平成28年9月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(多田純一議員の質疑及び一般質問)


平成28年9月 和歌山県議会定例会会議録

第3号(多田純一議員の質疑及び一般質問)


汎用性を考慮してJIS第1・2水準文字の範囲で表示しているため、会議録正本とは一部表記の異なるものがあります。

正しい表記は「人名等の正しい表記」をご覧ください。

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 30番多田純一君。
  〔多田純一君、登壇〕(拍手)
○多田純一君 おはようございます。議長のお許しをいただきましたので、早速、4点にわたりまして一般質問させていただきたいと思います。
 まず最初に、特別史跡岩橋千塚古墳群についてお聞きをしたいと思います。
 「古墳女子」という存在を御存じでしょうか。ここ数年前から若い女性の間で古墳が静かなブームになり、古墳めぐりを楽しむだけではなく、前方後円墳や埴輪などを形どったかわいらしいアクセサリーや雑貨などを愛好する考古ファンが多くなっているようです。古墳のシンプルなデザインがいいのかもしれません。
 先月の8月17日に、大日山35号墳の出土品がこのたび国の重要文化財として指定されました。写真を資料として用意をいたしました。全体の一部しか写っていませんけども、この中には動物、ハトや鳥、そして家、また力士などが確認できると思います。本当に何となくかわいらしくて、癒やしを感じるのは私1人ではないと思います。
 手前に写っている頭部の表裏に顔面がある人物埴輪、両面人物埴輪でございます。奥の翼を広げた鳥の動物埴輪は、全国でもこの大日山35号墳からしか発見されていない大変貴重な出土品として評価されてきましたが、それ以外の出土品も合わせて全部で43点が重要文化財として指定されました。岩橋千塚古墳群出土品では初めての重要文化財となります。
 今回の国の重要文化財の指定により、県内の重要文化財の数は388件で全国第7位、そして考古資料としての重要文化財はこれで7点目となりました。古墳の規模が当時の権力者の力を誇示していると言われ、埋葬品の埴輪はその証明にもなっています。
 出土品の中で写真の左側の3つの部材を重ね合わせた家形埴輪は、継体天皇陵墓と有力視される大阪府高槻市の今城塚古墳から出土した家形埴輪に類似していると言われております。大きさは約130センチあります。重要文化財に指定した文化庁の説明では、「家形埴輪など一部の形象埴輪やその配置状況に大阪府今城塚古墳に類似した要素がうかがえる一方、本墳にのみ存在する独特な埴輪を含むなど、古墳時代における畿内隣接地域との関係を考える上でも価値が高い」としております。時の権力者との関係を物語る資料として評価していただいております。
 和歌山県文化財保護条例には、「文化財のうち重要なものについて、その保存及び活用のため必要な措置を講じ、もって県民の文化的向上に資すること」となっております。大日山35号墳出土品が重要文化財の指定を受け、今後の保存及び活用をどのようにしていかれるのか、教育長にお尋ねをします。
○議長(浅井修一郎君) ただいまの多田純一君の質問に対する答弁を求めます。
 教育長宮下和己君。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 大日山35号墳出土品の保存につきましては、重要文化財の指定によって修復のために国の補助が適用されるなど、より質の高い保存を図ることができます。
 活用につきましては、紀伊風土記の丘資料館において、この指定と特別史跡の追加指定を記念した特別展「岩橋千塚とその時代─紀ノ川流域の古墳文化─」を10月1日から開催し、あわせて記念講演会やセミナーを開催することとしてございます。
 また、指定された埴輪類につきましては、常設展においても展示するとともに、埴輪の解説リーフレットの配布やテレビなどメディアを使った広報など、さまざまな方法で、より多くの県民の皆様にその価値を知っていただけるよう取り組んでまいります。
○議長(浅井修一郎君) 多田純一君。
  〔多田純一君、登壇〕
○多田純一君 それでは、2点目の資料館等の課題についてお聞きをしたいと思います。
