平成28年12月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(雑賀光夫議員の質疑及び一般質問)


平成28年12月 和歌山県議会定例会会議録

第3号(雑賀光夫議員の質疑及び一般質問)


汎用性を考慮してJIS第1・2水準文字の範囲で表示しているため、会議録正本とは一部表記の異なるものがあります。

正しい表記は「人名等の正しい表記」をご覧ください。

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 39番雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕(拍手)
○雑賀光夫君 議長のお許しを得ましたので、早速質問に入らせていただきます。
 第1の柱は、ため池改修加速化についてであります。
 ため池改修についてお伺いするのは何度目かになります。県のため池改修はレベルアップしてきていることを評価しながら、さらに県民の安全を図っていただきたいと思います。
 最初にこの問題を取り上げたのは、2005年6月県議会、10年余り前のことでした。
 当時、県は、その前年度から3カ年計画で420カ所のため池について耐震診断を実施し始めておりました。ところが、当初、地元で心配の声がある慶権寺池が診断リストに入っていなかった。そこで、ぜひとも診断に加えてほしいとお願いしたところ、海草振興局は、50カ所の診断のトップに慶権寺池を調査してくれたのです。最初の目視による第1次調査には、私も地元の皆さんとともに参加しました。すると、ボーリング調査が必要だということになり、真っ先に改修が実現したわけです。それ以後、危険ため池、耐震診断が必要なため池を選び出すことの難しさということが私の大きな問題意識になっておりました。
 その後、2008年5月の集中豪雨で紀の川筋の松池、桜池という2つの池が決壊寸前という事態が起こりました。この松池は第1次調査だけ、桜池は第1次調査の対象にもなっていなかったのです。
 そして、2011年、今県が取り組んでいるため池改修加速化のきっかけになった愛宕池の全面決壊という事故が起こります。このときは集中豪雨というような雨でもなかった。下流に人家が少ないから第2次診断をしなかったと説明されましたが、ともかく、そんな池が全面決壊した。そこで知事がため池点検の加速化を決断されたことは、評価するものであります。
 そこで、第1に農林水産部長にお伺いいたします。加速化計画の進展状況について御説明いただきたいと思います。
○議長(浅井修一郎君) ただいまの雑賀光夫君の質問に対する答弁を求めます。
 農林水産部長鎌塚拓夫君。
  〔鎌塚拓夫君、登壇〕
○農林水産部長(鎌塚拓夫君) 加速化計画の進展状況についてでございますが、県下には約5500カ所のため池が存在し、農業用水確保のために活用されております。
 県では、平成24年度にため池決壊に対する安全度向上のため、地域の実情に応じたため池改修加速化計画を策定し、比較的規模の大きいかんがい受益面積5ヘクタール以上かつ貯水量1000立方メートル以上の772カ所のうち233カ所について、県が事業主体となり、改修に取り組んでおります。平成28年度現在では49カ所にて改修に着手しており、平成38年度までに233カ所を整備する計画で進めております。
 改修に当たりましては、老朽化が進んでいるため池は全面的に改修し、その他、豪雨対策としては、雨水を安全に流下させるため、洪水ばけを大きくする改修や、地震対策として、堤体にひび割れなどの変状が生じた場合に水位を低下させ、決壊を防ぐ緊急放流施設の設置など、部分的な改修を行っています。
○議長(浅井修一郎君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 ありがとうございました。
 私は、改修が必要なため池を選び出すことの難しさということを申し上げました。今お答えいただいた772カ所については客観的な基準で選ばれている。そのうち233カ所を選び出して改修が必要なため池としたわけですが、どのようにして選び出しているのでしょうか。
○議長(浅井修一郎君) 農林水産部長。
  〔鎌塚拓夫君、登壇〕
○農林水産部長(鎌塚拓夫君) 改修を要するため池につきましては、市町村の協力を得て実施しましたため池点検による危険度判定結果や浸水想定区域図をもとに算定したため池下流の想定被害額により、全面改修あるいは部分改修を要するため池対策計画案を取りまとめた後、関係市町村との協議を経て、改修するため池233カ所を選定しております。
 その他のため池におきましても、市町村によるため池ハザードマップの作成の促進や、市町村とともに水利組合などの管理者に対しまして、日常点検や維持管理の重要性などの啓発に取り組んでおります。
