平成29年9月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(雑賀光夫議員の質疑及び一般質問)


平成29年9月 和歌山県議会定例会会議録

第3号(雑賀光夫議員の質疑及び一般質問)


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  午後1時0分再開
○副議長(山本茂博君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 39番雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕(拍手)
○雑賀光夫君 議長のお許しを得ましたので、早速、質問に入らせていただきます。
 第1の柱は、交通弱者に優しい交通政策という問題であります。
 私たちは、最近、海南市で市民要求アンケートを行いました。年金、国保、介護にかかわる要求が多いのですが、それに加えて、交通弱者の悩みが多くなっているのが最近の特徴です。
 高齢化の進行が1つの要因です。もう1つは、歩いて行ける範囲に商店がなくなったという問題があります。それに加えて、人口減少に伴って利用者が減ったため、路線バスの廃線や運行回数の減少もあります。
 「高齢になって免許証を返納したいが、返納すると生活ができない」、「病院に行くのも買い物に行くのも、誰かに車に乗せてもらわないと行けない」という声がたくさん寄せられています。
 最近、高齢者にかかわる交通事故についての新聞報道も多く目にします。こうした問題に、行政として対応しなくてはなりません。
 まず、高齢者の交通問題の一端を明らかにするために、警察本部長にお伺いいたします。高齢者の交通事故の状況、免許証返納の取り組み、そこにはどんな課題があるのかをお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。
○副議長(山本茂博君) ただいまの雑賀光夫君の質問に対する答弁を求めます。
 警察本部長宮沢忠孝君。
  〔宮沢忠孝君、登壇〕
○警察本部長(宮沢忠孝君) 本年7月末現在における高齢者の関係する交通事故は、発生件数564件、前年同期比マイナス49件、死者数6人、前年同期比マイナス6人といずれも減少しておりますが、全事故に占める割合は37.7%、全死者に占める割合は42.9%といずれも高い割合を占めております。また、高齢者ドライバーが関係する事故につきましても、発生件数は475件、前年同期比マイナス32件と減少していますが、全事故に占める割合は31.8%と高い割合を占めております。
 こうした実態から警察では、高齢者の交通事故防止対策は喫緊の課題であると考えており、関係機関、団体と連携して、運転免許の自主返納の働きかけや、参加・体験型の交通安全教室の開催、街頭指導活動の強化などの対策を推進しております。
 続きまして、運転免許証の自主返納状況ですが、平成10年に申請による運転免許の取り消し制度が施行された当初は自主返納者は年間わずか20人から30人でありましたが、年々増加し、昨年は2566人の方が自主返納されております。警察といたしましては、交通事故の未然防止の観点から、身体機能の低下を自覚された高齢者の方が自主返納制度を利用されることは大変好ましいことであると考えておりますが、その一方で、免許返納後の交通手段の確保が課題でありますので、自治体や関係機関に対して、コミュニティーバス利用時の運賃助成等の働きかけを実施しているところであります。
○副議長(山本茂博君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 ありがとうございました。
 私が申し上げたい関係機関への働きかけも含めてお答えいただきました。ありがとうございます。
 そこで、人口減少のもとでのバス路線などの廃止もあり、コミュニティーバスの運行、最近導入されつつあるデマンド型乗り合いタクシーなど、いろいろな努力をされていると思うのですが、その実情やお取り組みについて、企画部長からお聞かせいただきたいと思います。
○副議長(山本茂博君) 企画部長髙瀨一郎君。
  〔髙瀨一郎君、登壇〕
○企画部長(髙瀨一郎君) 市町村が運行するコミュニティーバスにつきましては、路線バスの廃止などに伴う代替手段として、平成29年8月末現在、21市町村で運行され、そのうち10市町で、予約に応じて運行するデマンド型を導入しております。
