌いな方がたくさんいらっしゃいますし、また、現にパチンコとか、薬物とか、スマホのゲームなどで依存症と考えられるような人を周囲に見たり聞いたりしている方が多いと思いますので、とりわけそうなると思います。
 しかし、そうした方々に、やめてしまうと──IR推進をやめてしまうということですが──経済発展のチャンスが失われるため、その分、人口減少はとめられないと思いますけど、それでもいいですかというふうに聞くと、それは困ると。いかなる手段を講じても人口減少をとめろというふうにほとんどの人がおっしゃるのではないかなあと──ほとんどかどうか知りませんが──おっしゃる方が多いんじゃないかなというふうに思う次第であります。
 したがって、嫌いあるいは嫌いだから反対と言われる方がいるからといって、誘致をとめてしまい、投資の機会を逃せば、本県発展のチャンスは失われると思っております。
 また、パチンコのように自由自在の入場を許す形でのカジノ運用など毛頭考えておりませんし、制度もそうなっておりますので、パチンコと同じような依存症がIRあるいはカジノで発生するということは考えられません。
 こうしたことも踏まえて、将来の和歌山の発展を考えて、利害得失を十分考えた上で政治家として県民に明確な形で掲げた政策を責任を持って推進していくのは、私の責務であると考えているところでございます。
 しかしながら、現に心配や不安もある方もいらっしゃるということは明らかでございますので、少しでも多くの機会に説明をちゃんとするようにして、少しでも理解をしてもらうことは重要であると思います。
 また、カジノ以外の原因で現に依存症が存在しておりますから、県民の皆様の懸念がそういうふうにあるから余計というか、あるからIRについても、あるいはカジノについても、やっぱり反対あるいは心配だと、こういうふうに思われることが多いんじゃないか、そういうふうに思うわけでございます。
 カジノやIRとこの政策は直接は関係がないんでございますけれども、現にあるギャンブル依存症に取り組んで、その予防と治療をしなきゃいけないというふうに思います。そういうことができていけば、また、IR、カジノに対する嫌い意識が少しは減っていくんじゃないか、そんなふうにも考えます。
 したがいまして、新政策で、このもともとあるギャンブル等依存症について対策を進めていくような政策予算をお認めいただけますようにお願いをしているところでございます。
○副議長(岸本 健君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 今の答弁にも多少気になることもありますが、まあ、次へ行きましょう。
 私は、当初、カジノは和歌山が手を挙げても和歌山に来ないだろうとたかをくくっておりました。しかし、どうも和歌山が有力になってきた。しかし、私が見るところでは、競り勝ったというよりも、無投票当選あるいは不戦勝と言うてもいいでしょうか、そんな可能性が出てきたように思います。
 カジノ企業も、全国レベルでカジノを推進しようとしている人たちも、長崎に1カ所、関西圏に1カ所できるのなら、もう1カ所は、東京か横浜あるいは北海道と考えるのが普通だと思うんですが、今のところ、どこも手を挙げていない。この状況について、企画部長はどう分析しておられるんでしょうか。
○副議長(岸本 健君) 企画部長田嶋久嗣君。
  〔田嶋久嗣君、登壇〕
○企画部長(田嶋久嗣君) 他の自治体の状況について本県が言及する立場にはございませんが、新聞報道等では、本県のほか、大阪府・市、長崎県の3自治体が誘致を正式に表明し、また、北海道や東京都、横浜市、愛知県などが誘致を検討中と伝えられているところです。
 議員は関西圏に複数箇所のIRはできないとお考えのようですけども、そのようなことはございません。IR整備法に規定する認定基準には、地域バランスを考慮し選定するとの項目はございませんし、国会においてもそうした議論はなされておりません。また、そのことについては本県から政府に確認をしておるところです。
 加えて、先般、政府主催の法律説明会におきまして、認定基準に関して、地域に偏りが出ないようにという基準はない、日本を国際観光先進国にすることが国の政策目標であり、その公共政策の目的に最も合致するものを選定するという考え方が明確に示されました。このことが本県にとって追い風になることは、間違いないと考えております。
 県としては、成長戦略の一つとして、将来の和歌山のためにIRという新たな要素を取り入れるという考えのもと、認定上限箇所である三つの中に選ばれるよう、引き続き、地元の合意形成を図りながら、地域振興を最大化しつつ、国の観光立国政策に貢献するすぐれた区域整備計画を作成することに全力を挙げ、ぜひとも誘致を実現させたいと考えております。
○副議長(岸本 健君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 私は、複数箇所はできないとは申し上げてはおりません。普通に考えれば、長崎、関西圏と来れば、次は首都圏や北海道などが考えられると言っているわけです。ですから、知事もおっしゃるようにカジノを含むIRがバラ色のものであるならば、どうして全国で手が挙がらないんだろうか。安倍政権は、偏りがあっても構わないと、大阪と一緒に和歌山を認めるかもしれません。しかし、将来も和歌山県に住み続ける県民にとって大きな禍根を残すことになるのではないかと心配しているということを申し上げて、次へ行きます。
 では、次の項目は、児童虐待の問題です。
 またも痛ましい児童虐待で、幼い命が絶たれるという事件が起こりました。千葉県野田市の小学校4年生の事件です。昨年起こった東京都目黒区の5歳の女の子が、「許してください」とノートに書きながら虐待死した事件の記憶も消えない間に起こった事件でした。子供たちにこんな悲しい、苦しい思いをさせないために、皆さんと御一緒に考えてみたいと思います。
 第1にお伺いしたいのは、和歌山県の児童相談所が対応した子供の虐待相談件数はどうでしょうか。福祉保健部長からお答えください。
