平成29年6月 和歌山県議会定例会会議録 第6号(全文)


平成29年6月 和歌山県議会定例会会議録

第6号(全文)


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正しい表記は「人名等の正しい表記」をご覧ください。

平成29年6月
和歌山県議会定例会会議録
第6号
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議事日程 第6号
 平成29年6月26日(月曜日)
 午前10時開議
 第1 議案第128号から議案第141号まで並びに報第1号から報第5号まで(質疑)
 第2 一般質問
 第3 議案等の付託
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会議に付した事件
 第1 議案第128号から議案第141号まで並びに報第1号から報第5号まで(質疑)
 第2 一般質問
 第3 議案等の付託
 第4 休会決定の件
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出席議員(41人)
 1番 中西峰雄
 2番 秋月史成
 3番 立谷誠一
 4番 泉 正徳
 5番 前芝雅嗣
 6番 花田健吉
 7番 井出益弘
 8番 宇治田栄蔵
 9番 川畑哲哉
 10番 玉木久登
 11番 濱口太史
 12番 鈴木太雄
 13番 尾﨑太郎
 14番 藤山将材
 15番 尾崎要二
 16番 中村裕一
 17番 岩田弘彦
 18番 中本浩精
 19番 服部 一
 20番 山本茂博
 21番 冨安民浩
 22番 吉井和視
 23番 堀 龍雄
 24番 中 拓哉
 25番 岸本 健
 26番 森 礼子
 27番 谷 洋一
 28番 新島 雄
 29番 岩井弘次
 30番 多田純一
 31番 片桐章浩
 32番 藤本眞利子
 33番 浦口高典
 34番 山下直也
 35番 山田正彦
 36番 菅原博之
 37番 谷口和樹
 38番 奥村規子
 39番 雑賀光夫
 41番 坂本 登
 42番 長坂隆司
欠席議員(なし)
〔備考〕
 40番 欠員
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説明のため出席した者
 知事         仁坂吉伸
 副知事        下 宏
 知事室長       宮﨑 泉
 危機管理監      藤川 崇
 総務部長       浦上哲朗
 企画部長       髙瀨一郎
 環境生活部長     山田成紀
 福祉保健部長     山本等士
 商工観光労働部長   山西毅治
 農林水産部長     原 康雄
 県土整備部長     森戸義貴
 会計管理者      野田孝雄
 教育長        宮下和己
 公安委員会委員長   大桑いく嗣
 警察本部長      宮沢忠孝
 人事委員会委員長   守屋駿二
 代表監査委員     江川和明
 選挙管理委員会委員長 小濱孝夫
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職務のため出席した事務局職員
 事務局長       田村公一
 次長         西原龍也
 議事課長       松山 博
 議事課副課長     武田 稔
 議事課議事班長    岩谷隆哉
 議事課主任      保田良春
 議事課主任      岸裏真延
 議事課主事      大森圭悟
 総務課長       糸川 徹
 政策調査課長     中平 博
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  午前10時0分開議
○議長(尾﨑太郎君) これより本日の会議を開きます。
 日程第1、議案第128号から議案第141号まで、並びに知事専決処分報告報第1号から報第5号までを一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第2、一般質問を行います。
 4番泉 正徳君。
  〔泉 正徳君、登壇〕(拍手)
○泉 正徳君 皆さん、おはようございます。
 一般質問もいよいよ最終日となってきましたが、もうしばらくおつき合いを願いたいと思います。
 では早速、議長のお許しをいただきましたので、通告に従い、一般質問をさせていただきます。
 昨年の9月議会で鈴木議員が、仮称ですが、森林環境税について質問されていますが、その中で農林水産部長は、「平成28年度与党税制改正大綱において、森林環境税の創設が盛り込まれ、一歩前進しましたが、『その時期については、適切に判断する』との表記にとどまっていることから、関係省庁への働きかけをこれまで以上に強めてまいります」とお答えいただいております。
 その後、平成28年12月8日に決定された平成29年度税制改正大綱では、森林吸収源対策として、2020年度及び2020年以降の温室効果ガス削減目標の達成に向けて、森林吸収源対策及び地方の地球温暖化対策に関する安定的な財源の確保を講ずる、幾つかの施策を講じることにより市町村が主体となって実施する森林整備等に必要な財源に充てるため、個人住民税均等割の枠組みの活用を含め都市・地方を通じて国民に等しく負担を求めることを基本とする森林環境税の創設に向けて、地方公共団体の意見も踏まえながら、具体的な仕組み等について総合的に検討し、平成30年度税制改正において結論を得ると表記されています。
 森林環境税については皆さん御存じだと思いますが、今日までの経過を少し振り返りたいと思います。
 平成3年秋に旧本宮町長の中山喜弘町長が、国税の中から森林の持つ公益的機能を考慮して市町村に交付税措置をという森林交付税構想を提唱して、町議会では意見書の採択を行い、翌年の平成4年2月には、本宮町長の呼びかけで賛同された36市町村を初め、県内外から多くの自治体が参加して森林交付税フォーラムが開催されました。
 当時の国際日本文化研究センター所長、哲学者の梅原猛先生により、「森と日本文化」というテーマで基調講演が行われました。その講演の中での話ですが、「森は人類にとって何であったか。狩猟採集時代の長い間、恐らく50万年、人間は森で生きてきた。ところが、約1万年前に農耕牧畜という新しい生産方法を人類は獲得し、そして農耕は小麦と稲作の文化に分かれ、小麦の生産地は主に石の文化となり、稲作地域は森の文化に分かれていった」とつないでいます。
 そこで、岩手県の漁業協同組合の募集した標語を例に挙げ、「『森は海の恋人』というのがあって、これはいい言葉です。あの肥沃な漁場は森が補償している。森のないところに肥沃な漁場はない。肥沃な森から出た養分が海へ行って海の海藻を養い、貝を養い、魚を養っている。そればかりか、この森は長い間、稲作農業を支えてきた。森があるから常に流れる川がある。川があるから米ができる。単純なことですが、日本人はよく知っていた。そして、森の神を敬い、お祭りする鎮守の森を平地にも残す。これを大切にしていかなくてはならない」。残さなければならない日本のよき文化であると言われたのでしょう。「これを自治体だけで守ることは不可能で、国の支援が必要であり、森を守る資金を出さなくてはならない」と述べられています。
 また、当時の諸塚村長──宮崎県にあるんですが、諸塚村国土保全森林作業隊を平成2年に発足させて、10名の隊員がいるそうです。パネルディスカッションの中で村長は、「気の早い話でございますが、森林交付税が実現して、もしお金をもらったら、どう使おうかと今ちょっと考えておるところです。うちの森林作業隊、昨年は高校卒業生が2名入りました。真夏の暑い盛りに下刈りに行って帰ってきたものですから、隊長格に『どうだった』と聞いたら、3時ごろにぶっ倒れたそうでございます。私も自分で下刈りをやっておるから、その折はとめどなく涙が流れました。お金を持って海外旅行をする若者があふれている中で、いかに森林が大切とはいえ、この子供たちをこういうところで育てていいのかと自問自答をいたしました。しかし、私が隊員に申しておりますことは、国土を防衛するために自衛隊がございます、国土保全をするために我々の任務があるのだと、そういう気持ちで頑張ろうじゃないかと言っておるのです。何も甘えてお金だけを下さいと申し上げているわけではございません。村民とともに産み落とした作業隊でありますから、3度の食事を2度に減らしても、これは育てなければ我が村が潰れてしまう」と熱い思いを語られました。
 あれから、もう26年の歳月が経過しました。本宮町の一町民だった私は、山村地域を抱える首長の熱い思いと会場の熱意を感じながらも、森林交付税の深い意味もわからず、そう遠くない時期に交付税が創設されるものと思いながら聞いていたものでした。また、当時、和歌山県議会でも、平成5年の2月議会で「林業・山村活性化のための森林交付税(仮称)の創設についての意見書」が出されています。
 26年前のフォーラム、最後の宣言ではこう語られています。「森林は、私たち人類にとってかけがえのない大切な宝であり、命の源です。このすばらしい森林を21世紀、さらに未来永遠に承継していくことは、現在を生きる私たちに託された最も大きく重要な課題です。しかしながら、この森林を祖先から営々と守り育ててきた山村では、今、過疎化と高齢化に悩み、存続さえも難しくなっています。こうした状況に対する国民世論の高まりと国の施策の進展は、大きな希望と勇気を与えてくれました。今こそ、森林の持つ公益的機能と、それを守り育てていく山村社会の役割を広く国民に訴え、大きな運動として森林交付税の創設を強く政府に要望していくことをここに宣言します」と述べられています。
 もう一度、梅原先生の言葉をかりますと、「先進国が熱帯雨林を破壊することはけしからんという世論が強くなると、日本の森が見直されてくる。20年後、30年後の将来はまだ考えていないと言うかもしれない。しかし、20年、30年後のことを考えなければならない」と言われました。
 あの当時の本宮町長の提唱から36市町村でスタートした森林交付税創設促進連盟は、11年の活動の後に、平成15年には全国森林環境・水源税創設促進連盟に改称、この時点での加盟は全国で924市町村でした。その後、平成18年には「水源」を削除して全国森林環境税として創設を目指すことになり、名称も全国森林環境税創設促進連盟と改称され、現在に至っています。
 十年一昔と言いますが、もう既に宣言文で言われている21世紀も17年が経過をして、梅原先生の言われた20年後は過ぎてしまいました。その間に交付税から環境税へと名称も変わり、日本の未来のために全国の3分の1の市町村が待ち焦がれた森林環境税の創設です。
 和歌山県でも、平成2年には2312人いた県内の林業就業者数は、平成27年、半数以下の1145人となり、当時は酸性雨や地球温暖化、オゾン層の破壊などの問題は語られていましたが、近年では花粉症や獣害の被害など、山を守る状況はさらに厳しくなっています。
 最初に述べましたが、29年度税制改正大綱では、平成30年税制改正で結論を得ると記されています。「木の国わかやま」の豊かな森林を次の世代に残すためにも必要な森林環境税と思われますが、知事の御所見を伺います。
○議長(尾﨑太郎君) ただいまの泉正徳君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 議員御指摘の森林環境税につきましては、それを広い意味で捉えた場合はもちろん必要であると思いますし、私もポジティブであります。
 議員御指摘のように、和歌山でも長い運動があり、それが県では、国に先駆けていち早く紀の国森づくり税に結実してると思っております。県では、森林を県民の財産として守り育て、次の世代に引き継いでいくことを目的とした紀の国森づくり税を平成19年4月から徴収しているわけでございます。これによりまして、手入れが放棄された森林の間伐等の森林整備や貴重な天然林等の公的な管理、森林を守り育てる意識の醸成など、森林環境の保全に取り組んでおります。
 現在、国では、所有者等による自発的な間伐等が見込めない森林を市町村が主体となって実施する森林整備等の財源となる森林環境税の創設に向け、その具体的な仕組みが検討されているところであると承知しております。全国的に徴収して森林の多い市町村に配分するという案が検討されておりますので、和歌山県の市町村は少しだけほかよりも多くもらえるかもしれないと期待しているところでございます。
 しかしながら、現在示されている森林整備にかかわる使途が人工林の間伐のみであることや、実施主体とされている市町村には森林行政専門職員が少ないため、一体どうやって事業を実施するんだという課題もあると私は思います。
 問題は、この制度ができると国民や県民が、二重行政になるので現行の紀の国森づくり税を廃止せよとおっしゃるかもしれないという議論もあると思います。そういたしますと、これまで本県が紀の国森づくり税を財源として行ってきた、市町村の行う間伐のみならず、自然林の保護、森林環境学習など、多面的な事業がなくなってしまうという懸念もあります。
 それに、何もしないで山林をほったらかしておいた山林地主が、市町村が間伐の手入れをしてくれたため、その山林の財産価値が何もしないでも上がってしまうというモラルハザードをどうしてくれるんだという気持ちもあります。事業がうまくいかなかったら倒産あるいは財産喪失になってしまうという危機感を感じながらも事業をしている他の業種の中小企業の方々の気持ちを考えると、そんなふうに思うわけであります。
 このため、こういう問題を森林環境税を創設するならばきちんと整理して、間違いのない制度をつくってもらいたいという気持ちでおるわけであります。
○議長(尾﨑太郎君) 泉 正徳君。
  〔泉 正徳君、登壇〕
○泉 正徳君 知事より、森林環境税のお考えをお聞きいたしました。ありがとうございました。
 それでは、次の質問に移ります。