 重要文化財指定ということで改めて文化財としての価値が認められ、今まで以上に注目されるはずです。資料館は、昭和46年開園と同時に開設された施設です。建物だけでなく、設備全体が老朽化も激しく、陳列ケースもすき間ができ、傷んできております。全体の延べ床面積は1687.3平米、そのうち常設展示室385.2平米、企画展示室132.4平米、それに事務室となっております。ちょっと狭過ぎると言わざるを得ません。
 また、文化財保護法に基づく「重要文化財の所有者及び管理団体以外の者による公開に係る博物館その他の施設の承認に関する規程」によると、建物及び設備の要件を満たしておらず、重要文化財の公開承認施設として認められていないことになっています。自前の文化財は展示できても他の施設から文化財は借りられない、そういう資料館ということでございます。また、現在の駐車場においても今のままでは狭いし、今後検討も必要だと思います。
 今回重要文化財に指定されたことにより、展示品を楽しく、わかりやすく説明する音声ガイドや、和歌山県の考古・歴史を学ぶ映像コーナーや、出土品を再生するバックヤードなども兼ね備えた考古博物館として検討していく機会ではないでしょうか。
 平成25年6月定例議会での私の質問に対し、当時の教育長は「資料館建てかえについては総合的に検討していく」と答弁がございました。考古資料重文指定に伴い、昭和46年以来45年がたち、建てかえを視野に入れて検討すべき時期に来ているのではないかと考えますが、教育長のお考えをお示しください。
○議長(浅井修一郎君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 資料館では、課題でありましたエントランス部の床面や照明施設の改修を行い、体験学習や展示などに使いやすい空間といたしました。また、展示室では、今年度、新たに免震台を備えた気密性の高い展示ケースを設置するなど、重要文化財に指定された古墳出土品の適切な保存管理に努めてまいります。
 駐車場につきましては、普通車80台が駐車可能ですが、大型バスが来園する場合は、事前に連絡を受けて駐車スペースを確保してございます。さらに、イベント開催等により駐車場が満車になると予想される場合は、必要に応じて近隣の公共施設等をお借りし、適切に対応してまいります。
 県教育委員会といたしましては、こうしたさまざまな措置を講じながら、資料館の整備も含めた紀伊風土記の丘全体のあり方について検討を進めてまいります。
○議長(浅井修一郎君) 多田純一君。
  〔多田純一君、登壇〕
○多田純一君 御答弁をいただきました。「資料館の整備も含めた紀伊風土記の丘全体のあり方について検討を進めてまいります」との答弁でございました。前向きな取り組みを期待しておりますので、どうかよろしくお願い申し上げたいと思います。
 3点目に移ります。
 特別史跡の追加指定の答申を受けて、大谷山22号墳と天王塚古墳の調査、発掘、今後の取り組みについてお尋ねをいたします。
 ことし6月17日に国の文化審議会は、特別史跡岩橋千塚古墳群に新たに2カ所の前方後円墳を追加指定するよう文部科学大臣に答申されました。今回追加指定されるのは、市内鳴神に位置する大谷山22号墳と下和佐と西にまたがる天王塚古墳で、いずれも古墳時代後期、今から1500年近く前につくられた前方後円墳です。
 大谷山22号墳は、標高132メートルの大谷山山頂に位置し、おととし行われた発掘調査で人や動物、家などの埴輪や須恵器などの土器が出土したほか、後円部には全長7.8メートル、高さ3.15メートルの横穴式石室があります。
 天王塚古墳は、標高155メートルの岩橋丘陵の最も高い地点につくられ、長さ88メートルで2段式のつくりは和歌山県内最大の前方後円墳です。後円部には全長10.95メートル、高さ5.9メートルの横穴式石室が設けられ、中から金や銅で飾られた金具片や土師器、漆製品などが出土しているほか、ガラス玉やこはくの玉など、装飾品も出土しております。
 大谷山22号墳と天王塚古墳は東西に分かれていて、いずれの古墳も、今から1500年ほど前の古墳時代後期の歴史を知る上で貴重なものとして高く評価されております。特別史跡への追加が答申されることになりました。日本でおよそ60ある特別史跡のうち古墳群は、宮崎県の西都原古墳群と岩橋千塚古墳群の2つです。
 8月28日、岩橋千塚を守る会主催で天王塚の発掘状況及び和歌山県の古墳文化についての学習会が開催されました。44人が参加され、会場がいっぱいになりました。改めて市民、県民の方々の関心の高さに驚かされました。