○副議長(岸本 健君) 福祉保健部長山本等士君。
  〔山本等士君、登壇〕
○福祉保健部長(山本等士君) まず、平成29年度に児童相談所が対応した児童虐待相談件数は、前年度より19件増加し、1142件となり、過去最多の件数となっています。なお、平成30年度の児童虐待相談件数は、1月末現在で1108件となっており、仮にこのまま推移すれば、前年度を上回る見込みです。
 次に、平成29年度の児童虐待相談の種類別件数は、心理的虐待が最も多く526件、続いて身体的虐待が325件、ネグレクトが280件、性的虐待が11件となっています。
○副議長(岸本 健君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 御答弁ありがとうございました。
 第2に、一つ一つの問題から教訓を引き出し、再発防止の対策をしなくてはなりません。
 和歌山県の児童相談所でも、家庭復帰後に子供を虐待死させてしまったという事件が起こっています。私は、平成27年9月県議会での質問で、児童虐待、里親制度について取り上げた際、この事件について触れたことは触れたんですが、その内容について突っ込んでは触れませんでした。このたび、初めて和歌山県児童虐待等要保護事例検証委員会報告書というものを読んでみました。この事案は、平成23年7月に病院から虐待の通告がありました。揺さぶられ症候群ということです。その後、いろいろな経過がありますが、自宅に帰され、平成25年7月、「救急搬送され、心肺停止状態で死亡を確認」と病院から連絡が入るわけです。
 先日の坂本議員の一般質問への知事答弁で、知事の思い、和歌山市との間で御苦労があったことはお聞きしました。知事の答弁では、和歌山市の対応に激怒したという言葉が2度も出てきまして、どうかなと思いましたが、和歌山市の対応にも問題があったことは事実のようです。
 同時に、知事が触れられませんでしたが、最初の通報があったとき、児童相談所は、在宅指導が適当として一時保護しませんでした。その数カ月後には、この児童は、またも虐待により入院します。児童相談所は、今度は職権により児童を一時保護するわけですが、その後、施設入所中の児童が長期外泊で自宅に帰ったとき、近所の人から泣き声通告があるのですが、いろいろな事情で家庭訪問したのは1週間後だったという問題も指摘されています。
 県、児童相談所にも、和歌山市にも、反省すべきことはたくさんあった事案です。この検証委員会報告書が広く全国に報道され、共有されていたら、最近事件が起こった他府県の児童虐待への児童相談所の対応はもっと改善されていたのではないかということを考えると、自分自身のこの事案への対応、つまり、この問題について突っ込んで検証することを議会ではしていないという問題です。その対応を含めて、じくじたる思いがいたします。
 6年前のあの事件以後、検証委員会報告書で提言されている諸問題のうち、特に児童相談所への児童福祉司などの増員、県内市町村との連携は、その後どうなっているのか。福祉保健部長からお聞かせください。
○副議長(岸本 健君) 福祉保健部長。
  〔山本等士君、登壇〕
○福祉保健部長(山本等士君) まず最初に、児童相談所における人員についてですが、平成26年度から平成30年度までの5年間で、家庭支援などで中核的役割を果たす児童福祉司4名を含む相談業務担当職員7名と常勤弁護士1名の合計8名の増員を行い、県内2カ所の児童相談所合わせて59名の人員を配置したところです。
 なお、常勤弁護士につきましては、今後も法的判断がますます必要となると見込まれることから、今年度4月から雇用形態を任期つき職員から一般職員としたところです。さらに、年々複雑・困難化する児童虐待事案に対応するため、来年度において児童福祉司5名の増員を行うとともに、今後とも必要な増員を行うなど、万全の対応を期すこととしております。
 次に、2点目の市町村との連携についてですが、在宅児童の見守りや第一義的な相談につきましては児童福祉法で市町村が対応することと規定されているにもかかわらず、こうした役割分担が十分できてなかったことが本事案によって明らかになりました。
 和歌山市とは話し合いを重ね、市としての役割を十分理解してもらうとともに、県内の他の市町村に対しても同様に周知を図ったところであります。その上で、今年度、その果たす役割をより明確化するため、和歌山の子・みまもり体制に関する協定書を全市町村と締結したところです。
 一方で、市町村職員の資質向上も重要であることから、虐待の兆候を決して見逃さず、早期発見に確実につなぐことのできるノウハウや児童相談業務に必要となる支援会議の運営方法等を学ぶための研修を行い、知識、技術の向上や均質化に努めているところです。
 また、役割分担に基づいた業務を連携して行うためには、県と市町村が共通の手順に従った業務を進めることが重要であることから、今年度、県担当課及び児童相談所と市町村の職員が協同し、互いの業務を反映した実務担当者向けマニュアルの改訂を行うとともに、虐待事案の対応判断を迅速かつ的確に行うため、児童のけがの状況や心理状態などの程度をチェックし相互に確認し合う、共通の虐待リスク評価ツールを作成し、実践での活用を始めたところです。
 児童虐待による死亡事案が県内で二度と起こることのないよう、児童の安全を最優先に、市町村を含む関係機関と連携して取り組んでまいります。
○副議長(岸本 健君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 こうした悲しい事案は、もう繰り返してはなりません。そのためにもお互いに、自分にも言い聞かせるつもりでいるんですが、そういう失敗があったときは、人情として自分の失敗は小さく、そして他の人の責任を大きな声で言うことが多いんですが、私は、自分自身がこの県議会でこの問題を取り上げてこなかったことも含めて、じくじたる思いというふうに申し上げました。やはり、お互いにしっかりとこういうことを繰り返さないようにしていきたいと思います。
 それでは、最後の項目に移ります。
