平成28年6月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(長坂隆司議員の質疑及び一般質問)


平成28年6月 和歌山県議会定例会会議録

第5号(長坂隆司議員の質疑及び一般質問)


人名等の一部において、会議録正本とは表記の異なるものがあります。

正しい表記は「人名等の正しい表記」をご覧ください。

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 42番長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕(拍手)
○長坂隆司君 おはようございます。議長のお許しをいただきましたので、以下、通告に従いまして一般質問をさせていただきます。
 1つ目に、オランダ調査報告をさせていただきます。
 本年3月19日土曜日より26日土曜日までの間、前芝前議長にお許しをいただいて、オランダへ出張調査に行かせていただきました。
 改新クラブから浦口高典、藤本眞利子両議員と私、そして和歌山大学産学連携・研究支援センター食品科学寄附研究部門特任教授・三谷隆彦先生、特任助教・味村妃紗先生とともに計5名で参らせていただきました。出張中に隣国ベルギーでのテロ事件もあり、帰りのスキポール空港は厳戒態勢でありました。
 個人的には、昭和59年10月から同60年10月まで約1年間、オランダ日本通運で海運部研修員として勤務して以来、31年ぶりにオランダの地を訪れました。当時は、オランダ日通で現地のオランダ人と一緒に働いていても、夕方5時になると仕事が残っていようが家に帰ってしまう、でもそれは何より妻、子供、家庭を大切にしている国民性なのかな、でも日本人からすれば物足りないなと思っておりました。確かに、例年、子供の幸福度調査で世界第1位になっているオランダであります。
 約30年ぶりに訪問してみると、農場や牧場の随所にあったオランダの象徴であった風車がごく一部の観光地にしか見られず、かわりに人工的な風車ポールが畑や牧場に無表情に建っているのには大きな衝撃を受けました。一方で、オランダという国は長年の経験を生かした組織力と集約性、そして効率性で勝負するもろもろの取り組みに日本としても教わるところが少なくない国であったかなと、そういうふうに改めて見直した次第です。
 オランダの面積は九州とほぼ同じで、国土の約4分の1以上が海面下で、人口は約1700万人弱の小国であります。それでも、ヨーロッパ最大の港ロッテルダム港、そしてヨーロッパ第3位の貨物取扱量のスキポール空港を擁するヨーロッパ最大の陸海空の物流拠点であります。当然、貿易等物流サービスが充実しており、貿易のGDP寄与度が高い国であります。13世紀より風車も活用した干拓で国土を広げ、20世紀に入ると北海とアイセル湖の間に締め切り大堤防をつくって陸地、農地を拡大してきました。オランダ人いわく、「世界は神がつくりたもうたが、オランダはオランダ人がつくった」であります。現在、アメリカに次いで世界第2位の農産物生産国であり、世界第2位の同輸出国であります。温室栽培を初めとするICT技術を駆使した生産性の高い農業が特徴です。
 たまたま、かつて日本通運同期入社であったオランダ日通の吉田社長と佐藤引越・旅行部長との懇談に始まって、防災対策調査で、32キロ真っすぐに高速道路が上を走り、高潮を防ぐとともに海水と淡水を隔てる大堤防アフスラウトダイク、生魚を食するオランダの新鮮な魚介類や産地表示のある地元食材を売る食品スーパー・マルクト、オランダ最大のスーパーで日用品、お土産まで購入できる、お菓子類が特に充実しているアルバートハイン、駅を中心に広がるオランダのまちづくり調査として、アムステルダムの駅から扇型に広がった中心街、地域の名産づくりや歴史、伝統を大切にした観光調査として、チーズ生産のエダム、漁村のフォーレンダム、古都のたたずまいと陶器のまちデルフト、風車村ザーンセスカンスを訪れ、チューリップに代表されるオランダの花卉産業調査でキューケンホフも訪ねました。カジノのある海岸リゾート地スフェヴェニンゲン、それに取扱貨物量が欧州でそれぞれ第1位と第3位のロッテルダム港とスキポール空港も調査に参りましたが、時間の都合上、以下、ワーヘニンゲンURとフードバレーの取り組み調査、ケアファームと認知症村の認知症対策とその研究にかかわる病院の調査、そしてAEB社の廃棄物・エネルギー調査の3点に絞って報告させていただきます。
