平成29年6月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(長坂隆司議員の質疑及び一般質問)


平成29年6月 和歌山県議会定例会会議録

第5号(長坂隆司議員の質疑及び一般質問)


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  午前10時0分開議
○議長(尾﨑太郎君) これより本日の会議を開きます。
 日程第1、議案第128号から議案第141号まで、並びに知事専決処分報告報第1号から報第5号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第2、一般質問を行います。
 42番長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕(拍手)
○長坂隆司君 おはようございます。
 議長のお許しをいただきましたので、以下通告に従いまして一般質問をさせていただきます。
 1番目に、南海本線紀ノ川橋梁についてであります。
 南海本線紀ノ川橋梁の安全性については、県議会において初めて問題提起を行ったのが、上り線築100年目の平成15年9月の予算委員会、以来、平成16年6月議会、平成20年2月議会、同年6月議会、そして平成24年12月議会のそれぞれ本会議で一般質問をさせていただいておりますが、それから5年がさらに経過、久々に南海本線紀ノ川橋梁について質問をさせていただきます。
 上り線側は1903年(明治36年)にかけられ現在114歳、下り線側は1922年(大正11年)にかけられて現在95歳になります。現役の鉄道橋としては、最上川橋梁が橋長334メートルで132歳、国内最古のものですが、おおむね1時間に1本の運行頻度であるのに対し、紀ノ川橋梁上り線は、橋長は約2倍の627メートルで運行頻度がずっと高く、ざっと数えてみましたが、平日で118便、休日で103便の鉄道橋であります。
 建設当時、たびたび洪水が起こっていた紀の川に鉄の橋をかけるとなると治水上の問題も心配され、河川を管理していた和歌山県に鉄橋架設の出願をした際、和歌山県からは、洪水が起こらないように万全の準備をすることや、何か不都合が発見された場合は会社の費用で全て撤去するようになどの厳しい命令書が出されたほどであったと言います。
 南海本線紀ノ川橋梁は、アメリカ合衆国のアメリカン・ブリッジ社製造で、下部工事を当時鹿島組が請け負い、その下請を和歌山県の西本組、後の西本建設工業が行ったそうです。
 南海電鉄の2016年のCSR報告書においては、「2年ごとの定期検査を実施している。その結果に基づき、さらに詳細な検査や随時適切な補修などの対策を行うことで安全性を確保している。重ねて、地震対策として落橋防止対策工事を実施している」と例年のようにうたっておられます。また、3~4年前でしたか、当時の亘社長が和歌山市での講演会の際、「紀ノ川橋梁はマグニチュード8.6までの耐震性がある」と、確かにおっしゃっていました。
 さらに、ネットで調べていると、2015年7月24日、土木学会関西支部で、南海電気鉄道株式会社鉄道営業本部工務部工務課の猪木勇至氏がつくった「経年100年を越えた鋼鉄道橋の性能調査について」というレジュメを見つけました。そこでは、実地踏査として衝撃振動試験と深浅測量を下り線の紀の川の大阪側で、川の中に立つ2本の橋脚(P12、P13)で行ったそうです。進行性は認められないが、川岸により近い橋脚(P10)と比較して、2本の橋脚のほうが洗掘されている可能性があるとしていますし、性能評価調査で「安全性は担保されているが、継続監視と定期的な深浅測量の必要性がある」と指摘されています。
 まとめとして、上部工については、「現状では破断状態に至るほど過緊張状態ではないが、腐食や緩みなどのさまざまな要因により応力が過大に発生する可能性もある」と触れ、下部工については、「地盤ばねによる健全度がA2である橋脚及び洗掘のおそれがあることを勘案し」云々とあります。
 土木学会の鋼橋における劣化現象と損傷の評価の第3章既設橋の健全度評価によると、鉄道橋の健全度A2というのは、運転保安等に対する影響が「将来脅かす」で、変状の程度は「変状が進行し、機能低下のおそれがある」で、措置としては「必要な時期に措置」する必要があるという度合いです。これはまだ若い95年の下り線のほうですから、超高齢者の114年の上り線ではもっと懸念が大きくなります。