 毎年、県庁では、渡り廊下で原爆写真展が開かれています。県原爆被災者の会、核戦争防止医師の会、県原水協などの皆さんが原水爆禁止世界大会、それを前にした平和行進に先立って、県及び県議会に要請行動に来られます。私は、毎年同席させていただきました。
 被爆者最後の仕事と言われた新しい原爆パネルができました。それを県で買い上げてほしいという要望が出されました。時の議長さんからも「いいことだから、私も後押ししましょう」と言っていただいて、県で買い上げていただいた。それが展示されることになりました。今後も、ぜひとも続けていただきたいと思います。
 これにかかわって、課題として残されているのが、平成10年の県議会での平和宣言の扱いでございます。「核兵器を廃絶し、恒久平和を実現することは、唯一の被爆国である我が国はもとより人類共通の悲願である。 現在、世界には、地球上のすべてを破壊して余りある核兵器が貯蔵されており、人類は常に核兵器の脅威にさらされている。 和歌山県議会は、人類永遠の平和確立のため、いかなる核兵器も廃絶するよう強く訴え、県民の総意として、ここに核兵器廃絶平和県を宣言する。 平成10年6月24日 和歌山県議会」、こういうものなんですが、私は、せっかくの平和宣言だから、和歌山県が平和宣言をしていることを表示するものを置いてはどうかと提案しておりました。当局からは、議会の宣言だから、議会で考えてもらいたいというお話でございました。
 昨年のことですが、当時の尾﨑太郎議長さんから、市民団体から平和宣言の表示物をという要請があったが、いいことだと思うので、皆さんで協議してほしい──こういう趣旨だったと思います──というお話がございまして、各会派で持ち帰って検討しました。私としては引退前のいい手土産ができたと喜んでいたわけですが、ある大きい会派が「どうもまとまらないんだ」と代表者の方がおっしゃいまして、せっかくの提案がお蔵入りになっているわけでございます。
 こうしたことは全会一致が望ましいと思いますので、私がやめた後でも、ぜひとも皆さんで協議をして実現していただけますようお願いをして、私の最後の発言を終わります。
 皆さんどうもお世話になりました。ありがとうございました。(拍手)
○副議長(岸本 健君) 以上で、雑賀光夫君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 11番濱口太史君。
  〔濱口太史君、登壇〕(拍手)
○濱口太史君 議長のお許しをいただきましたので、早速、一般質問に入らせていただきたいと思います。何とぞよろしくお願いいたします。
 まず一つ目、スマホ依存が児童生徒に及ぼす影響についてであります。
 質問は、スマホ依存から児童生徒の安全や大事な時間を守るための取り組みについてをお尋ねしたいと思います。
 スマートフォン、いわゆるスマホは、通話はもとより、人と人とがネット上でのコミュニケーションを図るためのツールにとどまらず、ゲームや音楽や動画が楽しめる、災害などの緊急情報が受信できる、手軽に写真や動画の撮影や加工ができる、代金の支払いができるなど、それ以外にもすぐれたアプリが使用できるスマホは、今や生活の中に欠かすことのできない大変便利なものです。
 しかし、使い方や利用頻度によっては、さまざまな危険性をはらんでおり、また、いろいろな弊害を引き起こすとも言われています。特に発達段階で感受性が高い小学生や中学生、高校生においては、学力への影響が懸念されます。また、いじめのきっかけとなるSNSへの不適切な書き込み、特に匿名による誹謗中傷は、そのストレートな表現が人の心を傷つけ、人間不信を招くなど、精神的なダメージを与えるものです。
 個人情報の流出、出会い系サイトやアダルトサイトへの接続によるトラブルや事件に巻き込まれる心配もつきまといます。それに、いじめのきっかけをつくるなど、これまでにも社会問題に発展した事例は多く報道されているところです。
 全国の児童生徒のスマホの所有や利用率について、内閣府が実施した平成29年度青少年のインターネット利用環境実態調査によりますと、小学生は29.9%、中学生は58.1%、高校生は実に95.9%となっています。高校生では、所持していないほうが20人に1人というこの数字には驚きです。また、携帯電話やスマホと学力の相関関係について、利用時間が長いほど正答率が低くなる傾向が見られると述べています。
 同様の分析を、大ヒットしたゲームソフト「脳を鍛える大人のDSトレーニング」の監修でも知られる東北大学・川島隆太教授も、著書「スマホが学力を破壊する」の中で、スマホが子供の学力に与える恐ろしい影響を示唆しています。
 家庭で毎日2時間以上勉強しているが、スマホを3~4時間使用している生徒と、家庭学習をほとんどしないが、スマホを使用しない生徒との学力を比較した場合、スマホを長く使用している生徒のほうが、家庭で勉強をしているにもかかわらず、成績が低いそうです。スマホを長時間使用することで、学校での授業、家庭での勉強でせっかく学習した知識が脳から消去されていると分析しています。つまり、スマホを使用する頻度と学力の低下の相関関係は明白だということです。
 また、長時間スマホを使用することによる睡眠不足や疲労、視力への影響、LINEなどのSNSなどの過度なやりとりが、家庭での勉強の集中力を低下させます。オンラインゲームなど、ネットに依存し、昼夜逆転の生活になってしまい、学校を欠席しがちになる事例もあると報告されています。
 スマホの所持率が高いのは、現代社会の情報伝達の仕組みがスマホを利用したものが主流となってきたからです。例えば、本県でも、和歌山県防災ナビなど、災害発生時の緊急情報の発信や位置情報を活用した避難誘導アプリがあります。逆に、スマホを所持していないと情報が得られず、しかも、常に携帯していなければ効果は発揮されません。
 ちなみに、児童生徒だけでなく、大人にもスマホ依存症の人は大変多いと思います。乗車した電車やバスの車内では、乗客のほとんどが誰とも会話することなく、スマホの画面にくぎづけになっている光景が当たり前になっています。最近流行した「何とかGO」では、キャラクターを集めるためにスマホを見ながら歩く姿は、私には何とも異様な光景に見えます。
