平成28年9月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(片桐章浩議員の質疑及び一般質問)


平成28年9月 和歌山県議会定例会会議録

第5号(片桐章浩議員の質疑及び一般質問)


汎用性を考慮してJIS第1・2水準文字の範囲で表示しているため、会議録正本とは一部表記の異なるものがあります。

正しい表記は「人名等の正しい表記」をご覧ください。

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 31番片桐章浩君。
  〔片桐章浩君、登壇〕(拍手)
○片桐章浩君 こんにちは。ただいま議長のお許しをいただきましたので、通告に従いまして一般質問をさしていただきます。
 議長がおっしゃりましたように、附属小学校の子供たちが来ております。勉強になれるようしっかり頑張りますんで、よろしくお願いします。
 まず、第1問目であります。
 一般社団法人日本ハラール認定推進機構の加藤洋介さんという方が、先般、和歌山県を観光目的で訪れてくれました。
 山梨県では、外国人観光客の誘客で、中でもムスリム旅行者向けのホテルや旅館を誕生させ誘客に成功している、このことを説明してくれたものです。加藤さんいわく「和歌山県も外国人観光客の誘客に積極的だと聞いております。世界遺産である高野山や熊野古道があり、外国人にとって魅力的な地域なので、ここにムスリム旅行者を呼び込めると思います」、このように話してくれました。
 ムスリム観光客向けに改装した山梨県のホテルは四季の宿富士山、ここはムスリム旅行者向けに宿泊者用の礼拝所が設置されたと聞きました。ビザの緩和の影響もありマレーシアやインドネシアからの旅行者が増加している状況から、ムスリム旅行者に日本での観光を楽しめるよう礼拝所を設置したものです。このように安心してムスリムツーリズムができることが、日本でも可能なことを海外のムスリム観光者に河口湖での取り組みを発信している、このように聞きました。
 ある大手食品会社では、ムスリム専用の食肉工場を設けているということも聞きました。ここで生産されたお肉は、ムスリム用の食材として使用できることになります。このように、外国人観光客誘致に積極的なところは、外国人観光客向けの体制を整えつつあります。
 我が和歌山県ですが、例えばバイオマス発電で使用するPKS、パームステアリングオイル、この主な輸入元はマレーシアやインドネシアなので、和歌山県にこれらの国からのお客さんが来ることもこれから予想されるというふうに思います。
 そこで、この点の1問目であります。
 知事の議会開会日の説明の中で、外国人観光客の受け入れ体制の整備を進めるとともに、海外向けの情報発信やプロモーション活動を積極的に展開していく、こういう説明がありました。外国人観光客向けの受け入れ体制の整備や情報の発信状況はどう考えているのか。また、ムスリム旅行者向けの受け入れ体制やこれらの国への情報発信はどう考えているのでしょうか。第1問目に関しては、商工観光労働部長の答弁をお願いいたします。
○議長(浅井修一郎君) ただいまの片桐章浩君の質問に対する答弁を求めます。
 商工観光労働部長岡本圭剛君。
  〔岡本圭剛君、登壇〕
○商工観光労働部長(岡本圭剛君) 県としましては、今後ともより多くの外国人観光客を誘致するため、無料公衆無線LAN、おもてなしトイレの整備、電話通訳サービス、簡易翻訳サービスなどの受け入れ環境の充実と各国の嗜好、動向を踏まえた海外へのプロモーションを2本柱として取り組んでおります。
 マレーシア、インドネシアを初めとする東南アジア圏についてはインバウンド観光客誘致の重点市場と捉え、ムスリム旅行者の受け入れ体制を向上させるため、県内の飲食店、宿泊施設などの観光事業者を対象に、ムスリム対応に関するセミナーを開催しています。
 また、こうした取り組みを行っている観光事業者の飲食や礼拝環境等への対応状況を集約し、多言語ガイドブックを通じて情報発信を行っているところです。
○議長(浅井修一郎君) 片桐章浩君。
  〔片桐章浩君、登壇〕
○片桐章浩君 平成25年の6月県議会定例会におきまして、和歌山県とマレーシア、そしてハラル市場への進出の可能性や期待、観光面からの期待で知事から答弁をいただいておりますので、その一部を引用させていただきたいと思います。