 答申を受け、来月にも官報告示と期待するところでございますけども、これで平成25年9月定例県議会に岩橋千塚を守る会から提出された請願が実現し、和歌山県の大事な特別史跡が拡充されることになります。今後の整備計画について、教育長にお尋ねをいたします。
○議長(浅井修一郎君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 今回の特別史跡の追加指定地につきましては、議員の御指摘に加え、天王塚古墳には岩橋千塚古墳群においてのみ確認されている石はりを8本持つ石室があり、山頂部の岩盤を深くくりぬいて築かれていることから、全国でも類を見ない石室としてその学術的価値が認められました。
 今後の整備計画としては、今年度に指定地の土地購入、平成29年度以降に石室と墳丘の発掘調査や連絡道路を建設するなど、本格的な整備を進める予定です。
 このような取り組みを通じて、特別史跡である岩橋千塚古墳群が和歌山が誇る貴重な遺跡として県民の皆さんに周知され、親しみを持って来ていただけるように一層努力してまいります。
○議長(浅井修一郎君) 多田純一君。
  〔多田純一君、登壇〕
○多田純一君 御答弁いただきました。
 いよいよ土地の購入を行い、その後、発掘調査や連絡道路の建設などを経て、数年かかるものと思いますけども、新しい文化財が発掘されるかもという、そういう期待がいっぱいでございます。ぜひ早急に取り組んでいただきますようにお願い申し上げたいと思います。
 大きな2番目の項目に移りたいと思います。
 相模原市の障害者施設における殺傷事件についてお伺いをいたします。
 7月26日、神奈川県相模原市障害者施設・津久井やまゆり園において、同園の元職員が施設の1階窓ガラスを割って侵入し、施設の入所者男女が刃物で刺され、男女19人が死亡、男女26人──うち2名は職員──が負傷し、戦後最大級の犠牲者を出した殺人事件となりました。犠牲になられた方や負傷された関係者の方々に心からお悔やみとお見舞いを申し上げたいと思います。
 1人の人間がここまで多くの人間を死に至らしめる事件として、戦後最悪な事件となりました。
 事件後、さまざまなことがわかってきました。容疑者がことし2月19日まで常勤職員として3年2カ月もの間、この施設に勤務していたという事実。さらに驚くべきなのは、この容疑者は障害者が大嫌いで、「障害者は社会的に不要な存在だから死ぬべきだ」と知人や近所の人に公言していたこと。また、衆議院議長宛てに事件の犯行予告ともとれる内容の手紙を届けていたこと。重度の障害者について安楽死を容認する発言をし、施設側から「ナチス・ドイツの考え方と同じだ」と批判されるも、その主張を変えなかったことから措置入院がとられ、その後、大麻の陽性反応も出て、大麻精神病、妄想性障害などと診断されていました。しかし、この大麻の陽性反応が警察当局に報告されていなかったことも報道されておりました。安倍総理や菅官房長官の談話だけでなく、海外からも反響があり、大きな社会問題となっております。
 驚くべきことは、障害者に対する偏見や容疑者の考えに同調や共感するなど、ネット上で書き込みがあることです。障害者はいなくなったほうがいいという主張は、障害者へのヘイトクライムに当たります。ヘイトクライムはメッセージ犯罪とも言われ、決して許されるものではありません。また、社会は自分がやったことに理解を示すはずだと信じていることにも驚きを隠せません。
 全国各地の障害者団体などからは、障害者の人権を否定する犯罪を非難する緊急声明や共生社会の確立を求める訴えが相次いでいます。私も、障害者団体にかかわりがあり、さまざまな声を聞かせていただいております。一生懸命生きている障害者、またその家族の方々をできる限り応援していくことは人間として当たり前だという社会を目指すべきです。
 障害者に対する偏見や差別をなくすため、県はどのような施策を講じておられるのか、お考えをお示しください。仁坂知事にお尋ねいたします。
 また、2点目として、事件を受けてどのように進めていかれるのか、お聞きしたいと思います。
 県は、「指定障害福祉サービス事業所等の安全管理対策の徹底について」の文書を7月26日に早速通知されております。素早い対応だったと思います。障害者福祉施設306事業所、障害児福祉施設148事業所、グループホーム66事業所に通知されたわけですが、安全管理対策上、今後どのように進めていかれるのか、お考えを福祉保健部長にお聞かせいただきたいと思います。