 歩きスマホ、運転スマホは、事故を誘発する危険を伴い、ながらスマホは、注意力が散漫になります。幼い子供の親がスマホに夢中になってしまうと、視線を合わさないために、子供が愛情不足になりがちとも言われています。大人が何げなくスマホに気をとられている様子を子供たちも見ています。そんな大人が子供に対して、スマホの使用を制限するよう注意することができるのでしょうか。
 スマホは、通話やメールによるコミュニケーションだけであった携帯電話が進化し、多くのアプリによって生活様式も、情報社会も劇的な変化を遂げました。日常生活や健全なコミュニケーションに役立つ使い方だけをしていれば間違いなく便利なツールでありますが、長時間の使用や、そこに悪意あるネットビジネスや犯罪が入り込むことにより、たちまち危険にさらされてしまいます。学力の低下とその相関関係も踏まえれば、児童生徒のスマホ依存が及ぼす影響は、看過できないものと考えます。
 県教育委員会や学校現場において、児童生徒の安全や大事な時間がスマホによって奪われているという現状に、どのような対策並びに指導を行っているのでしょうか。また、今後、さらに取り組むことがあればお聞かせください。教育長にお尋ねいたします。
○副議長(岸本 健君) ただいまの濱口太史君の質問に対する答弁を求めます。
 教育長宮下和己君。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 県教育委員会では、平成29年3月、ネットの利用時間やフィルタリングサービス等についての教員用指導資料「スマートフォン・携帯電話・SNS等を安全に利用するために」を作成し、各学校において、技術・家庭科や情報科等の授業で活用するよう指導してまいりました。また、県環境生活部と連携してネット依存や情報モラルを扱った教材を作成し、県内全ての公立学校の生徒指導担当教員等を対象に研修を行い、各学校で教材の活用を進めております。
 さらに、県環境生活部、警察と連携し、インターネット上を探索して、誹謗中傷記事等の不適切な投稿を発見するネットパトロールを実施しております。不適切な投稿を発見した場合は、その情報を学校に伝え、児童生徒や保護者に投稿の削除やSNS等の危険性についての指導を行っております。
 県内には、児童会や生徒会が主体的にスマートフォンの使用時間などのルールをつくり、守るよう取り組んでいる学校もあります。また、コミュニティ・スクールの学校運営協議会等で協議し、児童生徒、家庭や地域を巻き込んだ取り組みが進められている例もございます。
 保護者対象の取り組みには、PTA研修会でスマートフォンをテーマに取り上げ、サイバー犯罪に詳しい専門家を招いて県内2カ所で研修会を行いました。また、子育てや家庭教育を支援するために作成した「家庭教育サポートブック」におきまして、家庭におけるスマートフォン使用のルールづくりを示しております。
 今後の取り組みといたしましては、今定例会にお願いしてございます依存症予防教育において、スマホ依存の内容や予防策等を示した児童生徒及び保護者向けのリーフレットを作成し、学校と家庭が協力して指導できるようにしてまいります。また、ネット依存度をはかるチェックシートを作成し、各学校で依存傾向が見られる児童生徒の個別指導に生かせるようにいたします。さらには、依存症予防の専門家を学校に派遣し、教職員や児童生徒の知識、理解を深めてまいります。
 今後とも、学校、家庭、地域と一体になって、児童生徒が充実した豊かな生活を送ることができるよう取り組んでまいります。
○副議長(岸本 健君) 濱口太史君。
  〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 御答弁をいただきました。
 児童生徒の学力向上を考えるときに、指導方法や学習内容、教材の工夫など、いろいろな観点から学力強化することに取り組んでいると思いますが、脳の働きを低下させる原因とされるマイナス要素を取り除くこと、つまり、よくない生活習慣の改善も必要だと考えます。よく言われている朝食を必ずとること、睡眠を十分にとることなどに加えて、やはりスマホの健全な使用を心がける意識づけを実行するために、我々大人も一緒になって努力することが重要だと思いますので、今後とも対策や指導に御尽力をお願いいたします。
 それでは、次の問題に移ります。
 2番目、精神障害者と家族を取り巻く社会の現状についてであります。
 さまざまな現代社会のストレスによるダメージに苦しむ精神疾患患者、しかし、苦しんでいるのは患者だけではありません。その家族の中には、患者から暴言や暴力を振るわれることは日常のことだと言い、心身がぎりぎりの状態で生活を送られているケースは少なくありません。世間からの孤立を余儀なくされた家族の中で張り詰めた心が切れてしまうと、最悪の事態が起きてしまいます。
 「家の中だけでなく、社会に救いを求めよ」、そう訴え、和歌山県精神保健福祉家族会連合会の中心的立場で、患者の家族と向き合い続ける78歳の大畠信雄さん。大畠さん御自身の現在49歳の息子が統合失調症と診断を受けたのは、35年ほど前のことでした。大の野球好きで、体格にも恵まれて、中学では野球部に入り、毎日練習に明け暮れていた健康そのものの息子さんの体調に突然異変が起きました。以後、入退院を繰り返し、そのうち何かをきっかけに突然激高するようになり、いわゆる家庭内暴力が始まりました。大畠さんは何度も殴られて目を腫らし、あばら骨を折る重傷を負ったこともあったそうです。
 平成23年に厚生労働省は、地域医療の基本方針となる医療計画に盛り込むべき疾病として指定してきたがん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病の4大疾病に、新たに精神疾患を加えて5大疾病とする方針を決めました。この背景には、職場での鬱病や高齢化に伴う認知症の患者数が年々増加し、国民に広くかかわる疾患として重点的な対策が必要と判断したからであり、自殺の原因にも挙げています。