 「マレーシアは、昨年の訪日数が過去最高を記録しておりまして、この夏──これは平成25年のことなんですが──に予定されているビザ免除で訪日数が一層増加するということが予想されておりまして、大変有望な、かつ重要な市場となっている。また、県内の一部の宿泊施設では、ハラルや祈祷の対応を行っております。その際、先ほど申し上げましたハラルの問題について、受け入れ側のサービス主体が対応するということは、ここでそんなに不可能とは思われません。十分可能だと思いますので、民間の企業とよく相談をして研究して対応してまいりたいと思います」。
 続いて、「このような県や民間事業者の取り組みにつきまして、マレーシアの旅行会社が和歌山商品を造成するというようなことを実施しておりまして、少しずつ成果があらわれておりますけれども、まだまだでございますから、マレーシアへのプロモーションを継続、強化することによって、さらなる誘客に努めてまいりたい」、こういう答弁をいただいております。
 ここで、マレーシアのプロモーション活動の継続、強化によりさらなる誘客に努めていくということでしたが、継続、強化したプロモーションによる誘客の成果はどのようにあらわれていますか。この点も商工観光労働部長の答弁をお願いします。
○議長(浅井修一郎君) 商工観光労働部長。
  〔岡本圭剛君、登壇〕
○商工観光労働部長(岡本圭剛君) マレーシアからの誘客に関しましては、平成23年から毎年、現地旅行博へ出展するとともに、メディア取材やエージェントへのファムトリップを実施するなど、継続したプロモーションに取り組んでいます。
 これらの取り組みにより、マレーシアからの県内宿泊数は、統計を始めた平成25年の527人から平成27年には1718人と3年間で3倍以上に増加しております。
 あわせて、マレーシアからの教育旅行の誘致にも取り組んでおり、平成27年は5校155人が来県し、印南町、日高川町で民泊体験や県内の高等学校との交流を行っております。
○議長(浅井修一郎君) 片桐章浩君。
  〔片桐章浩君、登壇〕
○片桐章浩君 部長の答弁によると成果が徐々にではあるけどもあらわれていると、このような状況かというふうに思います。
 また、白浜空港の国際線化、今計画をしているところでありますが、これが実現しますと、運営者は東南アジアからの個人観光客の誘客にも力を注ぐのではないかと思われますし、アジアのこれらの国々から観光客の増加が見込まれます。
 既に白浜町のホテルも外資になっているところがありますし、アジア圏やムスリム旅行者向けのホテルの設置の可能性が出てきます。今から東南アジアからの観光客増加に対応した体制、民間事業者との連携を図る必要があると思いますが、この補助制度の適用も含めて商工観光労働部長の答弁をお願いします。
○議長(浅井修一郎君) 商工観光労働部長。
  〔岡本圭剛君、登壇〕
○商工観光労働部長(岡本圭剛君) 東南アジア圏から今後多くの皆さんを本県にお迎えできるよう、セミナーの開催などにより宿泊施設の受け入れ体制の充実に取り組むとともに、メディアやウエブサイトを活用しつつ、あらゆる機会を捉えて情報発信を行ってまいります。
 また、本年9月より高級ホテル・旅館の開設を促進する奨励金制度を創設いたしました。この制度は、県内一定の要件を満たす宿泊施設を新たに建設、取得、賃借または増設する場合に奨励金や補助金を交付するものです。昨年、本県への観光客が過去最高を記録する中、高級ホテル・旅館の立地によるさらなる知名度の向上や新たな顧客層の誘客を図ってまいりたいと考えております。
○議長(浅井修一郎君) 片桐章浩君。
  〔片桐章浩君、登壇〕
○片桐章浩君 それでは、第2問目に入りますが、ちょうどきょう傍聴に来てくれてる子供たちが小学校6年生ということなんで、ちょっと歴史の認識を深めていただければありがたいと思いまして、明治維新、大政奉還から150年の取り組みについて、この点に入らしていただきます。
 平成27年8月31日、東京・明治記念館で、平成30年に迎える明治維新150年に向けて、平成の薩長土肥連合、これが宣言されております。鹿児島県、山口県、高知県、佐賀県が幕末維新をテーマとする広域観光ルートの形成などで相互客送の体制を構築し、知名度の向上と観光産業の強化を図っていく、このような企画です。既に平成30年のNHKの大河ドラマは西郷隆盛を取り上げた「西郷(せご)どん」、これに決定していますから、平成の薩長土肥が注目を集めることになります。
