平成30年6月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(菅原博之議員の質疑及び一般質問)


平成30年6月 和歌山県議会定例会会議録

第5号(菅原博之議員の質疑及び一般質問)


◆ 汎用性を考慮してJIS第1・2水準文字の範囲で表示しているため、人名等、会議録正本とは一部表記の異なるものがあります。人名等の正しい表記については「人名等の正しい表記」をご覧ください。

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 36番菅原博之君。
  〔菅原博之君、登壇〕(拍手)
○菅原博之君 本日最終になりました。あともう少しでございますんで、おつき合いいただくようにお願い申し上げます。
 では、議長のお許しをいただきましたので、早速入らしていただきます。
 私は、今回の質問を準備するに当たって、大変暗い鎮痛な気持ちを抱いて行わなければなりませんでした。
 本県でも、過去に痛恨の出来事として、児童への虐待を防ぐことができず、児童が死に至りました。大変な社会問題として記憶に新しいところでございますが、他府県とはいえ、またこのような痛ましい犯罪が香川県から東京に転居した家族で起きてしまいました。しかも、早くから通報もあり、行政も十分認識し動いていたにもかかわらず、虐待を防ぐことができず、また死に至ってしまった。
 本県では、過去の厳しい反省、それこそ猛省に立って、現在は十分有効な対応をとられているのでしょうか。
 報道によれば、今回の東京目黒区の事件では、児童の死亡という最悪の結果に行き着くまでに、転居前にも後にも幾つかの重要な、決して行政側が見逃してはならない兆しが幾つもあったと言わざるを得ません。その兆しをつかんでいながら、こういう結果になってしまったのは、犯罪者の言葉を自分たちの都合で解釈し、事なかれ主義で面倒なことには踏み込まない、そういったにおいを強く感じる、まさに負のイメージのお役所仕事が挙げられるのではないでしょうか。
 本県では、こういった最悪の結果はもう二度と起こさない、全ての児童虐待を未然に防ぐという決意で防止策を講じていただいていると信じておりますが、組織というのは人がかわれば記憶も薄れ、マニュアルとルールを遵守するだけの日常になっていくおそれが高いものでございます。
 ここで、本県における過去の反省を踏まえた児童虐待防止の現在の取り組みを福祉保健部長にお尋ねいたします。
○副議長(岸本 健君) ただいまの菅原博之君の質問に対する答弁を求めます。
 福祉保健部長山本等士君。
  〔山本等士君、登壇〕
○福祉保健部長(山本等士君) 県におきましては、平成25年に発生した事案を受けて立ち上げた弁護士や学識経験者などで構成する検証委員会からの提言を踏まえ、県と市町村の役割分担の明確化、組織体制や相談支援機能の強化を図ってきたところです。
 まず、県と市町村の役割分担の明確化につきましては、児童相談所や市町村に寄せられた虐待情報を初期の段階で情報共有した上で、一時保護や措置が必要とされる事案は専門的知識及び技術を有する児童相談所が対応し、在宅支援が可能な事案や一時保護、措置を解除された事案については市町村が対応するなど役割分担を周知徹底し、さらなる児童の安全確保に努めてきたところです。
 現在、児童虐待に対する地域での相談支援体制を一層強化するため、県と市町村におけるそれぞれの役割を明示した協定の締結を進めているところです。
 次に、組織体制の強化につきましては、法的な判断や対応が求められる事案に迅速かつ的確に対応するため、児童相談所に先駆的に専任弁護士を配置するとともに、虐待の初動対応や家族支援などで中核的な役割を担う児童福祉司の増員を図っているところです。
 最後に、相談支援機能の強化につきましては、いち早く初動体制に取りかかるため、児童相談所と警察との間で児童虐待事案における情報共有に関する協定書を締結し、さまざまな情報共有を行うことにより、速やかな児童虐待への対応を図っているところです。
 また、児童相談所が措置を行った児童の家庭復帰を決定する際には、社会福祉審議会に設置された民生・児童委員や学識経験者などで構成する措置専門部会の意見を聞くことで、より慎重な判断をすることとしております。
 さらに、虐待をした保護者に対しては、子供に対する感情を制御し、臨機応変に対応できる支援プログラムを実施するとともに、一般家庭を対象とする虐待の未然防止の啓発にも努めているところです。