 林業の振興についてお伺いしたいと思います。
 林業振興の現状と対策について。
 ことし1月に谷、秋月議員とともに大分県の佐伯森林組合に2日間視察に行き、森林組合長や担当職員から森林組合の現状と取り組みについて説明いただき、その後、苗づくりや搬出現場の作業状況と皆伐後の植林現場などを案内していただきました。さらに、組合が経営する木材加工場で製品の説明や作業工程を見学させていただき、最後にもう一度、組合長や担当者から計画的な施業の説明を受けました。
 その中での話ですが、特に感銘を受けたのが、組合が率先して組合員や山林所有者に対して誠意を持って施業手順やお金の流れまできめ細かく説明をしてから事業に着手すると言われていました。このことにより、山林保有者や隣接者とのトラブルの回避や組合の信用につながるというお話を聞きました。
 この地域は、和歌山県の森林に比べて緩やかな地形など、地形的な優位性はありますが、計画的な施業で出材をすることにより雇用の安定にもつながり、協力会社との関係もうまくいくとの話でした。ここでの話は1単位森林組合の話ですが、施業の流れや林業経営の取り組みには多くの学ぶべきことがありました。
 今回の和歌山県長期総合計画の中でも林業・木材産業の成長産業化がうたわれ、進捗管理目標を掲げて取り組まれているようですが、現状と今後の取り組む対策について農林水産部長にお伺いします。また、一昨年の9月には林業の人材育成と高性能林業機械について質問を行いましたが、その後の人材育成の経過についてもあわせてお伺いいたします。
○議長(尾﨑太郎君) 農林水産部長原 康雄君。
  〔原 康雄君、登壇〕
○農林水産部長(原 康雄君) 県内の森林資源は利用期を迎え、林業再生の好機となっております。今までも、路網整備や高性能林業機械の導入を図り、低コスト林業を推進してきましたが、平成28年次の素材生産量は約17万立米で、ここ5年間でもほぼ横ばいの状況です。
 こうした状況を踏まえ、昨年、長期総合計画を見直し、今後さらなる生産性の向上を図るため、森林ゾーニングを行い、経済林と環境林に区分し、さらに、経済林の中でも素材生産の条件のよいエリアを重点エリアとし、基盤整備や素材生産を集中支援することで素材生産量の増大に取り組み、長期総合計画では、平成38年度の素材生産量を30万立米まで引き上げることを進捗管理目標に上げているところです。
 また、これにあわせて、コンテナ苗を活用した伐採と植栽の一貫システムによる再造林の効率化、木材需給と生産情報のマッチング、紀州材の利用拡大などの取り組みを総合的に推進し、造林・伐採から流通・加工販売までの一貫した流れを築き上げられるよう、「新・紀州林業への挑戦」に積極的に取り組んでまいります。
 人材育成といたしましては、以前、泉議員から御質問のありましたように、すぐれた経営感覚と実践的な技術や知識を持ち、川上から川下までをトータルにサポートできる人材を育成するため、ことし4月に農業大学校を農林大学校に改編し、林業研修部を新設いたしました。林業経営コースでは現在5名が受講し、それぞれが一生懸命頑張っております。県もその状況をいろんな機会を通じて発信することにより、林業就労者の確保につなげてまいりたいと思います。
○議長(尾﨑太郎君) 泉 正徳君。
  〔泉 正徳君、登壇〕
○泉 正徳君 ありがとうございました。学校へ私も行ってきたんですが、5名の生徒さんというんですか、女性の方もいましたし、60歳を超えて再就職のために頑張ってる方もいました。一生懸命頑張ってる姿に本当に感銘を受けました。
 それでは、次の質問に入ります。
 田辺市林業成長産業化モデルの推進についてであります。
 林野庁は、本年4月28日に全国的なモデルとなる16の林業成長産業化地域を発表しました。モデル地域の選定と育成は、昨年6月に閣議決定された政府の新成長戦略に盛り込まれていた重点施策であり、今年度は林野予算で10億円の必要経費が確保されています。
 この中の16市町村の1つに、伝統的な林業地域の復活という選定基準で、建築士と協定を締結するなどして無垢紀州材の需要拡大という特色と目標を掲げて田辺市が選ばれています。このことは、紀州材、特に無垢材のすぐれた点をアピールし、他の産地との区別化を図り、紀州材のブランド化につながり、紀州材のよさを全国または世界に発信する機会を得たものと大変うれしく思い、期待をしています。
 具体的な計画はこれから詳細に入っていくものと思われますが、県のかかわりについて農林水産部長のお考えをお聞きします。
○議長(尾﨑太郎君) 農林水産部長。
  〔原 康雄君、登壇〕
○農林水産部長(原 康雄君) 林野庁の平成29年度新規事業となる林業成長産業化地域創出モデル事業では、和歌山県田辺地域を含む全国で16の地域が選定されており、近畿地区では和歌山県田辺地域のみが選定されました。
 田辺地域では、増産を目的に、田辺市が中心となって今後5年間において、中間土場等において適切に原木を仕分ける人材を育成するとともに、ICTを活用したサプライチェーンを構築することとしています。さらに、無垢材や木質バイオマス等、積極的な活用を進めることとしており、県の長期総合計画の林業の振興対策とも合致しております。
 紀州材は、色艶がよい、目が込んでいる、強度があるなど、見た目も性能もすぐれた木材として評価されており、県としても、首都圏など大消費地での紀州材の魅力発信にも取り組んでいるところです。
 今後の取り組みは田辺市が中心となりますが、本県の林業振興を図るため、田辺市と連携し、田辺地域林業成長産業化を推進してまいります。
○議長(尾﨑太郎君) 泉 正徳君。
  〔泉 正徳君、登壇〕
○泉 正徳君 ありがとうございました。ぜひ、新しい取り組みなんで、大きく紀州材をPRするように部長にもお助けをいただきたいと思います。
 それでは、次の質問に入ります。
 紀州3人っこ施策についてでございます。
 国立社会保障・人口問題研究所の発表によれば、このままの出生率が続けば、200年後の日本の人口は1391万人、300年後には423万人、2900年には4000人、3000年には1000人になるそうです。あくまでも出生率が上がらなければという前提での計算ですが。
 そこで、まち・ひと・しごと創生法の大きなポイントの1つは国の定めた長期ビジョンです。ここでは、日本の人口を2060年に1億人程度の人口を確保するということを明確に示されました。これを受けて和歌山県長期人口ビジョンを作成し、目指すべき県の人口を2060年に70万人程度と目標を掲げています。
 最近よく、結婚を煩わしいと思っている若者がふえたとか男性の草食化などと言われますが、内閣府の調査によると、未婚の方の6割以上は、できれば結婚したい、将来欲しい子供の数は2人と答えた人が最多だそうです。
 石破前地方創生大臣の言葉をかりますと、「国家の存立要件は何かというと3つあります。国土であり、国民であり、排他的統治機構だ」と言っています。また、「国土を守る、国民を守るということの重要性については、ほぼ全ての国民が理解している。しかし、人口問題はもう既に起こっていることであり、現在進行形の問題です。にもかかわらず、政治家も国民もまだ危機意識が薄い。だからこそ有事である」と述べられています。
 子供を産み育てられる環境づくりは、和歌山県でも長期人口ビジョンの目的達成のための大きな課題です。現在行われている県の子育て支援策、紀州3人っこ施策について、福祉保健部長にお伺いします。
○議長(尾﨑太郎君) 福祉保健部長山本等士君。
  〔山本等士君、登壇〕
○福祉保健部長(山本等士君) 平均結婚年齢や生涯未婚率が上昇している中、少子化対策として第3子以降の出生割合を向上させることは極めて重要であります。しかしながら、まだ若く収入も少ない世代が子供を3人以上育てるとなると、幼児期の保育料や大学進学に係る授業料等への保護者の経済的負担が大きくなるため、その負担を軽減する必要があります。
 こうしたことから、県では、従来から第3子以降の保育料について無料化を行う紀州3人っこ施策を実施してきましたが、昨年度からさらに無料化の対象範囲を拡大いたしました。具体的には、対象となる年齢については、従来の3歳未満児から就学前まで引き上げるとともに、施設についても、幼稚園や認可外保育施設等を新たに対象としたところでございます。
 なお、出生総数に占める3人目以降の出生数の割合は、平成18年度は15.2%であったのに対し、直近の平成27年度には17.5%に増加していることや、3人目以降を妊娠した方を対象に実施しましたアンケート調査でも、約7割の方が本事業が3人以上の子供を持つきっかけになったと回答していることから、一定の成果があらわれているものと考えております。
 今後とも、安心して子供を産み育てることができる環境づくりを推進するために、事業が十分活用されていない市町に対しても積極的に働きかけてまいります。
○議長(尾﨑太郎君) 泉 正徳君。
  〔泉 正徳君、登壇〕
○泉 正徳君 ありがとうございました。成果が出ていることを大変うれしく思ってます。
 私も孫を持つ身でありまして、最近は3人目の孫ができましたんで、大変3人っこ施策に期待してるところでありますし、できれば4人目もいってほしいと思うぐらいであります。
 それでは、次の質問に移らせていただきます。
 保育士の確保でございますが、子育て支援策は広範囲で多岐にわたりますが、乳幼児を預かる保育園でも保育士の確保には相当御苦労されているようであります。
 児童福祉施設の設備及び運営に関する基準によりますと、保育士1人で保育できる子供の人数は、ゼロ歳児が3人、1~2歳児が6人、3歳児が20人、4歳児以上が30人となっています。乳幼児を預かる日々の職場での責任の重さはもとより、閉園後も保護者との連絡帳の作成等、残務も多く、我々の想像以上の激務だと聞いております。
 よりよい保育環境の確保は、保育に従事する方々のみならず、子供を預ける親御さんにとっても重要な大きな課題です。今回の補正予算にも計上されていますが、保育士の確保について、福祉保健部長にお伺いします。
○議長(尾﨑太郎君) 福祉保健部長。
  〔山本等士君、登壇〕
○福祉保健部長(山本等士君) 県では、保育士人材確保対策としまして、保育士資格の新規取得者の確保、潜在保育士の再就職支援及び保育士の離職防止の3つの対策を進めております。
 まず、1つ目の保育士資格の新規取得者の確保対策の主なものといたしましては、保育士養成施設に在学する学生に対する修学資金等の貸付事業でありまして、卒業後、県内の保育所等で5年間勤務するなど、一定の要件を満たせば返還免除とする仕組みを昨年度から導入しております。
 次に、2つ目の潜在保育士の再就職支援対策の主なものといたしましては、保育士コーディネーターを配置し、保育士を必要とする現場と復帰を希望する潜在保育士のマッチングや、潜在保育士が現場へ復帰する不安を取り除くための研修会や相談会を平成26年度から実施しておりまして、平成28年度までに50名の方の再就職につなげております。
 最後に、3つ目の保育士の離職防止対策の主なものといたしましては、今年度実施の民間保育所に勤務する全職員に対する2%の給与改善に加え、今議会でお願いしております保育士のキャリアアップ研修を通じ、さらなる処遇改善と資質の向上を図ってまいります。
 今後とも、保育士を安定的に確保し、充実した保育が提供できるよう、これらの対策に精力的に取り組んでまいります。
○議長(尾﨑太郎君) 泉 正徳君。
  〔泉 正徳君、登壇〕
○泉 正徳君 ありがとうございました。子育て支援のトップランナーだと言われる県を目指して頑張っていただきたいと思います。
 それでは、次の質問に移ります。
 地方創生における移住推進の取り組みについてであります。
 まず第1点、本県の移住・定住施策にどのような地方創生の成果があったかということなんですが、昨年2月にも同じような趣旨で質問をしていますが、地方創生総合戦略は、先ほども申し上げましたように、2060年に我が国の人口を1億人程度とする人口ビジョンを明確にしてございます。地方では、子供を産み育てやすい環境をつくっていく子育て支援策、もう一方では、都市に集中する人口を子育てのしやすい地方へと人の流れをつくることだと言われています。
 「日本列島創生論」の中で石破前地方創生大臣は、「国土交通省の資料で紹介されているデータでは、ドイツの保険会社が自然災害のリスクを世界主要都市で算出したところ、東京が断トツで危険だという結果で、2位がサンフランシスコ、以下、ロサンゼルス、大阪と続きます。東京一極集中は東京にとってもデメリットだと言われ、地方創生は、単純に東京の富を地方に移すという話ではなく、東京をより安全で安心で活気のあるまちにすることにもつながる話です」と述べられています。
 和歌山県では、以前より移住・定住大作戦を展開して、首都圏や大都市部からの移住・定住の取り組みが行われています。従来の取り組みを加速させるために、国のまち・ひと・しごと創生総合戦略を踏まえて県はどのように移住施策に取り組み、どのような成果があったか、企画部長にお伺いします。
○議長(尾﨑太郎君) 企画部長髙瀨一郎君。
  〔髙瀨一郎君、登壇〕
○企画部長(髙瀨一郎君) 本県では、加速化する人口減少に対応するため、平成27年6月に和歌山県まち・ひと・しごと創生総合戦略を策定し、安定した雇用を創出する、和歌山県への新しい「人の流れ」を創造する、少子化をくい止める、安全・安心な暮らしを実現する、時代に合った地域をつくるの5つの基本目標を掲げ、さまざまな施策を実施しているところです。その中で、和歌山県への新しい人の流れを創造するための施策の1つとして、移住を推進する移住・定住大作戦を位置づけ、従来の施策に加え、国の交付金を最大限活用することで移住推進の強化と充実を図っているところでございます。
