平成28年9月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(鈴木太雄議員の質疑及び一般質問)


平成28年9月 和歌山県議会定例会会議録

第2号(鈴木太雄議員の質疑及び一般質問)


汎用性を考慮してJIS第1・2水準文字の範囲で表示しているため、会議録正本とは一部表記の異なるものがあります。

正しい表記は「人名等の正しい表記」をご覧ください。

  午後1時0分再開
○議長(浅井修一郎君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 17番鈴木太雄君。
  〔鈴木太雄君、登壇〕(拍手)
○鈴木太雄君 皆さん、こんにちは。議長のお許しをいただきましたので、通告に従い一般質問を行います。
 まず、大項目の1、観光振興について。
 その小項目の1点目として、サイクリングロードを活用した観光振興の意義と推進のあり方について質問をいたします。
 現在、我が国経済は緩やかな回復基調が続いているものの、地方においてはその経済の好循環はいまだ十分に実現できていない状況にあります。特に、少子高齢化や急速な人口減少に伴う地域内消費の減少で地域経済は縮小すると予測されており、これまで以上の地域間格差の拡大が懸念されているところでもあります。
 そういった状況下において、国では2010年6月から、成長戦略の1つとして観光立国・地域活性化戦略を掲げ、観光がもたらす地域への高い経済波及効果や雇用創出効果を求めるとともに、交流人口の増大を図る取り組みを続けております。
 もとより、観光に寄せる期待が高い本県においては、和歌山ブランドの拡大と持続可能な観光地づくりを基本に置き、メディアや旅行会社に対し、継続的な企画提案活動を展開するなど、和歌山の魅力の発信に取り組んできています。
 とりわけ、平成25年から平成27年までの3カ年においては、本県観光のゴールデンイヤーと位置づけ、集中的な情報発信と観光商品の開発を行うとともに、急増する外国人観光客の受け入れ対策についても急ピッチで取り組みが進められ、その結果として平成27年には観光入り込み客総数で3300万人以上、外国人宿泊客数で約43万人と、過去最高の記録になりました。
 ちなみに、民間機関の各種データでは、楽天トラベルの人気上昇率ランキングで本県は2年連続全国第2位、グーグルの検索ワード、夏・観光部門では上昇率全国第1位、都道府県別魅力度ランキングにおいても前年の37位から26位に急上昇するなど、和歌山の魅力は、関係各位の御努力により広く多くの方々に認知されてきております。
 和歌山の認知度が上昇している今、これまでの取り組みをさらに発展・深化させ、より効果的な誘客促進を図るため、本年度から新たに「水の国、わかやま。」キャンペーンと名づけた事業がスタートをいたしました。世界遺産ブランドを初め、和歌山が持つポテンシャルに水という意外性のあるテーマをつけることにより、観光資源の発掘、開発、整備を行うなど、将来へもつながるキャンペーンとしております。
 そういった中でも、数ある観光振興あるいは地域振興策の1つとして、今回あえて私が期待を寄せ、取り上げるのが、サイクリングロードを活用して観光振興へつなげようとする取り組みであります。
 本県は、世界遺産や温泉以外にも川、山、海など魅力ある豊かな地域資源を有しており、サイクリングロードの設置には非常に適した地域であります。また、近年の健康志向や環境意識の高まり等を背景にサイクリング需要が伸びていることから、その地に自転車の周遊ルートの整備を図ることは、本県への誘客を促進する上で非常に効果的であると考えてございます。
 今回、本県が計画中のサイクリングロードは、周遊ルートとして紀北、紀中、紀南、海岸の4つのルートが検討されていますが、いずれも自転車愛好者において魅力あるルートでなければなりません。そうしたことから、数多く点在する地域資源をつなぐ周遊ルート、あるいは長期滞在を誘発できるルートのつくり込みが重要であり、また、そのルートを選定していく上においては地域の意見を幅広く取り入れていくことが何よりも大切であります。ある地域では、若い方々が地域おこしの一環として県が示した周遊ルート案を基本としながら、そのルートから外れた場所にある風光明媚な見どころへの誘導や地域の観光資源の洗い出しを行うなど、さまざまな取り組みを考え、そして協議をしていると聞いております。