 県といたしましては、引き続き虐待への早期対応、再発防止から家族再統合に至るまでの切れ目のない施策の推進により一層取り組んでまいります。
○副議長(岸本 健君) 菅原博之君。
  〔菅原博之君、登壇〕
○菅原博之君 ありがとうございます。
 答弁をお聞きして、対応がかなり進んだのだと思います。しかし、これからも社会が複雑になり、家族のあり方も多種多様になってまいります。安心するのは禁物です。虐待をする者はこういう児童に対するガードの仕組みの目をごまかそうと知恵を働かせるものでありますから、この問題の対応は常に点検が必要だと思っております。
 今回の事例でも、子供を部屋に閉じ込めるという親の行動が見られます。こういった場合は、近所の通報を期待しているというのでは対応は不十分と言わざるを得ません。私は、幼稚園や保育園に未入園の児童に対して、保健所の義務的な乳幼児健診を終了した3歳過ぎから就学までの間、行政のほうから児童にアプローチすることが大切だと思っております。
 来年、平成31年10月からは、国の方針として幼稚園、保育園の原則無償化が行われることが決まっておりますので、つまり県内では待機児童を解消し続けていただいて、全ての児童が経済的には幼稚園や保育園に入園できるようになる中で、未入園児童は本県ではまれなケースと捉える必要があります。人数も限られてくるわけですから、未入園児童や入園していても一定期間欠席している3歳過ぎから5歳児に対しては、必ず行政から子供に関する知識のある者が定期的に面会に行く、こういうことが大変重要だと思っております。
 福祉保健部長にお尋ねいたします。就学前の幼保未入園児童へ行政のアプローチは、現在どうなっているのでしょうか。
○副議長(岸本 健君) 福祉保健部長。
  〔山本等士君、登壇〕
○福祉保健部長(山本等士君) 保育所や幼稚園に入所している児童に対しましては、日常的に保育士などがかかわり、学童の状況を把握し、児童虐待を発見した場合には市町村や児童相談所などの関係機関に通告しているところです。
 一方、未入園児のいる家庭につきましては、市町村の保健師などが定期的に訪問し、児童の状況を確認の上、養育に関する助言等を行い、児童虐待の未然防止を図るとともに、児童虐待を発見した際には関係機関に通知するなどの対応を行っているところです。
○副議長(岸本 健君) 菅原博之君。
  〔菅原博之君、登壇〕
○菅原博之君 ありがとうございます。
 今の部長の御答弁を聞いて、県民の皆さんも安心しているんではないでしょうか。今お聞きして、私は大変にうれしく思います。こういう対応は、市町村に規則として義務づけられていない対応だと思います。特に求められてはいないが、これは重要だという県内の市町村みずからの判断で行われている、あるいは県も含めてそういう会議の場で、そういう意思統一を図られるように、過去、県の行政もきっとしていただいたんだと思うわけであります。
 こういう大変評価すべきことを、どうか県としても、市町村の幼保未入園、長期欠席児童への面会事業をきめ細かくこれからもお支えいただいて、お互いに情報共有されることを要望さしていただきます。
 次に、これまではこの問題を犯罪という視点で取り上げてまいりました。しかし、一方では、育児にストレスを感じ、ついつい子供につらく当たってしまうというケースも考えをめぐらせる必要がございます。この場合は、育児の負担をどう和らげるか、行政としての制度が機能しているのか、これで十分かということであります。
 現在の夫婦共稼ぎが当然の世代で、子育ての負担は大変な重荷で、保育施設の重要性は言うまでもありません。
 子育てにおける両親の負担を軽減するための取り組みの強化について、福祉保健部長にお尋ねいたします。
○副議長(岸本 健君) 福祉保健部長。
  〔山本等士君、登壇〕
○福祉保健部長(山本等士君) 児童虐待を防止するためには、孤立しがちな子育て家庭の悩みや不安が深刻化する前に早期対応することが極めて重要であります。
 こうしたことから、県におきましては、児童相談ダイヤル189を開設し、365日24時間、相談員が対応しているほか、住民に身近な相談窓口である市町村への妊娠前から子育て期におけるさまざまな相談にワンストップで対応する子育て世代包括支援センターの設置を促進するため、市町村に対し、設置費用や運営費等を助成するとともに、先進的な取り組みを紹介する講演会や相談支援に必要な知識や技術を習得する専門研修会を開催しているところです。
