平成29年12月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(中本浩精議員の質疑及び一般質問)


平成29年12月 和歌山県議会定例会会議録

第2号(中本浩精議員の質疑及び一般質問)


汎用性を考慮してJIS第1・2水準文字の範囲で表示しているため、会議録正本とは一部表記の異なるものがあります。

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  午後1時0分再開
○議長(尾﨑太郎君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 18番中本浩精君。
  〔中本浩精君、登壇〕(拍手)
○中本浩精君 皆様、こんにちは。本日3番目に登壇さしていただきます中本です。
 本当に朝夕めっきり寒くなってまいりました。お体には十二分に御自愛いただきまして、12月定例会、頑張りましょう。
 それでは、議長のお許しをいただきましたので、通告に従いまして一般質問をさせていただきます。
 まず、1項目め、小田井用水路の世界かんがい施設遺産登録を受けて、井澤弥惣兵衛さんを知ろう会、大畑才蔵ネットワーク和歌山との連携についてお尋ねいたします。
 皆さん既に御存じのように、去る10月10日、小田井用水路が世界かんがい施設遺産に登録されました。まことにおめでたいことです。登録に当たって、これまで何かと御尽力くださった小田井土地改良区の皆さんや県農林水産部など、関係各位に心から敬意と感謝を申し上げます。ありがとうございました。
 世界かんがい施設遺産は、平成26年度に創設され、国際かんがい排水委員会(ICID)──本部・インド──が、建設から100年以上経過している、かんがい農業の発展に貢献した、歴史的、技術的価値があるなどの登録基準に従って選定しており、28年度までに世界47施設が登録されています。本年度は、日本から小田井用水路や土淵堰(青森県弘前市)など4施設が登録を申請し、登録が認められました。
 小田井用水路は、江戸時代中期に徳川吉宗の命でつくられ、現在の橋本市から岩出市まで、紀の川沿いの4市町を流れている用水路で、登録が認められた理由は、建設当時の用水路が多く残っていること、当時の建設技術が後世に受け継がれていることが高く評価されたからであります。
 かんがい面積は、建設当時が約1000ヘクタール、現在は、都市化や水稲から果樹への作物変更などの影響を受け567ヘクタールで、用水路の延長は32.5キロとなっています。1707年に、当時紀州藩主の徳川吉宗が新田開発に伴って必要となる用水を確保するため、土木技師の大畑才蔵に工事を命じ、3年後に完成させた用水路です。
 今回の世界かんがい施設遺産登録で、関係者は、「農家だけでなく、地域が一体となって施設を守る意識が醸成されるのではないか」、「これほど大規模な施設が残っていることは少ない。地域の皆さんに重要さを知ってもらい、用水路を誇りに思ってもらえたら」とコメントを発表しております。
 私がここで注目したいのは、大畑才蔵という1人の人物です。大畑才蔵は、名を勝善といい、伊都郡学文路村、現在の橋本市学文路で1642年に生まれました。才蔵は、小さいころから算数が得意だったようですが、大人になってから土木に精通し、1696年に紀州藩に召され、農政に携わりました。
 才蔵が55歳のときです。この年に工事を藤崎井から始め、11年目の1707年に小田井の工事を始めました。この2つの水路の開削は、もともと藩主が農民を救済するために行ったものです。当時、才蔵は、木、竹を使ってやっとのことで測量しました。水路を山際で迂回させ、また谷川を横断させ、暗渠を掘って川底を通したり川の上に渡井をかけるなど、この上なく困難な工事であったことは、今日においても人々のひとしく感心するところであります。
 才蔵がこの2つの水路の布設のために開発した技術は数え切れません。今でこそ紀の川の北側一帯には多くの水田が広がり、県内有数の田園地帯となっていますが、当時、この地はたびたび干ばつに襲われ、「月夜にやける」と言われるほど水の便が悪い土地でした。伊都・那賀地方の肥沃な田野はこの2つの水路の恩恵を受け、そして10万以上の人々がこの水の恩恵を受けています。これは、大畑才蔵が水路を開発したおかげです。才蔵が2つの水路を開削して以来200数十年、才蔵の功績はきわまりないけれども、多くの人々はその功績を余り知りません。