 また、京都市では、平成29年に大政奉還から150年の節目を迎えることに着目し、大政奉還150周年記念プロジェクトを計画しています。このプロジェクトでは、幕末維新に京都で活躍した先人たちと縁を持つ都市が相互に交流、連携を図りながら記念事業を実施することにしています。
 京都市は、京都市に縁、ゆかりを持つ都市に幅広く参画を呼びかけて、16都市に賛同してもらったと聞きました。プロジェクトは、幕末維新にスポットを当てた都市間連携事業としては過去最大規模の広がりを持つ取り組みになります。このプロジェクトに参加する都市の主な取り組みとして、坂本龍馬没後150年記念事業、高杉晋作没後150年記念事業、戊辰戦争150年プレ事業などが計画されているようです。平成29年は大政奉還150年、平成30年は明治維新150年の年になり、観光はここにゆかりのある都市に集中することが予想できます。
 明治維新150年にも大政奉還150年にも和歌山県がかかわっていないということであれば、とても寂しいことだというふうに思います。特に平成29年は陸奥宗光没後120年の年となりますから、シンポジウムの開催など大政奉還150周年プロジェクトと連動した取り組みをすることで偉人の功績が広く伝わり、集客効果も上がると思います。
 例えば陸奥宗光の功績ですが、慶応3年(1867年)11月15日に坂本龍馬が暗殺されていますが、龍馬の遺志を受け継いだ陸奥宗光の行動は素早く、同年12月、英国公使パークスに面会、その後、京都の岩倉具視に面会を果たし開国を説いています。ほかにも、この時代の和歌山県のことは「南紀徳川史」に記されております。
 大政奉還後に版籍奉還が行われ、紀州藩から和歌山藩になっています。当時、朝廷と新政府とも関係が思わしくなかった紀州藩主徳川茂承は、津田出を介して岩倉具視に高く評価されていた陸奥宗光に紀州藩の危急を知らせ、陸奥は郷里の危機にはせ参じ、郡県制と兵制改革の施行を根幹とする改革案を陸奥は岩倉具視に提示、説得し、藩主茂承は版籍奉還を申し出て認められ、和歌山藩知事に任命されています。
 すぐさま明治2年に和歌山藩が率先して藩政改革を行い、明治政府の廃藩置県のモデルになったという歴史があります。和歌山藩が薩長土肥に先駆けて藩政改革を行ったことで明治維新があり得たと言いたいと思います。薩長土肥が明治維新への布石をつくり、それを真っ先に実践し、近代国家のモデルとなったのが和歌山藩です。よって、明治維新は和歌山から起きたと言っても過言ではないと思います。
 その明治維新から歴史は150年の時を刻みました。この先人がつくった歴史を、和歌山県はやすやすと見逃すのでしょうか。こうした先人たちの誇れる歴史を私たちが発信していなかったことを今反省しなければならないと思います。
 平成29年は大政奉還から150年、平成30年は明治維新から150年の年を迎えることになります。幕末にゆかりのある府県では、都市間を結ぶ観光プロジェクトやイベントを計画しています。明治2年に藩政改革を行った和歌山藩こそ明治維新の立て役者であり、この歴史を発信してほしいと思います。
 和歌山県として、我が国の歴史の大きな転換期となる大政奉還と明治維新から150年の年は、郷土の偉人たちの功績を現在によみがえらせ、ふるさとの歴史を学ぶ、そのことを全国に情報発信することが観光にもつながると思いますので、観光の観点から知事の答弁をお願いいたします。
○議長(浅井修一郎君) 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 議員御承知のとおり、本県では平成23年度より和歌山県偉人顕彰シリーズとして毎年東京でシンポジウムを行っており、これまでに陸奥宗光や濱口梧陵など明治政府の近代化に寄与した人物など、郷土の偉人たちの功績を改めてたたえ、全国に情報発信をしております。今年度も、松下幸之助シンポジウムを12月17日に東京で開催することにしております。
 陸奥宗光さんは、外務省で唯一銅像が建っておる、我が国の外交史上ナンバーワンの政治家であります。このようなことを含めて、和歌山県の郷土の認識については、私自身も実は正直言って、大変、子供のころは知りませんでした。知事になりましてからいろいろ勉強いたしましたら大変なことがいっぱいわかってまいりまして、それで誇るべきものがたくさんあるんだなということを知ったわけであります。これまた正直言いますと、仁坂少年に全然教えなかった当時の和歌山県とか和歌山県教育委員会とかに物すごい腹立ちを覚えておりますが、しかし、今の子供たちに将来そんなふうに思われてはいかんということで、実は「わかやま何でも帳」など郷土教育を一生懸命やろうというふうに思っているわけでございます。