 オランダは、2010年に農林水産省と経済産業省を一本化する省庁再編を行っており、世界で勝てるマーケット開発に取り組んでいます。その中で、農学部のみの単科大学としては世界一のワーヘニンゲン大学とそのリサーチセンター、総称してワーヘニンゲンURを中心に、自国の農水畜産物を活用した産学官の食品産業クラスター、すなわちフードバレーを2004年以降形成しています。
 その司令塔であるワーヘニンゲンURは、農業生産だけでなく農業関係の全てのバリューチェーン、すなわちロジスティクス(物流)も全て含んだ持続可能な農業を目指しています。廃棄物を使った包装材料の研究を初め、ロジスティクス、すなわち物流チェーンの構築、保存に主眼を置いた冷却、包装の研究も行っています。1年たってもリンゴや洋梨の鮮度が変わらない保存・冷却技術を実現していました。ネットショッピングが増加する中、ラストマイルデリバリー、すなわち顧客に品物が届く間際に問題なく、いかに新鮮さを保って顧客に届けられるかという配送研究も進めています。大学では修士と博士課程を全て英語で行い、外国人学生が多く、学生数が増加しています。日本の東京大学、筑波大学、それに宮崎産業経営大学とも科学面で協力関係を持っています。全国に研究施設があり、中国やエチオピアなどにもプロジェクト研究の施設や事務所があります。
 フードバレーには約8000人の科学者と1500近くの食品関連産業、70の化学工業、20の研究機関が集まっています。ワーヘニンゲン市周辺に集中していますが、他地域にも研究所、企業、大学が散在して、シードバレー──種子ですね――炭水化物研究、食品発酵、海洋研究等、それぞれフードバレーの一翼を担っています。加盟企業は160近くあり、うち日本企業もキッコーマン、日本水産、カネカ、サントリー、アサヒグループ、松谷化学工業、味の素の7社、フードバレー加盟企業の90%が中小企業で、外国企業が約半分です。たくさんの研究機関とともに、全国の大学、そして地域自治体が連携しています。
 フードバレーでは、大小の企業が一緒に連携して、ワーヘニンゲンURのネットワーク組織で情報や知識の交換や問題解決を行っていますし、また、地域の自治体がその地域の特性を生かすために予算を投資してプロジェクトを行っています。例えば、ワーヘニンゲン市のあるヘルダーランド州はフードバレー財団の80%の予算を補助金として投入しています。
 食品製造加工、植物育種、それに花卉生産等だけでなく、消費者行動の研究、水・エネルギーの節約の研究、新しい企業設立のためのサポート、それにスポーツと栄養、あるいは高齢者の栄養研究を病院とともに行い、オランダオリンピック委員会もかかわっています。出発点はあくまで企業のニーズから始まっており、一番重要な使命はマッチング、すなわち企業と大学、大企業と小企業、外国企業と大学のマッチング等です。国際的な提携関係の構築も行っています。
 フードバレーに入会するための会費は、小企業で1年当たり200から300ユーロ、大企業で1年当たり2000から3000ユーロ、1ユーロ125円で換算すると小企業が1年当たり2万5000から3万7500円、大企業で1年当たり25万から37万5000円になります。会員にならなくても他国や大学とも協力関係は結べます。
 ワーヘニンゲンURは、フードバレーだけでなくいろんな実証フィールドを有しています。まずは認知症患者や知的障害者のデイケアを行うケアファーム、農場です。ワーヘニンゲンURからケアファーム経営者として委任されたヤン・ハシンク氏のケア農場、フーヴクラインマリエンダールでは、認知症患者や知的障害者の方が外の自然の中で家畜の世話や野菜などの栽培作業を行うことによって、肉体的努力、食物・飲み物の摂取率の向上といった身体の健康増進や、作業を行うことによって社会参加をして役に立っているという意識の醸成が図られていました。
 訪問してみると、通所者の皆さんがスタッフとともに大変アットホームな雰囲気で楽しそうに和気あいあいと鶏を追いかけていたり、木を切ったりしていました。活動は主に散歩、農家の手伝い、木を切る、庭の手入れ、そして収穫です。朝、利用者に来てもらったらまずみんなでコーヒータイム、きょう何をしたいか聞いて、やりたいことをしてもらうのが特徴です。できないことをするよりは、まだできることをやってもらうという方針です。外での作業が多いので、認知症もまだ初期の段階の男性の方が多いです。
 このケアファームには外部の人も利用できるカフェレストランがあり、企業の会議にも利用されますし、ファームでとれた野菜も販売されています。アーンヘムのまちに近くて住民との交流もあり、外へ出ていっての交流も行っています。オランダは全世界に先駆けて認知症国家戦略を打ち立てた国ですが、国家の方針は、自宅でできるだけ長く、多くの高齢者が住み続けることであります。