 現在、子育て世代包括支援センターは15市町で運営されており、県といたしましては、平成31年度末までの全市町村の設置を目指し、積極的に支援しているところです。
 なお、市町村においては、地域の中で行政サービスを提供する橋渡しをしたり、自身の妊娠や子育て経験を通じて助言を行う母子保健推進員等を配置し、相談支援体制の充実を図っているところです。
○副議長(岸本 健君) 菅原博之君。
  〔菅原博之君、登壇〕
○菅原博之君 ありがとうございます。いろいろ努力していただいてると評価しております。ただ、これはひとえに保育行政が親の育児負担軽減にさらに踏み込まなければ、育児虐待はなくならないとも言えるのではないでしょうか。
 私は、議員になる前のことでありますが、和歌山市内に勤務しておりました際、あることで県の担当部署に朝、お伺いしたことがございます。そのときの光景がいまだに思い出されますが、事務机と事務机の間の通路の部分に寝袋に入って寝ている女性がおられました。私は、そのことに気づかずにその部署に入り、職員の方に挨拶を始めたものですから、その女性が起き上がり、どこかにすごすごと姿を消されました。後から事情を聞くと、家庭でパートナーから暴力を受け逃げてきた女性を保護しているということでございました。保護が深夜であったものですから、すぐに受け入れられる施設がなく、やむを得ずこの部署で職員の寝袋をお貸しし、一晩過ごしていただいた、こういうことはちょくちょくあるというお話でございました。
 その女性のことを思い出すたび、これが幼子も一緒ならどうだっただろうと思わずにはいられません。女性は、幼児がいることで行動が縛られてしまいます。
 人口減少に見舞われる中で、女性の社会進出がなければ社会も回っていかない、それは今後ますます顕著になってまいります。子育て世代が安心して子育てできる環境を整えなければ、人口減少の危機を乗り切ることはできません。そればかりか、両親の育児ストレスが子供に向かう事例は嫌というほどあるわけです。
 病児保育は、県内一部の地域で始まりましたが、軽度の体調不良に対応する保育所内の保健室設置を都市部にももっと強く働きかけるべきです。また、一時保育の施設をふやし、24時間、年中無休対応に近づけるなどの取り組みが行政側の努力として必要です。これは児童虐待のみならず、2人目、3人目の出産を検討してもらえるかどうか、本県の将来にも大きくかかわるポイントであると考えますので、このことも強く要望して、次の質問に移らしていただきます。
 さて、多種の対応を検討してまいりましたが、ここで最悪のケースを想定した場合、つまり子供を両親から引き離し、一時保護所や児童養護施設に入れざるを得ない場合に、誰がいつ判断するかなど、行政の意思決定の仕組みと具体的処置はどうなっているかということを取り上げます。これが子供に対する最後のとりでとなるわけであります。
 子供にとって、親とともに暮らせるならそれが一番よいという判断と、一方で、まともな親なら何度も虐待など繰り返さないわけですから、どこかで引き離しを判断しなければならない。しかし、行政としてちゅうちょするわけであります。ちゅうちょして最悪の結果を招くことが、現実に今回も他県で起きているわけでございます。
 子供を両親から引き離し、一時保護施設や児童養護施設に入れる必要があるかどうかの判断は、誰がいつするのか。行政の意思決定の仕組みと具体的処置はどうなっているのかお尋ねいたしますので、福祉保健部長に、本県では判断は大丈夫だとしっかりお答えいただきたいと思います。
○副議長(岸本 健君) 福祉保健部長。
  〔山本等士君、登壇〕
○福祉保健部長(山本等士君) 児童相談所や市町村に寄せられた虐待事案につきましては、お互いに情報共有を図った上で、児童相談所が、現状の生活では児童の安全が確保されない状況にあり、即座に親子分離が必要と判断した場合は、速やかに児童の一時保護を行っているところです。その際、保護者の抵抗により一時保護が困難となることが予想される事案につきましては、あらかじめ警察に援助要請を行い対応しているところです。
 さらに、一時保護された家庭への対応としましては、保護を行った児童への心身のケアはもちろんのこと、虐待を行った保護者に対しても子育ての方法や親自身のストレス管理の学習、児童福祉司による家庭への助言、指導などの支援を行い、親子分離した家族の再統合に向けた取り組みを進めているところです。
