平成29年9月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(山下直也議員の質疑及び一般質問)


平成29年9月 和歌山県議会定例会会議録

第5号(山下直也議員の質疑及び一般質問)


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 34番山下直也君。
  〔山下直也君、登壇〕(拍手)
○山下直也君 あれほど暑かった夏も過ぎ、気がつけば朝夕がめっきり涼しくなってまいりました。まさに秋の気配を感じます。
 改めまして、皆さんこんにちは。自民党県議団・山下直也でございます。19日から始まった一般質問も、私が最後となりました。先輩・同僚議員の皆様、連日の御精励にてお疲れと存じますが、どうかあとしばらくおつき合いをいただき、また、知事初め県当局の皆様には、何とぞ前向きな答弁をよろしくお願いいたします。
 それでは、議長のお許しをいただきましたので、通告に従いまして、ただいまから質問に入らせていただきます。
 今回は、5つの項目について質問させていただきます。
 1点目であります。拉致問題についてであります。
 去る9月19日、台風18号が接近しておりましたが、そんな中、東京都千代田区平河町の砂防会館別館において、拉致問題地方議会全国協議会の幹事会、また、引き続き行われました「今年中に全拉致被害者の救出を!国民大集会」に、北朝鮮に拉致された日本人の救出のために行動する和歌山県議員の会の会長として、岸本副会長とともに出席をいたしました。
 ジャーナリストの櫻井よしこさんの司会にて開会されたこの大会は、飯塚繁雄家族会代表と平沼赳夫拉致議連会長の主催挨拶、安倍晋三内閣総理大臣、政府拉致問題対策本部長からの挨拶、各党の代表挨拶、北朝鮮による拉致被害者を救出する知事の会会長の上田埼玉県知事、会長代行の米山新潟県知事の挨拶、そして家族の皆様の訴えと続き、最後に参加者一同による決議を行い、午後5時前に閉会をいたしました。
 今議会において、一般質問で北朝鮮によるミサイル発射のことが取り上げられておりますが、私は国民大集会に参加し、ミサイル発射に係る問題への対処、国際連携の強化は進めつつ、何よりも北朝鮮からの全被害者救出を早期に実現するために、我が国として拉致という絶対に譲れない最優先課題があることを拉致問題地方議会全国協議会も、そして北朝鮮による拉致被害者を救出する知事の会も、ともに表明し続けなければならないことを強く感じたところであります。
 そこで、拉致問題について知事の所見をお伺いいたします。
○議長(尾﨑太郎君) ただいまの山下直也君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 本年は、横田めぐみさんらが拉致されてから40年、拉致が判明してから20年、北朝鮮が拉致を認めてから15年となります。発生から長い年月がたつ中、拉致被害者やその御家族も御高齢となっており、問題の解決には一刻の猶予も許されないと思います。拉致被害者の御家族の気持ちを考えると、深い悲しみと大きな怒りを感じます。
 だんだんと本件の問題について私も勉強をいたしましたが、警察や検察、政府、世論が毅然とした態度を初めから示していればと、今さらながら思います。と同時に、当時、北朝鮮はいい国だからそんなことはするはずがないと主張したり、あるいは、事を荒立てるようなことは殊さら避けたいというようなことをしてきた責任のある地位にいた人は何と言うのだろうというふうに思います。戦後の対立的なことは殊さら避けて目をつぶろうという風潮が生んだ、最も悲劇的な事件だろうと私は思います。
 北朝鮮による弾道ミサイルの発射により朝鮮半島情勢に緊張感が高まっている中で、本年4月には、北朝鮮による拉致被害者を救出する知事の会において、安倍内閣総理大臣に対し、拉致問題の解決に向け、有事の際には拉致被害者等の救出及び安全確保にあらゆる手だてを尽くすことなどを緊急要請したところであります。
 安倍総理におかれては、伝えられるところによると、この問題を忘れては困るということをアメリカの大統領に今回言うてくれたように伝えられていて、それについては大変評価をしたいというふうに思っております。それがトランプさんのあの発言になったんじゃないかなというふうにも推測されます。
