平成28年12月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(坂本 登議員の質疑及び一般質問)


平成28年12月 和歌山県議会定例会会議録

第3号(坂本 登議員の質疑及び一般質問)


汎用性を考慮してJIS第1・2水準文字の範囲で表示しているため、会議録正本とは一部表記の異なるものがあります。

正しい表記は「人名等の正しい表記」をご覧ください。

  午前10時0分開議
○議長(浅井修一郎君) これより本日の会議を開きます。
 日程第1、議案第226号から議案第249号まで、並びに諮問第1号を一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第2、一般質問を行います。
 41番坂本 登君。
  〔坂本 登君、登壇〕(拍手)
○坂本 登君 皆さん、おはようございます。議長のお許しをいただきましたので、質問をさせていただきます。
 今回、私は、2つの遺産について質問し、当局のお考え方をお伺いするものであります。
 最初の遺産は、さきに私が提案し、当局も一生懸命取り組んでいただき、ついに登録までかち取った世界農業遺産についてであります。
 みなべ・田辺地域の梅を対象とした世界農業遺産の登録は、一般の世界遺産の登録ほどインパクトは大きなものではありませんが、私は、この一連の作業を通して2つの確かな手応えを感じ取っております。
 1つは、梅の生産、加工、販売に係る生産者側の心の変化であります。
 世界農業遺産の登録は、産地に大きな自信と誇りを植えつけました。人間誰しも、自分の仕事や取り組んでいることが他人に認められればうれしいものであります。ましてや、それが世界的に評価され紹介されれば、なおさらであります。
 関係者は、これまでも梅の栽培が県農業の基幹をなし、加工・流通業者も地域に根づいた産業として自信を持って取り組んできました。今回はそれに加えて、誇りというかけがえのない勲章を手にしたことになります。一段と飛躍した、大きくなった新たな取り組みが始まるものと期待に胸膨らませる思いでございます。
 2つ目は、梅に対する認知度の効果であります。
 登録作業を通しての報道、登録後の各種メディアを通しての情報量は、自分たちが日本国中張って回るポスターの数万倍の宣伝効果をもたらしました。世界農業遺産登録決定の情報は、瞬時にして世界中に発信され届けられました。梅という果実を知らない人も、梅干しという食品に全く手も触れたことのなかった世界中の人々も、初めて目にするニュースであったと思います。
 梅の持つ健康への認識、食材としてのすばらしさは、これまでどちらかといえば日本人に限定された感のあった梅の需要を一気に地球規模に広げることになりました。もちろん、世界中の人々がみんなこぞって梅干しを食べるわけではありません。食べない国の人もたくさんいることでしょう。しかし、反対に、新しい食材として大きな興味と関心を持つ人々も少なくないことでしょう。世界に開くマーケットが準備されたと、大きな期待を持ちました。
 TPPの議論は予断を許しませんが、大きな流れとしては、我が国農業は、これまでの「自分のものは自分でつくる」という自産自消と国内の消費を対象とした地産地消、海外に積極的に打って出る地産外商の3つの分野が重要な施策、ターゲットになってくることでしょう。これからは、世界に送り届ける梅の箱に世界農業遺産を証するレッテルを張ることができます。世界に安全・安心、そして健康食品としての梅を強調することができます。大きな意味を持ってくると思います。
 梅産業にとって歴史的な節目であったと思いますが、これで満足していてはいけません。より一層の付加価値を高めるべく、梅の持つさまざまな効能を科学的に分析し、証明していかなければなりません。
 幸い、みなべ地域の方々が長年にわたって梅の機能性を科学的に、医学的に分析、証明するため、和歌山県立医科大学の宇都宮先生に研究を依頼してきました。厚生労働省も、この論文に注目していると伺っております。梅の健康に対する機能が明らかになり、これを添付することができれば、私たちは一段と胸を張って、自信を持って世界中に梅を紹介し、お勧めすることができます。これまでの知事初め農林水産部の取り組みに感謝と敬意を申し上げる次第であります。
 そこで質問ですが、世界遺産登録後のFAOへの取り組み、国の動き、県の取り組みなどがいまいち県民の皆様には十分行き届いていないのではないか、十分理解されていないのではないかと見受けられますが、その後の展開はどうなっているのか、そして今後の登録効果をどう生かしていこうとするのか、その取り組みを御説明願いたい。登録後の推移は農林水産部長から、今後の取り組みは知事から答弁をいただきたい。
