平成29年6月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(川畑哲哉議員の質疑及び一般質問)


平成29年6月 和歌山県議会定例会会議録

第5号(川畑哲哉議員の質疑及び一般質問)


汎用性を考慮してJIS第1・2水準文字の範囲で表示しているため、会議録正本とは一部表記の異なるものがあります。

正しい表記は「人名等の正しい表記」をご覧ください。

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 9番川畑哲哉君。
  〔川畑哲哉君、登壇〕(拍手)
○川畑哲哉君 私の独自調査によりますと、岩出町時代を通じまして岩出市選挙区から副議長を輩出させていただくのは86年ぶりのことでございまして、(拍手)この歴史的偉業をなされました山本茂博先輩議員より、議長として登壇のお許しをいただきました。感無量でございます。(拍手)通告に従いまして、心を込めて一般質問をさせていただきたいと思います。
 私も、同じく岩出市より選出をしていただいております川畑哲哉と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 まずは1点、御報告を申し上げます。
 先月22日より26日まで、ドイツを訪問してまいりました。第4次産業革命時代をリードするドイツの国家戦略インダストリー4.0の現場視察が主な目的でございました。
 関西国際空港を出発した後、フランスはパリのシャルル・ド・ゴール空港を経由し、まずは、人口約59万人のバーデン=ヴュルテンベルク州の州都シュツットガルトに入りました。その駅前から車で走ること約15分、工作機械やレーザー技術でドイツ国内シェアナンバーワンのトルンプ社を訪問し、ピーター・フレデリックエリアセールスマネジャーより会社概要について詳細な御説明をいただき、広大な工場内を極めて御丁寧に御案内をいただきました。
 社員数は、世界各地で3000人の技師を初めとする1万1000人。経営のスリム化と徹底した研究開発を行い、IoTを駆使したスマートファクトリーを構築し──これはまだ発展中とのことでございましたが──世界各国から視察をお受けされているとのことです。「レーザー加工でつくれないものはない」とのお言葉が強く印象に残りました。
 遅いワーキングランチを社内レストランにていただきながら、ワーク・ライフ・バランスの重要性について意見交換をさせていただきました。
 ドイツでは、土日の週休2日制に加え、金曜日は昼12時で仕事を終えます。トルンプ社ではコアタイムを10時から16時とするフレックス制を導入し、テレワークも推進しているとのことでした。究極の生産性向上は、社員のモチベーションをいかに保つかにもかかっているのでしょう。視察時間は延べ5時間に及びました。ピーター・フレデリックマネジャーを初め、温かく御対応いただきましたトルンプ社の皆様に改めて心から感謝を申し上げます。
 その後、借り上げたタクシーにてヨーロッパ最長のアウトバーンを滑走し、5時間半後、次なる視察地、フォルクスワーゲン社を擁するヴォルフスブルクへ到着しました。現地時間は21時のことでした。
 明くる日の午前中は、フォルクスワーゲン社の敷地内にある自動車博物館アウトシュタットを視察いたしました。アウトシュタットは、2000年6月1日に、同年開催されましたハノーバー万博に合わせて開業され、年間200万人以上が訪れるとのことですが、社会見学らしき学生の団体も多く見られました。
 大注目は、何といってもプレミアム・クラブハウス内に展示されているミラーフィニッシュのブガッティ・ヴェイロンです。160万ユーロ、日本円約2億円のプレミアムカーは450台を完売し、残念ながら2015年に生産を終了したとのことでした。
 こちらは、巨大なツインの自動車サイロや自動車パビリオン、リッツカールトンホテルや乗車体験など、自動車マニアだけではなく、家族でも1日過ごせる一大テーマパークとなっています。えにし深い車文化とフォルクスワーゲン社への敬意、そして、フォルクスワーゲン社によるヴォルフスブルクへの郷土愛を感じました。
 午後からは、いよいよフォルクスワーゲン本社工場へ入りました。サビーネ・ラインケ氏にお迎えいただき、工場内をカートに乗って詳細な御説明をいただきながら御案内をいただきました。
