平成28年9月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(藤本眞利子議員の質疑及び一般質問)


平成28年9月 和歌山県議会定例会会議録

第5号(藤本眞利子議員の質疑及び一般質問)


汎用性を考慮してJIS第1・2水準文字の範囲で表示しているため、会議録正本とは一部表記の異なるものがあります。

正しい表記は「人名等の正しい表記」をご覧ください。

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 32番藤本眞利子君。
  〔藤本眞利子君、登壇〕(拍手)
○藤本眞利子君 皆さん、おはようございます。質問も最終日になってまいりまして、お疲れのことかと思いますけれども、しばらくの間、御清聴よろしくお願いいたします。
 議長のお許しをいただきましたので、3点にわたって質問をしたいというふうに思います。
 まず、科学技術の拠点づくりという点からお伺いをしたいと思います。
 先日の9月12日、政府は、成長戦略の具体策を立案する未来投資会議の初会合を開催しました。新聞発表によると、会議の中では、人工知能(AI)を活用した第4次産業革命を推進するための戦略に関する議論を本格化させるとのことであります。
 今回は、和歌山県における科学技術革新の芽をどのように発展させていくかといった論点で質問をさせていただきます。
 近年の技術革新により無人航空機(UAV)、俗称「ドローン」──この語源は、英語の「雄蜂」に由来するとのことですが──このドローンを活用した取り組みがさまざまな場面で行われています。小型化、低価格化が進み、和歌山県においても1機、購入したと聞いています。
 国土交通省においてもドローンの活用に期待をしており、ネットで検索しても事例が幾つかヒットしてきます。
 岐阜県の高山国道事務所では、雪害による倒木状況の把握、豪雨災害時の現地調査、中部縦貫自動車道の改築事業での活用事例など、図で説明しにくい部分をドローンの静止画像を説明資料として添付したところ、大変わかりやすいといった評価をいただいているとのことです。
 ほかにも、赤外線を搭載し太陽光パネルの検診を行う事例、ICタグを取りつけたドローンにより広範な範囲に置かれた資材の管理を行う事例などに加え、上空から測量した土地の形状を3次元で表示し、傾斜や必要な土砂の量まであらわすことができるとお聞きしています。
 また、ドローンは今後さまざまな場面での活用が考えられますが、その研究はこれからであります。
 国土交通省では、航空法を改正し、無人航空機の安全な飛行のためのガイドラインを定めました。運輸については、交通運輸技術開発推進制度を利用し、ドローンの目視外飛行における安全な自動離着陸が可能で安価に設置できる物流用ドローンポートシステムの研究開発を行うため、民間と東京大学が提携したドローンポート連絡会が発足しています。
 このように、ドローンの活用をめぐっては、まだまだ制度を整えていく必要があります。あわせて、国内において不足しているというドローンを操縦する人材の育成を急がなければなりません。
 ドローンの活用はこれからますます広がると予想され、産業界にとっても大きな市場となってくると思われます。全国的にもドローンを活用したプロジェクトが始められています。ドローンにどのようなものを乗せ、どのように組み合わせていくか、どのようなソフトウエアと結びつけていくかがこれからの課題であります。
 さきの6月議会でも山下直也議員からドローンの活用について要望が出されておりますが、これからの産業であるドローンの可能性を考えると、研究、開発、実験、実証、技術者の養成のために産学官の取り組みが何よりも重要です。始まったばかりの分野でありますが、その未来は大きく開かれていると考えます。
 また、同じ科学分野として宇宙航空研究の取り組みも興味深いものがあります。ことしも缶サット甲子園近畿予選大会が、コスモパーク加太で行われました。大会は2008年開始以来9年目を迎え、近畿大会で代表になると秋田で行われる全国大会に出場できます。ことしは県立桐蔭高校が代表に選ばれ、全国大会で準優勝となり、特別賞のベストマネジメント賞に輝きました。