○議長(浅井修一郎君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 このたび、私の地元では、重根新池という池の安全対策について、地元自治会からも要望も上がっています。私も、心配の声をお聞きしたので、地元の友人に誘われて現場に行ってまいりました。友人が草ぼうぼうで大変だよと言うので、そのつもりで行ったのですが、行ってみるときれいに草が刈り込まれています。水利組合が管理してくれている。ただいまの御答弁でも、地元水利組合のこうした管理というものが安全点検のために大事なものだということがよくわかりました。
 友人は、「ハザードマップで説明があったので一気に関心が高まった。県が努力してくれているのはよくわかる。ぜひとも安全対策をしっかりやってほしい」と語りました。その後、地元自治会からの要望書という運びになったようです。
 ハザードマップというものは、まさかのときの避難のためにも、安全への注意喚起のためにも大切なものだと思いますが、ハザードマップの作成はどういう計画で進んでいるのでしょうか、農林水産部長のほうからお答えください。
○議長(浅井修一郎君) 農林水産部長。
  〔鎌塚拓夫君、登壇〕
○農林水産部長(鎌塚拓夫君) ため池ハザードマップの作成につきましては、市町村が事業主体として順次進めており、県は、かんがい受益面積2ヘクタール以上のため池1342カ所の浸水想定区域図を作成し、市町村に提供することにより作成支援をしているところでございます。
 作成状況につきましては、県全体では、平成28年度末で1342カ所のうち942カ所が作成される見込みです。このうち海南市におきましては、平成28年度末で124カ所のうち9カ所、また紀美野町におきましては、52カ所のうち1カ所を作成する見込みであります。
 今後は、両市町を含め、進捗のおくれている市町村に対して重点的に早期のハザードマップ作成を働きかけてまいります。
○議長(浅井修一郎君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 今の御答弁で、全県と比べて海南・海草ではハザードマップ作成がおくれていることがわかりました。県でもしっかり督励していただけるようですが、地元でもしっかりお願いしていきたいと思います。
 そして、重根新池の場合、池の下には人家が大変多く、皆さん心配されるのはもっともだと思います。この池の安全対策、改修計画はどうなっているのか、お聞かせください。農林水産部長、お願いします。
○議長(浅井修一郎君) 農林水産部長。
  〔鎌塚拓夫君、登壇〕
○農林水産部長(鎌塚拓夫君) 海南市重根地内にある重根新池の改修については、海南市が事業計画書を策定し、県が行う改修事業として平成29年度新規採択に向けて手続を進めております。事業着手後は、池下流域の安全度向上のため、早期に事業完了するよう努めてまいります。
○議長(浅井修一郎君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 来年度から事業に取りかかっていただけるのは大変ありがたいことです。地元自治会の要望も十分お聞き取りいただいて進めていただけるようにお願いしたいと思います。
 続いて、第2番目の柱に行かせていただきます。
 第2の柱は、運動部活動であります。
 6月県議会で中学校の運動部活動についてお伺いしました。あのときは、教育委員会も私と同じ問題意識でおられたと思いますが、大阪体育大学と連携して調査し、有識者会議の意見を聞くということになっておりましたので、何を聞いても調査と有識者会議待ちで甚だ質問しにくいと申し上げました。
 どうやら調査と有識者会議が終わって、その報告書も出されています。調査から明らかになったこと、そして有識者会議からの提言を受けた県教育委員会としての今後の取り組みについて、教育長にお伺いいたします。
○議長(浅井修一郎君) 教育長宮下和己君。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 中学校の運動部活動につきましては、大阪体育大学の協力を得て実施した実態調査から、9割の生徒が活動を楽しいと感じ、運動部加入生徒は非加入生徒に比べ、生活リズムがよい傾向が見られます。また、約8割の教員が指導にやりがいを感じ、ほぼ全ての教員が生徒の将来に役立つ活動であると答えています。反面、練習日数が多い部に所属している生徒ほど疲れがたまると感じてございます。
 県教育委員会では、本調査結果を踏まえた有識者会議からの提言を受け、1週間のうち1日は休養日を設けるなど、中学生期の発達段階に応じた今後の望ましい運動部活動のあり方を示した中学校運動部活動指針を作成しているところです。
 また、「運動部活動指導の手引」につきましては、本指針の内容を盛り込んだものに改訂し、校長会や研修会等を通じて指導の徹底を図ってまいります。
○議長(浅井修一郎君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 運動部活動については、子供にとっては圧倒的に多くの子供が楽しいと言っている、また教育上も大変大きな役割を果たしている、しかし行き過ぎるとさまざまなゆがみを生じると、こういう問題でございます。