 このフォルクスワーゲン社の本社工場では、1日に3820台の車が製造され、150カ国へ輸出されているとのことです。敷地面積は7.8平方キロメートル、75棟ある建物面積は1.6平方キロメートル、これはモナコ公国とほぼ同面積ということです。敷地を1周すると35キロメートルという世界一の自動車工場です。工場内には92カ国から訪れた5万2000人の従業員が働き、うち女性は17%とのことでしたが、大型の搬送車や製造中の車を動かす女性従業員も散見されました。
 視察終了後、自動運転について幾つか質問いたしました。最重要企業秘密となり公表できないということも多々ございましたが、「自動運転の自動車の多くはこの工場で生産することになるだろう」とコメントをされました。
 また、工場内は一切写真撮影が禁じられていましたが、約9000台の6駆動式ロボットが活躍し、生産性向上への取り組みがふんだんにされていました。
 ちなみに、私は昨年12月、登壇させていただき、最先端技術について質問させていただいた際に、「世界では、最先端技術開発にアメリカ、ドイツが先行し、中国は世界4大機械メーカーのドイツ・クカ社を買収しました」と御報告を申し上げました。このフォルクスワーゲン本社工場内で稼働している約9000台の6駆動式ロボットは全てクカ社製でございました。
 インダストリー4.0とは、製造業をコンピューター化し、有力ドイツICT企業が世界の製造業を組み込んでいくという極めてしたたかなドイツの国家戦略でございます。
 製造業をコンピューター化し、また、自動車をコンピューター化することで自動運転技術が進展します。自動運転技術が進展すると、陸を走る車だけではなく、空を飛ぶ車の誕生へとつながります。現実に、ドイツのイーボロ社はヘリコプター大の大型ドローン「ボロコプター2X」の開発を進め、2015年にドイツで操業を開始したリリウム・アビエーション社は5人乗り電動小型飛行機でことし4月、初の飛行実験に成功したとのことです。
 私は、製造業のコンピューター化は地方の担い手不足を解消し、自動運転や空飛ぶ車は地方の公共交通インフラの劇的な整備に寄与されるものと信じています。しかし一方で、この第4次産業革命の波に乗りおくれれば、我が国や本県の物づくりは大きなダメージを負う不安も持っています。
 第4次産業革命の波に乗りおくれることなく、本県の産業界が発展され、最先端技術の活用によって本県の地理的なビハインドを解消し、本県の物づくりや豊かな自然がとてつもない魅力となって世界に発信されますよう、引き続き調査研究に取り組んでまいりますことをお誓い申し上げまして、ドイツ訪問におけるインダストリー4.0現場視察の御報告とさせていただきます。
 続いて、一般質問に入らせていただきます。
 さて、フォルクスワーゲン本社工場で稼働しているクカ社のロボットは6駆動式ですが、昨年11月とことし3月にも訪れました北九州市の安川電機社では、7駆動式ロボットの開発に成功しています。その安川電機社は、もともと炭鉱で活躍した採掘用のモーターを製造していた会社ですが、昨年、中国の奇瑞汽車と手を結び、EV、電気自動車向けモーターへの本格参入をされました。
 また、ことし4月に新島議員、堀議員、中西議員と訪れました本田技研工業社では、EVよりエネルギーをためられ、安全性も高くCO2を排出しない水素カーを開発し、2030年に向けて普及に取り組まれています。
 そして、同日訪れました藤沢市では、パナソニック社が牽引して再生エネルギー発電や防災機能を備えたスマートタウンを構築しています。
 さらに、先日訪れました日立製作所横浜事業所では、IoTを活用したオフィス最適化、また働き方のワークスタイル変革など、スタッフの皆様がいかに我慢せず快適に仕事をする環境でありつつ、あらゆるデータを生かして省エネ及び生産性向上を追求しています。効率のよいエアコン稼働であったり、ビジネス顕微鏡によるスタッフ間の会話時間分析であったり、果てはトイレの個室の空き状況まで自席のパソコンからチェックできます。
 このように、我が国の物づくりはドイツやアメリカを初め、世界に匹敵する最先端の技術を有していると私は確信をしています。
 折しも先日、本県選出の参議院議員世耕弘成経済産業大臣は、これからの我が国の物づくりが進むべき道として、コネクテッド・インダストリーズという概念を打ち出されました。このコネクテッド・インダストリーズとは、日本では企業同士の競争領域と協調領域が分かれていないので、競争領域を限定し、協力できるところは協力していくことで世界と戦いやすい環境をつくるというビジョンでございます。