 大作戦では、主として、首都圏を初め大都市部の子育て世代等を中心に受け入れていくことが重要であると考え、若年移住者暮らし奨励金制度やハローワークと連携した相談窓口の設置、全県版空き家バンクの管理運営等、暮らし、仕事、住まいの視点からさまざまな取り組みを行っているところです。
 その結果、本県への移住実績としては、平成26年度以前の3年間平均で84世帯、約150人程度でしたが、交付金活用後の平成27年度は113世帯223人、平成28年度は114世帯192人と、世帯数で両年度とも約1.3倍となり、このうち平成28年度における40歳未満の世帯数は、平成26年度以前の3年間平均の約2倍となっています。
 さらに実績が上がるようさまざまな工夫をし、移住政策に積極的に取り組んでまいります。
○議長(尾﨑太郎君) 泉 正徳君。
  〔泉 正徳君、登壇〕
○泉 正徳君 最後に、地方への移住を促進する国のまち・ひと・しごと創生総合戦略は、この趣旨に賛同するそれぞれの県が積極的に移住・定住を促進する取り組みを進めることによって、各県・自治体間の競争が今まで以上に厳しく、激しくなっていると思います。
 また、最近の移住希望者の中には、農山漁村より、むしろ地方都市に魅力を感じる人が多くなっているようであり、自宅から適当な距離で通学や買い物ができ、居住する環境は緑に囲まれた地域や場所を望むという傾向が見られていると言われています。
 従来の田舎暮らしをPRすることに異論はありませんが、幅を広げて、和歌山県には他県に比べて地形的にも山、川、海の3拍子がそろい、また大阪にも近く、大都市近郊と言える地域があります。このような和歌山県の持つよさを強く、うまくアピールして自治体間の競争に臨むべきだと考えますが、企画部長の御所見をお伺いします。
○議長(尾﨑太郎君) 企画部長。
  〔髙瀨一郎君、登壇〕
○企画部長(髙瀨一郎君) 国の地方創生の流れを受け移住を推進する自治体が全国的にふえ、地域間での競争が激しくなっております。また、最近の傾向としては、移住希望者が若年化するとともに、農山漁村地域よりも地方都市を希望する方が増加しています。
 本県では、これまで、過疎市町村を中心に移住相談を一手に引き受けるワンストップパーソンと、地域に受入協議会を設置する和歌山モデルにより移住者を受け入れてきましたが、本年1月には和歌山市を含む全ての市町村にワンストップパーソンを配置し、受け入れ体制を拡充させ、これまでの田舎暮らしだけでなく、県内都市部へ移住を希望する方にも相談対応できる体制を整えたところでございます。
 今後は、首都圏等での県内都市部を中心とした移住相談会の開催や、先輩移住者の暮らしぶりなどを、SNS等を活用し、より多く紹介することで情報発信を強化するとともに、新たな空き家や空き店舗を掘り起こすことにより、空き家バンク情報の充実等にも取り組んでまいります。
 さらに、自治体間競争に勝ち抜くためにも、豊かな自然環境の中での子育てやアウトドアなど充実した余暇活動を含め、和歌山ならではの暮らし方の提案を積極的に行うとともに、大都市近郊に位置する地域においてはその地理的優位性をアピールするなど、従来の田舎暮らし支援とあわせ、県内都市部も含めた移住推進に取り組んでまいります。
○議長(尾﨑太郎君) 泉 正徳君。
  〔泉 正徳君、登壇〕
○泉 正徳君 いろいろと御答弁をいただきましてありがとうございました。
 今の移住推進につきましても、子育てにつきましても、これから和歌山県の将来を担う大変な事業だと思いますが、これからも一生懸命頑張っていただきたいと思います。
 これをもちまして一般質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
○議長(尾﨑太郎君) 以上で、泉正徳君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 31番片桐章浩君。
  〔片桐章浩君、登壇〕(拍手)
○片桐章浩君 おはようございます。
 議長のお許しをいただきましたので、通告に従いまして一般質問を行います。どうかよろしくお願いしたいと思います。
 1問目です。
 平成29年春の修学旅行先として、県内で4つの中学校が外務省を訪れてくれております。和歌山県立桐蔭中学校、同じく向陽中学校、和歌山市立加太中学校、そして美浜町立松洋中学校で、ことしは一気に4つの中学校が修学旅行で外務省を訪問、修学してくれております。時間をかけて教育委員会が県内の中学校に対して修学旅行先として外務省見学を呼びかけて、成果があらわれたことだと思います。
 県内4校の修学旅行を終えた後の6月初旬、私も外務省を訪れてきました。まず、訪れて、中庭にある陸奥宗光像を前にして、以前、誉れな気持ちになりましたと僕に語ってくれた人がおりましたが、それと同じような気持ちになりました。
 外務省に和歌山県出身の外務大臣の銅像が建立されている現場に立つと、和歌山県を誇れる気持ちになります。そして、この場所に陸奥宗光像が建設されている理由、我が国の誇りを伝えることが責任だと感じた次第であります。
 さて、訪問に際して対応してくれた外務省の方は、「ことしは和歌山県からたくさんの中学生が修学旅行で来てくれたことをうれしく思っています。郷土の偉人・陸奥宗光に関して学べる機会になったと思います」。あるいは、「最初は子供たちは緊張していましたが、手を挙げてくれませんでしたが、なれてきた後、たくさんの質問をしてくれました。外務省訪問に際して事前に学習をしてきたこともあって、立派な質問をしてくれました」など、受け入れた側の感想を聞かせてくれました。
 私からは、「お忙しい中、受け入れてもらうことは迷惑ではないですか。できれば、来年はことしよりもっと多くの修学旅行生を受け入れてもらいたいのですが」と質問をしたところ、「迷惑だなんて、そんなことはありません。たくさんの生徒に来てもらいたいと思っています。和歌山県にとって陸奥宗光は特別な存在ですから、たくさんの中学生に来てもらってください。子供たちの勉強のお手伝いの機会になることがあればうれしいことです」、このように答えてくれました。このように、外務省を実際訪ねてみますと、和歌山県からの修学旅行を歓迎してくれている、このことがわかりました。そして、和歌山県から来てくれることは、郷土の偉人の功績を訪ねることにより特別な意味を持つ、そんなニュアンスを伝えてくれていました。
 これまで受け入れに関して制約条件があるなどの理由から、なかなか修学旅行で外務省を訪問できませんでしたが、ことし一気に4つの中学校が外務省を訪れることができました。この要因は何なのでしょうか。また、外務省を訪れた成果についても、教育長からお答えをいただきたいと思います。
○議長(尾﨑太郎君) ただいまの片桐章浩君の質問に対する答弁を求めます。
 教育長宮下和己君。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 修学旅行につきましては、学習指導要領の目的を達成するものとなっているかどうかを絶えず見直し、効果的な教育活動とすることが大切であります。
 このため、市町村教育委員会教育長会を初め、指導事務担当者等会議等の会議で、あるいは小中学校や県立学校の校長会において、このことを指導してまいりました。この中で、外交の仕事の内容を理解したり、ふるさとの先人陸奥宗光の功績に触れたりすることができる外務省や、先端科学を学ぶことができる施設等を訪問先の選択肢の1つとして検討するよう働きかけてまいりました。今回、中学校4校が外務省を訪問したことは、こうした成果であると考えております。
 実際に外務省を訪問した生徒から、「政治や外交を直接感じることができた」、「自分もこういう場所で働きたい」、「和歌山から世界で活躍されている人がいることを知り感動した」などの感想があったと聞いております。生徒たちがふるさとに誇りを持つとともに、実際に働いている職員の方から直接話を聞くことを通して、見聞を広め、将来を考える貴重な体験になったものと考えてございます。
○議長(尾﨑太郎君) 片桐章浩君。
  〔片桐章浩君、登壇〕
○片桐章浩君 私が訪ねたとき、外務省は、来年からも和歌山県からの修学旅行生は快く受け入れてくれると、このように答えてくれました。今回は特に中学生向けの教材「外交という仕事 地球に生きるわたしたち」、これで外務省の仕事を説明してくれたわけですし、和歌山県の生徒に対しては特別に和田北米課長が対応してくれたりとか、いろんな配慮をしてくれてることになっております。
 そして、同省から帰った翌日、電話をいただきまして、その中でこんな話をしてくれました。「修学旅行で和歌山から東京に来られる、東京の訪問先は選択肢が多いと思うんですが、その中で外務省を選んでくれてありがとうございます」と、こんなことを話してくれました。これまで外務省は制約条件を設け、受け入れを制限していると思っていたのですが、それどころか、日本を支える中学生の将来のため、進んで受け入れてくれようとしております。
 ここで思い返したのが、ことし向陽中学校が外務省に行きたいと希望していた日時は、外務省にほかの予定が入っていたため、当初対応は難しい、こういう返事をもらってたんですが、ちょっと無理かなと思ってたら、日程の調整がつきましたということで希望日に受け入れをしてくれた、こういう出来事がありました。和歌山県の子供たちのために温かい配慮までして迎え入れてくれたということがわかります。
 これからは、修学旅行で外務省を訪問するに際して何もちゅうちょすることはないと思います。ことしの秋、あるいは来年以降も、修学旅行で外務省を訪れることで生徒の将来を開いてあげてほしいと思います。最低限、ことし訪問した4校、それ以上の成果を求めたいと思いますが、教育委員会の考え方、中学校修学旅行における外務省訪問の呼びかけについて、教育長の答弁をお願いします。
○議長(尾﨑太郎君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 各学校では、修学旅行の趣旨を踏まえ、ふるさと教育や平和学習、国際理解教育、文化学習等のテーマを設定し、そのテーマに合った訪問先を計画的に取り入れ、実施しております。
 現在、中学校の修学旅行先は東京方面が多く、各学校のテーマに沿って国会議事堂や日本銀行、各種博物館などを訪れております。こうした中で、外務省も学ぶべきことの多い場所の1つであると考えております。次期学習指導要領においても体験活動の重視が明確に示されており、修学旅行はその有意義な機会になるものと考えております。
 今後とも、市町村教育長会議や指導事務担当者等会議等、さまざまな機会を通して、修学旅行の意義とともに、児童生徒にとって貴重な体験活動の場となるよう訪問先の検討を働きかけてまいります。
○議長(尾﨑太郎君) 片桐章浩君。
  〔片桐章浩君、登壇〕
○片桐章浩君 続きまして、質問項目2点目、ネットパトロールについてお尋ねをします。
 和歌山県では、全国に先駆けて平成21年6月から、青少年をネットいじめなどから守るため、県教育委員会や県警察本部と連携をしたネットパトロール事業を実施しています。
 この事業の概要は次のとおりです。
 専門パトロール員により各種サイトをパソコンなどで探索し、県内18歳未満の青少年に関する誹謗中傷記事など有害情報を内容ごとに専門機関へ連絡する。その中で、学校に関係のあるものは県教育委員会を通じて学校に資料提供し、教職員による生徒指導を行うとともに、プロバイダーやサイト運営事業者に削除を要請することで青少年の被害を最小限に食いとめている。また、刑罰法令に抵触する可能性のある場合は県警察本部に連絡している。このように、3者が連携をとる仕組みをつくっております。
 この件について、平成21年7月、知事が定例記者会見でネットパトロールの結果について触れておりますが、そのときに「以後ずっとパトロールをしていきますので、何かありましたら発表させていただきます」とコメントしております。
 ネットパトロール事業を始めてから8年が経過しておりますが、この事業の意義、今後の方向性についてお聞かせをいただきたいと思います。知事の答弁をお願いします。
○議長(尾﨑太郎君) 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) インターネットによるコミュニケーションにつきましては、情報伝達が速いなど非常に有用な反面、有害情報があっという間に拡散するという危険性を内在しております。このような危険から青少年を守るために、県、教育委員会、警察の3者が一体となって総合的に取り組んでいこうと、平成21年6月からネットパトロール事業をスタートしたところであります。
 発見した有害情報について、不適切な画像等はサイト運営事業者に対して削除依頼を行い、拡散防止に努めております。また、児童生徒に関係する情報は教育委員会に提供し、学校での児童生徒の指導に利用され、犯罪につながるような情報は警察本部に提供し、青少年の犯罪予防に利用されるなど、青少年の健全育成に寄与してきたと評価しております。
 事業開始から8年、当初はこのように結構効果もありましたけれども、その間、ネットにおけるコミュニケーションの仕方がちょいと変わってまいりまして、掲示板への書き込みから、LINEやフェイスブックなどを利用した当事者間やグループ内に限られた閉鎖的コミュニケーションに変化してきております。
 そういたしますと、そのグループに属さない人はパトロールに行けないという場合が多くなってると思います。閉鎖的コミュニケーションにおいてやりとりされる有害情報をどうやって発見するか、その対応策を考えていかなきゃいかんというふうに思ってる次第でございます。
○議長(尾﨑太郎君) 片桐章浩君。
  〔片桐章浩君、登壇〕
○片桐章浩君 今答弁にありましたように、SNSの普及によってなかなか発見がしづらい、こういう状況にあり、閉鎖的空間を検索するとか侵入するというのはなかなか困難でもありますし、逆にできれば別の問題があるということもありまして難しいと思いますが、この辺も検討課題として考えていただけたらと思います。