 少子高齢化が加速し、また労働力不足が問題となっている現在、優秀で能力の高い人、働き盛りで社会貢献されている人、家庭では大黒柱となって生活を支えている人が社会から離脱してしまうことは、社会的にも大きな損失と言えます。
 公表されている最新のデータが平成26年の調査によるものですが、内閣府の平成30年度版障害者白書によりますと、身体障害者は436万人、知的障害者は108万2000人、統合失調症、認知症、鬱病などの精神疾患患者の人数については、医療機関を利用した患者数として392万4000人となっています。平成23年では320万1000人ですので、その3年間に約70万人が激増しています。平成11年の204万1000人と比べますと、15年間でほぼ倍になっており、現在でも増加傾向にあると推測されています。本県では、約3万人前後で推移しているとのことです。
 ちなみに、男女別で見ますと、20歳未満では男性が16万6000人、女性は10万1000人と男性が多いのですが、20歳以上になりますと、男性が143万1000人、女性が222万9000人と、女性の患者が圧倒的に多くなっています。社会全体がこの現実を深刻な問題と捉え、他人事ではないという認識を持ち、向き合う社会や地域をつくることは、患者はもちろん、家族にとっても大きな救いとなることでしょう。そして、多くの精神疾患患者を早期回復、リカバリーすることは、本来持っているそれぞれの能力が再び発揮できることになり、地域社会における貢献、生産性の向上にも寄与するものと思われます。本人や家族は、生きがいを取り戻すことでしょう。
 さて、私が大畠さんと出会ったきっかけは、精神障害者に対し、旅客運賃割引制度をなかなか適用してもらえないということの相談と協力を求められたことでした。平成28年6月定例会一般質問において、知事や県当局にJR等への働きかけを要望するとともに、先輩・同僚議員には国への意見書を可決していただきました。その後、全国家族会の役員らとともに、JRや国交省を訪ね、割引制度を適用してもらえるようお願いに上がりましたが、なかなか決定には至りませんでした。そこで、今度は、全国各地で一斉に意見書を提出しようとする動きの中で、2年後の昨年6月定例会においても、意見書提出に再度御同意をいただきました。
 同じように家族会が要望活動を続けておりました航空運賃の割引については、昨年9月にJAL並びにANAが適用を決定していただけるなど、要望活動が実を結んだこともありましたが、残念ながら現在も、精神障害者に対する旅客鉄道事業における割引は、実現には至っていません。
 世間から距離を置こうとする精神疾患患者が社会復帰するためには、段階的に世間との距離を縮めるきっかけが必要で、交通機関の割引制度は、患者が外出し移動するための財政的負担を軽減する支援になると思います。
 しかしながら、その反面、精神障害者が公の場で突然暴れ出したり、通り魔的な殺人事件を起こすこともあり、精神疾患患者を社会に出すべきではないと反対や警戒をする考えもあります。特に被害者の関係者からはその思いは強いということも承知し、納得もしています。しかし、そのような背景が社会から患者を隔離させ、家族は孤立状態となるわけです。
 そのような中、全国各地では家族間の事件が発生しています。報道されている事件を挙げますと、平成28年5月、滋賀県で両親が暴れる娘をガムテープで縛り殺害した事件、平成29年12月、大阪府寝屋川市で、2畳半の空間に精神疾患を患う33歳の娘を両親が15年間閉じ込め続けた末に、衰弱死に至らせてしまった事件、平成30年4月、兵庫県三田市で、父親が長男(41歳)を25年間おりに入れて監禁していたことが発覚し逮捕された事件。
 また、本県でも痛ましい事件が発生しています。平成20年5月、海南市で統合失調症の娘と母親の無理心中事件、平成27年2月には、和歌山市で81歳の父親が20年間暴力暴言を繰り返していた41歳の長女を絞殺してしまった事件、平成28年4月、和歌山市で父親(67歳)が長女から同じく10年間暴力を受け続けた結果、絞殺してしまったという事件が起きています。そのような悲劇が各地で、また本県でも発生していたという事実を皆さんは御存じだったでしょうか。私は、大畠さんに話を伺うまで記憶になかったことを議員として反省しました。
 このような事件が報道されると、必ず巻き起こるのが親に対するバッシングです。「自分の子供を殺めるなんて」、「自分の子供を狭い部屋に閉じ込めておくなんて」、「人でなし」や「極刑に値する」といった親を責める非難の声です。
 しかし、これは虐待とは全く違いますし、世間が精神疾患患者を受け入れにくい状況だから、家族は閉じ込めるしか方法がなかったのではないか、子供の存在を隠そうという心理が働いてしまったのではないか。そもそも精神疾患の原因をつくったのは、思いやりが希薄になった社会全体ではないかと思うわけです。
 このような悲劇を今後繰り返すことがないよう、家族への支援策について考えなければと強く感じ、本県の現状や行政の取り組みなどを担当部局に伺ったところ、県が中心となり、各関係機関が連携した支援体制は築いているものの、肝心な当事者やその家族との接点をつくることに苦慮しているという意見を聞きました。その背景には、当事者が病気であると認めたくない、自覚をしにくい、家族としても対外的に知られたくない、また、当事者自身が人との接触を拒絶するという状況が考えられるとのことでした。
 では、このような深刻な現状から当事者と家族を救うために、どのように支援の輪につなげていくことに努力をすればよいのでしょうか。糸口を見つけるには、まずは家族の方々の要望を参考にすべきだと考えました。
 公益社団法人全国精神保健福祉会連合会の会員家族を対象とした現状調査によりますと、「危機的状況で家族が望む支援は」との問いに、68%の方が「同じ病気を経験した人が訪問して働きかけてくれること」、次いで51%の方が「どのように対応したらよいか24時間相談に乗ってくれること」、次いで48%の方が「本人との話し合いの場に同席し、一緒に対応を考えてくれること」と回答しており、つまり、家族だけで病気を抱え込むのではなく、ほかの人にもかかわってもらいたいということを強く望んでいることがわかります。特に、専門的知識と経験を積んだ精神科医師は患者や家族にとって心のよりどころであり、大変心強い存在だと思います。