 私も、6月県議会で、若いころは若さに任せて土日でも出ていって子供たちと一緒にやったという話をいたしました。大変やんちゃな子供たちの集まった野球部でした。あの子供たちに日曜日は野球部は練習なしにすると言ったら、子供たちはどんな反応をするだろうか。「わえら、野球楽しみで学校へ来てるのに、それを取り上げるんか」、当時私が担当した野球部の子供たちは、そんな物の言い方をしかねない子供たちでした。さらに、「野球部やったらあかんのやったら、日曜日は野上八幡の石段でトレーニングや。野球部と違うぞ。1年生、強制やないぞ。来たい者だけ来い」、大きな3年生ににらまれた1年生は1人残らず野上八幡の石段でしごかれる。私は、駆け出しの教員の時代を思い出して、そんなことも起こるかなと考えました。
 今、やんちゃな子供の話をしましたが、教師だって抜け道を考えかねない、それほど部活動の規制というものは難しいのです。子供たちが楽しみにしているし、そして教育上も大事な役割も果たしているだけに、規制というのは難しい。
 これまでも必要な指導を行ってきているが、なぜ定着しなかったのか。そのことを踏まえた教育委員会の指導の徹底について、教育長のお考えをお伺いしたいと思います。
○議長(浅井修一郎君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 中学校運動部活動の運営につきましては、教員が生徒の期待や保護者の要望に応えようと熱心に取り組むことや、休みなく練習することが成果につながるとの思いから、休養日や練習時間の設定については定着してこなかったものと考えてございます。
 これらを踏まえ、実態調査の分析により得られた休養日の必要性等の内容を指針に示し、県内の中学校で校長のリーダーシップのもと、保護者の理解を得ながら、確実に実施されるよう、市町村教育委員会や中学校体育連盟と連携し取り組んでまいります。
○議長(浅井修一郎君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 私が指導した野球部は、その後強くなり、マナーもよくなり、何回も県大会に出ました。私を助けてくれたのは外部指導者でした。最近、那賀病院にもおいでになった名医として名高いM先生は、私の高校の同級生でした。当時、和歌山県立医科大学の野球部員でした。「雑賀、野球部持ってるんか。助けてやろうか」と言って来てくれた。バッティングピッチャーまでしてくれた。ストライクがきれいに入るから、練習は効率よく進む。そして、友達だから私をちゃんと立ててくれる。
 外部指導者というものは、こんなにうまくいけばいいのですが、子供は外部指導者の言うことを聞くが、先生の言うことを聞かなくなったら最悪です。外部指導者はどんなぐあいに選ぶのか、教育長のお考えをお伺いいたします。
○議長(浅井修一郎君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 外部指導者につきましては、本年度、県では、中学校の運動部に当該校長及び5市1町の教育委員会から申請を受けた21人を派遣してございます。また、外部指導者には、学校における運動部活動の意義を踏まえた指導を行うよう、運動部活動等推進検討会議を通じて指導しています。
 なお、市町村におきましても、独自に57人の外部指導者が派遣されてございます。
 今後も、運動部活動が学校教育の一環であり、その意義や狙いを十分理解した上で指導できるよう、県及び市町村が連携して外部指導者を対象にした研修会を開催し、指導してまいります。
○議長(浅井修一郎君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 この問題は、大変難しい、前から言われていて改善がなかなか難しかった問題ですが、教育長の指導性に期待をいたします。
 第3の柱は、南紀・はまゆう支援学校の統合です。
 南紀・はまゆう支援学校の統合が計画され、パブリックコメントも行われました。先日は、地元西牟婁の県会議員の皆さんと一緒に、私も教育関係者であったというので特別に呼んでいただいて、保護者の皆さんと懇談もしてまいりました。
 はまゆう支援学校は知的障害を中心にした学校ですが、南紀支援学校というのは肢体不自由児の支援学校であります。肢体不自由児というのは車椅子に乗っているのかというと、そういうことだけではありません。足が不自由で車椅子に乗っているというだけなら、普通の小中学校に通うでしょう。さまざまな病気で重複障害を持って、寝たきりの子供が多いのが肢体不自由児支援学校であります。
 先日、私は、県教職員組合の教育研究集会で重度障害の子供にかかわった教育実践を聞かせていただきました。授業風景をビデオに撮っての実践報告でした。