 国土交通省は、2014年度に地方鉄道の橋やトンネル長寿命化を狙って鉄道施設安全対策事業費補助金を創設しました。これは、JR東日本・東海・西日本の本州3社及び大手私鉄を除く、主に中小鉄道事業者を対象とし、自治体にも支出を要請し、鉄道事業者の負担額を工事費の3分の1程度に抑えたい考えでした。また、同年7月から道路橋や道路トンネルについても、地方自治体に対し財政的支援を伴って、5年ごとの定期点検や予防保全を義務づけました。自治体は、橋やトンネルの安全性を4段階で自己評価し、レベルに応じた対策に取り組むわけであります。
 そこで質問ですが、1つ目、まず、紀ノ川橋梁でごく最近まで工事しているのをお見かけしておりましたが、この南海本線紀ノ川橋梁における補修工事についてはどんな内容であったのか、県で把握されておりますか。企画部長、お願いいたします。
○議長(尾﨑太郎君) ただいまの長坂隆司君の質問に対する答弁を求めます。
 企画部長髙瀨一郎君。
  〔髙瀨一郎君、登壇〕
○企画部長(髙瀨一郎君) 鉄道事業者が保有する橋梁等の安全性について、報告をさせる権限は県にはございませんが、県民の命と安全にかかわる大変重要なことですので、従来から南海電鉄や国土交通省との間で情報交換を行ってきたところであります。
 議員御質問の紀ノ川橋梁の補修工事についても事前に南海電鉄から説明を受け、平成28年12月から平成29年5月にかけて、高水敷部分で上下線20橋脚について鋼棒挿入による橋脚補強を行うものと聞いており、既に工事は完了しております。
 今後は、低水敷部分でも工事を進めていく予定であり、これらの工事により、紀ノ川橋梁の安全性がさらに高まるとのことであります。
○議長(尾﨑太郎君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 2点目に、国土交通省の2014年度の前述の橋梁の長寿命化に対する取り組みに対し、和歌山県として、長寿命の最たるものである南海本線紀ノ川橋梁にも適用いただくべく働きかけを行っていただいたのでしょうか、企画部長にお答え願います。
○議長(尾﨑太郎君) 企画部長。
  〔髙瀨一郎君、登壇〕
○企画部長(髙瀨一郎君) 国の鉄道施設総合安全対策事業費補助における老朽化対策事業は、経営環境が厳しさを増す地方の鉄道事業者に対して支援する趣旨のものであるため、大手民間鉄道事業者である南海電鉄は補助対象となっておりません。
 また、南海電鉄からも補助金に係る要望は受けていないため、県としては働きかけを行っておりません。
○議長(尾﨑太郎君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 国土交通省も、全国の鉄道にある橋梁やトンネルの平均築年数はともに50年以上であることに鑑み、対症療法のような補修だけでは安全性の長期的な向上が見込めないと考えて、長寿命化を促進する制度を設けたわけです。地方の規模の小さい鉄道橋からまず始めた老朽化鉄道施設の長寿命化対策でもあります。少々の拡大解釈であろうとも、設計耐用年数をはるかに超えた橋梁を現役で今後も使っていきたいのなら、鉄道事業者として行政に食らいついていく気概を示してほしいものであります。県民の命を預かる県としても、その危機感というものを南海電鉄にぶつけていただきたいと思います。
 「読売新聞」も、2014年5月19日に「橋とトンネルの点検を着実に」と題した社説を掲載されていました。その中で、この国交省の老朽化鉄道施設の長寿命化対策について、「政府、自治体は、老朽化対策の財源確保や民間企業との連携強化に工夫を凝らす必要がある」とし、「国や企業の技術者を人材難の自治体に派遣し、高度な技術を要する点検、修繕を代行させる仕組みが考えられないか」と訴えておられたことを申し添えておきます。
 3点目に、JR総研、すなわち公益財団法人鉄道総合技術研究所も、「鉄道構造物の維持管理に関する最近の研究開発」という鉄道総研報告の中で、設計耐用年数を超えた橋梁の延命化、リニューアル化は喫緊の課題だと捉えています。団塊世代の退職以降、鉄道の維持管理を支えてきた熟練技術者不足がいよいよ顕在化しており、少ないリソースで効果的に質の高いメンテナンスを行うためのモニタリング等、技術開発が望まれていますが、南海電鉄の定期検査においても、95歳の下り線でも将来的に安全性に懸念が出てきそうな中、建設後114年の上り線においても逐次衝撃振動試験や深浅測量等の実地踏査が行われた上で安全性が確保されているのでしょうか、企画部長、御答弁お願いします。
○議長(尾﨑太郎君) 企画部長。