 才蔵は、1715年に74歳で藩の職をやめるまで手がけた治水事業は、小田井用水のほか、藤崎井、六箇井など、数々の業績を残しましたが、1720年、華々しい脚光を浴びることもなく、地方史の片隅で生涯を終えました。高齢に加え、昼夜を問わず治水事業に取り組んだ姿に才蔵の不撓不屈の精神をうかがうことができ、また、それは地位や報酬のためではなく、農民のため、地域の人のためという強い使命感によるものであったと考えられます。
 4年後の2020年は、大畑才蔵没後300年に当たり、くしくも東京オリンピック・パラリンピックの開催という記念すべき年になりますが、今回の世界かんがい施設遺産登録を契機に、郷土の偉人である治水の神様・大畑才蔵の顕彰、彼の苦労と業績を後世に語り継ぐこと、また、若い世代にその精神を引き継ぐことが大変重要かと考えます。
 また、小田井用水路の開削に当たり、もう1人の貢献者である井澤弥惣兵衛がいました。江戸時代、名君とうたわれ、米将軍と呼ばれた8代将軍徳川吉宗を支えたのは大畑才蔵であり、その上司であった井澤弥惣兵衛であります。
 井澤弥惣兵衛は、那賀郡溝口村、現在の海南市野上新で生まれ、徳川吉宗が紀州藩主のときに勘定方につき、紀の川流域の新田開発などを行いました。その後、8代将軍となった吉宗の命を受け、小田井の技術と経験を用い、各地のかんがいや新田開発といった事業に尽力した人です。主な事業に、見沼干拓(埼玉県さいたま市)、多摩川の改修、手賀沼(千葉県我孫子市)の新田開発などを行ったことで有名です。新田開発は、吉宗の享保の改革の1つに数えられておりますが、井澤弥惣兵衛らの活躍により幕府の財政を建て直すことができました。
 そこで質問ですが、大畑才蔵、井澤弥惣兵衛の業績をより多くの人に知ってもらい、活用していくために、今後どのような取り組みをお考えでしょうか。また、地域の皆様が集まり、大畑才蔵ネットワーク和歌山や井澤弥惣兵衛さんを知ろう会がつくられると聞いています。連携していくことが重要だと思いますが、いかがお考えでしょうか。知事にお尋ねいたします。
○議長(尾﨑太郎君) ただいまの中本浩精君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 小田井用水路が世界かんがい施設遺産に登録されたことは、大きな喜びであります。大畑才蔵や井澤弥惣兵衛が考案した、緩い勾配の用水路をつくり農業用水を確保するとともに、河川に堤防を築き新田開発をするという工法は、紀州流と呼ばれ、全国に広がり、現在の土木技術の基礎を築いていると言われております。
 県では、これまでもふるさと教育の一環として、大畑才蔵や井澤弥惣兵衛など、県ゆかりの先人らをより多くの県民にもっと知ってもらうために「わかやま何でも帳」を作成し、中学生用に配布しておりますけれども、一般の方々にも、これは有料ですが、販売をしてるということでございます。
 議員御提案の大畑才蔵ネットワーク和歌山、井澤弥惣兵衛さんを知ろう会は、地域の熱心な皆さんにより結成されておりまして、これまでも県と両会は、両名の偉業を後世に伝えていくために、シンポジウムやウオーキングイベントなどを協力しながら二人三脚──三人六脚かもしれません──で開催をしてまいりました。今後も協力して、水路の必要性、重要性やお二人の功績を県内外に広く発信し、この貴重な施設を観光や若い皆さんへの教育の材料として活用してまいりたいと考えております。
○議長(尾﨑太郎君) 中本浩精君。
  〔中本浩精君、登壇〕
○中本浩精君 今、知事より御答弁いただきました。ありがとうございます。
 大畑才蔵ネットワーク、井澤弥惣兵衛さんを知ろう会と連携して顕彰活動をすることにより、2人の郷土の偉人の輝かしい業績や立派な人間性をより多くの県民の皆様、国民の皆様に知っていただけることを心から願っております。
 そこで、1つ提案させていただきたいことがございます。
 平成23年度から、和歌山県と明治大学主催で和歌山県偉人顕彰シンポジウムが行われております。所管は県企画部文化学術課です。これまで、南方熊楠、陸奥宗光、濱口梧陵、華岡青洲、松下幸之助など、そうそうたる郷土の偉人が取り上げられています。本年度は、私が以前、本会議で前畑秀子NHK朝ドラ誘致活動の件で御質問した折、御紹介させていただいた御坊市出身の和田勇さんのシンポジウムが来年の2月24日に予定されています。テーマも「東京にオリンピックを呼んだ男」で、実に時期を得たすばらしい企画だと思います。