 ベッドに寝たきりの子供に、先生は手づくりの人形を使ってお話をします。子供は言葉を話せませんが、目は人形のほうに向けているのがわかります。そして、時々舌を動かして感情を表現するのです。先生は、「1人で授業をすると人形を動かすのに一生懸命で、舌であらわす感情表現を見落とすんです」と言われました。助言者の先生が舌を動かした感情表現を見つけて、そのとき、「K君、おもしろかったんだね。ありがとう」と子供の手を握ってあげることが大事だと言われました。こんなぐあいに、人と人の交流を通じて子供の発達を支援していく重度重複障害児の教育の一場面を見てまいりました。
 そこで質問ですが、まず第1に、南紀・はまゆう支援学校を統合してどういう支援学校をつくるのでしょうか、教育長にお伺いいたします。
○議長(浅井修一郎君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 統合校では、みなべ、田辺・西牟婁地域の特別支援教育を牽引する特別支援学校として、肢体不自由教育、知的障害教育、聴覚障害教育の専門性のより高い教育を行ってまいります。
 また、複数の障害に対応する特別支援学校としての専門性を生かし、重度・重複障害など多様な教育的ニーズを必要とする児童生徒への教育や一般就労の促進に向けた職業教育を行い、自立と社会参加するために必要となる力を育む教育を進めてまいります。
 さらに、紀南地方の視覚障害や聴覚障害のある児童生徒やその保護者、教職員への相談体制の充実を図るなど、地域の幼稚園・保育所、小中学校、高等学校を支援する特別支援教育のセンター的機能を発揮する役割を担ってまいります。
○議長(浅井修一郎君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 知的、肢体、聴覚の障害に対応する支援学校になるということであります。それなら視覚障害も含めてはどうかと思います。
 紀南からも、視覚障害をお持ちの子供さんが盲学校の寮に入るかどうか迷ったが、余り小さいころから親元を離すのもかわいそうだというので地元の小学校でお世話になり、今では盲学校の寮に入っているというケースをお聞きしたことがあります。そういう子供さんがいらっしゃると思いますが、視覚障害にも対応する学校にしたらどうかと思いますが、いかがでしょうか。
○議長(浅井修一郎君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 紀南地方における視覚障害教育への対応につきましては、これまでも、児童生徒本人や保護者の意向の確認及び市町村教育委員会との協議を踏まえて、弱視の児童生徒を対象とした特別支援学級の設置や和歌山盲学校による巡回教育相談実施など、専門的な教育を提供できる体制整備を行ってまいりました。
 統合校におきましても、和歌山盲学校との連携をこれまで以上に強め、紀南地方の幼稚園・保育所、小中学校、高等学校に在籍する視覚障害のある児童生徒やその保護者、教職員への相談支援活動を進めてまいります。
○議長(浅井修一郎君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 相談支援というふうに言われるんですが、地域の子供たちの状況に応じて十分な対応をできるように、私は、できれば、すぐにそういう子供が入らなくてもいいんですが、必要がある場合には視覚障害の子供も受け入れるというふうにしていただきたいなあと思います。今すぐにそういうふうに答えろと言っても難しいでしょうから、そういうことも含めてしっかりと検討していただけますようにお願いいたします。
 さて、南紀支援学校は古い学校ですから、新しいきれいな校舎になることは結構です。一番大事なことは、どういう教育内容が保障されるかという問題です。一番の問題は人的配置です。
 学校には、校長が1人、そして教頭を含む教員が何人というふうに基準に沿って配置されています。南紀支援学校、はまゆう支援学校はそれぞれ教員が配置されているわけですが、教育長にお伺いしますが、現在の生徒数がそのままで新しい学校に統合された場合、少なくとも現行どおりの教員数が配置されるのでしょうか、お答えください。
○議長(浅井修一郎君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 統合校の教職員数につきましては、児童生徒の主たる障害の種別、児童生徒数及び学級数等により国の基準で算定した場合、必然的に減ることになりますが、今後、南紀支援学校及びはまゆう支援学校を初め関係する方々の御意見を踏まえ、統合校での教育が充実したものになるよう、定数の確保に努めてまいります。
 また、国に対しても、いわゆる定数法のさらなる改善について要望してまいります。
○議長(浅井修一郎君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 教育長は、国の基準で算定した場合に必然的に減るというふうにお答えになりました。定数法どおりだと、10数人教員が少なくなるんだそうです。私も初めは信じられませんでした。小さい小学校であれば、1クラスの生徒数が10数人の6学級の小学校が2つ統合しても、1クラス20数人のやはり6学級の小学校になる、こういう場合だったら大幅に教員数が少なくなることはわかります。しかし、支援学校の場合はそうではないと思っていたわけです。