 しかしながら、本来路線バスを補完するためのコミュニティーバスが、路線バスと重複運行する要望が出され調整ができなくなったり、住民の要望に基づき、バスやタクシー事業者も含め関係者が協議し、コミュニティーバスの運行を始めたものの利用者が少ないとか、デマンド型に運行形態を見直したものの予約が面倒で利用者が減少したなどの課題が出ております。
 こうした課題に対応するため、県では、昨年度から全市町村を訪問し、まちづくりと一体となった持続可能な地域公共交通ネットワークを再構築することを目的とした地域公共交通網形成計画の策定を働きかけるとともに、公共交通の現状や課題が把握できるよう、市町村ごとにバスや鉄道のルートと利用状況などを図示した公共交通マップを作成し、地域公共交通の確保に向けた意見交換を実施しております。
 今後とも、地域公共交通の確保に向けて、路線バスやコミュニティーバス、乗り合いタクシーの組み合わせ方や利用促進策などを、市町村や事業者の方々と一緒になって検討してまいります。
○副議長(山本茂博君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 ありがとうございました。
 いろいろな御苦労があるようで、住民のニーズに合わせて知恵を絞らなくてはならないと思います。
 そこで、今も触れられましたデマンド型乗り合いタクシーというもの、自治体がタクシー会社と委託契約をし、予約して利用する。紀北地方のある自治体の場合、決まった路線を走るのですが、1回の運行で利用者は200円払う。自治体は2110円をタクシー会社に払う。2110円というのは、タクシー30分の利用料金相当額だそうです。1人で乗れば1910円、2人で乗れば1710円が自治体の負担になります。
 コミュニティーバスも一緒なのですが、自治体の負担額の半額を国庫が補助するという制度があります。さらに、残りの80%が特別交付税で算定されます。それだと自治体負担は10%で済むことになる。この自治体の場合、年間利用者は183人、自治体負担は約28万5000円、その10%というと2万8500円で183人の方が利用できる、かなりの支援だと思います。
 しかし、1つの問題は、国庫補助制度はコミュニティーバスも含めて限度額があって、この自治体の場合、平成28年度は前年度より365万円も減らされているということです。私は、住民の願いに応える自治体の施策を守るために国が支援する必要があると思いますが、企画部長はどうお考えでしょうか。
○副議長(山本茂博君) 企画部長。
  〔髙瀨一郎君、登壇〕
○企画部長(髙瀨一郎君) 国の地域公共交通確保維持改善事業の予算につきましては、近年横ばいで推移していますが、申請件数の増加に伴い、補助上限額が引き下げられているという状況です。
 国の補助事業の予算確保につきましては、地域公共交通の確保維持を図る上で非常に重要であると考えており、全国知事会で要望しているところであり、また、あらゆる機会を捉えて国に対して働きかけてまいります。
 一方で、せっかくコミュニティーバスなどを運行させても、地域住民が乗らなければ市町村の負担が大きくなりますので、地域住民がより利用する方策も必要であり、例えば、県内には、地域住民が運行経費の一部を負担し、主体的にバスを運行する事例もあることから、このような取り組みを広めていくことも重要と考えております。
○副議長(山本茂博君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 こうした国のほうの支援が追っつかない中で、県としての支援も今後検討していただけるように要望して、次へ行きたいと思います。
 第2の柱は、自然エネルギー開発が自然破壊や健康破壊を引き起こしているという問題です。
 私たちは、原発廃止の立場から、ソーラー発電など自然エネルギー推進を主張してきました。しかし、自然エネルギーであっても企業の利潤追求が優先されると、自然破壊、健康破壊につながることが明らかになってきました。その1つが風力発電の低周波公害であり、何回かこの場でも取り上げてまいりました。その被害者の1人である由良町にお住まいだった谷口愛子さんが、最後まで低周波の苦しみを訴えながらお亡くなりになりました。謹んで哀悼の意を表したいと思います。
 自然エネルギーの美名のもとで、環境破壊が心配されているもう1つが、メガソーラーの問題であります。