 本県としては、知事の会での活動を初め、関係機関とも連携を図り、ポスターや県広報紙、広報番組を活用したさまざまな啓発活動を実施するなど、拉致問題の早期解決を訴えてまいりたいと思います。
○議長(尾﨑太郎君) 山下直也君。
  〔山下直也君、登壇〕
○山下直也君 知事、御答弁ありがとうございました。
 拉致問題につきましては、拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題への対処に関する法律第3条で、「地方公共団体は、国と連携を図りつつ、拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題に関する国民世論の啓発を図るよう努めるものとする。」、そう規定されております。県当局と県議会が両輪となり、拉致問題に対するさらなる意識の向上を図っていくことを要望いたしまして、1点目の質問を終わります。
 2点目、本県で必要なサービスを維持していくための外国人の雇用についてであります。
 第2次安倍内閣が発足し、経済政策、景気対策が最優先で実施されて以降、有効求人倍率等の指標から判断すれば、雇用情勢は着実に向上しております。
 しかし、雇用に関しましては、特定の分野で、ハローワーク等で求人するものの人材が集まらないといった状況も見受けられます。国は、人材不足が顕在化している職種の中で、政策的理由から介護、保育、看護、建設を重点4分野と位置づけ、人材確保や育成策を平成27年度から実施をしておりますが、依然として人材不足が深刻な分野もあると思われます。
 まず、本県における重点分野の人材不足の状況について、商工観光労働部長にお伺いをいたします。
○議長(尾﨑太郎君) 商工観光労働部長山西毅治君。
  〔山西毅治君、登壇〕
○商工観光労働部長(山西毅治君) 本県における国の重点分野の人材不足の状況についてお答えいたします。
 厚生労働省が実施している職業安定業務統計の職業別一般職業紹介状況によりますと、平成28年度の和歌山県のパートタイムを含む常用の有効求人倍率1.08倍に対して、全国では1.25倍となっております。重点分野の有効求人倍率につきましては、例えば、本県の介護サービス2.42倍、建設2.69倍に対し、全国は介護サービス3.18倍、建設3.49倍で、重点分野に位置づけされている職業については全国と比較して低くなっていますが、他の分野の有効求人倍率と比べますと、本県も全国と同様に高く、求人が多いものの求職者は少なくなっており、人手不足の状況と推察されます。
○議長(尾﨑太郎君) 山下直也君。
  〔山下直也君、登壇〕
○山下直也君 部長、答弁ありがとうございます。重点分野について求職者が少ない状況が理解できましたので、次の質問に移ります。
 外国人材の受け入れについてお伺いをいたします。
 私の知り合いの事業者の中には、国内での人材確保が困難な中で、人材を海外に求める、そういった動きも出てきております。本県は他県よりも高齢化が進行しており、介護や看護人材の確保は、県民サービス供給体制維持の観点から重要な問題であると考えます。
 また、本県への外国人観光客の増加に伴い、多言語に対応できるようなサービスを提供できる人材の確保もまた必要になると考えます。
 国が発表した外国人雇用状況の届け出状況では、平成28年10月末時点での外国人労働者数は全国で100万人を超え、4年連続で過去最高を更新しております。しかし、他の都道府県と比較して、本県の外国人労働者数は1998人と極めて少ない状況であります。
 県民サービスの維持や地域活性化の観点から、人材不足の解消は重要であると考えますが、国の働き方改革で取り組むこととしている外国人材の受け入れについて、商工観光労働部長にお伺いをいたします。
○議長(尾﨑太郎君) 商工観光労働部長。
  〔山西毅治君、登壇〕
○商工観光労働部長(山西毅治君) 労働力人口の減少という構造的な問題に対応するため、国では、ことし3月に働き方改革実行計画をまとめ、具体的な施策や今後の行程が示されたところです。
 現在、議論が進められており、計画の1つに掲げられた外国人材の受け入れについても国民的コンセンサスを踏まえ検討を進めるとされており、今後、介護や建設など、重点分野における人材確保の1つの策として、外国人材の受け入れが視野に入ることも考えられます。