 去る6月19日に、経済産業省が開催した「“Connected Industries”シンポジウム」冒頭にて、世耕大臣は、「日本企業は狭い国内で激しく競争してきたこともあって、協調が下手である。しかし、コネクテッド・インダストリーズでは、協調領域を最大化してさまざまなつながりを生んでほしい。人と人が世代を超えてつながっていく、コネクトされた物づくりや産業という方向性を示すのがコネクテッド・インダストリーズだ。今後は、全ての産業政策をコネクテッド・インダストリーズを旗印に集中させていく」と語られています。
 そこで、仁坂知事にお尋ねいたします。
 このコネクテッド・インダストリーズについて、どのような御認識をお持ちでしょうか。また、今後の県政にはどのように御反映されるおつもりでしょうか。知事の御所見をお聞かせください。
○副議長(山本茂博君) ただいまの川畑哲哉君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 日本の製造業の歴史を振り返りますと、かつて職人の技で継承されてきた技術をミニコンピューター、いわゆるミニコンを工場内の機械の制御等に導入することで技術を標準化させ、技術の伝承や生産性の向上といった課題を克服してまいりました。
 一方、ドイツは、なかなかそのマイスターの誇りというのは捨て切れなくて、こういうやり方に乗りおくれてきたのでちょっとおくれをとってきた、こういう歴史があるんですが、川畑議員の御視察の御報告をお聞きしておると、ついに本気になって、こういうことをごりごり始めてきたなというふうに思いました。
 議員御指摘の経産省が発表いたしました日本の産業が目指すべきコンセプト、コネクテッド・インダストリーズにおけるスマートものづくりにつきましては、御指摘のようにIoT、AI、ロボット、ビッグデータといった最新技術を活用し、コンピューターがみずから考え発信することで、つながって新しいものを生むということだと思います。
 日本は、すり合わせ型で、あるいはすり合わせ技術で特異な産業競争力を有しているという国でもあるんですが、そういう意味では、コネクテッド・インダストリーズというのは、こういう新しい技術体系に日本らしさもうまく加えて、発展の可能性を極大化する意義があるというふうに私は思います。さすが世耕大臣と、センスに感心をしております。
 県では、IoTやAIに関するセミナー開催による普及啓発だけでなくて、工業技術センターにおいて、3次元データやシミュレーションソフトを活用し物づくりの効率化を図るスマートものづくりを掲げ、県内企業の人材育成や導入促進にも取り組んでいるところであります。
 さらには、本年2月に締結した経済産業省の産業技術総合研究所との協定における連携事項の中で、県内企業のIoT活用の強化に協働して取り組むということとしております。
 さらには、ビッグデータ、IoT、AIの流れにあって、最も有望なのは統計データの利活用であります。これの最先端のインターフェイスであるところの総務省の統計局の統計利活用センターが和歌山市に来年4月から来てくれることになっております。県もしっかり支えて、新しい潮流を我が物にしていきたいというふうに考えております。
 そういった中で一例を挙げると、例えば有田市のミカン農家では大手IT事業者と協力し、糖度の高いミカンを効率よく収穫するためにセンサーやスマートフォン等を活用した先進的な事例もありまして、県としてもこういうIoTとかAIとか、そういう活用がうまくコネクテッドされて幅広い産業分野で進んでいくように、引き続き支援していきたいと考えております。
○副議長(山本茂博君) 川畑哲哉君。
  〔川畑哲哉君、登壇〕
○川畑哲哉君 世界の流れや国の流れに乗りおくれないように、また本県独自の産業を形成していただきますように、引き続きお取り組みいただきますようにお願いを申し上げます。
 次の質問に入らせていただきます。
 今期定例会冒頭におきまして、知事より「海外からの誘客についても、新たにドイツ、イスラエルといった新規市場の開拓を進めてまいります」との御説明がございました。
 実際にドイツを訪れ、ドイツ人は規律正しく、また優しい方が多いと実感をいたしました。ぜひお一人でも多くドイツから本県を訪れていただきたいと私も考えていますが、ドイツへの観光プロモーションは現在どのように展開されているのでしょうか、商工観光労働部長の御答弁をお願いいたします。