 その1つは、奥村県議ほか皆さんが取り上げてきた和泉山系を切り開く超メガソーラー、さらに、私の地元、紀美野町にも甲子園球場の10倍に近いメガソーラーの計画が持ち上がっています。さらに海南市では、重根、田津原という地域で、山を切り開いてメガソーラー発電をするという業者が地元自治会に地図を持って回ってきています。漏れ伝わってくるところでは、18万5000平方メートルの山林に3万4000枚のソーラーパネルを敷くともお聞きしています。
 また、海南・紀の川風力発電事業の計画というものも持ち上がっています。これらの計画は、どれらも山地を開発、森林を伐採して、メガソーラー、風力発電を進めようとする計画です。
 そこで、第1点、私の地元紀美野町のメガソーラー計画は、安全対策が課題となっている樫河池の上流域の山林を切り開くものです。この池は、かつて決壊したこともあるとお聞きしています。どのような改修を計画しておられるのか、池の上の森林が伐採されればどんな影響があると考えられるのか、農林水産部長からお聞かせいただきたいと思います。
○副議長(山本茂博君) 農林水産部長原 康雄君。
  〔原 康雄君、登壇〕
○農林水産部長(原 康雄君) 樫河池は、平成28年6月20日に土地改良法手続による事業計画が確定し、その計画に従い、平成28年度よりため池改修事業を実施しております。改修内容につきましては、老朽ため池対策として堤体、洪水吐、取水施設等、ため池施設全体を改修することとしております。
 森林伐採の影響ですが、メガソーラー事業による森林伐採で降雨時の流出量が増加することから、樫河池を含む下流域への影響が懸念されているところであります。
○副議長(山本茂博君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 この業者が地元住民への説明会を開催しました。業者は、安全対策について県の担当者と協議していることをるる説明しておりました。樫河池に関して、このような協議はなされているのでしょうか、農林水産部長、お願いします。
○副議長(山本茂博君) 農林水産部長。
  〔原 康雄君、登壇〕
○農林水産部長(原 康雄君) 安全対策に関する協議状況ですが、業者より平成29年3月27日付で林地開発事前協議の申出書の提出があり、県が改修を計画している樫河池を調整池として活用することとなっておりましたので、県の改修計画では調整池機能は付加されていないため、関係機関と協議が必要な旨、意見を付し、平成29年6月2日付で通知したところです。
 その後、現時点までメガソーラー業者と県担当課との具体的な協議は行われておりません。
○副議長(山本茂博君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 協議していないのに、住民に対しては協議しているという説明をする、ちょっと困ったことでございます。
 そこで、当該メガソーラーの事業の地元から県に対して、この事業に反対についての陳情が出されたとお聞きしているんですが、お受け取りになっておられるでしょうか。
○副議長(山本茂博君) 農林水産部長。
  〔原 康雄君、登壇〕
○農林水産部長(原 康雄君) 県への陳情書につきましては、平成29年8月17日、海草振興局農林水産振興部林務課に、動木区長名と希望ヶ丘自治会代表者名で、紀美野町小畑地区での太陽光発電計画に反対する内容の陳情書がそれぞれ提出され、受理しております。
○副議長(山本茂博君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 地元自治会が明確に反対の意思を示しているわけですから、この小畑地区のメガソーラーはできることはないと解釈してよろしいでしょうね。
○副議長(山本茂博君) 農林水産部長。
  〔原 康雄君、登壇〕
○農林水産部長(原 康雄君) 6月議会でも答弁したように、和歌山県林地開発許可制度事務取扱要領に基づき、事業者からの申請に地元自治会や隣接する土地所有者、水利組合等の同意書の添付を求めており、事業者からの申請に同意書の添付がなければその申請書は受け付けないという対応に何ら変わりはございません。
○副議長(山本茂博君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 こうした中で、今度は海南市重根・田津原地域の山林を切り開くメガソーラー計画がありまして、海南市長への届け出があり、市長からは指導通知書が出されています。
