平成29年2月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(中村裕一議員の質疑及び一般質問)


平成29年2月 和歌山県議会定例会会議録

第5号(中村裕一議員の質疑及び一般質問)


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  午前10時0分開議
○議長(浅井修一郎君) これより本日の会議を開きます。
 日程第1、議案第1号から議案第16号まで、議案第32号から議案第59号まで、議案第61号から議案第71号まで、議案第73号、議案第74号、議案第76号から議案第117号まで及び議案第119号から議案第126号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第2、一般質問を行います。
 16番中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕(拍手)
○中村裕一君 改めまして、おはようございます。
 本日は3月6日。桃の節句も過ぎました。いよいよ、これから春らしくなってまいります。私は、今の季節が一番好きでありまして、休眠している命が生き返ってくる、これから成長に向けてどんどんと芽を出してくるという大変すばらしい季節であります。
 しかし、四季は夏になり、秋になり、また冬になりというふうに回転をいたしております。我が和歌山県も、今、人口減少ということで大変心配をしておりますけども、未来永劫ずっと減り続けるんではなくて、必ずやまた発展、人口がふえるときが来ると思いますし、そういうふうにしなければいけないというふうに思っております。
 例えば、紀伊半島沖にはメタンハイドレートがあるわけでありまして、私はこの開発の仕方によっては紀伊半島沿岸もアラブ湾岸のようになるんではないかというふうに思っておりまして、私は、これは決して夢ではなくて、必ず実現をしていくべきものだというふうに思っております。そういう視点で、私は県政に取り組んでおります。
 通告に従いまして、一般質問を行ってまいりたいというふうに思います。
 まず、データ利活用について5点質問いたします。
 最初は、新政策です。データ利活用の推進が今回の新政策に盛り込まれ、県データ利活用推進センターを来年4月に設置する準備経費や、シンポジウム開催費用などを合わせて約8000万円が新年度並びに平成28年度補正予算に計上されました。
 総務省の統計局移転、これは中央省庁移転の成功例として大いに期待しているところでありますが、具体的に何をするのか。また、これまでの取り組みについて、企画部長に伺います。
○議長(浅井修一郎君) ただいまの中村裕一君の質問に対する答弁を求めます。
 企画部長髙瀨一郎君。
  〔髙瀨一郎君、登壇〕
○企画部長(髙瀨一郎君) 昨年9月に策定した和歌山県データ利活用推進プランに基づき、日本のデータ利活用拠点を構築するため、和歌山県データ利活用推進センター──仮称でございますが──の開所に向けた整備や重要性、有用性を全国に発信するためのシンポジウムの開催、高校生、大学生等を対象としたコンペティションの実施等に取り組みます。
 また、エビデンスに基づく行政を推進するため、公募型研究事業を実施するほか、県内産業の活性化を図るため、地域経済分析システム(RESAS)等のさまざまなデータによる企業支援や企業向けセミナーの開催にも取り組んでまいります。
 さらに、県民の統計リテラシー向上のため、小学生向け統計データ利活用冊子の作成や教員向け統計教育研修の実施に取り組むなど、全庁を挙げて産学官全てにおけるデータ利活用を推進してまいります。
 なお、これまでの取り組みにつきましては、和歌山県統計大会や小中学校向け出前授業を開催するとともに、本県の取り組みに対して助言をいただくため、近畿圏及び全国の有識者とのネットワークを構築したほか、来年度実施する事業の準備等についても鋭意進めてきたところです。
○議長(浅井修一郎君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 次は、大学についてであります。
 経産省は、人工知能やIoTによるトータルの経済価値は、将来、日本経済の4倍もの規模になると予測しています。物づくり分野だけでも、日本のGDP4.1兆ドルに匹敵する3.9兆ドルもの変化が起きるそうです。
 そして、現在進行する第4次産業革命において日本が世界をリードしていくためには、出おくれたバーチャルデータ分野よりも日本が強い分野、すなわち個人の健康データや車の走行データ、工場の稼働データといったリアルデータの分野に特化し、日本の社会と企業の強みを生かして、集めたデータを社会にうまく還元し、課題解決ができれば、日本が世界のプラットホームになることも夢ではなく、データ利活用を社会課題の解決や新サービス創出につなげたいとしています。