 陸奥宗光については、岡崎久彦さんの教えがたくさんございまして、これは大変な偉人だということで、実は今からもう7~8年ぐらい前になりますけれども、NHKに大河ドラマにしてくれというようなことを、時の会長か副会長に申し入れに行ったことがあります。実は、「近代は難しい」というのがそのときの話だったんですが、あわせて必要なこととしては「小説が要ります」と、「ドキュメンタリーではだめです。小説が要ります」というようなことを言われました。
 そこで、これまた和歌山県の生んだ立派な作家でありますところの津本陽さんに陸奥宗光の伝記をぜひ書いてくださいというようなことを申し上げておりましたら、まず坂本龍馬との関係で小さい本を書いてくれたんですけれども、これはどうも坂本龍馬のことばっかり書いてあるんでちょっと使い物にならんと思っておったら、ついに最近「潮」に連載が始まりまして、9月5日に単行本として「叛骨 陸奥宗光の生涯」という本が出たわけでございます。1つの必要性はクリアされたんですが、努力をしていきたいと思います。
 陸奥宗光没後120年に当たる来年は、改めてシンポジウムの開催などを考えているということを企画部長が答弁申し上げたとおりでございます。大きな役割を果たした郷土の偉人たちの功績に再びスポットを当てて、周辺の観光資源と結びつけながらお客様を招くことは、県民のふるさと和歌山への愛着と誇りや自信にもつながるよい取り組みと考えております。それには、まず県民皆が特にふるさとについての知識を持って、それぞれがその知識を語り始めるということが大事だと私は思います。
 そこで、先ほど申し上げました「わかやま何でも帳」を子供の教育用だけではなくて大人の方にも読んでいただけるように、和歌山放送に市販してもらって出版をしてるということでございます。こういうことをいろいろ総合的にやりながら、観光と、それから和歌山県民の誇り、両方を達成できるように頑張ってまいりたいと思います。
○議長(浅井修一郎君) 片桐章浩君。
  〔片桐章浩君、登壇〕
○片桐章浩君 知事に答弁をいただきまして、そういや、僕も学校で習った記憶は余りないなあというのを思い出しまして。
 なぜこの名前を知ったかというと、小学校のころ父親が、「和歌山ですばらしい人いる?」という僕の質問に対して「陸奥宗光や」と即答で言ってくれて、そこから調べ出したというのがちょっと今記憶によみがえってきたんですが、しっかりと教育で伝えていただきたいと思います。
 先般、この質問をするに際して、陸奥宗光はどんな人物やということを知り合いが、えらいエピソード、生まれてから亡くなるまでのエピソードをこれぐらいにまとめていただいて資料を提供していただきまして、十分これだけで大河ドラマというんでしょうか、物語性があるのかなというふうに思いますので、しっかりとこの陸奥元外務大臣の功績を伝えられる、これは教育にも観光にも伝えていけたらというふうに改めて思った次第であります。
 さて、平成29年から平成30年にかけては「幕末」が観光のキーワードになる、このように思いますが、例の大政奉還のプロジェクトですけども、企画した京都市から和歌山市に対して参加要請は、確認するとなかったようです。京都市は、「和歌山市はお誘いする対象の都市にはなっていなかった」ということでした。紀州藩が大政奉還や明治維新に果たした役割の認識がないこと、これは和歌山県として反省すべきだというふうに思います。もし日常から和歌山県の観光は文化と歴史、偉人だということをほかの都市に発信していれば、広域観光の誘いもあったのではないかなというふうに思います。
 歴史を題材とした広域観光の流れは、県内外にとどまらず全国、いや、世界の歴史ファン、研究家に文化と歴史の輝く観光都市和歌山を知っていただく大きなチャンスではないかというふうに思います。例えば、陸奥宗光没後120年の企画や廃藩置県のモデルをつくった和歌山藩であることを訴える機会にはなると思います。
 加えて、和歌山県の観光事業として、大政奉還と明治維新にかかわる取り組みも検討していただきたいと思います。観光振興につながり、和歌山県の文化と歴史のPRにもつながる事業が必要だと思いますが、商工観光労働部長の答弁をお願いします。