 この缶サット甲子園は、理数が楽しくなる教育実行委員会がプロジェクト遂行型実践教育を提唱し、そのための科学教育プログラムとして開催しています。
 缶サット甲子園、これ、どんな大会、どんなことを競うか、ちょっと簡単に御説明しますと、2メーターぐらいの高さで直径が80センチぐらいの筒状になったロケット、ここに缶を搭載して高度400メートルまで飛翔させた後、上空でそれを放出させて、中に入っている缶をパラシュートとともに落下させるわけです。缶の中にはセンサーとマイコンが組み込まれており、上空でデータを取得し、無事に回収するという一連のプロセスを参加者全員の前で報告すると。一番、宇宙開発の中では最も基本的な技術を競う大会なんです。すごい勢いで上空に飛んでいくという、すごい楽しい大会です。
 この大会は、年々参加校もふえて、熱心に取り組む高校生の姿は頼もしくもあります。私も桐蔭高校を訪問させていただき、科学部の取り組みの様子を拝見しましたが、プログラミングまで自分たちでやってしまう彼ら彼女らに感心してしまいました。このように、科学に興味関心を持つ高校生が科学技術創造立国の担い手になることに大きな期待が寄せられます。
 中でも、この大会の推進役でもある高校生たちに直接指導されている和歌山大学の秋山教授の存在は、大変大きいものがあります。
 秋山氏は、小惑星探査機「はやぶさ」の理学メンバーでもあり、JAXA研究員を経て秋田大学で能代宇宙イベントを企画、2008年に和歌山大学に着任し、2010年4月から大学宇宙研究所の初代所長に就任するといった経歴をお持ちです。今後の宇宙政策の在り方に関する有識者会議委員や宇宙政策委員会調査分析部会委員なども務められております。
 秋山氏は、この缶サットの仕掛け人でもあり、さまざまなイベントを企画されています。宇宙カフェの開催、ロケットガール・ロケットボーイ養成講座の開催、加太宇宙イベントの開催等々、精力的な活動を進められております。彼の周りにはやる気のある若者が集い、地元加太の皆さんとも大変協力的な関係を築いておられます。
 秋山氏は、これからの宇宙戦略についても提言をされ、これからの宇宙開発は大型衛星を打ち上げるというのではなく、超小型衛星産業を実用化していくことが必要であるというふうに言われています。また、放送通信衛星や衛星サービスの拡大、インフラ衛星の整備、センサー等の部品研究、観測データ市場に参入することなどを念頭に、高付加価値で低価格の衛星を生産していくことが重要であると言われています。高い技術力で国際競争にも十分勝てる、そして衛星全体を国内生産にシフトしていく方向を示していただいています。そのためにも、実験や実証を積み重ねる実験地としてコスモパーク加太が貴重な場所であるということも話されています。
 ドローンも宇宙航空分野も共通する部分が多い分野であり、どちらの分野も第4次産業革命とイノベーションを目指すものであり、これからの産業が担う未来ある分野であります。和歌山はその分野への大きな可能性を持っており、和歌山大学の取り組みも大きな力になることは間違いありません。
 私は、ドローンや航空宇宙の研究には開発や技術者の養成に必要な安全に飛行させる場所の選定も重要な要素であり、コスモパーク加太周辺は、秋山教授が話されているように最適な場所であると思います。また、この広大な土地を企業に細切れに切り売りするのではなく、周りに人家もなく電線もない特徴を生かし、ドローンや宇宙航空分野への研究開発のための場所として生かすべきだと考えます。
 さらに、実用的なドローンや衛星の開発がこれからの課題であり、そのための企業とのマッチングや、どんな組み合わせが必要かといったことも求められています。
 そこで、知事にお伺いします。
 今年度、県においては宇宙航空分野の産業化を進めるとしていますが、どのような構想を持たれ、どのように進めようとしているのか。また、今後、宇宙航空分野やドローン等を和歌山県の産業に生かすため、産官学が協力しながら取り組みを進めてはどうでしょうか。所見をお伺いいたします。