 しかしながら、いまだ児童の安全が確保される状況ではなく、家庭への復帰が困難であると判断される場合には、保護者の同意を得た上で施設入所等の措置をとっているところです。ただし、保護者の同意を得られない場合においては、社会福祉審議会の措置専門部会の意見を聞いた上で、家庭裁判所の承認を得て施設入所等の措置をとっているところです。
 いずれにいたしましても、一時保護から施設入所等まで迅速に行い、児童の安全確保を最優先にした対応を行ってまいります。
○副議長(岸本 健君) 菅原博之君。
  〔菅原博之君、登壇〕
○菅原博之君 ありがとうございます。県民の皆様や市町村の最前線の現場で取り組んでいただいてる方たちにも十分に今の御答弁が心に響いたことを願って、次の質問に入らせていただきます。
 さて、次は本県の農業政策についてお伺いいたします。
 昨年、私は、6月議会で国へのAIやロボット農業についてビジョンを持って要望するべきだと質問させていただきました。昨年は、そういう先端農業の本県にマッチした取り組みを国に要望するということで質問させていただき、部長もそういう御趣旨の答弁をいただいたと理解しております。
 私は、本県農業の将来を考えたときに、将来ビジョンを具体的に絞り、その実現のために県みずから国に働きかけることが非常に重要だと考えております。その意味で、今議会の会期前に配付された国の施策及び予算に関する和歌山県の提案・要望には、そういったビジョンに基づく要望と思われる内容が乏しいと言わざるを得ません。
 しかし、こういうことは表面化していない部分での働きかけもあるのは承知しておりますので、そういう働きかけはどうなっているのか。本県農業の目指す将来ビジョンに応じた、特に先進のIT農業について、昨年6月議会で私の質問以降の国への働きかけの状況について、農林水産部長にお尋ねいたします。
○副議長(岸本 健君) 農林水産部長原 康雄君。
  〔原 康雄君、登壇〕
○農林水産部長(原 康雄君) 県では、長期総合計画の中で農業の目指す方向として収益性の高い農業の実現を掲げ、その手段の1つとして、生産性向上のため、ICTやロボット等の革新的技術の活用によるスマート農業の推進を図っています。
 議員御質問の昨年6月議会以降の状況については、昨年5月の政府提案活動に引き続き、7月に再度、農林水産省を訪問し、本県の状況を説明するとともに、国の公募型研究における傾斜地を対象とした研究テーマの設定と予算の確保を要望しました。さらに、国の研究機関である農研機構にも同研究への主体的な参加を働きかけたところであります。
 その結果、傾斜地果樹でのドローン活用技術が平成30年度の公募型研究の課題として設定されるとともに、本年3月には農研機構を中心に本県を含む複数の公設試験場、機械やITのメーカーとともに公募型研究に応募し、6月に採択が決定いたしました。本県の働きかけにより、これまでほとんど進んでいなかった果樹でのドローン活用の技術開発が全国レベルで本格的に取り組まれることとなったものです。
 今後も、県としては、国、大学や機器開発メーカーと連携を強化し、本県農業に役立つ研究開発や先進技術の導入に積極的に取り組むとともに、国に対しても具体的な提案を行っていく所存であります。
○副議長(岸本 健君) 菅原博之君。
  〔菅原博之君、登壇〕
○菅原博之君 ありがとうございます。素早く要望に動いていただいて、成果を出していただいてると思います。本当にありがとうございます。
 昨年も質問の際に訴えさしていただきましたが、国は過去にも、先進農業に取り組む際には、地域を選定し、実証に取り組んだこともございましたし、東北や北陸では巨大なサイロや大規模な機械設備、施設を土地以外の全てを地元の負担にせずに、国が巨額を投入し、先進農業を普及させてきたという例もございます。つまり、当時の先進米作農業を普及させることが国の政策になっていて、そのとおり国が巨額を投じて東北や北陸各地に投資を行っていたことになります。
 本県農業の将来ビジョンを具体的に踏まえた国への要望を今後も続けていただき、要望でございますが、AIやロボットなど先進農業の研究施設をぜひ県内に誘致していただけるような国への働きかけを農林水産部にお願いいたします。これは、本県農業にとって大変重要なことだと思っております。