 実は、本県も、統計局の誘致によりまして、今まさにその門口に立っているのだと思います。しかし、県で策定したデータ利活用推進プランが指し示す方向には間違いはありませんが、データ利活用が我が県にとって本当にありがたいものにするためには、大学の設置や産業化こそが必要だと考えます。プランには、その点が弱いのではないでしょうか。
 大学の設置については、県のこれまでの説明によると、和歌山大学でデータサイエンス人材の育成に向けた検討が始められているとのことでした。しかし、今春、既に滋賀大学にデータサイエンス学部が設置されました。私は、データ利活用は統計局の誘致で何となく他府県をリードしているのかと思っていましたが、どうも現実はそんなに甘くはありません。滋賀大学の新学部創設の新聞広告を見て目が覚めました。
 滋賀大学では、データサイエンスとは、社会にあふれるデータから価値を引き出す学問と規定し、ICT(情報通信技術)の進化した時代では、あらゆるビジネスや医療、教育、行政などにおいて、高度なデータ処理能力、データ分析力が必要となるので、そのスキルを身につける教育を行うとうたっています。
 そもそも大学は、単なる教育機関ではなく、研究者でもある教員が世界中から集まる研究機関、シンクタンクでもあります。同時に、全国から集まった優秀な学生を、卒業後も教員や研究者として、また一部は企業や役所への就職、みずから起業などで大学周辺に残させる人材定着機関でもあり、その人材が持つ技術や知識が発明、発見につながり、さらに産業振興につながる地域活性化機関でもあります。つまり、起業や産業が興る一番おいしいところが大学だと思います。この千載一遇のチャンスに大学をつくらずして何をするのかと申し上げたい。
 ちなみに、新長期計画には反省点として、本県の起業率が平成26年度で4.2%と全国最下位であったことを指摘し、その原因が県の努力不足だったと分析していますが、本当は本県には起業する絶対数が少ないからで、もっと突き詰めれば、起業する人材を養成する大学がないからだと私は思っています。
 県では、西日本、いや、日本のデータ利活用のメッカを目指すという高い目標を掲げていますが、それなら、大きな推進力となる大学や学部、学科はつくらないのでしょうか、企画部長に伺います。
○議長(浅井修一郎君) 企画部長。
  〔髙瀨一郎君、登壇〕
○企画部長(髙瀨一郎君) データの価値や重要性がますます高まっている中で、データを高度に分析し、新たな価値を見出す学問であるデータサイエンスは、日本全体で今後ますます活用の場が広がっていくと考えられており、有望な分野であると見込まれます。一方、県が設置主体となってデータサイエンスに関する大学、学部、学科を新設することは、県財政に与える影響など、大変難しい課題があります。
 そのような中、本県としては、県内唯一の総合大学である和歌山大学に対し、データサイエンス教育の強化を働きかけてきたところであり、和歌山大学においても検討が進められていると聞いております。県といたしましては、今後も引き続き和歌山大学に対して強く働きかけてまいります。
○議長(浅井修一郎君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 次は、がんの最先端医療について。
 データ利活用は、あらゆる場面で進行しています。昨年11月、NHKでがん治療の革命として、国立がん研究センターなどで研究が進められているプレシジョンメディシンが紹介されました。
 プレシジョンメディシンとは、精密医療とも訳されますが、患者の遺伝子情報を解析してオーダーメードの医療を行うというもので、番組では、がん治療に苦しむ患者がプレシジョンメディシンを受けて、がん細胞の43%が縮小したという驚きの事例が紹介されていました。プレシジョンメディシンは、アメリカでは前大統領の時代から国家戦略と位置づけられ、最先端医療技術分野で世界をリードし、産業振興につなげるとともに、増大する医療費の削減を目指しています。
 さて、その際、遺伝子解析に用いられるのがAI(人工知能)であります。IBMが開発した人工知能システム・ワトソンは、過去の医療データや論文など膨大なデータベースの中から、患者に最も適切な治療方針や薬についての情報を提案してくれる大変便利なシステムです。まさにデータ利活用の最たるもので、去る2月5日の「読売新聞」によりますと、我が国でも公益財団法人がん研究会がこの人工知能を活用するプロジェクトを始め、2021年までに実用化を目指すとのことであります。
 このプロジェクトのように、がん治療の分野においてもデータ利活用が重要になっていますが、県として今後どのように取り組むのか、福祉保健部長に伺います。
○議長(浅井修一郎君) 福祉保健部長幸前裕之君。
  〔幸前裕之君、登壇〕
○福祉保健部長(幸前裕之君) がんの最先端医療でのデータの利活用についてですが、がんに関する治療については、議員の御質問にありましたとおり、国立がん研究センターなどで遺伝子情報データを活用した治療法の研究が最先端のプロジェクトとして進行しており、その成果が期待されるところです。今後、人工知能に関する研究が進めば、がん治療に係るデータの利活用はさらに促進されると考えており、その動向を注目してまいります。