 周遊ルート案は国道、県道、そして市町村道で構成されていくと思いますので、各道路管理者や関係機関はもとより、各市町村の観光部局との連携を図ることが必要不可欠であります。
 そこで、小項目の1点目、サイクリングロードを活用した観光振興の意義について、また先ほど申し上げた地域にある積極的な意見の集約などを含め、今後どのように推進していくのか、商工観光労働部長の御見解をお伺いいたします。
○議長(浅井修一郎君) ただいまの鈴木太雄君の質問に対する答弁を求めます。
 商工観光労働部長岡本圭剛君。
  〔岡本圭剛君、登壇〕
○商工観光労働部長(岡本圭剛君) サイクリングロードを活用した観光振興の意義でございますが、高額なロードバイク等のスポーツ自転車の国内年間販売台数が2015年には60万台と急増しています。全国でも、しまなみ海道や琵琶湖など多くのルートが国内外の自転車愛好家も含め人気を集めており、今後さらに需要が伸びていくことが予想され、その活用は重要であると認識しております。
 こういった中、議員御提言のとおり、従来の交通手段だけでは訪れることができないような地域の魅力をサイクリングロードにより新たな周遊ルートとして形成することは、従来と異なる客層やリピーターの獲得につながると考えております。
 川、山、海の各ルートを県全域で整備されることは、全国でも唯一の取り組みであり、交流人口の増加、消費拡大につながるものと考えております。
 県としましては、地域の皆さんと情報を共有しながら、全国唯一の魅力的なサイクリングエリアであるという強みを雑誌、テレビ、ウエブ等、メディアをフル活用して国内外に強力に発信してまいります。
○議長(浅井修一郎君) 鈴木太雄君。
  〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 御答弁をいただきました。サイクリングロードの活用により多くの自転車愛好者を誘客するためには、やはり全国への情報発信が何よりも大変重要となります。これからの積極的な取り組みに期待を申し上げたいと思います。
 また、その情報発信ツールの1つとして、今後、周遊ルートマップを企画部のほうで作成すると聞いていますが、特にこのマップの作成に当たっては、ルート周辺の地域お勧めの見どころも掲載することはもちろんのこと、スタンプラリーによる特産品の提供や、地域の宿泊施設等と連携をし、送迎等の特典を盛り込むなど、いわゆる地域との連携ツールとなり得るものを作成していくことが必要ではないかと私は考えております。
 そこで、自転車愛好者に伝えるべき地域の魅力など、観光的な要素を今後どのようにマップに反映していくのか、またその活用について商工労働観光部長に再質問をいたします。
○議長(浅井修一郎君) 商工観光労働部長。
  〔岡本圭剛君、登壇〕
○商工観光労働部長(岡本圭剛君) 多くの自転車愛好者を誘客する情報発信ツールの1つとして、議員御提言の周遊ルートマップの作成は重要であると認識しております。
 周遊ルートマップにつきましては、多くの自転車愛好者にお越しいただき、地域の人との接点をふやし、地域での消費拡大につなげるため、駅、駐車場、サイクルステーションなどに加え、地域の見どころ、飲食店、お土産店、宿泊施設やアクティビティーなどの情報を盛り込めるよう、企画部と連携してまいります。
 また、その活用については、サイクリストの利便性を高めるため、ウエブでの情報提供なども検討してまいります。
○議長(浅井修一郎君) 鈴木太雄君。
  〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 次に、小項目の2点目として、サイクリングロードの整備状況と今後の取り組みについて質問をいたします。
 先ほど4つのルート案があると申し上げましたが、それを構成する川、山、海のサイクリングロードの整備に当たり、紀の川沿いの自転車道を活用した紀北ルートと山間部を走る紀中・紀南ルート及び海岸ルート、さらにルート上の都市とではラインの引き方や誘導方法等、おのずと違ってくるものと思われます。
 周遊ルート案のほとんどが自転車専用道路や自転車・歩行者道ではない一般道を活用したものであり、特に山間部ルートは道路が狭隘なため見通しの悪いところが多く、自動車との接触事故の確率が高くなります。このような場所では、最寄りの医療機関まで距離があるため、ドクターヘリの出動も想定しなくてはなりませんし、事実、過去にはドクターヘリが出動した自転車による事故も発生をいたしております。