 3点目として、障害者差別解消支援地域協議会の設置についてお伺いします。
 本年4月、障害者差別解消法が施行されました。障害があっても社会の中にあるバリアがなければ、障害のない人と同じように生活し、社会で力を発揮できる。差別解消法は、バリアを取り除くため、こうした合理的配慮を求めております。
 障害者から申し出があった場合には、公的機関には、負担が重過ぎない範囲で対応する法的義務があります。地域のさまざまな関係機関など参加した障害者差別解消支援地域協議会の設置ができることとされています。設置について努力義務とされておりますけども、県の取り組み状況を福祉保健部長にお聞きします。
○議長(浅井修一郎君) 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 神奈川県相模原市の障害者施設・津久井やまゆり園において、多くの方々が命を奪われるという痛ましい事件が発生しました。お亡くなりになられた方々の御冥福を心からお祈りするとともに、御家族、関係者の方々に深く哀悼の意を表します。
 この事件の容疑者である同園の元職員は、障害者の人権を否定する発言や、差別や偏見を助長する言動を繰り返し行ってきましたが、これは決して許されることではないと思います。
 障害の有無にかかわらず、県民が互いに助け、支え合い、尊重し合いながらともに生きる社会を築き、障害のある人が障害のない人と同じように社会参加できることが重要であります。そのためには、県民の理解、共感、協力が不可欠であります。
 県では、これまでも、障害に対する県民の理解を促進するため、12月の障害者週間を中心とした街頭啓発やイベント、「県民の友」などによる広報のほか、さまざまな機会を通じて啓発に努めているところでございます。
 また、つい最近でございますが、本年8月には、県民が多様な障害の特性を理解し、障害のある人に温かく接するとともに、障害のある人が困っているときに声をかけ手助けを行う「あいサポート運動」に取り組むことにいたしました。これに加えて、もとより県では、ヘルプマークの普及や障害者等用の駐車区画の適正利用促進など、障害のある方々の支援を行ってまいりました。
 県としては、障害者差別解消法の趣旨を踏まえ、差別の解消に一層取り組むとともに、障害のある人の社会参加の促進、共生社会の実現に努めてまいりたいと思います。
○議長(浅井修一郎君) 福祉保健部長幸前裕之君。
  〔幸前裕之君、登壇〕
○福祉保健部長(幸前裕之君) 安全管理対策についてお答えいたします。
 7月26日に発生した相模原市での障害者施設における殺傷事件を受け、県が実施している障害者支援施設等の実地指導において、施設における安全管理対策を重点事項に位置づけ、その状況を確認し、安全管理対策の徹底を指導しております。
 また、障害のある人が入所している施設32カ所に対し、施設における防犯対策について調査を行い、その結果を踏まえ、8月18日に障害者支援施設等に、さすまた等の防犯用具の購入、防犯マニュアルの作成、警察と連携した防犯訓練の実施、自治会や近隣住民等との連携協力体制の構築などの安全管理対策の徹底を再度指導したところです。
 一方、国においては、第2次補正予算において、障害者支援施設等の防犯対策を強化するため、非常通報装置や防犯カメラの設置など、必要な安全対策に係る費用についての補助金が予算化されるとともに、検証チームを発足し、事件の検証が行われているところですが、9月14日に中間取りまとめが示され、昨日、国から「社会福祉施設等における防犯に係る安全の確保について」の通知があり、施設における防犯対策等の点検項目が示されました。これを受けて、直ちに国からの通知を障害者支援施設を初めとする社会福祉施設等に周知し、取り組みを図るよう指導してまいります。
 県としましては、今後も、施設の安全管理対策のさらなる強化、施設職員のメンタルヘルスケアの実施、人権擁護研修の実施などを指導し、障害のある人の安全確保に努めてまいります。
 続いて、障害者差別解消支援地域協議会の設置についてお答えします。
 本年4月から障害者差別解消法が施行され、障害を理由とする不当な差別的取り扱いが禁止されました。また、障害のある方等から社会的障壁の除去について申し出があった場合、行政機関は、必要かつ合理的な配慮の提供が義務づけられています。