 一方、県におけるがん対策としましては、がん登録等の推進に関する法律に基づき、平成28年1月から、全ての病院からがんの罹患に関する情報を収集しているところです。今後、がん登録情報が蓄積されることから、がん医療の質の向上等を図るため、医療機関等への情報提供を行うとともに、県においてもデータ分析を進め、効果的にがん対策に活用してまいります。
○議長(浅井修一郎君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 次は、宇宙衛星について。
 時に森林県と呼ばれる本県ですが、森林の様子は樹種、樹齢などに分けて森林簿により把握しています。しかし、長い期間にデータが微妙にずれてきており、全面改訂には、従来の測量方法では10億円以上もかかると言われており、今後は衛星によるデータ解析が期待されています。
 このような人工衛星を用いて宇宙から地球表面の情報を収集、解析する技術をリモートセンシングといいますが、今日では軍事目的以外にも気象など民生、科学目的でも幅広く利用されています。
 そして、その研究センターが本年2月9日、山口県に設立されました。山口大学応用衛星リモートセンシング研究センターであります。設立に当たり、同研究センターの三浦センター長は、衛星リモートセンシングを用いて地球規模のさまざまな課題に貢献していきたいとの抱負を述べました。
 同日、JAXA西日本衛星防災利用研究センターも山口県産業技術センターに設置されました。さすが総理を選出する県と思いますが、この仕事は宇宙基本法制定など、自民党の宇宙政策の責任者、河村建夫元官房長官の主導で進められました。開所式には、鶴保庸介大臣のメッセージが届きました。同様の衛星リモートセンシングセンターは、福井県にも設置の動きがあるそうです。
 本年は、国産GPSともいうべき準天頂衛星が3機打ち上げられ、4機体制になることから、24時間365日休むことなく、ビルの陰に隠れることもなく、5センチの大きさまで判別できる画期的な利用環境が整います。関連する地上の情報網である5Gの整備につきましては、今般、藤山議員が取り上げます。
 現在、本県では、衛星リモートセンシングは既に準備されており、国土交通省が和歌山大学災害科学教育研究センター・秋山演亮教授とともに、紀伊山地の山腹にセンサーを設置し、衛星通信により崩壊情報を収集し、深層崩壊を事前に察知すべく研究を進めています。
 そこで、本県でも、データ利活用政策の一環として、防災情報を初め衛星を通じて情報を収集するリモートセンシングセンターを和歌山大学などに設置すべきだと考えますが、どのような見解か、商工観光労働部長に伺います。
○議長(浅井修一郎君) 商工観光労働部長岡本圭剛君。
  〔岡本圭剛君、登壇〕
○商工観光労働部長(岡本圭剛君) 議員御指摘の人工衛星を使ったリモートセンシング技術は、災害監視や森林管理など多くの分野においてその活用が見込まれている技術であり、本県においても同様の分野において活用が期待されるものと考えています。
 県では、これまで人工衛星等を利用した新たなビジネスの可能性を探るため、航空・宇宙分野の専門家である和歌山大学の秋山教授の協力を得ながら、航空・宇宙産業に関心を持つ県内企業とともに、産官学連携による勉強会を開催してきたところです。
 リモートセンシングセンターが県内に設置されることになれば、防災を初めとした多くの分野への活用が考えられます。さらには、その技術開発に県内企業が参画することができれば、新しい産業の創出にもつながるものと期待しております。これまでも航空関連産業の企業等の誘致を推進してきたところであり、リモートセンシングセンターを初めとした航空・宇宙分野の施設等の誘致や当分野の技術開発の支援についても、積極的に推進してまいりたいと考えております。
○議長(浅井修一郎君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 今御質問申し上げましたようなデータ利活用はさまざまなところで進んでおるんですが、私は、そういったものを総合的に捉えた戦略が必要ではないかと思って知事に伺いたいと思います。
 1月20日、自民党県議団で重機メーカー・コマツのIoTセンタを視察し、スマートコンストラクションについてのお話を伺ってきました。
 工事現場をドローンを使って測量し、その3Dデータをコンピューターが読み込んで設計、積算し、さらにそのデータを読み込んだICTユンボやブルが工事を行うという、これまた画期的な工事方法で、新人でもベテラン技術者やベテランオペレーターと同様の土木工事を完成することができます。国土交通省は、新年度で技術の普及を目指し、スマートコンストラクションの工事を発注すると聞きました。
 現在、そのほかにもデータ利活用はさまざまなところで実施されております。新人のタクシードライバーがベテランドライバーと変わらない売り上げを上げることができた事例や、イチゴ農家の農作業の効率アップ、高齢者介護の現場などがテレビで紹介されました。