 ケアファームは、そもそも厚生労働省と農林水産省の協力で立ち上がりました。厚労省は社会復帰によいということ、農林省は農家・農園の新しい収入方法などでそれぞれサポートしています。大学生もケアファームにヘルスケア、農業の研修に来ていて人気があります。このケアファームでは地域の中核病院と連携して、認知症と脳と栄養の研究調査も行っています。
 ワーヘニンゲンUR近郊のヘルデルスバリー病院では、10年前からワーヘニンゲン大学と連携し、患者のケアの焦点を栄養と運動に置いています。脳を動かすために適切な栄養は何かを治験によって研究を行い、その中で130もの検査項目で血液を次から次へ全自動化システムの機械によって分析していました。
 もう1つ訪ねたケアファームは、ワイナリーを経営するデアムステルタウン、アムステル庭園です。やはりワーヘニンゲン大学でワインづくりのためのブドウ栽培を学んだオーナーが営んでいるところです。ここでは、ブドウ栽培には通所者をかかわらせず、専ら朝まず通所者がボランティアの方と一緒にコーヒーを飲んで会話から始まり、新聞を読んだりゲームをしたり、希望者には簡単な作業をしてもらうといった状況で、一番大事なのは昼食を一緒に準備してともに食べることとしています。友人の輪が広がり、ボランティアの方も孤独を癒やしていると言います。外で働く、活動することによって、長く健康を保つ効果があらわれているということです。
 オランダも健康寿命を長く延ばしたいという方針があります。オーナーのヤン・シャンケ氏は、「人々は自分の家で過ごすことが大事と思っている。ここへ通う人以上に家族にとって大事な場所だ」と言っておられました。「認知症の方も徘回で出ていってしまうことはなくて、いつも施設をあけっ放しにしているのは、通所者に楽しい時間を提供しているからだ」と胸を張っていました。この農園でもアルツハイマーの原因の追求調査を行っており、アルツハイマーになってしまったら健康の時間を延ばすことだと言われていました。
 次に、テレビや週刊誌等でもたびたび取り上げられる認知症村ホフヴェイにも行ってまいりました。認知症と証明された入所者がけんかをしないように、7つのライフスタイル、すなわち1つ目に裕福層の人、2つ目に文化的興味のある人、3つ目に都会的活動の人、4番目に伝統的スタイルを好む人、5つ目にインドネシア生まれか育ちの人、6点目に家庭的な生活を好む人、7つ目に熱心なキリスト教信者と、ユニットごとに分けられて生活しています。入所資格に資産の有無は問われません。
 村内には、スーパー、レストラン、カフェ、代理店コーナー、シアター、フィジオセラピーの部屋、理美容店など、生活に必要なものは何でもあって、趣味活動のクラブも30あります。スタッフは2交代制で、まだベッドに入っていない人を夜中1時半までに誘導しています。食事では、ライフスタイルによって提供する食事も異なり、たくさん野菜をとってもらうようにしています。
 私たち一行も1つのユニットを訪問させていただいて、お土産の紀州てまりをお渡ししたら、コーディネーターのハンセン氏も入所者の方も大変喜んでくださいました。「認知症村での生活は、家の状態に近いようにしています。オランダの国のモデル事業でありますが、入所者が日ごろ外部との接触がないところが課題」と言われています。
 次に報告させていただくのは、アフヴァルエナジーベドライフ、すなわちアムステルダム市廃棄物エネルギー社(AEB社)であります。熱プラント施設では世界一、毎日トラックが600台往来します。ロンドン・マンチェスターからも廃棄物が船で運ばれてきます。国内の他の19市町村の廃棄物も受け入れています。廃棄物から30%の電気を生み出しているのはまさしく世界一です。
 AEB社の使命は、未来へもクリーンな社会をつくることです。それも、1950年代から1960年代にごみは捨て放題、汚水垂れ流しでまちがすごく汚くて運河もごみだらけだった、その反動からです。2007年からWFPPと呼ばれる廃棄物発電プラントが稼働しました。最大温度1200度のボイラー等、初期投資は大きく、しかし、ランニングコストを抑えています。国内に埋め立てる場所がないので、なるべく埋め立てを減らし、大規模なごみ処理をしないといけない事情があり、埋め立て処分率は1%を切っています。
