平成31年2月 和歌山県議会定例会会議録 第4号


平成31年2月 和歌山県議会定例会会議録

第4号(全文)


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平成31年2月
和歌山県議会定例会会議録
第4号
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議事日程 第4号
 平成31年2月21日(木曜日)
 午前10時開議
 第1 議案第1号から議案第17号まで、議案第34号から議案第84号まで、議案第86号から議案第88号まで及び議案第90号から議案第104号まで(質疑)
 第2 一般質問
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会議に付した事件
 第1 議案第1号から議案第17号まで、議案第34号から議案第84号まで、議案第86号から議案第88号まで及び議案第90号から議案第104号まで(質疑)
 第2 一般質問
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出席議員(40人)
 1番 中西峰雄
 2番 秋月史成
 3番 立谷誠一
 5番 前芝雅嗣
 6番 花田健吉
 7番 井出益弘
 8番 宇治田栄蔵
 9番 川畑哲哉
 10番 玉木久登
 11番 濱口太史
 12番 鈴木太雄
 13番 尾﨑太郎
 14番 藤山将材
 15番 尾崎要二
 16番 中村裕一
 17番 岩田弘彦
 18番 中本浩精
 19番 山本茂博
 20番 岸本 健
 21番 冨安民浩
 22番 吉井和視
 23番 堀 龍雄
 24番 中 拓哉
 25番 森 礼子
 26番 服部 一
 27番 谷 洋一
 28番 新島 雄
 29番 岩井弘次
 30番 多田純一
 31番 片桐章浩
 32番 藤本眞利子
 33番 浦口高典
 34番 山下直也
 35番 山田正彦
 36番 菅原博之
 37番 谷口和樹
 38番 奥村規子
 39番 雑賀光夫
 41番 坂本 登
 42番 長坂隆司
欠席議員(なし)
〔備考〕
 4番 欠員
 40番 欠員
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説明のため出席した者
 知事         仁坂吉伸
 副知事        下 宏
 知事室長       宮﨑 泉
 危機管理監      藤川 崇
 総務部長       田村一郎
 企画部長       田嶋久嗣
 環境生活部長     山田成紀
 福祉保健部長     山本等士
 商工観光労働部長   山西毅治
 農林水産部長     原 康雄
 県土整備部長     髙松 諭
 会計管理者      中西 淳
 教育長        宮下和己
 公安委員会委員    竹田純久
 警察本部長      檜垣重臣
 人事委員会委員長   平田健正
 代表監査委員     保田栄一
 選挙管理委員会委員長 小濱孝夫
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職務のため出席した事務局職員
 事務局長       田村公一
 次長         糸川 徹
 議事課長       松山 博
 議事課副課長     山田修平
 議事課議事班長    岸裏真延
 議事課主任      保田良春
 議事課主査      伊賀顕正
 議事課主事      浅田晃秀
 総務課長       田中健司
 政策調査課長     中平 博
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  午前10時0分開議
○議長(藤山将材君) これより本日の会議を開きます。
 日程第1、議案第1号から議案第17号まで、議案第34号から議案第84号まで、議案第86号から議案第88号まで及び議案第90号から議案第104号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第2、一般質問を行います。
 6番花田健吉君。
  〔花田健吉君、登壇〕(拍手)
○花田健吉君 おはようございます。
 議長にお許しをいただきましたので、一般質問をさせていただきます。
 いよいよこの議会で今期最後の議会となりました。気を引き締めて、県政が今抱えている重要課題について質問させていただきますので、よろしくお願いいたします。
 まず、企業誘致と紀州材の利用促進についてお尋ねをいたします。
 仁坂知事は、就任以来200社に及ぶ企業を誘致されてきました。まことに称賛に値するものだと深く敬意を表したいと思います。企業誘致により約2600名の新規雇用を生み出し、家族の人数を入れるとその3倍、4倍もの人口を県内につなぎとめたと考えられます。
 また、企業誘致により県内に投下された設備投資額は4000億に上るとお聞きいたしました。その中で要件を満たしたものについては、奨励金をそれに応じて支給されていると聞いています。
 建築材はもとより、公共事業等での紀州材の利用促進も重要な施策でありますが、企業誘致の際に、積極的に紀州材を御利用いただくよう進出企業にお願いすることも重要な政策だと考えます。
 そこで、知事の御見解をお伺いいたします。
 紀州材利用促進の観点から、今後進出される企業に紀州材のすばらしさをPRすることと、一定の紀州材を御利用いただいた企業には、別途、奨励金制度を検討してはいかがでしょうか。知事の御所見をお伺いいたします。
○議長(藤山将材君) ただいまの花田健吉君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 議員御指摘のとおり、企業が工場や事務所等を建設する際に紀州材を利用していただくことは需要拡大になりまして、林業の振興につながるというふうに考えております。
 県では、和歌山県木材利用方針を定め、低層の公共建築物は原則木造とするなど、県内公共施設の木造木質化を積極的に進めるとともに、民間のほうにつきましても建築士を対象に木造設計に関する研修講座を開催するなど、その木造化も促進している所存でございます。
 企業誘致につきましては、企業の本県への進出のインセンティブとなるように奨励金制度を設けております。地元雇用を促進する雇用奨励金、設備投資を支援する立地奨励金などがあり、企業ニーズに応じて対応しているところであります。
 議員御指摘の奨励金制度については、現行の制度でも投資額に対し、工場では10%、試験研究機関やオフィス施設では30%の立地奨励金が交付されておりまして、紀州材を利用してコストが上がった場合でも、その経費については交付の対象となります。
 今後は、本県に進出する企業に対しても、強度や色合いにすぐれた紀州材のすばらしさを記載したPRパンフレットなどを使用し、積極的に紀州材の利用を働きかけてまいりたいと思っております。
○議長(藤山将材君) 花田健吉君。
  〔花田健吉君、登壇〕
○花田健吉君 よろしくお願いします。紀州材の促進というのは、本当に和歌山県の中山間地域の循環型社会を構築する上で、どうしても紀州材の利用というのは必要になりますんで、いろんな場面、これは一例ですけども、あらゆる場面で紀州材を利用していただくように、県庁を挙げてPRをお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
 次に、私は、かねてから不登校児童生徒の学力をどのように確保していくかということを本議場で何度か質問させていただきました。
 義務教育は、国、地方自治体及び保護者に15歳以下の子供に教育の機会を保障するという制度であり、国家の根幹をなす制度であると理解しています。しかし、現在、小中学校に通えない長期欠席児童生徒が全国で約15万人いるという現実に対してどのように対応していくかということは、いまだ具体策は見えてきません。
 そこで、国は平成28年12月、議員立法で教育機会確保法を成立、29年2月完全施行され、義務教育下にある児童生徒の学力を確保するために学校以外での教育機会を確保する施策を国と自治体に責務と位置づけました。
 私は、かねてから和歌山県内の1000人近くの不登校児童生徒の学力をつけさせるための方策の必要性を訴えてまいりました。15歳の春、高校入学を目指し、不登校の生徒も受験に臨みます。しかし、希望の学校に進学することができているのか、また、入学しても勉強についていけるのかと心配しています。毎年、依然として300人を超える高校中途退学者もいます。
 そこで、教育長にお伺いいたします。教育機会確保法についてお尋ねをいたします。
 既に2年前に国会において議員立法で施行されている教育機会確保法の趣旨をどのように御理解されていますか。また、この法律の中で不登校という事実をどのように位置づけ、取り扱われるべきと述べられているか、教育長にお伺いをいたします。
○議長(藤山将材君) 教育長宮下和己君。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律、いわゆる教育機会確保法は、全ての児童生徒が安心して教育を受けることができる学校環境の確保、不登校児童生徒の支援、義務教育に相当する教育を受けていない人への教育機会の確保等、国や地方公共団体の責務として教育を受ける機会を確保することを定めたものであり、この趣旨を踏まえ、施策を講じることが大変重要であります。
 同法において、支援の対象となる不登校については、児童生徒が心理的な負担等によって、相当の期間、学校を欠席している状況にあるだけでなく、病気等によって出席できない場合も含まれております。
 本県における支援策としては、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、不登校児童生徒支援員の配置拡充、適応指導教室設置の促進等の取り組みを進めてまいりました。さらに、累計5日以上欠席した児童生徒について個人状況シートを作成し、その情報を教職員及び関係者が共有しながら、組織的に支援を行っているところです。
○議長(藤山将材君) 花田健吉君。
  〔花田健吉君、登壇〕
○花田健吉君 不登校というと、通常、学校へ通われてる児童生徒と不登校児童生徒と今まで分けて考えて、不登校児童生徒のほうに対しての扱いというんですか、それは特殊な事例というふうな形で扱ってたような気がします。
 ただ、この機会確保法では、それは、もうこれだけ全国にも学校に行けない子供たちもたくさんいてるということで、これは特例ではなくて、これも常態の状況であって、この子供たちにいかに義務教育をつけさせるかということを議論したのが、この教育機会確保法の僕は趣旨だというように理解してるんです。
 ですから、教育基本法に言われてる社会性をつけるとか豊かな人間性を育むとかというのも、これはもう本当に大事なことなんですけども、まず、その子供たちは学校へ現実として行けない子がいてるわけですから、その子供たちに15歳の春とか、また、中学校2年から中学校3年に上がるときに学校へ行きたいと思ったときに、そのときに同級生と同じレベルの学力がついてるかどうかで随分状況が変わってくると思うんですよね。
 そういう意味からして、不登校になってる子供たち、引きこもってる子供たちにも、やはり同じ教育を提供するということがこの法律の私は根底に流れる趣旨だと思いますので。そしてまた、この15万人と言われてる、これがずうっとエスカレーターで上がったみたいにどんどんどんどん下からついてくるわけですから、この15歳の子が10年たって25になったときに、じゃ、家から出れてるのかというときに、それも出てないという状況も現実としてあるわけですから、やはりこの義務教育下において、日本国に生まれた最低限の教育を受ける機会を確保して、そして、その子たちに教育をつけるということは、これは国、地方自治、そして我々大人の責任であると思いますんで、よろしくお願いしたいと思います。
 次に、この法律の趣旨は、市町村の教育委員会及び教職員や保護者、特に不登校児童生徒の保護者に周知されていますか。教育長にお尋ねをいたします。
○議長(藤山将材君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 教育機会確保法につきましては、平成28年12月に公布され、県教育委員会では、各市町村教育委員会及び全ての公立学校に周知するとともに、同法の趣旨にのっとり、適応指導教室や家庭等での学習支援など、不登校児童生徒一人一人の状況に応じた支援に取り組むよう指導してまいりました。
 また、同法では、児童生徒や保護者に対して、個々の状況に応じた学習ができるよう必要な情報提供及び助言等を行うこととされていることから、県教育委員会では、適応指導教室の活用や不登校児童生徒支援員による学習支援などの不登校支援策等について、市町村教育委員会とともに周知に努めているところです。
○議長(藤山将材君) 花田健吉君。
  〔花田健吉君、登壇〕
○花田健吉君 よろしくお願いいたします。
 次に、来年度予算に計上されている、不登校児童生徒の学校復帰と進路選択の基礎となる学力が身につくようICTを活用するとありますが、私はかねてから、義務教育においても発達したインターネット技術を通信教育に活用することにより、不登校児童生徒の学力を確保することができるのではないかと問題提起をいたしました。
 しかし、文科省の見解で、社会性や豊かな人間性を育むということが大切であるとあり、現段階では自宅での通信教育は困難であるとの御見解でした。
 社会性や豊かな人間性を育むということは当然大切ですが、不登校児童生徒に登校させることに主眼を置くことよりも、日々おくれていく学力を担保し、本人が学校に行く気になったときや高校進学時に通学生徒と学力差ができるだけ生じないようにしなければ、登校する気になった児童生徒も再び引きこもってしまう要因になるのではと考えます。
 知事も、不登校問題は、私の前の議会の質問のときに、一番大事な問題と御答弁されており、その緊急性、重要性を御認識いただいていると思いますが、現状、現場の一教師に不登校生徒のケアと学力保障の責任を負わすのは時間的にも精神的にも無理があります。
 そこで、教育長にお尋ねいたします。
 不登校児童生徒の学習方法について、切り離して考えるべきと考えます。また、あらゆる教育確保の選択肢を排除すべきではないと考えますが、来年度予算で計上され、教育委員会が提案されているICTを活用した学習支援とはどのようなことをなさるのか、お答えください。
○議長(藤山将材君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) ICTを活用した学習支援につきましては、不登校を含む長期欠席の児童生徒が、学力を身につけ、学校復帰とその後の進路選択の基盤となるよう実施いたします。
 具体的な取り組みといたしましては、長期欠席児童生徒や適応指導教室等に通う児童生徒が、学習支援ソフトを活用し、それぞれの習熟度に応じて自学自習を行えるように支援いたします。そして、適応指導教室を設置する市町村に訪問支援員を配置し、児童生徒の自宅で相談活動や学習支援を行いながら、まず、適応指導教室に通えるよう支援を行い、学校復帰につなげるようにしたいと考えております。
 今後とも、市町村教育委員会と一体となって、不登校児童生徒の学習支援と学校復帰に向けて取り組みを進めてまいります。
○議長(藤山将材君) 花田健吉君。
  〔花田健吉君、登壇〕
○花田健吉君 不登校の児童生徒というのは、本人が望んでそういう状況になってるんではないと思うんですよね。本人もやっぱりみんなと一緒に勉強したい、学校へ行きたいという気持ちもあって、でも行けないという、そういう状況で、いろんな方が、スクールカウンセラーとかケースワーカーの人が、また学校の先生が行って、本人を学校へ通わせることが、一概に果たしていいかどうかということも議論すべきときに来てるんではないかと。
