平成28年12月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(全文)


平成28年12月 和歌山県議会定例会会議録

第2号(全文)


汎用性を考慮してJIS第1・2水準文字の範囲で表示しているため、会議録正本とは一部表記の異なるものがあります。

正しい表記は「人名等の正しい表記」をご覧ください。

平成28年12月
和歌山県議会定例会会議録
第2号
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議事日程 第2号
 平成28年12月9日(金曜日)
 午前10時開議
 第1 議案第226号から議案第249号まで並びに諮問第1号(質疑)
 第2 一般質問
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会議に付した事件
 第1 議案第226号から議案第249号まで並びに諮問第1号(質疑)
 第2 一般質問
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出席議員(41人)
 1番 堀 龍雄
 2番 中西峰雄
 3番 森 礼子
 4番 立谷誠一
 5番 前芝雅嗣
 6番 浅井修一郎
 7番 井出益弘
 8番 宇治田栄蔵
 9番 秋月史成
 10番 川畑哲哉
 11番 泉 正徳
 12番 濱口太史
 14番 尾﨑太郎
 15番 尾崎要二
 16番 中村裕一
 17番 鈴木太雄
 18番 岩田弘彦
 19番 藤山将材
 20番 服部 一
 21番 冨安民浩
 22番 吉井和視
 23番 中本浩精
 24番 中 拓哉
 25番 山本茂博
 26番 岸本 健
 27番 谷 洋一
 28番 新島 雄
 29番 岩井弘次
 30番 多田純一
 31番 片桐章浩
 32番 藤本眞利子
 33番 浦口高典
 34番 山下直也
 35番 山田正彦
 36番 菅原博之
 37番 谷口和樹
 38番 奥村規子
 39番 雑賀光夫
 40番 松坂英樹
 41番 坂本 登
 42番 長坂隆司
欠席議員(1人)
 13番 花田健吉
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説明のため出席した者
 知事         仁坂吉伸
 副知事        下 宏
 知事室長       宮﨑 泉
 危機管理監      和歌哲也
 総務部長       浦上哲朗
 企画部長       髙瀨一郎
 環境生活部長     日吉康文
 福祉保健部長     幸前裕之
 商工観光労働部長   岡本圭剛
 農林水産部長     鎌塚拓夫
 県土整備部長     森戸義貴
 会計管理者      岩橋良晃
 教育長        宮下和己
 公安委員会委員長   大桑いく嗣
 警察本部長      直江利克
 人事委員会委員長   守屋駿二
 代表監査委員     江川和明
 選挙管理委員会委員長 上山義彦
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職務のため出席した事務局職員
 事務局長       上坊 晃
 次長         西原龍也
 議事課長       中谷政紀
 議事課副課長     浜野幸男
 議事課課長補佐兼議事班長
            長谷哲生
 議事課主任      保田良春
 議事課主任      岸裏真延
 議事課主査      浅田晃秀
 総務課長       糸川 徹
 政策調査課長     中口 匠
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  午前10時0分開議
○議長(浅井修一郎君) これより本日の会議を開きます。
 日程に先立ち、諸般の報告をいたします。
 過日提出のあった議案第228号から議案第233号まで、議案第237号、議案第238号及び議案第240号は、いずれも職員に関する条例議案でありますので、地方公務員法第5条第2項の規定により人事委員会の意見を徴しましたところ、文書により回答がありました。お手元に配付しておりますので、御了承願います。
 日程第1、議案第226号から議案第249号まで、並びに諮問第1号を一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第2、一般質問を行います。
 3番森 礼子君。
  〔森 礼子君、登壇〕(拍手)
○森 礼子君 おはようございます。森礼子です。12月議会の1番目の質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。議長のお許しをいただきましたので、通告に従って質問をいたします。
 初めに、新長期総合計画と平成29年度の新政策について伺います。
 いよいよ、我が国は、本格的な人口減少時代に入りました。さきの平成27年国勢調査では総人口が初めて減少となり、構成比では15歳未満人口が12.6%に低下する一方、65歳以上人口が過去最高の26.6%となるなど、少子化、高齢化はますます進んでまいりました。また、経済、社会のグローバル化が進み、新興国市場の存在感が増すとともに、IoTや人工知能、ロボット等の技術革新が我が国の産業構造や国民の生活に大きく影響してまいります。加えて、近年の地震・津波等の大規模自然災害の相次ぐ発生は、災害対応や国土形成のあり方、国民の防災・減災に対する意識を大きく変えることとなりました。
 このような時代の潮流の変化に対し、安倍総理は就任以来、日本再興戦略、地方創生、国土強靱化、一億総活躍社会といった重要な政策を矢継ぎ早に打ち出し、着実に政治を進めてまいりました。また、本年8月には、28兆円もの未来への投資を実現する経済対策を決定いたしました。関連経費を盛り込んだ補正予算がおよそ2カ月で成立したのも、国として真剣に取り組む姿勢のあらわれだと高く評価しています。
 一方、本県では、人口は全国に先駆けて昭和60年から減少に転じ、若年層の県外転出が続いています。さらには、30%を超える高齢化率、南海トラフ地震を初めとする大規模自然災害の脅威など、大きな課題を抱えています。しかしながら、本県は、京阪神や関空に近い、太平洋に面しているといった地政学的に有利なことや豊かな自然、歴史、文化など、将来の発展につながる高いポテンシャルを有しています。多くの課題を克服し、持てる強みを生かして本県を活性化するためには、時代の変化に応じたビジョンをつくり、県民の皆様に示して、一丸となって取り組んでいくことが何より重要です。
 さきの6月定例会において知事が答弁された、大きな状況変化に対応するため、改めてこの先10年間の戦略を一から練り直し、県民の皆様にその総合的な指針を早期に示すことが重要であるというふうなお考えに、私も大いに賛同するところであります。
 県当局では、4月早々に知事を本部長とした新長期総合計画策定本部を制定し、県内の数多くの関係団体や市町村長、並びに県外の有識者の方々からさまざまな御意見をいただいたと伺っております。我々自由民主党県議団も、早速意見を取りまとめ、7月22日、県当局に提言するとともに、9月には、行政改革・基本計画等に関する特別委員会において示された素案に対して、出席者からさまざまな意見が述べられたところであります。
 そこで、知事にお伺いいたします。
 今定例会の冒頭で、知事から、徹底した議論を重ね、新長期総合計画の原案を作成し、次の特別委員会において説明する旨の説明がありましたので、この場での詳細な質問は控えますが、これまでの議論を踏まえ、新長期総合計画の作成に当たってどのような本県への将来像を描こうとされているのか、知事の思いをお伺いいたします。
 また、平成29年度は、作成中の新長期総合計画の初年度に当たる重要な年であります。県当局では、夏以降、新政策の議論が進められていると伺っています。平成29年度新政策について検討するに当たり、新長期総合計画に掲げる目指す将来像も踏まえ、知事にはこれまでとは違った強い意志もあろうかと思います。その知事の決意についても重ねてお伺いいたします。
 次に、財政運営についてお伺いします。
 新政策を進めていくためには、持続可能な県政を心がけ、財政の健全性を損なわないような財政運営を行っていく必要があります。
 そこで、新政策を推進しながら県財政の健全性を確保するため、新年度予算においてどのように財政運営をされようとしているのか、知事にお伺いいたします。
○議長(浅井修一郎君) ただいまの森礼子君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 本県では、全国より速い流れで人口減少が進む中、持続可能で元気な和歌山県を実現するためには、繁栄を取り戻し、人口減少に一定の歯どめをかけることはもちろんのこと、世界に誇る豊かな自然や伝統ある歴史や文化、都会にはない暮らしやすい環境を生かし、全ての県民が安心して楽しく暮らせる社会を実現することが何よりも重要であります。
 このため、子供を産み育てやすい環境をより一層充実するとともに、県民の経済的な安定を生み出す雇用の場を確保し、多様でバランスのとれた産業構造を実現することが必要であります。また、経済、社会のグローバル化が急速に進展している今日、県民や県内企業が世界の中でみずからの位置づけを強く意識し、和歌山に愛着と誇りを持ちながら、世界を相手に幅広く活躍していくことも重要であります。
 このため、故郷和歌山を愛し、みずからの未来を切り開くことができる子供を育てるとともに、全ての産業が世界に広がる市場に積極果敢に挑戦し、また、世界から多くの人・物を受け入れる環境を整えることが必要であります。
 さらには、1人の犠牲者も出さないという決意のもと、南海トラフ地震を初めとする大規模な自然災害への対策もなお一層強化していくとともに、県民生活のさまざまな面で安心・安全な生活を守り、とうとい命を守る和歌山を実現することも大事であると思います。
 そこで、新しい長期総合計画は、本県の将来像を「世界とつながる 愛着ある元気な和歌山~県民みんなが楽しく暮らすために~」とし、「ひとを育む」、「しごとを創る」、「いのちを守る」、「くらしやすさを高める」、「地域を創る」という5つの分野で、それぞれ必要な施策の方向を明確に示したいと思いますし、その目指す将来像は必ず実現させるという強い決意で臨んでいるところでございます。
 このため、御指摘のように長期総合計画の初年度となる平成29年度の新政策につきましては、昨年策定いたしました和歌山県まち・ひと・しごと創生総合戦略に立脚しつつ、新たな長期総合計画の策定の中で示そうと考えている政策を、固定観念にとらわれない大胆かつ斬新な発想をもって具体化してまいりたいと思います。その際には、本県の社会構造の変革に結びつくような仕掛けづくりを行っていかなければいけないというふうに思っております。
 全体の概要は今議会の冒頭説明のとおりでございますが、特に力を入れていきたい新たな取り組みとしては、まず、少子化対策についてより一層傾注してまいりたいと考えております。具体的には、社員の結婚を積極的に応援する企業・団体を組織化し、企業交流型の男女の出会いの場を提供する仕組みを構築するとともに、独自の子育て支援制度を設けている企業を登録、顕彰し、すぐれた取り組みを県内全域に普及させることで、社会全体で結婚や子育てを応援するという新たな文化を全県的に創出したいというふうに思っております。
 また、現在の人口減少社会において、経済活動や社会活動に必要な労働力を確保するためには、高齢者や女性の活躍が不可欠であります。そこで、高齢者がこれまで培ってきた専門的な技能や知識を生かして活躍できるよう、社会ニーズの掘り起こしと人材マッチングの仕組みを構築したいと思います。
 あわせて、女性の挑戦への意欲を引き出すため、女性の継続就業等に率先して取り組む企業・団体を組織化するとともに、女性の就活サイクルをつくり出していきたいというふうに思いますし、また同時にその際、一旦職を離れた人や、あるいは職を変わろうとする人、特に、大都会でしばらく働いて、そろそろこの辺で故郷に帰ってもいいかなあと思ってる人も、和歌山での就職が容易に行えるような、そういうこともあわせて考えていきたいと思っております。
 さらには、年齢を重ねてもそれぞれの希望に応じて社会生活できる80歳現役社会を実現する。そのためには先ほど申しましたような活躍の場を提供する仕掛けが必要ですが、同時に、健康づくりのために、全ての県民が多様な健康づくり活動に参加しながら楽しく健康増進を図る仕組みを構築し、健康増進県民運動を県内全域に構築してまいりたいと考えております。
 これらの政策については、一朝一夕には実現できない政策であると考えておりまして、現在も鋭意検討を重ねているところでございますが、将来の和歌山を見据え、困難に立ち向かい、本県が目指す将来像の実現に向けた礎となる新政策であろうかと思いますので、いいものをつくり上げ、かつ予算原案を作成して、2月の県議会に出さしていただきたいと思っております。
 続きまして、財政運営でございますが、これは10年前にありました──あのときでいうと2年半でパンクとか、そういう危機は脱しておりますけれども、まだまだ手放しで安心というわけにはいきません。そこで、限りある行政資源を効率的、効果的に配分するために、既存事業についてはマイナス5%のシーリングを実施するとともに、選択と集中及びスクラップ・アンド・ビルドの方針を徹底して、全ての事業について一層の見直しに取り組んでいるところでございます。
 また、引き続き県税の確保等に努めるとともに、国の予算編成の動向に留意し、さまざまな財源の確保策を講じていきたいと思います。
 このように、来年度の新政策を着実に実行しながらも財政の健全性を確保し続けるような、そういう財政運営を行っていきたいと考えております。
○議長(浅井修一郎君) 森 礼子君。
  〔森 礼子君、登壇〕
○森 礼子君 次に、和歌山県の子育て支援について質問いたします。
 新聞報道によると、厚生労働省は、来年度から共働き世帯などが早朝や夜間でも子供を見てもらえるよう、国がベビーシッターの利用料を半額補助するほか、子育てサービスの拡充をするとされています。
 県内の保育所では、延長保育を含めて午前7時から午後7時までしか預かってもらえないところが大半です。このため、希望する仕事が早朝など会社の時間中に迎えに行けない場合は、近くの保育所で定員にあきが出たとしても待機児童になるケースがあるとのことです。低価格で時間外にベビーシッターを使うことができれば、働き方も柔軟性が増し、生活しやすくなる家庭もふえるのではないでしょうか。
 具体的には、ベビーシッターやファミリーサポート事業などの利用料の一部を補助する方向で検討がなされています。国に加えて市町村が独自に上乗せし、さらに補助率を高められるようにするとのことです。この補助スキームであると、県費負担の必要はないかもしれませんが、国の動向を的確に把握し、実施主体となる市町村への周知など、万全を期していただきたいと思います。このことについては、要望にとどめておきます。
 私は、女性が輝く社会の1つの柱として仕事と子育ての両立は不可欠であると訴え、質問してまいりました。政府も、私が訴えてきたとおり、仕事と子育ての両立に励む人の声を酌み取り、財政支援も強化されようとしています。
 今回の新政策の「少子化をくい止める」には全く含まれていませんでしたが、子育て日本一を掲げる本県が胸を張って日本一だと言えるように、積極的に取り組んでいただけることを期待して質問いたします。
 まずは、待機児童解消の取り組みの強化について、前議会で福祉保健部長から、3歳未満の利用希望の増加や昨年10月1日に215人の待機児童が発生したことを受け、年度途中でも産休明けや育休明けにスムーズに入所ができるよう市町村に受け皿整備を強く要請するとともに、保育士修学資金等貸付事業の準備、さらには国の補助制度を活用した企業内保育所の整備を推進し、より一層待機児童解消に取り組んでいくとの答弁をいただきました。