 ところで、ネットパトロールの記録は県でも公開をしてくれてるわけなんですけども、いろんな方から、大ざっぱ過ぎて現状がわからない、あるいは、件数が少な過ぎるような気がする、小さな案件を見逃しているのではないか、データを記載しているだけなので、対応方法や結果、再発防止策などがわからないよと、こんな意見が寄せられてきました。ネットパトロール記録によると、月によって異なりますが、100件程度の検出件数が毎月報告されておりますが、全体を果たして把握しているのか、漏れているのかは判断しかねる状況であります。
 参考までに、和歌山県内の携帯電話の店舗数、ショップは、統計のとり方によっても異なるんですが、約70軒。1軒当たり月間2500人から3000人の来客があるようです。そのうち青少年の来店数は、500人から600人と把握しているというふうに聞いております。ここから、和歌山県内では、毎月3万5000人から4万2000人の青少年が携帯電話の店舗に来ていると推測できようかと思います。
 店舗では、フィルタリングの相談、携帯電話による子供への悪影響やネット被害などの対応、あるいは相談を受けているのですが、その件数は相当数に及ぶと聞いております。この現状からすると、和歌山県のネットパトロールによる有害情報の検出件数は少ないのかなあという気もしないことはないですが、もし県が検出している数字にあらわれていないネット被害が潜んでいるなら、対応すべきだというふうに思います。
 また、和歌山県のホームページのネットパトロールのところには件数報告などを記載しているだけで、保護者に対する啓発活動、ネットトラブル研修が学校や保護者などに対して実施された実態もわからない状況になっています。
 そこで、この事業をよりよいものにするために、事業スタート当時よりスマートフォンの普及が進んでいる中、件数把握や実態把握のためにネットパトロールの運営方法を時代に即した取り組みにする必要があろうかと思います。この仕組みが始まって8年が経過している中で、蓄積されたデータ、ノウハウがあると思いますから、改善できることもあろうかと思います。ネットパトロールの見直しについて、環境生活部長からお答えください。
○議長(尾﨑太郎君) 環境生活部長山田成紀君。
  〔山田成紀君、登壇〕
○環境生活部長(山田成紀君) これまでネットパトロール事業におきましては、ネットサービスの多様化に合わせ、ツイッターなどパトロール対象の拡大や検索システムの活用など、パトロールの強化に取り組んできたところです。
 しかしながら、大きな課題である閉鎖的コミュニケーション内の有害情報をチェックする方法は現在のところ見出せておりませんが、何らかの対応策がとれないか、今後研究してまいります。
○議長(尾﨑太郎君) 片桐章浩君。
  〔片桐章浩君、登壇〕
○片桐章浩君 ネットパトロールの検出件数は現在でもホームページで掲載しているわけですが、これを見た保護者の方からは、どのような状況にどんな対応をしたのか、成果があったのか、わからないため、この情報だけでは自分たちのケーススタディーなどで使用できない、こういう意見があります。果たしてネットパトロール件数の掲載だけで現状でも防止策につながっているのでしょうか。
 また、データが少し前なんですが、平成29年6月14日時点で平成29年3月の記録から更新されていない状況でした。この問題を取り上げようと思って再度確認したところ、6月14日あるいは15日に、ちょっと定かではないんですけども、4月分と5月分の2カ月分のデータが更新されていましたが、更新が遅いように思います。環境生活部長からお答えください。
○議長(尾﨑太郎君) 環境生活部長。
  〔山田成紀君、登壇〕
○環境生活部長(山田成紀君) ネットパトロールの結果につきましては、学校名、個人名、不適切な内容などが毎月文書で県に報告されており、このうち学校種別、問題行動別等の有害情報の検出件数が受託事業者のホームページに掲載されております。
 県では、この報告をもとに、平成28年度に17回、延べ1705名の青少年や保護者に対して、ネットの安全利用や被害防止を啓発する県政おはなし講座を実施しました。
 ホームページへの掲載につきましては、29年4月分のデータを5月19日に掲載しましたが、システムのバージョンアップの作業過程で消失した模様であり、改めて5月分のデータと合わせて6月14日に掲載されたものです。受託事業者には、システム改修等の際には過去のデータの扱いにも十分注意するとともに、必要な情報は遅滞なく掲載するよう指導したところです。
○議長(尾﨑太郎君) 片桐章浩君。
  〔片桐章浩君、登壇〕
○片桐章浩君 たまたまこの質問をするということで僕もずっと追っかけてたんですが、いろんなことをしてる中で急にアップされたということもあって、時期的にシステムのふぐあいだったというか、ミスだったということがわかったんですが、たまたま偶然その時期というのが重なったんで、何か「うん?」という感じもしたということも少し申し添えておきたいと思います。
 この事業には、もう1つ、ネット指導教員の養成など、青少年のネットモラル向上の取り組みがあります。スタート当初から民間事業者への委託を行っていますが、教員向けの指導マニュアルや教材の作成、そして講座の実施状況について、環境生活部長からお答えください。
○議長(尾﨑太郎君) 環境生活部長。
  〔山田成紀君、登壇〕
○環境生活部長(山田成紀君) 教員向けの指導マニュアル及び教材につきましては、平成27年度から教育委員会と連携して作成しております。この教材を使って毎年夏休み期間を中心に、県内全ての学校の情報モラル教育を担当する教員を対象としたネット指導教員養成講座を平成28年度には29回実施しており、延べ1039人が受講しております。
○議長(尾﨑太郎君) 片桐章浩君。
  〔片桐章浩君、登壇〕
○片桐章浩君 環境生活部長から、教育委員会にネットパトロールの結果を情報提供していることや、教育委員会と連携してマニュアルを作成している、養成講座を開催している件数も含めて答弁をいただきました。
 ネットパトロール事業から提供された情報や養成講座を受けていることに関して、教育委員会ではどう対応しているのでしょうか。また、今後の課題について教育長に質問をいたします。
○議長(尾﨑太郎君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) ネットパトロールから提供された情報につきましては、学校名や児童生徒の氏名が特定されている場合は、当該の学校にその情報を伝え、関係する児童生徒を指導してございます。また、各学校では、児童生徒にネットパトロールの存在とネット上の不適切な情報は書き込んだ本人が特定されることなどを周知し、問題行動の未然防止にも効果を上げているものと考えてございます。
 次に、ネット指導教員養成講座につきましては、全ての公立小・中・高等学校、特別支援学校の生徒指導や情報教育を担当する教員が受講しており、ネットに関する知識や問題への対応方法などを研修し、学校での指導に生かしております。
 課題といたしましては、日々進歩する情報技術等への対応や、SNS等仲間同士の閉じられた世界でのトラブルへの対応等が考えられます。
 こうしたことから、県教育委員会では、今春、「スマートフォン・携帯電話、SNS等を安全に利用するために」という教員用指導資料を作成いたしました。本資料には、情報モラル教育の進め方やSNS上のトラブル等に対処するための指導例に加え、保護者への啓発に関する情報等も掲載しております。各学校においては、学級活動や技術・家庭、情報等の授業の中で本資料を活用するようにしてございます。また、保護者に対しても、本資料を用いて入学説明会や保護者会等で情報モラルの向上やネット等の適切な利用について啓発に努めるよう指導しております。
 児童生徒の健全な育成には、保護者もその役割と責任を果たし、家庭での子供の状況をしっかりと把握し、教育することが重要です。このため、今年度から導入するきのくにコミュニティスクール等も活用しながら、学校から保護者に子供のネット利用についての管理を徹底するよう要請し、家庭の協力も得て児童生徒の情報モラルの向上に努めてまいります。
○議長(尾﨑太郎君) 片桐章浩君。
  〔片桐章浩君、登壇〕
○片桐章浩君 続いて、青少年ネット安全・安心のための環境整備事業実施業務の委託先選定についての質問に入らしていただきます。
 事業委託に応募して選ばれなかった応募者に対しての評価結果の通知の中に、評価の低かった理由などが記載されていないようです。どの点が評価され、どの点が評価されなかったのか、わからなければ次回の応募に反映させることができません。応募しようとする意欲のある事業者に次回の応募を諦めさせることにもつながっているような気がします。
 この分野は、非常に専門性の高い分野だと思います。そのため、民間事業者の能力をフル活用すべきです。そのような中、優秀な事業者選定に向けて、県としての取り組みの改善が必要だと思います。
 例えば、現在、選定に当たってはプロポーザルが行われていますが、選に漏れた事業者への結果通知には、落選したことと評価点だけが通知されています。採点の審査項目は6項目あるようなので、それぞれの項目ごとの点数を通知することで、事業者はみずからの提案の弱点を見直し、見直しと改善をすることで再チャレンジする、ここにつながると思います。この点に関して、生活環境部長の答弁をお願いしたいと思います。
 すみません。1点だけ追加です。
 この企画提案のプロポーザルの時期なんですけども、ことし3月15日に実施をされています。その3月15日に実施された事業の応募者、結果として不採択になった方がプロポーザルをしてるわけなんですけども、その中で選考委員の人1名が退席をしているようです。正確には、プロポーザルの途中で退席した審査員は、プレゼン中は最後までいましたが、プレゼンが終わり、評価委員の質疑の時点で退席したと、こういうこともありますので、この辺についてもあわせてお願いしたいと思います。
○議長(尾﨑太郎君) 環境生活部長。
  〔山田成紀君、登壇〕
○環境生活部長(山田成紀君) 平成29年度青少年ネット安全・安心のための環境整備事業実施業務の公募に当たりましては、審査の基準は、審査項目やその視点、配点などをあらかじめ公表しております。
 また、審査の結果は、委託先候補者の名称、評価点及び選定理由をホームページで公表するとともに、応募者には自身の評価点及び結果を通知しております。議員御質問の項目ごとの点数につきましては、応募者からの個別の照会に応じてお知らせすることといたしております。
 もう1点、プロポーザルの時点で退席した委員がいるという御指摘につきましては、平成29年3月15日に実施しました29年度事業の審査におきまして、プレゼンテーション終了後の質疑応答の途中で退席した選定委員が1名おりました。提出書類及びプレゼンテーションに基づき評価が行われており、有効なものと判断したところです。
 本来は委員は途中退席するべきではないことから、今後こうしたことのないよう厳格に審査事務を執行してまいります。
○議長(尾﨑太郎君) 片桐章浩君。
  〔片桐章浩君、登壇〕
○片桐章浩君 果たして審査の途中で退席した審査員が公平な審査ができたのかどうか、どのような人が審査員に選任され、どのような基準で評価したのか、また、今、退席した事実があるというふうなことをお聞かせいただきまして、途中で退席した審査員がいる中で公正な審査結果が導けると考えたのか、環境生活部長からお答えください。
○議長(尾﨑太郎君) 環境生活部長。
  〔山田成紀君、登壇〕
○環境生活部長(山田成紀君) 本事業では、選定委員に、インターネットなどの情報通信技術に関して深い見識を有する方、保護者の立場から青少年の有害環境浄化活動等に関する知識を有する方、義務教育や高等学校等における教育の専門的な知識を有する方、青少年の非行防止・健全育成活動に関して深い見識を有する方を選任しています。
 審査に当たりましては、業務実施体制、ネットパトロール実施手法、ネット指導教員育成に係る講座の内容と時間配分、ネット指導教員育成に係る教材及びマニュアル、ホームページ作成運営、事業経費の6項目について、それぞれ各選定委員が5段階で評価してございます。
 途中の退席につきましては、提出書類及びプレゼンテーションを聞いた上で評価をしておりますので、有効なものと判断したところでございます。
○議長(尾﨑太郎君) 片桐章浩君。
  〔片桐章浩君、登壇〕
○片桐章浩君 環境生活部長から答弁を、公正なもんだというふうにいただいてるわけなんですけども、審査員が途中で退席したような審査会で果たして公平性が保たれたのかどうか、ここは疑問だと思います。ほかの審査員が感じて質疑も行っておりますから、それも参考にしながら点数をつけるべきだと思います。何よりも事業者というのは、プロポーザルに真剣に取り組んで時間も費用も費やしてるわけですから、この態度は非常に失礼だと思いますし、このような審査があったにもかかわらず審査を終わらせてしまって結果をつけた、これは県に対しての不信感が募っていることになります。
 県の審査ですから、このような不信感を招くことのないように審査を厳正で公正な場にしていってほしいと思いますので、再度、環境生活部長の答弁をお願いします。
○議長(尾﨑太郎君) 環境生活部長。
  〔山田成紀君、登壇〕
○環境生活部長(山田成紀君) 契約候補者の選定に当たりましては、公平公正な審査に努めているところでございますが、応募企業の不信を招くことのないよう、今後厳正な執行に努めてまいります。また、選定委員につきましても、指導を徹底してまいります。
○議長(尾﨑太郎君) 片桐章浩君。
  〔片桐章浩君、登壇〕