 法律の目的である障害者差別の解消が推進されるためには、市町村や一般相談支援事業者など、地域におけるさまざまな相談機関等が、それぞれの役割に応じて障害者差別に関する事案の解決や発生防止のための取り組み等を行うことが必要であると考えています。
 県としましては、障害者差別解消支援地域協議会を今年度内に設置し、関係機関と相談等についての情報共有や事例を踏まえた協議等を行い、その結果を地域の相談機関へフィードバックをするなど、障害を理由とする差別の解消に向け取り組んでまいります。
○議長(浅井修一郎君) 多田純一君。
  〔多田純一君、登壇〕
○多田純一君 再質問を行いたいと思います。
 まず、この事件が特異な事件として片づけられてしまってはならないと考えております。5歳の重い障害のある息子を持つ野田聖子衆議院議員のコメントで、「私は意外性を感じなかった。いつかこんなことが起きる。本音を言えば、私も息子も、いつ襲われるかわからないジャングルの中を歩いている気分です」と答えられております。障害者を持つ家族の本音かもしれません。障害者への差別や偏見の解消に取り組むことで、二度とこういう事件を起こさないという決意が抑止力への一歩と考えます。
 今月14日、厚労省の再発防止に向けた検討チームが中間報告を発表いたしました。容疑者が大麻精神病などと診断され、措置入院の手続がとられていたが、しばらくして退院していたことから、報告書では、1つ、薬物の再使用防止を含めた継続的な医療支援が不十分だった、2つ、患者への対応で関係機関の連携の不備があった、その上で、患者が措置入院から解除後まで医療や生活面での支援を継続的に受け、地域で孤立せず安心して生活できることが事件の再発防止につながると提言をしております。
 この提言を受けて、本県での対応について、再度、福祉保健部長のお考えをお聞かせください。
○議長(浅井修一郎君) 福祉保健部長。
  〔幸前裕之君、登壇〕
○福祉保健部長(幸前裕之君) 中間取りまとめにおいて提起されておりますが、措置入院患者については、入院時から退院後まで、関係機関が緊密に連携し支援することが重要であると考えます。
 県では、従来、入院患者の居住地の精神保健福祉相談員や保健師が病院を訪問して患者の状況を把握するとともに、退院前に関係機関によるケース会議を開催し、退院後の支援体制を構築するなどの取り組みを行っており、今回の事件を受けて、今後、退院後の支援体制をより一層緊密に行ってまいります。
 あわせて、精神障害のある方に対する偏見が強まり、地域生活移行が妨げられることのないよう啓発に取り組んでまいります。
○議長(浅井修一郎君) 多田純一君。
  〔多田純一君、登壇〕
○多田純一君 御答弁、ありがとうございました。
 じゃ、3点目に移りたいと思います。
 成年後見制度について質問さしていただきます。
 成年後見制度は、医療技術の進歩などにより長寿社会になった日本において、認知症や知的障害、精神障害など、判断能力が十分でない方が利用できる制度として2000年から始まった制度です。
 最高裁判所が発表しております成年後見関係事件の概況によりますと、成年後見制度の利用者は増加傾向にあります。2015年12月末時点の利用者は19万人を超え、この5年間で36%増になっております。
 県内における裁判所への申し立て件数は、昨年は213件。成年後見人等と本人との関係を見ると、配偶者、子供、きょうだいなど、親族が選任されたものが全体の約29.9%、これは前年に比べると5%減っております。親族以外の第三者として弁護士や司法書士等を選任するケースがふえており、昨年で全体の70%を超える状況となっております。認知症や独居高齢者が増加する中、判断の能力が不十分な人を支える成年後見制度の担い手育成が喫緊の課題となっております。
 また、このたび、成年後見制度において、後見人等が高齢者の介護サービスの利用契約等を中心に後見等の業務を行うことが多く想定され、成年後見制度の諸課題に対応するためには、弁護士などの専門職後見人がその役割を担うだけでなく、専門職後見人以外の市民後見人を中心とした支援体制を構築する必要があります。
 そのような社会的背景があり、平成23年度から、市町村において市民後見人を確保できる体制を整備、強化するため、市民後見育成事業が始まっております。市民後見人の現状について、福祉保健部長にお尋ねをいたします。