○副議長(山本茂博君) 商工観光労働部長山西毅治君。
  〔山西毅治君、登壇〕
○商工観光労働部長(山西毅治君) 平成28年のドイツからの訪日外客数は、対前年比12.7%増の18万3300人と堅調に推移しており、県内宿泊者数についても、対前年比74.5%増の8013人と過去最高を記録したところです。
 一方、ドイツ人出国者数が欧米諸国の中でも最も多いことを考えた場合、訪日者数はまだまだ少ない現状にあること、また、日本の歴史や精神文化、アウトドアアクティビティーに強い関心を持つ国民性が高野山や熊野に代表される和歌山の観光資源にマッチすることから、今後のプロモーションの展開次第では大きく伸ばせる余地のある有望市場であると考えています。
 このようなことから、県では、今年度新政策としてインバウンド観光戦略事業を立ち上げ、欧米豪の富裕者層に加え、ドイツ、イスラエル等の新規市場をターゲットとしたプロモーションを強化することとしています。
 具体的には、本年4月に県の多言語観光ウエブサイトにドイツ語版サイトを追加したほか、ドイツ人の関心の高い日本の精神文化や異文化体験、和歌山ならではのアウトドアアクティビティー等の魅力を発信するため、ドイツの現地旅行会社やメディアを招聘し、ファムトリップを実施していきます。
 また、ドイツにおきまして、主に海外旅行の計画、予約を行うシーズンである1月から3月の時期に合わせて職員をドイツに派遣し、現地で開催される旅行博覧会への出展やセールスコールにも取り組んでまいります。
○副議長(山本茂博君) 川畑哲哉君。
  〔川畑哲哉君、登壇〕
○川畑哲哉君 御期待申し上げますので、鋭意取り組んでいただきますようにお願いを申し上げます。
 では、次の項目に入らせていただきます。
 ドイツ通な方は、「ドイツを訪れるなら春がよい」とおっしゃるそうです。それは、3月末から6月半ばにかけて、一大特産のアスパラガスがテーブルに並ぶからだそうです。この時期のレストランでは、「メーンはお魚ですか、お肉ですか、それともアスパラガスですか」と聞かれるほどです。ドイツではアスパラガスをシュパーゲルと言いますが、ドイツのアスパラガスは非常に大きく、ホワイトソースをかけて食べます。私もドイツ滞在中に一度いただきましたが、そのやわらかさや甘さには大層びっくりしました。またドイツを訪れる機会がございましたら、ぜひまたあのアスパラガスを食べたいと思いますが、その場所へ行かなくては食べられないものや、その場所でしか体験できないことがあれば、人はその場所を訪れます。
 本県にもそんな魅力的なコンテンツはたくさんありますが、常に新たな魅力の創出に取り組んでいかなくてはいけません。
 去る3月下旬、新島議員や県の御担当の職員の皆様と御一緒に和歌山市古屋のアボカド農場を視察させていただきました。
 農場内には、12本のアボカド樹が植わっていましたが、1本から小さな実も含めて200から300個が12月から3月にかけて収穫できるそうです。こちらは潮風が当たることから、霜がおりない栽培の適地で、5月にはどこからともなくミツバチがやってきて受粉を手伝ってくれるとのことです。
 アボカドはカリウムやビタミンEをふんだんに含み、美容と健康によいと言われ、そんな食材として女性にも大人気です。また、メキシコからの輸入物と比べ、国産アボカドは格段のみずみずしさと品のある味わいを持ちます。現在、アボカド生産量日本一は愛媛県らしいですが、その生産量は年間おおよそ600キログラムとのことですので、本県もぜひ頑張って生産量日本一を目指していただきたいと思います。
 また、その数日後、沖縄県のコーヒー農場を視察させていただきました。
 従来、ブラジルなど1日の中で15度から25度くらいの気温差がコーヒー栽培には最適とされてきましたが、沖縄県では1年を通して12あるいは13度から32~33度という気温差があり、沖縄珈琲生産組合の宮里組合長を初め、組合員の皆様による30年もの御努力の中で、新たなコーヒーの産地として確立してこられました。コーヒー栽培には、気温差のほかに真夏の直射日光、台風、寒波の3つをいかに防ぐかということが肝要とのことです。この沖縄産コーヒーは、ネスカフェやサントリー、UCCとの取引も始まり、16度から21度という高い糖度とたくさんのポリフェノールを含むことから、ジャムなどの加工商品もつくられています。
 地球環境の変動や生産者の皆様の御縁や御努力の中で、私は、本県でも今後新たな品目が、文字通り花を咲かせる可能性は非常に高いと考えています。