 この和歌山県偉人顕彰シンポジウムに取り上げる人物にも、やはり旬と言えるものがあると思います。紀州流土木技法という独自の技術を導入し、紀州藩のみならず他藩にも展開して、用水路や新田開発、干拓に輝かしい業績を上げた海南市出身の井澤弥惣兵衛さんと橋本市出身の大畑才蔵さんは、世界かんがい施設遺産に登録されたこの機会が旬と言えると私は思います。また、橋本市ゆかりの世界的な数学学者である岡潔さんは、来年、没後40年を迎え、テレビのスペシャルドラマにも取り上げられると聞いており、こちらも旬と言えると思います。
 旬と言える人物を顕彰することは、和歌山県のPRにも大いにつながると思いますので、ぜひこれらの偉人の顕彰シンポジウムを御検討いただきますようよろしくお願いいたします。要望といたします。
 また、ネットワーク和歌山や知ろう会の会員さんのように熱心に顕彰活動をしてくださっている人たちだけではなく、このような活動を積極的に支援してくださる個人、団体もあります。
 JAグループ和歌山がこの活動を積極的に支援してくださり、ここに持ってきたんですが(資料を示す)、「ちゃぐりん」というJAの月刊誌9月号、漫画「いのちの歴史」の欄で大畑才蔵さんが取り上げられました。JA紀北かわかみがこの本を小学校4年生の郷土の学習の資料として役立たせてほしいと橋本市に寄贈してくださり、4年生の全ての児童に配布されました。このような輪がますます広がって地域全体で顕彰活動が盛り上がっていくことを期待いたしまして、次の質問に入らせていただきます。
 2項目め、ふるさと教育の推進についてお尋ねいたします。
 私は、平成26年12月定例会において、ふるさと教育の推進について一般質問をさせていただきました。
 当時の西下教育長からは、「ふるさと教育は、ふるさと和歌山に愛着と誇りや自信を持ち、心豊かな人間性を育むものです。子供たち一人一人が生涯にわたって生き生きと生きていく上でのよりどころになるものであり、大きな意義があると捉えております。 このため、学校においてふるさと教育の推進を図り、児童生徒が郷土のすばらしい自然やすぐれた先人、世界に誇れる文化、地域を支える産業等と触れ合う機会を充実させているところです。そこで得た感動体験を通して、すばらしい郷土の歴史や文化等をしっかりと受け継いでいける児童生徒を育てていきたいと考えております」との答弁をいただきました。具体的には、主に「わかやま発見」、「わかやま何でも帳」を作成し、各校において活用して、ふるさと教育の充実に努めていくとのことでした。
 ふるさと教育の進捗状況及び今後の取り組みについて、教育長にお尋ねいたします。
○議長(尾﨑太郎君) 教育長宮下和己君。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) ふるさと教育は、子供たちの心豊かな人間性を育むための本県の重要な教育の柱であり、市町村教育委員会とともに、さまざまな機会を捉えながら取り組みを推進しております。
 県教育委員会では、平成21年度から、地域の自然や文化、歴史、先人などについて児童生徒が学習した成果を募集し、すぐれた取り組みを表彰する「ふるさとわかやま学習大賞」を実施しております。例えば、大賞となった作品では、地域の川の源流を探ることを通して子供たちの環境への意識を高めるなど、すぐれた取り組みがふえてきており、地域を学ぶとともに、地域を守っていく心情を育てる実践まで発展してきております。
 平成28年度には全ての中学生に「わかやま何でも帳」を配るとともに、平成29年度は小学校にも1学年分を配布し、活用しております。あわせて、ふるさと和歌山を広く県民に知ってもらうため、一般販売も行っているところです。
 さらに、今年度、ふるさと和歌山の一層の理解を深めるため、その時々に合った和歌山ゆかりの先人や出来事を個別に取り上げて紹介する「きいちゃんと学ぶ!ふるさとだより」を作成し、各学校に配布することといたしました。今年度は、没後120周年となる陸奥宗光や生誕150周年を迎える南方熊楠を紹介しております。
 今後の取り組みといたしましては、ふるさと和歌山のことについて意欲的に学べるよう、また学んだ成果を実感できるよう、中学生、高校生を対象にした「わかやまふるさと検定」の実施に向けて検討しているところでございます。