○議長(浅井修一郎君) ただいまの藤本眞利子君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 航空宇宙産業については、世界の旅客需要増加等を背景に今後大きな成長が見込まれておりまして、県内企業の中でも高い技術を有する企業がエンジン部品などの部素材産業へのさらなる参入を期待しているところでございます。幾つかの有望な事例が既にできつつあるというふうに理解しております。そのため、昨年10月に策定した第2次和歌山県産業技術基本計画において、重点的に推進すべき8つの戦略分野の1つとして、航空宇宙分野を新しく位置づけた次第でございます。
 今年度、県内企業が航空産業に参入するために必要な品質管理等に関する認証の取得を支援する制度を創設いたしました。これは、こういう分野では認証、資格を取っとかないと何か商売にならないというようなことなんで、それがかなりお金がかかるもんですから、それをお助けするという施策を準備しているところでございます。
 一方、航空宇宙産業においては、議員御指摘のとおり、和歌山大学にその分野の第一人者である秋山教授がいらっしゃいます。県の発案のもと、秋山教授の協力を得て、産官学による勉強会を本年より立ち上げ、現時点で航空宇宙産業に関心を持つ県内企業9社の参加を得ているところでございます。9月初旬に開催した直近の勉強会では、衛星やドローンを活用した農業や防災システムの構築などに、県内の電気・電子企業やソフトウエア企業が技術を提供できるのではないかというようなことを検討していくことになりました。
 県内企業の航空宇宙分野参入などが進めば本県の産業構造の高度化にもつながるものと思われますので、今後も産官学が一緒になって取り組んでまいりたいと思っております。
○議長(浅井修一郎君) 藤本眞利子君。
  〔藤本眞利子君、登壇〕
○藤本眞利子君 科学技術の拠点づくりについて知事に御答弁いただきました。県としても産学官による勉強会を立ち上げて未来の産業としての可能性を探っておられるということですので、ここはしっかり取り組みを進めていただきたいと強く要望いたします。
 また、これからは宇宙航空分野やドローン等の産業界に適応する人材の育成も大きな課題の1つであります。高校生による缶サット甲子園、大学生のロケットガール、ロケットボーイなどの取り組みは人材育成につながるものであり、また、使いこなす人材の育成も急がれています。産学官の取り組みと並行して人材の育成も視野に入れ進めていただきたいと要望して、この質問を終わります。
 次の質問に移ります。教職員の多忙化解消についてであります。
 OECD(経済協力開発機構)が2013年に実施した国際教員指導環境調査によると、日本の中学校教員の1週当たりの労働時間は53.9時間。これは、調査に参加した38の国・地域の平均38.3時間を大きく上回っており、参加国中、最も長くなっています。
 少し古いデータですが、2006年に行われた教員勤務実態調査では、勤務日1日当たりの平均残業時間数では、2時間以上残業する教員が中学校では50.5%、小学校でも32.9%となっており、休日に出勤して何らかの仕事を行う教員は、中学校では59.3%、小学校では33.2%となっています。約半分、また小学校では3分の1というふうな数字だと思います。特に中学校では、教員の半数以上が日常的に超過勤務や休日出勤が常態化していると言えます。
 日本標準教育研究所の小学校教員意識アンケートによると、自宅でどのくらい仕事をしますかという問いに、1時間から1時間半と答えた方が30.8%、2時間から2時間半と答えた方が17.4%と、約半数の方が自宅で仕事をしているといった報告もされています。
 こうした厳しい環境で、退職や休職に追い込まれる教員も少なくありません。文部科学省の2013年度公立学校教職員の人事行政の状況調査、また学校基本調査によると、精神疾患による休職者数が10年前の1.4倍、20年前の4.3倍までに達しています。ここ近年では退職者が多く、学校現場では少数の50代と若手教員の二極化が進んでおりまして、そのため、進路主任とか学年主任というふうな責任の重たい仕事が少数の方に集中してしまうといった傾向も見られておりまして、私の知り合いの教員の方も、本当に教育には意欲があっても、体がもたないというような理由で、もう早期退職をされてしまいました。優秀な教員だっただけに本当に残念なことでありました。