 オランダは、投棄より焼却とリサイクルであり、ごみをたくさん受け入れることでリサイクルして製品化して収入が得られるし、大量の熱を回収して各地へ地域暖房として送って収入にしています。大きな廃棄物処理を行って熱へ転換するプロジェクトがオランダの手法であり、日本は200から250トンの処理施設が主体で、効率からすればオランダのほうが上、農業もしかりだとAEB社の戦略マネジャー・リヒテンベルト氏は言われていました。ごみを遠くから集めてきても、AEB社で処理したほうが環境によくて処理効率が高く、年間2億トンのCO2を減らせています。
 暖房も、通常は天然ガス供給によるものでしたが、オランダではたくさんの熱供給によって地域暖房を実現しており、世界初のガス利用ゼロを目指しています。建物が密集し過ぎて地面をもはや掘り返せない旧市街を除き、地域暖房のネットワークは非常に大きく、ところどころに支援基地があります。水処理工場では下水のスラッジ(汚泥)が課題でしたが、そのスラッジからバイオガスを取り出して焼却、バイオガスで熱と電力を生産、それがまた工場で使用され、生産したバイオガスからクリーンガスをつくってトラックを走らせています。全て環境政策からです。新しいフローとして生ごみ分別からバイオガス発生、そしてエンドガスからCO2回収、回収された熱を温室へ利用、CO2も光合成に使用といったぐあいです。
 AEB社を初めオランダの環境政策も、もちろんワーヘニンゲンURとの連携関係を有しております。とにかく、欧州全体の環境対策を見通す中で明確に目標設定を行った将来戦略を持っておられることに感心しました。
 それでは、質問に入ります。
 1つ目、ケアファームは、農場の経営と認知症や障害のある方のデイケアの両面があります。オランダの場合、ケアファームは通常、農場経営は御主人が行って、デイケアのほうをヘルスケアの経験がある奥さんが携わって、スタッフやボランティアに支えられて運営をしていくやり方です。ファーム(農場)というフィールドを活用した、家から外へ出て自然の中で肉体を使いながら農作物をつくり上げ、収穫のときを迎えることによって、人の、そして社会の役に立っているという意識が持てるデイケアは、自宅に帰っても家族の方に歓迎されるケアのあり方ではないかと思います。農家がケアファームに取り組むことによって休耕田畑の利用促進も図られ、農家の収入を補う多角経営にもつながるのではないでしょうか。
 折しも今春、和歌山大学にも文理融合の食農総合研究所が立ち上がりました。ワーヘニンゲン大学のように、ケアファームは学生のフィールド実習の取り組みとしておもしろいですし、当研究所やJA、農業生産者の方にも御協力をいただきながら、和歌山県ならではのケアファームの形を今後検討してみてはいかがでしょうか、農林水産部長にお伺いいたします。
○議長(浅井修一郎君) ただいまの長坂隆司君の質問に対する答弁を求めます。
 農林水産部長鎌塚拓夫君。
  〔鎌塚拓夫君、登壇〕
○農林水産部長(鎌塚拓夫君) 議員御提案の農家が農場を活用して認知症の方や障害者のデイケアを行うケアファームの取り組みにつきましては、農家の多角経営や休耕田の利活用につながることから、いい話であると考えてございます。
 しかしながら、ケアファームは、専門性、ノウハウ、人材確保などの面で解決すべき課題も多いのも事実なので、議員御提案のオランダの事例も踏まえて、引き続き研究してまいります。
 一方で、既に介護事業等に取り組む団体が農地を借り受けて農業生産を行い、そこで認知症の方や障害者が農作業に携わる形態は、これまでにも県内で7団体が活動を行っているところで、今後ともそういった取り組みを応援していきたいと考えてございます。
○議長(浅井修一郎君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 2点目に、AEB社は対象者が100万人規模の廃棄物処理施設を2つ有していると聞いてまいりましたが、100万人といえば和歌山県の人口とほぼ同じであります。将来的に広域的な廃棄物処理施設を県あるいは近隣府県とともに所有して、埋め立て処分に回すことなく、熱利用、発電、リサイクル製品化、温室への熱暖房とCO2供給といった効率的な循環型社会の構築を進めていってもいいのではないでしょうか、環境生活部長にお伺いいたします。
○議長(浅井修一郎君) 環境生活部長日吉康文君。
  〔日吉康文君、登壇〕
○環境生活部長(日吉康文君) 県におきましては、天然資源の消費が抑制され、環境への負荷ができる限り低減される循環型社会を目指しております。