○議長(尾﨑太郎君) 中本浩精君。
  〔中本浩精君、登壇〕
○中本浩精君 ただいま、県内の学校現場の状況について教育長より御報告いただきましたが、私は、どうも学校によってふるさと教育の取り組みに温度差があるように思えてなりません。
 ふるさと教育副読本「わかやま何でも帳」平成28年度改訂版を読ませていただきましたが、大変よくできた副読本だと思います。これでございます。(資料を示す)答弁にもありましたが、市販もされていますので、県民の皆様にもぜひ読んでいただきたい本だと思います。
 その本の初めに、仁坂知事が次のように書かれています。「和歌山県のことを勉強すればするほど、和歌山のすごさに驚き、長い間知らなくて『損をした』ような気持ちになりました。ふるさとの良さに気づかないことは自分の良さに気づかないことと同じように、『もったいない』と思うのです」、「皆さんが生まれ育った『ふるさと和歌山』の自然、歴史、文化、そして先人たちのことをもっと知ってもらいたい。自信と誇りと真っ直ぐな志を育てたい。そんな思いを込めて、この『わかやま何でも帳』を発行しました」と書かれています。
 どうか学校現場でこの本をもっと積極的に活用していただき、子供たちにふるさとのよさ、自分のよさに気づかないことはもったいないことであることを気づかせてあげてほしいと思います。
 そこで質問ですが、各小学校・中学校では、ふるさと教育を教育課程にどのように位置づけ、指導されているのか。具体的に言いますと、社会科、総合的な学習の時間等で年間指導計画に基づいてどのような指導をしているのか、もう少し詳細をお聞かせください。
 また、平成25年に学校教育法施行規則が改正され、土曜日等、従来の休業日であっても、設置者の判断により授業が可能となりました。また、学校以外においても、土曜日を活用した多様な学習や体験活動等の機会の充実が求められているところです。私の住んでいる橋本市においても、土曜日の教育活動として、希望者を対象に理科教室などが盛んに行われています。
 ふるさと教育にかかわって、土曜日等休業日に自分たちが住んでいるふるさとの偉人の学習や見学会、地域の人材を活用しての授業など、土曜日の教育活動として顕著な例があれば教えていただきたいと思います。教育長にお尋ねいたします。
○議長(尾﨑太郎君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 学校におけるふるさと教育は、ふるさと和歌山のすばらしさに気づかせるとともに、郷土を誇りに思う心情や態度を育成するため、各教科を初め、あらゆる教育活動に関連づけて実践されています。
 県教育委員会といたしましては、特に各教科等と関連づけた学習が充実するよう、「わかやま何でも帳」の活用方法を示した事例集や、地理、歴史や自然等を扱う社会科及び理科との内容の関連を示した教科書対照表を作成、配布し、学校で活用してございます。
 各学校においては、例えば総合的な学習の時間に「わかやま何でも帳」を使うなどして地域を学び、その地域の課題を発見し、課題を解決する学習等に取り組んでおります。また、道徳の時間には、本県独自の道徳教科書「心のとびら」、「希望へのかけはし」を活用して、本県ゆかりの先人を教材として道徳性を養う学習を行っております。
 土曜日の教育活動につきましては、PTAが主体となり、地域の方々と中学生が一緒に特産物の栽培、収穫を行う取り組みや、公民館等の講座として、小中学生が地域の語り部からふるさとの先人について話を聞く学習、地域の方と一緒に地元の史跡や旧跡をめぐるウオークラリー等、さまざまなところでふるさとについて学ぶ活動が実施されております。
 また、県教育委員会では、高校生を対象に土日を活用して、さまざまな分野でのオピニオンリーダーによる教育講演会「高校生のための和歌山未来塾」を開催し、未来を切り開き、ふるさと和歌山の未来に貢献できる子供の育成に取り組んでございます。
○議長(尾﨑太郎君) 中本浩精君。
  〔中本浩精君、登壇〕
○中本浩精君 ありがとうございました。