  〔髙瀨一郎君、登壇〕
○企画部長(髙瀨一郎君) 南海電鉄によりますと、平成24年3月に上下線ともに深浅測量及び健全度判定試験を実施し、その後は、水流の影響の強い上流側に位置する下り線の検査をすることで安全性が確認できているとのことであります。
○議長(尾﨑太郎君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 南海本線紀ノ川橋梁における南海電鉄の現状維持方針を支えているのは鉄道総研の理論が根拠だと思いますが、紀の川にいつ自然災害、すなわち大地震や津波、また豪雨による洪水が発生するやもしれません。自然の猛威というものもあわせて十分に考慮いただきたいと思います。
 4点目に、紀伊中ノ島駅と六十谷駅間をつなぐJR阪和線の紀ノ川橋梁は、1930年(昭和5年)ごろ架橋されましたが、紀の川大堰の完全運用のために2009年(平成21年)にかけかえられました。このJRの新しい紀ノ川橋梁と現存する南海本線紀ノ川橋梁との安全比較も当然必要になってくると思いますが、それについてのデータは県として把握されているのでしょうか、企画部長、お答えください。
○議長(尾﨑太郎君) 企画部長。
  〔髙瀨一郎君、登壇〕
○企画部長(髙瀨一郎君) 両橋梁を比較するようなデータにつきましては県では把握しておりませんが、JR西日本によりますと、同社の紀ノ川橋梁につきましては、巨大地震においても安全性が確保できる設計になっていると聞いております。
 また、南海電鉄につきましては、公益財団法人鉄道総合技術研究所の検査や、2年ごとの定期検査等においても安全性の確保が確認できていると聞いております。
○議長(尾﨑太郎君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 紀の川大堰の上流にあるJR阪和線紀ノ川橋梁と、大堰のさらに下流にある南海本線紀ノ川橋梁とでは、大堰の効果的な運用によって大いに条件は異なってくるとは思いますが、JR橋梁のほうは上流からの河川の増水を直接受けますし、南海橋梁のほうは増幅した津波を直接受けるわけであって、どちらも大きな衝撃に見舞われることになります。県として、両橋梁の強度、そして安全性のデータは、しっかりと把握しておいていただきたいと要望します。
 5点目に、平成27年6月から、南海電鉄は和歌山県出身の遠北光彦氏が社長に就任されています。先日、「産経新聞」に社長のインタビュー記事が掲載されておりました。「鉄道事業が根幹であることは間違いない。安全性に対するお客様の絶対的な信頼感を得る」と言っておられましたが、それならば、県当局として、遠北社長の紀ノ川橋梁に対する思いと今後の安全対策を聞かれておりませんでしょうか、企画部長、お答えください。
○議長(尾﨑太郎君) 企画部長。
  〔髙瀨一郎君、登壇〕
○企画部長(髙瀨一郎君) 社長からは直接お聞きしておりませんが、南海電鉄に確認したところ、2年ごとの定期検査や適宜の健全度判定試験などにより現状の性能を確認し、必要に応じて対策を講じていく方針であると聞いております。
○議長(尾﨑太郎君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 遠北社長は和歌山県人でもありますし、「産経新聞」のインタビュー記事でも、本県への強い思い入れを感じさせてくださいました。あの和歌山市駅の再開発事業の本格化は、その最たるものだと思います。知事を初め県当局の皆様には、遠北社長にお会いされる機会も少なくないでしょうし、くれぐれも南海鉄橋の安全性と将来のかけかえについては、よろしく御議論いただきたいと思います。
 6点目に、紀の川は紀の川大堰があるとはいえ、洪水の危険あるいは河口からの津波の危険にも常にさらされている1級河川であります。国も治水対策にいろんな施策を打たれていると思いますが、紀の川の河川整備に合わせた紀ノ川橋梁のかけかえの可能性を探ってみていただきたいと思うのですが、県土整備部長、いかがですか。
○議長(尾﨑太郎君) 県土整備部長森戸義貴君。
  〔森戸義貴君、登壇〕
○県土整備部長(森戸義貴君) 南海本線紀ノ川橋梁の河川整備に合わせたかけかえの可能性について、お尋ねをいただきました。
 紀の川におきましては、昭和34年に戦後最大となる伊勢湾台風による洪水で甚大な被害が発生をしてございます。こうした洪水を契機といたしまして、国では、沿川地域の安全性を確保するため、洪水調節施設である大滝ダムや河川のボトルネックを解消する紀の川大堰を完成させるなど、計画的に河川整備を進め、平成28年度には岩出狭窄部対策が着手されてございます。