 自転車愛好者の安全・安心を確保するために、自動車交通量の少ない道を活用したルート選定の検討もされているとは思いますが、このような道路には山間部での落石が懸念をされたり、舗装の劣化が激しいなど、危険な箇所もあることから、やはりその解消に向けた取り組みも重要であります。
 これらのことを踏まえ、小項目の2点目として、サイクリングロードの整備状況と今後の予定について、またサイクリングロードに活用する市町村道を含めた道路の危険箇所解消への取り組みについて、県土整備部長の御見解をお伺いいたします。
○議長(浅井修一郎君) 県土整備部長森戸義貴君。
  〔森戸義貴君、登壇〕
○県土整備部長(森戸義貴君) 議員御質問の川、山、海の3つのサイクリングロード整備の考え方といたしましては、県が国及び市町村から維持管理の観点も含めた御意見をお聞きしてルートを設定するとともに、ブルーライン等の路面標示、ルート案内看板について規格統一を図った上で、各道路管理者が整備をすることを基本としております。
 現在の整備状況につきましては、先行して着手した紀の川沿いの川のルート整備が約9割完了してございます。山、海のルートにつきましては既に整備に着手しているところもありますが、残っている一部の詳細なルートや整備の時期について、国や市町村並びに関係機関と調整を行っているところです。
 今後の予定といたしましては、早急にこれらの調整を終え、来年度の概成を目指し、ブルーライン等の路面標示の設置を行っていきたいと考えてございます。
 さらに、危険箇所の解消につきましては、各道路管理者が取り組むことを基本としておりまして、必要に応じて落石対策や舗装・補修などに取り組んでいただきたいと考えてございます。
 なお、市町村道における必要な費用については、国の交付金予算の確保を積極的に支援したいと考えてございます。
○議長(浅井修一郎君) 鈴木太雄君。
  〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 次に、小項目の3点目として、サイクルステーションについて端的に質問をいたします。
 サイクルステーションとは、自転車愛好者がサイクリングの途中でトイレや食事、水分補給などのために気軽に立ち寄ることのできるスポットのことで、通常、個々のステーションにはバイクラック、空気入れ、修理道具等も備えつけられております。周遊ルートの利便性を向上する上で非常に大切な場所であり、ステーション間の距離等を踏まえた適正配置、つまり自転車愛好者にとってより利便性が高いステーションの設置が求められます。
 そこで、小項目の3点目、サイクルステーションの設置については市町村の役割として位置づけておりますが、県内全体のステーション設置数及び設置場所は、具体的にどのような配置で今後どう整備していくのか、企画部長の御見解をお伺いいたします。
○議長(浅井修一郎君) 企画部長髙瀨一郎君。
  〔髙瀨一郎君、登壇〕
○企画部長(髙瀨一郎君) サイクルステーションにつきましては、自転車愛好者の受け入れ環境として非常に大切であります。
 県では、自転車愛好者が休息をとりやすいなど、利便性を考えた適正な配置に配慮するとともに、地域での消費拡大につなげられるよう、サイクルステーションの設置を推進しているところでございます。今後、さらに拡充に向け、市町村とともに取り組んでまいります。
 なお、平成28年度につきましては、設置促進のため、道の駅や観光案内所などへの必要物品の配置に対し支援を行い、各市町村に1カ所以上を選定し、県全体では30カ所以上にサイクルステーションを設置することとしています。
○議長(浅井修一郎君) 鈴木太雄君。
  〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 次に、小項目の4点目として、紀州材を活用したバイクラックについて、これも端的に質問をいたします。
 サイクルステーションへ備えつける物品等の整備については、県から市町村に対して1カ所につき上限3万円を補助することとなっています。当然、バイクラックにつきましてもその物品等に含まれているわけですが、自転車愛好者の間では、特に紀州材を活用したバイクラックが木の国和歌山らしいと好評であるとのことであります。
 この際、備えつける物品等の整備費とは別に、私は、何よりも本県特産品のPRといった観点から、よくあるスチール製等のものよりも紀州材を活用した県内統一のものをできれば県において製作し、県内各ステーションに配備することがいいのではないかと考えますが、小項目の4点目、紀州材を活用したバイクラックの設置について、農林水産部長の御見解をお伺いいたします。