 しかしながら、大量の外国人材を安い賃金で雇用することにより、日本人の雇用や賃金への影響があることに加え、機械化の推進等コストを下げるための企業経営努力の低下が懸念されるなど、悩ましい問題もあります。国においても、このようないろいろな問題があり、逡巡しているものと思われます。
 一方で、議員御指摘の多言語対応が必要なホテル業務やIT分野など、高度なスキルを有する外国人材の受け入れについては、今後、さらに必要性が増すものと思われます。
 本県におきましては、和歌山労働局とともに労使団体も参加した和歌山働き方改革会議を立ち上げており、外国人材の受け入れを含む働き方改革について、労使双方の意見をしっかり聞きながら進めてまいりたいと考えております。
○議長(尾﨑太郎君) 山下直也君。
  〔山下直也君、登壇〕
○山下直也君 部長に御答弁をいただきました。
 県民に必要なサービス維持のため、外国人材を受け入れる場合、外国人が住みやすい環境づくりに留意する必要があります。これまでも他の議員から質問いたし、医療や教育など、支援の充実を図らなければならない点につきましては、私も十分認識をしているところであります。
 国、総務省では、多文化共生事例集を作成し、全国の優良事例を紹介しております。多言語・「やさしい日本語」による情報提供などのコミュニケーション支援、教育や防災等の生活支援、多文化共生の地域づくり、地域活性化やグローバル化への貢献等、さまざまな支援策が紹介されており、本県の取り組みとしては、公益財団法人和歌山県国際交流協会とNHK和歌山放送局が実施する「Let''s study BOSAI」という外国人のためのワークショップが事例として掲載をされております。
 この事例集等も参考にし、外国人が共生できる環境整備を一層進めていただくよう要望し、2点目の質問を終わります。
 3点目、農業についてであります。
 AI及びIoTを活用した農産物の生産及び販売促進についてお伺いをいたします。
 本県の特色ある産業として、恵まれた自然条件を生かした農業が挙げられます。本県の農業は、他の都道府県と比較して、農業産出額の約6割を果実が占めており、果樹王国和歌山として広く認識されております。みなべ・田辺の梅システムとして世界農業遺産に指定されている梅や、生産量で全国の1、2位を争うミカンや柿など、品質やブランド力にすぐれた農産物が栽培されています。
 しかしながら、2015年農林業センサスのデータによれば、平成27年の県内の農家数は2万9713戸で、平成22年の3万3799戸から5年間で4086戸、農家数が減少しております。また、新規就農者数は、ここ数年、横ばいの状況が続いております。さらに、経営規模が1ヘクタール未満の農家が全体の7割を超えており、農林水産統計年報によれば、農家所得も226万3000円と減少傾向で、厳しい農業経営の実態を反映しております。
 厳しい農業経営環境の中で、農家の減少に歯どめをかけ、全国に誇る本県の農業を守り続けていく必要があります。本議会の一般質問でも、我が党の玉木議員から、果樹農業の将来について質問をいたし、農場でのドローンの活用等、当局の見解を伺ったところであります。
 私は、農業の生産性や収益性の向上こそが、先ほど申し上げた諸課題の解決につながるものと考えております。
 本県の長期総合計画では、現在の産業を取り巻く状況は、AI、IoT、ロボット等の先進技術の進展等、これまでにないスピードで目まぐるしく変化しており、県内産業の発展のためにはこうした変化をチャンスと捉え、時代の一歩先を見据え、絶えず変革し続けることが必要であるとしておりますが、私は農業においても、AI及びIoTといった先進技術を活用し、流通段階における配送ルートや出荷地のコントロールによる物流の最適化や、流通・販売段階における過去の実売データに基づく詳細な分析、需要予測等を農家に還元することにより、生産性や収益性の向上を図ることができると考えております。
 流通・販売段階におけるデータを活用した農家の支援について現在どのような取り組みが行われているのか、また、データ分析、予測に係るAI及びIoTといった先進技術の今後の利活用について、農林水産部長にお伺いをいたします。
○議長(尾﨑太郎君) 農林水産部長原 康雄君。
  〔原 康雄君、登壇〕