 議員から御質問のございました河川整備に合わせた紀ノ川橋梁かけかえの可能性についてですが、当該橋梁付近は、紀の川水系河川整備計画におきまして、その整備目標となる伊勢湾台風規模の洪水に対しまして水が流れる河川断面を十分に確保していることから、河川整備を要する箇所として位置づけておらず、必要となる狭窄部対策や堤防整備等の治水対策を引き続き実施していく旨、河川管理者である国土交通省より聞いているところでございます。
○議長(尾﨑太郎君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 私も、わらをもすがる思いで、河川整備のほうからの紀ノ川橋梁のかけかえの可能性について、あえて質問してみました。河川整備基本方針策定に当たっては、河川整備基本方針検討小委員会に知事も委員として入っておられますし、基本方針のもとでの河川整備計画でも関係自治体からの意見聴取が実施されます。その都度、本県のかけがえのない公共交通手段である南海本線紀ノ川橋梁の安全確保について、しっかり訴えていただきたいと思います。
 7点目に、先ほど来、国の取り組みもあわせて尋ねてまいりました。南海電鉄も2年ごとの定期検査や随時の補修、地震対策を実施しておられるとはいえ、何と築114年でも現役ばりばりで働いている大型鉄道橋でありまして、鉄道総研の指摘が示すように、特に大災害時に決して安心はしてはおれない南海本線紀ノ川橋梁であります。
 大手鉄道会社も、橋のかけかえとなると予算も大きくなるので極めて慎重なのが現実だと思いますが、やはり県民を初めとする鉄道利用者の生命にかかわる大きな公的な問題であります。鉄道事業者はもちろんですが、国への働きかけ、それに伴う県市の応分の負担というものも考えていただかなければいけない時期に来ているのではないかと思いますが、南海本線紀ノ川橋梁のかけかえについて、知事の御所見を伺います。
○議長(尾﨑太郎君) 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 鉄道の安全性確保につきましては、鉄道事業者が責任を持って行うべきことであり、それを確認する権限は国にありますけれども、県にはありません。とはいえ、無関心ではいられないということであろうかと思います。
 以前、南海電鉄が紀ノ川橋梁の安全性を確保することができなくなるので、和歌山市駅まで鉄道を運行することをやめて紀の川北岸でとめるということを考えてるらしいという──そんなことあるかというふうに思ったんですが──そういう話が流布したことがありました。
 しかしながら、現在、そんなことはうそであったということは、南海電鉄が和歌山市駅を再開発して、それでがんがんやっていくんだというふうに考えていることからも明らかでありまして、それならば、紀ノ川橋梁の安全性というのは、きちんと守らなきゃいけないし、また守っていく自信があるんだというふうに考えても、そうおかしくはないというふうに思います。
 ただ、県としては、県民の命と安全にかかわる大変重要なことでもあることから、今後も引き続き、南海電鉄とか国土交通省と積極的に情報交換を行って紀ノ川橋梁の安全性の確認を行ってまいりますけれども、そのように努力していきたいと思います。
○議長(尾﨑太郎君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 鉄道総研の構造物技術研究部長も、「鉄道は、設計耐用年数を超えた橋梁やトンネルなどの老朽構造物を数多く抱えている。橋梁は、道路における平均経過年数が30年弱であるのに対して鉄道では60年であり、鉄桁に限れば、平均的取りかえ時期である70年を超えるものが約2万5000種にも及ぶ」としています。南海本線紀ノ川橋梁は、平均的取りかえ時期を44年も超えているのであります。和歌山市駅がリニューアルに取りかかり、周辺の再開発が進められようとしているこの時期に、県民として、市民として、次に一番気になるのは、誰の目にも南海鉄橋であります。
 最近、大きなスーツケースを持った海外からの観光客も南海電車の中でよく見かけます。市駅周辺が整備されれば、観光客だけでなく、泉南を中心に再び大阪府民ももっと南海電車を利用して本県に来られることと思います。知事におかれましては、和歌山県民が不安を一掃して心置きなく京阪神へ通勤・通学、そして遊びに行けるよう、また、たくさんの観光客を安心して和歌山県に招き入れられるよう、南海電鉄に、そして国土交通省にも、南海本線紀ノ川橋梁のかけかえについて強く求めていっていただきたいとお願いして、要望とさせていただきます。