 私たちは、地元の関係者、地質の専門家と一緒に山を歩いてきました。藤白断層が走り斜面崩壊の危険がある、斜面崩壊があった場合、すぐそばを流れる日方川を埋めて洪水のおそれがあるなど、心配の声が上がっています。現地では、モノレールなどをつけて資材の運び込みの準備もしているようです。地元住民の皆さんには、説明会を開くと言ってきています。
 県に林地開発事前協議申出書が出され、それに対する県各課の意見取りまとめ表が出されれば、それに基づいて私たちは問題を検討するのですが、事前協議書も出されていないので、正確な全貌をつかめないでいます。こういうものを出さずに住民への説明会をするのでいいんだろうかというふうに思います。これは出されていないので、県のほうではまだ御存じないということなので、質問にはなりませんが、事前協議申出書が出された場合には早急に公開していただけるようにお願いをして、次へ行きたいと思います。
 次は、海南市、紀美野町、紀の川市周辺の風力発電の問題です。
 計画段階環境配慮書の縦覧があるというので、私も海南市の環境課で縦覧をしてまいりました。
 まず驚いたのは、4500キロワットの風車72基という計画の規模であります。私は、これまでも風力発電に伴う被害を訴えている人たちの声を届けてきました。しかし、国の規制基準が確立していないことや、風車との因果関係が認められないといって、それを救済できていない問題に私は胸を痛めてまいりました。
 これまで私が紹介した事例では、平成20年に由良町畑地区周辺に広川明神山風力発電所が稼働し始めた。さきに述べた谷口さんは、胃が重たいような異常を感じたと言います。そして、平成23年9月、由良風力発電所2000キロワットが稼働し始めて症状が激変したということをこの議会でも紹介いたしました。今度は、4500キロワットという途方もない大規模な風力発電であります。
 この計画についての環境アセスメントなどの審査はどのように進められていくのでしょうか、環境生活部長からお答えをいただきたいと思います。
○副議長(山本茂博君) 環境生活部長山田成紀君。
  〔山田成紀君、登壇〕
○環境生活部長(山田成紀君) 御質問の風力発電事業につきましては、環境影響評価法に基づき、去る9月1日に事業者から県を初め国及び関係市町に配慮書が提出されたところです。
 配慮書とは、風車の設置場所、またその大きさなど、具体的な計画が定まっていない検討段階で、どのような点で環境に配慮すべきなのかを事業者自身が文献調査などにより取りまとめた図書です。これを広く公開することで、地域の環境をよく知っている住民、専門家及び地方公共団体の意見を取り入れて、より計画内容を具体化し、次の手続である調査、予測、評価の方法を検討する方法書につなげていくものです。
 その後、その結果を検討する準備書、さらに最終的な取りまとめとなる評価書が作成されることとなっており、県では、それぞれの段階に応じて審査していくことになります。
 なお、今回提出された配慮書に対する知事意見については、関係市町や和歌山県環境影響評価審査会の意見を参考にし、10月末に事業者に通知する予定であり、第1回目となる審査会を9月12日に開催し、第2回目は10月4日に行う予定です。
○副議長(山本茂博君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 何度も言いますが、4500キロワットというこれまでにないものです。全国でも、まだこういうものはどこにもないというふうにお聞きしています。環境への悪い影響が疑われるものはつくらせないという立場で臨んでいただきたいと要望しておきたいと思います。
 次へ行きます。
 私は、自然エネルギーだ、地球温暖化を防ぐといって森林を切り開くのは、本末転倒だと思います。豊かな森を切り開かなくても、荒れ地や建物の屋根は幾らでもある。そうした場所をソーラー発電に政策誘導して、自然エネルギーへの転換を図るべきだと思います。和歌山県の消費電力の中で自然エネルギーはどのように推移しているのか、太陽光、風力などの設備の容量はどのように推移しているのか、政策的にどういう方向で発展させようとしているのか、商工観光労働部長からお答えいただきたいと思います。
○副議長(山本茂博君) 商工観光労働部長山西毅治君。
  〔山西毅治君、登壇〕
○商工観光労働部長(山西毅治君) 本県の自然エネルギーの推移につきましては、固定価格買取制度の導入以降、県内消費電力に占める自然エネルギーの割合は、同制度導入前の平成23年度の約12%から、平成28年度には約20%となっています。このうち、太陽光発電の設備容量は約10.7倍に、風力発電の設備容量は約1.3倍になっています。