○農林水産部長(原 康雄君) 流通・販売段階におけるデータを活用した農家への支援につきましては、県では現在、国内外への販路開拓、販売促進を展開する中で、消費者が求める嗜好、品質、価格などのさまざまな情報を収集、蓄積しており、必要に応じ農家を含めた事業者に対して、これらの情報を可能な限り提供しております。
 また、国内外の大型展示会や商談会への出展を支援することで、事業者みずからが流通・販売段階でのデータを収集できる機会についても提供しているところであります。
 議員御指摘のとおり、流通・販売段階におけるデータなどをAI及びIoTを活用し、詳細に分析、需要予測して農産物を生産、販売することは、効率性、収益性の向上を図る上で有効な手段の1つと考えております。
 AI及びIoTといった先進技術の今後の利活用につきましては、現在国において検討が進められているところであり、県といたしましては、そういった国の進捗状況を注視しながら、県にとって有益なシステムの導入等について研究してまいりたいと考えております。
○議長(尾﨑太郎君) 山下直也君。
  〔山下直也君、登壇〕
○山下直也君 部長、答弁ありがとうございます。
 農家が未来に向けて希望の持てる環境を整えることが、和歌山ブランドの維持、向上につながるので、進取の気性を持つ県民、県として先進技術の活用に積極的に取り組んでいただくことを要望し、次の質問に移ります。
 先進技術に対応できる人材育成についてお伺いをいたします。
 ことし4月に改編された和歌山県農林大学校は、これまでの農業大学校から履修コース及びカリキュラムの見直しを行い、農学部と林業研修部の2部構成となっております。このうち、農学部は、定員30名の園芸学科と定員10名のアグリビジネス学科から成り、特にアグリビジネス学科では、昨今の多様化する農業ビジネスや6次産業化に対応できる人材の輩出を目的としております。
 今後、農業の生産性や収益性の向上を図るためには、データを活用したAI等の先進技術が欠かせず、農家を支援する側はもとより、農家自身も先進技術に対する理解を深める必要があると考えます。
 このような中で、AI等の先進技術に即応できる人材の育成は急務ではないかと私は考えており、農林大学校において、こうした先進技術に関するカリキュラムを導入することについて、知事の考えをお伺いいたします。
○議長(尾﨑太郎君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 農業分野においても、AI等の先進技術に対応できる人材の育成が必要であると考えております。
 現在、農業生産の現場において、土壌水分や光、温度などをモニタリングし、作物を最適環境に保つことで高品質安定生産につなげる技術などが施設園芸の分野で進みつつあり、オランダではこういった技術が積極的に導入されています。これら先進技術の調査を行うため、現在、農業の専門職員をオランダに派遣しておりまして、帰国後、農林大学校の学生にも講義することにしております。
 また、国や民間企業において、AI等を活用して熟練農家の技術やノウハウをデータ化し、新規就農者でもすぐ活用できるような生産システムや収穫ロボットの開発等が進められており、こうした技術についても、開発状況に応じ、講義の中で積極的に取り入れ、次代の和歌山県農業を担う経営感覚にすぐれた人材の育成に取り組んでまいります。
 また、農業だけではないと思いますけれども、ほかの産業も全部含めて、こういうAIのちょっとレベルの高いところの技術その他を習熟していただくベースとしては、農業に従事する人、あるいは製造業に従事する人、サービス業に従事する人、全部、ITに対する基本的な知識と、そして技術と、そういうものを若いうちから身につけておいたほうがええなあというふうに思う次第でございまして、これは教育問題として今後それも取り組んでいきたい、そんなふうに思っております。
○議長(尾﨑太郎君) 山下直也君。
  〔山下直也君、登壇〕
○山下直也君 知事、ありがとうございます。
 オランダへの先進技術調査が実り多いものとなることを願ってやみません。より高度な知識、技術を習得した人材の育成ができれば、農林大学校の評価や人気も高まると思います。
 ちなみに、奈良県では、奈良県立なら食と農の魅力創造国際大学校において、飲食サービス業界で活躍する人材を育成するためのフードクリエイティブ学科を設置し、農業実習等を取り入れた深く幅広い知識の習得を目指しています。