○片桐章浩君 せっかく全国に先駆けて実施した事業でありますし、データ、ノウハウを相当蓄積しているネットパトロール事業ですから、きっちりとその辺、していただきたいと思います。
 夏休みが近づき、子供たち、特に青少年が時間をもてあまし、ネットやスマホにかかわるであろうことが予想されますから、携帯電話の店舗等と連携を図りながら、店頭での情報把握、指導、そういったことも含めてネットパトロール事業をさらに効果的なものにしてほしいと思いますし、来年度以降、しっかりとした審査体制に努めていただくということをお願い、要望しておきたいと思います。
 続きまして、子供の貧困対策についてであります。
 子供の貧困問題、特に非正規雇用の増加、ひとり親家庭の増加などから社会問題になって久しいところであります。そのため、子供の居場所づくりや学習支援など、子供の生活を地域で支える取り組みが実施されていますが、その1つとして子供食堂があります。
 子供食堂とは、保護者の就労などにより家庭で保護者と一緒に食事をとることができない子供の孤食を防ぐため、夕食の提供、交流機会を図り、参加する子供同士、地域の大人とともに食事をして交流する機会を提供する活動のことをいいます。
 先日、そのうちの1つを訪問して一緒に食事をいただきました。この子供食堂は、大人は参加費300円を支払うことで参加することができます。玄関を入ると、スタッフの皆さんが「お帰り」と挨拶をして迎えてくれます。子供食堂が、ここがみんなの居場所だよと伝えてくれてるような温かさを感じました。夕食は、ボランティアの方々がつくってくれております。食材の提供もボランティア、調理、運営も全てボランティアの方が担ってくれているんですが、子供たちが夕食を楽しそうにしているところを笑顔で迎え、声をかけているのがとても印象的でした。
 運営の課題として、食材の提供、食事を必要としている子供を見つける、集める、このことが難しいことがあります。各地域で子供食堂の取り組みが増加している中、運営にかかわる支援策も必要かと思います。
 そこで、子供食堂がふえている状況があることから、和歌山県における子供の貧困対策の取り組みはどうなっているのでしょうか。また、子供食堂への支援など今後の取り組み方、考え方について、福祉保健部長にお尋ねをいたします。
○議長(尾﨑太郎君) 福祉保健部長山本等士君。
  〔山本等士君、登壇〕
○福祉保健部長(山本等士君) 子供の貧困対策につきましては、平成29年3月に策定しました和歌山県子供の貧困対策推進計画に基づき、貧困の世代間連鎖を断ち切るため、大学への進学を支援する給付金制度や子供の居場所づくり事業など、多岐にわたる施策を総合的に実施しております。
 次に、子供食堂への支援についてですが、平成28年度新政策としまして、子供食堂に係る設備改修や備品購入に補助を行う和歌山こども食堂支援事業を立ち上げ、さまざまな事情でひとりで食事をしなければならない子供たちに、大勢で食卓を囲み、温かい食事を提供し、人と人とのつながりを通じ、安心して過ごせる居場所づくりを推進しているところでございます。昨年度は4カ所の開設を支援し、今年度も既に4月から募集を開始しており、現在2カ所からの申し込みがあります。
 なお、県では、子供食堂について、現在のところ県下20カ所での開設を把握しております。今後は、子供食堂の活動情報の認知が十分でないため、県のホームページやより身近な市町村を通じ、支援を必要とする人への周知を図っていきたいと考えております。
○議長(尾﨑太郎君) 片桐章浩君。
  〔片桐章浩君、登壇〕
○片桐章浩君 さて、子供の貧困対策として、企業、食料生産者、卸業者、小売業者、個人から、まだ安全で食べられるにもかかわらず処分をしてしまう食品を提供してもらい、子供食堂や経済的支援を必要としている人たちに食品を分配し、配布する支援事業としてフードバンクというものがあります。
 フードバンクの代表例として、山梨、福岡で事例があります。食べられるのに廃棄される食品を企業から提供を受けることや、コンビニで販売できなくなった消費期限前のパンや弁当、おにぎりなどの食品を無償で提供してもらい、NPO法人などを通して経済的環境に恵まれない家庭の子供たちに届ける仕組みをつくっているようです。
 和歌山県の場合、支援を必要としている子供たちに対して食品の提供をしたいと思うメーカーや小売店があったとしても、県に受け入れる仕組みがないため、対応できない状況にあると思います。子供食堂などフードバンクを通じて食品の分配の仕組みをつくっている県では、地元のNPO法人や団体などと連携をしているというふうに聞いております。
 そこで、和歌山県内にこのフードバンクに取り組んでいる団体がないのかなと探したところ、フードバンク和歌山という団体が活動していることを知りました。この団体は、平成27年度からフードバンク活動を行っていて、県内の行政、児童養護施設、自立支援ホーム、その他社会福祉施設、子供食堂、そして個人にまで食品を配布しているようです。
 ところで、幾つかの課題があるというふうに、このフードバンク和歌山の方と会ったときに聞きました。
 1つ目、県内の自治体や民間から食料提供の要望が来ていることから、配布する食品が不足し始めてるということです。欲してる施設からの要望がふえてるのに対して供給が追いつかない、こういうことですね。特にお米が不足していることから、十分に行き届かない状況になりつつあると、このように聞きました。
 2つ目、ほかの県の取り組みと比較して、企業からの支援が和歌山の場合は非常に少ない。県内食品事業者やスーパー、コンビニなどに賞味期限前の食品提供を依頼しても、活動の趣旨は理解してくれるようなんですが、食品の安全性の確保などの問題から譲ってもらうことは難しいようです。食べられるのに食品廃棄をしていること、その食品を必要としている生活困窮者に届ける、このことが2点目の課題です。
 3点目、情報発信力が弱い。同団体の職員さんが企業などに食品などの支援依頼に出向いても、その企業の担当者が対応してくれるだけでトップまでつながらないことが多く、支援をしてくれる企業が結果として少なくなっているようです。フードバンクの支援の呼びかけを県が発信してくれるなら、企業の姿勢も変わろうかと思います。
 4点目、国の所管あるいは県の所管が分散していることです。省庁窓口の一元化が図れていないため、どこに課題の相談を持ちかけてよいのかわからないこと、また、各省庁から報告書の提出などの依頼が届くようですが、あちらこちらから届くので仕事量がふえている、事務仕事がふえている、このような課題があります。
 このことは県にも当てはまる課題です。フードバンクは、分野からすると福祉、環境、農林、商工など、複数の窓口になるため、一元化ができていない状況かと思います。そのため、社会的な問題になっているにもかかわらず、所管が決まらないため、相談をしたくてもなかなかできにくいよと、こういう状況にあります。ぜひとも県として対応窓口の一元化を図るなど、支援を検討してほしいと思います。今後は、さらに生活困窮者や子供食堂など、食品を必要とする方々に配布するような仕組みが必要だと思います。
 そこで質問です。経済的支援を必要としている人向けのフードバンクの取り組みは重要だと思いますが、仄聞したところ、和歌山県の取り組み、理解、支援はおくれているようです。子供食堂などへの支援が拡大していることから食品確保が不足し始めていますので、県からフードバンクの必要性についての情報発信などの支援をしてほしいと思います。
 そして、この問題に対して県の対応窓口の一元化を図ってほしいと思います。現在は問い合わせに対してワンストップサービスというのが基本だと思いますから、この点、考えていただきたいということ、以上の点について、福祉保健部長の答弁をお願いします。
○議長(尾﨑太郎君) 福祉保健部長。
  〔山本等士君、登壇〕
○福祉保健部長(山本等士君) フードバンクは、まだ食べられるにもかかわらず廃棄されてしまう食品を必要とする人に届ける仕組みであります。この仕組みは、食品ロスをなくすだけでなく、経済的な支援を必要とする人にとって有意義なものであり、安定した食材調達を必要とする子供食堂の持続的な運営にも貢献しているものと認識しております。
 今後は、フードバンクの仕組みや意義を県のホームページ等で周知してまいります。
 なお、既に取り組んでいる府県の先進事例も踏まえまして、本県では何ができるのか、窓口体制も含めて検討してまいりたいと考えております。
○議長(尾﨑太郎君) 片桐章浩君。
  〔片桐章浩君、登壇〕
○片桐章浩君 福祉保健部長から今答弁をいただきましたように、フードバンクの趣旨は理解してくれてるよということですが、先進県の事例を参考にして、窓口体制を含めて検討しているというふうな答弁でありましたけども、果たして部長、フードバンク和歌山が担っている役割というのを御存じかなというふうに思います。
 僕がここの責任者の方とお会いしたときに、信じられないことなんですけど、ほぼ毎日のように何十本も電話がかかってくるそうです。何かというたら、支援とともに、きょう食べるものがないから何とかしてくれと、食料をくれという、こういうこと、子供食堂とか福祉施設だけじゃなくて個人からも来ると。
 これというのは、僕は思うんですけど、福祉行政の担う役割じゃないかなというふうに思うんですよ。しかも、活動拠点があり、そこからどこまで配達してるかというたら、和歌山市まで運ぶ、そして新宮市まで運ぶ、こんなことを毎日してると言うんです。僕、そんなもん、もう行政に言いなさいと、何で団体がそこまで面倒を見る必要があるのですかというふうなことを言ったんですが、言ってもなかなか対応してくれない、こんなことなんですよ。
 ほっといたらどうなるか。その人たちはその日食べるもんもないという、こういう状況がある。これをフードバンク和歌山さんという団体が実は担ってくれてるという、こういう現状があるわけです。
 本来、こんなところは福祉行政の役割だというふうに思いますので、和歌山県の取り組み、決して僕は早いとか、現状では進んでるとは思えないわけです。先進県の事例を参考にしていただいてもいいんですが、窓口体制含めて、一体いつまでにどんなことを検討してくれるのか、再度、福祉保健部長の答弁をお願いしたいと思います。
○議長(尾﨑太郎君) 福祉保健部長。
  〔山本等士君、登壇〕
○福祉保健部長(山本等士君) 議員御質問のフードバンクの取り組みにつきましては、大変重要なものと考えております。そういった意味で、昨年度から、本県といたしましては、子供食堂への支援も取り組んできたところでございます。
 今後ともそういった子供の貧困対策を進めていくためには、今議員御質問のフードバンクの仕組み等も、我々としましては今以上に勉強しまして、県として何ができるのかというのを早急に検討した上で、県全体で取り組んでいきたいと考えておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
○議長(尾﨑太郎君) 片桐章浩君。
  〔片桐章浩君、登壇〕
○片桐章浩君 福祉保健部長の答弁いただきましたんでなんなんですけど、この問題に関して僕、今回議会で取り上げたんですけど、━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 僕がこの一般質問をするということで実はブログで発信したら、知らない方からたくさん、フードバンクを和歌山はやるんかとか、ボランティアするぞとか、例えばきのう訪ねてきてくれた人なんかは、僕のブログのページを─これは違うんですけど(資料を示す)持ってきてくれて、感動したよと、こんなこと、フードバンクを和歌山県がやるんやったらボランティアで行きますということでわざわざプリントアウトして持ってきてくれたと、こんな人もいるわけです。
 個人として発信するだけでこんだけあるんだから、県が情報発信してくれたらもっともっと広がりがあると思いますし、支援してくれる団体もあると思いますので、ぜひその辺、情報発信とか庁内の体制づくり、あるいは現場もぜひ見ていってあげてほしいと思うんですけども、そんなことを含めて、この問題にはぜひ深くかかわっていただきたいと思いますので、この点、要望さしていただきまして、次の質問に入らしていただきたいと思います。
 続いてですが、同じくフードバンクで、県内の食品事業者、スーパーやコンビニに賞味期限間近の食品などの提供をいただけないだろうかという質問であります。ただし、賞味期限前といいましても弁当とかサンドイッチ類というのはだめなんですが、それ以外のものだったら、原材料とか加工品だったらぜひ提供をしていただけるように呼びかけていただきたいと思いますが、この件に関して、農林水産部長の答弁をお願いしたいと思います。
○議長(尾﨑太郎君) 農林水産部長原 康雄君。
  〔原 康雄君、登壇〕
○農林水産部長(原 康雄君) フードバンクの取り組みにつきましては、貧困対策に資するとともに、まだ食べられるにもかかわらず廃棄されてしまう食品、いわゆる食品ロス削減の観点からも有効であると考えております。
 このため農林水産部では、県内の農産物生産者やJA、市場関係者、食品事業者などに対し、その仕組みや意義について啓発してまいります。
○議長(尾﨑太郎君) 片桐章浩君。
  〔片桐章浩君、登壇〕
○片桐章浩君 それでは、4点目の質問に入らしていただきます。
 園部、六十谷の太陽光発電計画についてであります。
 現在、具体的に林地開発許可制度の事前協議申込書が提出された和歌山市園部太陽光発電所計画について質問をします。
 この太陽光発電は、和歌山市北部の和泉山系の森林約74ヘクタールにも及ぶ大規模な計画です。森林を1ヘクタールを超えて開発する場合、林地開発許可が必要となっているため、現在、事業者は、次の段階の林地開発許可の本申請に向けて地元説明を行っているようです。