 そこで、待機児童の現状と来年度の取り組みの強化についてお伺いします。
 本年4月1日には10名であった本県の待機児童は、10月1日現在では何人となっているのでしょうか。現状を踏まえ、今後どのような取り組み強化を考えているのか、福祉保健部長に伺います。
 次に、病児・病後児保育の充実について。
 本年2月と前議会において、病児・病後児保育の充実のための国の財政支援の強化について具体的に指摘しておりますので、繰り返しませんが、アンテナを高く、国の財政支援をうまく活用していただくとともに、県費負担にも御配慮いただき、今後の病児・病後児保育の充実について、福祉保健部長に伺います。
 次に、児童相談所の機能強化について。
 親の虐待による幼い子供の死亡についての報道が後を絶ちません。また、児童相談所における児童虐待相談件数が増加しています。本県でも、平成23年度653件、平成24年度714件、平成25年度793件、平成26年度は932件と右肩上がりの状況です。さらに、児童虐待相談対応の内容は、複雑、困難なケースが増加しているとのことです。児童相談所の職員の皆さんは、日々幼い子供の命を救うため、虐待が疑われる父母から子供を引き離すという厳しい判断をすることが課せられています。児童虐待防止も災害対応と同じように、空振りは許されても見逃しは許されないという厳しい現場対応が求められているのではないかと推察いたします。現場の職員の皆様は、日々大変な重責のもと働いていただいていることに感謝を申し上げます。
 国では、本年5月末に、児童虐待に関する対策強化の一環として、児童相談所の体制、専門性や権限の強化を図るとともに、里親や養子縁組に関する支援を児童相談所の業務として位置づけることを柱とした児童福祉法等の一部を改正する法律が成立いたしました。この法律改正により、都道府県は、児童相談所に児童心理司、医師または保健師、指導・教育担当の児童福祉司を置くとともに、弁護士の配置またはこれに準ずる措置を行うものとされました。また、児童相談所の業務として、里親の開拓から児童の自立支援までの一貫した里親支援が位置づけられました。
 厚労省では、児童虐待への対応強化として、全国の児童相談所による弁護士の利用促進や、警察官OBなど非常勤勤務の採用拡大による体制強化に乗り出し、本年度予算の概算要求に約140億を盛り込んだことが報道されました。本県では、弁護士の利用は進んでいますが、国の児童相談所の機能強化支援策を踏まえ、来年度に向け、本県でも児童相談所の体制拡充が必要だと思います。
 また、児童虐待防止に向けた連携を強化するため、県警と児童相談所を所管する都道府県との間で、児童虐待が疑われる児童の情報共有に関する協定が締結される例が全国で5件あると聞きました。
 児童虐待をめぐっては、埼玉県でことし1月、顔にやけどを負った3歳の女児が遺体で見つかる事件があり、警察が近隣住民から110番通報を受けていたものの、けがを確認できず、児相への通告を見送ったとされ、警察庁が関係機関に情報共有を徹底するよう通達を出しています。
 本県では、児童虐待が疑われる児童の情報共有に関する協定の締結についてどのように考えておられるか、福祉保健部長に伺います。
 この項目の最後に、子育てしながら働きやすい職場づくりについて質問いたします。
 ここまで、病児・病後児保育の充実を初めとする仕事と子育ての両立のための支援の強化について質問してまいりましたが、共働き世帯やひとり親の子育てを支援するサービスと同じぐらい、もしくは、より重要なことは、子育てしながら働きやすい職場づくりでないかと考えます。
 例えば、子供が急病になったときには、親として子供を見守れる環境をもっと整えていくことが重要であると思います。子育てしながら働きやすい職場づくりを県内企業に求めていくためにも、県庁がまずそのような職場である必要があると思います。
 産休や育休のとり方はもとより、年次有給休暇の取得促進、超過勤務の縮減、育児短期時間勤務の活用推進など、県庁において働き方改革の推進や子育てしながら働きやすい職場づくりにどのように取り組んでおられるのか、総務部長に伺います。
 また、県内の民間事業所に対し、どのような取り組みがされているのか、商工観光労働部長に伺います。
○議長(浅井修一郎君) 福祉保健部長幸前裕之君。
  〔幸前裕之君、登壇〕
○福祉保健部長(幸前裕之君) 待機児童解消の取り組みについてお答えします。
 本年10月1日現在の待機児童は286人、そのうち261人は和歌山市で、全て3歳未満児となっております。近年、ゼロ歳児から子供を預けたい方が大幅に増加しており、和歌山市を例にとれば、出生数は減少しているにもかかわらず、平成25年から平成28年の3年間で、10月1日現在のゼロ歳から2歳の入所児童数が268人、待機児童数が228人増加し、合計では496人の新たな保育ニーズが発生しております。
 ゼロ歳から2歳の低年齢児の保育ニーズが急激に増加する一方で、数年先にも子供の数が確実に減少する見込みもあり、市町村も今後の見きわめに苦慮しているところです。また、低年齢児保育では、3歳以上の保育と比べ、広い施設面積や保育士の重点的配置が必要であることから、待機児童の解消を図るには、施設整備と保育士確保の両面での対策を行う必要があります。
 具体的に申し上げますと、まず施設整備に関しては、保育の実施主体である市町村と連携しながら整備を進めているところです。特に、待機児童が多く発生した和歌山市では、整備計画に基づき現在5園の保育所を整備中で、来年4月には92人の3歳未満児の定員増が見込まれておりますが、低年齢児の保育ニーズに追いつかない状況でありますので、より早急な受け皿整備に取り組むよう和歌山市に強く要請しているところです。
 また、企業内保育所も重要です。認可保育所並みに補助金が引き上げられた今年度創設の内閣府補助制度を活用し、和歌山市を中心に企業内保育所の整備についても積極的に働きかけており、既に県内で4件の助成が決定され、現在手続中の企業も数件あります。これらにより、来年4月には120人程度の受け皿が整備される予定となっております。企業内保育所の整備については、今後とも県内企業へ積極的に働きかけてまいります。
 保育士確保につきましては、保育士を必要とする現場と復帰を希望する潜在保育士のマッチングや、返還免除つき貸付事業により保育士確保を図っているところです。今年度からは、小学校教諭を保育士とみなすなどの特例的な運用も踏まえて、保育人材確保に取り組むよう市町村に働きかけてまいります。今後とも、待機児童解消に鋭意取り組んでまいります。
 次に、病児・病後児保育の充実についてお答えします。
 病児・病後児保育は、仕事と子育ての両立を図るための子育て支援策として重要であり、県全域での実施が必要と考えております。
 現在、7圏域15市町で実施されておりますが、特にニーズの高い医療機関で実施されている病児保育は、4圏域5カ所にとどまっている状況です。また、同時に受け入れできる定員の問題もあり、地域によっては、インフルエンザの流行時期等には、全てのニーズに対応できていない場合もあると聞いております。
 県としては、対象年齢の拡大や施設数の増加により、必要な場合には病児・病後児保育を利用できる体制を整えることが必要であると認識しており、医師会等に補助制度の周知を行ってきたところです。その結果、今年度、国で創設された病児保育の整備補助等を活用し、和歌山市内の医療機関1カ所で来年度中に病児保育を新たに開設することになり、現在準備を進めているところです。
 今後も、県全域での実施に向け、実施主体である市町村や医師会等関係機関に働きかけてまいります。
 続きまして、児童相談所の機能強化についてお答えします。
 児童虐待事案については、虐待対応の中核を担う児童相談所が関係機関と緊密な連携を図り、子供の安全確保を最優先に対応することが重要です。このため、県におきましては、子供の生命、身体の保護を責務とする警察との連携体制の強化に取り組んできたところです。具体的には、人事交流として平成23年度から中央児童相談所に現役警察官を配置し、対応困難事例等に係る警察への援助要請など、円滑に業務を遂行できる体制を構築しているほか、児童相談所と警察職員合同の研修や訓練を定期的に実施し、職員の資質向上に努めているところです。
 議員御質問の警察庁通達並びに同日付で発出された厚生労働省通知につきましては、その趣旨を踏まえ、児童相談所と警察相互において情報共有に関する協定を本日付で締結し、虐待兆候を見逃すことなく適切な初期対応をできるよう、さらなる情報共有を図ってまいります。
○議長(浅井修一郎君) 総務部長浦上哲朗君。
  〔浦上哲朗君、登壇〕
○総務部長(浦上哲朗君) 県庁における子育てしながら働きやすい職場づくりについてお答えします。
 議員御指摘のとおり、仕事と子育ての両立を支援するためには、子育てをしながら働きやすい職場づくりへの取り組みが重要であると認識しております。
 県庁では、産前産後休暇、育児休業に加えまして、育児短時間勤務、部分休業など、妊娠、出産、育児のそれぞれの段階において制度充実に努めるとともに、働きやすい職場の環境づくりに取り組んでいるところです。また、男性が利用できる子育て関連制度、これを創設しまして、男性職員の積極的な育児参加にも努めているところです。
 今後とも、子育てしながら働きやすい職場づくりを推進してまいります。
○議長(浅井修一郎君) 商工観光労働部長岡本圭剛君。
  〔岡本圭剛君、登壇〕
○商工観光労働部長(岡本圭剛君) 県内民間事業者の子育てしながら働きやすい職場環境づくりについてお答えします。
 民間事業所においても、労働基準法や育児・介護休業法に基づく産前産後休業、短時間勤務制度、子供の看護休暇など、出産、子育てをサポートする制度があります。また、代替要員の確保や育児休暇からの復帰を支援する助成制度も設けられており、人材確保の面からも働きやすい職場環境への要請が強まる中、子育て支援の充実に取り組む事業所がふえております。
 議員御質問の子供の看護等で急に休む必要が生じた場合への対応につきましても、労使協定を結ぶことによって、時間単位で年次有給休暇が取得することができます。
 こうした取り組みを進めるには、経営者や従業員の意識改革が欠かせないことから、県では、子育て支援に関する制度や職場環境づくりに積極的な企業の取り組みを出前講座やホームページ、パンフレットで紹介し、啓発しているところです。また、就業規則の見直し等のための助言指導を行う社会保険労務士の派遣も行っているところです。
 今後も、県内事業者における子育てしやすい職場環境づくりを一層促進してまいります。
○議長(浅井修一郎君) 森 礼子君。
  〔森 礼子君、登壇〕
○森 礼子君 答弁をいただきましたが、待機児童の解消とか病児・病後児保育の解消などは、事業主体が市町村であるということで、全県域での実施に向けて市町村に働きかけますということでありますが、市町村も一生懸命取り組んでいただいている中で、県としてどのように取り組んでいくのかということも視野を広げて取り組んで、すばらしい子育てができるような環境を求めていただきたいと思います。
 それと、きょう付で児童虐待の共有提携がなされたということなんですけれども、その兆しを見逃さないようにしっかりと求めていっていただきたいと思います。
 それと、県庁内の職場環境の数字が何か出ているということなので、もし今後、数字がわかるようなものを資料で提供していただければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 では、次の質問、第二阪和国道及び京奈和自動車道の推進について質問します。
 第二阪和国道、京奈和自動車道は、当初、紀の国わかやま国体・大会までの供用開始を目標に取り組んできましたが、工事のおくれで延期をした経緯があります。
 国体からはや1年が経過した現状は、国土交通省近畿地方整備局は、第二阪和淡輪─平井間、京奈和自動車道岩出根来─和歌山ジャンクション間は、平成28年度中に開通予定と発表されています。
 先日、所用で大阪に向かう途中、せっかくなので車をとめて第二阪和の工事現場を見てまいりました。最初は随分工事が進んできていると思ったのですが、現場を見て素人の私でさえ28年度中供用開始に間に合うのかと心配いたしました。進捗状況を現場の人に聞いてみたところ、現在、盛り土の工事中で、続いて砕石、舗装という経過であると伺いました。工事は、昼夜突貫工事で行われており、28年度開通に向けて進めているそうです。
 そこで、これら第二阪和国道及び京奈和自動車道の現在の進捗状況について、県土整備部長に伺います。
○議長(浅井修一郎君) 県土整備部長森戸義貴君。
  〔森戸義貴君、登壇〕
○県土整備部長(森戸義貴君) 第二阪和国道と京奈和自動車道の事業の進捗状況について、御質問を頂戴いたしました。
 第二阪和国道淡輪ランプから平井ランプ間と、京奈和自動車道紀北西道路岩出根来インターチェンジから、仮称でございますが、和歌山ジャンクション間の完成の見込みにつきましては、国土交通省が公表している事業計画通知において、両路線ともに平成28年度開通予定であることが明記をされてございます。
 あわせて、第二阪和国道につきましては、ことしの8月に、事業を担当する浪速国道事務所が開催した工事状況説明会において、孝子ランプなど工程的に厳しい箇所があるものの、平成28年度開通を目指すという説明が行われてございます。なお、その後も平成28年度開通予定が変更になったなどの報告は、これまでに受けてございません。
 県といたしましては、確実にこれらの区間が今年度内に開通するよう、今後も引き続き国土交通省に働きかけてまいります。
○議長(浅井修一郎君) 森 礼子君。
  〔森 礼子君、登壇〕
○森 礼子君 私も、28年度中に供用開始がされることを楽しみにしてまいります。
 では、次の質問に入ります。
 次は、コスモパーク加太の利活用について伺います。
 コスモパーク加太は、和歌山市加太、磯の浦に位置する252ヘクタールの広大な土地であります。平成6年に関西国際空港が開港された暁には、和歌山の新たな観光名所として住友グループなどが進出し、経済の活性化が期待されていました。
 しかし、バブル崩壊後は、多様な努力を重ねてはきましたが、なかなか当初の思惑どおりには進まず、現在に至っております。現在の処理方法は、年間6億円の返済を今後7年間続け、さらに債務保証231億円を一括返済し、土地は賃貸をやめて全て売却すると聞きました。
 なぜ、これまで企業誘致に至らなかったのか、なぜ借り手がなかったのか。このような状況の中、売却一本という方針で相手企業は見つかるのか。私は、視点を変えて戦略を考える必要があるのではないかと心配いたします。
 そこで、コスモパーク加太の今後について、どのような有効な利活用につなげていくのか、企画部長に伺います。
○議長(浅井修一郎君) 企画部長髙瀨一郎君。
  〔髙瀨一郎君、登壇〕
○企画部長(髙瀨一郎君) コスモパーク加太につきましては、企業誘致用地、公共施設用地、防災対策用地としての利活用に向け取り組んでおります。現在、企業用地として、加太菜園、メガソーラー発電所が稼働しております。公共施設用地としては、県消防学校が来年4月に開校を予定してございます。また、防災対策用地としては、県の第一広域防災拠点としてヘリポートを備え、災害時の活用のため、各種防災訓練等に利活用しております。
 なお、コスモパーク加太の対策につきましては、新行財政改革推進プランに示しており、県民へも公開しております。
 今後も、「調停に代わる決定」の返済スキームを確実に実行していきながら、大規模用地が確保できること、自然災害に強いこと、京奈和自動車道や第二阪和国道など、今後アクセス面の向上があることなどをアピールし、商工観光労働部と連携して、早期売却に努めてまいります。
○議長(浅井修一郎君) 森 礼子君。
  〔森 礼子君、登壇〕
○森 礼子君 次に、統合型リゾート(IR)の推進について伺います。