○議長(浅井修一郎君) 福祉保健部長。
  〔幸前裕之君、登壇〕
○福祉保健部長(幸前裕之君) 市民後見人の現状についてですが、まず、本県の成年後見、保佐、補助等を含む成年後見関係の家庭裁判所への申し立て件数は、平成25年が243件、平成26年が214件、平成27年が213件と、最近の3カ年では毎年200件を超えています。
 県では、制度利用者の増加に伴う後見人の不足に備え、平成20年度から和歌山県社会福祉協議会に設置している和歌山県成年後見支援センターにおいて市民後見人の養成講座を開催しており、講座修了者数は現在220名となっております。
 講座を修了された形に対してはフォローアップ研修なども実施しておりますが、実際に後見業務に携わった経験のない講座修了者が家庭裁判所から後見人として選任されることは難しく、現時点で選任された実績はありません。
○議長(浅井修一郎君) 多田純一君。
  〔多田純一君、登壇〕
○多田純一君 講座修了者数は現時点で200人を超えているが、後見人として選任された方はいないというお答えでございました。今後、実務経験をいかにつけていくかということが課題だと思います。
 本年4月、成年後見制度の関係法として成年後見制度利用促進法が議員立法で成立いたしました。首相を会長とした成年後見制度利用促進会議と有識者委員会が設置され、制度の利用普及に向けた基本計画や、制限されている被後見人の権利の見直しや、後見人の不正防止策といった制度の改善、後見人を育成するための措置、市民後見人の支援体制の整備等がうたわれております。
 後見人の必要性が高まると、まことに残念なことではありますけども、高齢者などを狙った悪徳商法の横行により財産を奪われる事件や、社会的弱者を守る重要な成年後見制度であるにもかかわらず、成年後見人になった者が財産を横領する事件なども起きてきております。報告やチェック機能の強化、これは制度の問題として国が検討すべき課題です。
 一方、介護サービスの基盤強化のための介護保険法の一部を改正する法律が平成23年6月15日に可決成立し、平成24年4月1日に施行されました。
 今回の改正により、老人福祉法第32条の2、後見等に係る体制の整備等が新設され、第1項では、市町村は、後見、保佐及び補助の業務を適正に行うことができる人材の育成及び活用を図るために必要な措置を講ずるよう努めることとされております。
 また、第2項では、都道府県は、市町村と協力して後見等の業務を適正に行うことができる人材の育成及び活用を図るため、研修の実施、後見等の業務を適正に行うことができる者の家庭裁判所への推薦その他の必要な措置の実施に関し助言その他の援助を行うように努めなければならないと規定されました。
 今後、後見人は、認知症やひとり暮らしの高齢者の増加に伴い、高齢者の介護サービスの利用契約などを中心に業務を行うことが多くなると想定されます。弁護士など専門職や親族による後見人だけではなく、市民後見人の育成が鍵を握ると言われております。本県の責務として、市民後見人の育成と制度の普及について今後どのように進めていかれるおつもりか、福祉保健部長にお尋ねいたします。
○議長(浅井修一郎君) 福祉保健部長。
  〔幸前裕之君、登壇〕
○福祉保健部長(幸前裕之君) 市民後見人の育成と制度の普及につきましては、財産の管理や日常生活に支援が必要な認知症、知的障害、精神障害の方々が安心して住みなれた地域で生活を送れるよう、まずは成年後見制度を周知し、その利用促進を図ってまいります。
 また、後見人につきましては、かつては「家族の問題は家族が引き受ける」といった家族に対する意識が高かったことや同居世帯が多かったことなどの理由により、親族による後見人が多数を占めていましたが、現在はその割合が減少してきております。そのため、親族にかわって地域で御本人に寄り添い、介護サービスの利用契約の支援や日常的な金銭管理等を行う後見ニーズが高まっており、その役割を果たすことのできる市民後見人の育成が必要であると考えております。
 市町村社会福祉協議会は、さきに述べましたニーズを中心に法人として後見業務を行っておりますので、養成講座修了者がそのスタッフとなって業務に携わり、実務経験を積むことで市民後見人として選任されるよう、今年度から和歌山県成年後見支援センターが市町村社協に対し、養成講座修了者の受け入れについて協力依頼を行っているところです。