 また、何が先生方の負担になっているのかとお聞きしたところ、教科指導以外の雑務の多さであるとのことでした。例えば、就学援助事務や給食事務などが現金を扱うだけに神経を使う仕事になっているとのことでした。
 日本の先生方の特徴としては、働きがいといった点で、採用当初は一般の職種と比較しても非常に高い傾向にあります。一般職種は年齢が上がるにつれて意欲が増していくんですが、先生方は反対に低下していくというふうな傾向があるようであります。休みのとりにくさや勤務時間の長さ、雑務の多さや教員1人当たりの負担の大きさなどが要因と考えられています。
 私が危倶しているのは、教員の勤務の特殊性が児童生徒に大きな影響を与えるという点であります。教員がゆとりなく多忙をきわめる中では、児童生徒に対して本当に行き届いたきめ細かな教育が行われるでしょうか。教員が元気で意欲を持って仕事に打ち込める環境づくりを進めていただきたいと思います。
 多忙化の大きな要因の1つとなっている中学校の部活動に、特に運動部についてちょっと視点を変えてお聞きします。
 私の事務所、よく子供たちが立ち寄ってくれるんですが、たまに顔を見せてくれたりしてるんですが、この間も仕事をしておりますと、夕方、地元の中学生が顔を出してくれまして、土曜日だったのですが、クラブだったということで、彼らが言うにはきょうは朝の6時半に集合したというふうなことでした。
 「ええっ、朝から今まで」と、もうそのときは夕方5時ごろでしたので聞きますと、大会だったので紀三井寺にいたというふうなことでした。「先生も一緒?」と聞くと、「先生はずうっと一緒でいろいろ教えてくれる。先生も忙しくて大変や」と、こんなふうに子供たちが言います。そういうことを聞きながら、生徒たちも先生の大変さはわかってるんだなあ、そんな生徒を相手に先生方もやりがいを感じながら仕事をされているんだなあというふうに思いました。
 これまでの部活は、このような教員に支えられ、続けられてきた感があります。さらに、運動部は強くなったはなったで、保護者の期待や生徒の勝ちたいという意欲に応えるよう、さらに練習を重ねるといったことも往々にしてあるように思います。
 私は、超過勤務を強いる部活の全てを否定するつもりはありません。先生方もそれをわかった上で、意欲を持って指導されてきたことも理解しております。しかし、改善すべき点は多々あると感じております。
 そもそも、部活というのは生徒の自主的な活動とされておりまして、教育課程の中には位置づけられていません。教師本来の職務ではないにもかかわらず、強制的に顧問を割り振られるといった実態もあるわけです。
 これまで教育行政は、部活動について教員の自主的な活動に甘え、その勤務についてまともな対応をしてきませんでした。放課後や朝の練習に対する残業代はおろか、土曜、日曜に出勤しても1日3000円余りの手当しかつけず、移動交通費はほとんど自腹といった状況です。教員のボランティアと持ち出しに依存して活動を続けてこられたと言っても過言ではありません。
 このような実態に鑑み、文科省からは、この6月に学校現場における業務の適正化に向けての通知が出されています。この通知は、ちょっと初めて私は見ましたが、かなり詳しく書かれておりますが、この中で特に部活動について、休養日の設定の徹底を初めとした運営の適正化や勤務時間管理の適正化の必要性等が示されていました。また、「制度の整備や必要な予算措置も含めた業務改善のための方策を実施し、学校現場の業務の適正化に向けた支援に取り組みます」とも明示しています。
 今回、緊急性の高い特定の課題に取り組むために設置される特別チーム、こういう意味のタスクフォース、こんなふうに名づけられているわけです。この業務改善の通知は、文科省の本気度が出ていると言えます。