 これまで、IR推進法案についてさまざまな議論が重ねられてきましたが、今国会中、12月14日までに可決・成立される見通しとなりました。また、ギャンブル依存症に対しても、政府で対策を講じていくとも報道されました。IR推進法を議員立法で推進いただきました二階俊博先生初め本県選出の国会議員、議連の細田会長など、国会の先生方に感謝申し上げます。
 IRについては、御存じのとおり、統合型リゾート施設のことであり、カジノだけではなく、遊園地やショッピングモール、世界各国のレストラン街や音楽ホール、プール、ホテル、コンベンションルームなどが融合した多様なレジャー施設であります。アメリカのラスベガスに加えて、最近はシンガポールやマカオが外資を受け入れて、世界中から観光客が訪れています。
 カジノ法案という言葉に賭博など暗くて悪いイメージをしがちですが、決してそうではありません。私も、マカオに2度視察に伺いました。IR施設は、たくさんの観光客でにぎわい、活気であふれていました。それだけではなくて、施設を少し離れてまちに繰り出してみると、すぐ近くには世界遺産があり、ポルトガルと中国がミックスした古い町並みと新しいIRが調和し、マカオ全体が観光地として魅力あるものとなっていました。私は、和歌山県の条件と重なるものを感じ、誘致と成功の兆しを持ち帰ってまいりました。
 これまで和歌山県においては、IR導入推進の立場から、これまでカジノの可能性に関する調査・研究報告書の作成や、県内自治体や経済団体の参加により、カジノ・エンターテイメント研究会の設立、特定複合型観光施設区域への地方の選定を政府要望など、取り組んでまいりました。
 以前、知事は「県発展のためにカジノの要素もあっていいと思っている」と発言されていますが、法律の成立に当たり、改めて知事のIRに対する姿勢についてお伺いいたします。
○議長(浅井修一郎君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) カジノを含む統合型リゾートについては、観光振興に寄与するとともに経済波及効果や雇用創出効果が期待でき、地域活性化につながる有効な手段の1つと、ずっと考えて行動してまいりました。ほぼ10年前から、沖縄県、神奈川県とずっと3県協議会をつくってこれを可能としようというような運動をして、政府に法整備などを要望してきたところでございます。
 私は、少し前は、カジノといっても御指摘のようなマカオとか、あるいはラスベガスのような大規模なIRでなくても、古くからの観光地である和歌山では、ヨーロッパに昔からあるようなホテル1個だけが隔離されて規制されてカジノになってる、そういうようなものでもいいんじゃないかというふうに考えて、そんな意見も言ってきたところもあるんです。
 しかし、幾つかの業界の方々と接触すると、和歌山でもやはりIR型のほうがやりやすいというか、そのほうが積極的に考えられますよというような企業が多いので、それならそういうことでもと、柔軟に考えてやっていったらいいんじゃないかと考えております。
 ただ、知事が理性的過ぎるのか、和歌山県が地味なためか、大阪の動きはマスコミがわあっと取り上げてくれるんですけれども、意識してか無意識なのかよくわかりませんが、当県の動きだけが報道の際には時として落とされるというようなことが起こっておりまして、少し苦笑しているというところでございます。
 今のような状況でございますので、IRの実現に向かうプログラム法の審議が進んでいるというのは歓迎したいと考えております。ただ、この先、私が考えると、より大事な手続法というか規制法というか、そういうものがないとこの話は進みませんし、また、どこでIRが認められるのかというようなことについても大事な局面が来ると思います。したがって、これはまだまだ先の話でございます。
 大事なのは、投資をする企業あるいは業者さん、そういうものがどういうふうに考えて和歌山との関与をつけてくれるかということが大事でございます。和歌山は、御指摘のように、ほかに観光資源もたくさんありますし関空にも近いわけですから、投資対象としてなかなかのところじゃないかなと私たちは思っておりますけれども、そういう企業の動向をアンテナを高くして、また、連絡を密にしてやっていきたいと考えております。
 ただし、先ほど御指摘がありましたような懸念される社会的リスクの問題については、同時に軽視すべきではないと私は思います。よく言われる暴力団組織の介入の排除とか、マネーロンダリングの防止の措置とかなども大事でございますけれども、何よりも住民のギャンブル依存症の防止をきちんと措置しておかなければならないというふうに思っております。
 しかし、私は、こういう点については、ちゃんとしたルールをつくり、そして適切な管理と隔離、それの規制をきちんと行うことにより防止できると考えております。そういうやり方なんですけれども、住民の特にギャンブル依存症の防止が最も大事な措置である、留意点であるということは、もう一度強調したいと思います。
 私は、一貫してカジノを含むIRの誘致論者でございますけれども、同時に、私は和歌山県の知事として、和歌山県の住民がギャンブル依存症に陥るのを防止する責任があると考えております。それは入場の規制を厳しく行うことによってかなえられると思いますけれども、パチンコ依存症の例などがよく議論されるように、割と開放的で楽観的で奔放な性格の方が多いような当県では、当分の間は和歌山県民はでき上がったカジノに入場できないというふうにしといたほうが安心かなあというふうに思っております。和歌山県民だけが入れないというのが技術的に難しければ、当分の間は日本人は入れないというのもありかなというふうに思います。
 これは、未来永劫そうでなきゃいけないということじゃなくて、カジノが定着して、そして、入場制限のやり方について、ギャンブル依存症の防止のためにこうやったらいいんだということがきちんと方法が確立されたら、そしたら、だんだんと和歌山人ないし、和歌山県民ないし日本人も楽しめるようにしたらいいんじゃないか、そんなふうに私は考えております。
○議長(浅井修一郎君) 森 礼子君。
  〔森 礼子君、登壇〕
○森 礼子君 コスモパークの利用に関しましては、関空が開港して約20数年時間がたっておりまして、その間、問題を抱えながらこれといった進展がなく結果に至っているわけですけれども、20年といったら、時代もすごく大きく変わってきていると思います。その中で、知事がおっしゃられた、6月の答弁で言ったというその大きな状況の変化に対応していくということも踏まえて、新しい視点で、今までと同じような考え方だけではなくて、取り組んでいっていただけるようにお願いしたいと思います。
 IRに関しましては、県民の皆様としっかりと話をして、リスクに対しては最大限にきちんと対応していく必要があると思いますけれども、これに関しても時代の流れで、後で後悔しないように、チャンスを逃してはいけないと思いますので、その点を含めてしっかりと進めていっていただけるように要望します。
 それでは、これで私の一般質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(浅井修一郎君) 以上で、森礼子君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 36番菅原博之君。
  〔菅原博之君、登壇〕(拍手)
○菅原博之君 おはようございます。議長のお許しをいただきましたので、しばらく私の質問におつき合いいただきたいと思います。
 本県では、ただいま新長期総合計画を作成中でありますが、皆様もそうであるように、私なりに本県の将来のあるべき姿をいろいろとこの機会に思い描くことができたと思っております。それと同時に、10年後の本県も、やはり今の本県の延長線上から逃れることはできないと改めて認識しなければならないと思っております。そういう観点から、最も大切なことは、今どう一歩を進めるかということであります。
 10年後の和歌山県は、何で発展しているのか、何で食べているのかを考えたとき、次の3つの行動が非常に重要だと思っております。1つ、農林水産業を新技術でてこ入れする、2つ、観光に知恵を絞り、インフラ、環境を整備する、3つ、産業界の新たな動きや資源に注目し、新技術にアンテナを張り、有望なものを本県に誘導すべく働きかけを行う、この3点について、将来の和歌山をどうするのかという観点から本日は質問させていただきたいと思います。
 1番目の農林水産業を新技術でてこ入れの部分では、先日発表の新政策においても、農業への新技術としてロボットやドローンについても触れられておりましたが、本日は林業を取り上げたいと思います。
 まず、前提の話としまして、先々月になりますが、私が委員を務めさせていただいている農林水産委員会では、立谷誠一委員長のもと7名の委員が県下の林業水産業さんのもとへ実情視察にお伺いさせていただきました。
 その際の、すさみ町に工場を置いておられる県下最大手クラスの木材業者さんのお話のポイントですが、仕入れ面で紀州材をもっと仕入れたいが、市場へ出荷される量が少なく、やむを得ず他県から木材を仕入れている、また、紀州材の扱い量は全体の15%であるということ、そして、販売面では、国産材と輸入木材の価格差はおおむね10%国産材価格が高いだけというお話で、なぜ紀州材の市場への出回りが少ないのかとの理由について業者さんの分析では、急峻な山の地形、搬出路の未整備、山林労働者の不足が大きいとのお話でありました。
 ここでのお話では、紀州材は市場で売りにくいから切り出さないというのではなく、切り出せば売れるのに切り出せないという現状があるということになります。急峻な山の地形、搬出路の未整備は機械化を一層進めて対応していくほかはありませんが、山林労働者の不足という点は構造的な課題と言えると思います。
 そこで、本日は、現地に一緒に足を運んで実情をお聞きくださいました農林水産部長に、作業従事者の賃金はどうか、安定した収入状態なのか、イメージ、定着率はどうか、また、農林大学校林業研修部の募集に対して応募状態はどうなっているのかをお尋ねいたします。
○議長(浅井修一郎君) ただいまの菅原博之君の質問に対する答弁を求めます。
 農林水産部長鎌塚拓夫君。
  〔鎌塚拓夫君、登壇〕
○農林水産部長(鎌塚拓夫君) 県内の現場作業員の賃金は、日給月給制による支払いが大半を占めている状況であり、毎月の収入は天候に左右される状況となっております。このため、雨天が続く時期については、仕事量が少しでも安定するように、事業体において下草刈り等、雨天時でも対応できる作業を整え、仕事量の確保に努めているところです。また、林業は、きつい、汚い、危険の3Kのイメージが強い産業ですが、現在は高性能林業機械の導入、作業道の整備等が進み、労働強度の軽減が図られています。
 新規就業者の定着状況につきましては、国が実施している緑の雇用事業における新規就業者に対する研修修了者のうち、3年後も就業している者の割合は、直近5カ年の全国平均が約7割、本県の平均は約8割となっており、全国平均よりも高い定着率となっています。
 今後、戦後植林した森林が伐採期を迎え、増産が求められる中、作業道の整備や機械導入等の基盤整備に対する支援を引き続き積極的に行い、収益を拡大することで、さらなる労働条件の改善が図られるよう事業体に働きかけてまいります。
 来年4月に開設する農林大学校林業研修部林業経営コースにつきましては、定員10名の募集に対し、11月に実施した前期選考試験の応募者は5名で、全員が合格いたしました。後期選考試験につきましては、1月16日から願書の受け付けを開始しますので、引き続き広く応募を呼びかけてまいります。広報活動としては、県内のハローワークやふるさと回帰支援センターでの1日相談ブースの設置、高校訪問等、積極的に実施してまいります。
○議長(浅井修一郎君) 菅原博之君。
  〔菅原博之君、登壇〕
○菅原博之君 ありがとうございます。なかなか厳しい状況だと認識いたします。
 林業というものは、伐採しただけでは終わらずに、その後の植栽、また成木になるまでの下草刈りなどの手入れや、いろいろな費用がかかってまいりますので、ただいまの農林水産部長の御答弁の中にもありましたが、事業体の収益を改善することが抜本的な解決であろうと考えます。
 つまり、商売としてたくさん出荷して、十分な利潤を生む産業に育てなければなりません。そして、その利潤からしっかり納税していただく、和歌山県の将来のために、ぜひ林業が元気になってもらわなくてはなりません。
 そこで、次は、紀州材の魅力を高めるために現在行われていることの評価について、再度、農林水産部長にお尋ねしたいと思います。
○議長(浅井修一郎君) 農林水産部長。
  〔鎌塚拓夫君、登壇〕
○農林水産部長(鎌塚拓夫君) 紀州材の魅力を高めるために現在行われていることについてですが、県では、紀州材・家づくりフェアやわかやま木の家コンテストの開催など、紀州材による家づくりのPR、また、首都圏を初めとした県外の大消費地における展示会への出展など、販路開拓に向けた取り組みを行っているところです。
 各イベント開催に際しましてはアンケートを実施しており、ユーザー側から、色艶がよい、強度がある、耐久性があるなどの回答が寄せられていることから、紀州材は見た目も性能もすぐれた製品として認知されており、事業の効果が上がっているものと考えています。
 その一方で、国内他産地や外材との競争はますます厳しくなってきており、さらに住宅着工戸数の減少が見込まれていることから、今後、紀州材の利用を進めていくためには、これまでのPR活動や販路開拓に関する取り組みを継続していくことに加え、最終ユーザーである一般消費者に直接紀州材の魅力をPRするための取り組みを強化する必要があると考えています。
 そのため、県では、一般消費者に近い工務店や建築士など、住宅供給者側から紀州材を使った家づくりの魅力を伝えていただく体制づくりのため、本年10月1日より紀州材の家づくり協力店登録制度を創設したところです。また、首都圏など大消費地において紀州材ファンとなる建築士を開拓していくための取り組みなどを通じて、一般消費者に対して紀州材の魅力を御理解いただけるような機会の創出に努めてまいります。
○議長(浅井修一郎君) 菅原博之君。
  〔菅原博之君、登壇〕
○菅原博之君 ありがとうございます。他の業界では本来は業者さん側の団体が行う内容までもよく網羅された取り組みだと思います。行政の御努力が実るようにと思っております。
 その上で、御答弁にあったように、国内他産地との競争という厳しい現実も出てまいります。私は、紀州材の印象を強烈に訴えるには、住宅建築のみならず、近代的な施設、ビルに効果的に紀州材を使うべきだと考えております。
 ただ、使用するということでは、国の法律でも促進をうたっておりますが、ここは特に紀州材の魅力を見せる、印象づけるという観点が必要だと思います。
 御提案させていただきたいのですが、今後、県関連施設では、フロアなり階段なり、どこか1カ所以上のスペースに紀州材の魅力を建築で訴求する場を必ず設ける。それを、今植えつけた紀州材の苗が立派に育つのを待つように、今後50年ぐらいは続ける。そうすることによって木造建築の新たな施工技術も開発されてきましょうし、少なくとも施工業者さんとして建築に参加を希望する業者さんは、紀州材の魅力を生かすことに知恵を絞ることになります。その際、得た知見は、他の建築物にも生かされることになると考えられます。
 質問は、単に木造利用促進ではなく、県関連施設の新築に際し、必ず木造の魅力をアピールし、見えるところにそういう部分を設けることにしてはどうかということでございます。30年、40年先の知事も引き続き取り組んでいただけるようなよい循環を、ぜひ今始めなければならないのではないでしょうか。
 この点について、知事の御見解をいただきたいと存じます。
○議長(浅井修一郎君) 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 和歌山県の林業振興のためには、紀州材の利用推進が不可欠でありまして、そのためには県が率先して紀州材を使い、その魅力を発信していく姿勢を示さなければならないと考えております。