 本年度から、学校と地域が一体となり、役割分担をしながら同じ目標に向かって取り組むきのくにコミュニティスクールが始まりました。国語、算数、数学などの学力補充的な授業だけでなく、学ぶ喜びを感じるような授業、また、ふだん学校では得られないような知識や教養を学べる土曜日の教育活動を地域の人とともにつくり上げていくのも1つの方策ではないかと思います。土曜日等休業日の有効活用について、今後検討していただきたいと思います。どうかよろしくお願い申し上げます。
 次、先日、11月6日から3日間、経済警察委員会県内外調査で、和歌山市にある和歌山大学観光学部、新宮市の新宮警察署、白浜町にある南方熊楠記念館、東京都港区にあります中国向けの越境ECで業績を上げている事業所等へ視察、調査研究に行ってまいりました。
 行く先々で多くのことを学ばせていただき、実に有益な調査でしたが、県内をバスで移動する際、ふるさと和歌山は、本当に風光明媚なところで、自然がいっぱいあってすばらしいところであると改めて思いました。新宮市出身のふるさとをこよなく愛した詩人であり、作家でもある佐藤春夫先生が「空青し山青し海青し」とふるさと和歌山を詩に詠まれましたが、まさしくそのとおりの我がふるさとです。
 南方熊楠記念館の調査の目的は、南方熊楠研究のための大変貴重な施設であるだけでなく、本県の紀南・白浜観光の視点からも非常に重要な位置を占めており、本県が「おとなの白浜さんぽ」と題して、お隣の京都大学白浜水族館や番所山公園、白浜のシンボル円月島とあわせて、知的好奇心を満たす推奨モデルコースとして力を入れているエリアであり、その現地視察でもありました。行ってみて、より多くの人に体験していただきたいすばらしいコースだと実感しました。
 この3月にリニューアルオープンしました南方熊楠記念館ですが、今月5日には、秋篠宮御夫妻と悠仁様が御訪問されています。展示をごらんになるとともに、屋上より神島の浮かぶ田辺湾の眺望を楽しまれたと聞いております。私どものふるさと和歌山の偉人に興味を持っていただき、その自然を楽しんでいただいたと思うと、大変うれしく、また誇らしく感じます。
 さて、その南方熊楠記念館では、谷脇館長さんから南方熊楠の偉大な業績について学ばせていただきました。改めて南方熊楠のすごさに驚いた次第です。そして、とてもうれしくなってまいりました。和歌山の自然の豊かさがこんな巨人を生み、育んだのだと思うと、感動で胸がいっぱいになりました。将来を担う子供たちにぜひ一度は訪れていただきたい場所だと思います。
 和歌山には、県民が誇りに思うたくさんの偉人がおられます。「わかやま何でも帳」をごらんください。大変多いことに気づかれると思います。
 ことしは、郷土の偉人に関する大きなイベントがたくさんありました。9月23日には、和歌山県主催、外務省後援の没後120年陸奥宗光シンポジウムが岩出市の旧県会議事堂でありました。幕末の英雄・坂本龍馬に「我が海援隊の士にして、両刀を取り上げて飯が食える者は、ただ俺と君のみだ」と言わしめた人物、陸奥宗光。近代日本の礎を築いた郷土の偉人への理解を深めるよい機会になりました。
 また、10月22日には、先ほど申し上げました世界的な植物学者であり、知の巨人と呼ばれている南方熊楠生誕150周年を記念する式典「未来を生きる巨人 南方熊楠を語る」が田辺市の紀南文化会館で行われました。
 このようにビッグなイベントが続いていますが、これらは、ふるさと教育の最適な学習の場であり、最高の教材になると思います。ふるさと教育を推進していく上で、私は、子供を指導する立場にある教師の意欲や熱意が特に重要であると考えています。道徳教育と同じで、教師の熱い思いが子供の心を揺り動かし、子供に感動を与えると思います。そのためにも、学校の先生方には、講演会等に積極的に参加して、郷土の偉人の努力や苦労、人間としての魅力を学んでいただきたいと思います。
 そこで、質問させていただきます。このような講演会等を教職員の学習の場とすることは大変有意義であると考えますが、教育長のお考えをお聞かせください。
○議長(尾﨑太郎君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) ふるさと教育の充実を図る上で、郷土の自然や歴史、先人たちの偉業について教員が研修し、率先して理解を深めていくことは大変重要であると考えております。
 多くの市町村教育委員会では、初任者研修に自分たちの地域を知るための研修を位置づけており、例えば橋本市では、高野山への参詣道を歩いたり、史跡をめぐったりして歴史や自然を学ぶ研修が実施され、地域に対する理解を深めております。