 2点目に、葛城修験二十八宿についてであります。
 大峰山と並ぶ修験道の聖地葛城山は、大阪・和歌山府県境を東西に連なる和泉山脈から北上して奈良・大阪府県境の金剛山地へと連なる峰々の総称です。全行程は28里、約112キロあるそうです。この山系には、古く奈良時代の修験道の開祖役行者、すなわち役小角が約1300年前に国家安泰のために法華経八巻二十八品を埋納したとの伝承による経塚があり、葛城二十八宿と呼ばれています。
 西は和歌山市加太の友ヶ島・序品から犬鳴山・第八品、和泉葛城山・第九品、牛滝山・第十品、岩湧山・第十五品を経て、金剛山頂・第二十一品に至り、北上して大和葛城山から二上山・第二十六品、そして、大和川沿いの亀の瀬・第二十八品に至るまで、経塚や行場が連なっています。このルートに沿って葛城修験の中心寺院である犬鳴山七宝瀧寺、金剛山転法輪寺を初め、根来寺、粉河寺、槇尾山施福寺、當麻寺などの多数の霊場寺院や神社があります。歴史は大峰山よりも古いです。
 行場の麓に至るまではサイクリングも楽しめますが、やはり修験道の行場でかなり険しいところもあり、ポイントを決めた登山・ハイキングとしては、歴史をたどりながらの比較的健脚な方向けの観光としてはおもしろいコースだと思います。
 先週、和歌山市と岬町の府県境にある大福山と俎石山に登ってきました。午前10時に和歌山市直川墓ノ谷入り口を出発、早速大小のチョウチョウがたくさんお出迎え、椎の木地蔵尊から田畑の周りに建てられたイノシシ用柵の前を通り、墓ノ谷の在所を抜け、そして大福山辯財天上り口とある小川地蔵尊から参道に入ります。途中、上から落ちてきたと思われる大き目の石だらけの道、割谷弁財天女のほこら、また、コケむしたかなり時代物の石垣があり、西谷の池左側の道からは急な上り坂の連続、八王子神社跡あたりからは、ゼイゼイ言うくらいのつづら折りの急な坂が延々と続きます。
 最初、奥辺峠に到着すると、道中安全地蔵尊があって、ベンチやテーブルが置かれた道しるべにたどり着きます。ササユリが咲いてとてもきれいで、疲れた心と体を癒してくれます。ペットボトルのお茶も無性においしく感じました。「スズメバチ注意」、「マムシ出没足元注意」の表示がありますが、しばらくなだらかな登山道で息を吹き返しました。道の両脇にはイノシシが掘り返した跡があり、何となくけもの臭もしてまいります。頂上手前右側に大福山と書かれたほこらがあり、石仏が安置されています。ようやく、はるか和歌山平野が望めてまいります。
 11時35分に大福山頂上へ到着、第三経塚がありました。標高427メートルで「大福山」というがっちりした石柱があります。その横に「妙経 譬喩品第三之地」と記された碑が立ってあり、ほこらが2つあって、1つには弁財天像が安置されています。左手には紀の川、第一経塚のある友ヶ島、その向こうに淡路島が望め、右側の眺望には多奈川の発電所が見えます。そして、1キロ先の俎石山までの道中に、もともとの第三経塚跡を探し当てました。大きな石の集まりがほぼ1カ所にまとまって存在しており、お札が挟み込まれていました。岬町淡輪地番の俎石山頂上からは、関空も望み見ることができました。途中、ササユリがところどころに咲いていますが、イノシシのふんらしきものも見かけました。
 12時40分に帰路につきましたが、頂上をおりかけて間もなく、黒い動物が前方10メートル先を突然通り過ぎてどぎもを抜かれました。墓ノ谷入り口付近までノンストップでおりて出世不動明王にお参りしましたが、きれいな池には小魚が泳ぎ、その奥には滝があって、水を勢いよく落としていました。14時に車をとめてあった入り口に到着という約4時間の葛城修験第三経塚、大福山登山でありました。
 道すがら、3人の年配の女性グループ、単独の登山客で男性が2人、女性が1人、そして、親切に問いかけに答えていただいた関西電力の職員さんに出会ったくらいでした。桜の時期には、山桜がとてもきれいな山域です。俎石山から鳥取池を経由して2時間かければ、和歌山市の最高峰490メートルの雲山峰にもたどり着きます。葛城修験道のルートには、こんな手ごろな登山・ハイキングコースもあります。もっと広報できれば、たくさんの健脚な観光客の皆様にも訪れてもらえるのではないかと改めて感じた次第です。