 県では、平成22年10月に施行されました公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律に基づきまして、平成24年2月に和歌山県木材利用方針を策定いたしました。この方針においては、県が整備する公共建築物で、耐火性能が求められない低層の建築物は原則として木造化を図ることとし、木造化が困難であっても、内装等利用者から見える部分に可能な限り紀州材を使用するよう配慮しているものでございます。
 県では、これまでに秋葉山公園県民水泳場、和歌山県土砂災害啓発センターなどにおいて、紀州材を構造材や内外装材に利用してまいりました。特に秋葉山公園県民水泳場はすばらしいデザインの木造による内装が有名でありまして、就任、実は1日目であったんですが、現在の鈴木長官がお見えになって、「自分が見た水泳場の中で、これが一番きれいだ」というふうに言うてくれた、そういうものでございます。
 したがって、デザインとか魅力とか、紀州材を使ってどういうふうにアピールするか、いいモデルをつくっていかなきゃいけないという点については、議員御指摘のとおりだと思います。
 そういう観点からは、今、公共建築物の話を申し上げましたが、住宅においてもいいアイデアで、物すごくいいデザインで、機能的なものをおつくりになった、そういう業者さんの作品をコンテストで選んで顕彰しているというようなこともやっております。
 今後の施設整備に当たっても──これは公共建築物の観点ですが──紀州材の特性をより一層生かした木造、木質化を積極的に進めていくことで、その魅力の発信に努めてまいりたいと思います。
○議長(浅井修一郎君) 菅原博之君。
  〔菅原博之君、登壇〕
○菅原博之君 ありがとうございます。全く同感でございますので、どうかよろしくお願い申し上げます。
 続きまして、県議会でもたびたび取り上げられているメタンハイドレートについてお尋ねいたします。
 当初は、2008年までに探査技術の基礎的研究、つまりどこに存在するか探す技術の基礎研究、2015年までに生産技術の基礎的研究、2018年までに商業的産出のための技術の整備、つまり技術基盤の整備が2018年に完了するという開発計画でありました。しかしながら、取りかかってみるといろいろな壁に突き当たっているようですし、最近は日本海側にも有望な地点の存在が言われ、日本海側の自治体も日本海連合などの動きがあるようにお聞きします。
 今後、この資源の有効な分布状況の把握と、産業界、自治体の動きが気になるところでありますが、本県として、メタンハイドレートの資源利用のための動きと、国、関係団体への働きかけはどうなっているのかを商工観光労働部長にお尋ねいたします。
○議長(浅井修一郎君) 商工観光労働部長岡本圭剛君。
  〔岡本圭剛君、登壇〕
○商工観光労働部長(岡本圭剛君) メタンハイドレートの技術開発につきましては、その前提として、海底地下構造の把握、採掘、貯蔵、輸送などの各工程において多岐にわたる高度な技術が必要であり、これまで国による調査研究が実施されてきたところです。
 具体的には、海洋基本計画に基づき、メタンハイドレートの存在形態である砂層型と表層型に分けて、商業化に向けた工程表が策定されております。砂層型については、平成25年に世界初の海洋産出試験が実施され、現在、その試験で明らかになった技術課題に対する解決策が検証されているところです。また、表層型については、平成25年度から平成27年度にかけて資源量把握の調査が実施され、今後、その調査結果に基づいて、回収技術の調査研究等が実施される予定であると聞いております。
 本県では、以前より熊野灘沖においてメタンハイドレートの存在が示唆されていることから、県の漁業調査船を活用し、経済的な方法で表層型の賦存状況調査を平成24年度から実施してきているところです。この調査によって、メタンハイドレートが存在する可能性が強く示唆されるプルームが複数観測されています。
 和歌山県沖でメタンハイドレートの採掘や開発が行われるというチャンスをつかむため、これまでも国に対する要望を行ってきたところであり、今後とも県独自の調査による成果を積み上げていき、国への働きかけを続けてまいります。
○議長(浅井修一郎君) 菅原博之君。
  〔菅原博之君、登壇〕
○菅原博之君 ありがとうございます。ぜひ採掘開発拠点を和歌山県に持ってこれますよう、御努力お願いいたします。
 次に、テレワークの本県普及についてお尋ねいたします。
 テレワークは、地方にお住まいの方もインターネットを通じて都会の企業の仕事を受注することが可能で、各自のスキルを磨くことによって、すき間時間を利用し、小さな子供や御家族のそばを離れることなく収入を得ることができる利点と、どこへ移動してもインターネット環境さえあれば仕事ができることから、地方創生や移住者へのアピールとして極めて有効であると考えます。
 現に、府県単位や市町村が業者側と連携して取り組もうという動きになっており、自治体単位でフリーランス支援窓口やフリーランスの経営塾、フリーランス特区として地方創生交付金を活用したさまざまな優遇処置を打ち出そうという自治体も出てきております。10年先には在宅で都会の仕事が盛んにできている和歌山県になれば、いろいろな面で新しい展開も可能になりましょう。
 本県でも、先ごろテレワークフェアを開催されましたが、今後のテレワークの本県普及について、商工観光労働部長にお尋ねいたします。
○議長(浅井修一郎君) 商工観光労働部長。
  〔岡本圭剛君、登壇〕
○商工観光労働部長(岡本圭剛君) 県では、テレワークを推進するため、11月末に和歌山市、田辺市でわかやまテレワークフェアを開催したところ、子育て世代の女性を中心に300人以上の方の参加をいただきました。
 今回のフェアでは、インターネット上で仕事を発注する企業と仕事を請け負う個人をつなぐハローワーク的な業務を営む大手クラウドソーシング事業者4社から、クラウドソーシングを利用した仕事の仕組みやサイトへの登録方法、どうすれば仕事を受注できるかなどの説明を受け、参加者からは、すき間時間を使って働けるのは魅力的だとか、これならやれそう、すぐ登録したいといった前向きな声が寄せられました。
 この仕組みは、事業者サイトへの登録後、自分自身で仕事をとりに行く必要があるため、受注率の高い先輩ワーカーからそのノウハウを学ぶフォローアップ研修を来年2月に実施することとしております。
 また、議員御質問のとおり、テレワークは地方創生にも効果が期待されていることから、フェアにあわせて市町村の担当者職員に向け、事業者から先進事例等を紹介するセミナーも開催したところです。
 引き続き、セミナーや研修会の開催、情報提供など、テレワークの周知普及に取り組んでまいります。
○議長(浅井修一郎君) 菅原博之君。
  〔菅原博之君、登壇〕
○菅原博之君 ありがとうございます。
 子育て中の若い世代を中心にして、年配の男性までかなりの層の方の関心が高いと感じております。さきのフェアでは、前もってネットで予備知識を持って参加されていた方も多かったと思いますので、次回はさらに実際の実入りなどに関して突っ込んだセミナーを期待しております。
 そして、要望させていただきたいのですが、テレワークは移住希望者にも収入の助けになる重要なツールとなります。移住希望者へのテレワーク取り組みのアピールと、昨年6月議会でも訴えさせていただきましたが、過疎地にかかわらず、本県都市部への移住促進の取り組みもお願いしたいと要望いたします。
 次に観光についてですが、今、国会ではIR法、カジノを含む統合リゾートの法案が審議されておりますが、そのこととは別の観点から、視点からお尋ねいたします。
 外国から来られる観光客は、日本を知りたい、味わいたいとの思いでもいらっしゃいますので、最初は東京や京都に行って一通りのものを見ても、次は本来の日本を知る意味で文化に触れる体験をしたいという方が多くいらっしゃいます。そのことがより旅の印象を残していただけるのだと思っております。
 そこで、商工観光労働部長に、外国人旅行者に対する体験型観光の取り組みについてお尋ねいたします。
○議長(浅井修一郎君) 商工観光労働部長。
  〔岡本圭剛君、登壇〕
○商工観光労働部長(岡本圭剛君) 外国人観光客の旅行形態が団体旅行から個人旅行へと変化する中、フルーツピッキングや平安衣装体験などの体験型観光が経験豊かなリピーター層を中心に人気を集めています。こうした背景もあり、県では、海外へのプロモーションと受け入れ環境の整備に取り組むことが重要と認識しております。
 具体的には、県内の体験型観光について、多言語ウエブサイトやガイドブックで紹介するとともに、海外の旅行会社やメディアの視察支援の際に直接現地を御案内し、ツアー造成や情報発信を働きかけております。本年10月には、県内体験型観光事業者を対象に、和歌山県体験型観光インバウンド受け入れセミナーを開催したところであり、受け入れ環境の向上にも取り組んでおります。
○議長(浅井修一郎君) 菅原博之君。
  〔菅原博之君、登壇〕
○菅原博之君 ありがとうございます。
 私は、来年度の新政策で神話の時代から近代に至る歴史ストーリーと資産を100の旅モデルにより発信するとお聞きしたとき、大変よいことだと思いました。当然、その中には、外国人にも日本人にも喜んでいただける体験型の観光も取り入れていただけるものと期待しておりますが、そのことについて商工観光労働部長にお尋ねいたします。
○議長(浅井修一郎君) 商工観光労働部長。
  〔岡本圭剛君、登壇〕
○商工観光労働部長(岡本圭剛君) 体験型観光の推進は、観光客が訪問先での滞在時間を延ばし、消費拡大やリピーター増加のために重要であると認識しており、現在、自然、農業、漁業や歴史文化など、地域資源を生かした約350のプログラムをパンフレットやホームページなどで情報発信を行っているところです。それに加え、雑誌や新聞、テレビなどでも和歌山ならではの体験を紹介しています。
 議員御提案のとおり、歴史ストーリーや資産のみならず、地域素材を生かした食や地元の人と交流できるような体験などを取り入れ、観光客が楽しめる旅モデルにしたいと考えています。その中で、例えば写経や漆器まき絵体験など、外国人にも興味を持っていただけるものも盛り込んでいきたいと考えております。
○議長(浅井修一郎君) 菅原博之君。
  〔菅原博之君、登壇〕
○菅原博之君 ありがとうございます。
 さて、外国の方への観光という視点で話を進めてまいりましたが、観光の視点、県民の公園という視点から、紀伊風土記の丘についてお話をさせていただきたいと思います。
 県立の博物館施設ということでありますが、その敷地内は県民が自然と触れ合う憩いの場ともなっており、東西に1周3キロ、約80分の長円形の周回コースが設けられております。その周回コースには、車に乗って遠方わざわざ散歩にいらっしゃる方も多く、年配の女性も1人で歩かれている方が結構いらっしゃいます。
 西と東に休憩所があり、それぞれの休憩所から本館の博物館までは30分は徒歩を覚悟しなければなりません。その休憩所に簡易トイレが各1基設置されているのですが、くみ取り式のトイレであり、当初は照明も手洗いもない状態でありました。昨年、その状態を写真にして文化遺産課さんにお願いし、乾電池式の照明を取りつけていただいたところであります。
 その後も利用者さんからの要望を入れていただいて、すりガラスの窓や手洗い用にドラム缶に水をためて下に蛇口をつける対応をしていただいております。機敏にすぐ対応していただいていると評価しておりますが、このコースにもし観光のお客様をお連れして歩くという体験をしていただくにはどうでしょうか。乾電池式の照明は今でも薄暗く、曇りの日には、床に虫がはっているのかどうかさえ確認できる状態ではありません。年配の方はトイレも近く、歩いて我慢するのはつらいものであります。
 一方で、友ヶ島のハイキングコースには、出発点から1時間近く歩いた山の中に立派なバイオ技術を取り入れた循環式の水洗式トイレが設置され、ソーラー発電で明るい照明も完備しております。調べますと、バイオトイレというものは、浄化槽ももちろん下水も不要で、くみ取りも不要の水洗トイレというものであります。さらに、ソーラー発電の照明も含めて、そういうトイレは熊野古道の道中にも設置されております。
 世の中にそういうトイレが存在すると知れば、それも近くに普及してくれば、それが基準になってしまうのが世の常でありますので、ぜひともお願いいたしたく、国際化の観点から紀伊風土記の丘の周回コースのトイレ設備充実について改善されるお考えはあるのか、教育長にお考え、お伺いいたします。
○議長(浅井修一郎君) 教育長宮下和己君。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 園内のトイレにつきましては、資料館前のレストハウスに水洗式の多目的トイレを設置してございます。また、園路については、1周約3キロメートルであることから、山上の東西2カ所に簡易トイレを設置してございます。この簡易トイレについては、利用者の方からの要望もあり、ガラス窓やライトを設置することで採光を確保したり、施錠方法の改善や手洗い場の設置なども行ってまいりました。
 今後は、さらなる環境整備として、特別史跡岩橋千塚古墳群の文化財的価値を踏まえた水洗化など、設備改善の実現方策を前向きに検討してまいります。
○議長(浅井修一郎君) 菅原博之君。
  〔菅原博之君、登壇〕
○菅原博之君 ありがとうございます。ぜひ、前向きによろしくお願いいたします。
 次に、最後に特殊詐欺対策についてお尋ねいたします。
 先ごろ、私どもの住宅地区では、敬老の日のイベントとして、地区老人の皆さんに特殊詐欺の被害に遭わないよう、所轄の警察署にお願いし、生活安全課さんによる講演をしていただきました。その内容は非常に役立つもので、そういう手口を知っていなければ、老人といわず、この会を主催した若い役員たちでもだまされるのではないかと思う内容でございました。
 そこで、改めて県警の皆さんや生活安全課さんの取り組みに敬意を表しますとともに、県警察本部長に本県での特殊詐欺の実態と県民に対する注意喚起についてお尋ねしたいと思います。
○議長(浅井修一郎君) 警察本部長直江利克君。
  〔直江利克君、登壇〕
○警察本部長(直江利克君) 本県における特殊詐欺の被害状況につきましては、11月末現在の被害総額は約1億9169万円で、前年同期と比較して約1億3155万円、約40.7%減少しているものの、認知件数は62件と12件増加しております。
 手口別の認知件数は、市役所職員等をかたった還付金等詐欺が13件と、昨年同期と比較して11件増加しているほか、オレオレ詐欺が16件、架空請求詐欺が29件、融資保証金詐欺が2件、金融商品等取引名目の詐欺が1件、その他1件となっております。
 また、特殊詐欺の被害の約7割を65歳以上の高齢者が占めているのが現状です。特殊詐欺の県民に対する注意喚起につきましては、被害の大半を占める高齢者を中心として、さまざまな機会を捉えて推進しているところであります。
 1つは、いわゆる水際における注意喚起であります。金融機関において、高齢者の方が高額出金をなさる場合に、だまされているのではないかと注意喚起するため、110番通報していただいて臨場する制度を運用しております。この制度により、本年も既に14件の詐欺を阻止したところであります。
 また、現金型被害防止のため、コンビニエンスストア、宅配事業者及び郵便局におきまして、荷物の引き受け時にだまされていないか注意喚起をするために、送付型被害防止シールを配布し、連携を強化しております。
 さらに、特殊詐欺を認知した場合や予兆電話が多発した場合などには、タイムリーな注意喚起を行うために、きしゅう君の防犯メールを配信するとともに、県内のラジオ放送局に振り込め詐欺等注意報の緊急放送を依頼するなどしております。
 そして、何よりも、平素から対象となりやすい高齢者に詐欺への抵抗力をつけていただくことが大事であります。県警としては、巡回連絡、防犯教室、老人クラブの会合等の機会を利用して防犯指導しているところでありますが、最新の手口をタイムリーに伝え、抵抗力を一層高めていただく方策の推進を検討しているところであります。