 そのときに、私は、やっぱり無理に学校へ連れ出すというよりも、まず学力をつけさせて自信をつけさせて、そしてその方法として、高校では通信教育というのをやってるわけですから、義務教育下の中学生でも通信教育、また、こんだけ発達してるインターネットの時代ですから、双方向性の──今までやったら郵便で課題が送られてきて、それを自分が答えて、それをまた送り返すというような、そんな通信ではなくて、本当にリアルタイムで、普通のクラスが一つバーチャルクラスがあって、そこに家庭のパソコンと教室がインターネットでつながれてて、先生と相互に質問したり、またその質問に答えたりという。
 そのクラスが、インターネットでつないでるわけですから、極端な話、橋本の行けない子と北山村の行けない子が一つのクラスを編成するということも、これインターネットにつないだら可能だと思うんですよね。まして、この和歌山というのは、そういう容量というか、光ファイバーでつながってると、その容量自体は随分あきがあるエリアなんで、そういうことも可能じゃないかということを前々から私は申し上げてきました。
 ICTの今回のこの試みというのは、それに準ずるというか、その前段階かもしれませんけども、大変私は期待しておりますので、教育委員会のさらなる不登校児童生徒に対する学力をつけさせるということに対して、よろしくお願いします。
 次に移ります。次に、中途退学と転校制度についてお尋ねをいたします。
 現状、高校生の中途退学者の退学理由にはそれぞれの事情があると承知しております。中途退学者をすぐになくすことは至難のわざでしょう。しかし、できる限り、せっかく自分の意思で高校に進学したのですから、何とか卒業できるようにサポートできないのか。当選以来、私の長い間の思いでありました。
 このことについて何度も質問させていただきましたが、近年、教育委員会の御尽力もあり、約500人で推移していた高校の中途退学者が、最近300人台まで減少してきているとお聞きいたしております。今日までの教育長並びに教育委員会の皆さんの御尽力に心から敬意を表するものであります。しかし、依然として一つの高校の1学年分以上の生徒が毎年退学しているという現実も見過ごすわけにはまいりません。
 そこで、教育長にお尋ねをいたします。
 近年、高校中途退学者が減少した理由をお答えください。また、中途退学者の学年別、そして、その理由等、分析されていると思いますが、お聞かせをください。
○議長(藤山将材君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 公立高校の中途退学者数は、平成26年度までは500人前後、中退率は約2.0%でしたが、平成29年度までの3年間は300人台、約1.5%に減少しております。平成29年度は396人であり、紀の川高校の閉校により通信制課程で50人以上の生徒が伊都中央高校へ転学せずに退学したため、その分増加してございます。学年別では、1年生が約6割、2年生が約3割、3年生が約1割であり、例年ほぼ同じ割合です。
 中途退学の主な理由といたしましては、「学校生活や学業への不適応」と「進路変更」が3学年を通じて多く挙げられております。1年生では「学校生活や学業への不適応」が最も多く、目的意識が低い生徒が、単位取得や進級等、中学校までにはなかった学校のシステムへ適応できないことや、新たな環境になじめないことから中途退学となっていることが多いと捉えてございます。
 県教育委員会といたしましては、多様な課題を持つ生徒が安心して学校生活を送れるよう、入学後の早い段階から、より丁寧な対応や支援を行うよう各高校を指導してございます。例えば、学校生活等への不適応から問題行動を起こす生徒もいますが、自宅謹慎をできる限り登校指導に変え、その中で学習に取り組ませ、円滑に学校生活に戻れるようにしております。
 また、希望する全ての県立高校にスクールカウンセラーを配置するとともに、スクールソーシャルワーカーの配置を今年度は9校に拡充し、福祉機関等とも連携して支援できるようにしてございます。各高校では、こうした専門家や関係機関等の協力も得ながら、より丁寧に対応することで中途退学の防止につなげているところであり、今後もこうした取り組みをさらに徹底してまいります。
○議長(藤山将材君) 花田健吉君。
  〔花田健吉君、登壇〕
○花田健吉君 次に、中途退学の理由は本人の学力不足、また病気、不良事案等いたし方ない場合もありますが、友人関係やクラブの関係などの人間関係のトラブルで退学を余儀なくされているケースもあると思います。そんな生徒がいるとすれば、転校し、環境を変えるという選択肢を持つことで、中途退学を防げるケースもあるのではと考えます。
 学力や構成単位の問題があるとかつてお聞きいたしましたが、各県立高校で全く異なる勉強をしているわけでもなく、一家転居のようなやむを得ない場合は転校できるのですから、一概に前記の理由も当たらないのではないかと考えます。
 高校を中途退学するということは、その生徒のその後の人生に大変大きな影響を与えることは言うまでもありません。私は、保護者の方から中途退学の御相談があるたびに、もっと臨機応変に対応できないのかと常々考えていました。近年、県立高校間の転校については、以前に比べ柔軟に対応していただいているとお聞きいたしておりますが、現在どのような対応をされているのか、学びたいけれども、やむを得ない理由で学校に通いづらくなっている生徒については臨機応変な対応をお願いしたいと思うのですが、現在の転入学の受け入れ状況を教育長にお伺いをいたします。
○議長(藤山将材君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 県立高等学校における平成29年度の転入学の受け入れ人数は、全日制課程で4人、定時制課程で30人、通信制課程で159人の計193人となっております。ここ数年、毎年200人弱で推移してございます。
 各高等学校では、個別の状況を丁寧に聞き取り、転入学の受け入れを判断しているところでございます。
○議長(藤山将材君) 花田健吉君。
  〔花田健吉君、登壇〕
○花田健吉君 第1問のように、せっかく高校へ入学したんですから、本人も、義務教育ではない、高校というのは本人の意思で進学したわけですから、どういう状況であっても、学校がまず退学しないように本人または保護者にお話しいただいてるという、その成果が500人が300人に減ってきたということなんです。それはもう私、大変認めておりますし、また、今の転校制度を少し柔軟に、弾力的にすることによって、さらにまた別の学校でということでやり直すことも可能だと思いますので、次の質問でも申し上げますが、よろしくお願いしたいと思います。
 和歌山県は、県内で学区制をしいていないのですから、入学時は県内どこに住んでいても県内の県立高校を受験できるのに、一度入学してしまうと、一家転居ややむを得ない理由等がないと県立高校の間で転校はできません。
 私は、旧美山村に生まれましたので、高校に通学することが遠距離のため困難であり、15歳から下宿をいたしました。私以外にも両親と離れて暮らす生徒は、当時珍しくありませんでした。そのことから考えると、現在は交通の便も飛躍的に利便性が向上しています。転校しても家族と離れて学校に通わなくてもいいかもしれません。また、離れて暮らすことになっても、スポーツ進学した生徒や私立の高校に進学するため寮生活やアパートでのひとり暮らしをしている生徒もおられるわけで、特異なケースとは考えられません。
 先ほども述べたように、高校を卒業するか中途退学するかでは、生徒のその後の人生に大きな影響を与えることは言うまでもありません。
 来年度の新規事業に、社会人を対象とした学び直し講座を開設し、年齢、国籍に関係なく学べる機会を提供する予算も計上されていますが、それ以前に、せっかく進学した高校を中途退学しないよう教育委員会の臨機応変な対応を求めたいと思います。人生の大きな岐路に関する重要な問題です。私は、県立高校の間での転校をある一定の規則のもと制度化することも必要ではないかと考えます。無制限に転校を認めろとは言いませんが、ある一定の条件下で学校長の判断により対応することにすれば、相当数の生徒が中途退学しないで新たな県立高校を卒業できるのではないかと考えます。
 そこで、転入学を希望する生徒への対応について、教育長のお考えをお伺いいたします。
○議長(藤山将材君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 子供たちが、さまざまな理由で現在通っている学校での学習が困難になり、他校での学習を希望する場合、中途退学することなく転入学ができる環境を整えることが、学習機会の確保という点で重要なことであると考えてございます。
 現在、転入学につきましては、県立高等学校で弾力的に対応しているところです。一家転住だけでなく、いじめ等の人間関係などが原因で進路変更を望む生徒につきましては、個々の生徒の状況を勘案しながら、教育課程上の単位を読みかえるなどして転入学を受け入れてございます。
 とりわけ、定時制、通信制の両課程を併設する県立高等学校3校では、転入学や編入学の生徒のために枠を確保してございます。また、この3拠点校を初め、定時制課程を置く県立高等学校では、転入学の受け入れ時期を拡大するなど、学びたい生徒をできるだけ柔軟に受け入れる体制を整えてございます。
 さらに、新たな取り組みとして、今定例会にお願いしてございます学びのセーフティネット事業では、全日制、定時制課程の高等学校に在籍する不登校の生徒が、その学校に籍を置いたまま通信制課程の高等学校で科目を履修し、修得した単位を在籍校で認定できるよう規則を改正して進級や卒業につなげられるようにしたいと考えてございます。
 今後も、生徒の学習機会を確保し、中途退学の防止に努めてまいります。
○議長(藤山将材君) 花田健吉君。
  〔花田健吉君、登壇〕
○花田健吉君 今の現代の社会で、高校の卒業の認定を受けていないということが、その後のいろんな社会に出ての資格とか取得する場合に大変厳しい状況にある。普通、中卒になるわけですから、現場で3年の経験がないとこの資格試験は受けられませんよとかという、そういう制度があるんですけども、それにしても3年の実務経験が必要だということのような、そんな社会の中で、やはりせっかく入学した高校をきちっと卒業するということが、その本人にとって社会に出たときにどれだけのプラスになるかということも重く受けとめていただいて、できる限り高校に進学した子供たちは、せっかく──さっき1年、2年、3年とお聞きしたのはそういうことなんですよね。1年のときの退学理由と2年、3年の退学理由というのは、随分異なってくると思うんです。ですから、せっかく3年の夏休みまで在籍したんだけど、そこで人間関係がおかしくなっちゃって学校へ行けなくなったと。あと半年で卒業できたのにというケースも私は聞いたことがあります。
 ですから、僕なんか第三者で、じゃ、転校できればええのにというふうに簡単に思うんですけども、学校現場ではなかなかそういう状況でも簡単な事案ではないように聞いてるんですけども、第一番は、やはりせっかく高校3年の夏まで通って単位も取ってきて、単位や出席日数も足りてて、突然そういう人間関係がおかしくなって行けなくなって、それでもう退学になって中卒まで戻っちゃうという、これはやっぱり幾ら何でもというところがありますんで、今臨機応変に、また、そういうことを考えながら、勘案して転校制度も弾力的に活用していただけるという御答弁でしたので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
 次に、高齢化する障害者の施策についてお尋ねをいたします。
 近年、医療の進歩により障害者の方も長寿化が進み、大変結構なことであります。しかし、健常者の皆さんと同じように高齢化による諸問題もあわせて対応が必要となってまいりました。
 障害者の暮らしの状況はそれぞれ異なっています。施設に永住されている方、グループホームで共同生活をされている方、自宅で御家族と暮らしている方とさまざまです。
 まず、施設で生活されている方は、高齢になっても環境が大きく変化しませんから、比較的安定した老後を送ることができますが、施設の管理者からすれば、新規にその施設を利用したいという方の定員を固定化することになり、硬直化することになり、事実上受け入れるニーズに応えられないというジレンマにもつながります。
 また、グループホームで共同生活をされている方は、高齢化により肢体不自由になり介護が必要になったとき、一般の特別養護老人ホームに入所できるのか心配です。また、入所できたとしても障害福祉サービスと介護保険との間の負担額がふえるのではと不安になります。高齢化することにより、より多くのサービスの提供を必要としているにもかかわらず、思ったサービスが受けられなくなったということにもなりかねません。
 そこで、まず最初に、65歳になる5年以内に障害者認定されていない場合、65歳になると提供されるサービスの負担額が異なるという制度があり、私には理解はできません。法のもとに平等が原則であると考えますが、同じ障害者でありながら不平等と感じています。この制度の要件について、福祉保健部長にお伺いをいたします。
○議長(藤山将材君) 福祉保健部長山本等士君。
  〔山本等士君、登壇〕
○福祉保健部長(山本等士君) 障害福祉サービスと介護保険との関係について申し上げますと、ホームヘルプ、デイサービス、ショートステイのいずれかの障害福祉サービスを受けている方が65歳になれば、介護保険制度の適用を受け、1割の利用者負担が生じることとなります。
 そのため、長期間にわたり当該障害福祉サービスを利用してきた低所得者が、新たな利用者負担の発生により支障を来すことなく日常生活を送ることができるよう、今年度から一定の所得制限のもと、介護保険サービスの利用者負担を全額公費で負担する制度が創設されたところです。
 この制度は、介護保険サービスを利用する全ての高齢者が一定の利用者負担をしていることとの公平性に鑑み、当該障害福祉サービスの利用が日常生活の一部となっている低所得者の生活の維持を目的としていることから、次の四つの要件を全て満たす方を対象としております。
 まず、一つ目は、65歳に達する日までの5年間、引き続きホームヘルプ、デイサービス、ショートステイのいずれかの障害福祉サービスの支給決定を受けていたこと、二つ目は、利用者とその配偶者が市町村民税非課税者または生活保護受給者であること、三つ目は、65歳に達する日の前日において障害支援区分が区分2以上であったこと、四つ目は、65歳に達するまでに介護保険法による保険給付を受けていないことです。
○議長(藤山将材君) 花田健吉君。
  〔花田健吉君、登壇〕
○花田健吉君 今の御説明を聞いても、私にはますます理解ができなくなりました。
 単純に低所得、所得の問題とか環境の問題とかいろいろあるんですけども、僕は根本的に5年以上、つまり65歳とすれば60歳以前に障害者になってなければ、この65歳になったときのサービスに格差が生じると。63歳のときに交通事故で半身不随になりましたと、あなたは5年間、そういうサービスを利用してないので、65歳からは一般の介護サービスであって、障害のそういう四つのあれは割り増しですよと。受けてもいいんですけども自己負担額が違いますよというのは、これどう考えても僕は理解できない。この法律がちょっとおかしいん違うんかなと。法律がある以上、市町村もまた現場もその法律に従ってやっていかなくてはならないというのは、それはそのとおりですけども、じゃあそもそもこの法律がおかしいんじゃないかと僕は思うんですよね。