 そこで、お尋ねいたします。
 アボカドやコーヒーなどの新品目導入に対する支援策としては、どのような取り組みをされているのでしょうか。農林水産部長の御答弁をお願いいたします。
○副議長(山本茂博君) 農林水産部長原 康雄君。
  〔原 康雄君、登壇〕
○農林水産部長(原 康雄君) 県では、果樹農業振興特別措置法に基づき、10年後を目標とした振興方針を示した県果樹農業振興計画を平成28年3月に策定しております。
 その中で、果樹農家の経営安定を図る観点から複合経営を推進するとともに、新品目については、多様化する消費者ニーズに対応するため、適地性を十分考慮しながら導入を進めることとしております。
 しかしながら、新品目導入は、栽培技術が確立されていない、販路開拓が必要であるといったリスクがあります。このため、県では、新品目導入にチャレンジする農家に対して、試験研究機関や普及指導員による助言に加え、県単独事業果樹産地競争力強化総合支援事業で、苗木代や土壌改良資材等への支援を行っているところです。
○副議長(山本茂博君) 川畑哲哉君。
  〔川畑哲哉君、登壇〕
○川畑哲哉君 御答弁をいただきました。ぜひ、意欲のある、また御興味のある生産者の方にチャレンジしていただきやすいような環境づくりに努めていただきたいと思います。
 今、御答弁いただきました果樹産地競争力強化総合支援事業は、最寄りの振興局や果樹園芸課が窓口とお聞きしております。生産者の皆様が御相談に来られた際には、認定基準や採択基準などの御説明も含め、丁寧な御対応をいただきますように要望申し上げます。
 では、次の質問に入らせていただきます。最後の項目でございます。
 私は、前職、世耕弘成参議院議員の秘書時代より、病児・病後児保育について調査研究を続けてまいりました。
 病児・病後児保育については、先ほど御登壇されました森礼子先輩議員が御熱心に取り組まれ、また、軽度体調不良児への対処については、午前中御登壇されました菅原議員が御指摘されました。そして、子育て支援については、これまで多くの先輩議員の皆様が御質問をされてこられています。
 私も、本日までに幾度かのタウンミーティングを開催してアンケートを実施し、ドクターや幼保関係者、中小零細企業経営者からのヒアリングや意見交換などをしてまいりました。その中で、施策立案に際して極めて重要な視点が見えてまいりましたので、このたび提言をさせていただきます。
 病児・病後児保育は、病児期の子供あるいは病後の回復期にある子供を預かってくれる制度で、子育てと仕事の両立を図る支援策として、国も補助制度などを創設して推進しています。午前中も御答弁ございましたが、本県内でも、病児・病後児保育に対応している病院や保育所などは10施設あり、広域での利用を含めると14市町が利用可能となっています。この制度は、子育てをしながら働く親からすると必要な制度であると私も認識をしておりますので、現状の病児・病後児保育が一層拡充されますことを期待しているところでございます。
 ただ、私がこのたび提言させていただきますのは、この方向ではございません。子供の視点を大切にした支援策であり、子育て支援ではなく子供支援と呼べる新たな制度を確立する必要があるということでございます。
 病気になった子供からすれば、親にはそばにいてほしいということが本音であろうと思います。報酬の問題や職場環境の問題で、子供が病気になっても職場を離れられない大人の事情も大人にはございますが、子供にも子供の事情や本音がございます。子供の視点を含め、多様なニーズや多様な状況に応えられる多様な制度を確立することが豊かなまちづくりへとつながり、そして、安心して子供を産み育てることができる環境を整えていくことが、本県の大きな魅力として発信されるであろうと考えています。
 そこで、まずは子育てと仕事の両立支援として、国の制度や本県の取り組みについて改めてお尋ねいたします。商工観光労働部長より御答弁をお願いいたします。
○副議長(山本茂博君) 商工観光労働部長。
  〔山西毅治君、登壇〕
○商工観光労働部長(山西毅治君) まず、国の法制度ですが、子育てしながら企業で働く女性等を支援するため、育児・介護休業法において、育児休業制度や短時間勤務制度のほか、子供が病気にかかったときに取得できる看護休暇制度などの制度があります。また、国の助成制度といたしましては、子育てと仕事の両立支援に取り組む企業に対して、育児休業取得者の代替要員の確保や育児休業からの復帰等を支援するための制度が設けられております。