 議員からお話のありましたオランダにおける広域的かつ大規模な廃棄物処理につきましては、処理過程で発生したエネルギーを利用し電力や熱として地域に供給するなど、環境への配慮にすぐれた手法であると考えております。
 県内におきましても、施設規模では比較になりませんが、紀の川市を初め複数の市町で広域的な一般廃棄物処理を実施しており、収集された廃棄物を焼却して、エネルギーにより発電等を行う取り組みが行われております。
 廃棄物処理の大型化につきましては、一定規模の人口の集積が必要であるといった解決すべき課題が多々あることから、今後その実現可能性を研究してまいります。
○議長(浅井修一郎君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 まさに、行く行くは埋め立てゼロでリデュース、リサイクル、リユース、この3Rの推進、実践を図っていただきたいなと思います。
 AEB社の戦略アドバイザーのリヒテンベルト氏も、日本の三菱重工や日立といったメーカーをよく訪れるそうです。日本の機械の品質の優秀性は大変評価しており、ビジネスとしてのニーズがあればいつでも和歌山県へ伺うと言っておられました。将来的な広域的循環型社会の構築に向けて、良好な協力関係をお持ちいただければと思います。
 3点目に行きます。
 オランダは、フードバレーによって外国企業の誘致を積極的に行っています。一方、日本の食品クラスターの取り組みは、やはり国内での内向きな連携であります。クラスター内に外国企業をふやせば、イノベーション創出機会、輸出機会、地域内における雇用機会が拡大する可能性が高まります。また、日本の平均寿命を支える健康的食材やうまみ調味料、さまざまな清涼飲料等の世界的な食品開発力は、国際的に強い競争力を発揮できるものです。
 この我が国の強みを吸収したい外国企業は多いはずです。それに、国際的ネットワークを持つ国内の商社、金融機関を食品クラスターへ引き込むことも考えられます。この図式を和歌山県に当てはめてみて、行政、研究機関、企業、そして大学と、フードバレーのような海外の食品クラスターとの連携・協力関係の構築、それに外国企業や商社のような海外とのパイプを持つ企業の誘い込みも考えてみてはと思います。
 また、オランダの施設園芸面積は日本の5分の1ほどですが、施設園芸平均作付面積は我が国の6倍、面積当たりの収量は我が国の7倍となっており、非常に生産性が高くなっています。また、天然ガスの世界第9位の産出国としてエネルギーコストが非常に安くついています。ICTの活用によって、コスト管理、栽培環境制御、栽培作業管理が徹底されています。こうしたオランダの生産性や効率性は日本も学ぶべきですが、オランダの栽培農作物は上位3品目のトマト、パプリカ、キュウリに集中しており、味わいも均一で淡泊。その点、日本の食文化の豊かさや味覚、食感、色合い等、多様性に富んだ点は世界における競争力となり得るものであり、和歌山県においてもしかりであります。
 以上、すぐには実行できるものではありませんが、TPP発効後の本県農業は待ったなしの状況を迎えます。本県の代表的産品である果実を活用したフルーツバレーの構築のため、フードバレーのような海外の食品クラスターとの連携・協力関係の構築、また、海外企業はもちろんのこと、海外とのパイプづくり、それに施設園芸のさらなる強化のもと、生産性、効率性を考慮に入れつつ、本県ならではの食文化と多様性を加味した競争力のある農業を考えてみてはいかがでしょうか、知事の御所見を伺います。
○議長(浅井修一郎君) 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 議員御提案のフルーツバレーや施設園芸の強化については、競争力のある農業を目指す観点から、とてもよい話だというふうに思います。
 かねてから、労賃コストが高いオランダで何ゆえ農業が栄えているのか、大変興味を持っておりまして、いろいろ調べさせてみておるんですけれども、それをもとに和歌山への適用の青写真を描くというまでには至っておりません。
 もっとも県では、これまでも生産性向上による低コスト化、高品質化による価格アップ、異業種連携によるクラスターの形成等に取り組んでまいりました。また、施設園芸についても高品質生産や多収技術、低コスト生産技術の開発や優良なオリジナル品種の育成に取り組んできたところであります。
 競争力のある農業を目指す観点からはまだ十分なものとは言えませんので、オランダ農業などの先進的な農業を学び、できるところから工夫して取り組んでまいりたいと思います。