 63歳まで一生懸命お元気で働かれてて納税されていて、ある日突然交通事故でそういう状況になったと。隣の人も10年前に交通事故で同じような状況だと。その人は10年前からそのサービスを受けてるので、65歳になっても引き続きそのサービスはその自己負担で受けられると。しかし、私は63歳まで一生懸命働いてて納税もしながら、63歳でそういうことになったと。なったんで収入がなくなったんで、低所得者になりましたと。所得がなくなるわけですから、会社でとかそういう働く状況でなくなったと、自営業の人でもそうですけども。そうなったときに、65歳になったときに、あなたは症状が固定してから5年以上たっていないので、あなたはこのサービスには自己負担額が少し高いですよ。隣の人は10年前から受けてたんで自己負担額は自分より安いんかいと、単純に疑問に思うんですよね、これ。この法律自体これは不備やと思うんで、一度知事もこれ、よく、ちょっと一回考えていただいて、厚労省というのは机の上だけで仕事をしてるというようなことは私は申し上げませんけども、これ現場に全然即してない、おかしいじゃないかと私は思います。
 やはり同じ障害を持った人は、その持った時期にかかわらず、やはり65歳になっても所得が低い方は同じサービスを同じ負担額で受けられるべきだというように私は思いますので、知事も一度これは御検討いただいて、国のほうにも機会があれば申し上げていただきたいということを要望しておきます。
 次に、私の地元の由良あかつき園の施設でも高齢化が進んでいます。そのような施設には利用者の定員が定められていますから、入所者の高齢化は新たな入所希望者の申し込みを受けることができなくなります。グループホーム化である程度しのいでいますが、限界があると思います。しかし、グループホームで共同生活をされている方もいずれは高齢化します。この方々が65歳を超え介護が必要になったとき、一般の特別養護老人ホームに入所できるのかが心配です。将来的には、障害者の方々のための特別養護老人ホームも必要になってくるのではと考えます。
 このような障害者の施設の定員が硬直化することや、障害者が高齢化することにより、施設やグループホームを利用している重度の障害者が介護を必要になったときにどうするのか、福祉保健部長にお尋ねをいたします。
○議長(藤山将材君) 福祉保健部長。
  〔山本等士君、登壇〕
○福祉保健部長(山本等士君) 地域での生活が困難になった重度の障害者については、障害者支援施設で入所することになりますが、議員御指摘のとおり、入所者の高齢化に伴い、介護が必要となる方の増加や障害の重度化のため退所できる方の減少により施設の空床が少ないのが現状です。
 こうした中、特別養護老人ホームについては、現在入所待ちの待機者がおられますが、原則65歳以上で要介護3以上の方であれば、障害のあるなしにかかわらず入所申し込みをすることができ、申し込みを受けた施設においては、申込者の要介護度等を勘案した上で、必要性が高い方を優先的に入所決定することとしております。
 なお、これまで比較的軽度の方を対象としていた障害者グループホームにつきましては、今年度から新たなサービス提供形態として、24時間対応の職員体制とする日中サービス支援型共同生活援助事業が創設され、重度障害者の受け入れも可能となったところです。
 県としましては、重度障害者の受け入れを進めるため、本事業の周知と活用を県内の事業者に対して積極的に働きかけてきたところ、本年4月に新宮市において日中サービス支援型のグループホームが開設されることとなりました。
 今後とも、重度障害者が安心して暮らすことができるよう、引き続き日中サービス支援型のグループホームの県内全圏域での整備に向けて精力的に取り組んでまいります。
○議長(藤山将材君) 花田健吉君。
  〔花田健吉君、登壇〕
○花田健吉君 今の問題で、前々から考えているというか、私の中でおかしいな、これというのもありました。私がさっき申し上げたように、地元にあかつき園という大きな和歌山県の福祉事業団が運営されてる施設があるんですけども、あそこも定員があるんじゃないですかといって聞くと、それは当然ありますよね。消防法とかいろんな法律上、これ以上入れられないという定員はあるはずなんですよね。でも、そこはどんどんどんどん高齢化していることも事実で、でも、その方々はその中に入ってるから比較的安心なんですよね。出口はそやから安心なんですけども、入り口は細くなってしまってる、それで。
 県内でどうしても家庭でいられないという、そういう施設を利用したいとやむにやまれぬ家庭もいらっしゃると思うんですけども、その方があかつき園に入所希望を申し込んでも、いや、うちは今定員がいっぱいなんですということで、これが今、入所されてる方が高齢化すればするほどこの入り口が狭くなっていくという、こういう状況にあると思うんですよね。
 そこで、軽度な障害の方にできるだけまちで暮らしていただくグループホームというのも、事業団では進めているというふうに私は聞いてるんですけども、それでもまた限界がある。なぜなら、その人も高齢化していく。一般の家庭で住んでるお年寄りと、グループホームでお年を召していく障害者の方も、状況は同じなんですよね。だから、足腰が弱って要介護3以上になって、それで特別養護老人ホームに入所したいという希望を持たれても、今言うたように、実際、特別養護老人ホームの今の入所状況というのは、もうたくさんの人が利用をお待ちいただいてるというような状況の中で、果たして受け手側の施設が、そういう重度の障害をお持ちの方に自分の特養へ入所していただいて、それに見合うサービスが提供できるのかという入所側の不安もあると思うんですよね。
 だから、やはり僕は思うんやけども、そういう障害者の方々というのはそれぞれの障害によって異なる状況にありますんで、それはやっぱりかなりプロフェッショナルというか、介護するほうもプロのあれが必要やと思うんですよね。そういうことからすれば、障害者用に、ゴールドプランとは別に、障害者のゴールドプランの特別養護老人ホームを創設するような、そんな枠があってもいいのではないかというように前々から考えてました。
 ですから、今、グループホームの24時間体制でそういうことをやっていく国の制度もできたと、それで新宮市にことし、今つくってますよね。ですから、これを全県に広げて、そういう重度の障害者の高齢化対応に充てたいという御答弁でしたけども、それはそれで私は評価しますけども、もう一歩進んで、今言う、そういう施設の定員の固定化と、入り口と出口と一緒になってるわけですから、今のグループホームのやつを解決しても、こっちの定員の硬直化は解決できないわけですから、やはりそういう意味で、重度の障害者の方の特別養護老人ホームも制度によって必要ではないかということを再度申し上げまして、質問を終わらせていただきたいと思います。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(藤山将材君) 以上で、花田健吉君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 30番多田純一君。
  〔多田純一君、登壇〕(拍手)
○多田純一君 おはようございます。
 議長のお許しを得ましたので、一般質問を行います。
 まず1点目、岩橋千塚古墳群紀伊風土記の丘について、初めに、考古博物館建設計画についてお伺いいたします。
 平成23年、紀伊風土記の丘開館40周年記念の特別展「大王の埴輪・紀氏の埴輪─今城塚と岩橋千塚─」という企画展が、平成28年には、天王塚古墳が特別史跡に追加されたことや大日山35号墳出土品が重要文化財に指定されたことを記念した「岩橋千塚とその時代─紀の川流域の古墳文化─」特別展が開催され、大勢の方が参加され、岩橋千塚が築かれた歴史的背景を堪能されたと思います。
 大阪府高槻市にある今城塚古墳、ここは継体天皇陵とされ、出土品などからも有力視されております。大和朝廷時代の第26代天皇とみなされております。風土記の丘、岩橋地域を治めた者がその朝廷の軍事部門の有力豪族の1人として活躍し、大国和歌山を治め、生産力を維持するため豊かな森林で船をつくり、紀の川を利用し、海上交通の要衝として紀の川河口のこの地に君臨し、紀伊水道や瀬戸内、太平洋などにも進出していたのではないかと想像をかき立てます。
 継体天皇陵との関係について、理由の一つとして、大日山35号墳から出土した高さ130センチを超える家形埴輪です。県内最大の大きさで全国でも5指に入る高さの家形埴輪。これが大王墓と考えられている高槻市の今城塚古墳の家形埴輪と類似する方法で製作されていることが挙げられております。
 二つ目として、家形埴輪は、上部の屋根、中央の屋根と壁、下部の円柱の三つに分割して製作されております。円柱を持ち3分割で製作された大型の家形埴輪で全体が復元されているものは、今城塚古墳に次いで全国2カ所目となっております。
 この大日山35号墳は、全長105メーター、県内最大級の6世紀前半の前方後円墳。東西の造り出しから出土した埴輪が平成28年に重要文化財に指定された翼を広げた鳥形埴輪、両面人物埴輪などで、ここ大日山35号墳からしか発掘されておりません。全国初の埴輪と言えます。和歌山のルーツを探る貴重な文化財と言えると考えております。
 このような貴重な文化財にふさわしい考古博物館構想を平成28年9月議会で取り上げ、このたび、念願かなって、平成31年度当初予算案に考古博物館土地購入関係費として約2億9800万円が上程されました。建設計画に向け、大きく踏み出していただいたと考えております。
 改めて、考古博物館計画における知事のお考えをお聞きいたします。
○議長(藤山将材君) ただいまの多田純一君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 岩橋千塚古墳群は、和歌山市岩橋丘陵周辺に築かれた特別史跡に指定されている国内最大規模の古墳群で、重要文化財に指定された翼を広げた鳥形埴輪、両面人物埴輪など、本県の古墳文化を知る上で貴重な資料が数多く出土しております。
 これらを含めて展示している紀伊風土記の丘資料館は、昭和46年8月に開館以来約50年近くが経過し、施設の老朽化、収蔵スペースや研究設備の不足など、多くの課題を抱えております。このため、紀伊風土記の丘資料館を再編し、古墳文化や考古学、民俗学の県内の研究拠点としてふさわしい展示、保存、研究機能を有する考古学民俗博物館に整備することにしております。
 再編に当たり、現在の資料館は松下幸之助氏の寄附によるもので、歴史的建造物として文化財的価値もあることから、民俗学の資料館として保存、活用するとともに、新たに古墳文化や考古学に関する博物館の部分を建設する必要があると考えております。
 ただ、特別史跡の指定地内に新たに建物を建設することができないということでございますので、近隣住民の皆様方の御協力を得て建設用地の先行取得を進めることとし、必要となる経費について、31年度当初予算案に盛り込ましていただいておるところでございます。
○議長(藤山将材君) 多田純一君。
  〔多田純一君、登壇〕
○多田純一君 ありがとうございます。
 全国の考古博物館は、国、都道府県、市町村及び民間のものも入れますと約80館以上あるようですが、国や都道府県の考古名を冠する博物館は橿原考古学研究所附属博物館や宮崎県立西都原考古博物館など、現在6館しか存在しません。フィールドミュージアムの機能を持ち、かつ最新の収蔵、展示設備を有する博物館として和歌山県内の考古学や研究、学習の一大拠点として大いに期待をしたいと思います。
 続いての質問に移らせていただきます。航空レーザー調査の成果と今後の特別史跡への追加計画についてお伺いいたします。
 現在、最も古墳が密集している約62万平米の範囲が特別史跡に指定されております。この指定地の周辺には、重要な価値を持つと考えられるものの、いまだ指定を受けていない古墳が存在しております。
 このため、県では指定地外の古墳の分布状況を把握することを目的に、平成29年度から2カ年計画で航空レーザーによる地形測量を行っています。発掘調査が完全に行われているとは言い切れません。
 そこで、航空レーザー測量の結果、それを分析して新たに判明したことや、測量だけでなく実際に再度調査をしなければならないなどの発見について、どのような分析結果になったのか、また今後の特別史跡への追加計画について、教育長にお尋ねいたします。
○議長(藤山将材君) 教育長宮下和己君。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 古墳群の航空レーザー測量調査を平成29、30年度の2カ年で特別史跡周辺の約500ヘクタールを対象に実施いたしました。
 その結果として、従来の測量図よりもより精密に古墳群の分布及び立地状況や土地の改変等が明瞭に可視化できるようになり、追加指定に向けて重要な情報を得ることができました。また、今まで未確認であった古墳が発見できる可能性もございます。
 今後、この測量成果をもとに現地調査を行った上で、新たな古墳の発見とさらなる特別史跡への追加指定を目指してまいります。また、重要な地域につきましては、土地を取得して保存してまいりたいと考えてございます。
○議長(藤山将材君) 多田純一君。
  〔多田純一君、登壇〕
○多田純一君 古墳群の精緻で重要な情報を得ることができたことがわかりました。実際に現地調査を行い、必要に応じて追加指定も必要になると思われます。
 岩橋千塚古墳群の調査の歴史は長く、明治期の大野雲外による調査は、明治44年にN・G・マンローの著作「Prehistoric Japan」で広く海外に紹介されております。大正期、昭和と史跡調査も続けられ、平成の御代も終わろうとしている現在、約1500年前の紀氏の奥津城の姿が明らかにされつつあります。
 忘れてはならないのが地元の方、今日では岩橋千塚を守る会の方々だと思います。登山道の整備や天王塚古墳を特別史跡にと1万人以上の署名を集めるなど、大変御苦労をしてこられております。この会の前会長・鴨口正紀氏は「千古の夢」、この本がそうですけども(現物を示す)、千塚古墳の歴史的価値を大作にまとめて出版されておられます。
 こういう方々に守られて千塚古墳は支えられて、和歌山の重要な文化財として和歌山の誇りになっております。ぜひ、和歌山が誇る特別史跡として整備を進め、全国、いや世界にも発信していただきますよう要望いたします。
 この質問の3点目に入ります。国際博物館会議京都大会(ICOM KYOTO 2019)についてお尋ねをいたします。
 3年に一度のICOM大会が、ことし日本で初めて京都で開催されます。9月1日から1週間開催されることが決定しております。ICOMとは国際博物館会議で、世界141の国と地域から3000人を超える博物館専門家が集まる大会だそうです。大会のプログラムを拝見しました。基調講演やパネルディスカッション等の後、オフサイトミーティングやエクスカーション等が予定されております。
 昨年、議会の中で、「県教育委員会として、現地研修先として選定いただき、本県の魅力を発信できるよう提案してまいります」とお答えになっていましたが、国際博物館会議京都大会参加者の和歌山県への視察について、教育長にお尋ねいたします。
○議長(藤山将材君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 国際博物館会議京都大会期間中の9月5日に、オフサイトミーティングという公式プログラムにおきまして、30ある国際委員会のうち、教育・文化活動国際委員会のメンバーが100名から150名程度来県することで調整が進められてございます。