 続いて、質問2点目として、遺産の2つ目は未来遺産です。
 皆さんは、「未来遺産」という言葉を御存じでしょうか。世界遺産に比べ、知名度はそれほど高くはありません。そこで、未来遺産について、少々のお時間をいただいて、その概要を説明申し上げます。
 公益社団法人である日本ユネスコ協会連盟が主催して、日本全国のすばらしい文化や自然を100年後の子供たちに伝えていこうという取り組みを2009年度より「プロジェクト未来遺産」として展開し、審査・選考されたプロジェクトを未来遺産として登録し、その活動を応援しています。
 もう少し詳しくプロジェクト未来遺産2015募集要項からその趣旨を紹介しますと、「日本の素晴らしい文化や自然は、長い歴史の中で先人たちの知恵や工夫によって育まれてきた、今の時代を生きる私たち日本人一人一人の財産です。その大切な財産を子どもたちへ残し、未来へ向けて文化や自然を守り、継承していく市民の活動が“未来遺産”です。 『公益社団法人日本ユネスコ協会連盟』では、失われつつある豊かな自然や文化を、子どもたちの未来に残そうとする活動を『プロジェクト未来遺産』として登録し、地域から全国へ発信し、日本全体で応援するプロジェクトを推進しています」とあります。
 特別協力者としては、JR東日本とレクサス、住友ゴム工業であり、後援は読売新聞社となっております。
 全国から募集し、西村幸夫東京大学先端科学技術研究センター所長を委員長とする12名の委員さんによって審査・選考されます。未来遺産に登録されますと、ユネスコ連盟のホームページや各種広報媒体を通して活動を紹介、応援してくれるほか、幾らかの活動支援金も準備されていますが、それよりも私が期待することは、各団体や地域が未来遺産としての活動に参加しているという誇りと自信を持って日々の活動につながっていけるのではないかという点であります。
 平成21年に第1回の未来遺産が登録され、以来7回、合計57の地域が登録されていますが、その第1回目に海南市の孟子不動谷生物多様性活性化プロジェクトが認定され、3回目には田辺市の天神崎の活動が登録されています。この2つの概要を説明し、この例を通して、未来遺産とはどういう趣旨であり、どういう活動なのかをざくっとイメージしていただきたいと思います。
 まず、海南市の例です。
 申請した団体は、特定非営利活動法人自然回復を試みる会・ビオトープ孟子です。場所は海南市の北部に当たり、和歌山市や旧貴志川町と境を接する里山であります。
 休耕田を復元し、周辺の山林と一体となった里山を整備することにより、生物にとっての自然環境を整え、さまざまな生物を育んできています。その後、子供や学生たちの環境学習の格好の地域となっております。申請書には、「薪炭林の活用と自然農法による稲作を通じて、孟子不動谷の生物多様性豊かな里山・里地を活用し、保全する」とうたっております。
 第3回の未来遺産として、田辺市天神崎の天神崎の自然の維持と環境教育の推進プロジェクトが登録をされております。天神崎は、皆さん御存じのとおり、我が国ナショナルトラスト発祥の地であり、海岸、磯辺の海洋生物の多様性でよく知られた地域であります。
 団体名は公益財団法人天神崎の自然を大切にする会で、天神崎一帯の森林を中心に保全に努め、海岸や海底の清掃活動、自然観察教室や自然学習の実施などが評価されております。
 未来遺産の説明が長くなりましたが、私の今回の提案は、アカウミガメの産卵する千里の浜の未来遺産に向けての挑戦であります。
 千里の浜とは、紀伊水道に面してみなべ町目津崎から北西に弓状に広がる約1.3キロメートルの海岸であり、奥行きは広いところで60メーター、狭いところで20メーターと、とりたてて大きな砂浜というわけではございませんが、特徴は、白い砂、そして、これまでほとんど人工の手が入っていないという自然環境であります。背後には千里梅林が白い浜を挟んで青い海と見事なコントラストを描いていますが、浜に明かりが漏れることはありません。手つかずの白砂青松の海岸には、古くからウミガメが産卵にやってきました。
 1990年、鹿児島に全国からウミガメに関する調査研究や保護活動家が80名集まり、ウミガメに関する第1回日本ウミガメ会議が開催されました。その際、この会議の会議録という形で全国の産卵場所が紹介されています。屋久島や徳島県日和佐などと並んで、全国12カ所の産卵地に和歌山県千里の浜が紹介され、全国的にも古くから注目されていたウミガメの産卵場所であることがわかります。昭和39年には、ウミガメ産卵地として県の天然記念物に指定されています。