○議長(浅井修一郎君) 商工観光労働部長。
  〔岡本圭剛君、登壇〕
○商工観光労働部長(岡本圭剛君) 議員御指摘のプロジェクトが関係する自治体で連携して進められていることは存じていますが、本県には、明治維新期の陸奥宗光はもとより、例えば、濱口梧陵の「稲むらの火」や、昨年、国内外で上映されたエルトゥールル号遭難にまつわる日本とトルコの友情の話、現在大河ドラマで放送中の真田幸村を初めとする戦国の物語などの逸話もたくさんあります。
 県としては、こういった和歌山が主役として戦略的に売り出していける歴史、文化などの観光資源と、お客様に楽しんでいただける温泉や食、体験などを組み合わせた魅力ある観光プランをつくり旅行動機を喚起することで、周遊促進、滞在時間の延長につなげるべく取り組んでまいります。
○議長(浅井修一郎君) 片桐章浩君。
  〔片桐章浩君、登壇〕
○片桐章浩君 部長から答弁をいただきましたが、来年に向けてこういった郷土の偉人をつなぐ、こういった観光の企画が明治維新や大政奉還に劣らぬよう、しっかりと企画をして全国に発信する、誘客できる、こういう取り組みになることを期待していることを申し添えたいと思います。
 第3問目に入らしていただきます。防災対策についてです。
 ことし8月、改新クラブとして熊本地震で被災した熊本市と益城町を訪ね、災害発生後の対応や避難所の運営に関して現場を視察し、現地の人と意見交換を行ってきました。被災現場に立つと、一日も早く復興してほしいと願わずにいられませんでした。
 これまでも、阪神・淡路大震災、東日本大震災の現場にも行きましたが、被災地に立って思うことは、事前にできること、考えられる対策は全てやっておくべきだということです。軽易なことに思えても、二重三重に対策を講じることこそ、全ての県民の方々の命を守ることにつながることになります。
 わかっているけれども理由をつけて実施していないという姿勢が見られるようでは、到底県民の命を守ることはできません。事前にわかっていることは事前に実施すべきですから、もしも南海トラフの巨大地震や津波に襲われたとき、わかっていたのになぜ事前に対策を実行しなかったのだろうと後悔しないようにしたいと思います。
 平成28年6月県議会で一般質問した感震ブレーカーについて、質問後、思っていた以上に反響が大きかったので驚いております。
 幾つかの意見をいただきました。「以前から市に対して──この市というのは、この住民の方が住んでいる市なんですが──申し出ていたけど対応してくれなかった」、「不安に思っていたけれど、届かなかった声を県に届けてくれた」、「自分の命は自分で守るけれど、そのためには情報が必要です。行政はこのように必要な情報を発信していただきたいと思いますし、普及するために支援制度をつくってほしいと思います」、「串本町では補助制度を創設しているのに、ほかの市町村に制度がないのはなぜなのでしょう。県からの指導はどうなっていますか」、「私の住んでいる市では感震ブレーカーも補助対象機器になっているけれど、ほかの機器と同じ扱いなので、火災報知器などほかの機器導入の補助が多ければ感震ブレーカーの予算は少なくなります。防災対策として余りにも予算が少ないのが現状です」、こういった意見が寄せられました。
 そのため、幾つかの市を訪ねて、感震ブレーカーの広報活動や補助制度の考え方について意見交換を行ってきました。その中で、「これから秋の防災訓練の中で広報活動は実施しますよ」、こういう声はいただいたんですが、補助制度に関しては、「市でも検討したいけれど、市では新規対策に回せる予算は限られている、ありません」だとか、「県が市に対して予算を配分してくれるとやれるのですが」などの意見が大半でした。市町村は県を頼りにしていますから、必要なことは県に言ってこい、こういう姿勢を持ってほしいと思います。ただ、広報活動に関して実践してくれていることはありがたいと思っています。
 9月に入って、私は2度、防災講演会、これを開催さしていただきまして、1回目は和歌山県の危機管理局、2回目は和歌山市消防局に来てもらい、それぞれ講演してもらいました。今までの講演内容に加えて、通電火災を防止することや感震ブレーカーの設置についても今回は説明してくれたということで、こういった内容を県民の方々に日ごろから説明してくれてるんだなと、こういうふうに思いましてありがたく思っておりましたが、支援制度の面ではまだまだのようです。