○議長(浅井修一郎君) 農林水産部長鎌塚拓夫君。
  〔鎌塚拓夫君、登壇〕
○農林水産部長(鎌塚拓夫君) 紀州材を活用したバイクラックの設置についてでございますが、紀州材の需要を拡大するためには、紀州材をさまざまな用途に使用していくことが重要と認識しております。
 議員のお話にもありましたように、近年の健康志向や環境意識の高まり等を背景にサイクリング需要が伸びてきていることから、サイクルステーションに紀州材を活用したバイクラックを設置することで自転車愛好者の方々に紀州材のよさをアピールしていくことも、有効な施策の1つと考えております。
 今後、サイクリング関係者の御意見も伺いながら、庁内関係各課や市町村とも連携の上、木の国和歌山らしい取り組みを検討してまいります。
○議長(浅井修一郎君) 鈴木太雄君。
  〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 どうぞよろしくお願いをいたしたいと思います。
 最後に、サイクリングロード整備後には、県内各地域でサイクリングイベントが開催をされ、交流人口の増大により地域が活性することを期待し、この項での質問を終わります。
 次に、大項目の2として、森林保全についての質問に移ります。
 まず、小項目の1、森林環境整備のあり方と課題について質問をいたします。
 本県は、古くから木の国とうたわれ、山地面積が県土面積の約4分の3を占めております。全国における山地面積ランキングは25位でありますが、面積割合におきましては7位となっております。
 言うまでもなく、森林は、地球温暖化の原因になっている二酸化炭素の吸収・蓄積や酸素の供給、蒸発散作用により地球環境を調節するといった地球環境保全の大きな一翼を担っているとともに、土砂災害の防止や土壌の保全及び水源涵養等、多種多様な機能も有しております。
 しかし、現在の森林を取り巻く状況は、木材価格の低迷により森林を守る機能を有する林業の経営が非常に困難で、人工林の手入れが行き届かなくなってきているばかりか、そのために荒廃した森林が増加をし、我々の日常生活にも悪い影響をもたらしているところでもあります。
 このような中、県民一人一人が森林による恩恵を受けるとの観点から、まず平成15年、高知県がこれらの森林や里山などの自然環境を維持・回復するために森林環境税を地方税として創設したのを皮切りに次々と各府県で導入され、平成28年現在、本県を含む37府県において施行されている状況であります。森林環境税を創設した自治体では、県民税の超過課税としており、県民税に森林環境税を上乗せした形で徴収をしています。
 本県においても、2005年に策定した紀の国森づくり税条例及び紀の国森づくり基金条例に基づき、平成19年度から各年度分の個人の県民税に500円を紀の国森づくり税として加算し、法人の県民税への加算分を含め、その徴収を紀の国森づくり基金に積み立て、森林環境の保全及び森林と共生する文化の創造に関する施策へと活用をいたしております。
 平成27年度までの9年間で、総額19億1000万円を費やし、緑育推進や景観づくりなど数多くの事業を実施してきたことは皆さんも御承知のとおりであります。
 ちなみに、公募事業あるいは県事業による森林環境整備は、さきに申し上げた施策どおり、森林環境保全や森林と共生する文化の創造に大きく貢献している事業であると思いますし、また、森林への理解の深化、森林への愛着心の醸成につながっているなど、事業実施団体からも好評いただいているとも聞いております。これらの事業は、産業、防災、教育に寄与するものであり、永久的に継続して行うことが必要かつ非常に重要であります。
 そこで、小項目の1点目として、これまでの本県における森林環境整備の成果とこれからのあり方について、また、この紀の国森づくり税条例の施行期間は平成28年度までとされておりますので、財源確保を含めた今後のさまざまな課題について、農林水産部長の御見解をお伺いいたします。
○議長(浅井修一郎君) 農林水産部長。
  〔鎌塚拓夫君、登壇〕
○農林水産部長(鎌塚拓夫君) 紀の国森づくり税を財源とした紀の国森づくり基金活用事業につきましては、平成19年度の開始以来、森林環境の保全及び森林と共生する文化の創造に関する施策に取り組んできております。