 なぜ少なくなるのか。よくよく聞いてみますと、南紀、はまゆうが統合すると児童数が多い知的障害の支援学校というふうにみなされて、知的の支援学校の基準で教員が配置される。だから、肢体不自由児の南紀支援学校に手厚く配置されていた教員は減らされてしまう。全く不合理なことだと思います。もちろん、10数人という全てがそういう要因ではありませんで、そのほかにも統合にかかわるさまざまな要因で教員数が減らされる。
 教育長は、国に対してこの不合理の是正を要求するとともに、県段階でも財政当局にしっかりと働きかけていただきたいと思うんです。
 パブリックコメントを読ませていただきましたが、教員定数確保という要望が大変多いんですが、教育委員会の説明を見ると、教員数が減りますとはなかなか書いていませんで、それが読み取りにくい。とにかく減らないとも書いてないけれども、しかし、心配ないようにやりますということだけ書かれている。これは、教育委員会としても、子供のことを心配している保護者の方に本当のことを言ったら、実際は10数人減るんですと言ったら不安を与えるんではないかという心配をして、そういうわかりにくい言い方をしているのかもしれません。
 しかし、それはとんでもないことだと思います。本当のことを語って、文部科学省にも、そして県の財政当局にも、教育水準を落とさないためにぶつかっていくという姿勢を示すことが保護者の信頼を得ることになるんではないかということを申し上げておきたいと思います。
 そして、次へ行きますが、問題は教員数だけではありません。給食調理員は、南紀では4人、はまゆうでは5人、現在は9人です。南紀支援学校では、給食の再調理がきめ細かく行われているとお聞きしました。食べ物をペースト状に──再調理と言うんだそうですが──するんですが、何でもペーストにすればいいということでなく、子供の状態に応じた調理がされているとお聞きしました。この水準を維持するために何が必要ですかとお聞きしましたら、調理員の人数とともに、調理室の中に特別な再調理できるスペースが欲しいというふうに言われた方もいました。
 寄宿舎についても、統合にはさまざまな現場でないとわからない問題があると思います。
 そういう問題を踏まえて教育長にお伺いいたします。新しい学校づくりについて、保護者の意見もよく聞き、学校現場の声が反映するようにどうしていくのかをお聞かせください。
○議長(浅井修一郎君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 県教育委員会では、これまでも、両校の保護者や教職員、地元関係者等に対して、統合校の内容や特色、今後の進め方について説明を行い、御意見等をいただいてまいりました。また、9月には統合の概要について県民意見募集を行い、10月には質問内容の概要と県教育委員会の考え方についてホームページ上に掲載したところです。
 統合の準備に向けては、今後、両校合同で設置する保護者等を含めた検討委員会と県教育委員会で十分な意見交換を行いながら進めてまいります。
○議長(浅井修一郎君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 一番手厚い保護、教育が求められる子供たちの教育を、基準だ、法定数だ、仕方がないと切り捨てることがないようにお願いをしておきたいと思います。
 では、次にまいります。
 第4の柱は、部落差別解消法と人権問題です。
 国会で部落差別解消法なるものが成立いたしました。私は、こうした動向は同和問題の最終解決に逆行するものではないかと考えるものです。部落差別というのが近代社会まで残された要因はいろいろありますが、身分社会の残滓であります。この残滓が消え去って国民が1つに融合することがこの問題の解決です。
 民族差別の場合は違います。民族の違いをなくし融合しようとするのは、かつて日本帝国主義が朝鮮民族に押しつけようとした創氏改名のようなものです。民族問題は、それぞれの歴史や文化を尊重しながら、それぞれの民族に誇りを持てるようにならなくてはなりません。
 男女平等の場合も、男女の区別をなくしてしまうのでなく、男性は男性として、女性は女性として尊重されるものでなくてはなりません。もちろん、過度に男らしく、女らしくと強調することが男性、女性としての尊重とは言えないということも申し上げておきたいと思います。
 こうした理解に立ったとき、同和行政というものは矛盾をはらんでいることがわかります。同和特別対策として行政を進めようとすれば、同和地区を否定し、同和地区出身者というものを否定しなくてはならないからです。それでも、1960年代には、あえて線引きをしてでも同和対策をせざるを得ないほど同和地区内外の格差が大きかったのです。線引きをして特別対策をすることについての国民的合意が1965年の同和対策審議会答申であり、それを法制化したものが1969年の特別措置法でした。