 県教育委員会では、教員がふるさとを愛し、誇りを持ってふるさと教育について指導できるよう、初任者研修において私から直接、「わかやま何でも帳」を熟読し、活用するよう指導しております。
 また、市町村に設置されている民俗資料館等では、子供たちに地域に関するさまざまな展示や講座を行っており、県立の博物館施設等では、ふるさとに関する展示や講演会、教員対象の研修を行っております。
 こうしたふるさと教育に関する学習の機会は、県、市町村だけではなく数多く設けられていますので、今後も、教員がふるさと和歌山の文化や歴史、自然等について自主的に学び、理解を深めることができるよう積極的に周知してまいります。
○議長(尾﨑太郎君) 中本浩精君。
  〔中本浩精君、登壇〕
○中本浩精君 教育長より、ふるさと教育の推進について3点御答弁いただきました。これからも教員の授業力、教育力の向上のために、教員の学習の場の確保及び充実に御尽力いただけたらと思います。
 さて、県教育委員会では、第3期和歌山県教育振興基本計画策定に向けて、現在協議をなされております。宮下教育長が常々言われておりますように、教育は、子供たちが社会に出て活躍する10年後、20年後を見据えて、今何をすべきかという視点で取り組みを進めていくことが重要であると、私も教育長のお考えに全く同感であります。学力及び体力の向上について、いじめ・不登校対策、道徳教育、人権教育、ふるさと教育、防災教育、特別支援教育、キャリア教育、グローバル人材の育成など、協議すべき内容は大変幅広いですが、各分野において今後着実に施策を推進していっていただき、10年、20年後の心豊かでたくましく生き抜く力を生徒に育てていってあげてほしいと思います。
 なお、学力向上について一言言わせていただきますと、9月に発表されました国の全国学力・学習状況調査では、多くの科目で前年度より正答率が上がり、大きく改善されました。まことにうれしい限りです。県教育委員会が知恵を絞って施策を考え、行政と教育現場が一体となって取り組んだ結果であり、関係者の御努力に敬意と感謝を申し上げたいと思います。
 児童生徒が生きる力やこれからの人生をみずからの力で切り開いていける力を身につけていく上で、学力は必要不可欠であります。ただ全国学力・学習状況調査の正答率に一喜一憂することなく、腰を据えてお取り組みいただきますようお願い申し上げます。
 また、点数だけでははかれない学力、数値にあらわれてこない学力、学びへの意欲ややる気といった情意面も大切にしていただきたいと思います。それは、生きる意欲にもつながっていくものであるからです。その意味においても、私は、ふるさと教育の果たす役割は非常に大きいと考えています。
 これからの社会は、ますます少子高齢化が進み、労働人口の減少やAIの進出により産業構造や職業の形態等が大きく変化し、これまで経験したことのない未曽有の時代がやってくると予想されています。ふるさと教育は、児童生徒にとって、生まれ育った地域の歴史、文化、伝統をよく知ることによってふるさとへの誇りと愛着、感謝の気持ちを抱きます。そして、ふるさとへの誇りが自分への自信と誇りにもつながります。さらに、両親や先人から受け継いだ命が次の世代に引き継がれ、世代を超えてその地域に住む人々のふるさとを思う気持ちが響き合うとき、持続的な地域の活性化が可能となり、心豊かで活力あるふるさとが形成されます。
 このように、ふるさと教育は、県民一人一人にとっても、社会や人間関係の中で自分自身を見直し、地域の文化を育て、地域社会のあり方を見直す力になると思うのです。
 以上、ふるさと教育の意義や必要性について私の所見を述べさせていただきましたが、教育に携わる全ての人がふるさと教育の重要性を再認識していただき、より一層の情熱を持って取り組んでいただくことが、平成26年12月の県議会定例会でも申し上げましたが、ふるさとを愛し、ふるさとに誇りを持ち、あすの和歌山の担い手となる児童生徒が育っていくことにつながると思います。どうか和歌山県教育委員会のより一層の御尽力を賜りますように、よろしくお願い申し上げます。
 最後、3項目めに入らせていただきます。
 「ロンリープラネット」ベスト5への選出についてお尋ねいたします。
 本年10月25日、本県にとって非常にうれしいニュースが飛び込んでまいりました。世界的旅行ガイドブックである「ロンリープラネット」が最も旬な旅行先を紹介するベスト・イン・トラベル2018において、紀伊半島が訪れるべき世界の10地域のベスト5に選出されたのです。