○議長(浅井修一郎君) 菅原博之君。
  〔菅原博之君、登壇〕
○菅原博之君 ありがとうございます。
 私は、この注意喚起の部分については、県の組織を挙げて取り組んでよいのではないかと思っております。特に県広報の方には、県警さんからの情報を「県民の友」などで紹介したり、今こういう手口が出てきたから気をつけてくださいよなどの注意喚起を県警さんと一体となって取り組むべきだと考えておりますが、特殊詐欺について県広報の協力体制はどうか、環境生活部長にお尋ねいたします。
○議長(浅井修一郎君) 環境生活部長日吉康文君。
  〔日吉康文君、登壇〕
○環境生活部長(日吉康文君) 県の協力体制につきましては、県警察が平成26年に発足させた和歌山県特殊詐欺被害防止対策協議会に参画し、関係機関と連携しながら特殊詐欺対策に取り組んでおります。
 県の広報活動といたしましては、高齢者を初めとした県民にその被害状況や手口に関する具体的な情報を提供することが重要と考えており、「県民の友」や県内市町村、防犯ボランティア向けに発行する「わがまち和歌山安全ニュース」などにより広報・啓発するとともに、県警察と協力して展開する防犯ボランティア交流会や高齢者交通安全講座など、さまざまな機会を通じ、特殊詐欺被害防止を呼びかけております。さらに、今年度は、特殊詐欺や悪質商法などの電話による被害の防止を図るため、県警察や協力市町と連携し、高齢者世帯を対象に373台の通話録音機を無料で貸与したところでございます。
 県といたしましては、引き続き関係機関と緊密に連携しながら、「県民の友」を初めテレビ、ラジオ等の広報媒体も活用し、県民の安全・安心な暮らしに資する時期を得た啓発を行ってまいります。
○議長(浅井修一郎君) 菅原博之君。
  〔菅原博之君、登壇〕
○菅原博之君 ありがとうございます。これで、私の質問を終わらしていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(浅井修一郎君) 以上で、菅原博之君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前11時31分休憩
────────────────────
  午後1時0分再開
○副議長(服部 一君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 11番泉 正徳君。
  〔泉 正徳君、登壇〕(拍手)
○泉 正徳君 議長のお許しをいただきましたので、一般質問に入らせていただきます。
 私には忘れることのできない5年前の平成23年9月3日、前日の2日から大雨洪水警報が発令されて、降り続ける雨はやむ気配すら見せずに、次第に雨足を強めてまいりました。夕方の午後4時には田辺市から避難指示が出され、私は、年老いた両親とたまたま帰省していた娘の家族とともに避難所に向かい、夜を迎えました。日付が変わるころには、停電はもとより携帯電話もつながらなくなり、地区は孤立しました。無論、自宅はもう床上までつかっていました。
 やっと台風が去って水位も下がり、避難所から帰り支度をしようと思った4日の朝に、今度は私たちが住んでいる地区の上流4キロメートルのところで大規模崩壊があり、土砂ダムができたとの通報が入りました。この大規模崩壊で奥番地区、8世帯11名が暮らす集落が消滅してしまいました。私の住む地区は立入禁止区域となり、2日目の夜も場所を変えて体育館での避難生活を余儀なくされました。
 私は、2日間、大雨と土砂崩れによる避難所生活を体験しましたが、被災者の多くは私なんかの何倍もの御苦労をされたということは言うまでもありません。
 この12号台風は、紀伊半島各地に河川の氾濫や国道、県道などの道路の決壊、また大規模な山腹崩壊、その上、家屋の倒壊や洪水などで、本県では死者56名、行方不明者5名という何十年に1度と言われる甚大な被害をもたらしました。
 あれから5年の歳月を経過しましたが、紀伊半島大水害で被災した崩壊地等の砂防事業にどのぐらいの予算が投資がなされたのか、また、現在の進捗状況について県土整備部長にお伺いします。
○副議長(服部 一君) ただいまの泉正徳君の質問に対する答弁を求めます。
 県土整備部長森戸義貴君。
  〔森戸義貴君、登壇〕
○県土整備部長(森戸義貴君) 紀伊半島大水害を受けた砂防事業の予算と進捗状況について御質問を頂戴いたしました。
 紀伊半島大水害後、和歌山県内においては、国と県が実施する砂防事業により、土砂災害からの復旧を図ってまいりました。
 国においては、山全体が崩れる深層崩壊や流域全体に土石流が発生するなど、大規模な土砂災害が発生した県内の3つの地区、田辺市旧大塔村の熊野地区、田辺市本宮町の三越地区、那智勝浦町市野々地区を中心とする那智川流域について、直轄による砂防災害関連緊急事業と特定緊急砂防事業で対策を実施していただいております。
 特定緊急砂防事業の最終年度となる平成28年度までの間で総事業費は3地区合わせて約215億円であり、奈良県内での同種の直轄事業の総事業費が約346億円と聞いておりますので、合わせますと約561億円となります。
 また、県においては、43カ所の土砂災害発生箇所について、災害復旧事業、災害関連緊急砂防事業、災害関連緊急地すべり対策事業、特定緊急砂防事業及び特定緊急地すべり対策事業により平成23年度から26年度までの間で対策を実施してきており、総事業費は約54億円となっております。
 次に、これらの事業の進捗状況ですが、国直轄事業を実施している3地区につきましては、平成28年度までの特定緊急砂防事業等により基幹となる砂防堰堤が完成することによって、土砂流出に対する一定の安全度を確保する施設整備がなされたものと認識しております。県の43カ所につきましては、平成26年度末までに災害に関連する対策は全て完了しております。
○副議長(服部 一君) 泉 正徳君。
  〔泉 正徳君、登壇〕
○泉 正徳君 御答弁いただきましてありがとうございました。相当な予算がつぎ込まれているということが理解できました。
 次に、田辺市熊野地区の進捗状況について質問します。
 冨安県議を会長とする和歌山県自由民主党県議団砂防事業推進議員連盟は、9月6日に那智勝浦町にある大規模土砂災害技術センターと那智川流域の被災箇所を訪れ、那智川流域の復旧工事の進捗状況とセンターの活用について研修を行いました。また、10月13日には、田辺市熊野の被災箇所において、紀伊山地砂防事務所長を初め担当職員より工事の経過説明を受けました。工事現場では、事務所長が我々の質問に的確に答えられ、作業工程や工法の説明にはさすがは砂防事業の専門家であると感心しました。
 当日の現地の視察において、私が見る限り、熊野地区では完成までにはまだ時間が必要と感じました。熊野地区の奥には小森地区という約20戸の集落があり、その地区には50人収容の知的障害者施設や2棟12名が生活するグループホームもあります。施設で働く職員の通勤はもとより、高齢者が多い集落では緊急時の対応などの不安も尽きませんし、不自由な生活を強いられています。
 熊野地区の一日も早い復旧を望んでいますが、熊野地区の進捗について県土整備部長にお伺いします。
○副議長(服部 一君) 県土整備部長。
  〔森戸義貴君、登壇〕
○県土整備部長(森戸義貴君) 熊野地区の進捗状況について御質問を頂戴いたしました。
 熊野地区につきましては、高さ14.5メートル、幅145.6メートルの基幹となる1号砂防堰堤と熊野川の流水を上流から下流に円滑に流す排水路工がこれまでに完成しており、土砂流出に対する一定の安全度が確保されたと認識をしております。さらに、平成28年度予算において、山腹崩壊土砂をとめる土砂堆積工とその斜面からの流水を流す表面排水路工を完成させる予定と聞いております。
 しかし、1号砂防堰堤の下流の渓流保全工や床固め工、上流部の流木どめ工、崩壊地の排土工やのり面保護工、管理用道路については、平成28年度までの予算では完成することができず、将来施工が必要になると国土交通省紀伊山地砂防事務所から聞いております。
 今後の見通しでございますが、平成24年度から28年度までの5年間を期間とする特定緊急砂防事業が今年度で終了するため、将来施工が必要となる施設についても、引き続き国による直轄砂防事業で工事を施工していただくよう、強く働きかけているところでございます。
○副議長(服部 一君) 泉 正徳君。
  〔泉 正徳君、登壇〕
○泉 正徳君 次に、熊野川の濁水についてお伺いします。
 熊野川流域では大規模かつ多数の山腹崩壊が発生し、大量の土砂が河川に流入し、これらの多くは奈良県内にあるダム湖内に堆砂され、堆積した土砂は熊野川の長引く濁水の原因であることは言うまでもなく、濁水の影響は世界遺産に登録された世界で唯一の川の参詣道の景観保全や観光面にも大きな影響を与えています。
 私は、いつも熊野川を眺め、2キロ上流に行けば奈良県十津川村というところに住んでいますので、奈良県内で施工されている現場をよく見に行くのですが、崩壊斜面ののり面工事が完成していない現場の多くは、いまだに降雨のたびに崩壊地より土砂が流水とともに生産され、ダムに堆砂される悪循環で、濁水長期化の要因となっています。
 そこで、一日も早い土砂発生原因となる災害箇所の復旧が望まれるところであるが、熊野川の濁水の現状はどのようなものか、県土整備部長にお伺いします。
○副議長(服部 一君) 県土整備部長。
  〔森戸義貴君、登壇〕
○県土整備部長(森戸義貴君) 熊野川の濁水の現状について御質問を頂戴いたしました。
 熊野川の濁水については、平成23年9月の台風12号により上流で大規模な山腹崩壊が発生し、濁水の長期化が顕著となったことから、平成24年7月に、国、三重県、奈良県、和歌山県、ダム管理者である電源開発株式会社、関西電力株式会社及び沿川市町村による熊野川の総合的な治水対策協議会を設置し、各機関において対策を実施しているところでございます。
 流域対策については、平成33年度末を目指し、国土交通省や和歌山県等が洪水後の濁水の発生源となっている崩壊地対策や河道への土砂流出防止対策を治山、砂防事業で実施しております。
 また、電源開発株式会社が実施するダムの貯水池対策については、洪水後には表層の清水層から取水できるよう、風屋ダムや二津野ダムに浮き沈みする濁水防止フェンスを平成27年度末までに設置するとともに、風屋ダムの取水設備の改造に着手いたしました。あわせて、洪水後の濁水早期排出と清水貯留期間の延長など、発電運用の改善にも取り組んでおります。
 各機関の対策により濁水の発生日数は徐々に改善していると報告されておりますが、現時点ではいまだ紀伊半島大水害以前の状況に至っていないため、引き続きこれらの対策を早期に完成させるとともに、その進捗状況、対策効果のモニタリングを関係機関と連携し進めてまいりたいと考えてございます。
○副議長(服部 一君) 泉 正徳君。
  〔泉 正徳君、登壇〕
○泉 正徳君 どうもありがとうございました。
 次に、砂防事業の促進についてお伺いします。
 台風12号での大規模崩壊に関する砂防事業についてるる質問しましたが、下流域の住民の安全・安心を確保し、河川や生態系の保全という観点からも事業を進めなければなりません。しかしながら、現状は残事業も多く見られ、まだまだ数ある砂防事業の完成までには時間が必要と感じています。
 今回、12号台風で発生した崩壊地は規模も大きく、今後も事業には多額の予算が必要であり、技術的にも一自治体では困難な工事も残っており、事業の影響する範囲も県境をまたいで広範囲であることなどから、国の直轄事業として促進してもらうことが必要と思っています。
 自由民主党県議団砂防議連では、先月、国に対して、大規模土砂災害の国による推進に向けての要望書を冨安会長名で提出しています。しかし、一日も早い事業の完成を目指すためには、被災した県や市町村が一体になり取り組まなければならない課題であります。今後の促進に向けて、知事の御所見を伺います。
○副議長(服部 一君) 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 紀伊半島大水害で大規模な土砂災害が発生いたしました、先ほど議論がずっと続いております県内の3地区では、国の直轄砂防で直していただいているということについては本当に感謝をしております。
 国の砂防事業の実施によりましてかなり安全度が確保されつつあるというところではありますけれども、まだ完成ではございません。工程的には、先ほど部長が御説明したようなものが残っておりますので、これはさらなる対策が必要であると思っておりまして、国に県からも一生懸命お願いをしているというところでございます。
 また、大水害により紀伊山地全体で多数の崩壊地が存在することになりました。県内は、大規模な直轄砂防の対象地域と、それからこれも御説明しましたが、県で一生懸命取り組みましたものを含めまして、かなり進捗がいいんですが、熊野川の濁水の遠因というか原因になっております奈良県側の崩壊については、和歌山県側の完成度に比べると圧倒的におくれておると。私も何度かその後もあの辺を通りかかっとるんですが、うわあ、まだこれ雨降ったらずるずると流れ込むなあというようなところがいっぱいございます。
 したがって、和歌山県側の工事の完成はもちろんのことでございますが、奈良県側も一日も早い完成をお願いしますと言って、私も折に触れては国土交通省にそんなふうにお願いしてるところでございます。
 そのほかにも、別にどこがということではまだないかもしれないんだけど、紀伊山地あるいは和歌山県の山合いのところは、非常に傾斜も急で脆弱な地域が多いと思われます。例えば地震とか、あるいは例えば大雨とか、そういうところで何か不都合が生じ、県だけではなかなか難しいというようなときには、これをよき前例として直轄で高度な技術で直してもらいたいというようなことを、一般論としてはいつも思っておりますので、こういうことについての配慮も今後ともやっていただきたいというようなことを、折に触れ申し上げていきたいと思っております。
○副議長(服部 一君) 泉 正徳君。
  〔泉 正徳君、登壇〕
○泉 正徳君 大変、これからも必要だということを認識されて努力されていること、本当にありがとうございます。ぜひとも、よろしく進めていっていただきたいと思います。
 じゃ、次の質問に移ります。
 次は、過疎対策についてでございます。過疎集落対策の実績と今後の取り組みについてお伺いします。
 本県の人口は、国勢調査によりますと、昭和60年に過去最大の約108万7000人となっており、それ以降は減少の一途で、平成27年には12万3600人が減少し、約96万3500人となっています。日本全体では平成20年にピークを迎えたと言われていますが、本県はそれに先んじて人口が減少しております。
 では、本県の過疎地域の人口はどうかといいますと、昭和35年には約39万人いましたが、それが平成22年の国勢調査時では26万人と、平成27年では25万人と、さらに減少しています。また、いわゆる過疎地域自立促進特別措置法の対象となる過疎地域も広がり、5年前の過疎自立促進方針作成時には16市町村でしたが、近年では、湯浅町、印南町が過疎地域に含まれ、県内では18市町村となり、県内30市町村の6割が過疎市町村となりました。
 和歌山県の面積でいえば約4分の3が過疎地域であり、そこに人口の約4分の1の方が生活していることになります。もっとも、過疎地域の約86%は森林であり、県民の多くは残りの集落地域で生活しています。今、この生活している集落で、人口減少を理由とする多くの問題が発生しつつあります。
 第1に、地域産業の後継者不足です。
 過疎地域の多くは農山漁村です。この農林水産業では、後継者がおらず、耕作放棄地がふえ、山林が荒れ、漁業従事者も減っていく一方です。地域全体で働き手自体が高齢化し、60代でさえ若手と呼ばれるような状況です。
 また、過疎化は地域商店の衰退を招き、多くの商店が閉店し、ふだんの買い物さえ車に乗っていく必要がある状況です。さらに、その車に入れるガソリンスタンドが閉店に追い込まれ、車の運転ができない高齢者はふだんの生活でどんなに苦労していることでしょう。