 議員御指摘の父親あるいは母親が子供の看護のために気兼ねなく休暇を取得できる職場環境を整備するには、経営者、従業員双方の理解と意識改革が必要です。そのため、県では、企業に先進企業の取り組み事例や活用できる助成制度等の紹介を行うとともに、労使を対象としたワーク・ライフ・バランスセミナーや経済団体等への出前講座を実施しているところです。
 さらに、子育てしやすい職場環境づくりに積極的な企業の実践例を働く女性の応援サイト「ハッピーワーカー」で広くPRするとともに、企業に専門家を派遣し、両立支援のための就業規則の見直し等への助言指導も行っております。
 今後も、関係機関と連携しながら、県内企業において子育てと仕事を両立できる職場環境づくりがより一層進むよう取り組んでまいります。
○副議長(山本茂博君) 川畑哲哉君。
  〔川畑哲哉君、登壇〕
○川畑哲哉君 御答弁をいただきました。
 育児・介護休業法で定められている看護休暇は、子供が病気やけがをした場合だけではなく、予防接種や定期健診に行くためにも労働者が休暇をとることができる制度で、ことし1月1日に改正案が施行されています。
 ただし、看護休暇を取得した際の給料までも保証せよと法律が定めているわけではございませんので、民間企業の場合はほぼ無給か一部有給となっているようです。某民間企業経営者によりますと、「パート、アルバイトの従業員に看護休暇の際の給料を企業側が保障することは現実的にはあり得ない」とのことです。また、「企業側が給料を保証するとなると、従業員は心情的には余計に看護休暇をとりにくくなるだろう」とのことでした。
 いずれにしましても、まずはこのような制度があるということを広く認知させることが肝要です。県内企業の皆様に周知していただきますよう、あわせて引き続き御努力をお願いいたします。
 さて、ただいまの御答弁の中で、親が子供の看護のために気兼ねなく休暇を取得することができる職場環境を整備するためには、経営者、従業員双方の理解と意識改革が必要とのお言葉がございました。私もそのとおりであると認識をしています。
 その観点から、本年度の新政策、結婚・子育て応援企業同盟という事業について大きな期待を寄せています。当該事業につきましては、中本先輩議員の御質問への御答弁でも少し触れられていましたが、改めてお尋ねをいたします。
 この結婚・子育て応援企業同盟は、今後どのような事業として実施されるのでしょうか。福祉保健部長の御答弁をお願いいたします。
○副議長(山本茂博君) 福祉保健部長山本等士君。
  〔山本等士君、登壇〕
○福祉保健部長(山本等士君) 本年3月に策定しました和歌山県長期総合計画にも記載しているとおり、子供が健やかに成長できる環境を実現するためには、仕事と子育てが両立できるよう、地域や企業など社会全体で子育てを支援する仕組みを充実させることが重要であります。
 議員御質問の結婚・子育て応援企業同盟は、県内企業と連携して、社員の結婚や子育て生活を応援し、安心して子供を産み育てられる環境づくりを進めるための今年度の新政策でございます。
 具体的には、社員が育児休業や看護休暇、短時間勤務等の制度を利用しやすい職場環境を整えているといった一定の要件を満たす企業を同盟として組織化することとしております。また、同盟企業同士がそれぞれの制度をお互いに情報交換することで、よりよい制度が広がるよう進めてまいります。
 同盟結成後は、県がホームページや「県民の友」、さらには地域の情報誌へ掲載するほか、就職活動中の学生や一般求職者向けの紹介冊子を作成、さらに配布し、県内外に広くPRすることにより、同盟企業へのすぐれた人材の確保にもつなげてまいりたいと考えております。
 今後は、県下の企業に広く参加を呼びかけることはもちろんのこと、県も同盟に参加するとともに、市町村にも積極的に参加を呼びかけるなど、県全体で同盟の活動を盛り上げるよう取り組んでまいります。
○副議長(山本茂博君) 川畑哲哉君。
  〔川畑哲哉君、登壇〕
○川畑哲哉君 ぜひ、県全体で同盟の活動を盛り上げていただきますようにお願いを申し上げます。
 最後に、要望を1点申し上げます。
 先ほど申し上げましたように、病気になった子供からすれば、親にはそばにいてほしいということが本音であろうと思います。