 京奈和自動車道の和歌山県内全面開通によって、奈良県の大峰山へもさらに短時間で行けるようになりました。大峰山の麓の吉野郡天川村洞川へ至る道路は絶好のサイクリングコースですし、洞川温泉郷周辺はきれいに観光地化されています。この一帯は、1936年に吉野熊野国立公園に指定され、1980年にはユネスコの生物圏保護区に登録、さらに2004年、ユネスコの世界遺産に紀伊山地の霊場と参詣道の文化的景観を示す主要な構成要素として、史跡大峯山寺、史跡大峯奥駈道ほかが登録されました。
 大峰山山上ヶ岳へ登る山道も一部険しい行場もありますが、登りやすいように階段や手すりロープもつけられたりして、「ようお参り」と声をかけ合う登山客が冬季以外は朝晩を通じてひっきりなしであります。葛城修験二十八宿も登山・ハイキングに訪れる方々のために、安全面の配慮、また観光地としての整備について、関係市町村と連携のもと環境整備に当たってもいいのではないかと思います。
 そこで質問ですが、友ヶ島から始まる葛城修験二十八宿は、和歌山県、大阪府、奈良県にまたがり、和歌山県側にも幾つも経塚があります。役行者がたどった歴史の経路を歩いてたどってみる、日帰りでも宿泊でも楽しめる、同じ修験道の行場でもある大峰山登山とはまた趣の違った、和歌山県ならではの山岳信仰にまつわる広域の観光PRをしてみたらと思いますが、商工観光労働部長に御所見をお伺いいたします。
○議長(尾﨑太郎君) 商工観光労働部長山西毅治君。
  〔山西毅治君、登壇〕
○商工観光労働部長(山西毅治君) 議員御提案の葛城二十八宿につきましては、豊富な歴史、文化を持つ本県の観光にとって、県内周遊を促進させる上で魅力ある素材の1つであると考えます。一方で、二十八宿の経塚をたどるルートは修験の道であり、観光目的で訪れる一般の方にとって危険なポイントも多いと聞いております。
 現在作業を進めている「わかやま歴史物語」は、本県の豊富な歴史・文化遺産と食や体験などを組み合わせた旅の楽しみ方を「100の旅モデル」として提案するものでございます。役行者を題材としたこの葛城二十八宿のうち、観光客の安全・安心が確保できる部分につきましては、楽しんで周遊していただけるルートとして、それに組み込んで広く国内外に情報発信をしていきたいと考えております。
○議長(尾﨑太郎君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 葛城修験の28カ所の経塚とその周辺を含めて踏破するだけで、役行者にまつわるかなりのボリュームの歴史物語ができるのではないかと思います。また、同じ修験の道大峰山が世界遺産に登録されているのであれば、葛城修験二十八宿もまずは日本遺産に、やがて紀伊山地の霊場と参詣道の範囲を広げて世界遺産への登録も考えてみてもいいのではないかと思います。歴史物語をつくるためには、地元の方から伝承されているお話もお聞きしながら肉づけをしていくことも必要だと思います。
 葛城二十八宿は、まだまだ知る人ぞ知る程度で世間の目に余り触れていませんし、ネットや広報チラシやマップ等で情報発信していけば、同じ山岳信仰の熊野地域とともに、全国からも大きな注目が集まるルートではないかと思います。今後、観光面からもPRのほうよろしくお願いいたします。
 また、墓ノ谷から大福山、雲山峰に至る由緒ある歴史の地のあたりに、大規模な太陽光発電施設設置計画、これがあるとのこと。これにも県としても十分慎重に対処をいただきたいと、あわせて要望させていただきます。
 3点目に行きます。
 新学習指導要領実施に向けてであります。
 平成32年より小学校から順次実施される小中高校などの新学習指導要領が、本年3月31日、文部科学省告示として公示されました。知識と思考力はともに重要だとして、今の学習指導要領の学ぶ内容は減らさないかわりに、何を学ぶかに加えて、どのように学ぶか、何ができるようになるかといった視点で見直すことを求めています。
 その中で、昨年12月21日の中央教育審議会答申にあった「アクティブ・ラーニング」という表現がなくなり、「主体的・対話的で深い学び」といった表記が使われています。内容は、やはりグループで議論をしたり、議論の結果を発表したり、さらにディベートや調査学習を盛り込むことで、児童生徒が主体的に学ぶことに重点を置いた授業を行うといったことであると思います。
 文科省は、パブリックコメントでの回答の中で、「義務教育においては、新しい教育方法を導入しなければと浮き足立つ必要はなく、これまでの蓄積を生かして子供たちに知識を正確に理解させ、さらにその理解の質を高めるための地道な授業改善が重要である」と言われています。しかし、教育の現場サイドでは、これまでの授業のやり方を大きく見直さなければいけなくなって、教員の意識改革も必要になってくるかもしれないし、そこで、今でも多忙な教員の心理的負担もふえるのではという懸念もあるように伺いますが、県教育委員会として、教員の研修を含めどのように対応していかれるのでしょうか、教育長にお伺いいたします。