 そこで、文科省が本気度を出しているわけですから、県教育委員会の本気度をお聞きしたいと思います。
 教育長にお伺いします。
 教員の多忙化が大きな社会問題となっていますが、県教育委員会はどのように認識しているのか、見解をお聞きします。また、県の教育委員会は多忙化解消に向けどのように取り組んでいるのか、お聞きします。さらに、部活動が教員の多忙化の大きな要因となっていると考えますが、県教育委員会はどのように捉えているのか、タスクフォースでも指摘されている部活動のあり方についてどのように取り組んでおられるのか、お聞きします。
○議長(浅井修一郎君) 教育長宮下和己君。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 教員の多忙化について3点お答えいたします。
 教員の多忙化の認識についてですが、近年、急激な社会の変化に伴い、いじめ、不登校や暴力行為、特別な支援を必要とする児童生徒への対応など、学校現場を取り巻く環境が複雑かつ多様化し、教員に求められる役割は拡大しております。教員には、このように多様な教育課題に対応しなければならない状況に加え、事務量の増加や保護者への対応、運動部活動の指導等により担うべき業務もふえています。
 こうした教員の多忙化を解消することは、子供と向き合う時間を確保するとともに、教員の心身の健康を保持するためにも極めて大切であると考えております。
 次に、多忙化解消に向けての取り組みについてですが、県教育委員会では、研究指定校事業の削減や校務支援システムの導入など、多忙化の防止と解消に向けた対策を講じてまいりました。さらに、学校に対しての調査やアンケートの精選、会議や研修会等の簡素化、統合などに取り組むとともに、市町村や県立学校に対し、年度当初に校務分掌の精選や会議のスリム化など勤務負担軽減の改善ポイントを示し、指導を行ってきたところです。しかし、十分な対策となっていないことから、昨年度より庁内でプロジェクトチームを立ち上げ、より具体的な方策について検討しているところでございます。
 次に、部活動についてですが、学習指導要領の総則において、学校教育活動の一環として教育課程との関連が図れるよう留意することと明記されてございます。運動部活動は、生涯にわたってスポーツに親しむ習慣を身につけ、体力の向上や健康の増進につながる学校教育の重要な教育活動であります。
 一方で、教員の熱心な取り組みに支えられ、平日の放課後とともに練習試合や大会等で土日等も活動している状況は認識しており、県教育委員会では、一部の学校へは外部指導者の派遣や効果的、効率的な指導の手法を学ぶ研修会等を実施してまいりました。
 さらに、昨年9月に和歌山県中学校運動部活動の在り方に関する有識者会議を立ち上げ、部活動のあり方についてさまざまな観点から議論していただき、現在、取りまとめを しているところです。
 この会議の中で、教員の負担軽減や生徒の健全な成長を促す観点から、週1回は休養日を設けるとの意見が多数となってございます。また、国においても、休養日の明確な設定等を通じ、部活動の運営の適正化を推進するよう示されております。
 こうしたことからも、中学校では週1回は休養日にすることが妥当であり、県中学校体育連盟とも連携しながら取り組んでまいりたいと考えております。
○議長(浅井修一郎君) 藤本眞利子君。
  〔藤本眞利子君、登壇〕
○藤本眞利子君 教育委員会としては、プロジェクトチームを立ち上げて、組織横断的に、より具体的な方策について検討していくとしていますね。
 私は、児童生徒の教育にかかわる業務、教育本来の業務と就学援助事務とか給食事務等の雑務を明確に区分けして、行政的に処理できるような制度の改善を求めたいと思います。より具体的に取り組んでいただけるよう要望いたします。
 また、部活動については中学校を例とさせていただきましたが、中学校だけではなくて、高校においても同じようなことが起こっています。答弁として、週1回は部活動を休みにするということであります。皆、昔は運動中は水も飲むなとか肩は冷やすなといった根性論みたいな運動部でありましたが、今どきそんなことをしてるクラブはないと思いますけど、練習量を減らすということには抵抗のある方が多いのではないかというふうに思います。今後は、外部指導員の導入や部活を社会スポーツに移行するといった視点も検討していただくよう要望したいというふうに思います。