 さて、このような新しい潮流の中で、県では、今後のデータ利活用推進については先般策定した推進プランにより実施することとしていますが、昨年末の国会では官民データ活用推進基本法が成立し、都道府県に官民データ活用推進計画の策定を義務づけました。つまり、今後は全国的にデータ利活用は進むわけであり、全国と同じようなことをやっていたのでは、統計センターを誘致した効果が薄れるのではないかと心配します。むしろ、全国に先駆けて大学設置などの人材育成や研究者招聘、研究水準向上、新事業創出など、経済成長につながるような骨太の戦略が必要だと思いますが、知事の御所見を伺います。
○議長(浅井修一郎君) 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 滋賀大学のデータサイエンス学部の話が提起されておりましたが、実は、私はあれを知ったときは大ショックでありまして、統計局の誘致を一生懸命やっておりましたんで、これは大変だというふうに、はっきり言って思っておりました。この分野の重要性に目をつけたのが、大学では滋賀大学、都道府県では和歌山県ということで、移転の審議のときに滋賀県が参入しておったら、ひとたまりもなかったなあというふうに思うところもあります。
 ただ、人頼み、大学頼みというわけにもいきませんので、大学にそういうものをつくってからということだったら、いつまでたっても時間がかかってしようがありません。したがって、現在の現有勢力の中で最善のことをやるしかないということであろうかと思います。
 そういう観点から、和歌山県データ利活用推進プランというのをつくりまして、いろいろ施策を中に入れております。
 特に、和歌山県データ利活用推進センター、これ名前が似てるのであれなんですが、「推進」がついておりまして、これは県の組織でございます。これは統計局の統計利活用センターを助けるものという位置づけでもありますけれども、この中に新たに研究者を招聘いたしまして、行政課題に関する研究とか、県内の高等教育機関におけるデータサイエンス人材の育成とか、あるいは民間企業等におけるデータ利活用の推進等に取り組むことなどをこのプランに書いてございます。
 それを実行すると。実行するんだけど、ばらばらに実行してるとなかなかぱっとしないので、このような組織と、それから新しく招聘された研究者、それから県からそこに派遣する若手を中心とする人材、そういうものが中心になって統計局を助けながら、和歌山県のこの分野の発展を図るということを今狙ってるわけでございます。
 データ利活用に関して、日本を代表する近畿圏と全国の有識者とネットワークを構築いたしまして、本県の取り組みに協力していただく体制は、これはもうつくりました。その中には、もちろん滋賀大学も入っています。さらに、自治体としては、これは初めてでございますが、独立行政法人統計センターとの連携協定を締結する方向で進めておりまして、少し今のところ全国に先駆けてこの分野について走っとるというのが和歌山県の現状ではないかと思います。
 ただ、おっしゃるように、この分野は、大変、言ってみれば最先端の部分、それからみんなが注目してる部分でございますんで、油断をしてるとあっという間に和歌山県だけがおくれてるということになったらいけないということでございます。したがって、定期的に取り組み成果の検証を実施し、施策の見直しとか新たな施策の立案等を行っていかなきゃいかんと思うし、そういう意味で、データ利活用の推進に関するさまざまな施策、そのうちの多くの部分は、今議員が挙げられましたけども、そういう点について幅広く検討して積極的にやっていかないといけない、そんなふうに思っております。
○議長(浅井修一郎君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 私は、人もお金もいろんなものが集まってくるのが大学だと思いますし、和歌山県の推進センターが、大学も含めていろんなものがどんどんと集まってくるような、そういうセンターになっていただいて、せっかく今はトップ近くにおりますから、このまま走り抜けられるようによろしくお願いいたしたいと思います。私たちも、ぜひ応援をさせていただきたいと思ってます。
 2つ目の大きな質問といたしまして、貿易立県という視点で4点質問いたします。
 まず、水産物の輸出について。
 昨日の自民党大会におきましても、安倍総理が地方創生の切り札として、引き続き農産物の輸出に力を入れていくとおっしゃっていました。まさに、我が意を得たりとの思いでありました。
 さて、私は昨年、県食品流通課、ジェトロ大阪本部のお世話で、香港、マカオの日本食事情を視察してきました。私の地元の協栄漁業の塩谷氏や松村氏が紀伊水道でとれるおいしいアジ、サバを輸出する研究を始めており、私も微力ながらお手伝いしたいと思っております。
 金持ち率世界第3位で、しかもほとんど輸入障壁がなく、ほぼ全ての食材が輸入されており、日本食が日常食になっている香港は、我が国の食品輸出の最大輸出国であり、どんな輸出業者もまずは香港から始めるべき登竜門のような大変ありがたい市場です。現在、中国経済の減速が心配されますが、香港の市場としての魅力は、今後いささかも失われることはないと聞きました。