 先ほど申し上げましたように、梅やミカンなど、本県が全国に誇る農産物の生産者を絶やさないためには、農業の生産性や収益性を向上させる必要がありますので、先進技術に関するカリキュラムを充実させるなど、農林大学校の特色が出せるよう、さらに取り組んでいただくことを要望いたします。
 次の質問に移ります。4点目、がん対策についてであります。
 まず、第2次和歌山県がん対策推進計画についてお伺いをいたします。
 本県では、がんによる死亡率が高く、予防、医療及び相談支援といったあらゆる対策が必要であります。平成24年12月、座長を務めさせていただきましたが、先輩・同僚議員の御意見をいただきながら、議員提案による和歌山県がん対策推進条例を制定させていただきました。
 条例制定当時、平成22年の本県におけるがんの75歳未満の年齢調整死亡率は91.8、全国ワースト4位であったと記憶をしております。
 条例制定から年が明け、平成25年4月に第2次和歌山県がん対策推進計画が策定されました。その後、県当局は計画に基づき、がんに関する取り組みを種々実施しており、取り組み状況については、和歌山県がん対策推進条例第31条に基づき、県議会に年次報告書を提出いただいているところであります。
 私といたしましても、条例制定、推進計画策定までの「がん対策に関してできることは全てやる」という思いは、その後も強く持ち続けており、重粒子線治療、陽子線治療やBNCTなどの高度医療導入に係る研究や、治療と仕事の両立の方法などをまとめた和歌山市の社会保険労務士の方が発刊された書籍を県立高等学校の図書館に設置し、情報発信に取り組んできたところであります。
 そのような中で、現行の第2次和歌山県がん対策推進計画については平成30年3月までの計画となっていることから、次期計画を策定する時期に差しかかっていると認識をいたしますが、まず、現行の第2次和歌山県がん対策推進計画の全体目標の成果について、福祉保健部長にお伺いをいたします。
○議長(尾﨑太郎君) 福祉保健部長山本等士君。
  〔山本等士君、登壇〕
○福祉保健部長(山本等士君) 県では、第2次和歌山県がん対策推進計画を策定し、がんの75歳未満年齢調整死亡率を平成17年からの10年間で25%減少させる全体目標を定め、がんの予防と早期発見、がん医療の充実、がん登録など総合的ながん対策に取り組んでまいりました。
 その結果、本県の平成27年の75歳未満年齢調整死亡率は人口10万人当たり80.3となり、平成17年の98.5と比較し、減少率は18.5%となっております。これは全国の減少率である15.6%を上回り、全国で7番目に高い減少率となっており、これまでの取り組みの成果があらわれてきているものと考えております。
 引き続き、がんによる死亡率を減少させるため、がん対策を推進してまいります。
○議長(尾﨑太郎君) 山下直也君。
  〔山下直也君、登壇〕
○山下直也君 ただいま部長に御答弁いただきました。全国で7番目に高い減少率とお伺いいたし、条例制定や推進計画策定の意義は大きいと改めて感じているところであります。
 次の質問に移ります。
 次期第3次和歌山県がん対策推進計画についてお伺いをいたします。
 全ての県計画の考え方のもととなり、10年後の和歌山県の将来像を描いた和歌山県長期総合計画が本年4月に策定されております。
 がん対策につきましても、「命を守る医療の充実」の項目に位置づけられ、進捗管理目標として、がんの75歳未満年齢調整死亡率とがん検診受診率の目標値が掲載されております。がん検診受診率につきましては70%ということで、現状よりかなり高い目標値が設定されており、対策に関しての県当局の意気込みが伝わってくるようで、長年がんの問題に取り組んできた私といたしましても、大いに評価をしたいと思います。
 一方、がんの75歳未満の年齢調整死亡率につきましては、国が定める目標値を達成することとされています。県計画を策定するに当たり、1つの指針となるのが、国が策定する次期がん対策推進基本計画であると思います。
 聞くところによりますと、国の次期がん対策推進基本計画の策定がおくれているとのことでありますが、現時点で国の計画はどのようなものになるのでしょうか。また、国において、75歳未満のがんの年齢調整死亡率の目標はどのように定められるのでしょうか。
