平成28年6月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(濱口太史議員の質疑及び一般質問)


平成28年6月 和歌山県議会定例会会議録

第5号(濱口太史議員の質疑及び一般質問)


人名等の一部において、会議録正本とは表記の異なるものがあります。

正しい表記は「人名等の正しい表記」をご覧ください。

  午前10時0分開議
○議長(浅井修一郎君) これより本日の会議を開きます。
 日程第1、議案第173号から議案第188号まで、並びに知事専決処分報告報第1号を一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第2、一般質問を行います。
 12番濱口太史君。
  〔濱口太史君、登壇〕(拍手)
○濱口太史君 皆さん、おはようございます。
 3日目のトップバッターを務めさせていただきます。早速ですが、議長のお許しをいただきましたので、一般質問を始めさせていただきます。
 まず、捕鯨文化「鯨とともに生きる」日本遺産認定についてであります。
 まず、日本遺産事業についてお尋ねをいたします。
 去る4月25日、熊野灘沿岸で行われてきた捕鯨文化「鯨とともに生きる」が、平成28年度日本遺産に認定されました。江戸時代初期から始まった、網で鯨の動きをとめ、もりを打つ組織的な古式捕鯨は、地域を支える一大産業に発展しました。そして、現在もなお太地町では捕鯨が続けられ、周辺地域の新宮市、那智勝浦町、串本町、古座川町においても祭りや伝統芸能、食文化が伝承されるなど、鯨とともに生きるという文化が息づいています。
 今回の認定は、こうした歴史的経緯や捕鯨文化が地域の風習に根差し、世代を超えて受け継がれてきたことが評価され、認定に至ったと聞いております。
 さて、お手元に「鯨とともに生きる」を構成している文化財を紹介した資料を配付しております。ストーリーを語る上で欠かせない19の史跡や芸能、祭りなど、今もなお色濃く継承されているものばかりで、いずれもこの地域が鯨とかかわってきたあかしであります。
 その中に、5番の「太地のくじら踊」と14番の「三輪崎の鯨踊」とがそれぞれ入っております。鯨といえば太地町が有名ですが、かつては新宮市の三輪崎でも太地町と同じように捕鯨が盛んに行われておりました。その名残として、太地と三輪崎には踊りの型や歌詞の違った鯨踊りがあります。
 新宮市三輪崎の鯨踊りは約300年前から、当時は大漁の祝い踊りとして船の上や浜で繰り広げられていました。紀州徳川家、新宮領主であった御附家老の水野氏が、京都の公家に鯨の肉を献上した際に鯨踊りとして整えたと言われ、2種類の踊りで構成されています。1つは、網に見立てた日の丸扇を両手に持った大勢の踊り子が大きな円となり、鯨を取り巻くさまをあらわした殿中踊り、もう1つは、鯨をしとめるもりに見立てた竹でつくられた綾棒を手に鯨船からもりを打つ動作が勇壮な綾踊りであります。資料の写真は綾踊りのほうで、終始座ったままで踊るという、全国的にも珍しい踊りと言われています。
 昭和49年12月、県の無形民俗文化財の指定を受け、三輪崎郷土芸能保存会によって伝承されています。毎年9月中旬に行われる三輪崎八幡神社の例大祭を初め、さまざまなイベントで披露され、また、地元の小中学生も運動会などの行事で披露するなど、子供のころから郷土芸能に触れてもらう習慣があり、保存会はその指導にも当たっています。
 ちなみに、三輪崎は私の地元中の地元で、何を隠そう私もこの会の一員で、踊り手の1人です。実はこう見えて、何よりもお祭り大好き男です。郷土芸能を通じた捕鯨とのかかわりもあり、先人から受け継いできた捕鯨文化を後世に継承したいと強く願う1人であります。
 ところで、県が申請したと聞いたときの個人的な感想ですが、日本遺産って余り聞きなれない言葉であったことに加え、本県では既に「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産に登録されているのにもかかわらず、名称だけを聞くとスケールが小さいイメージを抱く日本遺産、その認定をなぜ今さら目指すのかという疑問が湧きました。