 では、この千里海岸がどういう地形か、魅力は何か、振り返ってみたいと思います。
 千里の浜は、「枕草子」に、「浜はそと浜、吹上げの浜」「千里の浜こそ広う思いやらる」と歌われた古くからの名所であったことがうかがわれます。
 熊野詣での時代に入り、千里の浜には千里王子社が置かれ、熊野を目指す参詣者がそれまでの山の中の道から初めて白砂を踏みしめた道中でした。海を見る機会の少なかった京の人々は、初めての白い砂利道、紺碧の海、潮風の香りに驚き、喜びと感激を体中で感じたに違いありません。近年は千里梅林として知られ、春を告げる梅の花と香りは大勢の観光客を呼び込んでおります。平成27年9月24日、吉野熊野国立公園として編入されました。
 さて、この千里の浜に毎年5月中旬から8月中旬にかけて、たくさんのアカウミガメがはるか東シナ海から産卵に訪れます。親亀は、日が沈み、浜辺が夕闇に包まれるころから明け方にかけて上陸し、砂浜にはい上がり、40~50センチの穴を掘り、重さ30から35グラムの球形の卵を1回に100から120個ほど産卵します。周りの砂で穴を埋め終わった親亀が大きく息をついて海に戻っていくまで、約1時間半から2時間の産卵風景であります。一度産卵した親亀は、約2週間の間隔を置いて、再び同じ浜において産卵することが確認をされております。
 浜辺に産み落とされたアカウミガメの卵は2カ月程度でふ化し、生まれた子亀は、夕方から明け方にかけて長い旅に向けて海に帰っていきます。ふ化直後の子亀は、体長約7センチ、体重約20グラム、2年から3年かけて太平洋を越えてメキシコ付近に渡り、20年ほどたってから再び産卵に戻ってくると言われております。途方もない大航海ですが、その後も親亀たちは今度は東シナ海付近へ回遊し、産卵シーズンを迎えると再び日本へ向かうと考えられています。
 ウミガメの産卵では屋久島が有名ですが、本州では千里の浜は産卵の密度が最も高いそうであります。
 国内のアカウミガメは、近年、周辺地域の開発や環境汚染などにより上陸数が激減し、今では絶滅危惧種に指定され、ジャイアントパンダと同じぐらい貴重な生物となっております。未来遺産は、対象となる貴重な自然環境とともに、それを保護、保全、継承していこうとする市民活動などの支援といった両面からの審査・評価がされます。
 ウミガメの産卵を見守る調査、保存、保護の取り組みについて申し上げたいと思います。
 1980年代初め、地元中学校の理科の先生であった上村修さんが千里の浜に上陸するアカウミガメに関して、上陸数や産卵個数などの本格的な調査を開始し、その後、後藤清さんを加えて、お2人で南部町ウミガメ研究班を立ち上げ、ともに活動されました。
 1990年代に入り、京都大学農学部・坂本教授のゼミが研究のため現地に入り、後藤先生とともに調査を始めました。現在、ウミガメ協議会の会長である松沢さんもそのゼミの一員でありました。2000年に京都大学の調査が終了し、その後はNPO日本ウミガメ協議会が引き継ぎました。
 2004年、旧南部町と旧南部川村が合併、新しいみなべ町発足とともに青年団組織も新しく青年クラブみなべとしてスタート、初代会長の中早さんを中心に、青年クラブの活動の一環として、後藤さんやウミガメ協議会が行っていたウミガメの保護・調査活動に本格的に参加することになりました。
 その後、2014年、後藤さんが健康上の問題と御高齢のため一線から引かれ、ウミガメ研究班の活動を青年クラブに引き継ぎ、保護活動、調査活動の傍ら、青年クラブ員ら後進の指導に当たっております。
 全国的にこうした調査や保護・保存活動に携わる人材の不足が憂慮されている状況にあって、20代から30代の若い世代が中心となって活動を続けている地域は希有と聞いております。2005年にはこの取り組みが「日本青年団新聞」に大きく取り上げられ、1面に「ウミガメの浜よ永遠に─命託される仲間で守る─」とのタイトルで全面紹介されております。
 現在、ウミガメパトロール活動は、青年クラブみなべのメンバーやNPO日本ウミガメ協議会から派遣される学生らで構成され、各班約10名、8班交替で、6月下旬から8月初旬までほとんど毎晩、夜を徹して行われております。青年クラブみなべは、平成17年度から本格的にこの活動に参加、夜9時から11時までを受け持ち、1班数名、計6班、毎年約30名のメンバーが浜辺を巡回、アカウミガメの上陸や産卵状況などの調査、保護に当たっております。