 今回の視察は大変有意義で大いに勉強になりましたが、特に印象に残ったことが2点あります。
 まず1点目は、季節がちょうど秋だったこともあり、行く先々で和歌山県産の柿が出てきたことです。市場には県産のミカンも出回っており、知事初め食品流通課の皆さんの活躍の成果と、大いに感心した次第であります。
 もう1つは、マカオのIR、ギャラクシーにあるホテルオークラの日本料理店・山里の林料理長から、和歌山県産の新鮮な魚なら値段は気にしないので、どんどん送ってほしいとのお話をいただきました。京都出身の林さんは、来県されたことがあり、和歌山の気候や自然、文化を評価していただいた上でのお言葉かと思います。
 山里は高級かっぽうで、日本国内と同等の刺身などの料理が提供されています。私のこれまでの経験では、海外の日本料理店で出てくるのはサーモンばかりで、日本食ブームといっても、外国人は日本人が常食する近海物の本当のおいしい魚を知らないのではないかと感じています。近海物と同じ魚種は世界中でとれますが、海流が複雑に絡み合う海域でとれる旬の魚のおいしさは格別で、漁獲方法や締め方、流通方法などにおける我が国水産物のサプライチェーンは先進的で、ノルウェーは別にして、ほかではまねができない強みではないでしょうか。
 このおいしい日本の魚、和歌山の旬の魚を、四季を通じて世界の高級日本料理店に食材として、HACCPなど食品安全基準はもちろん、おいしさも脂肪分だけではなく、鮮度をあらわすK値、食味、食感などを考慮した供給体制ができないかと思います。
 水産物の輸出に関しては、有田市箕島漁港の成功例があります。地元の浅井議長のお話によると、10年ほど前からタチウオが韓国に輸出されるようになり、漁港で行われる入札価格が10倍に高騰し、市内の鮮魚店には出回らなくなったそうです。
 また、水産物の輸出は、このような価格効果だけではなく、輸出レベルの品質や流通などを目指すことで漁業者自身のレベルアップにつながり、国内への販売力強化にもなると思います。
 我が県は、県域の半分が海に面する海洋県です。水産物輸出に向けた県の漁業振興策について、知事に伺います。
○議長(浅井修一郎君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 御指摘のように、和歌山県は良好な海域に恵まれ、多種多様で新鮮な水産物が水揚げされておりますけれども、近年、国内消費の落ち込みとか魚価の低下等により漁業者所得は低迷しております。このため、水産物の輸出にも取り組んでいくべきものだと考えております。
 輸出の場合、一番大事なことは、相手国の市場でどうやって流通システムをつくるかということであります。そのときに、日本側では輸出採算リスクをみずからとって手続をちゃんとする者、それから、相手国でも同じく採算やリスクをとってその産物を引き取って相手国の流通に乗せる者、この双方が要るわけであります。魚の場合は、農産物の場合以上に、さらに鮮度保持とか輸送コストなどがちょっと大変、それから天然魚の場合は、ちゃんと注文出しててもとれるかどうかわからんとかそういうことがありますので、いろいろな困難な点はあると思います。
 でも、農産物でも一生懸命やっておりましたら、まだ十分とは言えませんけれども、だんだんとやっぱり前進することができるわけであります。そういう意味で、和歌山県産の魚の魅力を戦略的に相手国の消費者にPRする、そういうことは我々としても大いに大事だと思うし、それからさらに、先ほど言いました相手国の流通業者、これを何とか物にしなきゃいけないというのが、我々の目指すべきところだと思います。
 消費者にPRするためには、あるいは相手国の業者に納得していただく、あるいは武器を与えるという意味で、議員御指摘のような脂肪分とか鮮度とか食味とか食感などのおいしさを物語るような指標、そういうものの研究も必要だろうと思います。
 また、輸出とは違いますけれども、本年度の新政策として、南紀白浜空港等を活用して首都圏に水産物を販路拡大したい。そのためには、言葉以外の問題はほとんど同じような問題が、首都圏の流通をどうやって握るかとかございまして、そういうような中で輸出に関しても必要になるようなことが多く勉強できるんじゃないかと、そういうふうに思ってますので、今後、引き続き頑張っていきたいと思います。
○議長(浅井修一郎君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 どうぞよろしくお願いいたします。
 次は、ジェトロ事務所についてであります。
 香港でお世話になった田中部長から、全国的にジェトロの都道府県事務所の設置が進んでいるとのお話を伺いました。農林水産物を初め地方の特産物、中小企業の工業製品などの輸出、直接投資を通じてアジアなどの成長を国内に取り込むことは今や国策であり、地域振興のかなめであります。本県でも、平成29年度予算案に新政策として開設準備経費が計上されています。まことに時宜にかなったものと考えますが、その内容と目的、今後の展開について、ジェトロ・ミラノセンターに勤務された御経験のある知事に伺います。