 しかし、古式捕鯨の文化的価値のアピールとその文化の継承や発信、また誘客への活用に寄与するための事業と伺いました。なるほど、世界の一部から批判されがちな捕鯨について、受け継がれてきた文化、産業であることを理解してもらうための取り組みなんだと認識し、それならみずからもいささかのかかわりもありますし、微力ながら協力をしようと決心いたしました。しかしながら、狭き門とも伺っていたので、認定されたとの一報を受けたときにはとてもうれしく、誇らしく感じました。
 そこで質問ですが、日本遺産事業とは何を目的とした国の事業なのかなど概要について御説明ください。また、認定を受けたことによって地域にどのようなメリットがあるのでしょうか、商工観光労働部長にお尋ねいたします。
○議長(浅井修一郎君) ただいまの濱口太史君の質問に対する答弁を求めます。
 商工観光労働部長岡本圭剛君。
  〔岡本圭剛君、登壇〕
○商工観光労働部長(岡本圭剛君) 日本遺産につきましては、地域の歴史的魅力や特色を通じて我が国の文化、伝統を語るストーリーを文化庁が認定するもので、文化財の保全・保護という従来の文化財行政から転換し、文化財の活用によって地域の活性化を図っていくことを目的に、2年前に創設された事業でございます。
 文化庁では、東京で開催されるオリンピック・パラリンピックに向け、訪日外国人など旅行者が全国を周遊し、地域の活性化に結びつけられるよう、2020年までに日本遺産を100件程度認定する予定と伺っています。
 認定を受けたストーリーに対しては、文化芸術振興費補助金が交付されるというメリットがあるため、議員御発言のとおり申請件数は多く、初年度である平成27年度は83件の申請に対して18件の認定、本年度は67件の申請に対して19件の認定という状況でございます。
 本県が新宮市、那智勝浦町、太地町、串本町とともに申請いたしました捕鯨文化に関するストーリー「鯨とともに生きる」は、去る4月の25日に認定されましたが、引き続き、他の地域においても新たな日本遺産の認定を目指してまいります。
○議長(浅井修一郎君) 濱口太史君。
  〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 続きまして、「鯨とともに生きる」の誘客促進に向けた事業展開についてお尋ねをいたします。
 文化をアピールするために歴史的ストーリーを認定するという日本遺産事業は、観光や地域学習を目的とした誘客を促進するためには最適な考えだと私も思います。歴史的価値のある建造物や史跡や物的資源が残っているからといって、その価値をみずからが理解できている人は別として、ただ単にそれを見せるだけでは関心を引くことは難しく、ストーリーの持つ重要性は、現在放映中で大好評を博しているNHK大河ドラマ「真田丸」人気に見られるように、まず興味深いストーリーがあって、そしてそれを引き立てる登場人物がいてこそ、舞台となった地域やゆかりのある場所が生きてくるわけで、先人の営みや当時の風景に思いをはせることがだいご味であり、その人物やストーリーに自分も融合したいという心理が働き、その地を訪れたくなるのではないかと考えます。
 鯨とともに生きてきたところは全国各地にも点在しますが、熊野灘沿岸での捕鯨が発展を遂げた背景には、黒潮の流れの影響を受け鯨が陸の近くを頻繁に回遊すること、また、地形的にその鯨をいち早く発見することのできる高台や、とった鯨を引き上げることに適した浜や湾があり、古式捕鯨にとって最も重要な要件を備えていた場所であったからと言えます。もともと陸地の狭い地域にとって、生きる糧を海に求めたという事情もあります。
 加えて、捕鯨という1次産業にとどまらず、解体や加工、鯨船をつくる船大工、もりなどをつくる鍛冶屋など、2次、3次にも及ぶ広い業種がかかわり、地域全体が利益を享受できるシステムが構築されていたことが挙げられます。
 鯨船や道具は使用するものの、人の力だけで巨大な鯨に挑み、時には多くの犠牲者を出したという危険と恐怖が背中合わせの古式捕鯨、当時生きていくために男が命をかけた激しい漁であったことは、そのような環境にさらされていない現代の私たちにとって想像の域を超越した世界であったと思います。また、肉を食すだけでなく、皮や骨、ひげや脂まで余すところなく生活用品として利用できたことから、人々は鯨に対し深い感謝と慰霊の念を欠かさなかったことにも着目すべきであると思います。
 これら先人が築いた文化に対し、今を生きる私たちができることは、捕鯨文化ストーリーを正しく学び、自然と向き合って生きる場所熊野を継承し、それを国内外に発信することではないかと考えます。