 1981年から始まった30年間にわたる千里の浜へのウミガメ上陸・産卵回数記録によりますと、最も多かったのが1990年の上陸回数900回、産卵回数328回、最も少なかったのが1998年の上陸回数69回、産卵回数29回と記録をされております。
 亀の産卵は夜間に行われ、卵が海水につかると死んでしまいます。そのため、親亀の産卵場所は高潮線よりも上の砂地を選ぶといいます。音やにおい、光に敏感で、少しでも危険を感じるとすぐ海に戻ってしまうとも言われております。
 年によって、生まれる子亀の多いときもあれば少ないときもあります。その原因としては、砂浜が痩せてきたことや、台風や高波などにより砂浜全体が冠水するといった環境の変化も考えられます。
 また、ここ10数年前から、タヌキやアライグマによって卵を食べられてしまうという被害も起こってきました。平成22年、これを知った洗剤や歯磨きで有名な大手メーカー・ライオン株式会社がステンレス製の防護柵をつくってくださり、同社の社員やボランティアの皆さんが協力して設置してくれました。被害が激減し、後藤清さんもその効果に「感謝、感謝」とのことでありました。
 せっかく生まれた子亀も、鳥や魚の餌食になることが多く、親亀までうまく成長できるのはごくわずかです。千里の浜で産卵される卵のうち親亀まで成長するのは1匹から2匹程度とも言われております。
 加えて、最近は、浜辺に打ち上げられる海藻が少なくなり、かわってごみくずや空き瓶、空き缶などの散乱が目立ってきています。また、夏場になると昼夜問わず訪れる観光客がふえ、中にはキャンプ禁止の立て札を無視して夜明けまでレジャーを楽しむ人々もふえ、このような環境の悪化がウミガメの産卵に少なからず影響を与えているのではないかと懸念をしているところであります。
 もちろん、ウミガメの産卵は大きな観光資源であり、毎年このシーズンになりますと、新聞やテレビで全国各地の様子が紹介されます。みなべ町の千里の浜にあっても同様であります。しかしながら、ウミガメの産卵という貴重な自然現象は、今日の私たちが何が何でも守り抜かなければならない自然の豊かさを象徴する生態系であります。
 みなべ町にあっても産卵への影響が懸念されることから、地元の保全団体・みなべウミガメ研究班の皆さんが中心となって、観察は許可制とし、亀が上陸し、産卵のための穴を掘るまで、そして産卵後、海に戻っていく、こうした場面まで観察を禁止しております。砂浜に掘った穴に産卵し、その穴を埋め戻す場面は観察ができることになっていますが、その際にあっても、ライトを当てたり大きな声を出したりしないよう、できるだけ遠くから観察するようになどの指導を厳しく行っているところであります。
 自然保護と観光振興、その共存共栄は、いつの時代でも、どこの地域でも大変難しいテーマでありますが、ウミガメの産卵するときの、うれしいのか、苦しいのか、またまた恥ずかしいのか、あの涙を見ていると、私たちはやはり全てを超えてこの環境を保護・保存しなければならないという決意をする次第であります。ウミガメの産卵する環境を守り伝えていく、今を生きる私たちが何が何でもやり抜かなければならないテーマであると決意する次第であります。
 千里の浜にこれからも尽きることなくウミガメが訪れ産卵し、子亀が大きくなってまた千里の浜を訪れる、100年後の子や孫たちが目にするであろうこの光景は、私たちが今、何を決断し、何を行動すべきかにかかっております。千里の浜の手つかずで残された白砂青松のこの貴重な自然環境を保護・保全し、ウミガメの産卵という神秘的で神々しいこの貴重な生態を未来遺産として認定・登録し、後世への私たちの自然の贈り物として、はやりの言葉で言えば「レガシー」として残していこうではありませんか。
 既に屋久島では、NPO法人により屋久島うみがめ館が整備され、運営されています。また、三重県でも、紀宝町にウミガメ公園を整備し、ウミガメの飼育や展示を行っております。千里の浜においてもこうしたさまざまな取り組みが考えられますが、私は、ここは一番、じっくり慎重に取り組むことが大切ではないかと考えております。
 神代の時代から続いてきたこのかけがえのない貴重な自然資源をどういう方向で取り組み、どう整備、活用すればいいのか、どうすればこの貴重な自然が守られ、観光と共存することができるのか、地域振興に資することができるのか、広く専門家の知識をおかりし、地域の方々の声を聞き、後世に恥ずかしくない歴史を引き継ぐ覚悟で取り組んでいく姿勢が大切なのではないかと思っております。