 磯村英一氏を会長とする政府の諮問機関・地域改善対策協議会は、1984年の答申で、「同和地区住民の社会的経済的地位の向上」と述べました。また、1993年の和歌山県内の同和地区生活実態調査では、若い世代では同和地区内外の結婚が90%に達し、結婚での差別は過去のものになりました。
 しかし、不幸なことは、84年の磯村答申が「周辺地域の状況に比べて不均衡」、「『ねたみ意識』が各地で表面化してきた」と指摘し、「民間運動団体の行き過ぎたいわゆる確認、糾弾をはじめとする行動形態に起因すると考えられるこわい問題であるとの意識の発生」と指摘せざるを得なかったことでした。同和行政のゆがみ、同和行政を民間運動団体が私物化する窓口一本化、意見の違う者を差別として糾弾する一連の事件は、司法の場でもその不当性が明らかにされました。そして2002年、同和対策事業は廃止されたのです。
 さて、質問です。
 第1点は、このたびの部落差別解消法は理念法であって、予算措置を伴うものではないことを強調されています。しかし、部落差別の実態に係る調査を講ずることを責務としているということは大変心配です。
 和歌山県では、同和対策が終了して以後も、同和問題を最重点課題と捉えた実態調査を計画したことがありました。そのとき、月山弁護士を委員長とする県人権施策推進審議会、その小委員会が平成18年3月16日付で意見書を提出し、厳しく批判をしました。意見書は、「同和問題を、人権局──これは県の人権局──が突出した形で捉えることは、同和問題自身の解決方法としても好ましいものではない」とし、実態調査は中止になったのです。
 企画部長にお伺いいたします。このたび法律が成立した場合に、かつての月山意見書が心配したような懸念はないのかどうか、お答えいただきたいと思います。
○議長(浅井修一郎君) 企画部長髙瀨一郎君。
  〔髙瀨一郎君、登壇〕
○企画部長(髙瀨一郎君) 部落差別解消法の実態調査につきましては、部落差別の解消の推進に関する法律第6条において、「国は、部落差別の解消に関する施策の実施に資するため、地方公共団体の協力を得て、部落差別の実態に係る調査を行うものとする。」と規定されておりますが、参議院法務委員会におきまして、「部落差別の実態に係る調査を実施するに当たっては、当該調査により新たな差別を生むことがないように留意しつつ、それが真に部落差別の解消に資するものとなるよう、その内容、手法等について慎重に検討すること」と附帯決議がなされているところでございます。今後、所管省庁において、附帯決議を踏まえ、調査により新たな差別を生むことがないよう、調査の内容や手法等について十分検討されるものであると考えております。
 県におきましては、引き続き情報収集に努めるなど国の動きを注視してまいります。
○議長(浅井修一郎君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 お答えいただきましたように、国会の審議でもいろいろと批判もあり、心配の声もあった、そこで、その調査が新たな差別を生むことのないようにというふうな附帯決議までつけざるを得なかった、こういうことでございます。この法律の運用が新たな差別を生むことのないように厳しく見守っていきたいというふうに思っています。
 次に、月山意見書は、「県人権局の取り組み姿勢には、未だに『同和問題をはじめとする人権問題』──つまり人権問題でまず同和問題から入るという──からの脱却が認められず、失望と挫折感を禁じえない」と述べておりました。これは平成18年時点のことですが、同和問題だけを突出して強調することを批判したわけです。
 県人権局には、いろいろな相談が寄せられると思います。どういう相談が多いのでしょうか、企画部長からお答えいただきます。
○議長(浅井修一郎君) 企画部長。
  〔髙瀨一郎君、登壇〕
○企画部長(髙瀨一郎君) 県企画部におきましては、人権局、各振興局、公益財団法人和歌山県人権啓発センターにおいて人権全般に関する相談窓口を設置し、県民からの相談に応じているところでございます。
 平成25年度から平成27年度の過去3年間における人権相談件数につきましては、合計716件の相談を受理しております。
 人権課題別では、件数順に、障害のある人、女性、同和問題、子供、高齢者の人権に関する相談となっております。
○議長(浅井修一郎君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 お答えになられましたように、今日の人権問題はいろいろあります。月山意見書が指摘したように、同和問題を突出して取り上げることは問題の解決に逆行する場合があります。これまで同和問題の解決に心を砕いてきた多くの皆さんから、このたびの「部落差別」を冠した法制定に懸念や怒りの声が上がっていることを申し上げて、今回の質問を終わります。
 どうもありがとうございました。(拍手)
○議長(浅井修一郎君) 以上で、雑賀光夫君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前11時29分休憩
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