 しかしながら、全国的に公立病院の精神科医師が不足しているという話を耳にします。実際に24時間対応が可能なのは、県内で唯一、有田川町にあるこころの医療センターだけです。平成26年までは田辺市にある紀南こころの医療センターでも24時間体制だったそうですが、医師の減少で休日・時間外の診察をやむなく中止したとのことです。やはり、本県でも精神科医師は不足している状況なのでしょうか。また、精神科医療の充実に向けた医師確保について、どのような取り組みを行っているのでしょうか。福祉保健部長にお尋ねします。
○副議長(岸本 健君) 福祉保健部長山本等士君。
  〔山本等士君、登壇〕
○福祉保健部長(山本等士君) 県内の精神科医師数は、近年、増加傾向にありますが、公的病院における常勤医師は不足している状況であることから、精神科の救急医療に関しては、議員御指摘のとおり、県立こころの医療センターに医師を集約することにより、24時間体制を維持しているところです。
 こうした状況のもと、県では、県内の公的病院で勤務することを条件に返還を免除する研修資金貸与制度を創設するとともに、県外から県内の公的病院に赴任する医師に対する研究資金貸与制度を創設し、精神科医師の確保に取り組んでいるところです。
 また、僻地拠点病院等において内科での勤務を原則としている和歌山県立医科大学の地域医療枠卒業医師について、例外的に派遣中の診療科として精神科での勤務を認めており、現在1名が公的病院で精神科医師として勤務しております。
 さらに、新たな試みとして、京都大学医学部に寄附講座を開設することにより、精神科医師1名が、来年度、県立こころの医療センターにおいて診療を行いながら、研究及び若手医師の育成を行う予定です。
 一方、和歌山県立医科大学では、来年度、新たに5名の医師が精神科を専攻するなど、精神科を目指す若手医師がふえる傾向にあります。県としましては、和歌山県立医科大学と連携し、こうした若手医師のキャリア支援を行うことにより、県内の公的病院で勤務する精神科医師の確保につなげてまいります。
 今後も、こうした医師確保を推進することにより、県民の皆様が安心して適切な治療が受けられるよう、より一層、精神科医療の充実に取り組んでまいります。
○副議長(岸本 健君) 濱口太史君。
  〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 御答弁いただきました。
 精神科の医師がふえれば、患者の家族も心強く感じられることと思いますので、引き続き御努力いただきますよう、よろしくお願いいたします。
 患者も家族も年齢を重ねます。精神障害に限らず、障害者・障害児の保護者の方と話をしますと、「今は私たちが面倒を見ることができるが、やがて自分たちが先にこの世からいなくなってしまうと、その後、この子は生きていくことができるのだろうか。そのことを考えると、不安にさいなまれる」という言葉が胸に刺さります。家族が健在であるうちに、一緒に地域がかかわって患者を支え、自立ができやすい社会にしておかないといけない理由がそこにあります。
 また、重度の患者は、暴れたりするだけでなく、突発的に自殺や自分を傷つける行為に走る心配もあり、目が離せない状況が続くため、家族は緊迫感の中で、想像を絶するほどの精神的負担、肉体的負担が積み重なっていきます。この拘束時間や負担の軽減を図らないと、家族自身も精神的に病んでしまうかもしれません。患者の家族に対する支援施策や助成制度を早期に充実させる機運を高めるため、皆様の御理解と御支援を要望として、次の質問に移らしていただきます。
 三つ目、「サイクリング王国わかやま」についてであります。
 和歌山でのサイクリングといえば、私の地元で毎年5月に、ツール・ド・熊野というロードレースが開催されています。UCI(国際自転車競技連合)のアジアツアーの公式戦、つまり、国内チーム、海外チームが参加する国際レースです。新宮市内でのタイムトライアルを皮切りに、熊野川の支流である赤木川、三重県の丸山千枚田を含む高低差の激しい山岳コース、最終ステージは太地町を周回するという、自然を舞台にした4日間のステージレースで、レベルの高い選手たちが熾烈な戦いを繰り広げます。
 熊野でロードレースをと約20年前から開催を実現させた角口賀敏実行委員長とは30年来の御縁がもとで、私も第1回目から一スタッフとして参加をしています。大会期間中は、たくさんの選手やチーム関係者、連盟関係者や多くのファンが熊野を訪れていただき、とても活気づいています。
 この大会は、多くのスポンサーや大勢のボランティアの御協力に支えられています。そして、仁坂知事にも大会長としてセレモニーやスターターを務めていただいており、昨年は選手らと一緒に自転車で走っていただくなど、盛り上げに一役買っていただきました。毎年、御協力を賜り、厚く感謝申し上げます。
 ちなみに、この大会を主催するスポーツプロデュース熊野というNPO法人は、このほかにも白浜空港跡地でロードレースやチーム対抗ママチャリレースが楽しめる白浜エアポートクリテリウムや那智山を駆け上る熊野古道ヒルクライム、三重県熊野市から新宮市までに配置された複数のチェックポイントを好きなルートでめぐる紀南シーサイドグルメツアーなどを開催しています。サイクリングイベントを通じて選手のレベルアップを図るとともに、自転車及び自転車競技の普及、国際交流と熊野地域の活性化への貢献を目的としています。
 また、4年前には、熊野地域を本拠地とするキナンサイクリングチームを発足しました。実力あるプロ選手が所属し、レースではいつも上位の成績を上げています。チームの選手らは、レース以外でも熊野のPRイベントや地域の子供たちに安全な自転車の乗り方を講習するなどの活動を行っていただいております。
 さて、本題に入ります。