 とりわけ、御指摘の海外食品企業との連携・協力関係などが競争力のあるオランダ農業とどうかかわっておるのか、すなわちオランダ農業が栄えているからそういう企業が集まってくるのか、あるいはそういう企業がいたからオランダ農業が栄えたのか、そういうようなことも含めて大いに研究して、その結果を農業政策に生かしていきたいと考えております。
○議長(浅井修一郎君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 御答弁いただきました。
 どちらかというと、フードバレーには大きな企業より小さい企業のほうが多いようでしたけどね。
 オランダは、ワーヘニンゲンUR発で、農業・食品関連産業も、ヘルスケア・医療も、エネルギー・環境対策も全て民間の活力を有効に活用しながら、国策で集約的に、効率的に、また組織的に取り組んでいます。全て独立採算の縦割りの日本とは大きな違いがあります。
 国土の約4分の1以上が海面より低く、昔から自然の脅威と闘い、かつて世界の海を制覇した国のしたたかなダッチアカウント、これを実現しています。普通、ダッチアカウントといえば割り勘、けちという意味に使われますが、実は無駄を排した最大効率の実践、それを表現していると私は思います。この辺が日本でも、国であれ地方であれ、行政運営に大変参考になるのではないかと感じました。最小コストによる最大効率で大きな権益を生み出せるよう、知事を初め当局におかれましても、ますますの御奮迅を期待しております。
 そして、私ども一行がワーヘニンゲンURにて2日間説明と総括をいただいたアジア担当マネジャーのアルジョ・ロタウス氏が、3日間、東京へ今出張に来られています。今月6月16日から17日に和歌山県にお越しいただけることになりました。日本にも以前、2~3度、ビジネスで来られています。本県にフルーツバレーを実現するためにも、ロタウス氏の来和の際のミーティングを足がかりに、県職員が1~2年といった長期間でじっくり勉強いただくべく、ワーヘニンゲンURへの県職員の派遣を御検討いただいてもいいのではないかと要望させていただきます。
 2点目に、被災時の外国人向け支援についてであります。
 熊本地震で4月14日の前震から約3時間半後の15日午前1時に、熊本市国際交流会館に避難所が開設されました。初めは利用者が少なかったのですが、16日未明の本震で状況が一変し、最終約150人に及ぶ外国人観光客が会館へ避難してきました。宿泊先の市内のホテルが断水した上、外国語による十分な情報を得られなかったためです。すぐに熊本を離れたくても、空港は麻痺し、閉鎖し、鉄道は不通、高速道路も通行どめで交通は麻痺状態。会館を運営する国際交流振興事業団スタッフが最新の交通事情をインターネットで調べて電車の運行状況を確認したり、希望者にタクシーを手配して目的地まで行けるようにしたそうです。
 また、熊本市には現在約4500人の外国人が住んでいます。地震後、在住外国人から連絡を受けた際は、まず最寄りの避難所を案内し、不便があれば会館に来るように促しました。実際のところ、近くの避難所に一旦は身を寄せたものの、満杯だし日本語がほとんど話せないので、一般の避難所で過ごすのは困難であったようです。会館では、イスラム教の避難者向けに礼拝用の場所を確保したり、市内の国際交流団体にネットで呼びかけてハラルの食事を確保できるよう便宜を図ったそうです。4月20日になると、会館内だけでなく他の避難所の外国人支援を視野に入れ、全国から応援にやってきた多分化共生マネジャーの協力を得て災害多言語支援センターを立ち上げました。避難所は4月30日に閉鎖しましたが、災害情報の多言語化は継続しています。
 一方、震災当初に押し寄せた外国人旅行者に対しては、どんな情報が必要かの支援方法の想定が不十分だったと事業団は反省しておられます。短期滞在の観光客は在住者と違う対応が求められるとして、検討を始めています。それでも混乱をきわめた状況の中、熊本市国際交流振興事業団の迅速かつ冷静な対応は特筆すべきものであったのではないかと思います。地域の避難・防災訓練に際しては、日ごろから地域の自治会から在住外国人への訓練参加の呼びかけを心がけることが肝要かと思います。
 そこで質問ですが、1つ目、外国人に対する避難所の設置と運営体制について、避難所運営マニュアル等の整備と各市町村への指導について、危機管理監にお伺いいたします。
○議長(浅井修一郎君) 危機管理監和歌哲也君。
  〔和歌哲也君、登壇〕
○危機管理監(和歌哲也君) 県では、東日本大震災や紀伊半島大水害の教訓を踏まえ、平成25年に和歌山県避難所運営マニュアル作成モデルを改訂し、市町村が開設する避難所が適切に運営されるよう取り組んできたところです。