 では、次の質問に移らしていただきます。
 次に、県民の健康長寿への取り組みについてお尋ねいたします。
 去る4月18日、和歌山県立医科大学臨床講堂において、弘前大学センター・オブ・イノベーション拠点長、中路重之特任教授による「地域の健康づくりは可能なのか・青森の短命県返上活動より」という御講演が行われました。私も仄聞し、参加させていただいたのでありますが、その講演の内容は非常に斬新な考えに基づく活動と、息の長い地道な地道な活動を継続していくという部分がございました。
 まず、非常に斬新な考えに基づく活動の部分では、岩木健康増進プロジェクトと呼ばれる研究活動であります。岩木ビッグデータでは、1人の人間の分子生物学的データから社会環境データまでを全て関連づけた網羅的解析が可能になると見込まれております。つまり、人間の人生においてどの複数の要因がどれだけ作用すればどういうふうに体調が変化するのかを科学的に解明されると言える研究であります。まさに、病気や体の不調の根源を探る研究とも言えます。
 この取り組みのことを県も御存じでしょうか、福祉保健部長にお尋ねいたします。
○副議長(岸本 健君) 福祉保健部長。
  〔山本等士君、登壇〕
○福祉保健部長(山本等士君) 弘前大学が進める岩木健康増進プロジェクトは、過去の生活習慣が健康にどう関係しているかを長期にわたって分析し、予防法を開発する研究です。
 このプロジェクトは、弘前市岩木地区の住民健診によって得た食生活、喫煙、運動などの生活習慣や病歴、血圧、血液検査、さらには遺伝子解析、腸内細菌と2000項目にわたる延べ2万人以上の健康ビッグデータを蓄積するなど、多くの住民から多項目のデータを13年間の長きにわたり追跡調査しており、検査項目数において日本では類を見ない研究と承知しています。
 なお、今年度から和歌山県立医科大学がこのプロジェクトに参加し、7月からは、これまで県内5町村で取り組んできた研究に、新たに腸内細菌などの検査項目を加え取り組んでいくと聞いております。
○副議長(岸本 健君) 菅原博之君。
  〔菅原博之君、登壇〕
○菅原博之君 ありがとうございます。県当局も御存じいただいているということで話が早いんですが、これはDNAなどの分子環境データ、また診療データや体内にすみついている共生細菌など、生理・生化学データ、あと個人生活活動データ、社会環境的データの4分野について収集されたビッグデータをもとに、疾患の予兆に関する研究と聞いております。
 さらに、青森県の短命県返上活動では、長寿県との寿命の違いが何歳ごろからあらわれるのかに着目した結果、早ければ40歳代から長寿の長野県との間で死亡率の差が徐々に、しかしはっきりとあらわれ始めることがデータとして得られたというお話でありました。
 そして、その現象の結論として、これは医療機関の差というよりは健康知識の差と言うほかはなく、ということは、生活習慣が要因の病気の場合は30年ぐらいかかって発現すると見られていることから、小学生や中学生から健康に関する知識を教えていかなければ容易に死亡年齢を上げることはできないという結論に至り、現在は医師による学校での健康講座に注力されているということでありました。将来は、その教育の中にも岩木健康増進プロジェクトの研究成果が生かされることになります。
 この取り組みに関して本県はどう評価されているのか、福祉保健部長にお尋ねいたします。
○副議長(岸本 健君) 福祉保健部長。
  〔山本等士君、登壇〕
○福祉保健部長(山本等士君) 平成27年の青森県の平均寿命は男性78.67歳、女性85.93歳であり、全国最下位となっています。このため、青森県では、平成26年度から短命県返上を掲げて、県や市町村、事業所、学校など産官学民連携による積極的な取り組みを行っています。
 中でも、弘前大学は主導的な役割を担い、岩木健康増進プロジェクトを初め学校での健康教育に特に力を入れています。具体的には、小中学校100校に出向き、青森県の健康指標や生活習慣病の予防、運動プログラムなど年間を通じて6回にわたる授業を実施しています。その授業では、みずから開発した生活習慣病予防の動画や健康診断ゲームなどの教材を活用するなど、適正な生活習慣を実践できる健康教育に取り組んでいます。
 子供のころからの健康教育は重要であることから、本県におきましても今後の取り組みの参考にしたいと考えております。
○副議長(岸本 健君) 菅原博之君。
  〔菅原博之君、登壇〕