 その他、地域機能全般にわたってさまざまな分野で影響が出ています。地域のお祭りや伝統行事の維持も困難になってきています。お寺や神社の維持も同じ状況です。本当に今、地域のつながりをどう維持していくのか、1つ1つの集落で多くの課題が突きつけられています。
 県人口が100万人を割った今こそ、中山間の過疎地にある集落で個々の地域資源を有効活用しながら、継続できる地域づくりを進めていく必要があります。そのためには、みずからが、地域自体が主体的に地域づくりを行い、みずからの資源と知恵を用いて地域を維持、継続していく意欲が必要であるということは言うまでもないことですが、国や県、市町村の支援も必要です。また、民間人を含めたさまざまな人的支援もとるべきでしょう。
 そこで、本県の過疎集落対策の実績と地域おこし協力隊などの外部人材の活用を含めた今後の取り組みについて、企画部長にお伺いします。
○副議長(服部 一君) 企画部長髙瀨一郎君。
  〔髙瀨一郎君、登壇〕
○企画部長(髙瀨一郎君) 県では、昭和の合併前の旧町村や中学校区といった過疎生活圏の単位で、過疎集落の再生と活性化を目的とした地域住民の主体的な取り組みを支援する過疎集落支援総合対策事業に平成22年度から取り組んでまいりました。
 県からの提案により、国も同様の事業を創設し、国事業、県事業合わせて18市町村34生活圏で実施され、日常生活機能の確保や地域資源を生かした活性化の取り組みにより、地域の自立につながっていると考えております。事業に取り組んだ地域の住民からは、活動を通じて集落に活気が生まれ、元気になったという御意見もいただいているところであります。
 人口減少と高齢化が進む中、議員御指摘のとおり、過疎集落では地域産業の後継者や地域づくりの担い手が不足しており、都市部から移住して地域活動に取り組む地域おこし協力隊などの外部人材を活用することは大変重要であると認識しております。
 そのため、県から市町村に強く働きかけた結果、きょう現在、昨年度の2倍を超える39名の地域おこし協力隊が活動しており、内定者と募集人員を含めると年度内には50名に達する見込みであります。これらの隊員は、個々の能力や特性を生かし、それぞれの地域で商品開発や販路開拓、生活支援などに活躍しています。
 県といたしましては、今後も外部人材との協働の重要性を踏まえ、過疎集落の維持と活性化に向けた市町村の取り組みを支援してまいります。
○副議長(服部 一君) 泉 正徳君。
  〔泉 正徳君、登壇〕
○泉 正徳君 ありがとうございました。しっかりと小さな集落を支えていける政策をお願いしたいと思います。
 次に、定住自立圏構想に向けた県の取り組みについて伺います。
 高度経済成長以降、道路等の交通網のインフラ整備はいわゆる国土軸を中心として徐々に進められてきましたが、本県においても、高速道路は田辺からすさみまで延伸し、那智勝浦新宮道路との接続や紀伊半島一周高速道路の実現もそれほど遠い未来とは言えない時代になってきました。また、国道や県道の改良工事も進め、20数年前に国道311号で車の対向に苦労したことも昔の思い出となっています。
 さらに、情報通信手段の発達は普及も著しく、電話を携帯できる時代が来たかと思えば、今ではニュースなどの多くの情報が手元の端末でやりとりできる時代となっており、民間、行政それぞれのサービスについても、住民満足のレベルは高くなっていくばかりと言えます。
 その結果、旧の市町村単位でおおむね成立していた日常生活が拡大、広域化し、ふだんの買い物や医療機関の受診、介護など、多くの分野でより満足する商品やサービスなどを求めて隣町に行くようになっています。
 他方、急速な少子高齢化は地方において顕著な人口減少と過疎化を招いており、先ほどの国、県、市町村が一体となった過疎対策への取り組みがなされているところですが、人口減少に歯どめがかかるまでにはまだまだ時間が必要と言えましょう。
 このような状況のもとで過疎化が進む基礎自治体において、今までの住民サービスの提供がこのままでは困難となるのではと思われるところもあります。特に、住民に密接に関係ある医療や福祉、介護、保険など、そのサービスの維持や継続が将来困難となり、提供できるレベルも低下していった場合、ますます住民が少なくなり、過疎化を招くのではないかと心配します。また、観光などの分野では、市町村域を越えた積極的な地域圏ごとでの取り組みによってこそ、より地域の魅力を発信でき、十分な効果を上げられると考えられる事業もあります。
 行政の効率化と住民サービスの向上に向けては、かつて市町村合併が国を挙げて進められてきましたが、それから約10年が経過しました。1つの基礎自治体ではサービスの提供が困難となっている医療や福祉サービスなど、複数の基礎自治体で実施することでより適切な事業効果やサービスが期待できる事業については、市町村で広域的連携を積極的に図っていくことが今後必須ではないかと考えます。
 国においてはこのような取り組みとして定住自立圏構想が進められておりますが、本県の状況と取り組みについて総務部長にお伺いします。
○副議長(服部 一君) 総務部長浦上哲朗君。
  〔浦上哲朗君、登壇〕
○総務部長(浦上哲朗君) 定住自立圏構想は、人口減少社会においても市町村が持続可能な形で行政サービスを提供し、地域住民の暮らしを守り、定住につなげていくことができるよう、単独の市町村であらゆる行政サービスを提供するのではなく、中心市と近隣市町村が連携して行政サービスを確保していく施策でございますが、人口減少が進む本県においても必要な取り組みであると考えております。
 中心市の要件としましては、原則、人口が5万人程度以上であること、昼夜間人口比率が1以上であることなどでございまして、県内で中核市を除く市で中心市の要件を満たすのは、新宮市と田辺市の2市となってございます。
 現在の取り組み状況についてでございますが、新宮市におきましては、関係町村との議論を経まして、平成27年11月に検討会議が立ち上がっております。検討会議においては、どのような事業が連携が可能かとか、またそれによりどのようなメリットがあるのかなどについて、県も参画しまして議論を重ねているところでございます。
 田辺市におきましては、現在、検討会議の立ち上げには至っておりませんけれども、県としましては、取り組みの必要性、それから先行圏域の取り組み状況等の情報提供を行いながら、定住自立圏の形成についての検討を働きかけているところでございます。
 県としましては、定住自立圏の形成に当たり関係市町村間で効果的な連携がなされるように、相互の施策の理解や連携の必要性、連携方法などについて丁寧に議論していく必要があるというふうに考えておりまして、今後、議論が活発になされるように、連携項目例の提示とか、それから先行団体の連携手法の紹介を行うなど、引き続き積極的に支援してまいります。
○副議長(服部 一君) 泉 正徳君。
  〔泉 正徳君、登壇〕
○泉 正徳君 御答弁ありがとうございました。
 じゃ、次の項目に移ります。
 選挙についてでございますが、ことしの夏に行われた参議院選挙では、初めて選挙権年齢が18歳まで引き下げられ、実施されました。当日の県内の投票結果を見ますと、県全体では、18歳45.96%、19歳37.59%であり、地域別に見ますと、18歳では、伊都振興局管内の57.51%に比べて東牟婁管内では36.76%と20ポイント余りの差があり、19歳年齢でも、これも伊都振興局管内の46.14%に比べて東牟婁管内では20.97%、北高南低、投票率に大きな開きがあります。
 先日、島根県西部地方に調査に行ってきましたが、ここでも県全体の投票率は、18歳が44.98%、19歳は32.84%と18歳に比べて19歳年齢の投票率が低い結果が出ていました。
 このことは、全国的にも18歳より19歳の投票率が低いという同じ傾向が見られています。しかし、東京都に絞って結果を見てみますと19歳人口の投票率は53.8%、和歌山県37.59%、東京都と和歌山県では投票率に大きな差があることがうかがえます。相対的に、都市部の投票率は地方の投票率を上回っていました。
 19歳になると大学進学などで地元で生活していない不在者が多いので投票しないのではないかと推則されますが、今後、これらの不在者の郵便投票の簡素化や若者の投票率アップに向けての取り組みが必要ではと、何か手だてはないものかと思っています。
 また、先日調査に行った担当者に投票率を上げるために何が必要かと聞いてみました。すると「小学生時代に早くから選挙の教育をすることと親の投票行動、わかりやすく言えば、親が投票に行かない家庭のほうが子供も行かないのでは」という意見が返ってきました。
 民主主義の根幹をなす選挙ということに関心を持ってもらえるように、今回の投票結果を踏まえて、今後の啓発等の取り組みについて選挙管理委員会のお考えをお示しください。
○副議長(服部 一君) 選挙管理委員会委員長上山義彦君。
  〔上山義彦君、登壇〕
○選挙管理委員会委員長(上山義彦君) 7月10日執行の参議院議員通常選挙の本県における10代の投票率については41.81%で、議員御指摘のとおり、全国平均を4.97ポイント下回っております。
 選挙管理委員会では、従前から常時啓発の一環として、小学6年生を対象として選挙出前講座を実施してきたところです。今回の選挙権年齢の引き下げを受け、この選挙出前講座の対象を高校生まで拡大し、参議院議員通常選挙までに県教育委員会等の協力を得て、県内の全日制の高校全てに対し実施したところでございます。また、若年層に選挙への興味や関心を持ってもらうため、立候補受け付け準備等の体験やSNSを使った情報発信など、新たな手法による啓発に努めてきたところでございます。
 今回、10代の投票率は20代前半の投票率を5.58ポイント上回っており、こういった取り組みが一定の効果を上げているものと考えます。しかしながら、10代の投票率が全国平均を下回ったことは非常に残念に思っております。
 今後の啓発の取り組みについてですが、選挙出前講座については、住民票異動の届け出の必要性や不在者投票制度などを盛り込むなど、内容について見直しを行ったところです。いずれにしましても、選挙権年齢の引き下げを受けて新たに実施している啓発については始まったばかりであり、従来実施してきた小学6年生を対象とした選挙出前講座とあわせて、継続した取り組みとしていくことが投票率の向上につながるものと考えております。
 今後も、引き続き県教育委員会や市町村選挙管理委員会と連携し、若年層の選挙への関心を高められるよう積極的に取り組んでまいります。
○副議長(服部 一君) 泉 正徳君。
  〔泉 正徳君、登壇〕
○泉 正徳君 先日、島根県の浜田市に移動期日前投票所について調査に伺いました。
 浜田市では市町村の合併後、有権者が極めて少ない投票所においては、投票日当日の投票者が少ないことや投票立会人の選任が難しいなどの理由により代替案が検討され、旧投票所など11カ所に日時を限定した移動期日前投票所を開設するに至ったそうです。お手元に資料を提供させてもらっています。市役所の10人乗りのマイクロバスを利用して、一番後部座席に投票管理者と立会人が座り、運転席の後ろが投票者の席となり、経費面では記載台とプライバシー保護パネルなどの設置や人件費、通信費などを含めて30万円余りの出費があったそうです。
 投票自体は車の中で行いますが、投票所の場所については旧投票所など事前に広報で知らせ、また、入場券の送付の際に投票場所と時間を明記しておいたそうです。元来小さな地区なので大きな問題もなくスムーズに投票され、住民の評価は高く、他地区からの要望もあるそうです。投票立会人や投票管理者不足の解消や投票所設営の準備や片づけなどの作業量の減少につながり、効果が見られたとの意見でした。
 投票所の設置等は基本的には各自治体が行うことでありますが、和歌山県でも選挙の効率化や簡素化への取り組みは必要だと思われますが、このような例を情報として示していくことも1つの方法ではないかと考えますが、選挙管理委員会のお考えをお聞かせください。
○副議長(服部 一君) 選挙管理委員会委員長。
  〔上山義彦君、登壇〕
○選挙管理委員会委員長(上山義彦君) 選挙において、選挙人の投票機会を確保することは非常に重要であると認識しているところであります。中でも今日の過疎化、高齢化の進展する中で、投票所まで距離がある方や高齢者にとって投票しやすい環境づくりというのは、常に配慮しなければならないものと考えております。
 選挙管理委員会といたしましても、投票機会の確保については、投票区における遠距離地区の解消に努めることや期日前投票所の設置、地域の実情に応じた移動支援策などを積極的に行うよう、市町村選挙管理委員会に対し助言しているところでございます。高齢化、過疎化が進む地域の選挙人にとって、移動期日前投票所は投票機会の確保につながる選択肢の1つであると考えます。
 選挙管理委員会といたしましても、市町村選挙管理委員会に対し、浜田市のような新たな取り組みなどを機会を捉まえて紹介するとともに、今後とも投票環境の向上に関して、市町村選挙管理委員会と連携して取り組んでまいりたいと考えております。
○副議長(服部 一君) 泉 正徳君。
  〔泉 正徳君、登壇〕
○泉 正徳君 それでは、最後の質問に入ります。
 投票事務のことなので少し専門的な質問ですが、投票所には、さきの質問でも申し上げましたとおり、投票管理者と立会人が必要なのは皆さん御存じだと思うのですが、小さな地区では高齢化や人口減少により、この選任に苦労しているのが現状です。
 また、この人たちは、投票終了後に投票箱に同行して開票所まで行き、開票管理者に届けなければならないことになっています。投票所に1日座るだけでも選任が困難なところに、投票所によっては開票所までの移動時間が長時間になり、投票管理者や立会人の負担が大きくなるのが現状です。
 ちなみに、私の住んでいる田辺市本宮町は投票所が14カ所ありますが、6時に投票を終え、7時に旧役場に集合して、田辺市の開票所まで1時間余りかけて投票箱を運ぶのですが、投票箱14個に対して28人の人がチャーターしたバスに乗って往復するのです。帰ってからも、集合バスから自宅までの時間を考えますと、午後10時を超えることも少なくありません。
 全国的にはこのような地区がたくさんあろうかと思われますが、制度改正をしてもらえるよう国に働きかけをしてもらいたいと思いますが、選挙管理委員会の御意見を伺います。
○副議長(服部 一君) 選挙管理委員会委員長。
  〔上山義彦君、登壇〕
○選挙管理委員会委員長(上山義彦君) 投票管理者等の負担軽減についてでありますが、投票箱の送致については、公職選挙法第55条で投票管理者は1人以上の投票立会人とともに投票箱などを開票管理者に送致しなければならないと規定されており、投票管理者と少なくとも1名以上の投票立会人が投票箱を開票所の開票立会人に直接引き渡すことになっております。
 県内には市町村合併により開票所から離れている投票所が存在し、そのような投票区では、長時間の拘束や投票箱の送致に係る負担もあり、投票管理者、投票立会人のなり手不足が問題となっていると認識しております。
 選挙管理委員会といたしましては、この投票箱の送致に係る負担軽減については既に国に対し要望を行っているところでありますが、引き続き市町村選挙管理委員会と連携して要望してまいりたいと考えております。
○副議長(服部 一君) 泉 正徳君。
  〔泉 正徳君、登壇〕
○泉 正徳君 御丁寧な答弁、ありがとうございました。これにて私の質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○副議長(服部 一君) 以上で、泉正徳君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 17番鈴木太雄君。
  〔鈴木太雄君、登壇〕(拍手)
○鈴木太雄君 皆さん、改めましてこんにちは。早速でありますが、議長のお許しをいただきましたので、通告に従い、一般質問を行います。