 しかしながら、たくさんの住民から、土砂災害や水害など、安全対策への疑念を抱いており、大変不安であるという声を聞いています。また、事業者は、地元同意がなくても太陽光発電はできると説明し、早くに同意すれば協力金を支払うと言って地元同意を得ようとしているといううわさを聞きます。
 うわさというか、多分県もあると思いますけど、かなり分厚いこんな資料が地元に説明で配られておりまして(資料を示す)、これは何やといいましたら、「有功・直川地区の住民の皆様へ」という相当ページ数のあるチラシが投げ込まれております。その表記の中に、「住民の皆様から開発に同意がいただけた自治体の皆様とは、住民説明会でもお話しさせていただきました法的効力のある協定書を締結させていただき、協力金という形での協力をさせていただきます。開発に同意していただけない自治会とは、協定書の締結、協力金の御協力ができないことについては御了承ください」、こんな内容で入ってるわけです。
 そこで、林地開発許可制度の許可条件について、また今後事業者から申請された場合どのように取り扱いをするのか、農林水産部長にお伺いをいたします。
○議長(尾﨑太郎君) 農林水産部長。
  〔原 康雄君、登壇〕
○農林水産部長(原 康雄君) 林地開発許可制度では、災害の防止、水害の防止、水の確保、環境保全の4つが許可要件となっており、許可に当たってはそれらをクリアする必要があります。先日は奥村議員からこの4つの許可条件のみを質問されましたので、それについて答弁いたしました。
 しかしながら、そもそも本県では、和歌山県林地開発許可制度事務取扱要領に基づき、事業者からの申請に地元自治会や隣接する土地所有者、水利組合等の同意書の添付を求めており、同意書の添付がなければ、その申請書は受け付けません。このため、地元自治会等が反対している限り、当該太陽光発電ができることはありません。
○議長(尾﨑太郎君) 片桐章浩君。
  〔片桐章浩君、登壇〕
○片桐章浩君 答弁をいただきまして、地元同意とともに、隣接する土地所有者、水利組合の同意書の添付がなければ計画が進まないということが確認できました。
 今後も地元自治会員さんの意見を十分聞いて対応していただくことをお願い申し上げまして、一般質問を終わります。
 御清聴、ありがとうございました。(拍手)
○議長(尾﨑太郎君) 以上で、片桐章浩君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前11時35分休憩
────────────────────
  午後1時0分再開
○議長(尾﨑太郎君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 16番中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕(拍手)
○中村裕一君 この議会も私が最後になりました。しばらくおつき合いいただきたいと思います。
 通告に従いまして、質問を行ってまいります。
 今議会、IRについての質問は私が3人目であります。事の重要性に鑑み、重複を承知で質問させていただきます。
 国の有識者会議では、IR内に設置されるコンベンションホールや国際会議場の要件として、国際競争力を有するとともに、全国的な見地からも我が国を代表する施設として経済効果を生み出すものとの基準が示され、和歌山のような地方都市では採算性が合いにくい規模での施設整備が必要との方向性で議論が進められています。
 知事は大都市偏重として見直しを求めていますが、その対策と見通しについて伺います。
○議長(尾﨑太郎君) ただいまの中村裕一君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 議員御指摘のとおり、IR推進会議において示されている、国際競争力を有し、我が国を代表するレベルの会議場や展示場の必置というIRの設置要件は、本県のような地方都市にとっては極めて厳しく、その実現は困難だと思います。IR推進法では基本理念として、IR区域の整備の推進は、地方の創意工夫を実現し、地域経済の振興に寄与すると、これは法文に書かれておるわけでございますから、現在、その趣旨を十分に尊重するよう国に求め、本県が目指すリゾート型のような地方公共団体の独創性と地域の特性を生かしたIRの設置も可能となるよう、要望活動を行っているところでございます。
 今後、国がつくるIRに関する手続を定める法律に本県の要望が反映されるよう、引き続き積極的に活動する所存であります。
○議長(尾﨑太郎君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 次に、ギャンブル依存症対策と外国人専用の見直しについて、2点質問する予定でありました。
 しかし、国会で継続審議となっているギャンブル等依存症対策基本法案を読み、現状を観察してみると、さらなる依存症対策が必要であると感じましたので、2点の質問は取りやめることにしました。
 くしくも本日6月26日は、ギャンブル等依存症対策基本法案に規定する啓発週間の開始日です。法案の早期成立と、国並びに県のギャンブル依存症対策の充実をお願いする次第であります。
 それでは、次の地域経済の振興と県民理解について質問をいたします。
 昨年、私は御坊のサバを売り込みに香港、マカオを訪問しました。マカオのギャラクシーにあるホテルオークラの日本料理長から、和歌山の新鮮な魚なら値段は気にしないので、どんどん送ってほしいと言われました。ただし、仕入れはマカオの業者を通じてとのことでした。確かに、ギャラクシーのホームページを見ても、雇用などあらゆる分野で地元に経済効果があるように仕組まれています。それでも、ギャラクシーは5000億円の投資をわずか2年間で回収したと聞きます。
 本県でも、IRの誘致に際しては、今行うべきことは、誘致後の内外の他のIRとの競争に勝ち抜くための方法や、より多くの経済効果を地元にもたらす方法などの研究、また、その交渉に力を入れるべきではないでしょうか。
 また、経済効果などを正確に県民に説明、理解してもらうことが大切だと思いますが、知事の取り組みを伺います。
 現状では、一部の勢力の反対運動ばかりが報道され、県民から見れば反対が多いのかと勘違いさせています。現代社会は情報が錯綜する情報混乱社会であり、アメリカ大統領選挙でさえも情報操作があったとされています。ぜひとも、賛成の人も声を高らかに推進しようではありませんか。
○議長(尾﨑太郎君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) IRの誘致に当たりましては、事業者に対して地元に多くの恩恵をもたらすよう創意工夫をしてさまざまな提案をしていただけるよう働きかけていき、最も多くの経済波及効果をもたらすものを選択することがよいと考えております。
 事業者の提案に際しては、本県としては、IR施設をゲートウエーとする県内周遊の仕掛けや、県産の食材や資材の地元調達率の設定、地元雇用枠の設定などをすることで、観光振興や地域経済振興、雇用創出につなげていくことがよろしいかと思います。ただ、この辺は、あんまりかたいことを言うとまた誰も来てくれないという可能性もありますので、やわらかく提案を聞いていくということが大事だと思います。
 また、IRの誘致についての県民の理解を深めるに当たり大切なことは、IRとはどういう施設なのか、またそのメリット、デメリットは何なのかというようなことについて、正確に認識をしていただくことだと思います。
 これまでも、県では、記者会見とか研修会などさまざまな機会を捉えてIRに関する正確な情報を発信してきたところではございますが、全ての県民にこのような情報が届いているわけではありません。
 今後、県、市及び地元経済界などさまざまな主体が、例えばシンポジウムや説明会をどんどん開催し、IRの誘致がもたらす多くの雇用や多額の地元調達などのメリットやギャンブル依存症といったデメリット、またこれを防ぐためのカジノ施設への日本人の入場制限といった対策などについて、丁寧な説明をしたり議論をしたりする、それによって、本県のIR誘致について県民の理解が得られるように努めていきたいと考えております。
 こうした取り組みを積み重ねていくことで、さらにIR誘致に向けた機運を盛り上げ、県議会の皆様の御意見、御協力もいただきながら、IR誘致を実現すべく取り組んでまいりたいと考えております。
○議長(尾﨑太郎君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 ぜひとも、多くの県民の理解が進み、盛り上がりますようにお願いをしておきたいと思います。
 次に、防災対策について、2点伺います。
 防災対策の第1の優先は避難対策でありますが、その生命線ともいうべき避難路の品質は確保されているのでしょうか。
 避難路が備えるべき基準は、国では津波避難対策推進マニュアル検討会の報告書に規定されており、それを受けて、県でも津波避難計画策定指針が示されています。
 その指針には、避難路の安全性と機能性の確保として、地震による沿道建築物の倒壊、落橋、土砂災害、液状化等の影響で避難路が寸断されないように耐震化対策を実施することが規定されています。ほかにも、海岸・河川沿いの道路を避けることや津波の来る方向には逃げないこと、避難途中の襲来に備えて避難路沿いに津波避難ビルを指定すること、火災や夜間の避難への配慮も規定されています。
 しかし、私の身の回りの現状を見ますと、避難路には古い木造住宅などが散見され、基準どおり整備できているのか心配します。果たして、県内の避難路が備えるべき基準の整備状況はどうなっているのか、またその実現について、危機管理監に伺います。
○議長(尾﨑太郎君) 危機管理監藤川 崇君。
  〔藤川 崇君、登壇〕
○危機管理監(藤川 崇君) 津波など災害から住民の命を守るためには、議員御指摘のとおり、十分な幅員を確保するなどの安全性や円滑な避難ができる機能性を有した避難路の確保が重要であると考えております。
 そのため、県では、わかやま防災力パワーアップ補助金の活用などにより、避難路の改良や避難誘導灯、手すり、避難標識の設置、住宅やブロック塀の耐震化など、避難路の安全性、機能性の向上に向けた市町村の取り組みを支援しているところでございます。
 また、市町村に対し、住民参加による避難訓練の実施とあわせ、常に避難路、避難経路の点検を呼びかけておりますが、その際、安全性、機能性が確保されているかを確認するため、その点検状況について報告するよう依頼してまいります。
 今後とも、市町村に対し避難路等の安全性と機能性の向上を働きかけるとともに、その取り組みを積極的に支援してまいります。
○議長(尾﨑太郎君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 ぜひ、市町村の整備状況はどうなってるのか、議会にも報告していただきたいというふうにお願いしておきます。
 次に、時間差地震への対応について質問いたします。
 私は、平成25年6月定例会において、巨大地震や連動地震ではなく、時間差で発生する南海地震について質問しました。現在、中央防災会議や本県では、南海トラフが連動して発生する巨大地震を想定して、防災対策が講じられています。確かに危機管理は、最悪の被害を想定し、対策を実施することが原則とされています。しかし、私は、地震が時間差で起きるときには連動とは違うタイプのリスクが発生するのではないかと考えています。
 歴史的に南海トラフ沿いの地震では、1854年の安政東海地震と安政南海地震では32時間の時間差で、1944年の東南海地震と1946年の南海地震は約2年間の時間差で起きています。
 私の質問に対し、当時の木村危機管理監からは、国の対応も参考にしながら、時間差をもって地震・津波が発生することもあるということを念頭に置いて、油断することなくしっかりと対応してまいりますとの答弁がありました。
 しかし、昨年4月の熊本地震では震度7が続けて2回発生するという想定外の事態が起き、やはり時間差にも対応が必要であることを痛感しました。
 平成26年に策定された国の南海トラフ地震防災対策推進基本計画では、時間差発生等への対応として、国、地方公共団体等は、先に発生した地震で大きな被害を受けた後、時間差を置いて再び大きな揺れ、津波が生じた場合を想定し、複数の時間差発生シナリオの検討を行い、複数回にわたる被災に対して臨機応変に対応できるよう、応急活動、建築物、傾斜地等の応急危険度判定、避難生活者保護、復旧活動における注意喚起等の対策の検討を行うことが明記されています。
 そこで、本県の時間差対策は私の質問後どうなったのか、現状と取り組みについて危機管理監に伺います。
○議長(尾﨑太郎君) 危機管理監。
  〔藤川 崇君、登壇〕
○危機管理監(藤川 崇君) 地震・津波による犠牲者ゼロを目指し、県では「津波から『逃げ切る!』支援対策プログラム」等を策定し、東海・東南海・南海3連動地震や南海トラフ巨大地震等への対策を着実に進めているところでございます。
 また、国が平成27年3月に策定した南海トラフ地震における具体的な応急対策活動に関する計画を踏まえ、議員御指摘の時間差で発生する南海トラフにおける地震等にも対応できるよう、和歌山県広域受援計画において、広域防災拠点を中心とした受援体制や運営方法の確立を図ったほか、あらかじめ被災建築物応急危険度判定士を養成し、被災建築物の危険度を迅速に判定するための技術者の確保等にも取り組んでおります。
 さらに、熊本地震では連続して地震が発生したことにより避難生活が長期化したことを踏まえ、避難者への負担の増加等を考慮して、市町村避難所運営マニュアル作成モデルを改定し、避難所の間仕切りやベッド等の資機材整備を支援するなど、避難所の環境整備充実にも取り組んでおります。
 今後とも、時間差による地震・津波が起こることを念頭に置いて、国や他の地方公共団体等の地震・津波対策について十分研究するとともに、油断することなく、防災・減災対策にしっかりと取り組んでまいります。