○議長(浅井修一郎君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 私の経験でありますけれども、私がジェトロ・ミラノセンターにおりましたときも、全国の各県、特に地方県と言われているような県には、貿情センターを誘致するというのが結構はやっておったわけです。
 しかし、現実にはそのような県の海外活動の推進にそう役に立っとるかというと、あんまりそうでもないなあというふうに分析をしておりました。逆に言うと、そこに貿易情報センターというジェトロの支分所があるために、そこにばっかり頼って、それで全体のジェトロの機能からすると一部のものしか使えてないというようなこともあるので、和歌山県は大阪に近くて、大阪というのはジェトロ発祥の地でありまして、ジェトロ大阪事務所じゃなくてジェトロ大阪本部なんですね。大きな組織がありますので、和歌山県の職員には、ジェトロ大阪本部に頼るようにと、そこから情報をちゃんともらって、和歌山県の業者の方々にちゃんとそれをスイッチングするようにしてくださいというようなことをお願いして今までやってまいりました。
 しかし、ジェトロの貿易情報センター自体も随分進化してるわけでございます。職員もどんどん優秀になりますし、それから本部と、あるいは大阪本部と、それから貿情センターとの間の連絡もすごくよくなっておりますし、何よりも実はコンピューターシステムが整備されておりまして、海外のジェトロの事務所から寄せられた買い手情報、あるいは売り手情報、製品情報、そういうものがどっさり詰まったコンピューターシステムがあるわけです。それは、各地の貿易情報センターにみんな利用可能になった状態でありまして、例えば、何々を売りたいんですがというようなことを言ったら、この国にはこういう買い手がいますねと、関心のある人がいますよというようなことがすぐにわかるというようなことになります。
 そういう点では、今ややっぱり貿易情報センターの機能は和歌山県にとって大変大事になってきているということを気がつきまして、それで、そこから誘致活動を一生懸命やるようにしたわけでございます。もちろん、県も出さないといけないんですが、県のうちの一部は市町村も出してあげようということで協力体制ができておりまして、この貿情センターができますと、これを通じて、今申し上げましたような個別の商談だけじゃなくて、海外バイヤーとの面談の機会の増加とかセミナーの開催とか、そういうものが大きく利用できるようになるんじゃないかと思って期待をしているところでございます。
○議長(浅井修一郎君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 「こんにちは、こんにちは、世界の国から」、万博というと、まずこの三波春夫の歌と太陽の塔などの巨大なパビリオンが林立する風景を思い出します。当時、私は多感な小学5年生で、大阪万博の強烈な印象を今でも覚えております。現在では考えられませんが、外国人でさえも珍しく、出会った人にサインをお願いもいたしました。
 この大阪万博に出品し、その後に実現、普及したものはたくさんあります。例えば、動く歩道やモノレール、エアドーム、ウオシュレット、携帯電話、UFOキャッチャー、電波時計、原子力発電。食品では、缶コーヒー、フライドチキン、ハンバーガー、ファミレスなどです。
 大阪万博と東京オリンピックは、我が国の高度経済成長の象徴的イベントであり、次の第2回目の東京オリンピックや大阪万博は、我が国の次の時代への転換点になるものと期待しています。
 2回目の大阪万博はライバルも多いと報じられていますが、本県としていかに取り組むのか。山下自民党県議団会長も質問されましたが、単に応援するだけではなく、主体的に取り組むべきと考えますが、知事の御所見を伺います。
○議長(浅井修一郎君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 大阪で万国博覧会が開催されると考えるだけで、私もちょっと心躍る思いがいたします。それは、おっしゃるように昔の記憶があって、同じようなことがまた起こっていいんじゃないかと思うわけであります。ただ、具体的に考えますと、当然、国の内外から多くの人々が大阪を中心とした、大阪万博を目指してということは、すなわち大阪を中心とした関西を訪れることが予想されるわけですので、関西のすばらしさを理解してもらう絶好の機会と思っております。
 この機に乗じて、関西を周遊する新たな観光ルートの創出、その中には和歌山県の要素がたくさん入っているはずでございますし、産業のイノベーション、これも和歌山県の産業にとって大変役に立つはずでございます。そういうようなことをすることが、関西全体の経済の活性化につながると思っております。