 同誌は、1973年創業の旅行ガイドブックで、計14言語で発行され、ガイドブックとしては世界で3割のシェアを誇っています。同ガイドブックは英語圏でのシェアが大きく、外国人旅行者への波及効果が期待され、日本の一地域が選ばれるのは珍しいとのことです。ランキングは、オーストラリアに本社がある同誌のライターらが世界で訪れるべき上位10の国、地域、都市を選んで公表したもので、同社サイトにも掲載されています。
 評価されたポイントは、「日本への旅行はとても熱を帯びている。訪日旅行者数は、この3年間で2倍になり、今後もふえ続けると予想される。『日本はわくわくする国』という言葉を発するには、旅行者はもう少し深く掘り起こす必要がある。京都や大阪などの主要な観光地の南側に位置し、太平洋に突き出した『紀伊半島』は、たくさんの日本の称賛される魅力にあふれている。そこには、寺社仏閣、雄大な自然風景や湯気の立ち上る温泉、伝統文化と現在の利便性がある。しかし、そこには人混みがない。つまり、紀伊半島は旅行者にとって無理なく訪れることができるエリアとして注目され始めたところである」と聞いておりますが、県としては何が評価されて選出されたとお考えなのか、お聞かせください。
 また、このビッグニュースは本県へのインバウンド誘客の追い風になると思いますが、既にその反響が出始めているのであればお聞かせください。商工観光労働部長にお尋ねいたします。
○議長(尾﨑太郎君) 商工観光労働部長山西毅治君。
  〔山西毅治君、登壇〕
○商工観光労働部長(山西毅治君) まず、選出の理由についてでございますが、本県には、豊かな森林、多くの奇岩、良質な温泉、透き通った海・川などの圧倒的な自然や自然現象を起因とする自然崇拝、仏教伝来以降の神仏習合や弘法大師が1200年前に開いた密教の地に息づく信仰が日本人特有の宗教観として色濃く残っており、そのことから生まれた歴史、伝統、文化が県内各地に存在いたします。
 県では、その最大の特色をストーリー立ててわかりやすく紹介するとともに具体的な楽しみ方を提案することで、旅行費用に見合う価値があることを国内外にプロモーションしています。特に海外については、21の国・地域をターゲットとして、それぞれの観光客のニーズを分析しつつ、旅行エージェントやメディアを中心にプロモーションを実施しており、日本の歴史、文化、伝統に興味の高い欧・米・豪において、本県が持つ観光資源が評価されたものと考えています。
 次に、その反響についてお答えいたします。
 今回のベスト5への選出の情報は、世界各国のメディアで取り上げられ、SNS等を通じて拡散されており、欧・米・豪だけでなく、香港や韓国のメディアからも、紀伊半島、高野・熊野、和歌山の観光地に関する問い合わせもふえ始めています。今後、オーストラリアやドイツ、フランスの旅行博への出展等も計画しており、この選出を和歌山県の大きなプロモーションツールとして積極的な魅力発信に取り組んでまいります。
 また、県内の市町村や観光協会、観光事業者にとっては、今回の選出を受け、和歌山県の観光資源は国際的に認められているとの認識が強まっており、さらなる誘客に向けてインバウンド対策を考えたいとの声が届いています。
 今後とも、市町村や観光協会、観光事業者と一丸となって外国人観光客の獲得に取り組んでまいります。
○議長(尾﨑太郎君) 中本浩精君。
  〔中本浩精君、登壇〕
○中本浩精君 今、答弁をいただきましたが、県職員が海外へ出向き、本県の魅力を直接情報発信し続けてきたことに加え、多言語の案内看板やインターネット環境など、受け入れ環境整備を進めてきた結果、高野山や熊野三山などの世界遺産ブランドが国内外で認知され、順調に外国人観光客がふえているものと考えております。
 高野山における外国人観光客は順調に増加していますが、一方、熊野地域でも、熊野古道の散策や熊野三山への参拝が定番化しており、外国人観光客が増加しております。