 次に、本県における自然エネルギーの政策の方向についてですが、自然エネルギーは国産のエネルギーであるとともに、発電時には温室効果ガスを排出せず、地球温暖化の防止につながるエネルギーであることから、これらの発電事業を行おうとする事業者のためにワンストップ窓口を設けるとともに、県のホームページにおいて県や市町村が保有する未利用地の情報を紹介するなど、その推進を図ってまいりました。こうした取り組みの結果、利用困難であった産業廃棄物中間処理場跡地に太陽光発電所が設置されるなど、未利用地の有効利用が図られた例もあります。
 しかしながら、例えば森林の伐採を伴って太陽光パネル等の設置が行われるような電源開発の場合には、防災や景観、周辺の自然環境に悪影響を与える懸念もあることから、これらの懸念に対応しつつ、地元の意向にも十分配慮し、適切な形での立地が進むよう対応していくことが必要であると考えております。
○副議長(山本茂博君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 今お答えいただいたように、産業廃棄物などの関係で利用できない用地、それをソーラー発電に利用する、これは、ほかに特に問題がなければ大変結構かと思います。
 例えば、海南市には、下津町にマリーナシティを造成した土取り跡地があります。ある企業が格安で手に入れて社屋を建てて、土地の一部はソーラー発電をしている。しかし、土地はたくさん余っているように見えます。こうした余った土地の活用、それから住宅ソーラーなど、もっともっとできないものかと思います。これは要望といたします。
 次に、企業との協力のあり方です。
 真面目な企業もたくさんあります。しかし、住民を恫喝したり分断する企業もある。
 海南市下津町大窪では被害の訴えがあり、私が県議会でも取り上げ、何度も低周波の測定をお願いしています。ところが、その周辺にはもっと風車に近い集落もあるのですが、被害の訴えが表に出てきません。なぜだろうか、こういうふうに不思議に思っておりました。そうすると最近、ふとしたことから、ある自治会──その辺では区と言うんでしょうが──が企業との間で交わした覚書を手に入れました。覚書では、区費としてお金を払うことになっています。その見返りが問題です。
 覚書を読み上げようと思ったんですが、少し時間がかかるので、要約すれば次のようになります。
 1、会社が区にお金を渡す。
 2、区は、風車運転について苦情を言わないし、区民にも苦情を言わせない。
 3、意見があれば、区長などを通じて言う。
 4、後から移住して区民になった者にもこの覚書は守らせる。
 5、覚書の内容を第三者に漏らさない。
 こういう内容であります。このような覚書を企業が住民と結ぶことが許されるのか、こうした覚書は拘束力を持つんだろうか、人権侵害ではないか、こんなふうに思うわけであります。
 たまたま手に入ったんですが、こうした問題はほかにもあります。県と協議もしていないのに、住民には「県と協議を進めています」と言う紀美野町のメガソーラー企業のことを今報告いたしました。また、「合意してくれた自治会とは協定を結べるが、合意してくれないと協定も結べませんよ」と自治会をおどしているというケースが、この前の議会で報告をされました。それから、「地元自治会にお金を渡すから、被害で苦しんでいる人への救済はそのお金の中でやっておいてくれ」という企業があります。
 私は、企業が和歌山県で仕事をしてくれるのは大変結構なんですが、口を塞ぐような覚書を結んだり、被害者への救済を自治会に丸投げしたり、おどしたりするんではなくて、一緒になって地元の発展と、自然と健康を守ることを考えてほしい。そういう意味で、私は、企業倫理ということをしっかり持ってくれというふうに企業に申し上げたいと思うんですが、知事はどういうふうにお考えでしょうか。
○副議長(山本茂博君) 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 今の同意書ということについてお答え申し上げる前に、雑賀議員の御発言をお聞きしておりましたら、雑賀議員は、原発は反対であるが、4500キロのメガソーラーは途方もない大きさだとおっしゃいましたが、原発は大体、標準的なやつで100万キロワットぐらいが1つでありまして、この途方もないやつを200ぐらいで代替しなきゃいけないと思ったら、今のようなお話がもっとあっちこっちでたくさん出てくるだろうなあというような、そういう感想を持たしていただきました。