 現在の予定では、県立博物館施設4館が協力して対応することとしており、まず、紀伊風土記の丘の視察におきまして、国内最大規模の特別史跡岩橋千塚古墳群のすばらしさをPRしたいと考えてございます。
 その後、近代美術館及び博物館で、博物館が和歌山工業高校や和歌山盲学校などと連携した「さわれるレプリカ」、「さわって読む図録」の取り組みとともに、近代美術館、紀伊風土記の丘、自然博物館の教育普及活動について発表することとしてございます。
 あわせて、「世界津波の日」高校生サミットにつきまして、串本古座高校、耐久高校の生徒から報告してもらう予定となってございます。
 また、国際博物館会議京都大会の本会場である国立京都国際会館にブースを設けまして、「さわれるレプリカ」、「さわって読む図録」等の取り組みを広く発信するよう進めております。
○議長(藤山将材君) 多田純一君。
  〔多田純一君、登壇〕
○多田純一君 紀伊風土記の丘も視察をしていただけるという、そういうお話でございます。岩橋千塚古墳群、紀伊風土記の丘の魅力を世界の博物館関係者に発信する絶好の機会だと思います。子供たちとの交流も期待をしております。
 次に、人を育む施策についてお伺いをしたいと思います。
 まず、子供の学力、体力向上に向けて。
 全国学力・学習状況調査は、平成19年4月、日本全国小学校、中学校のそれぞれ最高学年で全員を対象に毎年行われてきております。また、平成20年度より、日本全国の小学5年生、中学2年生全員を対象として全国体力・運動能力、運動習慣等調査も行われてきております。一般には全国体力テスト、全国運動テストとも呼ばれております。
 平成19年4月に行われた全国学力・学習状況調査の結果に基づき、和歌山県では検証改善委員会を設置し、さまざまな分析を行っています。その当時の結果は、小学校国語や算数、そして中学校国語、数学で全国平均に到達している学校の割合は4割を下回っており、中には2割になっている科目もありました。
 検証改善委員会では、日常の生活態度でのクロス分析も行っており、学力の中身を明確にした授業改善と学校経営の充実を実現させるために、一つ目は、学校経営の観点から学力向上を捉え、学習環境を整える、二つ目は、各学校の責任を果たすための基本的分析を行う、三つ目は、向上させたい学力の中身を明確にした授業改善を行うなど、八つの提言をまとめて取り組みを進めてきたと伺っております。
 その後、平成21年からは、教育振興に関する施策の総合的、計画的な推進を図るため、和歌山県教育振興基本計画を策定し、確かな学力の向上や健やかな体力づくりに向けて施策を進めてきており、現在は第3期和歌山県教育振興基本計画に取り組んでおられます。
 また、平成29年度に策定した10年後の未来を展望した和歌山県長期総合計画では、学力や体力の全国調査において全国上位を目指すということにしておられます。
 この12年間の取り組みで、教育立県和歌山にふさわしい和歌山になってきているのでしょうか。これまでの学力や体力向上の取り組みについて、成果と課題についてどのようにお考えか、教育長にお尋ねいたします。
○議長(藤山将材君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 学力向上につきましては、和歌山の授業づくり基礎・基本3か条の徹底や、県学習到達度調査の実施、家庭学習で使える国語と理科のマスター問題集の徹底活用等を進めてまいりました。また、学力向上に成果を上げている福井県や秋田県に教頭や教員を派遣し、学んできたことの成果の普及を図るとともに、すぐれた教育実践力を持つ退職教員を学校に派遣し、授業改善への指導を行ってまいりました。さらに、市町村教育委員会や各学校におきましても、それぞれの課題克服に向けて独自の取り組みを進めております。
 こうした取り組みにより、今年度の全国学力・学習状況調査の結果は、小学校において国語Aで初めて全国平均を上回り、中学校においても数学Aが全国平均を上回るなど、本県の学力の状況は改善の方向にあると捉えてございます。
 しかしながら、読み解いたことを用いて自分の考えを書く問題で必要とされる知識を活用する力など、依然として課題がございます。こうした課題を改善するために、今年度新たに地方別教頭研修会を開催し、学力向上に向けた具体的な方策について指導するとともに、読解力や書く力を高める授業づくりについての研修会を実施し、教員の授業力向上を図っております。
 体力向上につきましては、全国に先駆けて小学校から高等学校まで体力テストを悉皆で実施し、全ての児童生徒に自分の体力向上の度合いを実感させてまいりました。また、体力アップモデル校による授業研究会や指導力向上研修会を開催し、多くの教員が受講することで体育授業の改善を図ってまいりました。さらに、市町村教育委員会と連携し、数多くの学校指導訪問を実施し、各学校の実情に応じた体育授業の改善にも取り組んできたところです。これらの取り組みの積み重ねにより、今年度、全国体力調査の本県の体力合計点は、小学校女子と中学校の男女では過去最高得点を、小学校男子も過去2番目の得点を記録するなど、着実に体力は向上してございます。
 しかしながら、女子の運動離れや運動する子と運動しない子の二極化など、依然として課題があることから、県が独自に開発した紀州っ子かがやきエクササイズ&ダンスや、インターネット上で子供たちが楽しみながら運動の記録を競い合うきのくにチャレンジランキングの活用促進などに一層取り組んでまいります。
 県教育委員会といたしましては、引き続き確かな学力や体力の向上に向けて、市町村教育委員会と一体となって各学校を指導、支援してまいります。
○議長(藤山将材君) 多田純一君。
  〔多田純一君、登壇〕
○多田純一君 お答えをいただきました。確かに学力も体力もよくなってきてるなという実感もございます。私の知り合いの方で、先ほど御答弁いただきましたけども、小学校の教員をやってる方がおられまして、昨年ですか、5日間、秋田県に研修に行ってきましたというお話をされておりました。その中で、5日間というのは非常に、他府県と比べて研修期間が長いし、実際に現地で教鞭をとって教える、そういうことも研修の中身としてあったということで、非常によかったと、こんなふうにおっしゃっておられた教員の方がおられました。
 それに代表されるように、繰り返し繰り返しやることによって向上していく、これは当たり前のことですけども、まだまだ工夫の余地もあると思いますんで、引き続き学力、体力、本当に県民の皆さんが安心できるような将来の和歌山県の教育にしっかり取り組んでいただきたいということを要望させていただきたいと思います。
 続いて、子供の生活実態調査についてお聞きしたいと思います。
 平成27年12月には、日本財団が発表したレポートに、子供の貧困の社会的損失推計があります。その中で、子供の貧困をこのまま何も手を差し伸ばせず放置すると、全国の経済損失として一つの学年で2兆9000億円、全学年合計では43兆円と出ています。そして、政府の財政負担は1学年で1兆1000億、全学年合計では16兆円にも上るという試算内容です。
 全国規模で捉えると、個人の感覚ではつかめないほどの大きな単位の話となります。子供の貧困問題はごく身近で起きていて、今や都市でも地方でも急速に深刻化している課題です。
 ことし1月には、関西経済同友会子どもの未来委員会が「子どもの未来は日本の未来」という提言を発表。「『子どもに対する投資は、日本の未来に対する投資である』という認識が共有され、子どもたちが家庭の経済状況に左右されることなく成長し、その能力を発揮して活躍できる社会実現を願う」としております。
 貧困については、私の子供のときもありましたし、どの時代でも存在していました。その中で豊かな生活を求め努力し、切磋琢磨し、時には我慢しながら人生を磨いてきた方もたくさんいらっしゃいます。ところが、現代の貧困は、経済的貧しさに加え、社会からの孤立が多く見受けられ、それがそのまま将来ある子供たちの生活に大きく影響しているのも事実です。個人の尊重が叫ばれ、個人や家庭の問題に社会が踏み込まないという考え方が主流となっていましたが、一方で、ひとり親世帯など貧困に陥りやすい家庭の子供たちを孤立させず貧困から救う対策は、行政において待ったなしで行わなければならないということも事実です。行政のあらゆる部局が連携して取り組むべきです。
 本県においても、子どもの貧困対策の推進に関する法律第9条第1項に基づき、和歌山県子どもの貧困対策推進計画を策定しています。その中で、施策の基本的方向も示していますが、改めて子供の生活習慣や詳細な実態把握について調査分析を行い、計画を見直すとしておられます。貧困の状況にある子供や家庭の支援ニーズの所在を把握する有効な手段であり、得られた調査結果を分析することで課題が明らかになり、今後取り組むべき施策の参考になると考えます。
 県では、平成30年7月5日から8月3日にかけ、約1カ月、小学5年生、中学2年生及びその保護者に対する全数調査を行っております。この実態調査をやってみて、改めてわかったこと、行政上で生かすことなどについて、福祉保健部長にお尋ねいたします。
○議長(藤山将材君) 福祉保健部長山本等士君。
  〔山本等士君、登壇〕
○福祉保健部長(山本等士君) 今年度実施した和歌山県子供の生活実態調査では、小学5年生全員約7700人、中学2年生全員約7800人及びその保護者を対象に、子供に対しては生活習慣や学習の状況、健康状態等を、保護者に対しては収入や就業の状況、子供とのかかわり状況等を無記名アンケート形式で回答を収集しました。
 また、小中学校の教員や主任児童委員、スクールカウンセラー等、子供の支援機関従事者約2500人にも調査票を配付し、支援者から見た貧困の認識や現行の取り組みに対する御意見も収集しました。回収率は、小学5年生が49%、中学2年生が41%、支援機関従事者が71%となっております。
 なお、調査を先行する他府県では相対的貧困世帯の状況だけを調べている場合が多い中、本県では過去1年間に食料、衣類の購入や光熱水費の支払いができなかった経験がある世帯や生活必需品等を所持していない世帯を経済的困難世帯と定義し、所得の多寡だけでは見えづらい子供の生活の質そのものに着目した調査を行ったところです。
 現在、分析を進めているところですが、現時点での分析結果では、経済的困難世帯の子供は世帯全体に比べ、授業がいつもわかると答えた割合や宿題の履行率が低いこと、歯磨きや食事、決まった時間に寝起きするといった基本的な生活習慣が定着していないこと等が明らかになっています。
 一方で、経済的困難世帯であっても、褒める、叱る、読み聞かせをする等の保護者の教育姿勢が高い場合や、歯磨きや食事等の生活習慣が身についている場合、自分にはよいところがあると思う等の自尊感情が高い場合、図書館や博物館へ行く等の文化的活動が充実している場合には、授業がいつもわかると答えた子供の割合が高い傾向にあることもわかったところです。
 今後さらに分析を進め、最終調査結果がまとまり次第、庁内9部局23課室で構成する庁内会議で情報共有し、必要に応じ新政策の検討や和歌山県子どもの貧困対策推進計画に位置づけて実施している既存施策72事業の見直しを進める等、引き続き全庁体制で取り組んでまいります。
○議長(藤山将材君) 多田純一君。
  〔多田純一君、登壇〕
○多田純一君 お答えをいただきました。
 経済的困難世帯との定義がありました。子供が当たり前に持っているはずの物、人とのつながり、教育・経験の機会などが奪われているという状況があると指摘されております。やはり、教育力を高める必要を感じました。最近行われた和歌山県総合教育会議でもこの実態調査が報告されたと伺っております。教育委員会としてどのような施策を講じていくお考えなのか、教育長にお尋ねいたします。
○議長(藤山将材君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 県教育委員会では、放課後1人で過ごさなければならない子供を対象として、無料で学校の空き教室や公民館等を活用し、地域の方々の参画を得て、学習支援や地域の大人との交流活動を行う子どもの居場所づくり事業を推進してございます。現在、26市町村83カ所で同事業を実施しております。
 また、保護者や安心して家庭教育を行うことができるよう訪問型家庭教育支援事業を推進しております。子育てや家庭教育を支援するチームによる家庭訪問や個別の相談への対応、子育ての不安を解消するための講座の開催等を行っております。現在、橋本市、湯浅町、那智勝浦町、太地町の4市町で実施されており、全国的にも評価されております。
 県教育委員会といたしましては、これらの取り組みを拡充していくため、県教育委員会作成の家庭教育サポートブックを保護者へ配布するとともに支援者の養成に活用するなど、各市町村と連携して家庭教育支援の充実に一層取り組んでまいります。
○議長(藤山将材君) 多田純一君。
  〔多田純一君、登壇〕
○多田純一君 居場所づくりと、それから訪問型家庭教育支援というお話をいただきました。実は昨年の9月に、文教委員会として湯浅町の訪問型家庭教育支援事業というのを視察いたしました。小学校、中学校の児童生徒数877人、それとゼロ歳児から小学校に上がるまでに対象を広げての全戸訪問、問題を抱えた児童生徒の保護者への直接支援や支援が必要な家庭へのアウトリーチ型支援、問題の未然防止、早期発見、早期対応を行っている様子を勉強してまいりました。「まだ問題解決の途上ですが、手応えを十分感じております」と湯浅町教育長は話をされておられました。
 現在、県内で取り組みが行われているのが橋本市、湯浅町など含めて4市町、ぜひ県主導でこの問題の本質に手を差し伸べていってください。よろしくお願いを申し上げたいと思います。
 この質問の最後に、児童虐待対策についてお伺いをいたします。
 千葉県野田市で起きた小学校4年の虐待死事件は、大きな社会問題であり、二度と悲惨な事件を起こしてはいけない、そのように感じておられる方は多いと思います。
 国連の子どもの権利委員会は、日本で子供への虐待が頻発している状況に懸念を示し、日本政府に対応を強化するよう勧告いたしました。児童虐待死再発防止に向けた県の取り組みについては、昨日も坂本議員が取り上げておられます。
 千葉県野田市、栗原心愛さんと、2015年に和歌山市で児童虐待で亡くなった原星涼さんとの事件は共通する部分も多いと思います。和歌山県子ども・女性・障害者相談センターは、死亡した原星涼さんを施設で保護していましたが、親が指導に従っているなどと、長期外泊の形で自宅に戻しました。その後、近所から「星涼さんの自宅で子供の泣き声が聞こえる」という通報が寄せられておりましたが、問題を確認できず、家庭に戻してから1カ月余り後に事件が起きました。
 これを受けて和歌山県は、一連の対応に問題がなかったかどうかを検証するため、外部の有識者で構成する委員会を立ち上げました。委員会は、虐待の問題に詳しい大学の研究者や弁護士らがメンバーとなり、詳しい経緯を調べた上で、事件を防ぐためにどのような対応をすべきだったかを議論し、県に報告をしております。
 和歌山県子ども未来課は、「今回のような悲惨な出来事を二度と起こさないためにも、しっかりと検証したい」と当時話をされておりました。検証結果は、平成26年4月に報告書としてまとめられております。
 その中で問題点、課題の整理として挙げられております。例えば、児童相談所としての体制や機能。児童相談所は、措置解除に当たり、両親の育児に対する負担の程度について再度確認する必要性、週1回の援助方針会議では協議事案が多く、家庭復帰にかかわる方針等が十分な協議が行われたとは言いがたい、関係機関との連携や協力体制を構築しておく、そして最後に、事案が起こったとき、子供にとって最善な状況とは何かという視点が十分ではなかったという指摘があり、子供にとって安全で良好な環境の確保や情緒的な安定及び発達の保障がまず優先されるべきであり、そのために十分な社会的調査、綿密なリスク判断や保護者と子供に関するアセスメントを行うべきだったと結んでおられます。