 こう見えて私にも2人の子供がおりまして、娘は3月3日生まれの小学校2年生で、息子は2月14日生まれの幼稚園年長です。今は2人とものほほんと毎日を過ごしていますが、娘は1歳のときに大病を患い、1週間ほど母親とともに入院したことがございます。
 連日40度を超える熱を出し、体中に機器を取りつけられた娘を、私は通勤前の早朝と仕事を終えた夜遅くに見舞っていたのですが、囲いのあるベッドの中で娘は大声で泣きわめいているか、泣き疲れて寝ているか、どちらかでした。起きている際に私を見つけると、ふらふらと寄ってきては、ここから出してほしい、体に取りつけられた機器を外してほしいと言わんばかりに泣くのでしたが、私が部屋を出る際には一層大きな声で泣きわめいたものでした。
 また、息子も一度だけ40度を超える熱を出して幼稚園を休んだことがございます。朝、息子の手を握りながら「大丈夫か」と尋ねると、真っ赤な顔をした息子は一筋の涙を流しながら「しんどい」と声にならない声で答え、ぎゅっと手を握り返してきました。また、私が「仕事へ行ってくるね」と言うと、息子は真っ赤な顔をして一筋の涙を流したままで「お仕事頑張ってね」と手を振って答えてくれました。
 私は、1期生とはいえ、地元の皆様から負託を受けた議員ですので、子供が病気の際にはそばにいたいと申し上げるつもりはございません。しかし、世の子供にとって、常に親にはそばにいてほしいものであり、病気の際にはなおさらそばにいてほしいと必ず思っているはずです。そして、それは親にとっても同じで、子供が病気の際にはそばにいたいと必ず思っています。
 つまり、子供が病気になった際に、子供を施設に預けられる制度だけではなくて、親が仕事を気にせずに子供を迎えに行き、家で安心して看護できる制度も確立するべきでございます。その制度は、子供を迎えに行く親に一定の報酬を担保し、労働力が抜ける職場には一定の労働力か企業のブランドイメージをプラスする制度となります。
 シルバー人材や派遣制度による代替要員の報酬を親にも案分できるようにする補助制度であるとか、県条例による目的税課税やふるさと納税を活用した原資による病児・病後児保育保険制度創設であるとか、保険制度を産休育休、そして病児・病後児保育や看護休暇にまで拡充するよう国に要望していくことであるとか、制度確立に向けて検討すべき選択肢は幾つもあると思います。
 ちなみに、ドイツも導入している在宅育児手当を、鳥取県は本年度より、都道府県としては全国初の試みとして始めたそうです。本県でもぜひ御検討いただきたいと思います。
 ザ・イエロー・モンキーの名曲「JAM」は、私も大好きな曲でございますが、その中で「あの偉い発明家も凶悪な犯罪者もみんな昔子供だってね」と歌われています。発明家と犯罪者、その分かれ目が一体どこにあったのかをエビデンスとしてデータでお示しすることは困難ですが、多くの教育者が、子供が親を必要としているときに、子供と適切で濃密な関係を築いていくことが可能であればあるほど、子供が優良納税者へと成長する可能性が高いという旨の御指摘をされています。
 また、日本総合研究所の池本美香主任研究員は、「ヨーロッパ諸国では、子供を長時間預けたり、ぐあいが悪いときに親と離れて過ごしたりすることは、子供にとってマイナスだと考えている。日本では、子供が親と長時間一緒に過ごせずストレスを抱えている問題に目が向けられず、子供がどう感じているのかを考えない。育つ環境が悪ければ後に問題行動も起こる」と論じられています。
 親子の情がより実現されやすい社会をつくるために、子供が親を必要としているときにより長く一緒にいられるように、私も引き続きこの制度確立に向けて全力で取り組んでまいります。
 どうか仁坂知事初め当局の皆様にも、御担当の部局を精査していただき、子供の視点を大切にしたもう1つの病児・病後児保育制度の確立に向けて全力で取り組んでいただきますよう、心からお願い申し上げます。御一緒に頑張りましょう。そのことを強く要望申し上げまして、私の人生4度目の一般質問を終了させていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○副議長(山本茂博君) 以上で、川畑哲哉君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 次会は、6月26日定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後2時13分散会

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