 高野山及び熊野地域を訪れる外国人観光客の特徴は、いずれも欧・米・豪を中心とした外国人個人観光客です。しかしながら、高野山を訪れる外国人個人観光客の大半は、鉄道を利用して大阪から高野山にお越しいただき、金剛峯寺への参拝や壇上伽藍や奥の院などの世界遺産への散策を済ました後、大阪、京都、奈良方面へと帰っていかれます。また、高野山を訪れた外国人個人観光客がもう1つの世界遺産・熊野を周遊するには、大阪を経由して、後日、鉄道で田辺・新宮方面に向かうのが一般的なルートとなっています。外国人観光客が増加していると言われるが、それは特定の地域だけであって、我々はその実感が感じられないとの声が聞こえてくることも事実です。
 私は、高野山にやってくる外国人個人観光客に、大阪を経由せず、直接和歌山県内を周遊していただく仕掛けが必要ではないかと考えています。それが可能であれば、和歌山県内での滞在日数は確実にふえ、消費額も必然的にふえてきます。今後、「ロンリープラネット」選出の効果を最大限に生かすには、高野山、熊野地域を訪れる外国人個人観光客に周辺観光地を訪問していただく戦略を周辺市町村や観光事業者が主体的に考えていく必要があると考えています。
 そこで質問です。
 現在、高野山から本宮方面へのアクセスバスが運行されていますが、その現状についてお聞かせください。また、高野山の外国人観光客に熊野地域を初め県内各地を周遊していただくためには、路線バス等2次交通の環境整備による利便性の確保が必要になってくるものと考えますが、その点について、県の取り組みを商工観光労働部長にお尋ねいたします。
○議長(尾﨑太郎君) 商工観光労働部長。
  〔山西毅治君、登壇〕
○商工観光労働部長(山西毅治君) 議員御指摘のとおり、高野山や熊野地域を訪れた外国人を初めとする個人旅行客に対して県内各地の観光地への周遊を働きかけることは、県内滞在日数と旅行消費額の増加につながるため、重点課題と考えています。
 まず、県内のまだ知られていない観光地の魅力を知っていただくため、「水の国、わかやま。」キャンペーン、サイクリング王国わかやまの海外展開に加え、季節のフルーツピッキング等、外国人個人客を引きつける体験型観光プランの提案などのプロモーション活動に力を入れております。
 次に、実際に県内各地へ周遊いただくため、2次交通の整備・改善にも取り組んでいます。
 高野山と熊野地域を結ぶ世界遺産「高野山・熊野」聖地巡礼バスについては、関係自治体、事業者が主体となった推進協議会により、昨年度まで土・日・祝日及び繁忙期のみ運行していたものを毎日運行することで、その利用者数は3212名、前年度比40%増、うち外国人観光客1115名、前年度比170%増と、順調に増加をしているところです。
 また、今年度より、熊野地域におけるバス交通事業者4社及びJR西日本和歌山支社、関係市町、観光協会等との協働により、田辺、本宮、新宮、那智勝浦を結ぶ路線バスの案内・誘導表示の改善にも取り組んでおります。系統番号の導入、共通路線図や時刻表の作成、外国人からわかりにくいと声のあった複数のバス停をターミナル化することで、積極的に協議を行っているところです。
 今後とも、県内各地の魅力ある観光資源の発信に取り組むとともに、外国人を初め旅行客の目線に立った案内・誘導表示の改善、聖地巡礼バスを活用した周遊エリアの拡大など、さらなる県内周遊の促進につなげてまいります。
○議長(尾﨑太郎君) 中本浩精君。
  〔中本浩精君、登壇〕
○中本浩精君 ただいま部長から、市町村、観光協会、交通事業者、観光事業者が一丸となって取り組んでいくとの力強い答弁をいただきました。
 2019年、ラグビーワールドカップ、2020年、東京オリンピック・パラリンピック、2021年、関西ワールドマスターズゲームズ、そして期待が膨らむ2025年の大阪万国博覧会と世界的イベントが続き、多くのメディア、観客が日本を訪れます。世界が日本に注目する中、これ以上ないタイミングで紀伊半島、いや、和歌山県が「ロンリープラネット」世界の訪れるべき地域ベスト5に選出されました。今、和歌山県の観光には最高の追い風が吹き始めています。県のホームページの「知事からのメッセージ」にも、ベスト5選出をステップに、県庁と観光業界を初め、全ての県民が協力していこうではありませんかとあります。今こそオール和歌山県で高みを目指して頑張りましょうとエールを送らしていただきまして、私の質問を終わらしていただきます。
 御清聴、ありがとうございました。(拍手)
○議長(尾﨑太郎君) 以上で、中本浩精君の質問が終了いたしました。

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