 今後、国において成年後見制度利用促進基本計画が策定されることとなっておりますが、選任された市民後見人が安心して後見業務を行えるよう、後見人に対する相談支援等を行う体制を整備するなど必要な施策について、和歌山県社会福祉協議会と協力し検討してまいります。
○議長(浅井修一郎君) 多田純一君。
  〔多田純一君、登壇〕
○多田純一君 最後の4項目めに移りたいと思います。
 和歌山県・和歌山市政策連携についてお尋ねしたいと思います。
 和歌山県・和歌山市政策連携会議が、平成26年10月、12月、そして平成27年3月と3回開催されております。最初は和歌山市から13項目、県が5項目、3回合計で和歌山市が21項目、県が20項目の議題項目となりました。
 万機公論の場として捉えると知事が会議の冒頭に話されたように、県市のトップが双方の課題を率直に話し合う機会として注目され、マスコミも取り上げておりました。仁坂知事、尾花市長以前にも県市連絡会議はあったようです。それは副知事、副市長といった方が中心に行っていたケースもありましたが、行政のトップ同士が課題や情報交換しながら問題解決していくというのは、課題先進県として大変意義あると考えます。
 今後の会議の方向性について、仁坂知事にお考えをお聞かせいただきたいと思います。
○議長(浅井修一郎君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 和歌山県・和歌山市政策連携会議は、県と和歌山市が連携して解決を図るべき重要な政策課題について直接意見交換を行うためのものでございます。実は背景にはいろいろ──特に何ということはないんですけども、職員同士がお互いにぼんやりとした不信感があるなあというようなことがございまして、直接会って話したほうがいいんじゃないかというようなことで考えたというところもございます。
 平成26年度には尾花市長が新たに就任されたということもございまして、いわばこれまでたまっていた案件を一遍に全部出して、つまり棚卸し的にそれぞれの課題をお互いに出して、忌憚なく意見交換を行うということをやりました。
 その結果、県市においてさまざまな課題が共通に認識され、共有されるということとともに、会議の開催後は、それぞれの事務レベルで連絡調整を行いながらともに課題解決に向けて取り組んでいて、そういう点ではかなり成果があったんじゃないかなというふうに思っております。
 こうしたことから、当会議については、定期的に開催してもちょっとマンネリ化いたしますので、必要に応じて、そろそろたまってきたなというときには今後も開催を検討してまいりたいと、そんなふうに思っております。
○議長(浅井修一郎君) 多田純一君。
  〔多田純一君、登壇〕
○多田純一君 いろいろとお答えいただきました。
 県と市とのいろんな課題、それを棚卸しというふうなお話もございましたけども、私も民間におりましたんで、棚卸しというのは、もう必ず年に1回は行わなきゃいけないんですね。本決算と仮決算と年に2回やるときもありますけども、そういう意味ではもう定期的、それぞれの発案の中で課題を感じてお話し合いされるんでしょうけども、双方が見える形でやっていただければと心からお願いする次第でございます。
 2点目に、尾花和歌山市長は、中央卸売市場建てかえ計画と、この中央卸売市場の観光市場化を図り、道の駅の併設構想を発表しております。実現すると、和歌山市では初の道の駅となってまいります。平成26年10月に行われました県市政策連携会議の中で最初にこの計画を提案し、県との連携協力を求めています。
 国土交通省によると、道の駅とは、市町村等と道路管理者が連携して設置し、国土交通省に登録された、駐車場、休憩施設、地域振興施設が一体となった道路施設となっております。ことし5月現在で全国に1093カ所、そのうち和歌山県内には、ことしできた紀の川市・青洲の里と現在建設中の太地町・たいじを入れて32カ所にあります。
 道の駅は、1つ、安全で快適に道路を利用するための道路交通環境の提供、2つ、地域のにぎわい創出を目的とした施設などが基本となっておりますけども、道路や観光情報など、地域の文化や名所、特産物などを活用した農産物直売所、売店、レストランなど、特色や個性を生かし、また、さまざまなイベントを開催することで利用者が楽しめるサービスも提供しております。