○議長(尾﨑太郎君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 危機管理監から答弁いただきました。
 やってる、やってるというふうにお答えいただくと、私の聞いたこともやってくれてるというふうに聞いてる皆さんは思われるかもわかりませんけど、私の聞いてるところは残念ながらまだまだされておりません。時間差については、前回、木村危機管理監に答えていただいたとおりの答えを、今回、いただいたんですが、ぜひとも次聞くときにはちゃんと内容が報告できるようにお願いをしたいと思います。
 次に行きます。次は、新時代の対応について質問します。
 新政策として、県果樹試験場ではドローンによる農薬散布の研究が始まりました。早速、果樹試験場を訪問し、お話を聞いてきました。説明では、ミカンは葉っぱが生い茂ることや、急傾斜地、密植などの条件から実現は容易ではないとの印象を持ちました。その後、私はそれなら梅はどうかと思い、うめ研究所へ聞いてみました。梅は、葉が生い茂る前に収穫し、5~6回集中して農薬を散布するので可能性はあるとのお話でした。また、ドローンの導入にはドローンに合った圃場の整備や苗木の植樹から始めるべきとの意見もありました。そのとおりと思いましたが、予算や人員の制限から直ちに着手できるわけではないようです。ほかに、柿、桃ではどうか、また、農薬が難しいなら肥料の散布はできないのかと考えました。
 ドローンの会社は中小企業が多いと思っておりましたが、農業分野では大手農機具会社も参入してきており、大学の農学部との連携も進んでいるようです。本県は果樹王国といいますが、県外企業や大学の研究成果をお裾分けしてもらうのでしょうか。
 ほかにも、森林整備のための生育状況をドローンにより上空から調査するニュースを見ました。県内でも、沿岸の密漁をドローンで検挙する研究も計画されております。
 ことし1月に自民党県議団でコマツのIoTセンタを視察し、ドローンによる測量設計を見てきました。国土交通省では、ドローンだけではなくICTや新技術、機械を駆使したi-Constructionを進めており、平成29年度中に約400件のICT土木を発注するそうであります。
 以上のように、ドローンは、行政分野初め産業活動、国民生活に幅広く利用が進んでいます。さらに今後は、より高度な人工知能や自動運転、データ利活用などの波が押し寄せてきます。
 一方、過疎化で耕作放棄地が増加する農村でも、農産物・食品の高付加価値化や特区を活用した輸出農業などの新産業システムが生まれています。
 このように、時代の潮流を踏まえた新たな手法やシステムなどを県の施策に積極的に活用するためには、企画部が幅広くそれらの情報をキャッチし、内容を分析するとともに、各課の課題解決を促すべきでありますが、企画部長の考えを伺います。
○議長(尾﨑太郎君) 企画部長髙瀨一郎君。
  〔髙瀨一郎君、登壇〕
○企画部長(髙瀨一郎君) 議員御指摘のドローンのみならず、近年急速に進歩しているIoT、ビッグデータ、人工知能、ロボット等のイノベーションを産業や県民生活に取り入れていくことは、さまざまな社会的課題を解決する上で非常に有効な手段であると考えてございます。
 本年3月に策定しました長期総合計画におきましても、これらの技術革新の動向を的確に捉え、県内産業における利活用を促進し、付加価値の高い製品、サービスの創出や生産性の向上を図るとともに、遠隔医療や介護ロボットの導入など、医療・福祉分野における利活用を促進し、県民の暮らしやすさをさらに高めていくこととしております。
 また、議員御指摘の官民連携による新たなシステムづくりにつきましても、従来からさまざまな検討を行っており、今年度の新政策におきましても、高齢者や女性の活躍を促進するため、わかやま元気シニア生きがいバンクや女性活躍企業同盟など、社会構造の変革に結びつく新たなシステムを構築しているところでございます。
 長期総合計画に掲げる施策の基本的な方向を具体化し、毎年度の重点施策を構築していく新政策プロセスを所管する企画部としましては、事業の見直しや新たな施策を検討するに当たり、その中心的役割を果たし、さまざまな課題解決に有効と思われる新たな手法やシステムに加え、国の方針や他府県の先進事例などについても幅広く情報収集し、分析の上、本県の実情に適した戦略を立案し、関連施策を所管する各部局に対して積極的に提案してまいります。
○議長(尾﨑太郎君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 次は、観光振興に関して2点質問いたします。
 まず、吉本興業との連携であります。
 訪日観光客が3000万人に迫り、観光が地域創生の切り札として期待されています。その先導役として全国的に多くの観光地で語り部が養成され、地域の歴史や文化、観光の紹介などに幅広く活躍されています。しかし、中には定年退職した御隠居さんのような人もおり、ただ知っていることを教えてくれるだけで、聞いていて退屈するときもあります。
 お手本は、ディズニーランドのジャングルクルーズがいいと思います。人工のジャングルを船長のおしゃべりで楽しませてくれるアトラクションです。船長のおしゃべり、せりふ、シナリオは大変よくできており、言語を変えて世界のディズニーランドで展開されています。
 先般、テレビで、クルーズ会社が船内の劇場で漫才などの興行をするため、吉本興業と業務提携したことが紹介されていました。吉本興業は、関西弁を全国共通語にして、漫才や新喜劇を日本代表の文化にまで発展させました。
 私は、以前から吉本興業と協力して、本県の語り部がおもしろおかしく演出できるよう研修させてはどうかと考えていましたが、商工観光労働部長に御所見を伺います。
○議長(尾﨑太郎君) 商工観光労働部長山西毅治君。
  〔山西毅治君、登壇〕
○商工観光労働部長(山西毅治君) 観光ガイドがお客様に説明する際に、自分本位ではなく、聞き手であるお客様の立場に立った気遣いや円滑なコミュニケーションを進める上でユーモアのある話し方などを身につけることも重要であるため、議員御提案のとおり、吉本興業と連携した研修も手段の1つであると考えてございます。
 お客様と観光ガイドが触れ合う機会は、旅の思い出やイメージを決める大事な部分を占めるものであり、お客様の再訪を促し、さらに、印象に残った思い出は帰宅してからも人に話したくなるなど、波及効果も期待できるものであります。
 今後、和歌山県観光連盟が実施予定の観光ガイド養成研修におきまして、内容の充実に努めてまいります。
○議長(尾﨑太郎君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 観光業というのは本当に裾野の広い、幅の広い産業であります。その中で、私は語り部ガイドというのは、大学を卒業した若者が、外国の例を見ますと、お金の稼げる仕事だというふうに思っております。
 残念ながら日本では、通訳ガイド業というのが規制緩和をされたというふうに聞きますけども、シンガポールなんか行きますと、それこそ高収入が得られる立派な仕事。しかも、ちゃんと名札をつけて観光地などでやっていないと政府観光局の人が来て取り締まるというようなこともやっておりました。日本では、そんなことが全く規制もされてないようなことでありますので、ぜひ和歌山県では観光で若い人が飯食っていけるように、どんどんと磨きをかけてやっていただきたいというふうにお願いをしておきます。
 次は、高級列車についてであります。
 JR西日本の豪華寝台列車「トワイライトエクスプレス瑞風」が今月17日に運行を開始しました。瑞風は、10両編成ながら定員はわずか34名で、6両の寝台車に食堂車や展望車を備え、京都・大阪と下関間の山陽・山陰両本線を走行し、1泊2日と2泊3日の5つのツアーが設定されています。料金は1人25万円から120万円までの超高級ツアーですが、申し込みが殺到し、最上級のザ・スイートの倍率は68倍だったそうです。
 高級列車は、ほかにもJR九州の「ななつ星」やJR東日本の「四季島」がありますが、いずれも人気があり、発売後すぐに売り切れると聞きます。高級列車は、「オリエント・エクスプレス」を初め、ヨーロッパやアジアで富裕層を集め大成功しています。
 また、高級列車は、高級なホテルがない地方でも豪華な旅を楽しむことが可能で、インバウンドの誘致、赤字路線や地方の観光地の活性化につながる新しい旅行の形であります。クルーズ船同様に今後の発展が期待できます。
 本県も、JR西日本と協力してきのくに線や和歌山線に高級列車が導入できないものか、商工観光労働部長に伺います。
○議長(尾﨑太郎君) 商工観光労働部長。
  〔山西毅治君、登壇〕
○商工観光労働部長(山西毅治君) 議員御提案のとおり、高級列車でゆっくりと旅をしていただくことは観光振興や地域振興に寄与するものであり、実現すれば、鉄道ファンに限らず人気の出る企画になると考えられます。実際、世界遺産登録10周年を契機としてJRグループ6社とタイアップした和歌山デスティネーションキャンペーンでは、改良前の寝台特急「トワイライトエクスプレス」がきのくに線を5往復し、大変好評をいただきました。
 高級列車の旅は、県内を観光していただくことに加え、車窓からの眺め、車内での食事やお酒を楽しむこともだいご味の1つであることから、ゆっくりと旅を楽しまれるお客さんにお越しいただく手段として大変有意義なものと考えられます。
 今後、JR西日本に対しまして、高級列車等のきのくに線や和歌山線への導入を要望してまいります。
○議長(尾﨑太郎君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 次は、魚に関して2点質問します。
 アニサキス中毒は、ことし芸能人が中毒を起こしたことで連日テレビのバラエティーで放送され、アジやサバの市場価格に大きな影響を与えました。
 アニサキスは小さな寄生虫で、サバ、イワシ、カツオ、サケ、イカ、サンマ、アジなどの魚介類の内臓に寄生し、魚介類が死ぬと内臓から筋肉へ移動することが知られており、それを食べた人の胃や腸の壁に食いつくことで食中毒が起こります。
 厚労省では、アニサキス中毒を予防するため、目視で確認することや鮮度の徹底、加熱・冷凍を呼びかけています。国連が設けたコーデックスやEU、米国でも加熱や冷凍が義務づけ、推奨されており、生食には鮮度がいいということよりも、冷凍が世界基準になっているようです。
 最近、佐賀や鳥取では、大衆魚のサバやアジが養殖され、生食用に高値で出荷され、地域の名物になっています。また、加工食品の衛生管理システムのHACCPが近く義務づけされるとも言われております。
 そこで、今回の騒動を奇貨として、本県の目標として国際基準にたえ得るような安全な水産物の供給を目指すべきだと考えますが、農林水産部長の所見を伺います。
○議長(尾﨑太郎君) 農林水産部長原 康雄君。
  〔原 康雄君、登壇〕
○農林水産部長(原 康雄君) 議員御指摘のとおり、食品に対する衛生管理や品質保持への取り組みは重要であり、とりわけ水産物は、鮮度などへの消費者の関心が高く、今後もその要求はさらに高まるものと考えてございます。
 また、輸出に取り組む加工業者等においてHACCPなどへの対応が進められているところですが、生産者においても、鮮度が高く、安全・安心な水産物の供給に向けた取り組みを進めていくことが重要です。
 県といたしましては、漁獲物の鮮度保持技術の向上や衛生管理に配慮した産地市場の整備などをより一層推進し、高鮮度で安全・安心な水産物の供給に努めてまいります。
○議長(尾﨑太郎君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 ぜひ、国からの補助金だけではなくて、物心両面で県として積極的にお願いをしておきたいと思います。
 次は、おいしさについてであります。
 昨年訪問した香港では、ノルウェー産サーモンが幅をきかせていました。ジェトロ・香港の彦坂さんのお話では、香港人は、脂がよく乗ったサーモンなど、ねっとりとした食感をシルキーと言って好むそうです。香港人は刺身の盛り合わせにはサーモンが入っていなければ怒り出すと、ネットに書き込みがありました。確かに、スーパーの刺身売り場やすしコーナーは、見事にサーモンのオレンジ色でした。
 私の経験では、海外の日本料理屋で出てくる刺身は必ずサーモンが入っています。日本国内でも回転ずしなどで回っていますし、本県名産の柿の葉ずしにも入っています。
 しかし、脂が乗った魚だけがおいしいわけではありません。例えば、マグロには脂の乗った大トロ、中トロだけではなく赤身もあり、それぞれ特色があっておいしいのです。世界でブームとなった和食の代表選手のすしも、江戸前はネタに脂が乗っているからではなく、旬の多彩なネタがあることでおいしいのではないでしょうか。今や紀南の名物となったもちガツオは、脂が少ないことでおいしいと言われています。脂が落ちたサンマも、すしや丸干しにすればおいしいのであります。
 魚のおいしさは、旬や鮮度、調理の仕方、流通方法、漁獲方法が影響すると考えますが、残念ながら、現在はおいしい魚の基準が混乱しています。
 本県は県域の半分を海に面する海洋県ですが、漁業就労人口は減少し、漁獲高が減少しています。原因は、水産資源の減少もさることながら、せっかく水揚げした水産物が高値で売れないからではないでしょうか。
 御坊市の協栄漁業では、箕島漁港のタチウオ輸出をお手本にアジ・サバ輸出の研究を始めましたが、そこで初めて安全性やおいしさ、鮮度、そのための漁獲、出荷、流通方法など、各般の研究が必要なことに気づきました。このことは何も輸出だけではなく、国内市場にも他の水産物にも通じることです。