 次の質問に入ります。よろしくお願いします。
 子供の貧困問題について、3点目にお伺いしたいというふうに思います。
 2012年に厚生労働省の国民生活基礎調査を行ったところ、子供の相対的貧困率が過去最悪の16.3%となりました。このことをきっかけに、子供の貧困が社会問題として大きくクローズアップされるようになりました。この16.3%という数字は、6人に1人の325万人の子供たちが貧困状態にあるということで、先進諸国の中でも高く、OECDが公表したデータでも加盟する34カ国中9番目に悪い数字となりました。また、ひとり親世帯では、これはパーセントが54.3%と最悪の水準となっています。
 「相対的貧困」という言い方は、聞きなれない言葉であります。分かりやすく言うと、社会の標準的な所得の半分以下の所得しかない世帯ということです。2012年の社会の標準的な所得、所得中央値は244万円です。その半分が貧困であるかどうかを分ける貧困線で122万円です。貧困率は、1年間を122万円以下で生活している人の割合を示したものであります。きょう寝るところもなく困っているという絶対的貧困と比べると、理解されにくい状態であると言えます。
 このように、貧困が子供たちに与える影響は、生活、学力、健康、情緒等の発達など、多岐にわたっています。2012年の「厚生労働白書」では、小学校時点の家庭の経済力と学力、高校卒業後の予定進路、フリーター等との分析の相関関係から、家庭の経済状況の差が子供の学力や最終学歴に影響を及ぼし、ひいては就職後の雇用形態にも影響を与えていると結論づけています。生活では、朝食の摂取、個室、持ち家、家族旅行の経験、学校の成績、欠席率、塾、習い事などにも明らかに差異があるとしています。
 また、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの報告によれば、このまま放置することは社会的にも大きな損失であると指摘しています。今の時点で国が貧困対策を講じた場合、所得額や税・社会保障の純負担額が大幅に改善され、社会的損失より経済的効果が大きいとしたデータが示されています。
 国は、子供の貧困対策を総合的に推進することを目的に、平成25年6月26日に子どもの貧困対策の推進に関する法律を公布し、平成26年1月17日から施行しています。基本理念として、「子どもの将来がその生まれ育った環境によって左右されることのないよう、貧困の状況にある子どもが健やかに育成される環境を整備するとともに、教育の機会均等を図るため、子どもの貧困対策に関し、基本理念を定め、国等の責務を明らかにし、及び子どもの貧困対策の基本となる事項を定めることにより、子どもの貧困対策を総合的に推進することを目的とする。」と明記されています。
 また、第4条には「地方公共団体は、基本理念にのっとり、子どもの貧困対策に関し、国と協力しつつ、当該地域の状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。」としています。
 さらに、平成26年1月から施行されている子どもの貧困対策の推進に関する法律では「当該地域の状況に応じた施策を策定し」とあります。同法が施行され2年半余りが経過し、県として子供の貧困の実態はどうなっているのか、どのような施策を進めているのか、福祉保健部長にお聞きします。
○議長(浅井修一郎君) 福祉保健部長幸前裕之君。
  〔幸前裕之君、登壇〕
○福祉保健部長(幸前裕之君) 子供の貧困問題について、現在、県では、今年度中を目途に子供の貧困対策に関する計画の策定に取り組んでいるところです。
 計画の策定に当たっては、子供の貧困問題の中心的な部分を占め、支援の緊急度が高いと考えられる生活保護世帯の子供、ひとり親家庭の子供、社会的養護を受けている子供についての現状把握をもとに、外部有識者の意見も伺いながら、必要となる対策を盛り込んだものとする予定です。