 以上、いろいろと申し上げましたが、日本遺産事業を本県への観光客誘客と周遊エリアの拡大や滞在時間延長の促進に向けて活用するために、どのような事業を展開していくのでしょうか、商工観光労働部長にお尋ねいたします。
○議長(浅井修一郎君) 商工観光労働部長。
  〔岡本圭剛君、登壇〕
○商工観光労働部長(岡本圭剛君) この日本遺産の認定により、本県の熊野エリアは、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」とあわせて山と海のダブル遺産を有し、さらに日本ジオパークの南紀熊野ジオパークを含めますと3つの観光資源ブランドが存在するエリアとなりました。この強みを最大限に生かし、積極的なプロモーションを展開することで、誘客促進の相乗効果が期待できるものと考えております。
 具体的には、去る5月30日に、県、公益社団法人和歌山県観光連盟、関係市町、観光関連団体、文化保存団体、交通事業者、旅行業者による熊野灘捕鯨文化継承協議会を立ち上げました。協議会では、文化庁から3年間交付される補助金を活用し、ガイドブックやホームページの制作などの情報発信、日本遺産ガイドの養成、シンポジウムの開催、ストーリーを構成する文化財の調査研究、案内板の整備等さまざまな事業を展開し、市町の域を超えた新たな観光ルートを形成することにより、熊野エリアの周遊促進と滞在時間の延長を図ってまいります。
○議長(浅井修一郎君) 濱口太史君。
  〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 御答弁をいただきました。答弁にも説明がありましたが、ますます熊野ブランドを確立すべく、世界遺産やジオパークとの合わせわざで大いに活性化につなげていただきたいと期待しております。
 また、2200年前に不老不死の霊薬を求めて中国から渡来した徐福が、熊野の人々に鯨のとり方を伝えたと言われています。徐福が熊野灘沿岸の捕鯨ストーリーの始まりと考えれば、欠かすことのできない存在ではないかと思いますので、今後つけ加えていただくことも検討していただければと思います。これは要望であります。
 それでは、次の質問に入らせていただきます。
 大学入試センター試験の実施会場についてであります。
 私がこのような問題があることを知ったのは、自分の子供を某国立大学に通わせる父親でもある同級生との会話からでした。毎年保護者同士や子供との間で話題になることだが、センター試験を受験するとき、同じ県内に住む高校生であるにもかかわらず、特に紀南地域の生徒から見れば受験環境や負担に雲泥の差がある、これには大いに不公平感があり、県としてはどのように考えているのだろうかとの内容でした。
 また、この件について、昨年のセンター試験が終了した後の2月13日付「朝日新聞」和歌山版に大きな記事として掲載されていたとのこと、早速読んで確認することといたしました。「センター試験 紀南は損?」という見出しの記事によりますと、県内の大学入試センター試験は、和歌山大学、向陽高校、桐蔭高校の和歌山市内に3カ所と、近畿大学生物理工学部の紀の川市1カ所の計4会場、いずれも紀北地域において実施されています。
 したがって、紀南地域の受験生はかなりの移動時間を要するとともに、泊まりがけで来るケースがほとんどで、金銭的負担も3教科以上で検定料1万8000円がかかることは当然のことでありますが、さらに交通費や宿泊費で約3万5000円程度の負担を強いられる状況にあります。また、一番遠方となる新宮高校の校長先生は、なれない場所で寝泊まりをする肉体面と精神面の負担は生徒にとって損なことであると、紀北地域の受験生と比べての不公平さを訴えています。
 試験会場の数、場所を決定するのは大学や短大で構成される連絡会議であるとのことで、大学から遠方になると問題用紙の管理が難しく、運営スタッフの確保も困難なことから、新たな試験会場をふやす予定はないとの考えを示しているようです。記事には、本県と似た状況での過去の事例として、大学から車で約3時間かかる場所に新たな試験会場を校長会からの強い要望を受け設置した岐阜大学や、車で約2時間の高校で実施した秋田県立大学の取り組みとあわせて、「ハードな仕事だが、受験生に泊まらせるくらいなら私たちが出向く」といった入試担当者のコメントも紹介されており、いずれも受験生のことを第一に考える責任感と熱意を感じるコメントであります。