 つじつまを誰かが合わさないといけない。責任のある政治あるいは行政をしようと思ったら、どこかでつじつまを合わさないかん。そういうことについて思いをいたした次第であります。
 さらに、同意書についてお聞きしておりましたら、何か民主主義とか人権とかないような国の話の約束事みたいな感じがいたしました。サインをしてる人は拘束されるんでありましょうが、サインをしてないかもしれないような人まで文句を言わせないとか、それから、新しく来る人にも文句を言わせないとか、そんなことが法律的にあり得る話じゃあ日本ではありませんので、一体何なんだろうなあというふうに思いました。
 とはいえ、さらに申し上げますと、企業が、企業を受け入れる地元の住民に対して虚偽の説明をする、あるいはおどしたりするというような不誠実な方法で無理やり企業の受け入れを求めるというようなことがあるんじゃないかというような御懸念がありましたが、そういうことは本当に許されないことだというふうに思います。
 一方、そういうおどしとかうそとかいうことでなくても、合理的な理由もないのに、文句を言わないということだけの対価として金銭を要求するという方法も私はよくないというふうに思っております。場合によっては、こんなことはたかりになるわけでありまして、こういうことが頻発しておれば地域の評判も落ちてまいります。
 また、企業が安易にこういう要求に乗る、または、これを利用して目的を達するということもよくないことだというふうに思っております。
 こういうことを防ぐために、一例でございますが、和歌山県は公共調達の制度があるんですが、この公共調達において、このような正当な理由もないのに、いわば口どめ料を払った、そういうような業者は公共事業を受注できないようにしばらくなりますよというような制度をつくってるところであります。
 ただし、そうした判断は、合理的か不合理か、正当な理由があるのかないのか、慣行上許されるのかどうか、そういうことについては個別の事情を踏まえて行う必要があると思います。場合によっては合理的な対価ということかもしれません。したがって、一概には言えませんけども、我々は、行政を預かる者としてはしっかり監視をしていかなければならないと思います。
 いずれにせよ、企業の活動は地域社会に与える影響が大きいんでございますので、地域社会の一員として適切な事業の実施を行うことが必要だと考えておるわけで、また、企業とかかわる住民あるいはその企業とかかわる他の事業者、そういう方々も、そういう意味で和歌山県はみんなが倫理を重んじるような、そういうところであってほしいというふうに思っております。
○副議長(山本茂博君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 知事がいろいろおっしゃったので、私も少し申し上げておきます。
 1つは、問題のすりかえをしてはいけないと思います。原発とメガソーラーを比較して、そして、4500キロワットがどえらい大きいと言うんなら原発はどうなんだと、こういう論理だと思います。しかし、原発の危険と風力発電が生み出す被害は全然話が違うわけです。原発は原発として、事故が起こったらどうなるのか、廃棄物をどうするのかという、そういう議論をしなければならない。しかし、風力の場合はそういう危険はないかわりに、今、低周波、超低周波というふうな、そういう被害が問題になるので、そういう法外な大きな風力発電というのを4500でそういうふうに申し上げたわけで、こういう違いというのは、これは子供さんたちでもちょっとおかしいなというふうに思われるんではないかと思います。
 2つ目、人権のない国の話かなというふうに思われたのは、これは正常な感覚で問題を見ておられるというふうに思います。ただ、その中で、住民がたかってはいけないというふうに言われた。こういう問題が起こってくる場合の──私はこの区のケースはどうだったのか知りません。しかし、大抵こういう問題が起こってくるときは、被害の訴えがあり、風車をとめてくださいという話が地域から出ます。それに対して、会社のほうでは、区費として何百万円払うからそれで協定を結んでくれないかというふうに、会社から話が来るのが普通です。そして、そういう話があって、その中に、これだけお金を払うから今申し上げたような協定は結べないかというふうになってくる。