 国の次期計画が定められていない中、県の次期計画の詳細については今後の検討事項だとは思いますが、県の第2次がん対策推進計画の全体目標に位置づけられており、また、県の長期総合計画の進捗管理目標でもある、がんの75歳未満年齢調整死亡率に関してはどのように取り扱うお考えなのか、福祉保健部長にお伺いをいたします。
○議長(尾﨑太郎君) 福祉保健部長。
  〔山本等士君、登壇〕
○福祉保健部長(山本等士君) 国の次期がん対策推進基本計画案では、国民ががんを知り、がんの克服を目指すため、科学的根拠に基づくがん予防・がん検診の充実、患者本位のがん医療の充実、尊厳を持って安心して暮らせる社会の構築の3つの柱を全体目標と位置づけています。
 国においては、がんの75歳未満年齢調整死亡率に関する具体的な数値目標の設定を見送るとしていますが、本県におきましては、がんによる死亡率の減少は重要であると認識していることから、県の次期がん対策推進計画の全体目標の1つとして、がんによる75歳未満年齢調整死亡率の数値目標を定めることとしております。
 今後とも、和歌山県長期総合計画の目指す方向である「がんを知り、がんと向き合い、がんに負けることのない社会」の醸成に向け、総合的ながん対策に取り組んでまいります。
○議長(尾﨑太郎君) 山下直也君。
  〔山下直也君、登壇〕
○山下直也君 御答弁をいただきました。
 がんの死亡率につきましては、県当局はもとより、関係各位の御努力や、またIMRTといった医療技術の進歩によって死亡率は減少傾向にありますが、ある意味では、これからまた受動喫煙等の取り組みについても考えていかなければならない問題であると認識をいたしております。
 医療の充実に関しましては、大阪府では、大阪府立成人病センターがことしの春から大阪国際がんセンターとして運営されており、患者のがんストレス軽減を念頭にケアを行っていると聞いております。また、大阪重粒子センターが現在建設中であり、来年度から治療開始と聞いております。
 医療の進歩や供給体制は年々変化していきます。その変化を注視しながら、本県としては、まず専門看護師の確保やIMRTを操作できる技師等、人材の確保に取り組むことが重要であると考えます。
 このほか、若年者にとっては、がん患者の就労の問題というのは依然重要な問題であると認識をしております。県当局としても、引き続き、がん対策に関し、できることは全てやるという姿勢で取り組んでいただきたいことを要望させていただきます。
 最後の質問、児童虐待についてお伺いをいたします。
 児童虐待につきましては、一昨日、藤本議員が一般質問を行ったところでありますが、先月、昨年成立した改正児童福祉法の家庭養育原則を具体化する新しい社会的養育ビジョンが示されましたので、私からも児童養護施設等の現場の声を踏まえ、質問をさせていただきたいと思います。
 県がことし5月に発表した平成28年度和歌山県内における児童虐待相談の状況について、平成28年度中に県内の2つの児童相談所が受け付けした虐待相談の件数は、前年度より230件増加し1123件であり、調査を開始して以降、初めて1000件を超えました。
 虐待別では、言葉による虐待などの心理的虐待が481件と最も多く、全体の約4割を占め、前年度よりも134件も増加しております。また、被虐待者は小学生が364件と最も多く、2歳児以下の件数も229件となっております。非常に気になるところであります。
 相談件数が増加していくこと自体を憂慮する一方で、児童虐待を顕在化させ、家庭や子供を早期に救うためには、まず相談する意識を持ってもらうことが必要であり、県民の皆さんの意識の向上が相談件数の増加につながっているという見方もできるのではないかとも考えます。
 しかし、現時点において、深刻な事案が存在しているのも事実であります。深刻な虐待を受けた児童を支援するため、県内の児童養護施設がこれまで果たしてきた役割は極めて大きいものであったと考えますが、質問の冒頭でも述べたとおり、国の新たな社会的養育の在り方に関する検討会は、8月に新しい社会的養育ビジョンを発表いたしました。