 また、青森県の弘前大学、新潟大学や長崎大学などが離島の高校で実施していることにも触れていました。逆に、愛媛、佐賀、熊本の3県は本県と同じ実施状況で、県庁所在地の市内の会場だけです。
 「そもそも、地理的条件が違うのはやむを得ないことで、そのことも乗り越えての試験」とは関係者の言葉であります。さまざまな意見や事例にいろいろな考えをめぐらせているところへ、和歌山市内で大学受験予備校を長年営む方からも連絡をいただきました。さきに紹介した新聞記事の情報元でもあるとおっしゃられ、数年前から自身のブログ上でもこのことを訴えているが、一向に改善される気配がないことに不信感を募らせているとのことでした。
 また、ブログには読者からも同調するコメントが寄せられているとのこと、参考にするため、案内いただいたブログの内容を読ませていただきました。そこには紀南との地域格差についてだけでなく、和歌山市内においても、桐蔭高校と向陽高校の生徒がなれた教室で受験できるのと、それ以外の高校からとでは心理的に大きな違いがあることなど、幾つかの見解、あるいは改善案が書きつづられています。本県内の受験環境には他府県の状況と比べても不公平なケースがあり、やる気を出せば改善できることもあると指摘しており、確かにうなずける話も多々ありました。
 さて、今回の質問内容につきましては、全般にわたって意見の集約や調査を行ったわけでなく、これらの情報のみによるものですが、本県におけるセンター入試試験会場の地理的条件の格差を考えたときに、紀南地域の生徒にとって大変な負担が多いことは明白であります。
 よって、試験実施の関係者に対し、受験生の精神的、肉体的なストレスを和らげ、集中して試験に臨める環境をつくる工夫を求め、公平性を意識していただくための問題提起になればと取り上げさせていただきました。
 地元で話を聞く限りでは、紀南地域の生徒や保護者、学校関係者が考える理想の形は、できることなら田辺市と新宮市に試験会場をつくってもらいたいということであります。ただし、いきなり2カ所の設置は無理だろうという発想で、まずは紀南地域内に1カ所だけをふやすという判断に至ったとすれば、それはそれで他の弊害が考えられるのです。
 もし田辺市地域に1カ所となると、新宮市、東牟婁郡からの生徒は通うということは時間的にも無理があり、結局宿泊が伴うことになり、そうなれば従来の和歌山市の会場のほうが宿泊先の手配や会場への移動がスムーズであるとの話もありました。また、新宮市地域に1カ所となると、なおさら多くの不都合が予測されます。したがいまして、紀北・紀中地域の生徒と同じように、自宅から通うことができる距離に試験会場を設置していただくことが望ましいと考えられます。
 確かに、これまで紀南地域で実施されなかった現状から考えて、さまざまな条件に適当ではなく、ハードルの高い話であるとも思うのですが、実際に岐阜県や秋田県のように改善できた事例もあるわけですから、無理だと決めつけずに、遠方の受験生のこともしっかりと考えてあげていただきたいのです。
 そこでお尋ねしますが、これまで県教育委員会としては、このような現状や地域からの声をどのように捉えてきたのでしょうか。また、試験関係者に対し、今後何らかの働きかけをしていただけるかどうか、その可能性についてなど、教育長の御見解をお示しください。
○議長(浅井修一郎君) 教育長宮下和己君。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 県内で行われている大学入試センター試験は、議員のお話もありましたように、和歌山大学、近畿大学生物理工学部、桐蔭高等学校及び向陽高等学校の4会場で実施されており、紀南地域に試験会場はございません。宿泊等で紀南地域の受験生の負担になっていると、これまでも私は認識してございます。
 試験会場の設置につきましては、大学入試センターと県内の複数の大学等で設置している連絡会議で決められてございます。会場をふやすことは、受験者数、スタッフ人員の確保、試験問題の輸送等を勘案すると困難であるとこれまで聞いてまいりました。
 現在、文部科学省では大学入試制度の改善が検討されているところであり、より多くの受験生ができるだけ負担少なく受験できるよう、高等学校長会等からさまざまな意見を今後聴取しつつ、関係機関に県教育委員会といたしましても働きかけてまいります。
○議長(浅井修一郎君) 濱口太史君。
  〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 ただいま御答弁をいただきました。いろいろな意見を、学校や生徒や保護者の意見をお聞きしていただきながら、どのような働きかけをしていくか、いろいろ研究をしていただいて、何とか生徒の負担を軽くしてあげていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、3番目の精神障害者に対する旅客運賃割引制度適用についての質問に入らせていただきます。
 県内における旅客運賃割引制度の適用状況についてお尋ねをいたします。
 平成18年に国連総会で障害者権利条約が採択されたことを契機に、我が国における障害者福祉の取り組みは大きく前進しました。条約締結に向け、障害当事者の意見も聞きながら国内法令の整備を推進する流れが生まれたのです。そして、平成26年2月より我が国も国連障害者権利条約の締結国となりました。
 障害者基本法では、身体、知的、精神の全ての障害者が障害でない者と等しく基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有し、社会を構成する一員として社会、経済、文化、その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されることとされています。
 そして、本年4月に障害者差別解消法、正式には、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律が施行されました。この法律は、国や地方公共団体、事業者に対し、不当な差別的取り扱いの禁止や合理的配慮の提供により具体的に取り組むことを定めたものであり、障害のある人への差別をなくす社会を形成することで、障害のある人もない人もともに生きていける社会づくりを目指すものであります。
 さて、以上のことを踏まえて本題に入らせていただきます。お尋ねしたいことは、障害者に対する交通運賃割引制度についてであります。
 身体障害者は昭和25年から、内部障害の身体障害者は平成2年から、知的障害者は平成3年から割引制度の対象となっており、バスや鉄道などの公共交通機関において割引が実施されております。障害者が通勤、通学、通院など日常生活を送る、あるいは社会活動に参加をする上で交通費の負担を軽減し、外出機会をふやすなど、割引制度に基づく関連事業者や自治体の支援が果たす役割は非常に大きなものがあります。
 そこでまず、県内における障害者を対象とした旅客運賃割引制度のうち、バスや鉄道事業者における適用状況について、福祉保健部長にお尋ねいたします。
○議長(浅井修一郎君) 福祉保健部長幸前裕之君。
  〔幸前裕之君、登壇〕
○福祉保健部長(幸前裕之君) 精神障害者にとって公共交通機関は、医療機関への通院や障害福祉サービス事業所への通所等に欠かせない移動手段であり、運賃割引は精神障害者の自立と社会参加の促進に大きく寄与するものであると考えます。
 県内のバス事業者における精神障害者の運賃割引制度の適用については、コミュニティーバスを含めた32事業者のうち3事業者を除き既に割引を行っており、その3事業者に対して県からも働きかけを行った結果、そのうち2事業者が準備を進めているところです。
 鉄道事業者については、県内4事業者全てがいまだ割引を実施していない状況にあります。
○議長(浅井修一郎君) 濱口太史君。
  〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 身体障害者並びに知的障害者に対しては、JRを初め鉄道事業者の旅客運賃について、障害者とその介護者に対して50%の割引が受けられます。また、障害者本人だけであっても、100キロメートル以上という条件つきですが、割引対象となります。
 しかしながら、国内法令の整備や障害者の自立と社会参加のための環境整備が進む中、答弁にもありましたように、鉄道事業者における精神障害者への運賃割引制度の適用は進んでいない現状にあります。
 精神障害者への割引適用がおくれているのは、身体や知的障害者に交付される手帳と異なり、精神障害者保健福祉手帳には顔写真の添付がなく、本人確認ができないためとされてきました。しかし、平成18年からは精神障害者の手帳にも写真が貼付されるようになったことから、国はそれ以降、鉄道事業者に対して働きかけているものの、障害者に対する割引は各事業者の自主的な判断に基づき実施されるものであるため、先ほどの答弁にありましたように、いまだ実現には至っていない状況にあります。