 これはここから私の想像ですが、地域では低周波の被害を感じる人もいれば感じない人もいる。それだったら、お金くれるんだったらもうといたらどうかという人もある。そこで地域が分断をされる。そこで、この中心になる人は大変苦労しながら、そういう協定を結ぶか結ばないか悩みに悩み抜いた上で、この協定、どこの地域のものか私にはわかりませんが、結んだものだろう、恐らくこういうものは各地域に、表に出ないけれどもあるんだろうというふうに、これはあくまでも私の想像でございます。しかし、私もいろいろこれまで住民運動にかかわってきましたから、大体、企業と住民の間でこういう話が出るときはこういうパターンで進むのが普通だというふうに私は理解をしているということを申し上げておきたいと思います。
 ただ、知事がいろいろ言われたのは問題がありますが、しかし、企業はやはり企業倫理を守ってやらなくてはいけない、こういうふうに結論として言われたことについては大変結構なことでございます。
 それでは、次へ行きたいと思います。
 最後は、プレジャーボートの係留施設でございます。
 私が海南市周辺のプレジャーボートの放置問題を取り上げたのは、平成19年6月の議会のことでした。恐らく当局もこの問題を放置できないと検討を始めていただいていたんだろうと思います。私が質問したからといって、急に動くわけではない。ちょうど私の質問が背中を押したような形になって、プレジャーボート放置の規制条例をつくること、あわせて停泊施設をつくることが表明されたのは、それから間もなくの仁坂知事の記者会見のことでした。ちょうどタイミングがよかったなあと私は思っています。
 あれから8年たって、係留施設の整備も一部進み始めましたが、放置艇の景色は余り変わりません。
 そこで質問でございます。
 係留施設は、海南市が費用負担するもの、県が費用負担するものがありますが、それぞれどのような進捗状況になっているのでしょうか、その施設への放置艇の移動の計画はどうなっているのでしょうか、それぞれタイムスケジュールも含めてお答えください。これは、県土整備部長になりますか、お願いします。
○副議長(山本茂博君) 県土整備部長森戸義貴君。
  〔森戸義貴君、登壇〕
○県土整備部長(森戸義貴君) プレジャーボートの係留施設の整備の進捗状況などについて御質問を頂戴いたしました。
 下津地区を含めた海南市周辺地域の放置艇を対象とした小型船舶係留施設につきましては、地域全体で7施設の整備を計画しており、平成32年度中の完成を目標に進めております。このうち4施設を海南市が整備し、現時点では海南地区の2施設が供用中、冷水地区の1施設が整備中です。下津地区の1施設につきましては、地元関係者と調整を実施しているところでございます。
 残る3施設につきましては、県が整備することとなっており、琴の浦地区の1施設が供用中、冷水地区の1施設が整備中でございます。琴の浦地区の1施設につきましては、来年度より工事に着手する予定でございます。
 放置艇の移動につきましては、平成32年度の完成後、できるだけ速やかに全ての放置艇を収容することを目標に、一定の施設の整備が完了した時点で、順次、段階的に進めることとしてございます。
○副議長(山本茂博君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 ありがとうございました。
 既に完成している施設もあるわけですが、完成した施設の船の入りぐあいはどうでしょうか。県土整備部長、お願いします。
○副議長(山本茂博君) 県土整備部長。
  〔森戸義貴君、登壇〕
○県土整備部長(森戸義貴君) 完成済みの施設の利用状況についてですが、既に完成し、利用を開始している施設は7施設のうち3施設でございます。3施設の収容隻数は、収容能力218隻に対し59隻で、約3割の利用状況となってございます。
○副議長(山本茂博君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 私は船のことはよくわからないんですが、地元の利用者の方からは、船が入りにくいとか船から上がりにくいという声も上がっています。設計に問題があったのではないんでしょうか。
○副議長(山本茂博君) 県土整備部長。
  〔森戸義貴君、登壇〕
○県土整備部長(森戸義貴君) 係留施設が利用しづらいのは設計に問題があったのではないかという御指摘でございますが、県の放置艇対策は、津波来襲時の放置艇の流出による2次被害を低減することを目的としてございます。小型船舶係留施設の設計につきましては、他の地区の施設と同様に標準的な仕様に基づいてございます。