 まず初めに、大項目の1、世界遺産の保全と活用について、その小項目の1点目として、世界遺産緊急保全対策事業について質問を行います。
 皆様御承知のとおり、世界遺産とは、1972年のユネスコ総会で採択された世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約、いわゆる世界遺産条約に基づいて国際的に保護・保全していくことが義務づけられている人類共有のかけがえのない財産であります。
 2016年7月現在、遺跡や文化的な価値の高い構造物、貴重な自然環境など、世界で1052件、日本では20件が登録されております。原則として1つの国からは同じ種類のものを登録しないことから、現在登録されているものは、各国の歴史や文化、自然を代表する資産と言えます。
 「紀伊山地の霊場と参詣道」は、三重、奈良、和歌山の3県にまたがる紀伊山地の自然がなければ成立しなかった世界遺産であり、霊場と参詣道だけでなく、その周辺に広がる文化的景観も重要な構成要素の1つとなっていることから、世界に誇れる資産として非常に高い評価がなされているところであります。
 また、高野・熊野、熊野古道を含む世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」は、本県を代表する観光資源であり、これまで世界遺産のブランド力を最大限に活用し、あらゆるプロモーション活動により世界遺産高野・熊野を継続的に発信してまいりました。その結果、国内外から非常に多くのお客様に来訪いただいております。
 そうした中、2016年10月24日、フランス・パリで開催された第40回ユネスコ世界遺産委員会の臨時会合において、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の追加登録が決定をされました。
 このことにより、熊野参詣道の中辺路と大辺路、高野参詣道に含まれる合わせて22カ所の史跡で、資産面積で11.1ヘクタール、参詣道延長で40.1キロメートルが新たに追加されたわけであります。この中には、田辺市の闘鶏神社や北郡越、赤木越を初め、上富田町の八上王子跡や稲葉根王子跡、白浜町の富田坂、串本町の新田平見道、橋本市・九度山町・高野町にまたがる黒河道や、かつらぎ町の三谷坂などが含まれており、これで世界遺産を有する県内の自治体は、新たに橋本市、上富田町、串本町の3市町を加え、11市町となりました。
 本県では、世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約の精神に基づき、人類共有の財産「紀伊山地の霊場と参詣道」を将来の世代へ確実に引き継いでいくことを決意し、平成17年3月に全国で初めて世界遺産条例を制定しております。そして、世界遺産を人類のかけがえのない多様な価値を有する財産として守り、適切に活用されつつ将来の世代に良好な状態で引き継ぐといった本条例の基本理念を十分に踏まえて、和歌山県世界遺産緊急保全対策事業を創設し、これまで市町等が行う文化財及び文化的景観の保全に資する事業に対し補助する形で、その保全への対策を行ってきました。
 本事業は、県の単独補助事業として平成19年度に制度化されて以降、世界遺産の維持管理や災害時の保存整備において大いに効力を発揮をしてきました。しかしながら、世界遺産登録から10年余りが経過したことや来訪者の増加等により路面や木製工作物の傷みが目立っているため、今後、これらの修繕等が増加するものと見込まれております。
 先ほども申し上げましたが、本年10月には県内22カ所が世界遺産に追加され、これまでの登録資産に加えて範囲が広がることとともに、既に登録されている地点に比べ整備がおくれているため、それに伴う維持管理費用の増大や、さらには自然災害による参詣道等の毀損も増加すると想定されております。特に、大雨等の被害は6月から10月の梅雨時期や台風シーズンに集中するため、観光シーズンを前に通行どめ等による来訪者への影響が懸念されているところでもあります。
 国内外からの来訪者もふえ、注目を集めている今日、来訪者のニーズに応え、いち早く毀損箇所等の修繕を行うには、これまで以上に、この緊急保全対策事業を活用した保全への取り組みが必要であるとともに、求められるものと考えております。
 以上のことから、世界遺産緊急保全対策事業がこれまでにも増して円滑に進められ、世界遺産の保全活動に支障を来すことのないよう取り組みを図ることが重要であると考えますが、教育長の御見解をお伺いいたします。
○副議長(服部 一君) ただいまの鈴木太雄君の質問に対する答弁を求めます。
 教育長宮下和己君。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 世界遺産緊急保全対策事業については、国の現行制度では対象とならない総事業費200万円未満の小規模修繕等や、緩衝地帯いわゆるバッファゾーンを含めた保全を対象に、県独自の制度として平成19年度に創設いたしました。この制度により、これまで計画的に必要な箇所に対し、補助を行ってきたところでございます。
 今回の追加登録の意義は、保全すべき範囲の拡大はもとより、本来の普遍的価値がより高まったことにあります。県といたしましても、市町等からの保全に関する要望に、より一層きめ細やかに、かつ迅速に対応していく必要があると考えてございます。
 全ての登録資産について、今後とも、人的、物的に被害を及ぼすような緊急性が高い復旧を初め、より高い保全効果が期待される維持管理など、市町等が行う保全の取り組みに支障を来さないよう、計画的に支援してまいります。
○副議長(服部 一君) 鈴木太雄君。
  〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 次に、小項目の2点目である国の補助制度拡充に向けた取り組みについて質問をいたします。
 これまで世界遺産の保全につきましては、先ほど申し上げました県単独の補助制度である世界遺産緊急保全対策事業を活用しながら、世界遺産の維持管理や災害時の保存整備等に取り組んできております。また、コアゾーンのみならずバッファゾーンの保全、つまり周辺森林の育成や整備、環境保全等にもこの事業を活用し、保全への取り組みを進めているところでもあります。
 国が行う保全に対する支援は、世界遺産だという理由ではなく、世界遺産登録の前提となる文化財保護法での文化財補助金により行われることとなっております。しかし、登録資産の200万円以上となる大規模な改修や災害復旧の場合にはその補助制度を活用することができますが、緊急を要する改修や補修への対応が難しく、何よりもバッファゾーンや周辺地域の保全について補助的な制度がないというのが実情であります。
 「紀伊山地の霊場と参詣道」は道そのものがコアゾーンでありますが、やはり誰もが癒やされ美しいと感じる風景や文化的な景観は、周辺森林等バッファゾーンが非常に重要な役割を果たしているからこそであります。資産そのものだけでなく、バッファゾーンや周辺地域の保全なくしてこの世界遺産は成り立ちません。
 だからこそ、地元住民や来訪者が互いに世界遺産への共通認識を持ち、保全活動を行っていくことが大切であることはもちろんのこと、世界遺産を守っていくという責務の一端を担う国においても、登録資産の維持管理を含め、バッファゾーン等の保全に対する補助制度の拡充が必要と考えられます。
 以上のことから、国の補助制度拡充に向け本県が行ってきたこれまでの活動と今後の取り組みについて、教育長の御見解をお伺いいたします。
○副議長(服部 一君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 議員御指摘のとおり、国にはバッファゾーンを含めた保全や200万円未満の小規模修繕等を対象とする補助制度はございません。
 近年、登録資産そのものだけではなく、バッファゾーンや周辺の文化的景観の維持が重要となっており、本年6月、国に対し、世界遺産地域を対象に、バッファゾーンや周辺地域の保全に対する財政支援拡充の要望は行ってございます。世界遺産に関係する他の都道府県等においても同様の状況であり、国に対し、補助率かさ上げ等の財政支援拡充の要望を行ってございます。
 今後も、世界遺産に関係する他の都道府県とも連携いたしまして、バッファゾーン等の保全に対する財政支援拡充について、国に対し要望を行ってまいります。
○副議長(服部 一君) 鈴木太雄君。
  〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 続いて、小項目の3点目として、世界遺産の活用について質問をいたします。
 本来、世界遺産登録は観光振興を目的にするものではありませんが、登録されれば観光地としての知名度やブランド価値が向上するため、観光客の誘客促進につながっていくと期待をされております。実際、平成16年7月に世界遺産登録されてから、聖地高野山・熊野三山を含む「紀伊山地の霊場と参詣道」はグローバルブランドとして広く認知されるとともに、より強力かつ効果的に情報発信を行うことが可能となり、本県ではこれまでそのブランド力を最大限活用しながら、あらゆるプロモーションで世界遺産高野・熊野を発信し、効果的な誘客に努めてきております。また、世界遺産を核とした魅力ある地域づくりに向けた取り組みにつきましても、各市町と連携を図りながら積極的に推し進めているところでもあります。
 そういったことから、世界遺産は本県にとりましてなくてはならない財産であるとともに、誘客の観点からも和歌山を売り出す重要な観光資源であります。
 今回新たに追加登録された世界遺産については先ほど小項目の1点目で申し上げたとおりでありますが、その中でも田辺市の中心市街地にある闘鶏神社が世界遺産となったことは、住民の多くの方々にとり、改めてふるさとに対する誇りを再認識する契機にもつながっております。また、中心市街地に世界遺産があるところは珍しく、希少価値が高いことから、観光資源としての魅力も高まるとともに、集客への効果も以前にも増して期待されているところであります。
 今後は、その価値と魅力をより一層広く伝えるために、地元と連携しながら、県内外の方々はもとより国外へも積極的なPRや来訪者の受け入れ体制の整備等を行っていかなければなりません。ぜひ、来訪者が何度でも訪れたくなるような世界遺産であってほしいと思います。
 そこで、世界遺産の活用について、これまでの取り組みと追加登録されました22地点の史跡を活用した取り組みについて、また中心市街地にある世界遺産を活用した観光振興策について、どのように推進していくのか、商工観光労働部長の御見解をお伺いします。
○副議長(服部 一君) 商工観光労働部長岡本圭剛君。
  〔岡本圭剛君、登壇〕
○商工観光労働部長(岡本圭剛君) 本県の世界遺産である「紀伊山地の霊場と参詣道」については、平成16年に登録されて以来、国内外に積極的に情報発信をするとともに、参詣道を安全・安心に歩いていただけるよう、誘導板や案内板の整備、街道マップの作成等に努めてまいりました。
 また、追加登録が承認された直後の10月31日に東京都で世界遺産シンポジウムを開催し、首都圏において本県の世界遺産の魅力を広くPRを行うとともに、11月19日に熊野参詣道大辺路において参詣道環境保全トレッキングを実施し、県内外から多くの方々に参加いただきました。
 このように、追加登録を契機として新たに登録された22地点についても積極的にPR等を行っているところであり、今後も引き続き、訪れていただく観光客の皆さんが世界遺産を満喫していただけるよう適切な活用に努めてまいりたいと考えております。
 特に、紀伊路から中辺路、大辺路に分岐する地にある闘鶏神社については、田辺市街地への誘客効果も大いに期待されているところであります。
 県としましては、田辺市と連携し、受け入れ体制の整備や南方熊楠顕彰館等の歴史資産に加え、町なかにある田辺市独自の食文化などの魅力と組み合わせることで周遊の促進につなげ、世界遺産ブランド熊野の1つとして、より積極的に誘客につなげてまいります。
○副議長(服部 一君) 鈴木太雄君。
  〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 引き続いて、大項目の2、スポーツ観光の推進について、その小項目の1点目、スポーツ観光の必要性と取り組み状況について質問をいたします。
 現在、我が国の経済は緩やかな回復基調が続いているものの、地方においてはその経済の好循環はいまだ十分に実現できていない状況にあります。特に少子高齢化や急速な人口減少に伴う地域内消費の減少により地域経済は縮小すると予想されており、そうした状況下において、本県におきましては、観光による内需拡大が叫ばれている中、スポーツという資源を最大限に活用した観光振興への取り組みがこれまで以上に必要とされているところであります。
 観光庁におきましては、「スポーツは感動を生み、人々の交流を呼び起こし、異なる国や地域間の相互理解を促進する」として、スポーツ観光を観光立国戦略の重要な柱に位置づけております。また、政府の成長戦略である日本再興戦略におきましても、世界の多くの人々を地域に呼び込む社会の重要施策の代表的な例として示されております。
 先般の9月議会の一般質問において、スポーツ観光の1つである、サイクリングロードを活用し観光振興へつなげていこうとする取り組みを取り上げましたが、全国各地におきましても、スポーツを資源の1つとして、あるいはツールとして捉え、スポーツを通じた観光客の誘致に向けた取り組み、いわゆるスポーツ観光が積極的に推し進められているところでもあります。
 本県は、温暖な気候、豊かな食材、日本有数の温泉に加え、世界遺産に登録された高野・熊野を初めとする豊かな自然に恵まれた魅力あふれる地であります。加えて、平成27年、紀の国わかやま国体・わかやま大会を開催し、全国から大変多くの競技者、関係者をお迎えして、和歌山の元気、活力、躍動を全国に発信できたことは、いまだ記憶に新しいところであります。この機に培ったおもてなしの機運の継続を図るとともに、スポーツと地域資源を融合させ、県全体として積極的な誘客活動を展開し、交流人口の増加と地域の活性化を図ることが重要であると考えます。
 そこで、スポーツ観光の必要性と本県における取り組み状況について、知事の御見解をお伺いいたします。
○副議長(服部 一君) 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) スポーツ観光は、スポーツで来県されるたくさんの皆さんに本県でスポーツを楽しんでいただく、それから当然泊まっていただく、それから食べていただく、買い物をしていただくというような意味で、あるいはその後ちょっと別の観光もしていただく、経済的な効果が非常に高いと思います。これを今度は、サービスをする方々の雇用というのもこれによって大いに発生するということなんで、大変意義があると思っております。
 広い意味でスポーツ観光というと、手段になるものとしてスポーツ合宿があると思うんですが、国体でたくさんの施設ができましたんで、これを利用してというのが各地で盛んに行われていると思います。
 次に、和歌山でございますので、やっぱり自然を生かしたスポーツというのが目玉になると思います。自然を生かしたというとゴルフ場もあるんですけれども、何といってもやっぱり和歌山は海と川、セーリングとか、あるいはクルーザーとかマリンスポーツが大変有望でありますし、ダイビングとかシュノーケリングとか、あるいはカヤックでこいでいくとか、こういうこともなかなか楽しそうな感じがいたします。
 それから、釣り客はもともと和歌山というのは大変なターゲットになっておりまして、これは川も海もあるんですけども、そうすると渡船のような、そういう雇用もそこで賄われるということだと思っております。
 また山も、トレッキング、サイクリングとか、あるいはパラグライダー、ハングライダーというようないろんな楽しみ方もあると思います。
 そういう意味で、例えば和歌山の観光のメニューになっておりますほんまもん体験観光なんかでは、今のうちカヌーとかトレッキングとか約100ぐらいのスポーツに関連するメニューを載せておって、これがまたお客さんに情報が行き届いてる次第になっております。