 開始から5年間は公募事業を中心に取り組んでまいりましたが、平成24年度以降は森林環境整備に重点的に取り組み、採算が合わずに整備が進まない人工林の切り捨て間伐を中心に約5700ヘクタールの整備を行うとともに、公募事業や里山における放置竹林の整備、ナラ枯れの被害対策などを含め、約6300ヘクタールの整備を行い、森林の公益的機能の高度発揮に努めてまいりました。
 このほか、緑育推進事業では延べ617校、約2万9000人、公募事業では延べ382件、約6万7000人、合わせて約9万6000人の県民の方々に森林・林業に関する体験学習や森に親しむ活動などに参加いただき、森林を守り育てる意識の醸成に役立ったと考えております。
 議員御指摘のとおり、山地災害の防止及び水源の涵養などに寄与する森林環境整備や、森林を守り育てる意識を醸成するための教育等は継続して行うことが必要かつ重要です。しかし、こうした施策を継続して行うには、整備が進まない人工林の所有者の特定が困難になってきたことや、緑育推進事業の指導者の育成など幾つかの課題はありますが、安定した財源の確保が最も重要であると考えています。
○議長(浅井修一郎君) 鈴木太雄君。
  〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 次に、小項目の2として森林環境税の創設に向けた県の取り組みについて質問をいたします。
 世界各国において地球環境問題への取り組みが求められている中、我が国の地球温暖化対策については、2020年度及び2020年以降の温室効果ガス削減目標が国際的に約束されており、その達成のためには森林吸収源対策の推進が重要かつ不可欠であります。こういった意味から、森林の維持や回復への対策は、本来国家レベルにおいて扱うべき課題であるとも言えます。
 また、森林の整備や木材利用を推進することは、国土の保全や地方創生、快適な生活環境の創出などにつながり、ひいては広く国民一人一人が恩恵を受けるものであることから、森林を抱える山村地域の市町村だけでなく、国民全体が森林のあり方、そしてその整備への意識や意義をしっかりと持つことが必要であります。
 これまでも森林の公益的機能の維持を目的に、国においては幾度となく税の導入が検討されてきました。1986年に林野庁が森林の涵養機能を確保するため、10年間の限定措置として水源税の導入を提案したことに始まり、近年では市町村長で組織する全国森林環境税創設促進連盟や、市町村議会議員による全国森林環境税創設促進議員連盟を中心に、全国森林環境税の創設を目指し、現在まで活動されています。
 そして、その活動のかいあって、平成28年度与党税制改正大綱に、森林吸収源対策として、「森林整備等に関する市町村の役割の強化や、地域の森林・林業を支える人材の育成確保について必要な策を講じた上で、市町村が主体となった森林・林業施策を推進することとし、これに必要な財源として、都市・地方を通じて国民に等しく負担を求め、市町村による継続的かつ安定的な森林整備等の財源に充てる税制『森林環境税』等の新たな仕組みを検討し、その時期については、適切に判断する」という文言が明記をされました。
 国での森林環境税の導入を要望してきた本県を初めとする各自治体においては、ようやく一歩前進であります。この与党税制改正大綱には、森林・林業施策の推進は市町村が主体と位置づけられているものの、森林を保有するそれらの自治体のみでその森林保全の役割を担うことは、財政面や人材面のみならず、あらゆる面において非常に厳しい状況であると言えます。
 本県の平成29年度国の施策及び予算に関する県の提案・要望での認識どおり、やはり適切な地域間調整を図るためには県の積極的な取り組みが重要であり、また県独自で森林環境税を課税していることからも、国との調整が必要となります。
 本県では、森林環境税等の新たな仕組みの検討においては、具体的な措置として都道府県・市町村それぞれの役割を考慮し、税源配分について十分配慮することや、府県を中心に先行して独自に課税している森林環境税との関係について、地方の意見を踏まえ、十分調整すること、また既存の森林整備事業の振りかえ財源としないことなどを要望しているところであります。
 そこで、小項目の2点目として、今後当局は、森林保全並びに国における森林環境税創設へ向けた動きに対し、具体的にどう取り組むのか、農林水産部長の御見解をお伺いいたします。
○議長(浅井修一郎君) 農林水産部長。
  〔鎌塚拓夫君、登壇〕