 内容は多岐にわたっておりますが、児童養護施設にかかわることとしては、子供や家庭を地域で支援するために、ソーシャルワーク体制を整え、基本的に社会的養護を必要とする子供は、在宅で支援することとしています。その上で、親子分離をせざるを得ない子供につきましては、施設ではなく、里親を中心とした家庭養育を基本とし、この実現のために、3年以内に就学前児童の乳児院、児童養護施設への入所を停止すること、3歳未満児は5年以内、それ以外の未就学児は7年以内に里親委託率を75%以上にすること、学童期以降の児童は10年以内に里親委託率を50%以上にすること、2020年までにフォスタリング機関──これは里親への包括的支援体制でありますが、そのフォスタリング機関事業の全国的な整備を完了することが目標として設定されております。
 この目標が示しますように、新しい社会的養育ビジョンでは、今後、社会的養護を必要とする子供は、施設ではなく里親を中心とした家庭養育の推進により支援していくこととしておりますが、里親の委託率は、全国で平成27年度で17.5%、県内の里親の委託率は、平成28年度末で19.1%であるとお伺いをいたしております。
 新しい社会的養育ビジョンで示された委託率の目標と大きな開きがあると思いますが、県として里親委託をどう推進していくのか、福祉保健部長にお伺いをいたします。
○議長(尾﨑太郎君) 福祉保健部長。
  〔山本等士君、登壇〕
○福祉保健部長(山本等士君) 家庭的な環境のもと、愛着関係を育みながら児童を養育する里親制度は、児童の健全な育成を図る上で大変重要であると考えております。
 県では、この里親制度を推進するため、平成24年度に里親支援機関を紀北地域に設置するとともに、本年2月には、県内2カ所目となる支援機関を紀南地域に開設し、県民に対し、里親制度の普及啓発に精力的に取り組んでいるところでございます。
 議員の御質問にありましたように、新しい社会的養育ビジョンにおいて、3歳未満児は5年以内に、それ以外の未就学児は7年以内に里親委託率75%の達成を目指すとされています。年齢区分の関係で単純に比較はできませんが、全年齢を対象とする現在の国の目標値である平成31年度の22%や、平成27年度の全国値17.5%と比較しても、非常に高い数値であると認識しております。
 今後とも里親委託を推進するため、児童委員研修会における周知依頼や市町村の広報紙の活用など、新たな人材の確保についての働きかけを行い、里親登録が増加するよう積極的に取り組んでまいります。
○議長(尾﨑太郎君) 山下直也君。
  〔山下直也君、登壇〕
○山下直也君 答弁ありがとうございました。
 里親委託も増加しているということでありますが、やはり検討会が提言した目標値とは大きな開きがございます。新しい社会的養育ビジョンを受けての国の方向性について注視し、県の現状を踏まえ、国に対し、言うべきことは言うというスタンスで臨んでいただきたいと思います。
 次の質問に移ります。里親への支援体制についてお伺いをいたします。
 里親委託を進めていくためには、数の充足だけではなく、里親による支援の質を高めていくことも必要であると考えます。現在、県内には里親支援機関が上富田町と岩出市の2カ所にありますが、今後、里親委託を推進するとすれば、里親支援機関の役割は大変重要になってくると考えます。
 県として、里親支援機関の機能強化をどう図っていくのか、福祉保健部長にお伺いをいたします。
○議長(尾﨑太郎君) 福祉保健部長。
  〔山本等士君、登壇〕
○福祉保健部長(山本等士君) 里親支援機関は、里親の方々にきめ細かく支援を行う機関として里親登録から児童の自立支援までの一貫した支援を実施しており、里親委託を推進する上で非常に重要な役割を担っております。
 具体的な業務としましては、県民に対する里親制度の普及啓発を初め、里親に関心のある方々に対する里親相談会の開催、里親登録時の事前研修や里親家庭への相談支援などを実施しており、里親に寄り添いながら、安心して児童を養育できる環境づくりに努めているところでございます。
 今後、県といたしましては、社会的養育の重要性を訴えた広報啓発の強化を初め、里親家庭への定期的な訪問相談の開始、養育を始めた里親への段階的な研修の実施など、委託内容を充実させ、里親支援機関の機能を高めてまいります。
○議長(尾﨑太郎君) 山下直也君。
  〔山下直也君、登壇〕
○山下直也君 御答弁いただきました。