 これまで放置艇として一定の区画に係留されておられなかった方々には利用しづらいとの印象を持たれるのではないかと推察をいたしますが、設計に特段の問題があるとは考えてございません。
○副議長(山本茂博君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 使いやすい係留施設であったとしても、それを使ってもらうのはなかなか大変です。放置艇の所有者の方は、これまで無料で一番便利な場所、例えば車で行ってすぐ船に乗れる場所に係留してきたんです。係留施設ができたから希望者は移ってくださいと募集しても希望してくれない。全ての放置艇を収容する施設ができるまでは強制できない。部分的に係留禁止で撤去を強制してもトラブルが起きかねません。私は、長い間認めてきた放置艇を撤去する大仕事だから、率先して係留施設を利用する方への優遇など、誘導措置も要るのではないかと思います。
 そういう観点から、例えば利用料金も先に利用した人には10年間は半額にするなど考えてはどうかと思っていますが、利用料金はどうなっていますか。私が提案するような優遇措置は考えられませんか。お願いします。
○副議長(山本茂博君) 県土整備部長。
  〔森戸義貴君、登壇〕
○県土整備部長(森戸義貴君) 係留施設の利用促進のために料金の軽減等の措置を講じられないかとの御質問を頂戴いたしました。
 放置艇対策として整備された小型船舶係留施設につきましては、その目的、施設の内容を考慮して、他の公共マリーナや民間マリーナに比べて廉価な利用料金を、管理者である県または市がそれぞれの条例で設定をしてございます。
 放置艇のスムーズな移動、収容を進めるために、議員から御提案のありました優遇措置を講じることについては、既に対策を実施済みの他地域でも優遇措置をとっていないこと、また、海南市周辺でも既に小型船舶係留施設に放置艇を移動された方もいらっしゃることを踏まえ、他地域や現係留者との均衡を欠くとの観点から困難であると考えてございます。
○副議長(山本茂博君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 何にしても、この係留施設に移ってもらうのは大仕事でございます。いろいろと工夫もして施設をつくったけども、あいてるやないか、無駄遣いやないかなどと言われないように、ひとついろいろと考えていただきたいと思っています。
 ところで、ここからはちょっと要望ですが、この係留施設への海南市の財政負担には問題があると前から申し上げてきました。もとも私どもは、国・県の直轄事業の市町村負担は軽減、廃止を求めるという立場です。
 海南市周辺で直轄事業である津波防災堤防建設が進んでいます。その費用の3分の2は国が負担する、3分の1は県が負担するわけですが、その規定外協力、いわば思いやり負担として地元企業が4%、海南市が4%をそれぞれ負担することになっています。企業の協力金は雑収入として県が受け入れる。そして、海南市の協力内容は、放置艇の係留施設の整備を県にかわって海南市が肩がわりするというものであります。
 私は、「こういう規定外の負担は全国に例があるのか」と質問したところ、当時の尾花県土整備部長──現和歌山市長さんですが、「調べてみたけれども、全国に例がありませんでした」というふうにお答えになったいわくつきのものであります。その費用が当初の浮上式の場合には、それぞれ10億円であった。それが、海南市が行う係留施設建設の海南市負担額に当たるわけです。ところが、新しい計画に変わって、それが18億円になった。だから、何かまた、このままでいくんだったら何を今度負担してもらおうかと探さなくてはならない、こうなってくるわけです。
 しかし、かつての場合、世界初めての浮上式防災堤防と銘打っておりましたから余り反対の声も起こらなかったんですが、しかし、その計画が変更になって、しかも金額はこのままでいったら18億になる。こういう協力金の増額は、私はやめていただきたい、十分検討されるように要望しておきたいと思います。
 以上で、私の一般質問を終わります。どうもありがとうございました。(拍手)
○副議長(山本茂博君) 以上で、雑賀光夫君の質問が終了いたしました。

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