 未来遺産の登録が実現されれば、それを契機に千里の浜ウミガメプロジェクトを立ち上げ、和歌山県の魅力、名所をもう1つつくり上げていきたいと希望に夢膨らませております。ウミガメが産卵する千里の浜を日本の未来遺産へという提案に対する知事の感想と所見をお伺いする次第であります。
 以上で、私の最初の質問を終わります。
○議長(浅井修一郎君) ただいまの坂本登君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) まず、世界農業遺産の関連で、これからの取り組みということで申し上げたいと思います。
 世界農業遺産への認定が実現して1年が経過いたしました。御提案をいただいた坂本議員を初め、地域の皆様から厚い御支援をいただきまして認定できましたことを改めて感謝申し上げたいと思います。議員お話しのように、地元の方々が大きな自身と誇りを持たれていることは大変喜ばしく、また、自産自消、地産地消、地産外商の3つの分野が重要という話も全く同感でございます。
 みなべ・田辺の梅システムは、江戸時代から約400年続いた循環型農業システムでございまして、まさに世界に誇れるものであると考えております。このみなべ・田辺の梅システムを今後も継承していくことは大変重要でありまして、地域の皆様と力を合わせて世界農業遺産の取り組みを進めてまいりたいと思います。そうすることで梅農家の所得向上もできれば図られ、それによって後継者も確保され、そして地域経済の活性化、観光振興、そういうものにつながっていくものと考えております。
 私は、こうした考えから、ことし6月に世界農業遺産活用による地域振興アクションプランを策定したところなんですが、これを着実に実行してまいりたいと思います。
 せっかくの世界農業遺産も、登録はスタートでございます。ゴールではございません。これをいかに活用していくかということが大事でございますが、登録後、ちょっと当県のフォローアップが他県に比べて少し気の緩みがあるのではないかというふうに、県庁内の議論でございますが、そういうようなことも少し議論したところもございます。地元の方々とも協力して、どんどん行動していきたいというふうに考えております。
 1つのアイデアですが、パンチをもう一度つけないかんと。何度もつけないかんのですが、大きな梅製品の物産展、これとあわせた大きなシンポジウムを東京など発信力のある大消費地で行うことも一案ではないかと個人的には思います。また御相談したいと思います。
 その次に、ウミガメが産卵する千里の浜の件でございます。
 いつもながら、坂本議員には目を開かされる思いがいたします。私も、孟子谷の活動とか、あるいは、もうずっと昔からの田辺の天神崎のナショナルトラストとか、そういうものについては非常に高く評価をしていたんですが、これにウミガメの千里の浜がいけるというふうにはちょっと思ってなかったもんですから、これはいいことをお聞きしたというふうに思っております。
 このプロジェクト未来遺産は、日本のすばらしい自然や文化を守り、子供たちの未来に残すため、市民が主体となって取り組む活動を登録し支援する事業として、草の根的に取り組むさまざまな活動を応援するものであるというお話は、坂本議員の御指摘のとおりでございます。
 みなべ町の千里の浜は、私も車窓から、あるいは近くへ寄ってよく拝見いたしますけど、本州で最もアカウミガメの産卵密度の高い砂浜として知られ、議員御指摘、御説明のとおり、南部町ウミガメ研究班が京都大学やNPO日本ウミガメ協議会などの協力を得ながら長年にわたり調査・保護活動を続け、青年団を中心とする若い世代へと引き継がれているということは、いわば自然環境保護活動の模範ともいうべきものであると思います。これまで活動に携わってきた多くの方々の御努力に敬意を表するものでございます。
 この活動をさきに述べた御指摘のプロジェクト未来遺産へ登録するという御提案につきましては、本県の自然環境保全の推進にとってまことに貴重な御提案であると考えます。登録申請は地域の団体が主体となって行わないといけませんので、地元一丸となって取り組んでいただき、それを県は担いで走ってみたいというふうに思っております。
○議長(浅井修一郎君) 農林水産部長鎌塚拓夫君。
  〔鎌塚拓夫君、登壇〕
○農林水産部長(鎌塚拓夫君) 世界農業遺産登録後の推移についてでございますが、先ほど知事からの答弁にもありましたが、県では、本年6月に策定した世界農業遺産活用による地域振興アクションプラン2016に沿って、これまで梅の販売促進、観光振興、システムの継承者の育成、国際貢献の4つを柱に、具体的に取り組みを行ってまいりました。