○議長(尾﨑太郎君) 教育長宮下和己君。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 今回の学習指導要領の改訂では、知識の理解の質を高め資質・能力を育む「主体的・対話的で深い学び」がポイントの1つとされております。また、これまでの教育実践の蓄積に基づく授業改善により、子供たちのこれからの時代に求められる資質を育んでいくことなどが重要であるとされております。
 県教育委員会では、これまで県内全ての小学校の教員及び中学校国語科、数学科教員を対象にした授業改善研修や学校訪問を初め、さまざまな機会を通じて学習指導要領の改訂を踏まえた授業改善を図るよう具体的に指導してまいりました。昨年度は、新学習指導要領の趣旨に沿った国語科授業の映像つき事例集を作成し、各小中学校においてそれを活用した研修を行ってきました。
 また、現在、新学習指導要領の解説が順次公表されているところです。今年度は趣旨・内容の周知徹底の年となっており、教職員一人一人に伝わるよう、この7月から小中学校長や教員を対象にした説明会を実施いたします。新しい学習指導要領の実施に対する教員の不安を払拭し、適切に対応できるようにするためにも丁寧に説明を行い、各学校における新たな教育課程の編成を支援してまいります。また、教育センター学びの丘においても、来年度から新学習指導要領に対応した授業づくりに向けた研修を充実させてまいります。
○議長(尾﨑太郎君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 主体的・対話的な深い学びによって、子供たちが丸暗記、一夜漬けのような勉強法から脱却して、まさに自主的な学習ができるようになることを期待するものであります。
 次に、小学校では、道徳が平成30年度から特別教科化されることに加え、英語が5年生から正式な教科として始まります。もっとも、聞く・話すを中心に英語になれ親しむための外国語活動が3年生と4年生に前倒しして行われます。また中学校でも、高校と同様、英語の授業は原則英語で行うことになりました。このような科目を教員が教えるに当たって、教員の指導力の向上も問われてくると思いますが、県教育委員会はどのように考えておられるのか、教育長にお伺いいたします。
○議長(尾﨑太郎君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 小学校では、平成30年度から道徳の時間が「特別の教科 道徳」になります。本県では、平成25年度から実施している各学校の道徳教育推進教師を対象とした研修会や先進的な取り組みの普及などを通して、教員の指導力の向上に取り組んでまいりました。
 また、平成26年度から、本県独自の道徳教科書「心のとびら」、「希望へのかけはし」を小中学校に配布し、小学校4年生以上の各学年で年間5教材以上の活用を徹底してまいりました。平成30年度以降も、本県独自の道徳教科書を引き続き活用してまいります。
 次に、平成32年度からの外国語の教科化につきましては、平成27年度から4年間をかけて、全ての小学校の英語教育の中核となる教員を対象に新学習指導要領を見据えた研修を行っております。研修を受けた教員は、各校の全ての教員に対して学んだ指導法等を伝達し、定着を図っているところです。
 7月には、管理職を対象とした説明会を実施し、総則と教科となる道徳及び外国語について、趣旨・内容の周知徹底を図り、各学校で準備を進めるよう指導してまいります。
○議長(尾﨑太郎君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 そもそも、大津市のいじめによる中学生の自殺事件をきっかけに、規範意識を学ばせることが必要だとして道徳が教科化されたのでありますが、道徳を教員が実際指導する際に、どうしても教員個人の倫理観、価値観というものが出てきて、子供たちに偏りのない指導ができるのか、また記述式評価にしても、先生ごとにばらつきが出てこないかと憂慮しております。文科省が目指す「考え、議論する道徳」の実現によって、いじめのような問題がなくなるよう、県教育委員会の熱心な御指導を期待しております。