 平成27年3月の政策連携会議後、道の駅設置に係る基本計画に関する懇談会ができ、県も参加しておられると伺っております。しかし、今計画中の道路は港湾道路で、港湾道路には道の駅はできません。道の駅設置に向けた現在の進捗状況と県のかかわりについてどのようにお考えか。
 また、道の駅を実現しただけではにぎわい創出にはなりません。周辺は西浜工業団地となっております。例えば南インター供用開始と同時に、そのアクセス道路の県道と南港山東線西浜から水軒口までの拡幅工事や、港湾道路をサイクリング道路として活用する計画などの見通し。今議会に提案されておりますが、今までも大型クルーズ船が下津港に寄港しております。これまで以上の大型クルーズ船が寄港できることを目的とした計画など、道の駅、そして周辺整備にかかわる県の連携協力について、そのお考えを県土整備部長にお聞きしたいと思います。
○議長(浅井修一郎君) 県土整備部長森戸義貴君。
  〔森戸義貴君、登壇〕
○県土整備部長(森戸義貴君) 中央卸売市場に併設して計画されております道の駅とその周辺整備に関する進捗状況と、県のかかわりなどについて御質問を頂戴いたしました。
 まず、道の駅の設置についてですが、平成26年10月に開催された和歌山県・和歌山市政策連携会議におきまして、和歌山市中央卸売市場の観光市場としての整備の中で、道の駅を設置したいという御提案を受けたところでございます。
 現在、和歌山市が、国、県、関係団体、事業者及び地元関係者によります道の駅の地域振興施設整備に向けた懇談会を設置され、既に2回の会議が開催されておりまして、今年度中に事業内容をまとめる予定と聞いてございます。
 和歌山県としては、臨港道路を道路法上の道路に位置づける手続や駐車場及びトイレ等の整備について、和歌山市が実施する中央卸売市場としての整備と道の駅の地域振興施設の整備にあわせて実施するよう取り組んでまいります。
 続きまして、道の駅周辺のインフラ整備についてですが、まず、和歌山下津港と阪和自動車道(仮称)和歌山南スマートインターチェンジを結ぶ都市計画道路南港山東線につきましては、県と市で役割分担し、整備を進めております。このうち西浜交差点から水軒口交差点までの区間につきましては、県において平成27年度に事業化し、現在、測量設計や地元調整を進めており、早期に用地取得や工事に着手できるよう取り組んでまいります。
 また、水軒口交差点付近から塩屋2丁目までの区間につきましては、和歌山市が平成27年8月に一部暫定供用を行っており、平成30年度の完成を目標に、引き続き事業を進めていると聞いております。
 さらに、和歌山市和田から(仮称)和歌山南スマートインターチェンジまでの区間につきましては、平成30年度にインターチェンジの同時供用ができるよう、現在、県において用地取得や工事を進めているところでございます。
 次に、川・山・海のサイクリングロードの整備の状況ですが、和歌山市内においては、加太周辺から道の駅を経由して和歌山マリーナシティに至る海岸線を通過するルートを設定しており、平成29年度の概成を目指し、ブルーライン等の路面標示の設置を進めてまいります。
 さらに、和歌山下津港においては、14万トン級のクルーズ客船が入出港時に安全に航行できることを検証するための調査に係る費用について、今議会で上程させていただいているところでございます。これは、海の玄関口である和歌山下津港には、現在7万トン級のクルーズ客船までの入港が可能でありますが、日本に寄港する外航クルーズ客船が大型化している状況を踏まえ、これに対応することを目指すものであります。
 県としましても、市と連携調整を図り、道の駅とともに周辺整備を行い、観光振興や産業振興につながるよう取り組んでまいります。
○議長(浅井修一郎君) 多田純一君。
  〔多田純一君、登壇〕
○多田純一君 いろいろお答えをいただきました。
 ぜひ、道の駅、そして周辺整備、県市で連携協力していただき、和歌山市の新しい観光地になりますよう期待をして、私の一般質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
○議長(浅井修一郎君) 以上で、多田純一君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前11時40分休憩
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