 このため、昨年9月の広域連合委員会においては、万国博覧会の誘致・実現に向けて関西全体で取り組んでいくことを全会一致で決議をいたしまして、それで、それぞれがいろんな政府要人とか国際人とかに会うときには、そういうことを言って応援しようということに今なっております。
 このようなことから、まだまだ具体的な話はどんどん出てくると思いますけれども、本県としては、関西広域連合のほかの構成団体とともに力を合わせて進めてまいりたいと思っております。
○議長(浅井修一郎君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 次は、エアショーについてであります。
 昨年、東京ビッグサイトで4年に1度開催される2016年国際航空宇宙展を視察してきました。国内外より700社がロケットや戦闘機からねじ1本まで出品し、3日間で約4万人が訪れたそうですが、ふだん見るチャンスがないものばかりで大変興味深く、1日では見て回れませんでした。
 ただし、本県からの出展は島精機さん1社のみで、大変残念に思いました。宇宙航空産業は将来発展が期待できる成長分野で、その振興は国策であり、ぜひ本県においても県勢浮揚をかけて取り組むべきと考えますが、昨年から研究会を立ち上げたと聞いております。どうか、次回は多数参加していただけるよう要望しておきます。
 さて、航空展いわゆるエアショーは、諸外国ではデモフライトをするため、飛行場で開催されることが多いと聞きました。宇宙航空産業の振興を和歌山に取り込むためには、人材不足の観点から大学設立が必要と考えますが、大学については次回に譲り、まずできることからという意味で、身近な空港でエアショーが開催できないかと思います。
 今回の質問に際し、残念ながら関西空港では開催できないとの報告がありました。それなら、定期便が3便しかない南紀白浜空港なら、大型機は無理でも小型機やヘリコプターに限定すれば、実際の飛行機を持ち込んだエアショーの開催ができるのではないでしょうか。県土整備部長の見解を伺います。
○議長(浅井修一郎君) 県土整備部長森戸義貴君。
  〔森戸義貴君、登壇〕
○県土整備部長(森戸義貴君) 南紀白浜空港を活用したエアショー開催の可能性について、御質問を頂戴いたしました。
 議員御提案の小型機やヘリコプターに限定したエアショーの開催につきましては、これまで国内ではエアショー開催の実績がないこともございまして、開催に必要な条件、体制、規制等を把握できていないのが実情でございます。したがいまして、その開催に必要な条件や最小最適な規模、さらには関係業界の仕組み等を把握することが、その可能性の有無を判断する前提であると考えてございます。
 こうしたことによりまして、白浜空港周辺も含めた立地で開催の可能性がございますれば、必要な条件整理や整備費等を勘案しながら検討してまいりたいと考えてございます。
○議長(浅井修一郎君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 よろしくお願いします。
 大きな3番目の質問として、学校薬剤師の活動に関連して、学校の衛生状況について3点伺います。
 まず、学校薬剤師について。
 先般の御坊市給食センターの食中毒事件は、原因が判明し、給食が再開されたことで、子供たちの喜びの声と市民から安堵の声が聞かれます。
 一方、給食制度について、財政の観点から全国的に採用されているセンター方式や価格偏重の食材供給が問題になりました。しかし、自校式に変更することや全ての食材を地産地消ですることは困難であることから、現実的には衛生面で規則を徹底することと、適切な業務が行われているか第三者が厳しくチェックすることしかないのではないかと思います。
 このうち、給食の施設及び設備の安全性のチェックについては、学校保健安全法で義務づけられており、学校薬剤師の職務とされています。しかし、関係者からは、学校薬剤師に支払われる報酬や検査のための費用が支給されていないという状況、また、学校薬剤師のなり手がいないという声を聞きます。恐らく、事件・事故が起きなければ問題がないという認識でしょうか。事件・事故が起きたときは遅いのです。
 そこで、今回の事件を受けて、現状について伺います。学校薬剤師の職務は果たされているのか、また、職務を全うするための当然の対価や検査費用の質はどうなっているのか、教育長に伺います。
○議長(浅井修一郎君) 教育長宮下和己君。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 学校薬剤師の主な職務につきましては、学校保健安全法により、環境衛生検査や学校において使用する医薬品等の管理に関して必要な指導及び助言を行うこととされております。さらに、平成21年の法改正により、新たな保健指導及び健康相談に従事することが加えられ、学校や児童生徒の実態を把握した学校薬剤師など、専門的な立場からの支援が期待されております。しかし、十分な実施に至っていないことから、学校薬剤師会と連携を図っているところでございます。