○農林水産部長(鎌塚拓夫君) 地球温暖化対策には、森林の整備や木材利用の促進といった森林吸収源対策が重要かつ不可欠であることは言うまでもございません。
 このため、県といたしましても、森林吸収源対策を積極的に進めるべく、その財源の確保に向けて、政府提案を初め、さまざまな機会を通じて関係省庁への働きかけを行ってきたところであり、また、全国知事会や関西広域連合においても同様の趣旨の決議や意見書の提出が行われているところです。
 こうした中、議員御指摘のとおり、平成28年度与党税制改正大綱において、森林環境税(仮称)の創設が盛り込まれ、一歩前進しました。その実現に当たっては、本県を初め全国37府県を中心に先行して独自課税している税との調整等、解決すべき課題もありますが、当該税の創設は、森林吸収源対策を進めるための財源の確保を図る上で必要不可欠と考えております。
 しかしながら、平成28年度与党税制改正大綱での、「その時期については、適切に判断する」との表記にとどまっていることから、一日も早い実現に向けて、県選出国会議員の皆様にも御協力をいただきながら、関係省庁への働きかけをこれまで以上に強めてまいります。
○議長(浅井修一郎君) 鈴木太雄君。
  〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 最後に、大項目の3であります文里湾横断道路について質問をいたします。
 まず、(仮称)文里湾横断道路は、一般県道文里湊線より文里港をまたぎ、新庄方面に接続する架橋を含めた道路のことで、紀南地域の中心である田辺市街地と白浜町、上富田町を結ぶ地域間幹線道路等として位置づけられている整備要望路線のことであり、地元では一般的に文里湾架橋とも呼ばれております。
 その横断道路建設に向けた取り組みは、今から約40年前の昭和53年に民間から構想が持ち上がり、昭和57年には田辺商工会議所を中心として市内各地域の有志を含めた文里湾架橋促進協議会が発足され、本構想実現のため協議を続けてこられました。
 とりわけ、平成8年には、市民の機運醸成を図るべく、商工会議所及び文里湾架橋促進協議会、そして田辺市観光協会の3者で費用負担をし、建設推進に向けた大きな看板を文里港入り口付近に設置した経過もございます。
 さらに、平成9年には、より実現に近づけようと商工会議所に加え、文里、磯間、神子浜等の沿岸部や市街地に位置する町内会及び商店街振興組合連合会、観光協会など各種団体も参画をし、文里湾架橋建設推進協議会が以前の協議会にかわり新たに組織され、県と市に対してその要望活動を続けてこられました。
 その後、経済情勢や環境の変化などさまざまな要因から一時的に活動の中断を余儀なくされた時期もありましたが、平成22年より商工会議所から知事へ架橋の建設要望が再開をされ、その活動は形を変えながらも現在まで続けられているところであります。
 一方、田辺市におきましては、昭和63年3月策定の第2次総合計画に、文里湾架橋を初めとする田辺湾岸域の交通整備が明記されていましたし、平成8年3月策定の第3次総合計画でも、南紀白浜空港や周辺自治体との連携を強化する地域間道路ネットワークづくりのため、この架橋の建設を推し進めることが位置づけられてきました。それは合併後も一貫して変わることなく、その実現に向けた取り組みに努めるとされております。
 この道路構想が実現をしますと、主要地方道南紀白浜空港線と田辺市街地が結ばれ、新庄地域の渋滞緩和も含めて交通の円滑化が図られるなど、近隣町との地域間を結ぶ道路として交流人口の増大にも大きな役割を果たすことが期待をされております。
 さらに、3次救急医療機関である南和歌山医療センターと市街地を結ぶ非常に効果的な緊急搬送ルートが確立されるとともに、災害時においても防災拠点ネットワーク港湾に位置づけられた新文里港からの輸送道路として重要な路線になると考えられています。
 こういった期待から市を挙げて取り組みを続けていましたが、平成26年、田辺市において道路状況等の環境変化を踏まえ、新たにその事業効果等を見きわめるための調査が実施されました。その調査結果は、いずれも以前と変わらず、整備効果が期待されるとのことで、改めてその必要性の認識を深めたところでもあります。
 こうした取り組みが行われている中、平成23年に社会情勢を一変させた東日本大震災が発生し、国民の地震・津波等防災に対する意識がより高まることとなりました。本年4月に発生した熊本地震もそうであります。今まさに、本県や県下の沿岸市町において、近い将来、高い確率で発生すると想定されている3連動地震、あるいは南海トラフ巨大地震に起因する大規模災害への対策や、避難困難地域の解消を含めた津波対策への取り組みが積極的に推し進められています。