 本マニュアルにおいて、日本語にふなれな外国人の方も区別することなく避難所に受け入れるため、相談窓口の設置や通訳ボランティアによる支援方法を定めております。また、あわせて外国人の方等への具体的な対応方法をわかりやすく記載した災害時要援護者避難支援ハンドブックも作成し、市町村に配布をいたしました。
 さらに、あらかじめ通訳活動等を行う防災ボランティア登録制度を設置するとともに、県国際交流センターに多言語支援センターを設置して、外国人からのさまざまな相談や関係機関との連絡調整に応じるなど、被災時において外国人を支援する体制も構築しているところです。
 現在、和歌山県避難所運営マニュアル作成モデルを参考に、ほとんどの市町村が避難所運営マニュアルを作成済みであり、引き続き外国人を含めた全ての被災者が利用する避難所の運営が適切に実施できるよう、市町村と連携しながら取り組んでいく所存でございます。
○議長(浅井修一郎君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 県国際交流センターでは、毎年、和歌山市の国際交流課、市消防局、気象協会、防災士会と、それにNHKにも協力を得て外国人向けの避難訓練を実施しています。センター下の和歌山ビッグ愛の駐車場には起震車も来てくれます。消防局はAEDによる救急救命講習もしてくれます。在住外国人には、できる限りたくさんの皆様にこうした機会に御参加いただくようお声かけいただきたいと思います。
 また、在住外国人も自分の住まいに帰れば地域住民であります。地元自治会による避難・防災訓練には積極的に参加するように、市町村を通じて特に呼びかけていただきたいと思います。
 それと、日本語が不得手な在住外国人にもわかりやすい、易しい日本語の在住外国人向けパンフレットの配布も御検討いただければと思います。
 2点目に、被災時の外国人旅行客への支援について、まず負傷者、特に重傷者への対応はいかがでしょうか、その際の医療通訳についてはいかがでしょうか、福祉保健部長にお伺いいたします。
○議長(浅井修一郎君) 福祉保健部長幸前裕之君。
  〔幸前裕之君、登壇〕
○福祉保健部長(幸前裕之君) 通常、災害医療現場では、医療従事者が傷病者の重症度と緊急度によって分け、治療や搬送先の順位を決定します。
 被災時の外国人旅行客の負傷者への対応につきましては、英語での会話はおおむね医療従事者が対応していますが、その他の言語での会話は翻訳機能ソフトの活用や添乗員の仲介などで対応できるものと考えております。
 一方、医療通訳は、専門的で高度な知識や技術に関しても一定以上の水準が求められ、国においても医療通訳士の養成を促進しているところです。
 被災時における医療通訳の必要性は高まっているものと認識しておりますが、外国人旅行客等への対応については、他府県での取り組みなどの情報収集を行いながら、県内医療関係機関や外国人を支援する団体との勉強会を開催するなど、研究してまいります。
○議長(浅井修一郎君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 次に、災害時の宿泊・観光施設との連携、情報の提供等、外国人観光客の安全確保に対する取り組みについて、商工観光労働部長にお尋ねします。
○議長(浅井修一郎君) 商工観光労働部長岡本圭剛君。
  〔岡本圭剛君、登壇〕
○商工観光労働部長(岡本圭剛君) 災害時における外国人観光客の安全確保についてお答えいたします。
 災害発生時においては、外国人観光客のみならず全ての命を守ることが大切であり、安全な避難先への誘導が最優先となります。特に外国人観光客については、土地勘がなく、また情報収集の手段が制限されています。
 その対応策として、宿泊施設や観光施設に対して、従業員への避難場所や避難ルートの周知徹底、外国人観光客を想定した避難訓練の実施を求めるとともに、多言語コミュニケーションカードの普及なども進めているところです。また、現在県が進めている和歌山県フリーWi-Fiのポータルサイトについては、外国人観光客向け安全情報提供サイトをリンク設定することにより多言語による安全情報の収集が可能になることなどから、被災時には外国人観光客の災害情報収集の手段として活用いただけるものと考えております。
 今後とも、宿泊施設、観光施設及び市町村などとの連絡、連携を強化し、災害時における観光客の安全確保に努めてまいります。