 また、市町村によっては、環境衛生検査の経費が報酬に含まれている実態があること、及び学校薬剤師の執務内容に差異があることから、各市町村教育委員会に対しまして、環境衛生検査の実施に係る経費の負担や、学校薬剤師の執務内容の実態に応じた適切な報酬となるよう働きかけてまいります。
○議長(浅井修一郎君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 ぜひ、市町村の教育委員会、そしてまた学校現場を教育長がおっしゃるように指導していくというのは、なかなか難しいことでありますけども、ぜひとも実現をしていただくようにお願いしたいと思います。
 次は、学校保健委員会についてであります。
 私は、平成9年12月定例会一般質問で、当時の学校保健法で規定されている学校保健委員会が県内ではほとんど設置されていない実態から、その設置促進について質問した経緯があり、その後、設置が進んだものと承知しております。
 平成21年4月に、学校保健法が学校保健安全法に改定され、学校における安全管理に関する条項が加えられました。
 通常、学校保健委員会は、年間3回開催することが望ましいとされています。果たして、その後の学校保健委員会の開催状況はどうなっているのでしょうか、現状を教育長に伺います。
○議長(浅井修一郎君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 学校保健委員会は、学校における多様化、複雑化する児童生徒の健康に関する課題について協議し、健康づくりを推進するための組織であり、県内の公立学校における設置率は約96%となっております。しかし、学校薬剤師等と日常的な連携はできているにもかかわらず、学校保健委員会を年間に複数回実施している学校が約17%であることから、組織的な対応が不十分であることは、課題として認識してございます。
 今後は、各学校における学校保健委員会が、学校薬剤師、学校医、学校歯科医等の協力のもと、児童生徒の健康課題の解決につながる組織として機能するよう、指導してまいります。
○議長(浅井修一郎君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 県議会では、かつてフッ化物洗口について、たしか意見書というんでしょうか、決議もいたした経過がございます。西牟婁郡ではフッ化物洗口が進んで、近い将来には虫歯がほとんどなくなるという、そういうことを聞いております。しかし、県下全体を見たら進んでないところも多い。私は、学校は子供たちのためにあると思ってますが、実際はそうでないことをそのことを通じて知りました。保健委員会、本当に子供たちの健康や、そしてまた学校の安全を考えたら、もっともっと頑張れるところじゃないかと思いますので、どうぞ県教育委員会の指導をよろしくお願いいたしたいと思います。
 最後に、パンデミックについてであります。
 今回の食中毒によりまして、御坊市内の小学校では手洗いを徹底した結果、インフルエンザの罹患率が減少したと聞きます。将来発生の危険がある新型インフルエンザなどの大流行、いわゆるパンデミックに対しても、日ごろから衛生管理を徹底しておくことが大きな備えになるのではと考えますが、パンデミックの備えについて、教育長に伺います。
○議長(浅井修一郎君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 学校における新型インフルエンザなどの大流行、いわゆるパンデミックについてですが、新型インフルエンザ等感染症は、学校保健安全法において第一種の感染症とみなすとされており、ほとんどの人が免疫を獲得しないこと、及びウイルスの病原性等の状況を勘案し、出席停止の期間は治癒するまでとされております。
 新型インフルエンザへの備えとして、平常時から手洗い等の対策に努めることが子供たちや職員及びその家族等の健康を守ることにつながることから、その対策が習慣化できるよう引き続き指導を徹底してまいります。
 さらに、新型インフルエンザ等対策に関する文部科学省行動計画によりますと、学校において新型インフルエンザが発生した場合の対応として、第2種のインフルエンザ、いわゆる季節性インフルエンザにおいては、集団における欠席率が10から30%を臨時休業等の目安としているのに対して、新型インフルエンザでは、文部科学省等が示す目安を踏まえ、欠席率が10%程度で臨時休業等の措置を適切に講じることとされております。
 新型インフルエンザの対応策については、県立学校及び市町村教育委員会に対して周知しているところですが、今後、対応マニュアルを作成するなど、発生時の迅速かつ適切な行動につながるよう指導を徹底してまいります。
○議長(浅井修一郎君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 以上で、私の一般質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(浅井修一郎君) 以上で、中村裕一君の質問が終了いたしました。

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