 梅の販売促進では、消費者に世界農業遺産のすばらしさと梅が持つ機能性を理解していただき、梅の付加価値向上につなげていくためのPR活動を展開してまいりました。
 一例を申し上げますと、全国シンポジウムの開催や東京スカイツリーなど首都圏集客施設でのPR、世界農業遺産国際シンポジウムやツーリズムEXPOジャパンへの出展、国内外での物産展でのPRのほか、各種メディアを通じたPRなど、積極的に展開してまいりました。
 また、観光振興の面では、世界農業遺産の要素である地域資源の循環システムや景観、文化などを新たな観光資源として活用するとともに、熊野古道など既存の観光資源とも組み合わせて地域の魅力を知ってもらうこと、地域に来ていただくこと、そして地域で農産物を消費していただく取り組みを行ってまいりました。
 地域の魅力を知っていただくため、観光情報誌等への掲載や首都圏集客施設でのPR、地域に来ていただくための魅力的なモデルコースの作成などに取り組んでおります。また、集客施設や宿泊施設での梅干しの試食や梅ジュースの試飲イベントを実施し、消費拡大を図ったところでございます。
 システムの継承者の育成については、国際連合大学と共同で、地域の皆さんを対象に世界農業遺産の保全、活用についてのワークショップを開催し、世界農業遺産に関する知識をより深めていただくなど、地域のリーダーの育成に取り組んでいます。
 国際貢献については、本年度はアフリカや東南アジアからたくさんの研修生を受け入れ、農業や梅加工の実習などを初めとした体験、農家民泊などの取り組みを支援し、地元の若者たちとの交流を通じ多くのことを学んでいただくとともに、地域の魅力のPRにつなげることができました。
 世界農業遺産を活用した梅産業や地域振興のための取り組みを、引き続き、県としましてもより積極的に推進してまいりたいと考えてございます。
○議長(浅井修一郎君) 答弁漏れはありませんか。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(浅井修一郎君) 再質問を許します。
 坂本 登君。
  〔坂本 登君、登壇〕
○坂本 登君 知事並びに農林水産部長から答弁をいただきました。ありがとうございました。
 世界農業遺産、ウミガメに関する未来遺産、両方とも積極的ないい答弁をいただいたと思っていますが、重ねて何点か要望を申し上げたいと思います。
 まず、世界農業遺産についてであります。
 世界農業遺産の登録効果は、単に梅農家の所得向上にとどまることなく、この和歌山県の日高地方が梅という世界でもまれな農産物を栽培し、梅林という景観をつくり出し、梅加工や、全国あるいは海外にまで販路を有する一大産業をつくり上げてきたことを考えれば、言ってみれば梅コンビナートとも言うべき総合的な観点、地域を丸ごと捉えた対策が必要であろうと思っております。特に今後は、海外への販路拡大がこれまでに増して重要なテーマになってくると思っています。
 前回の質問でも申し上げましたとおり、梅は健康食品であるという世界共通のキャッチフレーズを前面に押し出し、販売戦略の展開を強く要望するものであります。
 次に、ウミガメに関する未来遺産についてであります。
 未来遺産への具体的な申請業務は、質問でも触れましたように、青年クラブみなべが行うこととなると思います。彼らは、これまでもウミガメの調査や保護に関する積極的な取り組みを続けてきておりますので、その実態や重要性については十分理解し、把握しております。知事の答弁にもありますように、県としても彼らの活動をできるだけ支援し、協力してあげていただきたいと思います。強く要望しておきます。
 それから、これは先の話になりますが、仮に未来遺産への登録がうまく進んだときには、質問でも触れましたが、このことを起爆剤として、ウミガメの保護・保存と地域の振興に地元関係者とともに力を合わせて取り組んでいただきたい。このことが千里の浜におけるウミガメの産卵という極めて貴重な自然環境を未来に守り続けていくことにつながっていくものと、かたく信じております。その際は、県の予算措置や人的支援についてもあわせて御協力をいただきますよう重ねてお願いし、私の要望といたします。
 ありがとうございました。終わります。
○議長(浅井修一郎君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で坂本登君の質問が終了いたしました。(拍手)

このページの先頭へ