 里親委託率を向上させるならば、里親支援機関の役割は、広報はもとより、里親への相談体制の充実等、そういう部分が負うところがかなり大きくなると思われます。支援機関の機能強化につきましても、国の動きを見ながら適切に対応していただきたいと、この場で御要望させていただきたいと思います。
 次に、児童養護施設の役割についてであります。
 国の施策が新しい社会的養育ビジョンに基づくものとなるのであれば、行政の努力はもとより、児童虐待、里親制度等に係る県民の意識の向上を一層図っていかないと困難ではないかと考えます。
 そもそも、児童養護施設の役割というものを県はどのように考え、今後、児童養護施設に何を求めるのか、最後、知事にお伺いをいたします。
○議長(尾﨑太郎君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 児童養護施設は、児童虐待等さまざまな事情で家庭で暮らすことのできない児童を、児童相談所による一時保護から受け入れ、公的な責任のもと養育する施設であります。
 児童が受けた心身の傷を癒やすため、心理士によるカウンセリングを行うほか、児童一人一人に合わせて作成する自立計画に沿った生活上の支援を行うなど、児童養護施設は、児童の生活全般に親身になってかかわる、児童が自立するためのよりどころと考えております。
 家庭的な環境のもと、愛着関係を育みながら児童を養育する里親制度は、児童の健全育成を図る上で大変重要であり、県においては、今後、里親委託をさらに推進することとしております。
 しかしながら、社会的養護を必要とする児童の中には、近年、身体的な虐待だけではなくて、心理的虐待による不適切な養育経験を持つ児童や、発達障害等の障害を持つ児童など、里親制度では対応が困難な場合もある児童が増加しております。
 こうしたことから、今後とも児童養護施設については、児童指導員や保育士、心理士など専門性を持つ職員が配置され、高度専門的な手厚いケアを集中的に提供できることから、家庭環境での養育が困難で、特別なケアを必要とする児童の受け入れ先となるものと考えております。
○議長(尾﨑太郎君) 山下直也君。
  〔山下直也君、登壇〕
○山下直也君 知事、御答弁ありがとうございました。
 私も、新しい社会的養育ビジョンの趣旨は十分理解をいたしておりますが、県内の社会的養育支援の現状を十分に踏まえた上で、児童養護施設とも連携しながら今後とも取り組みを進めていただきたいと、そのことを御要望申し上げ、質問を終わりにしたいと思います。
 なお、今、知事の答弁の中で発達障害という言葉が出てまいりました。非常にこれも気になる課題の1つであります。昨今、新聞やテレビ等々でも、この発達障害のいろんな例や発達障害についての議論が出てまいりました。私も大変気になり、次のまた議会の機会があれば、この発達障害についてもまた一度県の皆さんと議論をさせていただきたい、そのように考えております。
 以上で、私の一般質問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(尾﨑太郎君) 以上で、山下直也君の質問が終了いたしました。
 お諮りいたします。質疑及び一般質問を終結することに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(尾﨑太郎君) 御異議なしと認めます。よって、質疑及び一般質問を終結いたします。
 次に日程第3、議案の付託について申し上げます。
 お手元に配付しております議案付託表のとおり、議案第152号から議案第164号までは所管の常任委員会に付託いたします。
 次に日程第4、請願の付託について申し上げます。
 今期定例会の請願については、お手元に配付しております請願文書表のとおり、所管の常任委員会に付託いたします。
 お諮りいたします。9月25日及び26日は常任委員会審査のため休会といたしたいと思います。これに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(尾﨑太郎君) 御異議なしと認めます。よって、9月25日及び26日は休会とすることに決定いたしました。
 次会は、9月27日定刻より会議を開きます。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後1時44分散会

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