 また、大規模地震時の電気火災の発生抑制に関する検討会、これは内閣府、消防庁、経済産業省で構成されておりますが、地震火災による延焼危険の高い木造密集市街地に対して、これらの感震ブレーカー等の普及を重点的に進める必要があると結論づけています。
 そして、一般社団法人日本電気協会が定めた電気事業者が電気設備の設計、施工などにおいて基準とする内線規定では、地震等に著しく危険な密集市街地において、新築、改修などで新たに分電盤を設置する場合は、感震ブレーカーの設置を積極的に推進しています。
 ここで、感震ブレーカーの設置を求める推進地域に和歌山県の中では複数の市町が位置づけられています。既に全国の市町村では補助制度を創設し始めていますが、和歌山県では串本町が補助制度を創設している程度かと思います。
 最重要課題である防災対策ですから、県に必要な施策の要望をしてきた場合は、現場の意見として聞いてほしいと思います。このような身近な課題は市町村が窓口になることが好ましく、大切な県民の声を聞き取っている市町村が必要とする施策に関しては、予算面でも県が市町村を支援すればいいと思います。
 特に、今回声の大きかった高齢者、障害者などの要配慮者の命を守るために、感震ブレーカーの支援制度を創設してほしいと思います。市町村が感震ブレーカー普及のための支援制度をつくることを県として支援してほしいと思いますが、知事の見解をお聞かせいただきたいと思います。
○議長(浅井修一郎君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 6月議会に議員から御質問のあった感震ブレーカーの普及拡大については、私も行政報告会などで地震による電気火災やガス漏れを防ぐためのパンフレット等を用いて県民の皆さんに呼びかけを行っているところであります。
 感震ブレーカーの設置補助についてのお話でありますが、わかやま防災力パワーアップ補助金の交付対象にしてほしいとの要望を県市長会とか町村会からいただいているんですけれども、ライフジャケットのときもそうだったんですけど、基本的に感震ブレーカーの設置は個々の家庭ですることであって、みずからの命はみずからで守るという自助の問題であると基本的には考えています。
 しかし、わかやま防災力パワーアップ補助金において、現に従前から個々の家庭における家具の転倒防止について、高齢者等災害時の避難に特に配慮を要する者に対して市町村が補助をする場合、交付対象にしております。そういうこともございますので、これもいい話でございますから、感震ブレーカーの設置についても前向きに検討してまいりたいと思っております。
○議長(浅井修一郎君) 片桐章浩君。
  〔片桐章浩君、登壇〕
○片桐章浩君 知事から答弁をいただきまして、前向きに検討ということで、ぜひ来年度から実現するようにお願いを申し上げたいと思います。
 この中で、きのう同僚議員の質問の中で、河川の整備の中で意見をここでおっしゃられた議員さんのところで感銘を受けたことがございまして、例えば、河川の管理を放置していることに関して、住民が不安に感じていることを解消し安心感を与えることが行政の役割だと、こういうことを話しておりましたが、この感震ブレーカーについてもまさにそのとおりだというふうに思います。
 不安感を感じているもの、少額だからこれはまあいいだろうというんじゃなくて、少額でも必要としてくれてるというのは、やっぱり高齢者の方や障害者の方々、あるいは病気で動けないという要援護者の方々の声だというふうに思います。そういう皆さんの声をしっかりと聞いて、少額であってもなかなか自分で、自助でできないという方もいるということを認識した上でこの制度設計をお考えいただく、このことを要望しておきたいと思います。
 それでは、最後の質問です。拳銃発砲事件への対応についてであります。
 平成28年8月29日、和歌山市塩屋1丁目の土木建設会社和大興業で4人が死傷した拳銃発砲事件が発生しました。和歌山県警は、殺人と殺人未遂容疑で全国に指名手配をしました。翌30日の午後9時過ぎごろ、市内の現場近くで自転車に乗っているところを発見されましたが、パトカーに対して後方から拳銃を発砲し、再び逃走しました。
 事件から2日後の31日午前1時ごろに再び発見されましたが、容疑者は集合住宅の外廊下や隣の工事中の建物に立てこもりました。そして、同日午後6時半ごろ、自分の腹をみずからの拳銃で撃ったところを取り押さえられ銃刀法違反容疑で現行犯逮捕されましたが、救急車で病院に搬送された後、約2時間後に死亡してしまったと、こういう事件であります。