 検証委員会の指摘について、この5年間でその体制はしっかりと築かれてこられたのでしょうか。福祉保健部長にお尋ねをいたします。
○議長(藤山将材君) 福祉保健部長。
  〔山本等士君、登壇〕
○福祉保健部長(山本等士君) 県におきましては、検証委員会からの提言を踏まえ、児童の安全を最優先に、職員研修を初め家庭復帰後の市町村による見守り体制まで切れ目なく対策を強化し、取り組んでいるところです。
 まず最初に、職員研修についてですが、児童相談所の職員に対しては、初任者研修や一般職員向けの資格取得研修を初め、スーパーバイザーを養成する中堅職員向けの研修など、勤務年数や職種に応じた体系的な研修を行うとともに、市町村職員に対しても相談支援体制の強化を図る研修を実施し、対応職員の資質向上に努めているところです。
 次に、児童相談所や市町村に通告があった児童虐待事案については、両者で情報を共有した上で速やかに児童の安全確認を行い、現状の生活では児童の安全が確保されないと判断された場合は、警察との密接な連携のもと、ちゅうちょなく一時保護を行っているところです。
 次に、一時保護や児童養護施設等への入所措置を行った場合は、家庭の状況等を正確に把握し、虐待を行った保護者に対して、明確かつ詳細な援助方針を作成した上で、子育ての方法や親自身のストレス管理の学習、児童福祉司による家庭への助言、指導などの支援を行うなど、家族再統合に向けた取り組みを行っているところです。
 次に、児童の家庭復帰を決定する際には、事前に市町村等と十分協議を行い、社会福祉審議会に設置された民生児童委員や学識経験者などで構成する措置専門部会の意見を求めるなど、より慎重な判断をすることとしております。
 さらに、一時保護や措置が解除され、児童が家庭に復帰した際には、地元市町村が主体的に見守りを行うなど、県と市町村の役割分担を明確にしてきたところですが、今年度、和歌山の子・みまもり体制に関する協定書を県内全市町村と締結し、地域での見守り体制を一層徹底したところです。
 いずれにしましても、本県におきまして児童虐待による死亡事案が二度と起こることのないよう、児童の安全を最優先に全力で取り組んでまいります。
○議長(藤山将材君) 多田純一君。
  〔多田純一君、登壇〕
○多田純一君 昨日、和歌山市や関係機関との連携についても知事が答弁をされておられました。私に寄せられた話では、その方は幼稚園教諭をされてる方ですので現場の声ですけども、ひにきられた跡があり通告しても返事がないなど、たびたびあるとおっしゃっておられました。現場の関係者の声を記録し、1人で解決せず、組織として解決に向かうということが必要ではないでしょうか。通告がどのように受けとめられ、解決していったのか。プライバシーの問題を確保しつつ、関係者との連携を強めるということであれば、一度検討していただきたいと思います。
 それでは、最後の質問に移ります。防災・減災対策についてお伺いいたします。
 防災・減災、国土強靱化のための3カ年緊急対策についてお伺いをいたします。
 近年の豪雨、高潮、暴風・波浪、地震などの気候変動の影響等による気象の急激な変化や自然災害の頻発化、激甚化にさらされている我が国において、防災・減災、国土強靱化は重要課題であります。
 公明党は、2019年統一地方選挙のテーマに「人と地域を生かす社会へ。」を掲げ、政策の柱として、防災・減災・復興を社会の主流に押し上げ、熱中症対策やブロック塀安全対策、3カ年緊急対策及び中長期計画に基づく災害に強い地域づくり、そして、地域防災力の向上と防災拠点の整備などを挙げました。
 政府は、2020年までの事業規模をおおむね7兆円程度とし、防災のための重要インフラ等の機能維持と国民経済・生活を支える重要インフラ等の機能維持の観点から、特に緊急に実施すべきハード・ソフト対策について、3カ年で集中的に実施することにしておられます。
 本県における国の施策、予算の活用について、知事のお考えをお伺いいたします。
 続いて、マイ・タイムラインについてお伺いいたします。
 昨年の台風21号など自然災害の多い年となりました。西日本豪雨の被害は200人を超える死者・行方不明者を出し、甚大な被害になりました。全国で860万人に避難指示、避難勧告が出されたにもかかわらず、実際に避難したのはわずか4万人。まだ被害に遭っていないのに自宅を出て避難するという決断には大きな覚悟が必要です。
 マイ・タイムラインは、住民一人一人の防災行動計画であり、台風の接近によって河川の水位が上昇するときに、自分自身がとる標準的な防災行動を時系列的に整理し、取りまとめるものです。時間的な制約が厳しい洪水発生時に、行動のチェックリストとして、また、判断のサポートツールとして活用されることで、逃げおくれゼロに向けた効果が期待をされております。
 一口に住民と言っても、その置かれている環境はそれぞれで、例えば家族構成一つをとってみても、単身の世帯もあれば、高齢者がいる世帯や乳幼児がいる世帯もあり、洪水からの避難方法は異なってきます。そのため、マイ・タイムラインは、住民一人一人がみずから考え、みずから行動することが重要です。
 中央防災会議の作業部会の報告書素案には、避難行動の原則を個人単位で確認することが重要としています。その上で、経験や思い込みで判断することの危うさをどう理解してもらうか、災害に備えて避難するまでの取り組みを時系列でまとめておくもので、作業を通じて避難意識を高める効果も期待できる。近年の災害は頻繁に、しかも激甚化しているため、ためらいが逃げおくれにつながらないよう手だてを尽くす必要があります。
 マイ・タイムラインを進めていく県のお考えについて、危機管理監にお尋ねいたします。
○議長(藤山将材君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 本県では、東日本大震災や紀伊半島大水害を教訓として、「津波から『逃げ切る!』支援対策プログラム」や和歌山県国土強靱化計画に基づき、ハード整備とソフト対策を組み合わせながら、全国トップレベルの地震・津波対策や洪水・土砂災害対策に取り組んできたところであります。しかしながら、予算の制約もあり、これまで解消できなかった課題がまだまだ残っております。
 今般、国が取りまとめた防災・減災、国土強靱化のための3カ年緊急対策においては、別枠で事業規模としておおむね7兆円程度の臨時、特別の措置が講じられるということになったことは、本県の課題解決につながるものと高く評価をしております。
 具体的には、国土交通省関係の交付金では、今回の第2次補正予算において、事業費ベースで168億円が確保されました。これは、当初予算に対する補正予算の割合で見ますと、全国平均が16%なんでございますが、本県は24%、全国第6位となっております。
 特に、河川では当初配分額を上回る17億円、砂防では当初配分額の約5割に匹敵する11億円、道路では約3割となる52億円、港湾・海岸では約4割となる5億円の国費が配分されました。これにより、洪水対策はもとより、土砂災害、地震・津波、高潮対策などにこれまで以上に取り組めるようになりまして、大変ありがたいと思ってるところでございます。
 平成31年度以降においても、何より守らなければならないのは人命であるという考えのもとに、災害による犠牲者ゼロの実現を目指し、今回の緊急対策で講じられた国の施策、予算を最大限に活用して、本県の国土強靱化を加速させていきたいと思っております。
○議長(藤山将材君) 危機管理監藤川 崇君。
  〔藤川 崇君、登壇〕
○危機管理監(藤川 崇君) マイ・タイムラインは、議員御指摘のとおり、住民一人一人が災害時にとるべき行動を時系列的に整理しておくものであり、適切な避難行動につながる効果が期待できることから、大変意義のある取り組みであると考えております。
 国土交通省が、平成27年9月の関東・東北豪雨を契機として、1級河川等流域市町村のタイムラインとあわせてその作成を推進しているところでございますが、本県におきましては、平成23年の紀伊半島大水害の直後から、住民が的確に避難を行えるよう、避難場所の安全レベルの設定や避難勧告等の判断・伝達マニュアルモデル基準の作成等を行ってまいりました。
 同時に、一人一人の適切な避難行動につなげるため、避難マップの作成や避難カード等を活用して、自分の命は自分で守る姿勢を育む防災教育や、紀の国防災人づくり塾等により人材育成、啓発事業に取り組んできたところでございます。
 今後とも、県民一人一人が災害時により的確な避難を行えるよう、マイ・タイムラインの普及啓発を含め、防災教育の充実等に取り組んでまいります。
○議長(藤山将材君) 多田純一君。
  〔多田純一君、登壇〕
○多田純一君 御答弁いただきました。ぜひ、防災力を高める、それも非常に大事な観点だと思いますので、そういう点で期待をしていきたいと思います。
 これで、私の一般質問を終わります。(拍手)
○議長(藤山将材君) 以上で、多田純一君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前11時31分休憩
────────────────────
  午後1時0分再開
○副議長(岸本 健君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 38番奥村規子君。
  〔奥村規子君、登壇〕(拍手)
○奥村規子君 皆さん、こんにちは。
 議長のお許しを得ましたので、今期最後の一般質問をさせていただきます。
 この機会を与えていただいた議長初め皆さんに感謝をいたします。そして、最後の最後にならないように頑張ってまいりたいと私思いますので。
 それでは、早速3点にわたって質問させていただきます。
 1点目は、和歌山市における和泉山系のメガソーラー計画についてお尋ねいたします。
 この問題を初めて議会で取り上げさせていただき、一般質問してから2年余りがたちました。今も、メガソーラー計画に反対という住民の皆さんの粘り強い運動が続いています。反対を表明する連合自治会の看板も目立っています。太陽光発電をめぐっては、パネルが反射する光や森林の伐採が原因と見られる土砂災害、景観の悪化に関する苦情などが全国的にも増加していました。もともと、火力、水力などの大規模発電所は既に環境影響評価法の対象になっていましたが、メガソーラーは対象外となっており、全国的にも住民とのトラブルが発生しています。
 そのような中でスピーディーに取り組まれたのが、和歌山県太陽光発電事業の実施に関する条例です。制定されてから1年近くになります。この条例は、和歌山県の環境にふさわしい太陽光発電事業の普及を図ることを目的とし、事業者に対し、太陽光発電事業における太陽光発電設備の設置、維持管理、廃止等について、環境を保全し、災害の発生を防止する方法で適切に実施するように、必要な事項を定めるとしています。
 そこで、環境生活部長にお尋ねいたします。
 現在、和歌山県内で太陽光のFIT事業計画認定を受けたメガソーラーの発電事業者は70社余りと聞いておりますが、今のところ和歌山市における和泉山系では、和歌山県太陽光発電事業の実施に関する条例に基づく手続に着手している事業はどれくらいありますか。その位置と規模についてもお教えください。
○副議長(岸本 健君) ただいまの奥村規子君の質問に対する答弁を求めます。
 環境生活部長山田成紀君。
  〔山田成紀君、登壇〕
○環境生活部長(山田成紀君) 和歌山市における和泉山系では、現在4件の太陽光発電事業が和歌山県太陽光発電事業の実施に関する条例第4条に基づく事業計画の案の作成のため、県、関係市町との協議に着手しております。
 それぞれの事業の位置及び規模については、東側から和歌山市六十谷地区の事業が出力約48メガワット、善明寺地区の事業が出力約35メガワット、梅原地区の事業が出力約1.6メガワット、そして西庄地区の事業が出力約9.5メガワットとなっております。
○副議長(岸本 健君) 奥村規子君。
  〔奥村規子君、登壇〕
○奥村規子君 今、手続に入られてるというのが4件ということをお聞きいたしました。それ以外に、直川、府中で既に環境アセスの段階に入ってされているというところがあるのと、また和泉山脈ということでいえば、和歌山市からすぐ隣の岩出市の山というところに1カ所、そういった太陽光の計画があるということをお聞きしておりますので、そういった面を含めても6件、現在あるということだと思います。
 それで、次に行かせていただきます。
 次に、事業予定者は、計画の案の作成時にあらかじめ知事及び関係市町村の長と協議をすることになっていますが、協議はどのようなことを目的として実施するのか、環境生活部長にお尋ねいたします。
○副議長(岸本 健君) 環境生活部長。
  〔山田成紀君、登壇〕
○環境生活部長(山田成紀君) 太陽光発電事業計画の案を作成するに当たり、事業者があらかじめ県及び市町村と協議をすることにより、当該条例及び関係法令に基づく諸手続について明らかにすることを目的として実施するものです。
○副議長(岸本 健君) 奥村規子君。
  〔奥村規子君、登壇〕
○奥村規子君 次に、条例の第5条では、計画の案の説明会の開催の対象は知事が認める区域となっていますが、具体的にどのようにお考えでしょうか。再度、環境生活部長にお伺いいたします。
○副議長(岸本 健君) 環境生活部長。
  〔山田成紀君、登壇〕
○環境生活部長(山田成紀君) 事業実施により、環境の保全上及び災害の発生の防止上、影響を及ぼすと認められる地域と考えております。
○副議長(岸本 健君) 奥村規子君。
  〔奥村規子君、登壇〕
○奥村規子君 次に、意見書の提出については、自治会等その他の当該太陽光発電事業に関し利害関係を有する者であれば意見書を提出することができるとありますが、住民の意見の提出があった場合、どのように取り扱われるのですか。また、調査審議会はどのような分野の専門家で構成され、審議会にはどのような場合に意見を求めるのか、考え方をお教えください。環境生活部長にお尋ねいたします。
○副議長(岸本 健君) 環境生活部長。
  〔山田成紀君、登壇〕
○環境生活部長(山田成紀君) 意見書の提出があった場合、事業者に対し見解を求め、それらを踏まえ、事業計画が認定基準に適合しているかを科学的に審査いたします。
 また、太陽光発電事業調査審議会につきましては、防災、安全、環境、景観分野の専門家で構成され、事業計画の審査において、自然環境、生活環境、景観等、環境保全上及び災害の発生の防止上の見地から必要と考えられる場合、意見を求めることとしております。
○副議長(岸本 健君) 奥村規子君。
  〔奥村規子君、登壇〕
○奥村規子君 これまで、条例の中身についてお伺いをいたしました。その点について、自治会への説明、また意見書を出す場合にということでは、区域がきちっと決まっているのではなくて、先ほど言われた防災、安全、環境、そういった分野で影響を及ぼすと認められる地域ということで言われていましたので、その点については、やはり防止上影響があると住民の方が思ったときには意見を出すことができるという理解でよろしいでしょうか。
○副議長(岸本 健君) 環境生活部長。
  〔山田成紀君、登壇〕
○環境生活部長(山田成紀君) それでよろしいかと思います。
○副議長(岸本 健君) 奥村規子君。
  〔奥村規子君、登壇〕