○議長(浅井修一郎君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 それでは、3番目の多文化共生社会の実現に向けてであります。
 平成18年3月27日付で、総務省自治行政局国際室長から各都道府県・指定都市外国人住民施策担当部局長宛てに、「地域における多文化共生プランについて」と題して、地域における多文化共生推進プランの策定の通知と、それを踏まえた地域における多文化共生の推進を計画的かつ総合的に実施するようにという文書が送られています。
 和歌山県は、それを受けて、平成20年2月策定の和歌山県長期総合計画に「多文化共生社会の実現に取り組みます」とうたっておられます。他県では、具体的に多文化共生推進プランをつくっておられるところもあります。
 質問の2点目の項目の中で、熊本地震の際に全国から応援にやってきた多文化共生マネジャーの活躍を取り上げましたが、和歌山県も外国人観光客が増加して国際化が進展する中、防災面はもちろんのこと、観光面など本県の特徴も加味しながら、多文化共生社会の実現に向けて他県に負けない戦略的な取り組みをいただきたいと思いますが、いかがでしょうか、企画部長にお伺いいたします。
○議長(浅井修一郎君) 企画部長高瀬一郎君。
  〔高瀬一郎君、登壇〕
○企画部長(高瀬一郎君) 総務省が平成18年に策定した地域における多文化共生推進プランでは、多文化共生施策の基本的考え方として、外国人住民へのコミュニケーション支援、生活支援などの重要性が述べられており、現在では外国人住民が多く居住する自治体を中心に17都道府県で多文化共生推進プランが策定されております。
 本県における在留外国人の数は6000人程度と大きな数字ではありませんが、外国人住民への支援や国際交流活動による相互理解を目指して平成10年に和歌山県国際交流センターを設置して以来、外国人住民を対象とする日本語教室や多言語相談窓口の開設、防災講習会、文化理解講座の開催など、外国人住民へのコミュニケーション支援や生活支援、国際相互理解に取り組んできたところです。
 一方、海外から本県を訪れる観光客の数は増加傾向にあり、平成27年の和歌山県内における外国人宿泊者数は42万7594人と史上最高を記録しております。
 このような状況を考えますと、外国人住民に加え、観光客など県内に一時滞在する外国人への対応も重要であり、観光案内や避難誘導の多言語表示の整備などにも引き続き取り組んでまいります。
 加えて、本県では経済交流の活性化を目指して海外諸国と覚書を締結しておりますが、企業商談会やファムトリップの実施、海外からのインターンシップ招聘など、地域や県内企業と海外との関係強化を積極的に支援することにより、企業の国際化や海外との人的交流がより一層進展し、県民の異文化理解に寄与するものと考えております。
 現在策定中の長期総合計画にも多文化共生の理念を反映できるよう検討を行い、和歌山県が外国人が安心して暮らせる、また訪れやすい地域となるよう進めてまいります。
○議長(浅井修一郎君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 次期長期総合計画には、ぜひとも多文化共生社会の実現に向けた具体的な方向性を明示いただきたいと思います。
 そして、被災時に外国人にはなくてはならない存在の、肝心の多文化共生マネジャーは、現在、和歌山県には実質的に誰もいません。以前は確かに2人いましたが、1人は大阪へ、もう1人は退職されています。多文化共生マネジャーの育成は喫緊の課題であります。だからこそ、平成18年から総務省に策定するように言われている多文化共生推進プランが今本県に必要であります。ぜひプラン策定に速やかに取り組んでいただきますよう強く要望させていただきます。
 最後に、時節柄、この際申し上げておきますが、今回の出張では、もちろん日本─オランダ間の航空便は往復エコノミークラスを利用、ホテルはルームキーがあかなくなった人も複数いたくらいのレベルのシングルルームでありましたし、そして事前に国際免許を取得して、レンタカーを何とか事故なく運転して1200キロを走破し、現地の交通費と移動時間の短縮に努めたことを報告させていただきます。
 これで、一般質問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(浅井修一郎君) 以上で、長坂隆司君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前11時27分休憩
────────────────────

このページの先頭へ