 容疑者が拳銃を持ちながら29日から31日まで逃走を続けたこと、覚醒剤を使用していたという情報などから、この時間帯、和歌山市民は大きな不安と恐怖を感じました。結果として、約17時間アパートに立てこもり、事件発生から身柄拘束まで約58時間もかかったこと。もっと早く解決できなかったのか、こういう声が上がりました。
 ここで感じたことは、市民が自己防衛をするために必要な情報の発信ができたのか、容疑者を死亡さしてしまったことから拳銃や薬物の入手ルートの解明が難しくなり、市民の不安が今も継続していることなど、こういった問題があるということです。
 そこで、警察本部長にお尋ねいたします。
 今回の事件で、市民の安全確保のために実施したこと、小・中・高校や幼稚園、保育園などの安全確保に努めたことについても説明してください。
 また、容疑者が拳銃と薬物を所持していたことは大きな問題です。拳銃と薬物の取り締まりについてもお答えをお願いします。
○議長(浅井修一郎君) 警察本部長直江利克君。
  〔直江利克君、登壇〕
○警察本部長(直江利克君) 今回の事件は、住宅地における銃器を使用した非常に凶悪な犯罪であり、警察としましては組織を挙げて地域の安全確保を最優先に事態対処に当たりました。
 まず、市民の安全確保につきましては、8月29日の事件発生直後に和歌山市防災無線、きしゅう君の防犯メール、報道機関を通じた住民の方々への情報提供、関係機関への情報提供を実施し、安全確保に努めました。
 翌30日、通報を受け被疑者を追跡した際には、付近住民に対しパトカーのスピーカー、戸別訪問、和歌山市防災無線、きしゅう君の防犯メールによって外出の自粛、戸締りの徹底をお願いするとともに、住民を避難させる等の安全確保に努めました。
 次に、近隣の幼稚園や小学校等の安全確保につきましては、事件発生直後に県教育委員会等の関係機関に情報提供を行うとともに、発生地が校区となる小学校及び中学校には直接担当者が赴き、安全確保の検討を申し入れました。
 また、県下の全警察署に対し、登下校時の時間帯において、小学校の通学路等に重点を置いたパトカー等による警戒活動を強化させました。
 さらに、31日未明には、再度県教育委員会等の関係機関に情報提供を行い、安全確保について検討を申し入れ、近隣の幼稚園や小学校の安全確保に努めました。
 銃器犯罪は県民の生命を脅かす重大な犯罪であり、地域住民の方々を不安と恐怖に陥らせた今回の銃器を使用した事件の発生を重く受けとめております。県警察では、暴力団関係者等からの情報収集や他の事件捜査からの端緒情報入手のほか、けん銃110番報奨制度の広報を含め県民からの情報提供をお願いするなど、銃器摘発に向けた対策を積極的に推進しているところであります。
 また、薬物事犯につきましても、昨年中174人を検挙し、約1.3キログラムに上る大量の覚醒剤を押収するなど、密売人や末端乱用者に至るまで徹底して検挙しているところであります。
 今回の事件に使用された拳銃及び薬物の入手ルートについては鋭意捜査中でありますが、県民の皆様の安全と安心を確保するため、今後も強力な取り締まりに加え、薬物事犯の根絶に向けて、学生を対象とした薬物乱用防止教室の開催や県薬務課等の関係機関と連携した広報啓発活動を一層推進し、薬物乱用の危険性を広く浸透させてまいります。
○議長(浅井修一郎君) 片桐章浩君。
  〔片桐章浩君、登壇〕
○片桐章浩君 警察本部長から答弁をいただきまして、この事件、終わったかのように見えますが、依然として捜査が継続中ということで、まだ終わっていないということもありまして、まだ捜査上の秘匿事項というんですか、そういうこともあろうかというふうに思います。
 ただ、拳銃発砲、麻薬、こういったことが我々市民生活、県民生活に与える影響は非常に大きいと思いますし、特に市街地でこういうことがあってはならないというふうに思います。しっかりと解明、そして再発防止に努めていただくことをお願い申し上げまして、私の一般質問とさせていただきます。どうも御清聴、ありがとうございました。(拍手)
○議長(浅井修一郎君) 以上で、片桐章浩君の質問が終了いたしました。

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