○奥村規子君 最後に要望や紹介をさせていただきたいんですけど、この質問をさせていただいたのは、要は今そういった計画がどんどんあると。そういう中で、この和泉山脈のメガソーラーの計画については、一つ一つその事業に対してはこの条例でしっかり審議をされていくということで思うんですけども、この和泉山脈全体について、規模的には大小があるかと思いますが、先ほどの環境アセスを行っているところも含めて5カ所計画されていると申し上げました。県内外から親しまれているこの山系の自然を守ってほしい、これ以上、山をさわらないでほしい、災害が心配という切実な声もあります。
 一つ一つの事業については、太陽光条例に則して審議するということで今何点かお聞きしたことなんですが、そういう山系全体として太陽光など幾つもの開発計画がある場合については、条例だけではなかなかいかないと思うんです。そんな点で、多面的、多角的、総合的に考えて判断できるような、そういった仕組みづくりというのか、どんなふうにしていくかということが課題ではないかなと思います。
 そんな点で、ぜひ住民の意見を十分お聞きしていただきたいなということで要望させていただき、和泉山脈のところで──今、和歌山大学の図書館で、展示室で葛城修験道二十八宿についての特別展が行われています。和泉山脈から金剛山脈へ至る修験道に法華経をおさめたと伝える経塚が28カ所あって、これを葛城修験道二十八宿と言うんですけども、今でも大切に祭られているというお話です。今回は、その出発地である加太と友ヶ島にまつわる貴重な資料もたくさん展示されているということです。熊野古道よりも古い歴史を持つ葛城修験道であるということをお聞きしました。
 そういった歴史的にもこれからもっと大切なところではないかなと思うんですけど、和歌山大学の紀州経済史文化史研究所の特別展ということで今されています。そういったところも含めて、やはり歴史や自然やそういったことを大切に考えていただくということもあわせて、ぜひこの条例を運用されるに当たって、十分いろんな方の意見を聞いていただきたいなというふうに思います。
 8年間かけて、これは太陽光ではないんですけど、滝畑の産廃最終処分場の建設の件も、住民の皆さんが、やはり水の汚染とか、また山地を開発するということに対しての反対の運動をされてきた結果、業者さんは今は申請を取り下げたというような状況ですが、やはり心配されるのは、そういう土地利用とか山をどういうふうに守っていくかとか、そういったことに、もっともっと今後、和歌山市、県も一緒になってぜひ取り組んでいただきたいなということを要望して、次に行かせていただきます。
 2点目は、国の統計不正問題について企画部長にお尋ねします。
 厚生労働省の毎月勤労統計の偽装を初めとする統計不正は、政府の基幹統計全体の4割に問題が見つかるなど、明らかになってきました。毎月勤労統計の不正、偽装では、全数調査を行うことになっていた従業員500人以上の事業所の東京都分が、2004年から3分の1の抽出調査とされ、17年12月まで全数調査に近づけるための補正も行われていませんでした。それが18年からいきなり補正が行われ、名目賃金が上昇、3.3%増となった18年6月の賃金上昇は21年ぶりの高い伸びと言い、アベノミクスの成功を誇る材料にされました。国会で実態の解明が進められ、国民への責任ある説明が待たれるところです。
 この問題は、延べ約2000万人の雇用保険の給付などに影響を与えた上、政策判断の根幹にかかわるものだと考えます。
 そこで、お伺いします。県の政策判断等への影響について、どのようにお考えでしょうか。企画部長にお尋ねいたします。
○副議長(岸本 健君) 企画部長田嶋久嗣君。
  〔田嶋久嗣君、登壇〕
○企画部長(田嶋久嗣君) 厚生労働省の毎月勤労統計調査に関する問題は、議員御質問にございましたように、東京都の事業所において全数調査すべきところを抽出調査で行った上に、適切なデータ処理を行わなかったことが原因です。
 本県においては、和歌山県内の事業所を対象に適切な方法により調査を行っていることから、今回の問題が本県が公表した調査結果に影響を与えることはございません。県の政策判断につきましても、毎月勤労統計調査を初めとする県のデータをもとに行っていることから、影響はないと考えております。
○副議長(岸本 健君) 奥村規子君。
  〔奥村規子君、登壇〕
○奥村規子君 影響がないということでしたので、次に行きます。
 政府統計への信頼性の問題について、知事にお尋ねいたします。
 毎月勤労統計の不正発覚後にマスメディアが行った世論調査は、政府統計の信頼が揺らいだ、75%、毎日、この問題で政府の対応は不十分だ、83.1%、東京新聞、政府の発表する統計を信頼できない、79%、日経で、政府統計そのものに対し、大多数の国民が不信と疑念を抱いていることが浮き彫りになったのではないかと思います。日本の統計を通した実証研究などにも影響が及び、世界からも信頼性が問われることになります。日本経済学会からも、負の影響ははかり知れないと警告しています。県においても、毎月勤労統計調査結果は私たち議員にも資料提供され、議員活動にとっても活用できる重要な統計であります。
 今回の出来事は、調査員初め事業者や関係者の皆様の日ごろの努力に対する裏切りと言えるものではないでしょうか。国において2004年から続いていた統計不正が、18年1月からはひそかにデータ修正が行われた問題です。さらに、18年1月からは、調査対象事業所の入れかえなどにより、それまで低く出ていた給与総額との比較で上振れする結果となったことは大問題だと思います。実際、統計偽装の発覚後に再集計した修正値では、実質賃金の伸び率は下方修正されました。安倍政権が自慢する賃上げは、かさ上げされた数字が根拠だったことを示していると思います。
 今回のことで、負の影響をどのようにお考えでしょうか。また、このような事態について、知事としてどのような見解をお持ちでしょうか。国に対して徹底した実態の解明を求めていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。知事にお尋ねいたします。
○副議長(岸本 健君) 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 統計は、近代国家の一番の礎であります。知事就任後、統計課を調査統計課と名称を変更いたしまして、さまざまな統計を集めるだけではなくて、それをもとに分析をいたしまして、月例経済報告として県内の経済動向を注視するなどというようなことをやり始めました。すなわち、統計を重視して県政を行っております。
 別の言葉で言うと、かけ声とか全力を挙げてとか何かそういうことだけではなくて、統計を積極的に利用した証拠に基づく政策立案、EBPMというんですが、それをやっていかないかんというふうに思っております。
 今回の統計不正問題では、厚生労働省は余りにもお粗末なので、笑ってしまうぐらいの過ちを三つ犯していると思っております。
 第1に、本来全数調査をすべき、すなわち、すべきだと自分で決めてるからすべき東京都の500人以上の事業所について、適切な手続を経ずに独断で抽出調査にしたことであります。抽出調査が悪いわけではないんですが、そのときは統計的にどんな影響が出てくるかとか、それから現実にそれがどういう方法で可能かとか、そういうことをよく考えて、そしてその上で規則をちゃんと変えてやるべきなんで、勝手にこっそり自分だけでというようなのはとんでもないことだというふうに思います。
 第2に、それに関連しますが、この調査方法の変更に伴って必要となる復元処理を行わなかったというのが問題でございます。ずうっとその不正確な調査結果を公表し続けたことが問題ということでございまして、その全数調査から3分の1のサンプル調査に切りかわったときに不連続が生じてるわけで、多分かなり統計値が真正よりも下のほうに出ていたと思うんですね。そういうようなことを本当は統計学的手法で更正をしていかないといけないんですが、それを全くやってないというのが第2の問題でございます。
 第3には、平成30年1月分のデータからこっそりと復元処理を行っておるんですね。そのときに過去の部分のデータを修正しなかったので、急に現金給与総額の前年同月比が不自然な動き、すなわち上がったように見えるというふうになってしまったことでございます。
 結果として、雇用保険などを過少給付するという実害も引き起こしておりまして、統計とか行政に対する国民の信頼が損なわれただけじゃなくて、こんな実損といいますか、そういうこともかけておるということで、こんなことは絶対にいけないことだというふうに思います。厚生労働省においては大いに反省するとともに、政府を挙げて信頼回復に努めてもらいたいというふうに思います。
 ただ、今回の問題を捉えて、実質賃金の伸び率を上振れさせたいので意図的にやったんじゃないかというような推理が行われていまして、またしてもマスコミなどは盛んにそういうふうなことを報じている、野党の方も一生懸命そういうことを言うとるというのが見えますが、ちょっと違うんじゃないかなあというように私は思っております。
○副議長(岸本 健君) 奥村規子君。
  〔奥村規子君、登壇〕
○奥村規子君 こういった国の状況に対して、和歌山県民の代表として知事はもっと怒ってほしいなあと思うんです。今言われた、和歌山県としては長期総合計画ででも世界とつながる和歌山を目指してと言われてる中で、やはり世界からもどう信頼されるかという大変な大きな問題だと思うんです。
 先ほど、和歌山県においての政策判断には影響はないとおっしゃったんですけども、やはりこの信頼性というのは、先ほど知事も答弁してくださいましたが、統計への信頼性というのが今回のような状況になったという問題をやっぱり背景に、しっかり国民とか県民に説明されていかないと、先ほど言うた上振れがちょっと違うんじゃないかとか、そういうようなことがあってもなかなか信頼できないと。これまで、やっぱり働き方改革の中の労働調査の問題とか、いろいろとそのことが積み重なってきた中で、こういう今の考えられないような出来事が起こっている、その根本にしっかりとメスを入れてやってほしいということを、ぜひ知事も国に向けてしっかり物を言っていただきたいなというふうに思うんです。どうかよろしくお願いします。
 最後の質問に行かせていただきます。3点目です。
 消費税増税の問題についてです。
 安倍政権が14年に5%から8%に引き上げ、既に1世帯12万2000円、国民1人5万2000円の負担増、これは麻生財務大臣も答弁されていることです。実質賃金は、政府公表値でも10万円以上の減少、家計消費は25万円の減少となっています。10%増税では、1世帯8万円、1人当たり3.6万円の負担増になります。
 一方、億万長者の富の増加と大企業の内部留保の増加が際立っています。議会参考資料にも、今年度の経済動向について、企業収益が過去最高を記録すると書かれています。このもとで、政府の調査でさえ生活が苦しくなったと83.5%の方が答えています。消費税率10%への引き上げは、複数税率と適格請求書等保存方式──インボイス制度──の実施を伴うものであり、中小企業の経営に重大な影響を及ぼすものではないでしょうか。
 さらに、農家にとっても大問題です。農産物価格は農家みずからが決められないので、景気に左右されやすく、とりわけ果物などの嗜好品、贈答品は特に影響を受け、低迷が懸念されます。複数税率で仕訳が煩雑になります。食用の芋は8%、種用は10%、主食用米は8%、餌米は10%、牛や豚は屠畜場に行くまでは10%、枝肉にされたら8%などとなり、大変煩雑です。その上、インボイスで9割の農家が深刻な事態になります。地域建設業衰退の加速で、防災等にも影響するものです。
 また、医療機関への影響では、厚労省は既に消費税10%への引き上げを前提として中医協にことし10月に診療報酬改定の実施の議論を提案しています。初診料6点、再診料1点や、入院基本料を引き上げることなどが議論されています。患者負担増につながっていくことになります。増税は、あらゆる分野や産業にかかわってくる問題です。
 こういった状況の中で、特に和歌山県の中小企業等の事業者への影響についてでございますが、その点について、和歌山県は中小企業の小規模の事業者が人口比で全国一多い県だと思います。そういったことから含めて、まず中小企業の事業者への影響についてお伺いいたします。商工観光労働部長、よろしくお願いします。
○副議長(岸本 健君) 商工観光労働部長山西毅治君。
  〔山西毅治君、登壇〕
○商工観光労働部長(山西毅治君) 日本経済は、緩やかながらも長期的な成長を続け、景気の拡張期間は本年1月に74カ月と戦後最長を更新したところです。しかしながら、県内の多くの中小企業は景気回復を実感するには至っておりません。
 そうした状況の中、本年10月から消費税率の引き上げが予定されており、駆け込み需要の反動等による売り上げの減少など、景気の下振れリスクによる中小企業への影響が懸念されています。このため、政府においては、食料品などの税率を8%に据え置く軽減税率を導入するほか、キャッシュレス決済を用いたポイント還元や、低所得者、子育て世帯向けのプレミアムつき商品券など、経済の回復基調に影響を及ぼさないよう各施策の導入を進めているところです。
 県といたしましても、消費税率引き上げに係る国の施策を、産業別担当者や「わかやま企業応援ナビ」などを通じ広く広報していくとともに、県庁内の関係部署及び関係団体に特別相談窓口を設置し、中小企業の皆様からの各種相談に応じてまいります。
 また、経済産業省と連携協定を締結し、現在実施している下請取引適正化に係るヒアリング調査等において、事業者が消費税を適正に価格転嫁できていないような情報が得られた場合は、国に情報を提供し、迅速な対応を求めるとともに、国や県が実施する施策を総動員し、中小企業の皆様を積極的にサポートすることで、影響が最小限にとどまるよう努力してまいります。
○副議長(岸本 健君) 奥村規子君。
  〔奥村規子君、登壇〕
○奥村規子君 長期的な成長を続け、景気の拡張期間は74カ月と戦後最長を更新したとおっしゃいました。しかし、政府公表値でも74カ月間の実質賃金は10万円以上も落ち込んだままです。これは、今世紀に入って最悪水準の実質賃金率であるとする分析があるということを申し上げておきたいと思います。
 そして、要望なんですが、中小業者の皆さんは、この税率引き上げと同時に、また先ほど申し上げたインボイス制度、そのことについての不安とかいろんなことがまちの中で起こっています。私の知り合いの御商売されている人は、この10月にはこういったことが進んでいく中では、もう10%、8%の引き上げとあわせて、こういったインボイス制度が将来──今すぐではないですけど、そういった方向を考えられている中で、もう商売は続けていかれない、こういったことを言われる方がたくさんいらっしゃるんです。不安を感じています。こういった消費税10%への引き上げ、このような中で中小業者さんが希望が持てるような状況ではないということが──先ほど影響が最小限にとどまるようということで言われてるわけですから、影響があるということです。
 そういった点で、特別相談窓口を設置しということでおっしゃってくださったんですが、ぜひとも窓口で来るのを待ってるということだけでなくて、しっかりと皆さんの声を聞いていただきたいなというふうに思います。
 このインボイス制度については、日本商工会議所の皆さんとか、いろんな団体の皆さんもいろいろ懸念を言われたり、賛成できないとか、そういった声も出てるということでお聞きしてるので、そんな点も含めて、やはりしっかりと御商売されている方たちに寄り添った対応をぜひしてもらいたいなというふうに強く思います。ぜひとも、その点、よろしくお願いします。