 またサイクリング、これは海も山も川もあると思いますが、そのサイクリングロードを今整備中でありますし、またイベントも行いたいと思っておりますので、これがまた新しいスポーツ観光の目玉になっていくかなあというふうにも思います。
 そういう個々の話だけではなくて、平成31年には全国健康福祉祭・ねんりんピックが和歌山で開かれます。それから、平成33年には関西ワールドマスターズゲームズが開催される予定で、和歌山県でも多くの種目が行われるということになっております。こういう大会を契機にして、大会に参加される選手だけじゃなくて、一緒に来られた家族の皆さんとか、あるいは全国からお見えになった方とか、そういう方に本県の魅力ある観光資源を情報発信して、あわせて味わってもらいたいというふうに思っております。
 このようにスポーツ観光は、うまく組織化をいたしますと雇用とか地域づくりになるもんですから、和歌山県も大いに積極的にこれを奨励して、それで例えば市町村が主体的に取り組んでおりますわがまち元気プロジェクトで、これの目玉というか、要するに内容として、スポーツで地域の資源を生かした地域づくりをしようというようなことであれば積極的に支援を行っていきたいと思っております。
 このようなスポーツ観光を大いにアピールしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
○副議長(服部 一君) 鈴木太雄君。
  〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 続いて、小項目の2点目、スポーツ合宿の推進に向けた取り組みについて質問をいたします。
 本県は、先ほども触れられておりましたが、平成27年に国民体育大会と全国障害者スポーツ大会を開催いたしました。その両大会の競技会場として、県内各地において施設の整備が行われるとともに、宿泊施設を備えた大型のスポーツ施設やグラウンドの建設などが行われたことにより、各種施設が整い、スポーツを行う環境の充実が図られたところであります。
 加えて、本県は、先ほどもまた申し上げましたとおり、温暖な気候や豊かな食材に恵まれるとともに温泉や観光地などの観光資源を有しており、また地理的にも京阪神から近距離に位置するなど、スポーツ合宿に非常に適した条件が整っていることから、交流人口の増大に大きな可能性を秘めているものと考えております。
 これまで紀南地域においては、田辺周辺広域市町村圏組合を組織する市町と県の連携により平成25年5月に南紀エリアスポーツ合宿誘致推進協議会を設置し、受け入れ体制の強化、有効な誘致活動、誘致後の交流促進の3本の柱に加えて、市町独自でも合宿誘致助成金制度を設けるなど、広域でのスポーツ合宿の誘致活動を推し進めてきているところであります。
 その結果、平成25年度は約2万6000人であった県外からの合宿者数が、平成26年度は約3万4000人、平成27年度には約4万6000人と増加してきておりますが、今後さらに誘客を図るためには、高速道路の南伸や南紀白浜空港の利用に伴う良好な交通アクセス、そして海・山・川の自然、世界遺産熊野古道や温泉など、数多くの地域資源をセールスポイントとしたプロモーション活動等の充実が重要であることは言うまでもありません。
 また、全国には、スポーツ合宿に対する各市町の宿泊助成制度とあわせて、高知県や北陸エリアなど県が独自に助成制度を設けている先進地もあることから、特に学生等の誘致活動にはこれまで以上の取り組みが必要不可欠であります。
 そういった中、南紀エリアスポーツ合宿誘致推進協議会に対する県の補助事業であるわがまち元気プロジェクト支援事業は、今年度が補助対象の最終年度となるため、このままいけば来年度から県としては主に事務局としての協力に限られることとなります。これからスポーツ合宿の誘致を広域圏でより推進を図ろうとする関係市町に対し、ある意味、県のスポーツ合宿誘致に向けた取り組みへの後退を感じさせる状況になるわけであります。
 これからの本県にとりまして、スポーツ観光へと結びつく大きな可能性あるスポーツ合宿の誘致は、南紀エリアに限らず、県域全体としても有益なことであり、既存の財政支援にかわる何らかの支援策のあり方や、先進県のような県独自の助成制度のあり方等を熟慮し、他県にはなく、また負けない取り組みを推進していくことが必要であると考えております。
 そこで、今後のスポーツ合宿推進に向けた本県の取り組みについて、知事の御見解をお伺いいたします。
○副議長(服部 一君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) スポーツ合宿の推進につきましては、公益社団法人和歌山県観光連盟と連携いたしまして、スポーツ施設だけではなくて、宿泊施設、周辺の観光案内などもあわせて紹介する「スポーツ王国わかやま宿泊ガイド」をホームページに掲載するとともに、ちょっとなかなかしゃれたパンフレットをつくりまして今までPRに努めてきたんですが、内容は刻々変えていかないといけませんので、一層充実していきたいと思っております。
 これらを活用いたしまして、一般論といたしましては、引き続きスポーツ団体とか大学、スポーツ合宿を専門に扱う旅行会社へのセールスを県としては強化をしていくということになろうかと思います。
 また、海外のナショナルチームとか日本代表チームのキャンプを誘致するというのも我々の仕事かなあと思っております。トップレベルの選手が求める最高の練習環境が国体を契機にしてできているところでございますんで、これは絶対にいいぞということで今大いにPRをしておりまして、結構成果が上がっているところでございます。まだまだもっとやりたいと思っております。
 御指摘のように、田辺・西牟婁地域では、合宿誘致協議会というのができまして、市町村がみんなで協力してやろうということになって、非常に結構ではないかということでございます。
 これについては、和歌山県は、ルールなんですけど、3年間支援を行って頑張れと、こういうことをしてきました。その結果、御指摘のように大分成果が上がっております。これは何も社会福祉事業でやってるわけじゃありませんので、成果が上がったということは収入が上がった人たちがいるはずなんですね。地元でそういう人たちと組んでやってるはずなんで、そういうところから今度は成果が上がり、収入が上がり、もうけがあったものの一部はまた還元してもらって、そして全体としての協議会のアクションに結びつけていくようにすると、どんどん回っていくということになります。
 そういうことも進めながら、県としては、全体的に大いに、こういうのもありますよということをPRしていくということではないかなというふうに思っております。
○副議長(服部 一君) 鈴木太雄君。
  〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 最後に、大項目の3として学校教育における情報化について、1点目であるICT教育の重要性と本県における環境整備の状況について質問をいたします。
 21世紀は、グローバル化の進展により、広い知識や価値観を持った人材をめぐる国際競争が激しくなるとともに、異なる文明・文化との共存や国際協力の必要性が増大しております。このような社会背景の中、社会のあらゆる領域における活動の基盤として、新しい知識・情報・技術の重要性がより一層増しており、広い知識と柔軟な思考力に基づく新しい知識や価値を創造する能力が求められております。
 子供たちにおきましては、これまで求められてきた生きる力に加え、必要な情報をみずから収集、判断、表現、処理、創造し、受け手の状況などを踏まえて発信、伝達できる、いわゆる情報活用能力が必要とされております。このような子供たちにとって必要とされている能力を高めるため、学校教育におきましては、これまでの一斉指導による学びにとどまらず、子供たち一人一人の能力や特性に応じた学びや子供たち同士が教え合う学びを推し進めていくことが、今後ますます重要になると考えられています。
 そういった状況を踏まえ、国では、子供たちの情報活用能力を育むため、平成25年に閣議決定された第2期教育振興基本計画の中で、ICT環境の整備とICTの活用の必要性を取り上げています。
 また文部科学省では、この振興計画で目標とされている水準のICT環境を普及させるため、平成26年度から29年度にわたる教育のIT化に向けた環境整備4カ年計画を作成しており、その内容には、教育用コンピューターの配備や電子黒板、実物投影機の整備を初め、高速インターネット接続や校務用コンピューターの配備、そして学習用ソフトウエアの整備やICT支援員の配置等の推進についてが明示されています。
 一方、本県におきましては、第2期和歌山県教育振興基本計画を策定し、確かな学力、豊かな心、健やかな体の育成を目指した取り組みを初め、学校や家庭、地域が連携し、子供の豊かな学びを支えるさまざまな取り組みが推し進められております。
 また、本県の学校教育指導の理念と方向性を示す資料である学校教育指導の方針と重点の中では、確かな学力の向上に向けた取り組みの1つとして、「ICTや視聴覚教材の活用を図り、わかりやすく効果的な指導方法の工夫改善に努める」とされておりますし、加えて、効果的な学校運営を図るために、「ICTの活用を含めて校務の効率化を図るとともに、会議の在り方や組織の編成と運営の方法などを柔軟に改善していく必要がある。また、必要な書類やデータをコンパクトに整理し、担当者が替わっても適切に引き継がれ、共有化されるシステムを工夫する」と明記されております。
 さらに、本県の不登校対策に係る有識者会議におきましても、不登校を生まない学校づくりのためにはICTを活用したわかる授業づくりが有効であるとも述べられております。
 そこで、ICT教育の重要性と本県における環境整備の状況について、教育長の御見解をお伺いいたします。
○副議長(服部 一君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) グローバル化、情報化が急速に進展する中、子供たちが情報や情報手段を主体的に選択し活用していく力を身につけることがますます重要となってございます。また、学校においては、授業を初めさまざまな指導の過程においてICT機器を活用することは、学習課題への興味関心を高めたり学習内容を理解するためには大変有効であると考えてございます。
 本県における教育用コンピューター1台当たりの児童生徒数は、全国平均6.2人を上回る4.9人であり、全国9位の整備率となっております。また、教室の校内LAN整備率については78%、高速インターネットの接続率は92%、電子黒板のある学校の割合は86%など、おおむね全国平均となってございます。
 今後、県立学校において電子黒板や無線LANなどの整備を計画的に進めるなど、ICT環境を充実してまいりたいと考えてございます。
○副議長(服部 一君) 鈴木太雄君。
  〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 最後に、小項目の2点目として、校務の情報化について質問をいたします。
 校務の情報化につきましては、文科省が策定した教育の情報化ビジョンにおいて、ICTを活用した教職員の情報共有によるきめ細やかな指導、校務負担の軽減について明示されており、具体的には、校務支援システムの普及、共有すべき教育情報の項目・形式の標準化の2点が示されております。
 校務支援システムとは、成績、出欠、時間割、生徒情報の管理などの教務分野を初め、進路希望調査、進学・就職状況の管理などの進路分野、生徒健康診断、学校生活管理簿などの保健分野の機能等を備えたシステムのことであり、例えばこのシステムを活用すると、成績のデータを通知表や指導要録に自動的に転記することが可能になるため、転記に要する時間や転記ミスを著しく減少させることが可能となり、教職員の業務の軽減と効率化に寄与するとされております。
 また同時に、子供たちの出欠情報、学習状況、活動記録、心身の発達に関する保健情報、そして生徒指導情報等を蓄積し、全教職員で共有することが可能となり、学校全体としてきめ細やかな指導が行えることから、質の高い指導にもつながるとされております。
 以上のことから、校務の情報化は、一見学力に関係なく思われがちではありますが、子供たちの学力向上に十分関係し、学校運営の改善にも結びつくものであると考えます。
 本県における校務用パソコン、つまりハードウエアの整備につきましては、県立学校の全ての中学校、高等学校、特別支援学校において全教員に配備されておりますし、また、市町村立小中学校におきましても、ほとんどの市町村で100%を超える配備率であります。
 一方の校務支援システム、つまりソフトウエアにつきましては、県立学校の全てにおいて先ほど申し上げたような機能を備えたシステムを開発して既に導入、運用されておりますが、市町村立の小中学校におきましては、各自治体によってその整備率に大きな差があり、全く整備の進んでいない市町村も存在している状況であります。
 ソフトウエアが整備されていない自治体におきましては、現在でも出欠管理や成績処理等の入力を汎用の表計算ソフト等を用いた手動入力や手書きでいまだ行っているという実態があり、教職員に余分な労力や精神的な負担を強いている環境にあります。また、それらに加えて学校の中で情報が共有化、一元化されていないため、情報漏えいの心配や、そして何よりも、多忙な教職員にとって子供たちと向き合う時間が十分に確保されにくいといった実情もあります。
 県下の県立学校と市町村立小中学校における教育活動の質はもとより、市町村間においてもその差があるといった状況は、児童生徒たちにとりましても非常に好ましいものではありません。やはり県教育委員会には、県下全体にわたり公平性のある教育環境の確保に向けた取り組みとその責務があるのではないでしょうか。
 そこで、校務の情報化についてどう認識をされているのか、また、県下全体の校務支援システム、つまりソフトウエアの整備について非常に大きな差が生じている状況において今後どのような対策を考え、県下全体にわたり公平性のある教育環境の確保に向けた取り組みを図っていくのか、教育長の御見解をお伺いいたします。
○副議長(服部 一君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 議員御指摘のいわゆる統合型校務支援システムにつきましては、多様な業務への対応が必要な県立学校には、県独自に開発したシステムを導入してございます。また、市町村立の小中学校では、和歌山市を初め7市町で独自に導入しており、今後2市町で導入予定となってございます。
 校務支援システム導入は、教員にとって、事務処理の効率化を図ることで子供と向き合う時間を確保することができるという観点からも有用であると認識してございます。
 しかしながら、市町村によっては、システムについての専門的知識や、どのような校務支援システムを導入すればいいのかわからないといった課題もあることから、今後その課題の解決に向け、県と市町村の協議の場を設け、複数自治体による導入の検討を行い、校務支援システムを広められるよう努めてまいります。
○副議長(服部 一君) 鈴木太雄君。
  〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 以上で、私の一般質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○副議長(服部 一君) 以上で、鈴木太雄君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 次会は12月12日定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後2時27分散会

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