 本県のサイクリングロード整備について、また、サイクリングロードを活用し、サイクリスト観光客の誘客を図ることを目的とした「サイクリング王国わかやま」については、我が自民党議員を初め各会派の議員がこれまでに何度も一般質問で取り上げ、考察や提案などで議論を深めてまいりました。議員の関心の高さがうかがえます。このことからも、県が取り組んでいるサイクリングを活用した事業は、将来的にさらなる誘客効果や経済効果につながるものと大いに期待を膨らませております。
 そこで、このサイクリング事業によって本県をサイクリングの聖地とするための取り組みについて、それぞれ伺っていきたいと思います。
 まず一つ目、サイクリングロードの整備状況と今後の取り組みについてであります。
 県内のサイクリングロード整備は、案内看板の設置やブルーラインが引かれるなど、サイクリストの安全性や快適性を高めるために取り組まれていると考えます。山、川、海のコースを有する各エリアで整備が進んできたと思いますが、現時点での整備状況と今後の取り組みについて教えてください。県土整備部長にお尋ねします。
○副議長(岸本 健君) 県土整備部長髙松 諭君。
  〔髙松 諭君、登壇〕
○県土整備部長(髙松 諭君) サイクリングロードの整備状況と今後の取り組みについて御質問をいただきました。
 和歌山県では、延長約800キロメートルの川、山、海のサイクリングロードにつきまして、安全で快適なルートとなるよう、できるだけ専用道路として整備を進めるとともに、サイクリストへの案内や誘導、自動車ドライバーへの注意喚起を目的としたブルーラインなどの路面標示の整備を進めているところでございます。
 こうした中、ブルーラインなどの路面標示につきましては、昨年度までにおおむね設置を終え、引き続き、さらなる路面標示の充実や河川敷を利用した専用道路化及び橋梁架設によるサイクリングロードの直線化などを進めるとともに、ルートの起終点や分岐点、拠点となる道の駅などへの案内看板の設置に取り組んでいるところでございます。
 さらに、広域的なサイクリングロードとして、京都府から奈良県を経由し和歌山県に至る京奈和自転車道については、奈良県が和歌山県境から五條市内の約14キロメートル区間の路面標示を今年度末までに設置することによりまして、路面標示の設置を終えている和歌山県と一体的につながる予定でございます。
 また、千葉県から和歌山県に至る太平洋岸自転車道については、昨年11月に国が事務局となり、関係県などで構成する協議会を立ち上げたところでございまして、今後、太平洋岸自転車道を示す統一ロゴマークなどを定め、整備を進めることとしてございます。
 今後とも、「サイクリング王国わかやま」を国内外に発信していくため、専用道路化など県内のサイクリングロードの整備に取り組んでまいりたいというふうに考えております。
○副議長(岸本 健君) 濱口太史君。
  〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 次に、サイクリストのための環境整備とツールの構築についてお尋ねをいたします。
 サイクリングロードが整備されていても、サイクリストにとっては、休憩やパンクなどのアクシデントに対応できる環境でなければ、安心してサイクリングを楽しむことはできません。
 本県でも、そのためにサイクルステーションの設置を進めております。2年前には68カ所設置したとの報告がありましたが、その後、本県ではどれぐらいのサイクルステーションを設置することができましたか。また、国内外から来られたサイクリストへの情報提供、サイクリングマップのほかに、特にスマホを利用した情報提供を行っていると伺いましたが、どのようなものなのでしょうか。今後の取り組みもあわせてお聞かせください。企画部長にお尋ねをいたします。
○副議長(岸本 健君) 企画部長田嶋久嗣君。
  〔田嶋久嗣君、登壇〕
○企画部長(田嶋久嗣君) サイクリストが安心して走行できるよう、平成28年度からスポーツサイクルに対応した空気入れやトイレの貸し出し等を行うサイクルステーションの設置に取り組んでまいりました。
 サイクリストのおもてなしに協力いただける飲食店や物販店等にサイクルステーションへの登録を依頼するなどして、本年1月末現在で235カ所を設置し、受け入れ環境整備の充実を図ってきたところです。
 また、スマートフォンによる情報提供につきましては、昨年3月にスマートフォン対応のウエブサイト「和歌山県サイクリング総合サイト」を開設し、お勧めコースの紹介やサイクルステーション、サイクリストに優しい宿など、サイクリストに有用な情報を提供しています。
 さらに、来年度は、サイクリストがスムーズに目的地にたどり着けるよう、サイクリングナビゲーションを活用し、お勧めルートの音声案内の提供などを行ってまいります。
 今後とも、サイクリストの利便性向上を図るため、民間事業者等に対してサイクルステーションへの登録を引き続き依頼していくとともに、必要な情報を的確に発信できるよう、「和歌山県サイクリング総合サイト」のさらなる充実に向け、取り組んでまいります。
○副議長(岸本 健君) 濱口太史君。
  〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 三つ目に、サイクリスト観光客へのプロモーションや滞在時間をふやす取り組みについて、お尋ねをいたします。
 風光明媚な自然や世界遺産、日本遺産など、文化的観光資源が豊富な本県において、サイクリングで県内をめぐってもらうことは、車の移動に比べゆっくりとした時間で観光を楽しんでもらえることから、長い滞在時間が見込めるだけでなく、宿泊や店舗利用の促進につながるなど、経済活性化に期待が高まりますが、サイクリストに興味を持ってもらうためにどのような情報を発信、話題づくりのためにどのような誘客プロモーションを展開していますか。商工観光労働部長にお尋ねをいたします。
○副議長(岸本 健君) 商工観光労働部長山西毅治君。
  〔山西毅治君、登壇〕