 その後、知事にお伺いするのは、こういった状況の中で税金の負担がふえるわけですから、県民の暮らしからいってさまざまな、先ほど申し上げた農業や建設関係、また医療に携わる方、そういった方も含めて全ての県民の皆さんにかかってくる問題だと思いますので、ぜひともこの点も、消費税、この秋に今の状況の中で増税をするということに対して、ぜひ国に強く中止を求めるということで働きかけをしていただきたいと思いますが、その点でいかがでしょうか。
○副議長(岸本 健君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 少子高齢化が急激に進む中、日本の将来を見据えたとき、全世代型の社会保障を実現し、将来にわたってそれを維持するということは、極めて重要なことであると思います。消費税は、あらゆる世代が広く分かち合い、安定的な財源であることから、社会保障制度を担う財源としてはふさわしいものと考えております。
 しかし、消費税率の引き上げがございますと、回復がそんなに力強くない我が国の経済にとっては景気の腰折れを招く、消費減退によって腰折れを招くということが大変懸念をされますし、あるいはこの消費税は、累進制をとっている所得税なんかと比べると、低所得者ほど収入に占める消費税の割合が高くなる、いわゆる逆進性の問題があるわけでございまして、それはそれなりに問題もございます。
 政府もそういうことを考えていて、今回は消費税を上げると言うておりますが、軽減税率の導入など低所得者への配慮をする、それから前回8%への引き上げのときにいろんなことが起こりましたので、その反省に立って、あらゆる施策を総動員し、経済運営に万全を期するというふうにしているところであると理解しています。
 現在、国会では、このような対策、低所得者対策とか景気対策を盛り込んだ予算案等が審議されているところでございまして、消費税率の引き上げに際しては、これらの対策を確実かつ効果的に実施をして、一生懸命消費の下支えを行っていただきたいというふうに思います。
 一般に税金は低いほどよろしゅうございまして、税金を上げるのは反対と言うと大変人気が高まります。しかし、日本の行く末を考えるとどうかなあという問題となるわけでございます。全てについて、我々政治に携わってる者は解を用意しておかないといけないということだと思います。ゆめゆめ人気取りにこれを使って議論してはいかん、そういうふうに自戒をしてるところでございます。
○副議長(岸本 健君) 奥村規子君。
  〔奥村規子君、登壇〕
○奥村規子君 知事の今の発言で、人気取りのためにやっているかのように、私が人気取りのためにやってるかのように聞こえるんですけど、それは撤回をしていただきたいと思いますが。議長。
○副議長(岸本 健君) 答えられますか。
○奥村規子君 「私が」じゃないんですか、私が人気取りのためにやってると。
○副議長(岸本 健君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 最後に、自戒をしなければいけないというふうに申し上げたことで、今の答弁は十分だと思います。
○副議長(岸本 健君) 奥村規子君。
  〔奥村規子君、登壇〕
○奥村規子君 本当にこの消費税、3%、5%、8%、今度は10%、そのときに私は病院経営の現場で仕事をしてたときもあるんですが、本当に経営が大変で、消費税の分が経営的に圧迫してというようなことがいろんな医療機関で起こりました。そういうことも含めて、今はそういう施設やいろんなところにも非常にこの10%の負担が重く広がっていくと思います。
 こんな給与、賃金がなかなかふえていないとき、暮らし向きが大変なとき、ほんで年金がなかなかふえなくて大変だというお話もあります。先日は電話で大学生の子供さんの教育費のことでお電話がありましたが、この間も、働かざるを得ない、バイトをしなければいけないという大学生が、日本学生機構の中ででも、本当に8割がそういうバイトをしないといけないということがあるということをお聞きしたんですけども、そういった状況がある中でこの増税をするということは、本当に経済も何もかも大変な状況になるというふうに申し添えて質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
○副議長(岸本 健君) 以上で、奥村規子君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 36番菅原博之君。
  〔菅原博之君、登壇〕(拍手)
○菅原博之君 皆さん、こんにちは。
 本日、最終バッターとして登壇させていただきました。しばらくおつき合いいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
 まず、本日は、商業捕鯨再開に当たって質問さしていただきます。
 私は、どうしてもこの和歌山県議会の議場の皆様と商業捕鯨再開に当たって確認しておくべきことがあると考えております。
 捕鯨問題は、今まで捕鯨関係者が理不尽な状況に置き去りにされてまいりました。例えば、世界中でビーフやポークが食べられており、魚や犬を食べる国もある。しかし、なぜ鯨だけが捕鯨禁止にならなければならないのか。資源の減少が心配なくなれば、管理された漁獲量のもと、他の魚種同様に一定の数量を商業目的で捕獲することは認められるべきであったはずです。
 モラトリアム・一時停止という名のもと、一時停止では済まずに、これまで永続してきた商業捕鯨禁止は、鯨を購入することに消費者が後ろめたさを感じなかったか、また流通経路では、事業者が商業捕鯨が禁止されている鯨を取り扱って大丈夫かという危惧はなかっただろうか、そういう経過を30年もたどれば、鯨の消費は低迷するのは当たり前のことであります。
 まして、この間に反捕鯨団体のキャンペーンによって捕鯨に対するイメージが意図的に著しく傷つけられました。そうすることで、キャンペーンを展開する団体は、正義の味方のイメージで活動資金として多額の寄附を集め、ますます捕鯨関係者を懲らしめる正義の味方を演出してきたのが、今の鯨の消費落ち込みにつながっています。
 私は、過去に捕鯨問題をこの議場において取り上げたことは、捕鯨関係者の尊厳、ひいては和歌山県の国際的な評価に対する重大な問題があると訴えるためでありました。そして、本県のこの国際的な評価に対する問題は、今後も我々が十分認識しなければならない問題だと強く訴えたいと思います。
 そもそも、捕鯨がいけないという根拠は薄弱であります。命あるものという意味では、牛や豚はなぜ食用に反対されないのか。こういう点で、私が過去の質問の際に取り上げた八木景子監督が制作された「ビハインド・ザ・コーヴ」の中に、代表的な反捕鯨団体のリーダーの発言がドキュメントされておりますが、「牛の食用に反対しても無駄だ。無駄なことはしない」とか「メキシコでウミガメが殺されるのを邪魔しに行ってもお金にならないことを知っている」というものであります。
 彼らは菜食主義者であることを自称しているようですが、命あるものを食して命をつないでいるのは、たとえ野菜や植物を食しても同じことであります。少なくとも、太地町の捕鯨関係者は鯨に感謝し、また日本人には、食事の際に「いただきます」と生あるものから命を分け与えていただいた感謝の気持ちをあらわす精神性が存在しています。そういう文化を一切考慮することなく、自分たちの価値観で捕鯨反対を強要し、世界に偏見を振りまいてきたのが反捕鯨団体の代表的な団体であります。
 世界は、特に西洋は、そういう日本の捕鯨に対する偏見と、反捕鯨団体の活動を擁護する考えに影響されやすい場であります。そこに対して、今後いろいろな摩擦を覚悟して、ついに商業捕鯨を再開することになった知事の今の御所見をお伺いしたいと思います。
 次に、依然、反捕鯨団体の反対がある中での商業捕鯨再開となったわけでありますが、過去の国際社会において一方的と言えるキャンペーン展開に我が国がおくれをとった結果として、日本の捕鯨活動のイメージが意図的にゆがめられ、その反捕鯨団体の意見がIWCを初め国際社会に浸透している状況があるのではないか。当時の国際情勢として、商業捕鯨禁止に反対し切れない状況があったのかもしれないが、私は、この問題を海外での活動経験がある方たちと議論した際に、必ずと言っていいほど「何も言わないのはだめだ、海外では何も反論しないのは認めたことということですから」と何人にも指摘されました。今後は、偏見に満ちたキャンペーンには、政府と協力し、有効に反論することが欠かせないと強く要望するものであります。
 こういった商業捕鯨移行後の課題への対応についても、知事にお伺いいたします。
○副議長(岸本 健君) ただいまの菅原博之君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 鯨類は、他の水産資源と同様、科学的根拠に基づき持続的に利用していくべきものだというふうに私どもは思っております。資源が枯渇しないような範囲内でうまくコントロールされれば、それぞれの国が昔から続けてきた利用は尊重されるべきであるというふうに思うのが当然だと思います。日本政府は、そういう観点から、商業捕鯨の早期再開について、約30年間、ずっと取り組んできたと理解してございます。
 これまで、日本は、鯨資源の保存と捕鯨産業の秩序ある発展というIWCの趣旨──これはIWC自体の趣旨なんですが、協調してまいりましたが、現在では、そういうような条約の目的を逸脱しているのではないかと思わせるほど反捕鯨に偏っておりまして、商業捕鯨につながるいかなる提案も認めないという状況でございますので、これらの情勢を考えると、IWCからの脱退はやむを得ないと私は思います。
 今後は、資源に悪影響を与えないよう厳格な資源管理のもとで、十分な資源量が確認されているミンククジラ等の商業捕鯨が再開されることになると理解しております。
 和歌山県は、これまで継続して商業捕鯨の再開を要望してまいりましたが、今回の政府の決定を当然支持しておりまして、長年、鯨の町として生きてきた太地町の活性化にもこれはつながっていくことを期待しております。
 また、議員御指摘のとおり、反捕鯨団体は、まあ一種のイメージ戦略によりまして、国際世論を巻き込んで不当にイルカ漁を批判してまいりました。さらに、私にとって残念なことは、日本人の中にもそれに同調する人が少なからずいるということでありますし、それから、そこまで同調していなくても、外国人が批判してるんだから、肩身の狭い思いをするよりは、もうやめたらどうだというような、そういう意見の人がいて、これはいかがなものかというふうに思っております。
 県では、ホームページ上で太地町でのイルカ漁業に対する和歌山県の公式見解を世界に発信するとともに、投書などに対してはその都度丁寧に反論するほか、メールマガジンにより情報を発信するなど、さまざまな方法でイルカ漁の正当性を訴え続けてまいりました。
 こうした中で、八木景子監督の「ビハインド・ザ・コーヴ」、佐々木芽生監督の「おクジラさま」の映画が作成されるなど、捕鯨に共感を示してくれる人もあらわれてきたところでございます。
 もとより、人の思想・信条は自由でありますので、鯨を食べるのは嫌いだという人を、それは間違ってるといって弾圧するのはできません。しかし、それをもとにして妨害や嫌がらせなどの実力行使をする、不法行為をするということは、決して許されるものではございません。
 こういう観点から、反捕鯨運動等に対し、このような実力行使に対して迅速、的確に対応できるように、数年前から県警にお願いをいたしまして、警察官をシーズンにはかな
りの人数、常駐をしてもらって、不法な行為の取り締まりをお願いしている次第であります。これまでこのために臨時的に設置してまいりました太地町の交番を、このたびの予算で、恒久施設にするための経費や警戒用カメラの設置に要する経費を、現在提出中の来年度予算でお願いしているところでございます。
 今後も、反捕鯨団体の動きにより一層注視し、国や町、関係者とも連携しながら、太地町の鯨漁と漁業者の生活を脅かすことに対して、県は毅然として対応していく所存であります。
○副議長(岸本 健君) 菅原博之君。
  〔菅原博之君、登壇〕
○菅原博之君 ありがとうございます。
 私が心配するのは、やはり世界で日本が黙っていれば、向こうの主張がどんどんどんどん広がっていくという状況が今までもあったと思ってます。そこは、これからやっぱりそれを、ホームページで言いわけをするというような、そういうような小さい話ではなくて、こっちから積極的に反論していく、世界に訴えていく。それはホームページで訴えるというのも一つの方法なのかもしれませんけど、もっと積極的な活動が必要なんではないかなと思っておりますので、どうかそれも御検討いただきたいと思います。
 さて、次は子育ての問題に入りたいと思います。
 政府は、ようやく幼児教育・保育を無償化する子ども・子育て支援法改正案を閣議決定したとのことであります。これは、3歳から5歳児を持つ全ての世帯とゼロ歳から2歳児を持つ住民税非課税世帯を対象に、子育て施設の利用に要する費用を給付するものでありますが、当初、年間必要な財源額8000億円の負担で国と地方の見解が分かれていたようでありましたが、この中で特に保育事業に関しては、無償化が実施された場合に予算の変動はどう予想しているのか。来年度は事業実施からの見積もり、次年度は通年で、答弁を福祉保健部長にお願いいたします。
○副議長(岸本 健君) 福祉保健部長山本等士君。
  〔山本等士君、登壇〕
○福祉保健部長(山本等士君) ことしの10月から実施予定の国の保育料の無償化は、多子世帯の有無にかかわらず、3歳から5歳までの全ての児童と、ゼロ歳から2歳までの年収約270万円未満の世帯に属する児童を対象としています。
 一方、県では、多子世帯への経済的支援という観点におきまして、国に先駆けて平成20年度から保育料の無償化を実施してきており、現在は第3子以降の全ての児童と年収約360万円未満の世帯に属する第2子の児童を対象にしているところです。
 議員御質問の国による保育料の無償化が実施された場合の県の予算への影響につきましては、国の制度が第1子から支援対象としていることなどから、2019年度の歳出予算額は、この国の制度が実施されることを前提として約31.6億円と見込んでおり、仮に実施されなかった場合、約30億円となることから、差し引き約1.6億円の増額となる見込みです。
 また、2020年度の歳出予算額につきましては、現時点では支援の対象世帯を把握できないため、仮に2019年度予算をベースとして試算すると、国の制度が実施された場合は約33.2億円になると見込まれ、実施されなかった場合の約30億円と比べ、差し引き約3.2億円の増額となります。
 なお、国の制度につきましては、2019年度は10月から半年間の実施に対して、2020年度は1年間の通年ベースでの実施となることを見込んで計算しております。
○副議長(岸本 健君) 菅原博之君。
  〔菅原博之君、登壇〕
○菅原博之君 ありがとうございます。
 歳出予算が、来年度は半年分で1.6億円、再来年度以降からは通年で3.2億円増額という御答弁です。全体で約8000億円の事業費を概算で、報道によれば国が約5000億円、地方3000億円と決着したという結果を聞いておりますが、そういう負担見込みなんでしょうが、全ての幼児保育の無償化は、必ずこれはなし遂げなければならない最低限の施策でありました。つまり、子育ての上で第1子の子育て上の経験が、その後の第2子以降の子育てにつながるからであります。
 本県が独自に取り組んだ第2子以降の無償化は、本来第1子から始めなければ、子育て負担の軽減、出生率の向上につながる効果は限られていたと思っております。それがおおむね5対3の負担割合で本県が3.2億円の支出増となっても、幼児保育の無償化が達成されたこと自体は、人口減少に苦しむ本県にとって大変よかったと思っております。