 田辺市では、昨年3月に設立された南海トラフ地震津波対策検討協議会において議論が重ねられ、この横断道路について、津波から逃げ切るためには「文里地区の避難困難地域のみならず、周辺に存在する要配慮者施設利用者等の避難路、避難場所として必要である」と答申が示されるとともに、津波避難困難地域解消計画にも位置づけされたところであります。
 また、先ほどから申し上げているように、これまで熱心に取り組んできた経緯もあり、地元では世界遺産に追加登録される見込みの闘鶏神社等を生かした観光振興や南和歌山医療センターへの搬送時間短縮などの効果を期待する声が根強くあるのも、これも事実であります。無論、地域振興におきましても、この道を生かした魅力あるまちづくりを進めていかなければなりません。
 本当に今申し上げたような、以前からさまざまな思いや期待のある道でありますが、私はまず、今回の津波に備え命を守るために必要であるとされたことを何よりも重く受けとめて、今後、命を守る道として取り組みを進めていく必要があると考えますが、知事におかれましては、この津波避難困難地域解消計画を受けて、文里湾横断道路の整備についてどのようなお考えを持っておられるのか、御見解をお伺いいたします。
○議長(浅井修一郎君) 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 文里湾架橋については、議員の話にもありましたように、長年にわたり御要望などをいただいていた経緯もありまして、これまでにも必要性や位置づけなどについて検討してきたところであります。
 御指摘のように、もともとの発想は田辺─白浜をつなぐもう一本の便利な道路をつくって全体として観光の振興をというようなものであったと思いますが、これもなかなかいい考えだと思っておりました。
 一方、これまた御指摘のように、県が対策を進める3連動地震や南海トラフ巨大地震への備えとして、県民の命を守り、津波から逃げ切る方法を考えていく中で、この橋の存在が考えられる避難の方法と矛盾していたら困るという問題も出てきたわけでございます。したがって、文里湾架橋が周辺住民を含め、県民の命を救うために必要であるという整理を、これは田辺市が中心になってやっていただくんですが、そういうことをできるならば取り組んでいくというような結論にしておりました。
 田辺市では、南海トラフ巨大地震津波対策検討協議会を設置し、津波避難困難地域の解消に向けた計画について検討を重ねてきましたが、去る7月、計画が策定されました。この計画では、これを使って逃げるという方向が明らかにされておりまして、津波避難対策と文里湾架橋が矛盾がなくなりました。田辺市長からも、避難路、避難場所としても文里湾架橋が必要だとのお話があって、ぜひこれは頼むということでございましたんで、もう懸念は一切なくなりましたから、実現に向けて取り組もうというふうに思いまして、よく田辺市と連携して進めていくよう県土整備部長に指示をしたところであります。
 今後は、田辺市と連携し、関係機関との調整やルートの詳細な検討など、文里湾架橋の実現に向けて必要となる取り組みを進めていく所存でございます。
○議長(浅井修一郎君) 鈴木太雄君。
  〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 御答弁をいただきました。本当にありがとうございます。
 避難困難地域の解消策の1つとして、今回改めて文里湾横断道路に寄せる期待がさらに大きく増しました。地元である我々もしっかりとともに手を携えて、これから汗をかいてまいりたい、またこれから出てくるであろう諸課題についても精いっぱいの努力と行動をもって汗をしっかりかいてまいりたいなと、このように考えてございますので、どうぞ最後までよろしくお願い申し上げたいと思います。
 以上で、私の一般質問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(浅井修一郎君) 以上で、鈴木太雄君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後1時40分散会

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