 鹿児島県では、水産試験場の職員がゴマサバの付加価値化などの研究を進めています。本県では、漁協や漁家は零細な経営体が多く、自主的に研究を進めることは困難で、県の積極的なリーダーシップが期待されます。
 これまでに、クエや近大マグロ、もちガツオなど、生産、漁獲、流通、販売に成功したお手本があります。そこで、県産の水産物を新鮮でおいしく食べてもらうような研究をすべきと考えますが、農林水産部長の所見を伺います。
○議長(尾﨑太郎君) 農林水産部長。
  〔原 康雄君、登壇〕
○農林水産部長(原 康雄君) 和歌山県は、良好な海域に恵まれ、各地で多種多様で新鮮な水産物が水揚げされています。このような豊かな水産物をPRするため、これまでプレミア和歌山や地域団体商標などを活用したさまざまなブランドづくりが進められてきたところですが、ほかにも数多くのおいしい県産魚がございます。
 これらを広くPRしていくためには、さまざまな切り口でそれぞれのおいしさを伝えていく必要があると考えております。その具体的方法について研究してまいりたいと考えております。
○議長(尾﨑太郎君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 最近、スーパーへ行ってお魚コーナーを見ても、環境に優しいとり方でとったお魚というのも御坊のスーパーにも並んでいるんです。それから、九州でとれたサバを静岡県で加工した塩サバ、御坊のスーパーで1本2000円もするのに売られてる。私が見たときには5本並んでましたから、500円でもサバがすごく高いと思うのに、そんな2000円もするサバが売れるという、本当にありがたい時代だと思います。やっぱり高く売るためには、おいしい、新鮮、そんなことを打ち出す必要がありますので、知事、予算も要ると思いますけども、科学的に研究をしていただくことをよくお願いしておきます。
 次に行きます。次は、紀伊路について質問いたします。
 昨年10月24日、「紀伊山地の霊場と参詣道」に闘鶏神社を初め中辺路、大辺路、高野参詣道など22地点が追加登録されました。知事は、関係者の労をねぎらうとともに、喜びのコメントを発表されました。また、追加登録を記念して東京でシンポジウムも開催されました。世界遺産登録が困難な鎌倉などの例を思うと、本県の追加登録は本当に喜ばしい限りで、本県自体の値打ちも上がったものと感じます。
 一方、日高の道成寺は、安珍清姫など古典芸能における一級のコンテンツを持つ熊野古道有数の文化財ですが、残念ながら世界遺産にはなっていません。熊野詣は、京の都から熊野まで、途中の王子で祈祷しながら歩いて到達する修行と伺いましたので、京都から田辺までが抜けていて熊野詣の精神性は確保されるのかと、いつも疑問に思っています。世界遺産は、目に見えないものではなく、地点、場所、環境だと説明を聞いても、和歌山から田辺までの紀伊路が抜けていることは大変残念に思います。
 本来は京都から登録されるべきと思いますが、道成寺初め多くの文化財がある和歌山県内の紀伊路の追加登録ができないものでしょうか、教育長に伺います。
○議長(尾﨑太郎君) 教育長宮下和己君。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」は、平成16年に当初登録され、その後、熊野参詣道中辺路・大辺路、高野参詣道のうち追加登録の可能性がある地点全てについて追加登録を提案し、平成28年に承認されました。
 追加登録の提案に当たり、紀伊路については要件を満たさなかったため提案には至りませんでしたが、熊野参詣道の経路の1つである旨を提案書に記述いたしました。このことが世界遺産委員会において認識されることとなり、今後、紀伊路の追加登録を目指す上で意義は大きいと考えております。
 世界遺産登録は、まず国史跡の指定を受けることが前提です。紀伊路には、藤白王子跡など既に国史跡指定された地点がございます。また、ほかにも、県が有識者の助言指導のもとで実施した調査では複数の王子跡について国史跡指定の可能性もあるという結果を得ており、その範囲を確定するための測量調査などを実施しているところです。今後、さらに調査箇所をふやすとともに、国や関係機関等と協議するなど、国史跡の追加指定に向け取り組んでまいります。
 また、これらの取り組みを進めるには、市町の協力及び地域住民の機運の盛り上がりが不可欠です。このため、地域の歴史や文化遺産を後世に継承できるよう、郷土の伝統や文化に対する愛着を深める教育を推進してまいります。
○議長(尾﨑太郎君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 和歌山はかつて近畿のおまけみたいなことを言われたことがありましたけども、高野・熊野が世界遺産に登録されて、和歌山の自然や文化は世界に誇れるすばらしいもんだというふうに気がつきました。しかし、それだけではなくて、和歌山のすごいところは、世界遺産以外にも世界遺産級のようなものがいっぱいあるというふうに思っております。紀伊路もそうだと思いますけども、私たち議会も大いに盛り上がりを手伝っていきたいというふうに思っております。
 最後に、キャリア教育について伺います。
 偶然、NHKアナウンス室のポータルサイトを見ていて、本県出身のNHKアナウンサーが1人もいないことに気づきました。
 NHKのアナウンサーは、全国54の放送局に男女合わせて約500人おり、地域のニュースや番組に出演しています。別に1人もいないことで実害はないのかもしれませんが、500人もいる中に本県出身者が1人もいないことは寂しく、なぜかと疑問に思います。都道府県別出身者数は──議席に配付していませんか。(「ありません」と呼ぶ者あり)すみません、そうなってると思ったんですけども、チャンスがあればまた配らせていただきます。
 ほかには、和歌山県以外にも1人もいないのは、石川、福井、鳥取の各県であります。共通点として、子供の数が少ないことや基礎を勉強するセミナーがないこと、近畿圏が総じて少ないので、言葉などが関係するのかと推測されます。
 また、同ポータルサイトには、アナウンサーになりたい小中学生への次のようなアドバイスも紹介されています。
 「文字を正しく読めるようにすること。自分のことばで、元気よく自分の考えを述べたり、物事を説明したりすることができるようにすることが大切です。また、中学生になったら、初対面のおとなの人ともきちんとしたことば遣いで話ができるようにしておきたいですね。もうひとつ大事なのは、『好奇心』です。知らないことや知らない人に関心を持つようにすることです。身近なできごとだけでなく、世の中の様々なできごとにも目を向けて、興味がわいたら詳しく調べてみるという体験もきっと将来役に立つでしょう。日頃から『なぜ?』と考える力を養っておくと、さらにアナウンサーが身近なものになるでしょう」。私は、一読いたしまして、これはアナウンサーというよりもどんな職業についても必要な資質であり、本県のキャリア教育にも大いに参考にしていただきたいと思いました。
 いろいろ調べてみて、アナウンサーになるためには学歴だけではなく、養成講座に通うなど、アナウンサーになりたいと思う強い信念や、それを支える経済力が家庭になくてはなれない仕事だと感じました。
 私は、医師についても同じことが言えると思います。以前から、本県の医師不足の原因は医学部入学の偏在にあると考えています。現在、本県で医師になるためには、極論すれば、私学の進学校から県立医大に入学するか、授業料の高い私大医学部に入学するしかありません。つまり、医師の子弟のように医師という職業のすばらしさに早々に気づく環境か、私学に通わせる裕福な家庭しか医師になれません。
 現在、県では医師不足解消のため、県立医大の入学定員に地域枠を設け、9年間は県内で地域医療に従事することを条件に、奨学金を付与して入学させています。しかし、地域枠は県民ばかりではないので、9年経過すれば引き続き県内に残ってくれる保証はありません。また、若手ばかりが循環する仕組みを継続していては、県内でベテランの医師が育ちません。
 それよりも、県内の小学生に医師不足のため失われていく命がある現状を理解してもらい、よし僕が頑張ろう、私も頑張るわと、地域医療のために医師を目指す子供たちを育てるほうが、私は真っ当な方法であると考えます。
 医師同様に、和歌山に必要とされる医療関係、イノベーションを起こす優秀な技術者、事業を起こす起業家、県土の発展を支える土木建築技術者など、本県を支える子供たちを育てるようなキャリア教育が今こそ必要だと思います。
 また、アナウンサーになりたいなど、子供たちが仕事に対する夢を持ち、その夢が実現するような支援をするキャリア教育も必要です。
 玉木久登議員に教えていただいた、大阪市教育委員会首席指導主事を経て本年4月から生野区長に就任した山口照美さんが、民間人校長として活躍した大阪市立敷津小学校のキャリア教育の例を紹介します。
 山口さんは、子供たちの知っている職業数は少なく、親と教職員、日常生活で接する人、テレビで知るぐらいで、実感を持って知っている仕事はさらに少ないので、学校が与える情報の責任は大きいと言います。
 幼い子供のなりたい職業が偏るのは、知識として職業を知らないからで、知っている職業の数が多いほど選択肢はふえることから、敷津小学校のキャリア教育では、3年間で100の職業を知ることを目標にしています。
 さらに、山口さん自身が小学生のころ知らなかった職業につき、今までにない仕事をつくり、国内外で働くさまざまな人に出会ったことや、その一方で、夫の実家の米屋が数年前に廃業した経験から、生まれてくる職業があればなくなる職業もあることに気づいた。それゆえ、100の職業を知って終わりではなく、時代の変化に合わせて仕事をつくれる人になってほしいと、現役のプロレスラーや毛糸作家など、さまざまな職業の人たちの話を子供たちに聞かせるプログラムを立ち上げたそうです。
 現在、県内の小中高では、文科省の学習指導要領により、成長段階に合ったキャリア教育が行われています。しかし、今回の質問に際し、県教委では義務教育でのキャリア教育の実施率は把握していても、その中身や効果についてはわからないということでした。NHKアナウンサーが一人もいない理由はこんなところにもあるのかなと思いました。
 ぜひとも、ゴールデンキッズの職業版のような、小学生から夢を持ち、その夢を実現できるような支援や県内で必要とされる人材を養成するようなキャリア教育の実施、充実が必要と考えますが、教育長の御所見を伺います。
○議長(尾﨑太郎君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 学校段階でのキャリア教育は、子供たち一人一人の発達の段階に応じて、将来の社会的・職業的自立を目指して行う教育であります。
 小学校では、学ぶことや働くことの大切さを理解し、大きくなったら何になりたいかなど、将来の夢や希望を膨らませております。
 中学校では、学ぶことや働くことの意義を理解した上で、社会の一員としての責任感を育み、将来を考える力を身につけさせております。なお、本県の職業系高校や企業等を紹介した冊子「和歌山で学ぶ・働く」を作成し、今年度初めに全ての中学校3年生とその保護者に配布して、進路を考える資料の1つといたしました。
 これからも、小中学校において、社会科等の授業や特別活動、職場体験等でさまざまな仕事に触れる機会を持ちながら、将来の選択肢を広げていきたいと考えております。
 ことし3月に告示された小中学校の新学習指導要領の総則には、現行の高等学校にあるようにキャリア教育が明記され、新たに学級活動や学校行事などの特別活動をかなめとし、全ての教育活動を通じてキャリア教育の充実を図ることとされております。小中高等学校を通じて、子供たちは多くの経験を積み重ねながら、みずからの生き方を見つけていきます。
 このような中で提起されているものに、キャリアパスポートがございます。これは、子供のさまざまな学びや体験等を記録し、これをもとに教員、保護者が子供の成長を支援していくことを狙いとしており、本県としても研究してまいりたいと考えております。
 県教育委員会では、こうした新しい学習指導要領の趣旨、内容を小中高等学校、特別支援学校の全教職員に周知徹底し、各学校が計画的、組織的に取り組めるようキャリア教育の充実を図ってまいります。
○議長(尾﨑太郎君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 教育長からも力強い御答弁をいただきました。ぜひそのとおりになりますようにお願いいたしまして、私の一般質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(尾﨑太郎君) 以上で、中村裕一君の質問が終了いたしました。
 お諮りいたします。質疑及び一般質問を終結することに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(尾﨑太郎君) 御異議なしと認めます。よって、質疑及び一般質問を終結いたします。
 次に日程第3、議案等の付託について申し上げます。
 お手元に配付いたしております議案付託表のとおり、議案第128号から議案第141号まで、並びに知事専決処分報告報第1号から報第5号までは所管の常任委員会に付託いたします。
 お諮りいたします。6月27日及び28日は常任委員会審査のため休会といたしたいと思います。これに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(尾﨑太郎君) 御異議なしと認めます。よって、6月27日及び28日は休会とすることに決定いたしました。
 次会は、6月29日定刻より会議を開きます。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後1時51分散会

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