 フランスの歴史人口学者、エマニュエル・トッド氏は、日本が直面している最大の課題は人口減少であるとして、次のように述べられています。「日本は、親に対する子供の負担、子供に対する親の負担が余りに大きい」、「国がそれにかわるものを提供し、個人の問題から国の問題に変え、個人を解放しなければ出生率は上がらない」と指摘し、日本の保育制度が十分機能せず、出生率の低迷につながっているという認識を示されています。
 御存じのとおりフランスは、先進国の中では少子化の克服に成功した数少ない国でありますが、子供のいる世帯への経済援助が手厚く、幼児教育から大学まで公教育について全額保障し、家族の負担を軽減したことが出生率向上をもたらしたということであります。
 多くは政府がするべき施策でありますが、人口減少は本県の最大の課題であります。全ての政策の根幹をなし、保育・子育て支援はその大きな柱となります。女性の社会進出が大勢あるにもかかわらず、子育てに対する公的な援助がさらになければ、子供は1人育てるだけで精いっぱいだという現状があるのではないでしょうか。だから、出生率がいまだに2%を超える状況になっていないと言えるのではないでしょうか。
 さらに問題があります。これは以下要望になりますが、保育事業で、入院まではいかない軽度の体調不良児に対応した保健室設置、これは国3分の1、県3分の1、市町村3分の1と決められた事業でありますが、この設置をぜひ推進していただきたい。そして、さらに問題なのは、今後の社会では出産後も夫婦どちらも正社員で働くことが当たり前にならなければなりません。共稼ぎ家庭で忙しく働く若い両親が、どうしても緊急に子供を預けて対応しなければならない仕事が入ったとき、パートナーも仕事を休むことができない、世間は日曜日だ、土曜日だ、祭日だ、保育所は休んでいるといったことが、今後の人手不足社会では急に出てまいります。
 この対応は、まずファミリー・サポート・センターです。これは、預かりたい人と預けたい人が会員となって子育てを助け合う事業ですが、あらかじめ会員登録しておく必要があります。昨年にもお話ししましたが、ひとり親の方が先々心配して、あらかじめ相談窓口に行って準備していることはあると思います。むしろ、思いがけず育児で立ち往生となるのは、パートナーとともに協力し、子育てと仕事を両立しようという御家庭のほうが多いのではないでしょうか。こういう育児経験をすると、2人目の出産はハードルが高いということになります。
 この問題の行政側のサービスはどうなっているのかといえば、現在、土曜、日曜、祝日の緊急時の一時預かりは、昨年の福祉保健部長の御答弁では、児童相談所で虐待対応にかかわらず一時保護できる、あるいは児童養護施設、乳児院とおっしゃった。この窓口は、市町村の役所の宿直さんであります。これは、役所の宿直さんに頭を下げてお願いする非常に敷居の高いものであります。しかも、親の仕事が忙しくて子供を預けなければいけない必要があるときに、虐待対応の児童相談所や児童養護施設、乳児院に預けて仕事に行ける親がどこにあるのか。とても子育ての悩みを解消しようという意識とはほど遠い考えでしかありません。改善を強く要望いたします。知事は、担当課の意識をまず変えていただきたい。ぜひお願いいたします。
 これらの親の精神的負担を取り除き、幼保無償化を決めたことに安住せずに、さらに保育・子育て支援の施策によって人口減少を食いとめる方向に一層かじを切っていただくことが、少子化対策にぜひとも必要です。
 次に、児童虐待について質問いたします。
 他県では、痛ましい事件が今も続いております。昨年、私は、本県の児童虐待防止の体制は万全になっているのかという視点で質問をいたしました。福祉保健部長にお答えいただき、東京の例とは違う、しっかりした対応が可能なよう体制が組まれていると理解していましたが、その後、また千葉県で全く東京の失敗例が生かされなかった事件のてんまつを知り、お役所仕事とはこのことかと愕然となったところでありました。
 しかし、本県では、その後着々と県警本部とも合同訓練を実施し、実際に児童相談所職員が家庭を訪ね、被害者を一時保護するまでの流れを確認、虐待が全国で相次ぐ中、訓練を通じて課題を検証したというもので、両親への説得から父親役との激高した状態の緊迫したやりとり等、実践的な合同訓練であったとの報道に触れ、他県の轍は踏まないという意気込みを感じたところであります。
 そこで、福祉保健部長に合同訓練の成果と今後の取り組みについてお聞きいたします。
○副議長(岸本 健君) 福祉保健部長。
  〔山本等士君、登壇〕
○福祉保健部長(山本等士君) 児童相談所が職権による住居への立入調査や児童の一時保護などを行う際に、保護者からの強い抵抗を受けることが予想される場合には、警察と連携して児童の安全確保を行うことが最も重要となります。
 こうした場合の現場対応能力の向上を図るため、児童相談所と警察は、市町村にも参加を呼びかけながら、実践的な合同想定訓練を平成25年度から実施しているところです。今月7日に実施した直近の訓練では、児童相談所に負傷した幼児がいるとの通告があり、職員が保護者宅を訪問するも、暴力的な両親からの執拗な抵抗のため対応が非常に困難な状況にあるとの場面を想定し、まず住居に立ち入ること、次に児童の安全を確認すること、最後に無事に一時保護するところまでの手順につきまして、ロールプレイング形式で行い、警察官との連携体制を確認したところです。また、当該訓練の模様を映像で一つ一つ振り返った上で、講師から介入時の注意点や保護者の説得方法などについて職員が指導を受け、みずからの対応を客観的に見詰め直すことで、改めて一時保護の手順について理解を深めたところです。
 このような訓練は、児童相談所職員や警察官の介入時のスキルアップや実践場面での冷静な判断につながり、円滑かつ確実な児童の安全確保に役立つ大変有意義なものであると考えています。
 今後も、児童の年齢、虐待の状況、家族構成など、さまざまな状況を想定した工夫を凝らし、子供の安全を最優先にした適切な対応ができるよう、継続的な訓練を実践してまいります。
○副議長(岸本 健君) 菅原博之君。
  〔菅原博之君、登壇〕
○菅原博之君 ありがとうございます。
 政府のほうでも、今回の千葉県の失敗を教訓に、家族へのコミュニケーションや支援を行う部署と、家族と児童を強制的に引き離す部署を組織的に分けるという案が今後の課題として検討されているようでありますが、これは昨日、一般質問で、坂本登議員の御質問に知事が、市町村との役割分担をしっかり決めて対応できるようになったという御答弁がありましたが、これは恐らく政府方針の役割分担に近いイメージで理解してよいのだろうと思っているのですが、今後もぜひ情報収集に努め、抜かりのない対応をお願いしたいと思います。
 次の質問に移らせていただきます。
 さて、昨年の臨時国会では、出入国管理法の改正によって、外国人労働者の受け入れ拡大が決定いたしました。この改正には賛否両論があるところですが、本県との関連で質問させていただきたいと思います。
 まず、根本には人手不足の問題があり、もうどうにもならない、外国人労働者の枠をふやしてもらわないと会社が回らないという業種があるということであると聞いておりますが、現に昨年10月25日付の「毎日新聞」朝刊に、政府の菅義偉官房長官のインタビューが掲載されておりました。御紹介させていただきます。
 その中で官房長官が、「人手不足のため廃業するところまで出ている。放置していると社会問題になる。そこで、現在の制度はそろそろ限界だと判断して、新たな在留資格を創設しようと作業しているところです」とお答えになり、聞き手の方が「そう思うきっかけがありましたか」と菅官房長官に尋ねたところ、「私は、市会議員をやっていたので、引き金になったのは老人施設ですね。入所待機者がいっぱいいるんです。せっかく建物を完成させても、全体の2~3割は人手不足のため動いていない。調べると多くの業種がそういうことになっている」とお答えになっておられました。
 御存じのように、菅官房長官は横浜市の市議をされていた御経験をお持ちですので、都会の話と考えることは可能ですが、法律が一旦改正されれば、法律に縛りがない限り、都会でも地方でも縁があれば外国人労働者は雇われてくるわけです。
 そして、外国の方に来ていただくには、地方でもそれなりの準備が必要です。つまり、さきの「毎日新聞」のインタビューで聞き手の方のお話にも出てくるのですが、「国は外国人を労働力としてしか見ずに、生活者としてのケアは自治体任せだと不満を漏らす首長もいます」という危惧は、どの地方にも当てはまるのではないでしょうか。
 この入国管理法改正で新設される特定技能2号は、家族帯同が認められ、熟練技能者に限られるという前提で特定技能1号の状況を見て判断とされていますが、状況によっては介護施設従事者の人手不足対策に組み込まれるか、今の在留資格の介護で資格を持ち、10年以上在留すれば永住許可申請が可能ですので、この制度を拡大していくことが考えられます。
 日本でしっかり働いて、老後も日本で過ごす外国人の方が多く出てくる可能性があるわけです。そういうふうに日本で生涯をかけて働いていただいた外国人の方も、社会保障の恩恵が当然あるべきです。そして、その外国人の子弟を教育し、一人前の日本国民として社会で育てることが必要です。そうでなければ、日本の社会保障を維持することができません。それがうまくいかないのであれば、永遠に移民政策として外国人労働者を入れることで社会保障を成り立たせなければなりません。
 そういうコストや摩擦を考えたときに、まだ先にやることはないでしょうか。和歌山県では、とりわけ介護の現場の人手不足が気になるところですので、例えばIT等の先端技術の活用をもっと大胆に大規模に取り入れることで、かなりの助けになるのではないでしょうか。今後の人手不足を考えれば、時にはITやAI技術が人間に追いつくまでの間、人間のほうがIT、AIに合わせるといった対応すら検討するべきだと思います。もう既に取り組まれていることとは思いますが、担当部署のお考えをお聞きしたいと思います。福祉保健部長、お願いいたします。
○副議長(岸本 健君) 福祉保健部長。
  〔山本等士君、登壇〕
○福祉保健部長(山本等士君) 介護人材の確保については、国において他産業との賃金格差を解消するため、職員の処遇改善が段階的に講じられているところです。
 一方、県では、新規就労を促進するため、これまで高校生を対象とした介護職員初任者研修の開催や返還免除つきの介護福祉士修学資金の貸し付けなど、さまざまな施策を実施してきたところです。
 しかしながら、介護人材を安定的に確保するためには、厳しい労働環境などの理由で他の産業に比べて高くなっている離職率の抑制を図り、介護従事者の定着を促進することも重要であることから、議員御指摘のとおり、ITなど先進的な技術を活用し、職員の業務の負担軽減や効率化に取り組んでいく必要があります。
 具体的には、センサーにより入所者の居室内での状況を見守り、異変を感知した場合には直ちに職員に知らせる見守り支援機器や、適切な排せつのタイミングを感知する排せつ支援機器などといった介護ロボットを導入する介護事業者に対して新たに支援を行うなど、引き続き介護の担い手確保に取り組んでまいります。
○副議長(岸本 健君) 菅原博之君。
  〔菅原博之君、登壇〕
○菅原博之君 ありがとうございます。
 もっと将来的には、ロボットやAIに作業させるという、人間はベーシックインカムの恩恵を受けるという理想もありますが、これはまだ想像の段階で、どういう形になるか形は全くわからないという状況であります。
 いずれにしても、ITやロボット、AIの普及によって人が余る時代も間もなくやってくるという予想もありますので、外国から来ていただいた方にそう都合よく帰れとは言えるわけがないのですから、ここはできる限りIT、ロボット、AI技術によって切り抜ける部分は切り抜けるべきだと考えております。
 次の質問に移らしていただきます。
 これは避難と施設の必要性についての質問でありますが、例えば大型の台風が迫っているときや大雨で水害の危険がある場合、老人のひとり暮らしには避難は大変つらいものであります。御近所の助け合いも、晴天のもとでは声がけなどしやすいものでありますが、豪雨の中では老人のひとり暮らしは孤立しがちです。早い目の避難にしても、車のない方も多く、手近なところに避難ができる場所がないため、気をもむ地域の方も多いとお聞きいたします。
 老人が身の回り品を持ち、徒歩でも避難しやすい身近な施設をふやすべきと思いますが、危機管理監にお尋ねいたします。
○副議長(岸本 健君) 危機管理監藤川 崇君。
  〔藤川 崇君、登壇〕
○危機管理監(藤川 崇君) 風水害などの災害からとうとい命を守るためには、議員御指摘のとおり、高齢者等を含めて的確に避難できるよう、それぞれの地域において安全な避難場所を確保することは大変重要であると考えております。
 県では、平成23年の紀伊半島大水害の教訓を踏まえ、地形による浸水被害や土砂災害の可能性、施設の構造等を考慮して安全レベルを設定するなど、避難場所の見直しを行うと同時に、市町村に対しまして、より多くの避難場所を確保するよう働きかけてきたところでございます。現在、学校や公民館などの公共施設を中心に、県内で約1500カ所の避難場所が指定されております。
 県といたしましては、引き続き市町村に対しまして、それぞれの地域におきまして、より多くの避難場所が確保できるよう働きかけてまいります。
○副議長(岸本 健君) 菅原博之君。
  〔菅原博之君、登壇〕
○菅原博之君 ありがとうございます。
 一方で、民間の方がボランティアで、例えばスポーツを指導しているようなスポーツクラブで、土日などに練習場所として体育館の確保に大変苦労されています。父兄から、わずかな会費で消耗品を補充し、なかなか体育館の使用料を賄って練習するのはしんどいというお話であります。現実には、そういうクラブから小学生で逸材としての才能が発見されます。本県や日本のスポーツのレベルアップに貢献する度合いは高いと言えます。
 そういう体育館ニーズに対応した、また地域での健康づくりに生かせる場の充実を今後は見据えなくてはならないのではないかと考えます。教育長の御所見をお伺いしたいと思います。
○副議長(岸本 健君) 教育長宮下和己君。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 地域住民のスポーツ活動を推進するため、既存のスポーツ施設の活用とともに、小中学校及び高等学校の体育施設を学校教育に支障のない範囲において一般開放しているところです。今後、長期的な視点を持って、地域住民のニーズを把握し、安全で多様な環境を確保するスポーツ施設の個別施設計画を策定することが大切であると考えております。
 県といたしましても、市町村に対し、学校体育施設活用事例や個別施設計画策定に係るガイドラインなど、情報提供を行ってまいります。
○副議長(岸本 健君) 菅原博之君。
  〔菅原博之君、登壇〕
○菅原博之君 ありがとうございます。
 ここは、ひとつ災害への備えと日常の健康推進に活用できる施設づくりとして、将来的によい方向にどちらの部署も向かっていただけますようお願いして、私の一般質問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○副議長(岸本 健君) 以上で、菅原博之君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後2時32分散会

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