○菅原博之君 ありがとうございます。
 一方、この青森県の短命県の返上活動は県民活動として取り組まれており、それこそ青森県内37自治体による市長、町長による健康宣言や職域での健康経営認定事業の開始、現在100の企業が認定されているとのことでありますが、それらが学校での健康教育と三位一体となって活動が行われております。
 そして、私としては大変ショッキングと言うべきか、やはりそうだったのかと言うべきかという心境ですが、この御講演中に中路教授からある御意見がございました。
 それは、健康診断についてであります。人間ドックなど、今の健康診断に対する疑問が医学界の中から出ているというお話でございます。なぜならば、健康診断の受診率が上がっても、必ずしも死亡率の減少につながっていないという御指摘で、そうなるとこれはもう壮大な無駄遣いということになるという中路教授の御意見でございました。
 つまり、人間ドックや健康診断で診断結果を判定されても、その判定の意味するところや今後の健康に対する医学的知識を持たせないと健診の効果が上がらないということであります。そういう意味で、健康診断受診時の健康教育も大切な手法であるという御趣旨のお話もございました。
 また、岩木健康増進プロジェクトで目指す主な医学上の成果としては、ビッグデータを用いた疾患予兆法の開発、予兆因子に基づいた予兆法の開発、認知症サポートシステムの開発などであります。
 したがって、本県でも将来的にこの研究成果を含めることを念頭に、現状は健康教育の推進という考えで本県の保健衛生の取り組み、とりわけ青森県で行われているような学校での年間6回に及ぶ健康知識の講座や健康診断受診時の健康知識普及を推進すべきと考えております。
 このことについて、知事の御所見をお伺いいたします。
○副議長(岸本 健君) 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 本県においても、平均寿命、健康寿命ともに全国で低位にございますので、本年3月に第3次和歌山県健康増進計画の中間見直しを行い、1日の歩数が少ないことや喫煙率の低下が鈍化していることなど、健康課題を明示したところであります。
 その課題解決のために、従来から健康推進員の養成とか、最近は個人や地域間のウオーキング、運動した際のポイント制度とか、いろいろとこれまでの取り組みに加えて、今年度は市町村の取り組み発表やウオーキングイベントなど内容を充実し、参加団体もふやしてわかやま健康と食のフェスタを開催することにいたしました。
 また、全国健康保険協会和歌山支部と協力して、新たに健康事業所の認定制度を設け、健康づくりに積極的に取り組む事業所をふやしていくようにしたいと思います。
 健康教育についても、これまで小・中・高等学校において、保健体育の授業を中心に医師会や保健所の医師、保健師、管理栄養士による出前教室を実施してまいりました。今年度は、乳幼児の保護者や小・中・高校生を対象として、食生活、運動、たばこの害などの項目別に漫画を取り入れたわかりやすい教材を作成し、出前教室での活用はもちろんのこと、小・中・高等学校の授業等にも活用していくつもりでございます。
 また、特定健康診査受診時の健康教育にも積極的に活用してもらい、子供から大人までの生涯を通じた健康教育を充実さしていくつもりでございます。
 県としては、今後とも市町村、事業所、学校、健康ボランティアと一体となり、県民の皆さんが生涯を通じて心身ともに健康で長生きできるように取り組んでまいりたいと思います。
○副議長(岸本 健君) 菅原博之君。
  〔菅原博之君、登壇〕
○菅原博之君 ありがとうございます。
 ぜひ、学校での早いうちからの健康教育というのに注力していただきたいと思っております。どうか今後ともよろしくお願いいたします。
 これで、終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○副議長(岸本 健君) 以上で、菅原博之君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 次会は6月25日定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後2時34分散会

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