 3点目に、高校においては必修科目の世界史を廃止して、新たな必修科目として、近現代を中心に日本史と世界史を合わせた「歴史総合」を設けるほか、18歳選挙権の導入を踏まえて、社会に参画するのに必要な力を育てる「公共」の新設など、主要教科が大幅に再編されるかもしれないと伺っております。
 従来より高校において近現代史の授業というのが、時間的な制約もあるのか手薄であった気がします。戦後72年も経過し、政治においても経済においても、日本国は、そして日本人も国内外の大きな歴史のうねりを経験してきました。新学習指導要領も数年後には順次実施されるこの機会に、今後の日本の進路を考える意味でも、近現代史教育にも重きを置いていくべきだと考えます。近現代史の教育について、教育長の御所見をお伺いいたします。
○議長(尾﨑太郎君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 現行の高等学校学習指導要領における近現代史につきましては、全ての生徒が学ぶ「世界史」と選択科目である「日本史」において、我が国の近現代の歴史の展開を地理的条件や世界の歴史と関連づけ、歴史的思考を培い、国際社会に主体的に生きる日本国民としての自覚と資質を養うことを目標として指導してございます。
 しかしながら、近現代史が重要であるにもかかわらず、その学習の定着状況が低い傾向にあることなどが今回の学習指導要領の改訂の中で指摘されたこともあり、近現代史を学ぶ「歴史総合」が必修化されることになりました。
 「歴史総合」で扱われる近現代史は、グローバル化や持続可能な社会の形成、産業構造の変化、主権者の育成等の現代的な諸課題に対応する力を育む上でも大変重要な内容であると考えております。
 こうした観点を踏まえ、現状の授業においても近現代史の学習を充実させるよう、各学校を指導してまいります。また、今年度中に告示される新学習指導要領の趣旨や狙いを踏まえ、今後、県としての教育課程編成の方針を示し、伝達講習を初めとしてその周知徹底を図り、各学校で着実に実施するための準備を進めるよう指導してまいります。
○議長(尾﨑太郎君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 教育長のおっしゃるように、現代のグローバル化の中で近現代史をしっかり学ぶことによって、実社会に出ても主体性を持って生きていくことにつながるのだと思います。教科の再編が予想される中、本県におきましては、近現代史教育の充実について、どうかよろしくお願いいたします。
 4点目に、今後、小学校も学習指導要領の改訂によって授業時数が増加することになります。授業時間の新たな捻出というのは基本的に各学校に任されることになるのかもしれませんが、現実問題としてどのように授業時間を確保していくのか、県教育委員会の方針をお聞かせください。教育長にお伺いいたします。
○議長(尾﨑太郎君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 中学校では、現行学習指導要領から年間の標準時間数の増減はございませんが、小学校におきましては、3・4年生で外国語活動が、5・6年生で外国語科が導入されることにより、年間35単位時間ずつ増加することになります。
 小学校の35単位時間をどのように確保していくかについては、文部科学省から週に1単位時間をふやす、15分程度の短時間学習として実施する、長期休業期間中を活用する、それらを組み合わせるなどのモデルケースが示されております。
 県教育委員会では、これらの方法のメリット、デメリットを示し、各学校がそれぞれの状況に応じて適切に教育課程を編成できるよう、市町村教育委員会と連携して指導してまいります。
○議長(尾﨑太郎君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 授業時間の増加への対応ですが、今後、週5日制の枠の中で授業時数をやりくりしてふやすのか、長期休暇を短縮するのか、はたまた土曜日を活用するのか、いろんな選択肢が出てくると思います。児童にも教員にもできるだけ無理のない、そして、児童にとって実効性のある、身につく授業になるよう、県教育委員会の適切な対応を要望させていただきます。
 これで、私の一般質問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(尾﨑太郎君) 以上で、長坂隆司君の質問が終了いたしました。

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