 平成22年と少し以前の調査結果ですが、ある福祉関係団体がJR6社と私鉄16社に運賃割引に関する質問書を送ったところ、その回答の多くを要約すると、割引による減収分は一般乗客と事業者が負担することになるから、本来は国が行うべき福祉施策だと考えるから、公的助成の道筋が見えない現在、制度拡大は考えていないといった否定的なものであったそうです。
 一方で、全国精神保健福祉連合会が全国の精神障害者本人及び家族を対象にしたアンケート調査を実施しました。その結果、1カ月の平均収入は6万287円と精神障害者の収入の低さが明らかになりました。また、72.9%と大半が家族と同居していますが、本人の平均年齢は45.7歳であるということから、それに伴って支える家族の高齢化も進んでおり、年金生活者も少なくないそうです。つまり、経済的支援力も弱まっていると言えます。このような事情から、交通費の負担が外出や社会参加にブレーキをかけてしまっている、あるいはブレーキをかけざるを得ない現実があるわけです。
 精神障害者を支援する家族会は、精神障害者にも同様の割引制度が受けられるよう、これまでも強く訴えてきたのでありますが、障害者差別解消法が施行されたことを契機とし、改めて要望活動を全国一斉に展開しているところであります。和歌山県からも、国や鉄道事業者に対し強く働きかけを行っていただきたいと考えますが、この件に関しまして知事の御見解をお聞かせください。
○議長(浅井修一郎君) 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 私は、障害者の自立と社会参加を図るために、公共交通を担う者として鉄道事業者において運賃割引制度を適用することが妥当だと考えております。
 しかしながら、精神障害者への運賃割引の適用がされず、身体障害者、知的障害者との不均衡が生じている現状は問題だと思います。しかも、バスについては国交省の指導があるんですけれども、鉄道、航空については目立ったものがないという状態でございます。ということは、鉄道については、精神障害者向け割引制度の適用は、御指摘のように事業者の自主的な判断に委ねているところであると思います。
 大体、国の政策は理由があってやってることが多いので、その辺をよく確かめよと昨日指示を出したところでございまして、それを踏まえて関係機関に対して有効に働きかけをしてまいりたいというふうに考えております。
 こういうことに至ったのも、濱口議員がこれを問題視して御質問いただいたおかげだと思いまして、感謝しております。
○議長(浅井修一郎君) 濱口太史君。
  〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 大変ありがたいお言葉をいただきました。
 先ほど、JR各社からの回答の中に、割引による減収分は一般乗客と事業者が負担することになるので制度拡大は考えていないという理由を紹介いたしましたが、精神障害者の方は交通費の負担が重いために外出にブレーキをかけ、利用を控えてきたわけですから、今までの運賃収入が減収するということを懸念するよりも、割引制度が拡大することになれば外出する意欲が芽生え、移動手段に鉄道の利用がふえるのですから、逆に増収につながるのではないかと考えます。
 また、精神障害者の方の外出機会がふえますと、活動の幅が広がり、本来備わっているすぐれた能力を発揮する場面もふえ、社会貢献ができる可能性が広がります。そのことにより御本人にも自信がよみがえり、回復への効果が期待されるのではないでしょうか。
 県にもいろいろと研究をしていただいて、どうか割引制度適用に向けての働きかけを、知事を初め県当局の皆様、そして先輩・同僚議員の皆様、またマスコミ関係の皆様にもお力添えをいただきますよう心よりお願い申し上げまして、私の一般質問を終わらせていただきます。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(浅井修一郎君) 以上で、濱口太史君の質問が終了いたしました。

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