○商工観光労働部長(山西毅治君) 県及び県観光連盟では、県内にある800キロを超えるサイクリングロードを、ただ単にサイクリングで楽しんでいただくだけではなく、世界遺産「高野山・熊野」を初め、絶景や温泉といった豊富な観光スポットを目的地とする旅と融合したWAKAYAMA800の魅力を国内外に発信し、本県への誘客促進の取り組みを行っているところです。
 そのために、サイクリストが安心・快適に滞在できる宿泊施設を「サイクリストに優しい宿」として認定しており、この制度では、スポーツバイク対応の空気入れや修理工具の貸し出し、手荷物の一時預かり、また、自転車を含む宅急便の受け取り・発送サービスに加え、自転車を客室または屋内に保管できるというサイクリストの視点に立った要件を設定し、現在54の宿泊施設を認定しています。
 また、首都圏からお越しいただくサイクリストを歓迎する施設として、新たに南紀白浜空港を「サイクリストに優しい空港」に認定するなど、受け入れ体制の充実を図ってきたところです。
 情報発信については、サイクリスト向けの専門誌及びウエブサイトを合わせ、平成29年度で14媒体、平成30年度で15媒体で発信したほか、阪急・阪神グループとタイアップしたPR、さらに県観光情報誌「紀州浪漫」での特集などを行ってきました。
 また、季節やイベントなど旬の情報を公式フェイスブックで発信しており、現在、フォロワー数が約4000名となっています。
 新たな企画として、昨年8月から県内45カ所のチェックポイントを設置したモバイルスタンプラリーを実施し、既に約1500人の方が登録をし、周遊を楽しんでいただいているところでございます。
 さらに、海外向けの情報発信につきましては、CNN、BBCや世界最大のスポーツメディア、ユーロスポーツのウエブサイトでのプロモーション動画の配信に加え、昨年11月には、フェイスブックで100万人のフォロワーを持つ元有名ロードレーサーのアルベルト・コンタドール氏をインフルエンサーとして招聘し、県内のサイクリングロードや観光スポットを自身のSNSで世界に発信していただくなど、積極的に取り組んでいるところでございます。
 今後も、スポーツバイク愛好者だけでなく、サイクリングブームの火つけ役となった有名アニメとのタイアップや健康というテーマでのサイクリングをPRすることで、新たな客層の誘客につなげてまいります。
○副議長(岸本 健君) 濱口太史君。
  〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 それでは、最後に、全国屈指のサイクリングの聖地実現に向けた意気込みについて、お尋ねをいたします。
 これまでの答弁をお聞きし、総合的に判断しますと、本県のサイクリング事業は、各部署がそれぞれの持ち味と経験を生かし、アイデアと御努力でここまで築かれてきたということを感じております。そして、この機運をさらに高め、今後ますますグレードアップを図ることにより、日本のサイクリングといえば和歌山県というイメージ、すなわち、県民一丸となれるための新たな取り組み、継続した取り組みをお願いしたいところです。
 そこで、「サイクリング王国わかやま」のその名にふさわしい、全国屈指のサイクリングの聖地の実現に向けた知事の意気込みをお聞かせください。
○副議長(岸本 健君) 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 本県のサイクリングロードは、サイクリストが安心・安全に走行できるよう800キロメートルもの区間にブルーラインを引く整備を行っており、国内では最大の規模を誇ります。
 海、山、川をめぐる変化に富んだコースを走ることに加え、サイクリングの目的地となる世界遺産「高野山・熊野」を初め、絶景や温泉などが県内各地に多数存在することから、単に道や距離を走るだけにとどまらない旅としてのサイクリングを提供できることが、国内外にアピールできる和歌山県のサイクリングの特徴であると考えます。
 そういった中で、国際レースであるツール・ド・熊野や県が整備したサイクリングロードを活用して開催するわかやまサイクリングフェスタを初め、有田市、すさみ町などの自治体や紀の川サイクリングクラブなどの民間団体によるサイクリングイベントも活発に開催されるようになってきております。
 現在、県庁全体が一体となってさまざまな取り組みを進めておりますけれども、これらに加えて、コースの案内・サポート、レンタサイクルや宿泊施設の手配など、着地型商品の企画・運営を行うランドオペレーターを誘致することで、国内外からの新たな客層の獲得にも努めてまいりたいと思っております。
 今後も、和歌山県が日本のサイクリングの聖地と言ってもらえるように、こういった取り組みを着実に進めてまいりたいと思っております。
○副議長(岸本 健君) 濱口太史君。
  〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 皆様から御答弁をいただきました。
 本県におけるサイクリング事業は、ハイレベルなロードレースから、気軽に自然や食や観光資源をめぐるサイクリングまでとても幅広く、国内外の多くの皆さんに無限のパターンでサイクリングを楽しんでいただける「サイクリング王国わかやま」がますます発展する可能性を大いに感じました。
 そこで重要なことは、行政だけでなく、県内外のサイクリング関係団体や県民全体を巻き込んでいくことだと思います。それに、県民の間にもサイクリングが普及し、サイクリスト側の気持ちも理解していただくことにより、例えば、県内を訪れてくれた走行中のサイクリストに対し、地元ドライバーにも寛容な配慮をしてもらうといった思いやりの雰囲気も重要だと思いますので、きめ細かく、広く県民の意見も取り入れやすい環境も整えながら、取り組んでいただきたいと思います。
 以上、私の一般質問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○副議長(岸本 健君) 以上で、濱口太史君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後2時28分散会

このページの先頭へ