 県内の現況として、中学から高校への進学率に大きな差は見られないものの、高校での中退者が多く、卒業後の進路にも大きな違いが出ている実態があります。
 子供の貧困を解消していくためには、教育支援、生活支援、保護者の就労支援など多岐にわたっての施策を総合的に実施し、貧困の連鎖を断ち切ることが必要です。
 本県では、計画の策定途中ではありますが、既存施策に加え、和歌山県大学生等進学給付金、子供の居場所づくり、和歌山こども食堂支援の3事業を新たに創設し、今年度から実施しているところです。
 子供の貧困は、幅が広く根深い問題です。経済的な問題だけでなく、いわゆる育児放棄により貧困と同じような状態に陥った子供については顕在化しにくいという問題はありますが、市町村と協力し、地域における子供の見守り制度を構築することにより、その対応に取り組んでまいります。
 また、子供の生活習慣や内面的なものも含めた詳しい実態の把握については、国の動向や先進事例等を十分踏まえた上で、引き続き検討していきたいと考えています。
 さらに、計画策定後においても、教育委員会を初め関係各課で構成する庁内会議を引き続き開催し、課題の見きわめ、施策の効果検証を行い、課題解消のためさらに必要となる施策等について十分検討し、貧困の連鎖を断ち切るため一丸となって取り組んでまいります。
○議長(浅井修一郎君) 藤本眞利子君。
  〔藤本眞利子君、登壇〕
○藤本眞利子君 県では貧困の連鎖を断ち切ることが必要だと認識を示されまして、でもその解決は、ほんま大変難しい問題だなあというふうに私も思っております。給付型の奨学金、これ、ことしから。ほとんどことしの事業ですが、子供の居場所づくり、こども食堂支援。でも、どれをとっても絶対量が足りないんですよね。奨学金も限られておりますし、居場所づくりもそんなにたくさんの場所があるわけでもありません。こども食堂に至っては、まだまだ本当に数の少ない事業であります。
 また、答弁の中では実態について、現状において子供の生活習慣や内面的なものも含めたさらに詳しい実態をつかむための手法が確立されていないというようなことで、引き続き検討していきたいとのことであります。貧困が子供たちにどのような影響を及ぼしているのかというのがわからないのでは、ちょっと対策の打ちようがないんじゃないかというふうに思うわけです。
 沖縄県での事例を申し上げますと、詳細な実態調査をされておりまして、8月19日付で沖縄県子どもの貧困対策計画等についてという、もうそういうのが出されております。その中では、実態調査に基づいた対策が示されております。沖縄は貧困率が一番高いというふうに言われておりましたので、かなり早く対策を出されたんだというふうに思いますけれども、それでもやはり和歌山県においても必要な取り組みだというふうに思うわけです。
 6月には、沖縄で経済団体、それから労働団体、教育団体、福祉医療、保健分野、それからNPOなどその他の支援団体とか報道機関、それに国と県、市町村が構成メンバーになりまして、沖縄子どもの未来県民会議というのが設立されました。県民の総力を挙げて未来を創造する子供たちが安心して暮らし、希望を持って成長していける社会の実現を目指すというふうにして、子供の貧困対策に、それこそ先ほども本気、本気と言ってるんですけど、本気で取り組む姿勢が感じられたわけです。
 先ほど言わしていただいたように、沖縄だけではなく日本全国どの地方でもやっぱり本気で取り組まなければならない課題だと思いますので、この課題を見きわめるためには実態調査がやっぱり必要じゃないかというふうに私は思っております。そのことも十分検討していただくとともに、具体的な取り組みを強く要望したいというふうに思います。
 以上で、質問を終わります。御清聴、ありがとうございました。(拍手)
○議長(浅井修一郎君) 以上で、藤本眞利子君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前11時20分休憩
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